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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121531
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】標的特異的ヌクレアーゼの送達
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20220812BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220812BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C12N15/88 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/55
C12N15/12
C12N15/09 100
C12N15/86 Z
C12N15/14
C12N5/10
A61K48/00
A61K35/76
A61K47/28
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/24
A61K9/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022101160
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2019530472の分割
【原出願日】2017-12-08
(31)【優先権主張番号】62/432,042
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/458,373
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/503,470
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/559,186
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516386834
【氏名又は名称】アクイタス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エム. アンセル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー バルボーサ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シンヤオ ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ. ホープ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シー. ホームズ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ケー. リー
(72)【発明者】
【氏名】パウロ ジア チン リン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マッデン
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ムイ
(57)【要約】
【課題】標的特異的ヌクレアーゼの送達の提供。
【解決手段】カチオン性脂質および他の脂質を含み、核酸の細胞への移入を促進する工学技術で作製されたヌクレアーゼも含む脂質ナノ粒子が本明細書に記載される。本開示は、遺伝子治療試薬を含むLNP試薬を使用することによって遺伝子治療の効率を増大させるための方法および組成物を提供する。したがって、本明細書で、遺伝子治療に使用するための、工学技術で作製された転写因子もしくは工学技術で作製されたヌクレアーゼをコードするmRNA、ならびに/または、工学技術で作製された転写因子、工学技術で作製されたヌクレアーゼおよび/もしくはドナー(導入遺伝子)をコードするDNAを送達することが可能なLNPを含む組成物が記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年12月9日に出願された米国仮出願第62/432,042号、2017年2月13日に出願された米国仮出願第62/458,373号、2017年5月9日に出願された米国仮出願第62/503,470号および2017年9月15日に出願された米国仮出願第62/559,186号の利益を主張し、これらの開示は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、ポリペプチドおよびゲノム工学技術、ならびに、細胞への核酸の移入を促進するための、カチオン性脂質および他の脂質構成成分の使用の分野にある。
【背景技術】
【0003】
背景
遺伝子治療は、ヒト治療学の新しい時代の莫大な潜在性を秘める。これらの方法論は、以前は標準医療行為によって対処可能ではなかった状態のための処置を可能にする。特に有望な領域の1つは、導入遺伝子を細胞に付加して、その細胞に以前にはその細胞において生成されていなかった生成物を発現させることができることである。この技術の使用の例には、治療用タンパク質をコードする遺伝子の挿入、細胞または個体において何らかの理由で欠如しているタンパク質をコードするコード配列の挿入およびマイクロRNAなどの構造的核酸をコードする配列の挿入が含まれる。
【0004】
工学技術で作製された(engineered)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RNAガイドヌクレアーゼとも呼ばれる、工学技術で作製されたcrRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)を用いるCRISPR/Cas系、および/またはアルゴノート系に基づくヌクレアーゼ、例えば、「TtAgo」として公知である、T.thermophilusに由来するもの(Swartsら(2014年)Nature 507巻(7491号);258~261頁)などの人工ヌクレアーゼは、切断ドメインと会合または作動可能に連結したDNA結合ドメイン(ヌクレオチドまたはポリペプチド)を含み、ゲノム配列の標的化変更のために使用されている。例えば、ヌクレアーゼは、外因性配列を挿入するため、1つまたは複数の内因性遺伝子を不活性化するため、遺伝子発現パターンが変更された生物体(例えば、作物)および細胞株を作製するためなどに使用されている。例えば、米国特許第9,394,545号;同第9,150,847号;同第9,045,763号;同第9,005,973号;同第8,956,828号;同第8,945,868号;同第8,703,489号;同第8,586,526号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;および同第20150056705号を参照のこと。例えば、ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、dCas-Fok融合物)の対を使用して、ゲノム配列を切断することができる。対の各メンバーは、一般に、ヌクレアーゼの1つまたは複数の切断ドメイン(または半ドメイン)と連結した、工学技術で作製された(天然に存在しない)DNA結合タンパク質を含む。DNA結合タンパク質がそれらの標的部位に結合すると、これらのDNA結合タンパク質と連結している切断ドメインが、二量体化およびその後のゲノムの切断が起こるように位置づけられる。
【0005】
導入遺伝子が細胞自体のゲノムに組み込まれ、そこで維持されるように、導入遺伝子を種々のやり方によって細胞に送達することができる。近年、選択されたゲノム遺伝子座への標的化挿入のための、部位特異的ヌクレアーゼを用いた切断を使用する、導入遺伝子を組み込むための戦略が開発されている(例えば、共同保有の米国特許第7,888,121号を参照のこと)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR/Cas系(工学技術で作製されたガイドRNAを利用する)などのヌクレアーゼ系などのヌクレアーゼは、標的化された遺伝子に対して特異的であり、相同組換え修復(HDR)によって、または非相同末端結合(NHEJ)によって駆動されるプロセス中の末端捕捉によってのいずれかで導入遺伝子構築物が挿入されるように利用することができる。例えば、参照によりそれらの全体の開示が本明細書に組み込まれている、米国特許第9,394,545号;同第9,255,250号;同第9,200,266号;同第9,045,763号;同第9,005,973号;同第9,150,847号;同第8,956,828号;同第8,945,868号;同第8,703,489号;同第8,586,526号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;米国特許出願公開20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;同第20130196373号;同第20140120622号;同第20150056705号;同第20150335708号;同第20160030477号および同第20160024474号を参照のこと。
【0006】
導入遺伝子を様々なやり方で細胞内に導入し、そこで維持することができる。「cDNA」アプローチの後、導入遺伝子を細胞に、導入遺伝子が、細胞のクロマチンへの組込みによるのではなく、染色体外に維持されるように導入する。導入遺伝子は、環状ベクター(例えば、プラスミド、またはAAVもしくはレンチウイルスなどの非組込み型ウイルスベクター)上に維持することができ、ここで、ベクターは、プロモーター、エンハンサー、ポリAシグナル配列、イントロン、およびスプライシングシグナルなどの転写性制御配列を含むことができる(PCT/US2016/42099)。代替アプローチは、アルブミン遺伝子などの高度に発現するセーフハーバーの位置への導入遺伝子の挿入を伴う(米国特許第9,394,545号および同第9,150,847号を参照のこと)。このアプローチは、In Vivo Protein Replacement Platform(商標)またはIVPRPと称されている。このアプローチの後、導入遺伝子をセーフハーバー(例えば、アルブミン)遺伝子にヌクレアーゼ媒介標的化挿入によって挿入し、そこで導入遺伝子の発現がアルブミンプロモーターによって駆動される。導入遺伝子は、導入遺伝子によってコードされるタンパク質の分泌/排出を補助するためのシグナル配列を含むように工学技術で作製する。
【0007】
「セーフハーバー」遺伝子座は、ヒト細胞におけるAAVS1遺伝子、HPRT遺伝子、アルブミン遺伝子およびCCR5遺伝子などの遺伝子座、およびマウス細胞におけるRosa26を含む。例えば、米国特許第9,394,545号;同第9150,847;7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許公開20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;および同第20140017212号を参照のこと。ヌクレアーゼ媒介組込みにより、遺伝子サイレンシングまたは近くのオンコジーンの活性化のリスクを最小限にするための正確な導入遺伝子の配置が可能になるので、導入遺伝子のランダムな組込みに依拠する古典的な組込みアプローチと比較して、導入遺伝子発現の改善、安全性および発現耐久性増大の見込みがもたらされる。
【0008】
遺伝子治療の臨床への変換は、in vivoおよびin vitro/ex vivoの両方における核酸の送達を取り巻く問題によって妨害されている。ウイルスによるアプローチは、大きな見込みをもたらすものであるが、制限が多すぎる。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)などのベクターは、一般に安全であると考えられるが、それらのペイロードは限定され(<4.8kb)、ある特定の血清型の効率は、そうでなければ潜在的である患者において先天的な抗体が存在することによって低減する。さらに、多数回の投薬は同様に最初の投薬後の免疫応答の発生の影響を受ける可能性がある。さらに、そのようなウイルスベクターの製造は、特に、これらの送達ベクターを診療所において使用するために必要になる最終的なウイルス収率を考慮すると、簡単ではない可能性がある(Nayerossadatら(2012年)Adv Biomed Res 1巻:27頁)。ウイルスによるまたはウイルスによらない理想的な送達ビヒクルは、低い抗原性潜在性、遺伝子材料を受け入れるための大きな容量、高い形質導入効率、調節および標的化された導入遺伝子発現ならびに容易な製造プロセスを有するべきであり、同時に、これらは全て、患者および環境の両方に対して妥当な費用および安全性を有するべきである(Wangら(2015年)J. Funct Biomat 6巻:379~394頁)。
ウイルスによらないアプローチの1つは、核酸を含むナノ粒子の、それらのペイロードを標的細胞に送達するための使用に関する。ナノ粒子は、特性上固体であってよく、多糖、脂質、タンパク質、生分解性ポリマー、および金属酸化物を含めた材料を含む。他のナノ粒子は液体の形態であり、主に、両親媒性分子またはポリマーで構成されるリポソーム、ミセルまたはエマルション系である。脂質ナノ粒子(LNP)は、核酸の包被効率が高く、生物学的環境との安定性および適合性が高いので、ナノ粒子の最も有望な型の1つである(Leeら(2016年)Am J Cancer Res 6巻(5号):1118~1134頁
)。
しかし、LNPによる送達は、現在のところ、一般に利用可能な脂質構成成分の特徴が最適以下であることに主に起因して、非効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9,394,545号明細書
【特許文献2】米国特許第9,150,847号明細書
【特許文献3】米国特許第9,045,763号明細書
【特許文献4】米国特許第9,005,973号明細書
【特許文献5】米国特許第8,956,828号明細書
【特許文献6】米国特許第8,945,868号明細書
【特許文献7】米国特許第8,703,489号明細書
【特許文献8】米国特許第8,586,526号明細書
【特許文献9】米国特許第6,534,261号明細書
【特許文献10】米国特許第6,599,692号明細書
【特許文献11】米国特許第6,503,717号明細書
【特許文献12】米国特許第6,689,558号明細書
【特許文献13】米国特許第7,067,317号明細書
【特許文献14】米国特許第7,262,054号明細書
【特許文献15】米国特許第7,888,121号明細書
【特許文献16】米国特許第7,972,854号明細書
【特許文献17】米国特許第7,914,796号明細書
【特許文献18】米国特許第7,951,925号明細書
【特許文献19】米国特許第8,110,379号明細書
【特許文献20】米国特許第8,409,861号明細書
【特許文献21】米国特許公開第2003/0232410号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2005/0208489号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2005/0026157号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2005/0064474号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2006/0063231号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2008/0159996号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2010/00218264号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2012/0017290号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2011/0265198号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2013/0137104号明細書
【特許文献31】米国特許出願公開第2013/0122591号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2015/0056705号明細書
【特許文献33】米国特許第7,888,121号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Swartsら(2014年)Nature 507巻(7491号);258~261頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、遺伝子治療試薬を生物系に送達するためのさらなる方法および組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、遺伝子治療試薬を含むLNP試薬を使用することによって遺伝子治療の効率を増大させるための方法および組成物を提供する。したがって、本明細書で、遺伝子治療に使用するための、工学技術で作製された転写因子もしくは工学技術で作製されたヌクレアーゼをコードするmRNA、ならびに/または、工学技術で作製された転写因子、工学技術で作製されたヌクレアーゼおよび/もしくはドナー(導入遺伝子)をコードするDNAを送達することが可能なLNPを含む組成物が記載される。本開示は、これらの組成物を、目的の遺伝子の制御、1つもしくは複数の遺伝子をノックアウトするための目的領域内の細胞クロマチンの標的化切断、および/または細胞内の所定の目的領域での標的化組込みによる導入遺伝子の組込みのために使用する方法も提供する。
【0013】
したがって、一態様では、本明細書で、1つまたは複数のカチオン性脂質を含み、かつ、1つまたは複数の核酸(例えば、1つまたは複数の工学技術で作製された転写因子(例えば、活性化因子または抑制因子)、1つまたは複数の工学技術で作製されたヌクレアーゼなどの1つまたは複数のタンパク質、1つまたは複数のドナー(導入遺伝子)、1つまたは複数のshRNAなどをコードする核酸(DNAおよび/またはmRNA))を含む、新規のLNPが記載される。細胞に(in vitroまたはin vivoで)送達されると、核酸によってコードされるタンパク質は、核酸(複数可)を他の(ウイルスによらないまたはウイルスによる)送達機構によって送達した場合と比較して、細胞における活性の増大を示し、かつ/または、細胞における送達プロセスに対する忍容性の改善をもたらす。一部の実施形態では、LNPの核酸は、1つまたは複数のヌクレアーゼまたは転写因子をコードする1つまたは複数のmRNAを含む。一部の態様では、工学技術で作製された転写因子は、1つまたは複数のジンクフィンガータンパク質(ZF-TF)、1つまたは複数のTAL-エフェクタードメインタンパク質(TALE)、1つまたは複数のCRISPR/Cas転写因子(CRISPR-TF)を含む。一部の態様では、ヌクレアーゼ(複数可)は、1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。さらなる態様では、ヌクレアーゼ(複数可)は、Taleエフェクター様ヌクレアーゼ(TALEN)、1つもしくは複数のCRISPR/Casヌクレアーゼ、1つもしくは複数のMegaTALおよび/または1つもしくは複数のメガヌクレアーゼを含む。一部の実施形態では、LNPの核酸は、ドナーDNAを含む。一部の態様では、ドナーDNAは、プラスミド、ミニ遺伝子、または直鎖状DNAである。さらなる態様では、細胞に送達するための導入遺伝子を含むDNAを含む核酸は、標的化組込みの鋳型として機能させることもでき、または染色体外に維持することもできる。
【0014】
一部の実施形態では、LNPは、カチオン性脂質分子を含む。一部の態様では、LNPは、中性脂質、荷電脂質、コレステロールおよび/もしくはそれらの類似体を含めたステロイド、ならびに/またはポリマーとコンジュゲートした脂質も含む。
【0015】
一部の実施形態では、カチオン性脂質は、以下の式(I、II、IIIおよびIV):
【化1】
【化2】
(式中、R、R、R、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R、R、R、R、R、L、L、G、G、G、a、b、c、dおよびeは、式(I)、(II)、(III)および(IV)のそれぞれについて本明細書で定義されている通りである)
またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を有する分子から選択される。一部の実施形態では、カチオン性脂質は、以下に示すI-5またはI-6である:
【化3】
【化4】
【0016】
他の実施形態では、カチオン性脂質は、以下に示すII-9、II-11またはII-36である:
【化5】
【0017】
他の実施形態では、カチオン性脂質は、以下に示すIII-25、III-45またはIII-49である:
【化6】
【0018】
他の異なる実施形態では、カチオン性脂質は、以下に示すIV-12である:
【化7】
【0019】
本明細書に記載の1つまたは複数のLNPを含む医薬組成物も提供される。一部の実施形態では、治療剤はRNAまたはDNAを含み、一部の態様では、RNAはmRNAである。さらなる態様では、mRNAは、ヌクレアーゼまたは転写因子をコードする。一部の実施形態では、医薬組成物は、中性脂質、荷電脂質、ステロイドおよびポリマーとコンジュゲートした脂質から選択される1つまたは複数の構成成分をさらに含む。そのような組成物は、治療剤を送達するための脂質ナノ粒子の形成に有用である。
【0020】
なおさらなる実施形態では、LNPは、以下の構造(V):
【化8】
(式中、R、Rおよびwは、式(V)に関して本明細書で定義されている通りである)を有するペグ化脂質またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を含む。
【0021】
したがって、一実施形態では、カチオン性脂質を含むLNPが本明細書に記載され、ここで、カチオン性脂質は、式I、II、IIIおよびIVの脂質、ならびに必要に応じて式Vのペグ化脂質から選択され、ここで、LNPはまた、1つまたは複数の核酸(例えば、1つもしくは複数の工学技術で作製されたヌクレアーゼおよび/またはドナー(導入遺伝子)分子をコードする核酸)も含む。
【0022】
一部の実施形態では、核酸は、工学技術で作製されたヌクレアーゼをコードし、ここで、ヌクレアーゼは、DNA結合ドメインおよび切断ドメインを含む。他の実施形態では、LNPの核酸は、DNA結合ドメインおよび転写ドメイン(例えば、活性化または抑制ドメイン)を含む、工学技術で作製された転写因子をコードする。一部の態様では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、RNA分子(例えば、CRISPR/Casヌクレアーゼの単一ガイド(sg)RNA)、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインである。さらなる態様では、ヌクレアーゼの切断ドメインは、エンドヌクレアーゼに由来する野生型切断ドメインもしくは工学技術で作製された(変異した)切断ドメイン、メガヌクレアーゼDNA切断ドメイン、またはCas DNA切断ドメインを含む。一部の実施形態では、DNA切断ドメインは、FokIである。さらなる実施形態では、FokIドメインは、二量体化ドメインに変異を含む(例えば、米国特許第8,623,618号を参照のこと)またはDNA分子のリン酸骨格と非特異的に相互作用するFokIドメインの領域に変異を含む(例えば、米国特許出願第15/685,580号を参照のこと)。
【0023】
別の態様では、DNA結合ドメインおよび本明細書に記載の工学技術で作製された切断半ドメインを含む融合ポリペプチドが提供される。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、工学技術で作製されたジンクフィンガー結合ドメイン)である。他の実施形態では、DNA結合ドメインは、TALE DNA結合ドメインである。なおさらなる実施形態では、DNA結合ドメインは、触媒として不活性なCas9またはCfp1タンパク質(dCas9またはdCfp1)である。一部の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、触媒として不活性な工学技術で作製された切断半ドメインとヌクレアーゼ複合体を形成して、ニッカーゼを形成する(米国特許第9,200,266号を参照のこと)。ある特定の実施形態では、ジンクフィンガードメインは、赤血球(RBC)におけるアルブミン遺伝子またはグロビン遺伝子内の標的部位を認識する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014001721号を参照のこと。他の実施形態では、ZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系は、セーフハーバー遺伝子、例えば、CCR5遺伝子、PPP1R12C(AAVS1としても公知)遺伝子、アルブミン、HPRTまたはRosa遺伝子に結合し、かつ/またはそれを切断する。例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;同第20130177960および同第20140017212号を参照のこと。ヌクレアーゼ(またはその構成成分)は、本明細書に記載の1つまたは複数のZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系をコードするポリヌクレオチドとして提供することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAであってよい。一部の態様では、mRNAは化学改変されてもよい(例えば、Kormannら、(2011年)Nature Biotechnology 29巻(2号):154~157頁を参照のこと)。他の態様では、mRNAは、合成中に導入されたARCAキャップを含むことができる(米国特許第7,074,596号および同第8,153,773号を参照のこと)。一部の態様では、mRNAは、酵素的修飾によって導入されたcapを含むことができる。酵素によって導入されたcapは、Cap0、Cap1またはCap2を含む場合がある(例えば、Smietanskiら、(2014年)Nature Communications 5巻:3004頁を参照のこと)。さらなる態様では、mRNAは、化学修飾によってキャッピングすることができる。さらなる実施形態では、mRNAは、修飾されていないヌクレオチドと修飾されたヌクレオチドの混合物を含むことができる(米国特許公開第20120195936号を参照のこと)。なおさらなる実施形態では、mRNAは、WPREエレメントを含むことができ(米国特許出願第15/141,333号を参照のこと)、さらなる実施形態では、WPREエレメントは、変異WPREエレメントであってよい(例えば、Zanta-Boussifら(2009年)Gene Ther 16巻(5号):605~19頁
を参照のこと)。一部の実施形態では、mRNAは、二本鎖である(例えば、Karikoら(2011年)Nucl Acid Res 39巻:e142頁を参照のこと)。他の実施形態では
、mRNAは、一本鎖である。一部の実施形態では、メッセージの最後にポリAトラックが伸長している。好ましい実施形態では、ポリAトラックは、例えば、50個、51個または64個のポリAを含め、50個よりも多くのポリAを含む。より好ましい実施形態では、ポリAトラックは、128個のポリAを含む、または193個またはそれよりも多くのポリAを含む。好ましい実施形態では、ポリAトラックは、50個、51個、64個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、128個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、193個、200個またはそれよりも多くのポリAを含む。他の実施形態では、mRNAのコドンのゆらぎ位置にあるウリジンの一部、大部分または全てを別のヌクレオチドに変更する。一部の実施形態では、ゆらぎ位置にあるヌクレオチドの5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%またはそれよりも多くを変更する。
【0024】
本発明の方法および組成物はまた、DNA骨格のリン酸と非特異的に相互作用し得るZFP DNA結合ドメイン(「ZFP骨格」)内のアミノ酸に対する変異を有するが、DNA認識へリックスの変化は含まないZFNを含むLNPも含む。したがって、本発明は、ヌクレオチド標的特異性のために必要なものではないZFP骨格内のカチオン性アミノ酸残基の変異を含む。例えば、米国特許出願第15/685,580号を参照のこと。
【0025】
一部の実施形態では、LNPは、ドナー分子(例えば、DNAまたはRNA)を含む。一部の態様では、ドナーは、プラスミド、ミニサークルまたは直鎖状DNAである。さらなる実施形態では、LNPは、RNAおよびDNAの両方を含む。一部の態様では、RNAおよび/またはDNAは、融合タンパク質をコードし、一部の例では、融合タンパク質は、工学技術で作製されたヌクレアーゼまたは工学技術で作製された転写因子である。RNAおよびDNAは、RNAヌクレアーゼ(複数可)とDNAドナー、RNAヌクレアーゼとRNAドナー、RNAドナーとDNAヌクレアーゼ、およびDNAヌクレアーゼとDNAドナーを限定されずに含む、任意の組合せで提供することができる。一部の実施形態では、提供されるRNAは、内因性遺伝子の切断に特異的なヌクレアーゼをコードし、提供されるDNAは、切断された遺伝子に挿入するための導入遺伝子カセットを含む。DNAまたはRNA導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードするオープンリーディングフレームまたは目的のmRNAを含むことができ、プロモーター配列などの制御配列をさらに含むことができ、イントロンおよびエンハンサー配列を含めた、導入遺伝子の発現の増大に関連する配列をなおさらに含むことができる。さらなる実施形態では、プロモーター配列は、組織特異的発現パターンを有する。一部の実施形態では、DNA導入遺伝子は、ヌクレアーゼによって駆動される標的化組込みを増強するための相同アームを含む。他の実施形態では、DNAまたはRNA導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードするcDNAを含む、または、例えばshRNA、miRNA、RNAiなどの目的のRNA分子をコードすることができる。さらなる実施形態では、ドナーは、全長の導入遺伝子を含んでもよく、または導入遺伝子の短縮型または断片を含んでもよいcDNAであってよい。一部の実施形態では、挿入のための導入遺伝子は、遺伝子の野生型バージョンを発現しない細胞に挿入するための野生型遺伝子である。他の実施形態では、挿入のための導入遺伝子は、抗体または野生型バージョンと比較して品質が改善された治療用タンパク質の改変バージョンなどの、工学技術で作製された治療用タンパク質をコードする。
【0026】
ドナー配列の長さは、50ヌクレオチドから5,000ヌクレオチドの範囲(またはその間の任意の整数値のヌクレオチド)であってもよいし、またはそれよりも長くてよい。一部の実施形態では、ドナーは、標的化切断部位と相同の領域が隣接する全長の遺伝子を含む。一部の実施形態では、ドナーは、相同領域を欠き、相同性に依存しない機構(すなわち、NHEJ)を通じて標的遺伝子座に組み込まれる。他の実施形態では、ドナーは、細胞において使用するため(すなわち、標的化組込みによる遺伝子補正のため)の、相同領域が隣接する核酸のより小さな一部を含む。一部の実施形態では、ドナーは、例えばshRNA、RNAi、miRNAなどの、機能的または構造的な構成成分をコードする遺伝子を含む。他の実施形態では、ドナーは、目的の遺伝子に結合し、かつ/またはその発現をモジュレートする1つまたは複数の制御エレメントをコードする配列を含む。他の実施形態では、ドナーは、目的の遺伝子に結合し、かつ/またはその発現をモジュレートする、目的の制御タンパク質(例えば、ZFP TF、TALE TFおよび/またはCRISPR/Cas TF)である。
【0027】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、それを必要とする患者を処置するためのタンパク質をコードし、本発明の方法および組成物を使用してセーフハーバー遺伝子座に組み込まれる。一部の態様では、セーフハーバーは、AAVS1、アルブミン、HPRTまたはRosaから選択される。導入遺伝子は、欠損しているまたは欠けているタンパク質を産生させるために(例えば、「タンパク質置き換え」)本発明の方法を使用することができるようにタンパク質をコードすることができる。一部の例では、タンパク質は、リソソーム蓄積症の処置に関与し得る。表皮水疱症またはAAT欠損肺気腫のような多様な状態に対するタンパク質治療薬を含めた他の治療用タンパク質を発現させることができる。他の態様では、導入遺伝子は、発現するタンパク質が、新規かつ望ましい特徴(半減期の増大、血漿クリアランス特徴の変化など)をもたらす特徴を有するように、配列(例えば、工学技術で作製された配列)を含むことができる。工学技術で作製された配列は、アルブミン配列に由来するアミノ酸も含むことができる。一部の態様では、導入遺伝子は、治療用タンパク質、治療用ホルモン、血漿タンパク質、抗体などをコードする。一部の態様では、導入遺伝子は、凝固障害などの血液障害に関与するタンパク質をコードすることができる。一部の実施形態では、タンパク質は、神経性障害を処置するための工学技術で作製された転写因子、例えば、抑制因子である(例えば、ハンチントン病を処置するためのHtt抑制因子)。例えば、米国特許第9,234,016号および米国特許公開第20150335708号を参照のこと。
【0028】
本明細書で、本発明のLNP、ウイルス、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドによって改変された細胞も提供される。一部の実施形態では、細胞は、導入遺伝子のヌクレアーゼ媒介挿入、または遺伝子のヌクレアーゼ媒介ノックアウトを含む。改変細胞、および改変細胞に由来する任意の細胞は、必ずしも本発明のヌクレアーゼを一過性よりも長く含まないが、そのようなヌクレアーゼによって媒介される改変は残る。本発明の細胞は、真核細胞であっても原核細胞であってもよい。一部の実施形態では、真核細胞には、哺乳動物細胞、植物細胞、幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、肝細胞、肺の細胞、筋肉細胞、心臓細胞、神経細胞、皮膚細胞、骨細胞、胃腸細胞、腎臓細胞および腫瘍細胞を限定されずに含めることができる。細胞は、真菌細胞、霊長類細胞、マウス細胞およびヒト細胞であってもよい。
【0029】
さらに別の態様では、目的領域内の細胞クロマチンを標的化切断するための方法;細胞において標的化変更(例えば、挿入および/または欠失)を生じさせる方法;感染を処置する方法;および/または疾患を処置する方法が提供される。これらの方法は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで実施することができる。本方法は、本明細書に記載の融合ポリペプチドの対(すなわち、一方の融合ポリペプチドが本明細書に記載の工学技術で作製された切断半ドメインを含む、融合ポリペプチドの対)を発現させることにより、細胞内の所定の目的領域において細胞クロマチンを切断することを伴う。ある特定の実施形態では、オンターゲット部位の標的化切断が、本明細書に記載の変異を有さない切断ドメインと比較して、50%~60%(またはその間の任意の値)、60%~70%(またはその間の任意の値)、70%~80%(またはその間の任意の値)、80%~90%(またはその間の任意の値)、90%~200%(またはその間の任意の値)を含め、少なくとも50~200%(またはその間の任意の値)またはそれよりも大きく増大する。同様に、本明細書に記載の方法および組成物を使用すると、オフターゲット部位切断が、1~50分の1(またはその間の任意の値)を限定されずに含む、1~100分の1に、またはそれよりも大きく低減する。
【0030】
標的化変更には、点変異(すなわち、一塩基対の異なる塩基対への変換)、置換(すなわち、複数の塩基対の同一の長さの異なる配列への変換)、1つまたは複数の塩基対の挿入、1つまたは複数の塩基対の欠失および上述の配列変更の任意の組合せが限定されずに含まれる。変更は、コードされるアミノ酸が変更されるような、コード配列の一部である塩基対の変換も含んでよい。変更は、相同組換え修復機構または非相同組換え修復機構によって促進することができる。
【0031】
本明細書に記載のLNPのいずれかを含む組成物も提供される。一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の種類のLNPを含み、LNPの各種類が、代替核酸および/または代替カチオン性脂質を含む。一部の例では、カチオン性脂質は、式I~IVのいずれか1つで記載される。さらなる実施形態では、LNPは、式Vに記載されているペグ化脂質を含むことができる。一部の例では、組成物は、ウイルス粒子をさらに含む。一部の態様では、ウイルス粒子は、AAV、アデノウイルス、レンチウイルスなどである。一部の実施形態では、ウイルスはDNAを含み、さらなる実施形態では、LNPはmRNAを含み、ウイルスは本明細書に記載のDNAドナーを含む。ヌクレアーゼをコードするmRNAを含むLNP、およびDNAドナーを含むAAVを含む組成物が特に好ましい。一部の態様では、ヌクレアーゼは、工学技術で作製されたヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、MegaTAL、メガヌクレアーゼ、またはTtAgoまたはCRISPR/Cas系)である。
【0032】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、緩衝剤、安定剤などなどのさらなる組成物を含む。
【0033】
一部の実施形態では、融合タンパク質をコードするmRNAを含むLNPを含む組成物を、それを必要とする患者に単回用量として投与する。他の実施形態では、組成物を患者に1回、2回、3回またはそれよりも多く投与する。一部の実施形態では、組成物を患者に投与し、次いで、最初の投与の7日後、14日後、21日後、28日後、30日後、40日後、50日後、75日後、100日後、200日後またはそれよりも後に再投与する。さらなる実施形態では、さらなる投与を、最初の投与の1年後、2年後、5年後、もしくは10年後に、または最初の年に1回または複数回の投与を行った後に実施する。
【0034】
本発明のLNPを、それを必要とする患者を処置するために使用することができる。したがって、本発明は、それを必要とする患者を処置するための方法を含み、当該方法は、本発明のLNPを含む組成物を製剤化し、組成物を患者に投与し、その結果、疾患を予防または処置するステップを含む。他の実施形態では、本発明のLNPを、in vitroにおける細胞への形質導入のために使用することができる。したがって、本発明は、必要に応じて組成物として製剤化されたLNPを用いて細胞に形質導入して、本発明の遺伝子治療試薬を細胞に導入する方法を含む。本明細書に記載のLNPは、LNPドナーの投与前および/または後にLNPヌクレアーゼを投与することを限定されずに含め、逐次的におよび/または反復して投与することができる。
【0035】
別の態様では、本明細書に記載の核酸を含むLNP(例えば、本明細書に記載の融合タンパク質または1つもしくは複数のジンクフィンガータンパク質、切断ドメイン、転写活性化もしくは抑制ドメインおよび/もしくは本明細書に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド);本明細書に記載の目的のドナーを含むウイルス、補助試薬;ならびに必要に応じて指示および適する容器を含むキットが本明細書に記載される。キットは、1つまたは複数のヌクレアーゼまたはそのようなヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドも含むことができる。
【0036】
したがって、本発明の方法および組成物は、少なくとも以下の実施形態を含む:
【0037】
1.遺伝子治療試薬としての活性を有する1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む脂質ナノ粒子(LNP)。
【0038】
2.a)ポリヌクレオチドの1つもしくは複数が、1つもしくは複数の工学技術で作製されたヌクレアーゼ、1つもしくは複数の工学技術で作製された転写因子および/もしくは治療用タンパク質、例えば、リソソーム蓄積症もしくは凝固障害などの障害を有する被験体において欠損しているもしくは欠けているタンパク質をコードする1つもしくは複数の導入遺伝子をコードする、またはb)ポリヌクレオチドが、アンチセンスRNAをコードする、1に記載のLNP。
【0039】
3.ポリヌクレオチドが、ゲノム内にランダムに組み込まれれているか、ゲノム内に標的化様式で組み込まれれているか、または細胞内でエピソームとして発現される、1または2に記載のLNP。
【0040】
4.ヌクレアーゼまたは転写因子が、ジンクフィンガータンパク質、TAL-エフェクタードメインまたはCRISPR/Cas系の単一ガイドRNAを含み、ヌクレアーゼが、FokIまたはCasエンドヌクレアーゼドメインなどの野生型または工学技術で作製された(変異体)切断ドメインをさらに含み、転写因子が、活性化ドメインまたは抑制ドメインなどの転写制御ドメインをさらに含む、2または3に記載のLNP。
【0041】
5.ポリヌクレオチドが、DNAおよび/またはRNAを含む、1から4のいずれかに記載のLNP。
【0042】
6.RNAがmRNAであり、DNAがプラスミド、ミニ遺伝子、または直鎖状DNAである、4に記載のLNP。
【0043】
7.ヌクレアーゼをコードする第1のポリヌクレオチドおよび導入遺伝子を含む第2のポリヌクレオチドを含む、1から6のいずれかに記載のLNP。
【0044】
8.細胞でヌクレアーゼを発現させることにより、細胞のゲノムへの導入遺伝子の標的化組込みがもたらされる、7に記載のLNP。
【0045】
9.カチオン性脂質分子、ならびに必要に応じて中性脂質、荷電脂質、コレステロールおよび/もしくはそれらの類似体を含めたステロイド、ならびに/またはポリマーとコンジュゲートした脂質を含む、1から8のいずれかに記載のLNP。
【0046】
10.カチオン性脂質が、以下の式(I、II、IIIおよびIV):
【化9】
【化10】
(式中、R、R、R、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R、R、R、R、R、L、L、G、G、G、a、b、c、dおよびeは、以下に示す化合物I-5、I-6、II-9、II-11、II-36、III-25、III-45、III-49およびIV-12を含め、式(I)、(II)、(III)および(IV)のそれぞれについて本明細書で定義されている通りである):
【化11】
【化12】
【化13】
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体から選択される、9に記載のLNP。
【0047】
11.以下の構造(V):
【化14】
(式中、R、Rおよびwは、式(V)に関して本明細書で定義されている通りである)
を有するペグ化脂質、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を含む、1から10のいずれかに記載のLNP。
【0048】
12.1から11のいずれかに記載の1つまたは複数のLNPを含む医薬組成物であって、必要に応じて、異なるLNPを含む、医薬組成物。
【0049】
13.1から11のいずれかに記載の1つもしくは複数のLNPを含むまたは12に記載の医薬組成物を含む細胞またはその細胞に由来する細胞。
【0050】
14.1から11のいずれかに記載のLNPによって改変された遺伝子改変細胞またはその遺伝子改変細胞に由来する細胞であって、遺伝子改変が、点変異(すなわち、一塩基対の異なる塩基対への変換)、置換(すなわち、複数の塩基対の同一の長さの異なる配列への変換)、1つもしくは複数の塩基対の挿入、および/または1つもしくは複数の塩基対の欠失を含む、細胞。
【0051】
15.1つまたは複数のポリヌクレオチドを細胞または被験体に送達する方法であって、1から11のいずれかに記載の1つもしくは複数のLNPまたは12に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【0052】
16.細胞における目的領域を切断する方法であって、1から11のいずれかに記載の1つもしくは複数のLNPまたは12に記載の医薬組成物を送達するステップを含み、少なくとも1つのLNPが、目的領域を切断するヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む方法。
【0053】
17.目的領域が、セーフハーバー遺伝子、必要に応じてAAVS1遺伝子、アルブミン遺伝子、Rosa遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR遺伝子またはHPRT遺伝子内にある、16に記載の方法。
【0054】
18.1つまたは複数のLNPが、導入遺伝子を含むドナーを含み、導入遺伝子が、ヌクレアーゼによる切断後に細胞のゲノムに組み込まれる、15から17のいずれかに記載の方法。
【0055】
19.それを必要とする患者を処置する方法であって、1つまたは複数のLNPを15から18のいずれかに記載の方法に従って投与するステップを含む方法。
【0056】
20.in vitro、ex vivo、またはin vivoで実施される、15から19のいずれかに記載の方法。
【0057】
21.LNPおよび/または医薬組成物が、1回または複数回、必要に応じて、1回、2回、3回またはそれよりも多く投与される、15から20のいずれかに記載の方法。
【0058】
22.LNPおよび/または医薬組成物を患者に投与し、初回投与の7日後、14日後、21日後、28日後、30日後、40日後、50日後、75日後、100日後、および/または200日後またはそれよりも後に再投与する、21に記載の方法。
【0059】
23.被験体における障害を処置するための、1から11のいずれかに記載の1つもしくは複数のLNPまたは12に記載の医薬組成物の使用。
【0060】
24.LNPのポリヌクレオチドが、被験体における標的遺伝子の発現をモジュレートする転写制御因子をコードする、23に記載の使用。
【0061】
25.LNPのポリヌクレオチドの少なくとも1つが、被験体において欠損しているまたは欠けている治療用タンパク質をコードし、必要に応じて、LNPのポリヌクレオチドが、ヌクレアーゼをコードする、23に記載の使用。
【0062】
26.治療用タンパク質が、ヌクレアーゼ媒介標的化組込みによってゲノムに、必要に応じてAAVS1遺伝子、アルブミン遺伝子、Rosa遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR遺伝子またはHPRT遺伝子に組み込まれる、25に記載の使用。
【0063】
27.LNPおよび/または医薬組成物が、1回または複数回、必要に応じて、1回、2回、3回またはそれよりも多く投与される、23から26のいずれかに記載の使用。
【0064】
28.LNPおよび/または医薬組成物を患者に投与し、初回投与の7日後、14日後、21日後、28日後、30日後、40日後、50日後、75日後、100日後、および/または200日後またはそれよりも後に再投与する、21に記載の方法。
【0065】
29.1から11に記載の1つもしくは複数のLNPまたは12に記載の医薬組成物を含むキット。
【0066】
これらおよび他の態様は全体として開示に照らせば当業者には明らかになろう。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
1つまたは複数の導入遺伝子をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む脂質ナノ粒子(LNP)。
(項目2)
前記1つまたは複数の導入遺伝子が、1つもしくは複数の工学技術で作製されたヌクレアーゼ、1つもしくは複数の工学技術で作製された転写因子、治療用タンパク質をコードする1つもしくは複数の導入遺伝子、またはこれらの組合せをコードする、項目1に記載のLNP。
(項目3)
前記ポリヌクレオチドが、ゲノム内にランダムに組み込まれれているか、ゲノム内に標的化様式で組み込まれれているか、または細胞内でエピソームとして発現される、項目1または項目2に記載のLNP。
(項目4)
前記ヌクレアーゼおよび前記転写因子が、ジンクフィンガータンパク質を含むDNA結合ドメイン、TAL-エフェクタードメインまたは単一ガイドRNAを含み、該ヌクレアーゼが、切断ドメインをさらに含み、該転写因子が、転写制御ドメインをさらに含む、項目2または項目3に記載のLNP。
(項目5)
前記ポリヌクレオチドが、DNA、RNAまたはその両方を含む、項目1から4のいずれかに記載のLNP。
(項目6)
前記RNAがmRNAであり、前記DNAがプラスミド、ミニ遺伝子、または直鎖状DNAである、項目5に記載のLNP。
(項目7)
ヌクレアーゼをコードする第1のポリヌクレオチドおよび導入遺伝子を含む第2のポリヌクレオチドを含む、項目1から6のいずれかに記載のLNP。
(項目8)
前記LNPを細胞に投与し、そこで前記ヌクレアーゼを発現させることにより、細胞のゲノムへの前記導入遺伝子の標的化組込みがもたらされる、項目7に記載のLNP。
(項目9)
カチオン性脂質分子および必要に応じて中性脂質、荷電脂質、ステロイド、ステロイド類似体、ポリマーとコンジュゲートした脂質、またはこれらの組合せを含む、項目1から8のいずれかに記載のLNP。
(項目10)
前記カチオン性脂質が、以下の式(I、II、IIIおよびIV):
【化57】

(式中、式(I)に関して、
およびLは、それぞれ独立に、-O(C=O)-、(C=O)O-または炭素-炭素二重結合であり;
1aおよびR1bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R1aがHもしくはC~C12アルキルであり、R1bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
2aおよびR2bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R2aがHもしくはC~C12アルキルであり、R2bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR2bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
3aおよびR3bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R3aがHもしくはC~C12アルキルであり、R3bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR3bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
4aおよびR4bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R4aがHもしくはC~C12アルキルであり、R4bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
およびRは、それぞれ独立に、メチルまたはシクロアルキルであり;
は、各出現につき、独立に、HまたはC~C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、非置換C~C12アルキルである;またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、窒素原子を1つ含む5員、6員または7員複素環式環を形成しており;
aおよびdは、それぞれ独立に、0から24までの整数であり;
bおよびcは、それぞれ独立に、1から24までの整数であり;
eは、1または2であり、
式(II)に関して、
およびLは、それぞれ独立に、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、-NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-、-NRC(=O)O-または直接結合であり;
は、C~Cアルキレン、-(C=O)-、-O(C=O)-、-SC(=O)-、-NRC(=O)-または直接結合であり;
は、-C(=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR-または直接結合であり;
は、C~Cアルキレンであり;
は、HまたはC~C12アルキルであり;
1aおよびR1bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R1aがHもしくはC~C12アルキルであり、R1bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
2aおよびR2bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R2aがHもしくはC~C12アルキルであり、R2bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR2bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
3aおよびR3bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R3aがHもしくはC~C12アルキルであり、R3bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR3bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
4aおよびR4bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R4aがHもしくはC~C12アルキルであり、R4bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
およびRは、それぞれ独立に、Hまたはメチルであり;
は、C~C20アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C12アルキルである、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に5員、6員または7員複素環式環を形成しており;
a、b、cおよびdは、それぞれ独立に、1から24までの整数であり;
xは、0、1または2であり、
式(III)に関して、
またはLの一方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-、であり、LまたはLの他方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-もしくは-NRC(=O)O-または直接結合であり;
およびGは、それぞれ独立に、非置換C~C12アルキレンまたはC~C12アルケニレンであり;
は、C~C24アルキレン、C~C24アルケニレン、C~Cシクロアルキレン、C~Cシクロアルケニレンであり;
は、HまたはC~C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C24アルキルまたはC~C24アルケニルであり;
は、H、OR、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NRC(=O)Rであり;
は、C~C12アルキルであり;
は、HまたはC~Cアルキルであり;
xは、0、1または2であり、
式(IV)に関して、
またはLの一方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-であり、LまたはLの他方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-もしくは-NRC(=O)O-または直接結合であり;
およびGは、それぞれ独立に、非置換C~C12アルキレンまたはC~C12アルケニレンであり;
は、C~C24アルキレン、C~C24アルケニレン、C~Cシクロアルキレン、C~Cシクロアルケニレンであり;
は、HまたはC~C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C24アルキルまたはC~C24アルケニルであり;
は、H、OR、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NRC(=O)Rであり;
は、C~C12アルキルであり;
は、HまたはC~Cアルキルであり;
xは、0、1または2である)
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体から選択される、項目9に記載のLNP。
(項目11)
以下の化合物I-5、I-6、II-9、II-11、II-36、III-25、III-45、III-49またはIV-12:
【化58】
【化59】

のうちの1つを含む、項目10に記載のLNP。
(項目12)
式(V)
【化60】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子を12個から16個まで含む直鎖状の飽和アルキル鎖であり、wは、42~55である)
の構造を有するペグ化脂質を含む、項目1から11のいずれかに記載のLNP。
(項目13)
項目1から12のいずれかに記載の1つまたは複数のLNPを含む医薬組成物。
(項目14)
ウイルスベクターをさらに含む、項目13に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記ウイルスベクターが、導入遺伝子ドナーを含む、項目14に記載の医薬組成物。
(項目16)
項目1に記載の1つまたは複数のLNPを含む細胞。
(項目17)
項目16に記載の細胞に由来する細胞。
(項目18)
前記細胞が遺伝子改変されており、該遺伝子改変が、挿入、欠失またはその両方を含む、項目16または項目17に記載の細胞。
(項目19)
1つまたは複数のポリヌクレオチドを細胞または被験体に送達する方法であって、項目1から12のいずれかに記載の1つまたは複数のLNPを該細胞または該被験体に投与するステップを含む方法。
(項目20)
細胞のゲノム内の目的領域を切断する方法であって、項目1から12のいずれかに記載の1つまたは複数のLNPを該細胞に送達するステップを含み、少なくとも1つのLNPが、該ゲノムを切断するヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、方法。
(項目21)
前記目的領域が、セーフハーバー遺伝子内にある、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記セーフハーバー遺伝子が、AAVS1遺伝子、アルブミン遺伝子、Rosa遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR遺伝子またはHPRT遺伝子である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記1つまたは複数のLNPが、導入遺伝子を含むドナーを含み、該導入遺伝子が、前記ヌクレアーゼによる切断後に前記細胞のゲノム内に組み込まれることが可能である、項目20または21に記載の方法。
(項目24)
前記1つまたは複数のLNPがヌクレアーゼを含み、導入遺伝子を含むウイルスベクターを投与することをさらに含み、該導入遺伝子が、該ヌクレアーゼによる切断後に前記細胞のゲノム内に挿入されることが可能である、項目20に記載の方法。
(項目25)
疾患を処置する方法における使用のための、項目1から12のいずれかに記載の1つもしくは複数のLNPまたは項目13から15のいずれかに記載の医薬組成物であって、該方法は、該1つもしくは複数のLNPまたは医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与して、それを必要とする被験体における該疾患を処置する改変細胞を生成するステップを含む、LNPまたは医薬組成物。
(項目26)
少なくとも1つのLNPが、セーフハーバー遺伝子内のゲノムを切断するポリヌクレオチドを含み、前記LNPの少なくとも1つが、該セーフハーバー遺伝子に組み込まれ、前記被験体において前記改変細胞によって発現されるドナー導入遺伝子を含む、項目25に記載の使用のためのLNPまたは医薬組成物。
(項目27)
少なくとも1つのLNPが、前記被験体における細胞のゲノムを切断するポリヌクレオチドを含み、前記方法が、ドナー導入遺伝子を含むウイルスベクターを該被験体に投与するステップをさらに含み、該ドナー導入遺伝子が該ゲノムの切断後に該被験体の該細胞内に組み込まれ、必要に応じて、該LNPおよびウイルスベクターが逐次的におよび/または反復して投与される、項目25に記載の使用のための医薬組成物のLNP。
(項目28)
in vitro、ex vivo、またはin vivoで実施される、項目19から24のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記LNPが、2回またはそれよりも多く投与される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記LNPが、患者に投与され、最初の投与の7日後、14日後、21日後、28日後、30日後、40日後、50日後、75日後、100日後、200日後もしくはその後に、またはこれらの組合せで再投与される、項目23または24に記載の方法。
(項目31)
項目1から12のいずれかに記載の1つまたは複数のLNPまたは項目13から15までのいずれかに記載の医薬組成物を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1A-1F】図1Aから1Fは、例示的なZFNをコードする核酸を含むLNPのin vivo投与の結果を示すグラフである。図1Aは、混合し、カチオン性脂質I-6を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに様々な用量で注射し、肝臓を採取した、別々の(個々の)30724 ZFN mRNAおよび30725 ZFN mRNA(二重HBB 3’UTR;25% 2チオウリジン(2tU)および25% 5メチルシトシン(5mC)ヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬を示す。この試験のための動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図1Bは、混合し、カチオン性脂質I-6を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに3mg/kgで注射し、肝臓を採取した、別々の30724 ZFN mRNAおよび30725 ZFN mRNA(二重HBB 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の投薬の結果を示す。この試験のための動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図1Cは、混合し、LNP製剤I-6に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、30724および30725(別々のmRNA)または48641および31523(別々のmRNA)ZFN mRNA(二重HBB 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)のいずれかの単回投薬の結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図1Dは、混合し、カチオン性脂質I-6を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、二重HBBまたはWPRE 3’UTRのいずれかを有する1つの2A連結48641および31523 ZFN mRNA(25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図1Eは、混合し、カチオン性脂質I-6またはI-5を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、別々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図1Fは、混合し、カチオン性脂質I-5を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに様々な用量で注射し、肝臓を採取した、別々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。示されている全てのデータについて、「二重HBB 3’UTR」は、2コピーのヒトベータグロビン遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)を指す(詳細については実施例Xを参照のこと);「25% 2tU」は、25%のプソイドウリジンを含むmRNAを指す;「25% 5mM C」は、25%のメチルシチジンを含むmRNAを指す;「ARCAでキャッピングされた」は、ARCA(抗リバースキャップ類似物)キャップを含むmRNAを指す;「シリカ精製された」は、mRNAを精製するために使用された方法を指す(実施例2を参照のこと);「WPRE」は、mRNAが追加の安定性のためにWPREステムループ構造を含む、ウッドチャック転写後制御エレメントとして公知のRNA構造を意味する。全てのグラフにおいて、個々のデータ点は個々のマウスを表す。データから、I-6またはI-5カチオン性脂質を用いて製剤化した場合、ZFN対30724/30725および48641/31523を含むLNPにより、マウス肝臓における切断を誘導することができることが実証される。
【0068】
図2A-2D】図2Aから2Dは、LNPを含むI-5およびII-9カチオン性脂質およびヌクレアーゼをコードするmRNAのさらなる最適化試験についての結果を比較したグラフである。図2Aは、混合し、カチオン性脂質I-5またはII-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに1mg/kgまたは3mg/kgで注射し、肝臓を採取した、ZFN 48641および31523をコードするmRNAを含むLNP(mRNAは、WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換を含み;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたものであった)を用いた処置についてのヌクレアーゼ活性を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図2Bは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、別々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(28日間隔)についての結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図2Cは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、別々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCまたは25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。図2Dは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、別々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔)についての結果を示す。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。
【0069】
図3A-3C】図3Aから3Cは、精製スキームおよび異なるmRNA組成およびキャップを最適化するための実験からの結果を示すグラフである。図3Aは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに3.5mg/kgで注射し、肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換)の反復投薬(14日間隔)を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。図3Bは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1)の反復投薬(14日間隔)についての結果を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。図3Cは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換(白抜きの丸)またはpU置換なし(黒塗りの丸);示されている異なるキャップを含む、シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔)からの結果を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。
【0070】
図4A-4B】図4Aおよび4Bは、LNPを介して送達されたヌクレアーゼの活性に対する免疫抑制の影響を試験する実験からの結果を示すグラフである。図4Aは、混合し、カチオン性ペプチドII-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔)からの結果を示す。図4Bは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射し、肝臓を採取した、個々の(別々の)48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;Cap1;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。動物を、デキサメタゾンを用いて前処置したか、またはSolu-medrol(登録商標)(コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム)を用いてLNP投薬の1日前に処置し、次いで、さらに3日間、毎日処置した。
【0071】
図5A-5B】図5Aおよび5Bは、LNPを介して送達されたヌクレアーゼのin vitro活性を示すグラフである。図5Aは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、Hepa1-6細胞培養物に様々な用量で添加した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;野生型残基または25% pUヌクレオシド置換;示されている通りARCAまたはCap1でキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬によるヌクレアーゼ活性を示す。図5Bは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、Hepa1-6肝細胞培養物に様々な用量で添加した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(マウスアルブミン)、59771 ZFN mRNAおよび59790 ZFN mRNA(マウスTTR)、または58780 ZFN mRNAおよび61748 ZFN mRNA(マウスPCSK9)(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の単回投薬によるヌクレアーゼ活性を示す。
【0072】
図6A-6D】図6Aから6Dは、LNPを介して送達された、マウスアルブミンまたはTTRを標的とするヌクレアーゼのin vivo投薬からの結果を示す。図6Aは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに0.8mg/kgで注射し、2回投薬後または4回投薬後に肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(マウスアルブミン)または59771 ZFN mRNAおよび59790 ZFN mRNA(マウスTTR)(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔で合計4回の投薬)の結果を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。図6Bは、処置後の血漿中のTTRを決定するためのELISAの結果を示す。図6Aに示されているマウスから血漿を収集した。図6Cは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに0.8mg/kgで注射し、2回投薬後または4回投薬後に肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(マウスアルブミン)または58780 ZFN mRNAおよび61748 ZFN mRNA(マウスPCSK9)(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔で合計4回の投薬)からの結果を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。図6Dは、処置後の血漿中のPCSK9を決定するためのELISAの結果を示す。図6Cに示されているマウスから血漿を収集した。
【0073】
図7A-7B】図7Aおよび7Bは、IDS遺伝子のアルブミン遺伝子座への標的化組込みの結果を示すグラフである。図7Aは、ヌクレアーゼの活性を示す。混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに様々な用量で、ヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と一緒に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の単回投薬。IDS導入遺伝子は、マウスアルブミン遺伝子内のZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを含んだ。動物をデキサメタゾンで前処置した。ヌクレアーゼ活性を決定するためのインデル分析のために肝臓を採取した。図7Bは、図7Aに示されているマウスにおけるIDS活性を示すグラフである。どちらのグラフにおいても、いずれのデータ点も個々のマウスを表す。
【0074】
図8A-8F】図8Aから8Fは、導入遺伝子組込みのためにIVPRPアプローチを使用したヌクレアーゼ活性についての、LNPを使用したさらなる試験からのグラフである。図8Aは、混合し、カチオン性脂質I-5を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV6またはAAV8、1.5×1012の1日後(前送達)またはそれと同時に(同時送達)のいずれかで注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tU&25% 5mCヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図8Bは、図8Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるIDS活性を示すグラフである。図8Cは、混合し、カチオン性脂質I-5またはII-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに、2mg/kgで、ヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と同時に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCまたは25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬の結果を示す。ドナーは、アルブミン遺伝子内のZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを含んだ。動物をデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図8Dは、図8Cに記載されているマウスの血漿において見出されたIDS活性のグラフである。図8Eは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに、2mg/kgで、ヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と同時に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNAまたは48652 ZFN mRNAおよび31527 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基または25% pUヌクレオシド置換;ARCAまたはCap1でキャッピングされたもの;シリカまたはHPLCで精製されたもの)の単回投薬によるヌクレアーゼ活性結果を示すグラフである。ドナーは、アルブミン遺伝子内のZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有した。動物をデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図8Fは、図8Eに記載されているマウスから収集された血漿におけるIDS活性を示すグラフである。
【0075】
図9A-9B】図9Aおよび9Bは、LNPヌクレアーゼ送達を用いたIVPRPアプローチの結果を示すグラフである。図9Aは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに、2mg/kgで、ヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と同時に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基または25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の単回投薬を使用したヌクレアーゼ活性の結果を示す。ドナーは、アルブミン遺伝子内のZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを含んだ。動物を、デキサメタゾンを用いてLNP投薬の直前に前処置したか、または、投薬の直前および投薬後さらに3日間にわたって処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図9Bは、図9Aに示されているマウスから収集された血漿におけるIDS活性を示す。
【0076】
図10A-10B】図10Aおよび10Bは、LNP製剤中のカチオン性脂質を変動させ、第IX因子(FIX)ドナーを使用したIVPRPアプローチを使用した結果を示すグラフである。図10Aは、混合し、カチオン性脂質II-9またはI-5を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgまたは3.5mg/kgで、ヒトFIX導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と同時に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の単回投薬についてのヌクレアーゼ活性の結果を示す。FIXドナーは、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを含んだ。動物をLNP投薬の直前にデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図10Bは、図10Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるFIX活性の結果を示す。
【0077】
図11A-11D】図11Aから11Dは、IVPRPアプローチにおいて反復投薬を使用した結果を示すグラフである。図11Aは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔)後のヌクレアーゼ活性を示すグラフである。第1の投薬には、アルブミン遺伝子内のZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012の同時送達も含めた。動物を各LNP投薬の前にデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図11Bは、図11Aに示されているマウスから収集された血漿において検出されたIDS活性を示すグラフである。図11Cは、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)の反復投薬(7日間隔)のヌクレアーゼ活性の結果を示すグラフである。第1の投薬には、アルブミン遺伝子内のZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012の同時送達も含めた。動物を各LNP投薬の前にデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。図11Dは、図11Cに記載されているマウスから収集された血漿におけるIDS活性を示す。
【0078】
図12図12は、混合し、カチオン性脂質II-9またはI-5を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに様々な用量で注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;HPLCで精製されたもの)の単回投薬後のin vivoにおけるヌクレアーゼ活性を示すグラフである。動物はデキサメタゾンで前処置しなかった。インデル分析のために注射部位周囲の皮膚を採取した。
【0079】
図13図13は、混合し、LNP製剤II-9、II-11、またはIII-45に製剤化し、マウスに1mg/kgで注射し、7日後に肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の反復投薬の結果を示すグラフである。動物(全て雌、絶食させていない)をデキサメタゾンで前処置した(5mg/kg、LNP投薬の30分前に)。
【0080】
図14A-14C】図14A~14Cは、ZFNを含むLNPの単回投薬後の、切断活性および導入遺伝子発現ならびに肝機能をアッセイしたデータを示すグラフである。図14Aは、混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに様々な用量で、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と一緒に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の単回投薬についてのデータを示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。投薬の28日後にインデル分析のために肝臓を採取した。図14Bは、図14Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるIDS活性アッセイを示す。図14Cは、投薬の1日後に図14Aに記載されているマウスから収集された血清における肝機能検査(LFT)の結果を示す。「LFT」は、肝機能検査を指す;「ALT」は、アラニントランスアミナーゼを指す;「AST」は、アスパラギン酸トランスアミナーゼを指す。結果から、in vivoにおける用量依存的な切断ならびに用量依存的なIDS導入遺伝子の発現が実証された。さらに、LNPで動物を処置することにより、肝機能にはいかなる注目すべき変化も引き起こされなかった。
【0081】
図15図15は、IDS導入遺伝子の用量依存的な活性を示すグラフである。混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに、0.5mg/kgで、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするAAV8と一緒に、様々なベクターゲノム(vg)用量で注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の単回投薬。動物をデキサメタゾンで前処置した。血漿を投薬の28日後に収集し、IDS活性アッセイについて分析した。データから、血漿中で測定されたIDS活性の量はAAV IDS導入遺伝子ドナー用量依存的応答を示すことが実証された。
【0082】
図16図16は、混合し、LNP製剤に製剤化し、マウスに0.5mg/kg(シリカ精製されたmRNAを使用、黒塗りの四角で示されている)または2mg/kg(HPLCで精製されたmRNAを使用、白抜きの丸で示されている)で注射し、肝臓を採取した、ZFN 48641および31523をコードするmRNAを含むLNP(mRNAは、WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1を含んだ)を含有するII-9カチオン性脂質の6回の反復投与後の結果を示すグラフである。動物をデキサメタゾンで前処置した(5mg/kg、LNP投薬の30分前に)。対照動物が「PBS」として示されている(黒塗りの丸)。
【0083】
図17A-17B】図17Aおよび17Bは、混合し、LNP製剤に製剤化し、マウスに2.0mg/kgで注射し、肝臓、骨髄、および脾臓を採取した、ZFN 48641および31523をコードするmRNAを含むLNP(mRNAは、WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1を含んだ、シリカ精製されたもの)を含有するII-9カチオン性脂質の単回投与後のゲノム改変の生体内分布を示すグラフである。動物をデキサメタゾンで前処置した(5mg/kg、LNP投薬の30分前に)。図17Aは、示されている器官(肝臓、脾臓、骨髄)におけるゲノム改変(インデル)を示す。図17Bは、屠殺し、肝臓を採取する前に処理しなかったか(無灌流)または肝臓を採取する前に緩衝生理食塩水を経心的に灌流させて肝臓内の血液細胞を除去した(無選別)マウスのゲノム改変を示す。灌流を行った肝臓の画分をコラゲナーゼで消化して単一細胞懸濁液を作製し、次いで、クッパー細胞特異的マーカーおよび内皮細胞特異的マーカーを用いて蛍光免疫染色した。次いで、染色された細胞を内皮細胞マーカー陽性、クッパー細胞マーカー陽性、またはマーカー陰性(肝細胞)細胞集団にFACSで選別した。次いで、これらの選別された細胞からゲノムDNAを採取し、ゲノム改変(インデル)について分析した。
【0084】
図18図18は、混合し、LNP製剤に製剤化し、マウスに0.5mg/kgで注射し、肝臓を採取した、ZFN 48641および31523をコードする25% pU置換されたまたは改変されていないmRNA(mRNAは、WPRE 3’UTR;Cap1を含み、シリカ精製されたものであった)を含むLNPを含有するII-9カチオン性脂質の単回投与後のゲノム改変(%インデル)を示すグラフである。動物をデキサメタゾンで前処置した(5mg/kg、LNP投薬の30分前に)。次いで、ゲノムDNAを採取し、実施例2に記載の通りゲノム改変(インデル)について分析した。
【0085】
図19図19は、混合し、LNP製剤に製剤化し、マウスに0.5mg/kgで注射し、肝臓を採取した、ZFN 48641および31523をコードする25% pU置換されたまたは改変されていないmRNA(mRNAは、WPRE 3’UTR;Cap1を含み、シリカ精製されたものであった)を含むLNPを含有するII-9カチオン性脂質の単回投与後のゲノム改変を示すグラフである。動物をデキサメタゾンで前処置した(5mg/kg、LNP投薬の30分前に)。次いで、ゲノムDNAを採取し、実施例2に記載の通りゲノム改変(インデル)について分析した。
【0086】
図20A-20B】図20Aから20Cは、ZFNを含むLNPの単回用量または複数回用量およびヒトIDS導入遺伝子ドナーを含むAAVの単回投薬後の切断活性および導入遺伝子発現データを示すグラフである。図20Aは、混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに、0.5mg/kgで、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8またはAAV6 1.5×1012と一緒に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;HPLCで精製されたもの)の単回投薬および複数回投薬についてのデータを示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。LNPを反復投薬した群には7日間隔で投薬した。最初の投薬の35日後にインデル分析のために肝臓を採取した。図20Bは、示されている条件下で処置した被験体の血漿におけるIDS活性アッセイを示す。図20Cは、図20Aに記載されているマウスから収集された、示されている組織(肝臓、脾臓、腎臓、骨髄および脳)における示されている条件下でのIDS活性アッセイを示す。結果から、in vivoにおける用量依存的な切断ならびに用量依存的なIDS導入遺伝子の発現が実証された。
図20C図20Aから20Cは、ZFNを含むLNPの単回用量または複数回用量およびヒトIDS導入遺伝子ドナーを含むAAVの単回投薬後の切断活性および導入遺伝子発現データを示すグラフである。図20Aは、混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに、0.5mg/kgで、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8またはAAV6 1.5×1012と一緒に注射した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;HPLCで精製されたもの)の単回投薬および複数回投薬についてのデータを示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。LNPを反復投薬した群には7日間隔で投薬した。最初の投薬の35日後にインデル分析のために肝臓を採取した。図20Bは、示されている条件下で処置した被験体の血漿におけるIDS活性アッセイを示す。図20Cは、図20Aに記載されているマウスから収集された、示されている組織(肝臓、脾臓、腎臓、骨髄および脳)における示されている条件下でのIDS活性アッセイを示す。結果から、in vivoにおける用量依存的な切断ならびに用量依存的なIDS導入遺伝子の発現が実証された。
【0087】
図21図21は、異なるmRNA組成およびポリA長を使用した最適化試験からの結果を示すグラフである。図21は、混合し、カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに0.5mg/kgで注射し、投薬の7日後に肝臓を採取した、示されている通りタンパク質コード配列におけるポリA長およびウリジンの組成が異なる個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;シリカ精製されたもの)の反復投薬(14日間隔)を示す。「64polyA」、「128polyA」、および「193polyA」は、それぞれ、64、128または193の長さのポリA領域を指し、「ウリジン枯渇」は、コドンのゆらぎ位置からウリジンが欠失したパーセンテージのポリヌクレオチドを指す(実施例を参照のこと)。グラフ内の幾何的形状は、個々の対象を示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。結果から、より長いポリA尾部、および、得られる翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を同じに保持しながらできるだけ多くのウリジンの構築物を枯渇させることにより、最高レベルの遺伝子改変がもたらされることが実証される。
【0088】
図22A-22B】図22Aから22Fは、マウスTTR遺伝子のエクソン2を標的とする種々のZFNを含むLNPの単回用量または複数回用量後の切断活性、タンパク質ノックダウン、肝機能および炎症性サイトカイン分泌を示すグラフである。図22Aは、混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに様々な用量で注射した、個々の69121/69128 ZFN mRNAおよび69052/69102 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;シリカ精製されたもの;193 ポリA尾部;ウリジン枯渇)の単回投薬についてのオンターゲットの切断データを示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。最初の投薬の35日後に、インデルのために肝臓を採取し、タンパク質ノックダウン分析のためにヘパリン添加血漿を採取した。図22Bは、図22Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるマウスTTR ELISAアッセイを示す。図22Cおよび22Dは、投薬の1日後に図22Aに記載されているマウスから収集された血清における肝機能検査(LFT)の結果を示す。「LFT」は、肝機能検査を指す;「ALT」は、アラニントランスアミナーゼを指す;「AST」は、アスパラギン酸トランスアミナーゼを指す。図22Eおよび22Fは、それぞれ22Aの肝臓と同時に収集したオフターゲットの器官である脾臓および腎臓におけるゲノム編集を示すグラフである。結果から、in vivoにおける用量依存的なオンターゲットの切断と最小のオフターゲットの切断、ならびに用量依存的なmTTRタンパク質発現のノックダウンが実証された。さらに、LNPで動物を処置することにより、肝機能にはいかなる注目すべき変化も引き起こされなかった。
図22C-22D】図22Aから22Fは、マウスTTR遺伝子のエクソン2を標的とする種々のZFNを含むLNPの単回用量または複数回用量後の切断活性、タンパク質ノックダウン、肝機能および炎症性サイトカイン分泌を示すグラフである。図22Aは、混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに様々な用量で注射した、個々の69121/69128 ZFN mRNAおよび69052/69102 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;シリカ精製されたもの;193 ポリA尾部;ウリジン枯渇)の単回投薬についてのオンターゲットの切断データを示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。最初の投薬の35日後に、インデルのために肝臓を採取し、タンパク質ノックダウン分析のためにヘパリン添加血漿を採取した。図22Bは、図22Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるマウスTTR ELISAアッセイを示す。図22Cおよび22Dは、投薬の1日後に図22Aに記載されているマウスから収集された血清における肝機能検査(LFT)の結果を示す。「LFT」は、肝機能検査を指す;「ALT」は、アラニントランスアミナーゼを指す;「AST」は、アスパラギン酸トランスアミナーゼを指す。図22Eおよび22Fは、それぞれ22Aの肝臓と同時に収集したオフターゲットの器官である脾臓および腎臓におけるゲノム編集を示すグラフである。結果から、in vivoにおける用量依存的なオンターゲットの切断と最小のオフターゲットの切断、ならびに用量依存的なmTTRタンパク質発現のノックダウンが実証された。さらに、LNPで動物を処置することにより、肝機能にはいかなる注目すべき変化も引き起こされなかった。
図22E-22F】図22Aから22Fは、マウスTTR遺伝子のエクソン2を標的とする種々のZFNを含むLNPの単回用量または複数回用量後の切断活性、タンパク質ノックダウン、肝機能および炎症性サイトカイン分泌を示すグラフである。図22Aは、混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに様々な用量で注射した、個々の69121/69128 ZFN mRNAおよび69052/69102 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基;Cap1;シリカ精製されたもの;193 ポリA尾部;ウリジン枯渇)の単回投薬についてのオンターゲットの切断データを示す。動物をデキサメタゾンで前処置した。最初の投薬の35日後に、インデルのために肝臓を採取し、タンパク質ノックダウン分析のためにヘパリン添加血漿を採取した。図22Bは、図22Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるマウスTTR ELISAアッセイを示す。図22Cおよび22Dは、投薬の1日後に図22Aに記載されているマウスから収集された血清における肝機能検査(LFT)の結果を示す。「LFT」は、肝機能検査を指す;「ALT」は、アラニントランスアミナーゼを指す;「AST」は、アスパラギン酸トランスアミナーゼを指す。図22Eおよび22Fは、それぞれ22Aの肝臓と同時に収集したオフターゲットの器官である脾臓および腎臓におけるゲノム編集を示すグラフである。結果から、in vivoにおける用量依存的なオンターゲットの切断と最小のオフターゲットの切断、ならびに用量依存的なmTTRタンパク質発現のノックダウンが実証された。さらに、LNPで動物を処置することにより、肝機能にはいかなる注目すべき変化も引き起こされなかった。
【0089】
図23図23は、混合し、中間のアミノ脂質(N):mRNA(P)比でLNP製剤II-9、II-36、III-25、III-45、III-49、またはIV-12に製剤化し、マウスに0.5mg/kgで注射し、7日後に肝臓を採取した、個々の48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)の反復投薬の結果を示すグラフを示す。製剤II-9を、低N:P比および高N:P比、ならびに中間のN:P比であるが約100nmのより大きなLNPでも製剤化した。「N:P比」は、組成物中の窒素(N)のリン酸(P)に対する比である。Nは、荷電脂質内の窒素を表し、Pは、核酸骨格上のリン酸を表す。したがって、「高N:P」製剤は、低N:P製剤よりも、核酸に対して脂質をより多く有する。動物(全て雄、注射前に終夜絶食させた)をデキサメタゾンで前処置した(5mg/kg、LNP投薬の30分前に)。
【発明を実施するための形態】
【0090】
詳細な説明
本明細書で、ヌクレアーゼを細胞に送達するための方法および組成物が開示される。これらの方法は、カチオン性脂質および必要に応じてペグ化脂質を含む新規の脂質ナノ粒子(LNP)の使用を含む。ヌクレアーゼをコードするmRNAを送達するためにLNPの実施形態が使用され、ここで、mRNAは、mRNA配列内に種々のcap(ARCA、Cap1、Cap2またはCap0)および/または種々のヌクレオシド組成を含むことができる。ZFNをコードするmRNAを含むLNPを使用して、細胞をin vitroおよびin vivoで処置することができる。動物では、LNPをドナーと同時投薬し、したがって、LNPによって送達されるヌクレアーゼをドナーの標的化組込みに向けることができる。
【0091】
一般
本明細書に開示される方法の実施、ならびに組成物の調製および使用は、別途指示がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAおよび当技術分野の範囲内である関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、文献において詳細に説明される。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A
LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989
年および第3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期の最新版;シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY、Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、第304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、第1
19巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)、Humana Press、Totowa、19
99年を参照のこと。
【0092】
定義
「遺伝子治療試薬」または「遺伝子治療ポリヌクレオチド」は、細胞における遺伝子発現をモジュレートするために使用される試薬である。遺伝子治療試薬は、ヌクレアーゼおよび転写因子を含むことができ、試薬は、遺伝子と相互作用してその発現をモジュレートする。一部の実施形態では、ヌクレアーゼを、遺伝子内の特異的な配列を切断するように工学技術で作製し、他の実施形態では、工学技術で作製された転写因子を使用して所望の遺伝子を活性化または抑制する。一部の実施形態では、遺伝子治療試薬は、特異的なドナー分子、例えば、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子、導入遺伝子の断片、ヌクレアーゼまたは転写因子も含むことができる。
【0093】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は互換的に使用され、直鎖状または環状の立体配座の、および一本鎖または二本鎖の形のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限するものと解釈されるべきでない。これらの用語は、天然のヌクレオチドならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されるヌクレオチドの公知の類似体を包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有する;すなわち、Aの類似体はTと塩基対合する。
【0094】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または改変誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0095】
「結合」は、巨大分子の間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的、非共有結合的相互作用を指す。結合相互作用が全体として配列特異的である限り、該結合相互作用の全ての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要があるわけではない。そのような相互作用は、10-6-1またはそれより低い解離定数(K)によって一般的に特徴付けられる。「親和性」は、結合の強さを指す。結合親和性の増加はより低いKと相関する。「非特異的結合」は、目的の任意の分子(例えば工学技術で作製されたヌクレアーゼ)と巨大分子(例えばDNA)との間に生じる標的配列に依存しない非共有結合的相互作用を指す。
【0096】
「結合性タンパク質」は、別の分子に非共有結合で結合することができるタンパク質である。結合性タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合性タンパク質)、RNA分子(RNA結合性タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合性タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合性タンパク質の場合、それはそれ自体に結合することができ(ホモダイマー、ホモトリマーなどを形成する)、および/またはそれは1つまたは複数の異なるタンパク質の1つまたは複数の分子に結合することができる
。結合性タンパク質は、1つより多いタイプの結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質はDNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。RNAガイドヌクレアーゼ系の場合では、RNAガイドは、ヌクレアーゼ構成成分(Cas9またはCfp1)に対して異種性であり、どちらも工学技術で作製されたものであってよい。
【0097】
「DNA結合分子」は、DNAに結合することができる分子である。そのようなDNA結合分子は、ポリペプチド、タンパク質のドメイン、より大きなタンパク質内のドメインまたはポリヌクレオチドであってよい。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAであり、一方他の実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。一部の実施形態では、DNA結合分子はヌクレアーゼのタンパク質ドメイン(例えばFokIドメイン)であり、一方他の実施形態では、DNA結合分子はRNAガイドヌクレアーゼのガイドRNA構成成分(例えばCas9またはCfp1)である。
【0098】
「DNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、DNAに、例えば、1つもしくは複数のジンクフィンガーを通じてまたはそれぞれジンクフィンガータンパク質もしくはTALE内の1つもしくは複数のRVD相互作用を通じて配列特異的に結合するタンパク質またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと省略される。
【0099】
「ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質」(または、結合ドメイン)は、その構造が亜鉛イオンの配位を通して安定する結合ドメインの中のアミノ酸配列の領域である、1つまたは複数のジンクフィンガーを通して配列特異的な様式でDNAに結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質の中のドメインである。用語ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPとしてしばしば略される。
【0100】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、それぞれ反復可変性二残基(repeat variable diresidue)(RVD)を含み、そのコグネイト標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「反復単位」(「反復」とも呼ばれる)は、長さが一般的に33~35アミノ酸であり、天然に存在するTALEタンパク質の中の他のTALE反復配列と少なくとも一部の配列相同性を示す。TALEタンパク質は、反復単位内のカノニカルなまたは非カノニカルなRVDを使用して標的部位に結合するように設計することができる。例えば、その全体が本明細書に参考としてそれぞれ援用される、米国特許第8,586,526号および第9,458,205号を参照。
【0101】
ジンクフィンガーおよびTALE DNA結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガータンパク質の認識ヘリックス領域の工学技術(1つまたは複数のアミノ酸を変更)を介して、またはDNA結合(「反復可変性二残基」またはRVD領域)に関与するアミノ酸の工学技術によって、所定のヌクレオチド配列に結合するように「工学技術で作製する」ことができる。したがって、工学技術で作製されたジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。ジンクフィンガータンパク質およびTALEを工学技術で作製するための方法の非限定的例は、設計および選択である。設計されたタンパク質は、その設計/組成が合理的基準から主に生じる、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準には、既存のZFPまたはTALE設計および結合データの情報を保存するデータベース中の情報を処理するための、置換規則およびコンピュータ化アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第9,458,205号、第8,586,526号、第6,140,081号、第6,453,242号および第6,534,261号を参照、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536およびWO03/016496も参照。
【0102】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質、TALEタンパク質またはCRISPR/Cas系は、天然には見出されず、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験プロセスから主に生じる。例えば、U.S.5,789,538;U.S.5,925,523;U.S.6,007,988;U.S.6,013,453;U.S.6,200,759;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197およびWO02/099084を参照のこと。
【0103】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられている原核生物のアルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilus由来である。例えばSwartsら、同書;G. Shengら、(2013年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111巻、652頁)を参照。「TtAgo系」は、例えばTtAgo酵素による切断のためのガイドDNAを含む要求される構成成分の全てである。
【0104】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチドの間での遺伝情報の交換のプロセスを指す。この開示のために、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同組換え修復機構による細胞中の二本鎖切断の修復の間に起こるそのような交換の特殊化した形態を指す。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経たもの)の鋳型修復に「ドナー」分子を使用し、「非交叉遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々に公知であるが、その理由は、それがドナーから標的への遺伝情報の伝達をもたらすからである。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むことなく、そのような伝達は、切断された標的とドナーとの間で形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/または、ドナーが標的の一部になる遺伝情報を再合成するために使用される「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連したプロセスに関与することができる。そのような特殊化したHRは標的分子の配列の変更をしばしばもたらし、そのため、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全体が標的ポリヌクレオチドに組み入れられる。
【0105】
本開示のある特定の方法では、本明細書に記載される1つまたは複数の標的化ヌクレアーゼは、所定部位(例えば、目的の遺伝子または遺伝子座)の標的配列(例えば、細胞クロマチン)において二本鎖切断(DSB)を生じさせる。DSBは、本明細書に記載されるとおりの構築物(例えば、ドナー)の組み込みを媒介し、切断領域のヌクレオチド配列と相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを、細胞に導入することができる。DSBの存在により、ドナー配列の組込みを促進することが示された。任意選択で構築物は、切断の領域におけるヌクレオチド配列に相同性を有する。ドナー配列は物理的に組み込まれてもよいし、または代わりに、ドナーポリヌクレオチドを、相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用し、細胞クロマチンへのドナーの場合のようにヌクレオチド配列の全部または一部の導入をもたらす。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列を改変することができ、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列へと変換することができる。したがって、用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、1つのヌクレオチド配列の、別のものによる置き換え(すなわち、情報の意味での配列の置き換え)を表し、1つのポリヌクレオチドの、別のものによる物理的または化学的置き換えを必ずしも必要とするものではないことを理解することができる。
【0106】
本明細書に記載される方法のいずれでも、細胞の中のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために、工学技術で作製されたさらなるヌクレアーゼを使用することができる。
【0107】
細胞クロマチン中の目的領域における配列の標的化組換えおよび/または置き換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列による相同組換えによって変更される。切断の領域に相同性の配列が存在するならば、そのような相同組換えは細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
【0108】
本明細書に記載される方法のいずれでも、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的領域のゲノム配列に相同的であるが同一でない配列を含有することができ、それによって相同組換えを刺激して、目的領域の中に同一でない配列を挿入することができる。したがって、ある特定の実施形態では、目的領域の配列に相同性であるドナー配列の部分は、置き換えられたゲノム配列と約80から99%(または、その間の任意の整数)の間の配列同一性を呈示する。他の実施形態では、例えば、100個の連続した塩基対にわたってドナー配列とゲノム配列との間で1ヌクレオチドだけが異なる場合は、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は99%より高い。ある特定の場合には、新しい配列が目的領域に導入されるように、ドナー配列の非相同部分は、目的領域に存在しない配列を含有することができる。これらの場合には、非相同配列は、目的領域の配列に相同性または同一である、50~1,000塩基対(または、その間の任意の整数値)または1,000を超える任意数の塩基対の配列に一般的に隣接する。他の実施形態では、ドナー配列は第1の配列に非相同性であり、非相同組換え機構によってゲノムに挿入されている。
【0109】
本明細書に記載される方法のいずれも、目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化組込みによる、細胞における1つまたは複数の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用することができる。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も、提供される。
【0110】
さらに、本明細書に記載される標的化組込みの方法は、1つまたは複数の外因性配列を組み込むために使用することもできる。外因性核酸配列は、例えば、1つまたは複数の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意のタイプのコード配列もしくは非コード配列、ならびに1つまたは複数の調節エレメント(例えば、プロモーター)を含むことができる。さらに、外因性核酸配列は、1つまたは複数のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)を産生することができる。
【0111】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を限定されずに含む、様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生をもたらし得る。ある特定の実施形態では、標的化二本鎖DNA切断のために融合ポリペプチドが使用される。
【0112】
「切断半ドメイン」は、第2のポリペプチド(同一のまたは異なる)と共に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第1および第2の切断半ドメイン」、「+および-切断半ドメイン」ならびに「右および左切断半ドメイン」は互換的に使用されて、二量体化する切断半ドメインの対を指す。
【0113】
「工学技術で作製された切断半ドメイン」は、別の切断半ドメイン(例えば、別の工学技術で作製された切断半ドメイン)と絶対ヘテロダイマー(obligate heterodimer)を
形成するように改変された切断半ドメインである。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第7,888,121号;第7,914,796号;第8,034,598号;第8,623,618号および米国特許出願公開第2011/0201055号も参照されたい。
【0114】
用語「配列」は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それはDNAまたはRNAであってもよく;直鎖状、環状または分枝状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。用語「ドナー配列」は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば2から100,000,000ヌクレオチド(または、その間の任意の整数値)の間の長さ、好ましくは約100から100,000ヌクレオチド(または、その間の任意の整数)の間の長さ、より好ましくは約2000から20,000ヌクレオチド(または、その間の任意の値)の間の長さ、さらにより好ましくは、約5から約15kb(または、その間の任意の値)の間の長さであってよい。
【0115】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造物である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。大多数の真核生物の細胞クロマチンはヌクレオソームの形で存在し、ここで、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4の各々2つを含む八量体に会合した概ね150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物体によって様々な長さの)がヌクレオソームコアの間に延びる。ヒストンH1の分子は、リンカーDNAに一般的に会合している。本開示のために、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の両方の、全てのタイプの細胞核タンパク質の包含を意味するものである。細胞クロマチンには、染色体およびエピソームの両方のクロマチンが含まれる。
【0116】
「染色体」は、細胞のゲノムの全体または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、細胞のゲノムを含む全ての染色体の集合である、その核型によってしばしば特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含むことができる。
【0117】
「エピソーム」は、複製する核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む他の構造物である。エピソームの例には、プラスミド、ミニサークル(minicircle)およびある特定のウイルスゲノムが含まれる。本明細書に記載の肝臓特異的構築物は、エピソームとして維持することもでき、あるいは、細胞に安定に組み込むこともできる。
【0118】
「外因性」分子は、細胞に通常は存在しないが、1つまたは複数の遺伝的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「細胞における正常な存在」は、細胞の特定の発達段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発達の間だけに存在する分子は、成体の筋細胞に関しては外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に関しては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能バージョンまたは正常機能内因性分子の機能不全バージョンを含むことができる。
【0119】
外因性分子は、とりわけ、小分子、例えばコンビナトリアル化学プロセスによって生成されるもの、または巨大分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の改変誘導体、または上記の分子の1つまたは複数を含む任意の複合体であってよい。核酸にはDNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であってよく、直鎖状、分枝状または環状であってよく、任意の長さであってよい。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合性タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合性タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、脱ユビキチン化酵素、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼおよびヘリカーゼが限定されずに含まれる。
【0120】
外因性分子は、内因性分子と同じ種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってよい。例えば、外因性核酸は、細胞に導入される感染性のウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞に通常は存在しない染色体を含むことができる。細胞への外因性分子の導入のための方法は当業者に公知であり、脂質媒介伝達(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介伝達およびウイルスベクター媒介伝達が限定されずに含まれる。外因性分子は内因性分子と同じ種類の分子であってもよいが、細胞が由来する種と異なる種に由来してもよい。例えば、マウスまたはハムスターに本来由来する細胞株に、ヒト核酸配列を導入することができる。
【0121】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下で特定の発達段階の特定の細胞に通常存在するものである。例えば、内因性の核酸は、染色体、ミトコンドリアのゲノム、クロロプラストもしくは他のオルガネラ、または天然に存在するエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含めることができる。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「外因性核酸の生成物」は、ポリヌクレオチド生成物およびポリペプチド生成物の両方、例えば、転写産物(RNAなどのポリヌクレオチド)および翻訳産物(ポリペプチド)を包含する。
【0123】
「融合」分子は、2つまたはそれより多いサブユニット分子が、好ましくは共有結合で連結される分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子であってよいか、または異なる化学的タイプの分子であってよい。融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインと1つまたは複数の活性化ドメインとの間の融合物)および融合核酸(例えば、上に記載の融合タンパク質をコードする核酸)が限定されずに含まれる。第2のタイプの融合分子の例には、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝バインダーと核酸との間の融合物が限定されずに含まれる。用語には、ポリヌクレオチド構成成分が機能的分子を形成するようにポリペプチド構成成分と会合する系(例えば、単一ガイドRNAが遺伝子発現をモジュレートするために機能的ドメインと会合するCRISPR/Cas系)も含まれる。
【0124】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって生じることができ、ここで、ポリヌクレオチドは転写され、転写物は翻訳されて融合タンパク質を生成する。細胞におけるタンパク質の発現において、トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションが関与することもできる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法は、本開示の他の場所で提示される。
【0125】
本開示のために、「遺伝子」は、遺伝子生成物(下を参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに、そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かを問わず、遺伝子生成物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。したがって、遺伝子は、必ずしも限定されずに、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレータ、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位および遺伝子座調節領域を含む。
【0126】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子生成物への変換を指す。遺伝子生成物は、遺伝子の直接転写生成物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他のタイプのRNA)、またはmRNAの翻訳によって生成されるタンパク質であってよい。遺伝子生成物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などのプロセスによって改変されるRNA、ならびに、例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化およびグリコシル化によって改変されるタンパク質も含まれる。
【0127】
遺伝子発現の「モジュレーション」または「改変」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現のモジュレーションには、外因性分子(例えば、工学技術で作製された転写因子)の結合を介した遺伝子の改変によるものを含む遺伝子活性化および遺伝子抑制を限定されずに含めることができる。モジュレーションは、ゲノム編集(例えば、切断、変更、不活性化、ランダム変異)を介した遺伝子配列の改変によっても達成することができる。遺伝子不活性化は、本明細書に記載される改変されていない細胞と比較したときの、遺伝子発現のいかなる低減も指す。したがって、遺伝子不活性化は部分的であるか、または完全であってもよい。
【0128】
「目的領域」は、外因性分子を結合させることが望ましい、例えば、遺伝子または遺伝子の中のもしくはそれに隣接した非コード配列などの細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えのためであってもよい。目的領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または、例えば感染性ウイルスゲノムに存在することができる。目的領域は、遺伝子のコード領域の中、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写された非コード領域の中、または、コード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域の中にあってもよい。目的領域は、単一のヌクレオチド対と同じくらい小さくてもよく、または最高2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0129】
「セーフハーバー」遺伝子座は、遺伝子を宿主細胞へのいかなる有害作用もなしに挿入することができるゲノム内の遺伝子座である。最も有益なのは、挿入された遺伝子配列の発現が付近の遺伝子からのいかなるリードスルー発現によっても攪乱されないセーフハーバー遺伝子座である。ヌクレアーゼ(複数可)によって標的化されるセーフハーバー遺伝子座の非限定的例には、CCR5、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaおよびアルブミンが含まれる。例えば、米国特許第7,951,925号;同第8,771,985号;同第8,110,379号;同第7,951,925;米国特許出願公開第20100218264号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;同第20130177960号;同第20150056705号および同第20150159172を参照されたい。
【0130】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」は、好ましくはルーチンのアッセイにおいてとは限らないが、容易に測定されるタンパク質生成物を産生する任意の配列を指す。適するレポーター遺伝子には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光性または発光性のタンパク質(例えば、緑色蛍光性タンパク質、強化された緑色蛍光性タンパク質、赤色蛍光性タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに強化された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)が限定されずに含まれる。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つまたは複数のコピーが含まれる。「発現タグ」には、目的の遺伝子の発現をモニタリングするために所望の遺伝子配列に作動可能に連結することができるレポーターをコードする配列が含まれる。
【0131】
「真核」細胞には、幹細胞(多能性および多分化能)を含めた真菌細胞(例えば酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が限定されずに含まれる。
【0132】
用語「作用的連結」および「作用的に(operatively)連結する」(または、「作動可能に(operably)連結する」)は、2つまたはそれより多い構成成分(配列エレメントなど)の並置に関して互換的に使用され、ここで、構成成分は、両構成成分が正常に機能して、構成成分の少なくとも1つが他の構成成分の少なくとも1つにおいて発現する機能を媒介することができるということを可能にするように配置される。例証として、プロモーターなどの転写調節配列は、その転写調節配列が1つまたは複数の転写調節因子の存在または不在に応答してコード配列の転写のレベルを調節するならば、コード配列に作用的に連結されている。転写調節配列はコード配列と一般的にcisで作用的に連結するが、それと直接的に隣接する必要がない。例えば、たとえそれらが近接していなくても、エンハンサーはコード配列に作用的に連結している転写調節配列である。
【0133】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は対応する天然分子より多くの、より少ないまたは同じ数の残基を保有することができ、および/または1つまたは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸またはタンパク質の機能を決定するための方法(例えば、コード機能、別の核酸とハイブリダイズする能力、酵素活性アッセイ)は、当技術分野で周知である。
【0134】
ポリヌクレオチド「ベクター」または「構築物」は、遺伝子配列を標的細胞に移すことが可能である。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、「発現構築物」、「発現カセット」および「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現に誘導することが可能であり、遺伝子配列を標的細胞に移すことができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、本用語は、クローニングおよび発現ビヒクルならびに組込みベクターを含む。
【0135】
用語「被験体」および「患者」は、互換的に用いられ、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびにウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなどの実験動物、ならびに他の動物などの哺乳動物を指す。したがって本明細書において使用される用語「被験体」または「患者」は、本発明の発現カセットを投与することができる任意の哺乳動物患者または被験体を意味する。本発明の被験体は、障害を有する被験体または障害を発症するリスクがある被験体を含む。
【0136】
「到達可能な領域」は、核酸内に存在する標的部位に標的部位を認識する外因性分子が結合することができる、細胞クロマチン内の部位である。いかなる特定の理論にも制約されることなく、到達可能な領域は、ヌクレオソーム構造にパッケージされない領域であると考えられる。到達可能な領域の別個の構造は、多くの場合、化学的プローブおよび酵素的プローブ、例えばヌクレアーゼに対するその感受性によって検出することができる。
【0137】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在することを条件に、結合性分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。例えば、配列5’-GAATTC-3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼのための標的部位である。「意図された」または「オンターゲットの」配列とは、結合分子が結合することが意図された配列であり、「意図されたものではない」または「オフターゲットの」配列は、意図された標的ではない結合分子が結合するあらゆる配列を含む。
【0138】
用語「脂質」は、これだけに限定されないが、脂肪酸のエステルを含めた有機化合物の群を指し、一般に、難水溶性であるが多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする。脂質は、通常、少なくとも3つのクラスに分類される:(1)脂肪および油ならびにワックスを含む「単純脂質」;(2)リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」;および(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0139】
「ステロイド」は、以下の炭素骨格:
【化15】
を含む化合物である。
【0140】
ステロイドの非限定的な例としては、コレステロールなどが挙げられる。
【0141】
「カチオン性脂質」は、正に荷電することが可能な脂質を指す。例示的なカチオン性脂質としては、正電荷を持つ1つまたは複数のアミン基が挙げられる。好ましいカチオン性脂質はイオン化することができ、したがって、pHに応じて正に荷電した形態または中性の形態で存在することができる。カチオン性脂質のイオン化は、異なるpH条件下での脂質ナノ粒子の表面電荷に影響を及ぼす。この電荷の状態は、血漿タンパク質吸収、血液クリアランスおよび組織分布(Semple, S.C.ら、(1998年)Adv. Drug Deliv Rev
32巻:3~17頁)ならびに核酸の細胞内送達のために極めて重要なエンドソーム溶解性非二重層構造を形成する能力(Hafez, I.M.ら、(2001年)Gene Ther 8巻:1188~1196頁)に影響を及ぼす可能性がある。
【0142】
用語「脂質ナノ粒子」は、式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物または他の指定のカチオン性脂質の1つまたは複数を含む、ナノメートルほど(例えば、1~1,000nm)の少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子を、核酸(例えば、mRNA)などの活性薬剤または治療剤を目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官、腫瘍など)に送達するために使用することができる製剤中に含める。一部の実施形態では、本発明の脂質ナノ粒子は核酸を含む。そのような脂質ナノ粒子は、典型的には、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物および中性脂質、荷電脂質、ステロイドおよびポリマーとコンジュゲートした脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む。一部の実施形態では、核酸などの活性薬剤または治療剤を脂質ナノ粒子の脂質部分または脂質ナノ粒子の脂質部分の一部もしくは全部によって覆われた水性空間に包被し、それにより、酵素による分解または宿主生物体もしくは細胞の機構によって誘導される他の望ましくない影響、例えば有害な免疫応答から保護することができる。
【0143】
種々の実施形態では、脂質ナノ粒子は、平均直径が約30nmから約150nmまで、約40nmから約150nmまで、約50nmから約150nmまで、約60nmから約130nmまで、約70nmから約110nmまで、約70nmから約100nmまで、約80nmから約100nmまで、約90nmから約100nmまで、約70から約90nmまで、約80nmから約90nmまで、約70nmから約80nmまで、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、または150nmであり、実質的に無毒性である。ある特定の実施形態では、核酸は、脂質ナノ粒子中に存在する場合、水溶液中でのヌクレアーゼによる分解に対して抵抗性である。核酸、カチオン性脂質、ペグ化脂質を含む脂質ナノ粒子およびそれらの調製方法は、例えば、その全ての開示は全ての目的のためによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0142025号、同第2007/0042031号およびPCT公開WO2013/016058、同WO2013/086373、同WO2015/199952、同WO2017/004143および同WO2017/075531号に開示されている。
【0144】
用語「ポリマーとコンジュゲートした脂質」は、脂質部分およびポリマー部分の両方を含む分子を指す。ポリマーとコンジュゲートした脂質の例は、ペグ化脂質である。用語「ペグ化脂質」は、脂質部分およびポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は、当技術分野で公知であり、式(IV)の化合物、1-(モノメトキシポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG DMG)などが挙げられる。
【0145】
用語「中性脂質」は、選択されたpHにおいて非荷電または中性双性イオン性形態で存在するいくつもの脂質種のうちのいずれかを指す。生理的pHでは、そのような脂質には、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholines)、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ホスファチジルエタノールアミン、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミドなど、ステロイド、例えば、ステロールおよびそれらの誘導体などが限定されずに含まれる。中性脂質は、合成であっても天然由来であってもよい。
【0146】
用語「荷電脂質」は、有用な生理的範囲内、例えば、pH約3~pH約9で、pHに関係なく正に荷電した形態または負に荷電した形態のいずれかで存在するいくつもの脂質種のうちのいずれかを指す。荷電脂質は、合成であっても天然由来であってもよい。荷電脂質の例としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ステロールヘミスクシネート、ジアルキルトリメチルアンモニウム-プロパン(例えば、DOTAP、DOTMA)、ジアルキルジメチルアミノプロパン、エチルホスホコリン、ジメチルアミノエタンカルバモイルステロール(例えば、DC-Chol)が挙げられる。
【0147】
「アルキル」とは、炭素原子および水素原子のみからなる直鎖または分枝状炭化水素鎖基を指し、飽和または不飽和(すなわち、1つまたは複数の二重結合および/または三重結合を含有する)であり、炭素原子を1~24個有するか(C1~C24アルキル)、炭素原子を1~12有するか(C1~C12アルキル)、炭素原子を1~8個有するか(C1~C8アルキル)または炭素原子を1~6個有し(C1~C6アルキル)、分子の残りに単結合によって結合しており、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、エテニル、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどである。本明細書において具体的に別段の指定のない限り、アルキル基は、必要に応じて置換されている。
【0148】
「シクロアルキル」または「炭素環」とは、炭素原子および水素原子のみからなる安定な非芳香族単環式または多環式炭化水素基を指し、融合または架橋した環系を含むことができ、炭素原子を3~15個有し、好ましくは炭素原子を3~10個有し、飽和または不飽和であり、分子の残りに単結合によって結合している。単環基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。多環基としては、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。本明細書において具体的に別段の指定のない限り、シクロアルキル基は、必要に応じて置換されている。
【0149】
「ヘテロシクリル」または「複素環式環」とは、安定な3~18員の非芳香族環基を指し、炭素原子2~12個、ならびに窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子1~6個からなる。本明細書において具体的に別段の指定のない限り、ヘテロシクリル基は、単環系、二環系、三環系または四環系であってよく、融合または架橋した環系を含むことができ、また、ヘテロシクリル基中の窒素原子、炭素原子または硫黄原子は、必要に応じて酸化されていてもよく、窒素原子は、必要に応じて四級化されていてもよく、ヘテロシクリル基は、部分的にまたは完全に飽和していてもよい。そのようなヘテロシクリル基の例には、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソチオモルホリニル、および1,1-ジオキソチオモルホリニルが限定されずに含まれる。本明細書において具体的に別段の指定のない限り、ヘテロシクリル基は、必要に応じて置換されていてもよい。
【0150】
本明細書で使用される用語「置換」は、上記の基のいずれか(例えば、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリル)の少なくとも1つの水素原子が、例えば、これだけに限定されないが、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン原子;オキソ基(=O);ヒドロキシル基(-OH);アルコキシ基(ORa、Raは、C1~C12アルキルまたはシクロアルキルである);カルボキシル基(OC(=O)Raまたは-C(=O)ORa、Raは、H、C1~C12アルキルまたはシクロアルキルである);アミン基(NRaRb、RaおよびRbは、それぞれ独立に、H、C1~C12アルキルまたはシクロアルキルである);C1~C12アルキル基;およびシクロアルキル基などの非水素原子との結合によって置き換えられていることを意味する。一部の実施形態では、置換基は、C1~C12アルキル基である。他の実施形態では、置換基は、シクロアルキル基である。他の実施形態では、置換基は、フルオロなどのハロ基である。他の実施形態では、置換基は、オキソ基である。他の実施形態では、置換基は、ヒドロキシル基である。他の実施形態では、置換基は、アルコキシ基である。他の実施形態では、置換基は、カルボキシル基である。他の実施形態では、置換基は、アミン基である。
【0151】
「必要に応じた」または「必要に応じて」(例えば、必要に応じて置換されている)とは、その後に記載される事象または状況が生じる場合もあれば、生じない場合もあることを意味し、このような記載は、前記事象または状況が生じる例および前記事象または状況が生じない例を含む。例えば、「必要に応じて置換されているアルキル」とは、アルキル基が置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを意味し、このような記載は、置換アルキル基と置換を有さないアルキル基のどちらも含む。
【0152】
本明細書において開示される本発明の実施形態は、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物の1つまたは複数の原子を原子質量または質量数が異なる原子で置き換えることによって同位体標識された全ての薬学的に許容される化合物を含むLNPも包含することを意味する。開示されている化合物に組み入れることができる同位元素の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、亜リン酸、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位元素、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iなどが挙げられる。これらの放射標識された化合物は、例えば作用部位もしくは様式または薬理学的に重要な作用部位に対する結合親和性を特徴付けることによって化合物の効果を決定または測定することを補助するために有用であり得る。ある特定の同位体標識された構造(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物、例えば、放射性同位元素が組み入れられた化合物は、薬物および/または基質の組織分布試験において有用である。放射性同位元素トリチウム、すなわちH、および炭素-14、すなわち14Cは、それらの組み入れやすさおよび検出手段の得やすさを考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0153】
重水素、すなわちHなどのより重い同位元素を用いた置換により、より大きな代謝安定性、例えば、in vivo半減期の増大または投与量要件の低減に起因するある特定の治療上の利点をもたらすことができ、したがって、一部の場合では好ましい可能性がある。
【0154】
基質受容体占有率を調査する陽電子放射断層撮影(PET)試験においては11C、18F、15Oおよび13Nなどの陽電子放射同位元素を用いた置換が有用であり得る。同位体で標識された構造(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の化合物は、一般に、当業者に公知の従来の技法によってまたは下に詳述されている調製および実施例に記載されているものに類似したプロセスによって、以前使用されていた標識されていない試薬の代わりに適切な同位体で標識された試薬を使用して、調製することができる。
【0155】
「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」としては、これだけに限定することなく、米国食品医薬品局により、ヒトまたは家畜動物における使用に許容されるものとして認可されている任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、調味料、界面活性物質、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張化剤、溶媒、または乳化剤が挙げられる。
【0156】
「薬学的に許容される塩」は、酸付加塩および塩基付加塩のどちらも含む。
【0157】
「薬学的に許容される酸付加塩」とは、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない遊離塩基の生物学的効果および特性を保持し、例えば、これだけに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および、例えば、これだけに限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、カンファー酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸と形成される塩を指す。
【0158】
「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない遊離酸の生物学的効果および特性を保持する塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に付加することによって調製される。無機塩基に由来する塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが限定されずに含まれる。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。有機塩基に由来する塩には、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン、ならびに、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩基性イオン交換樹脂の塩が限定されずに含まれる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0159】
「医薬組成物」は、哺乳動物、例えばヒトへの生物学的に活性な化合物の送達のために当技術分野において一般に許容される本発明の化合物および媒体の製剤を指す。そのためのそのような媒体には、全ての薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤が含まれる。
【0160】
「有効量」または「治療有効量」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合に、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて処置をもたらすために十分である本発明の化合物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の脂質ナノ粒子の量は、化合物、状態およびその重症度、投与の様式ならびに処置される哺乳動物の年齢に応じて変化するが、当業者自身の知識および本開示を考慮して当業者によって日常的に決定することができる。
【0161】
本明細書において使用される「処置する」または「処置」は、目的の疾患または状態を有する哺乳動物、好ましくはヒトにおける目的の疾患または状態の処置を包含し、
(i)哺乳動物において、具体的にはそのような哺乳動物が状態になりやすい素因を有するが、それを有するとしてまだ診断されていない場合に、疾患または状態の出現を予防すること;
(ii)疾患もしくは状態を抑制すること、すなわちその発症を抑止すること;
(iii)疾患もしくは状態を緩和すること、すなわち疾患もしくは状態の退縮をもたらすこと;または
(iv)疾患もしくは状態から生じる症状を緩和すること、すなわち根底にある疾患もしくは状態に対処することなく疼痛を緩和すること
を含む。本明細書において使用される、用語「疾患」および「状態」は、互換的に使用することができる、または特定の疾病もしくは状態が公知の原因因子(そのため病因がまだ解明されていない)、したがってそれはまだ疾患としてではなく、望ましくない状態もしくは症候群としてのみ認識されていて、ある程度の具体的な症状のセットが臨床医によって同定されているという点では、異なっていてよい。がん、単一遺伝子疾患および移植片対宿主病は本明細書に記載の組成物および方法を使用して処置することができる状態の非限定的な例である。
【0162】
カチオン性脂質(例えば、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物)、またはそれらの薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の非対称の中心を含有することができ、したがって、アミノ酸に関して絶対的な立体化学の観点で(R)もしくは(S)としてまたは(D)もしくは(L)として定義することができる鏡像異性体、ジアステレオマー、および他の立体異性体が生じ得る。本発明は、そのような可能性のある全ての異性体、ならびにそれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学的に活性な(+)および(-)、(R)および(S)または(D)および(L)異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製することができる、または従来の技法、例えば、クロマトグラフィーおよび分別結晶を使用して分割することができる。個々の鏡像異性体を調製/単離するための従来の技法としては、適する光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用したラセミ化合物(または塩もしくは誘導体のラセミ化合物)の分割が挙げられる。本明細書に記載の化合物がオレフィン系二重結合または他の幾何的非対称の中心を含有する場合、および特に指定のない場合、化合物は、E幾何異性体およびZ幾何異性体の両方を含むものとする。同様に、全ての互変異性形態も含まれるものとする。
【0163】
「立体異性体」は、同じ結合によって結合した同じ原子で構成されるが、交換することができない異なる三次元構造を有する化合物を指す。本発明は、種々の立体異性体およびそれらの混合物を企図しており、その分子が、互いに重ねることができない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を包含する。
【0164】
「互変異性体」は、分子の1つの原子から同じ分子の別の原子へのプロトンシフトを指す。本発明は、任意の前記化合物の互変異性体を含む。
【0165】
「ゆらぎ位置」は、翻訳された際に得られるアミノ酸の同一性を変化させることなく代替ヌクレオチドで変化させる(置換する)ことができる、コドンをコードするmRNA内の第3のヌクレオチドと定義される。
【0166】
DNA結合分子およびドメイン
本明細書で、任意の遺伝子または目的の遺伝子座中の標的部位に特異的に結合するDNA結合ドメインを含む組成物が記載される。任意のDNA結合ドメインは、本明細書で開示される組成物および方法において使用することができ、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、CRISPR/CasヌクレアーゼのDNA結合部分(sgRNA)またはメガヌクレアーゼ由来DNA結合ドメインが含まれるがこれらに限定されない。
【0167】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように工学技術で作製されている点で、天然に存在しない。例えば、Beerliら(2002年)Nature Biotechnol.20巻:135~141頁;Paboら(2001年)Ann. Rev. Biochem.70巻:313~340頁;Isalanら(2001年)Nature Biotechnol.19巻:656~660頁;Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol.12巻:632~637頁;Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol.10巻:411~416頁;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;同第2005/0267061号(すべて本明細書にその全体が参考として援用される)を参照のこと。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0060230号に開示されているジンクフィンガータンパク質を含む(例えば、表1)。
【0168】
工学技術で作製されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。工学技術で作製する方法には、合理的なデザインおよび種々のタイプの選択が限定されずに含まれる。合理的なデザインには、例えば、三つ組(または、四つ組)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列は、特定の三つ組または四つ組配列に結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照のこと。
【0169】
ファージディスプレイおよび2ハイブリッド系を含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;および6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の増強が、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0170】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば長さが5またはそれより多くのアミノ酸のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。長さが6またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0171】
標的部位;ZFPの選択および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,081号、第5,789,538号、第6,453,242号、第6,534,261号、第5,925,523号、第6,007,988号、第6,013,453号、第6,200,759号、WO95/19431、WO96/06166、WO98/53057、WO98/54311、WO00/27878、WO01/60970、WO01/88197、WO02/099084、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0172】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば5またはそれより多いアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。6またはそれより多いアミノ酸長の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、第6,903,185号および第7,153,949号も参照。本明細書に記載されるタンパク質には、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。
【0173】
通常、本明細書に記載のLNPのZFPは、少なくとも3つのフィンガーを含む。ある特定のZFPは、4つ、5つまたは6つのフィンガーを含む。3つのフィンガーを含むZFPは、9または10ヌクレオチドを含む標的部位を典型的には認識し;4つのフィンガーを含むZFPは、12から14ヌクレオチドを含む標的部位を典型的には認識し;一方6つのフィンガーを有するZFPは、18から21ヌクレオチドを含む標的部位を認識することができる。ZFPは、転写活性化または抑制ドメインであってよい1つまたは複数の制御ドメインを含む融合タンパク質であってもよい。
【0174】
本明細書に記載のZFN-LNPは、ZFPが、その意図された標的に対する特異性が、例えば、米国特許出願第15/685,580号に記載されている通りZFP骨格に変異を導入することにより、オフターゲット部位として公知の意図されたものではない他の切断部位と比べて増大するようにさらに変更されているZFNを含むことができる。したがって、本明細書に記載の工学技術で作製された抑制因子および/または工学技術で作製されたヌクレアーゼは、それらのDNA結合ドメイン骨格領域の1つもしくは複数に変異を含むことができ、かつ/またはそれらの転写制御ドメインに1つもしくは複数の変異を含むことができる。これらのZFPは、DNA骨格上のリン酸と非特異的に相互作用し得るアミノ酸残基を除去するためにZFP DNA結合ドメイン(「ZFP骨格」)内のアミノ酸に対する変異を含むことができるが、DNA認識へリックスには変化を含まない。したがって、本発明は、ヌクレオチド標的特異性のために必要なものではないZFP骨格内のカチオン性アミノ酸残基の変異を含む。一部の実施形態では、これらのZFP骨格内の変異は、カチオン性アミノ酸残基の中性またはアニオン性アミノ酸残基への変異を含む。一部の実施形態では、これらのZFP骨格内の変異は、極性アミノ酸残基の中性または非極性アミノ酸残基への変異を含む。好ましい実施形態では、変異は、DNA結合へリックスの(-5)、(-9)位および/または(-14)位においてなされる。一部の実施形態では、ジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)に1つまたは複数の変異を含むことができる。さらなる実施形態では、マルチフィンガージンクフィンガータンパク質内の1つまたは複数のジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)に変異を含むことができる。一部の実施形態では、(-5)、(-9)および/または(-14)のアミノ酸(例えば、アルギニン(R)またはリシン(K))をアラニン(A)、ロイシン(L)、Ser(S)、Asp(N)、Glu(E)、Tyr(Y)および/またはグルタミン(Q)に変異させる。他の実施形態では、融合ポリペプチドは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインに変異を含むことができ、ここで、(-5)、(-9)および/または(-14)位のアミノ酸が上で列挙されているアミノ酸のいずれかに任意の組合せで変化している(例えば、米国特許出願第15/685,580号を参照のこと)。
【0175】
一部の実施形態ではDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ由来であってよい。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ(例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIII)の認識配列が公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~228頁;Gimbleら(1996
年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照。さらに
、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位に結合するように工学技術で作製することができる。例えば、Chevalierら(
2002年)Molec. Cell 10巻:895~905頁;Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:2952~2962頁;Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁;Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁;米国特許出願公開第20070117128号を参照のこと。
【0176】
他の実施形態ではDNA結合ドメインは、植物病原体Xanthomonas(Bochら、(2009年)Science 326巻:1509~1512頁ならびにMoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁を参照)ならびにRalston
ia(Heuerら(2007年)Applied and Environmental Microbiology 73巻(13号):4379~4384頁を参照);米国特許出願第20110301073号および第20110145940号由来のものに類似する転写活性化因子様(TAL)エフェクター(TALE)由来の工学技術で作製されたドメインを含む。Xanthomonas属の植物病原細菌は、重要な作物植物における多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、植物細胞に25を超える異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。植物転写活性化因子を模倣して植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、これらの注入されるタンパク質の1つである(Kayら(2007年)Science 318巻:648~651頁を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最も良く特徴付けられたTALEの1つは、Xanthomonas campestgris pv.VesicatoriaからのAvrBs3である(Bonasら(1989年)Mol Gen Genet 218巻:127~136頁およびWO2010079430を参照のこと)。TALEはタンデムリピートの集中型ドメイン(centralized domain)を含有し、各リピートは概ね34アミノ酸を
含有し、それらはこれらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である。さらに、それらは核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(レビューについては、Schornack Sら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256~272
頁を参照のこと)。さらに、植物病原細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum生物型(biovar)1菌株GMI1000および生物型4菌株RS1000において、XanthomonasのAvrBs3ファミリーに相同性である、brg11およびhpx17と呼ばれる2つの遺伝子が見出された(Heuerら(2007年)Appl and Envir Micro 73巻(13号):4379~4384頁を参照のこと)。これらの遺伝子はヌクレオチド配列がお互いと98.9%同一であるが、hpx17の反復配列ドメインにおける1,575bpが欠失している点で異なる。しかし、両遺伝子生成物は、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。
【0177】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピートに見出される配列に依存する。反復配列は概ね102塩基対を含み、そのリピートはお互いと典型的にはに91~100%相同である(Bonasら、同上)。そのリピートの多型は通常12位および13位に
位置し、12位および13位の超可変二残基(hypervariable diresidues)(リピート
可変二残基またはRVD領域)の同一性とTALエフェクターの標的配列の中の近接したヌクレオチドの同一性の間に1対1の対応があるようである(MoscouおよびBogdanove、
(2009年)Science 326巻:1501頁およびBochら(2009年)Science 326巻:1509~1512頁を参照のこと)。実験的に、12位および13位のHD配列(リピート可変二残基またはRVD領域)がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合するように、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然のコードを決定した。これらのDNA結合リピートは、新しい配列と相互作用して、植物細胞中の非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製するために、新しい組合せおよび多数のリピートを有するタンパク質に組み立てられた(Bochら、同上)。非定型RVDを伴うTALENを包含する、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を得るために、工学技術で作製されたTALタンパク質をFokI切断半ドメインに連結した。例えば、米国特許第8,586,526号を参照のこと。
【0178】
一部の実施形態ではTALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断半ドメインを含む。他の実施形態ではTALEヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体化を必要としない(Boisselら、(
2013年)Nucl Acid Res:1~13頁、doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照)。
【0179】
なおさらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALENを含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結する単鎖融合タンパク質である。TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに関してどこに配置されるかに応じて、融合タンパク質は、TALE領域によって局在化されたニッカーゼとして作用することができるか、または二本鎖切断を引き起こすことができる(Beurdeleyら(2013年)Nat Comm:1~8頁、DOI: 10.1038/ncomms2782を参照)。さらに、ヌクレアーゼドメインは、DNA結合機能性も示すことができる。任意のTALENを、1つまたは複数のメガTALEを含むさらなるTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN)と組み合わせて使用することができる。
【0180】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質またはTALEは、例えば5またはそれより多くのアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。6またはそれより多くのアミノ酸長の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、第6,903,185号;および第7,153,949号も参照。本明細書に記載されるタンパク質には、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば米国特許第6,794,136号に記載されている。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、DNAに結合するシングルガイドRNA(sgRNA)DNA結合分子を包含する、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部である。例えば、米国特許第8,697,359号ならびに米国特許出願公開第20150056705号および20150159172号を参照のこと。その系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化規則的散在性ショートパリンドロームリピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.43巻:1565~1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.30巻:482~496頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、20
05年、PLoS Comput. Biol.1巻:e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せ、ならびにCRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントを含有する。
【0181】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、TtAgo系の一部である(Swartsら、同上;Shengら、同上を参照のこと)。真核生物では、遺伝子サイレンシングはアルゴノ
ート(Ago)ファミリーのタンパク質によって媒介される。このパラダイムでは、Agoは小さい(19~31nt)RNAに結合する。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、小RNAと標的の間のワトソン-クリック型塩基対を通して標的RNAを認識し、標的RNAをエンドヌクレアーゼ的分解で(endonucleolytically)切断する(Vogel(2014年)Science 344巻:972~973頁)。対照的に、原核生物のAg
oタンパク質は小さい一本鎖DNA断片に結合し、外来の(しばしばウイルスの)DNAを検出し、除去する機能をおそらく果たす(Yuanら、(2005年)Mol. Cell 19巻、405頁;Olovnikovら、(2013年)Mol. Cell 51巻、594頁;Swartsら、
同上)。例示的な原核生物Agoタンパク質には、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroidesおよびThermus thermophilusからのものが含まれる。
【0182】
最も良く特徴付けられた原核生物Agoタンパク質の1つは、T.thermophilusからのものである(TtAgo;Swartsら、同上)。TtAgoは、5’リン酸基で15ntまたは13~25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoに結合するこの「ガイドDNA」は、タンパク質-DNA複合体がDNAの第三者分子中のワトソン-クリック相補的DNA配列に結合するように誘導する役目をする。これらのガイドDNA中の配列情報が標的DNAの同定を可能にしたら、TtAgo-ガイドDNA複合体は標的DNAを切断する。そのような機構は、その標的DNAに結合する間、TtAgo-ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G. Shengら、同上)。Rhodob
acter sphaeroidesからのAgo(RsAgo)は、類似の特性を有する(Olivnikovら、同上)。
【0183】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAを、TtAgoタンパク質にロードすることができる(Swartsら、同上)。TtAgo切断の特異性はガイドDNAによって方向づけられるので、外因性の、調査者によって指定されたガイドDNAで形成されるTtAgo-DNA複合体は、したがって、TtAgo標的DNA切断を相補的な調査者によって指定された標的DNAに導く。この様に、DNAにおいて標的化二本鎖切断を生じさせることができる。TtAgo-ガイドDNA系(または、他の生物体からのオルソログのAgo-ガイドDNA系)の使用は、細胞の中でゲノムDNAの標的化切断を可能にする。そのような切断は、一本鎖または二本鎖であってよい。哺乳動物のゲノムDNAの切断のために、哺乳動物細胞での発現のために最適化されるバージョンのTtAgoコドンを使用するのが好ましいであろう。さらに、in vitroで形成されるTtAgo-DNA複合体で細胞を処理することが好ましい場合があり、ここで、TtAgoタンパク質は細胞貫通性ペプチドに融合される。さらに、37℃で改善された活性を有するように変異誘発を通して変更された、TtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago-RNA媒介DNA切断は、遺伝子ノックアウト、標的化遺伝子付加、遺伝子補正、DNA切断の活用のための当技術分野で標準の技術を使用した標的化遺伝子欠失を含む転帰の一式(a panopoly of outcomes)に影響をもたらすために使用できた
【0184】
したがって任意のDNA結合ドメインを使用することができる。
【0185】
融合分子
本明細書に記載のLNPは、DNA結合ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE、単一ガイドRNAなどのCRISPR/Cas構成成分)を含む融合分子を包含し得、異種制御(機能的)ドメイン(またはその機能性断片)もまた提供される。共通ドメインには、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子)、サイレンサー、オンコジーン(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素およびそれらの関連因子およびモディファイヤー;DNA再編成酵素およびそれらの関連因子およびモディファイヤー;クロマチン関連タンパク質およびそれらのモディファイヤー(例えばキナーゼ、アセチラーゼおよび脱アセチル化酵素);ならびにDNA改変酵素(例えば、メチル基転移酵素、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)およびそれらの関連因子およびモディファイヤーが含まれる。DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインの融合に関する詳細についての米国特許出願公開第20050064474号;同第20060188987号および同第20070218528号、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0186】
活性化を達成するために適するドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えばHagmannら、J. Virol. 71巻、5952~5962頁(1997年)を参照)核内
ホルモン受容体(例えばTorchiaら、Curr. Opin. Cell. Biol. 10巻:373~3
83頁(1998年)を参照);核内因子カッパBのp65サブユニット(Bitko & Barik、J. Virol. 72巻:5610~5618頁(1998年)およびDoyle & Hunt
、Neuroreport 8巻:2937~2942頁(1997年))、Liuら、Cancer Gene Ther. 5巻:3~28頁(1998年))、またはVP64などの人工キメラ機能的ド
メイン(Beerliら、(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:14623~33頁)、およびデグロン(Molinariら、(1999年)EMBO J. 18巻、6439~6447頁)が含まれる。さらなる例示的活性化ドメインには、Oct 1、Oct-2A、Sp1、AP-2およびCTF1(Seipelら、EMBO J. 11巻、4961~4968頁(1992年)ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2AおよびERF-2が含まれる。例えばRobyrら(2000年)Mol. Endocrinol. 14巻:329~347頁、Collingwoodら(1999年)J. Mol. Endocrinol.
23巻:255~275頁、Leoら(2000年)Gene 245巻:1~11頁、Manteuffel-Cymborowska (1999年)Acta Biochim. Pol. 46巻:77~89頁、McKennaら(1999年)J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 69巻:3~12頁、Malikら(2000年)Trends Biochem. Sci. 25巻:277~283頁およびLemonら(1999年)Curr. Opin. Genet. Dev. 9巻:499~504頁を参照。さらなる例示的活性化ドメインには、OsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5、-6、-7および-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GPならびにTRAB1が限定されずに含まれる。例えばOgawaら(2000年)Gene 245巻:21~29頁、Okanamiら(1996年)Genes Cells 1巻:87~99頁、Goffら(1991年)Genes Dev. 5巻:298~309頁、Choら(1999年)Plant Mol. Biol. 40巻:419~429頁、Ulmasonら(1999年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96巻
:5844~5849頁、Sprenger-Hausselsら(2000年)Plant J. 22巻:1~8頁、Gongら(1999年)Plant Mol. Biol. 41巻:33~44頁およびHoboら(1999年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96巻:15,348~15,353頁を参照。
【0187】
DNA結合ドメインと機能的ドメインとの間の融合タンパク質(またはそれをコードする核酸)形成において、活性化ドメインまたは活性化ドメインと相互作用する分子のいずれかが機能的ドメインとして好適であることは、当業者に明らかである。本質的に、活性化複合体および/または活性化活性(例えば、ヒストンアセチル化など)を標的遺伝子にリクルートすることが可能な任意の分子は、融合タンパク質の活性化ドメインとして有用である。融合分子での機能的ドメインとしての使用のために適する、インシュレータードメイン、局在性ドメインならびに、ISWI含有ドメインなどのクロマチンリモデリングタンパク質および/またはメチル結合ドメインタンパク質は、例えば米国特許出願2002/0115215および同2003/0082552ならびにWO 02/44376において記載されている。
【0188】
例示的抑制ドメインには、KRAB A/B、KOX、TGFベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えばDNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、RbおよびMeCP2が限定されずに含まれる。例えばBirdら(1999年)Cell 99巻:451~454頁、Tylerら(1999年)Cell 99巻:443~446頁、Knoepflerら(1999年)Cell 99巻:447~450頁およびRobertsonら(2000年)Nature Genet. 25巻:
338~342頁を参照。さらなる例示的抑制ドメインには、ROM2およびAtHD2Aが限定されずに含まれる。例えばChemら(1996年)Plant Cell 8巻:305~
321頁およびWuら(2000年)Plant J. 22巻:19~27頁を参照。
【0189】
融合分子は、当業者に周知であるクローニングおよび生化学的コンジュゲーションの方法によって構築される。融合分子は、DNA結合ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)を含む。融合分子は、核局在化シグナル(例えばSV40中型T抗原(SV40 medium T-antigen)由来のものなど)およびエピトープタグ(
例えばFLAGおよびヘマグルチニンなど)も任意選択で含む。融合タンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、翻訳リーディングフレームが融合物の構成成分内で保存されるように設計される。
【0190】
一方が機能的ドメイン(またはその機能性断片)と、他方が非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、干渉物質、副溝バインダー、核酸)のポリペプチド構成成分の間の融合は、当業者に公知の生化学コンジュゲーションの方法によって構築される。例えばthe Pierce Chemical Company (Rockford、IL) Catalogueを参照。副溝バインダーとポリペプチドとの間の融合を作製するための方法および組成物が、記載されている。Mappら(2000年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97巻:3930~3935頁。さらにCRISPR/Cas系の単一ガイドRNAは、活性転写制御因子およびヌクレアーゼを形成するように機能的ドメインと会合する。
【0191】
ある特定の実施形態では標的部位は、細胞性クロマチンの到達可能な領域中に存在する。到達可能領域は、例えば米国特許第7,217,509号および第7,923,542号に記載の通り決定することができる。標的部位が細胞性クロマチンの到達可能領域に存在しない場合、1つまたは複数の到達可能領域を、米国特許第7,785,792号および第8,071,370号に記載の通り生成することができる。さらなる実施形態では融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が到達可能領域中にあるかどうかに関わらず、細胞性クロマチンに結合することができる。例えばそのようなDNA結合ドメインは、リンカーDNAおよび/またはヌクレオソームDNAに結合可能である。この種類の「先駆」DNA結合ドメインの例は、ある特定のステロイド受容体において、および肝細胞核因子3(HNF3)において見出される(Cordingleyら(1987年)Cell 48巻:261~270頁、Pinaら(1990年)Cell 60巻:719~731頁およびCirilloら(1998年)EMBO J. 17巻:244~254頁)。
【0192】
融合分子は、当業者に公知である通り薬学的に許容されるキャリアを用いて製剤化することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、1985
年ならびに米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照。
【0193】
融合分子の機能的構成成分/ドメインは、融合分子がそのDNA結合ドメインを介して標的配列に結合すると、遺伝子の転写に影響を与えることが可能である種々の異なる構成成分のいずれかから選択することができる。それにより機能的構成成分には、活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子およびサイレンサーなどの種々の転写因子ドメインが限定されずに含まれる。
【0194】
さらなる例示的機能的ドメインは、例えば米国特許第6,534,261号および第6,933,113号に開示されている。
【0195】
外因性小分子またはリガンドによって制御される機能的ドメインはまた、本明細書に記載のLNPにおいて使用するために選択することができる。例えばRheoSwitch(登録商標)技術を用いることができ、ここで機能的ドメインは、外部RheoChem(商標)リガンド(例えばUS20090136465を参照)の存在下でその活性なコンフォーメーションだけを想定する。したがってZFPは、調節可能な機能的ドメインに作動可能に連結でき、生じたZFP-TFの活性は、外部リガンドによって調節される。
【0196】
ヌクレアーゼ
ある特定の実施形態では融合タンパク質は、DNA結合結合ドメイン(DNA-binding binding domain)および切断(ヌクレアーゼ)ドメインを含む。そのように遺伝子改変は、ヌクレアーゼ、例えば工学技術で作製されたヌクレアーゼを使用して達成することができる。工学技術で作製されるヌクレアーゼ技術は、天然に存在するDNA結合タンパク質の工学技術に基づいている。例えば、目的に合わせたDNA結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼの工学技術は記載されている。Chamesら(2005年)Nucleic Acids Res 33巻(20号):e178頁、Arnouldら(2006年)J. Mol. Biol. 355巻:443~458頁。さらに、ZFPの工学技術も記載されている。例えば米国特許第6,534,261号、第6,607,882号、第6,824,978号、第6,979,539号、第6,933,113号、第7,163,824号および第7,013,219号を参照。
【0197】
さらにZFPおよび/またはTALEは、ZFNおよびTALEN-その工学技術で作製された(ZFPまたはTALE)DNA結合ドメインを通じてその所期の核酸標的を認識することができ、ヌクレアーゼ活性を介してDNA結合部位近くでDNAが切断されるようにする機能的実体、を作り出すようにヌクレアーゼドメインに融合されている。例えば、Kimら(1996年)Proc Nat'l Acad Sci USA 93巻(3号):1156~1160頁を参照のこと。つい最近、そのようなヌクレアーゼは、種々の生物体においてゲノム改変のために使用されている。例えば、米国特許公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開WO07/014275を参照のこと。
【0198】
したがって本明細書に記載される方法および組成物は、広範に適用可能であり、目的の任意のヌクレアーゼを含むことができる。ヌクレアーゼの非限定的例には、メガヌクレアーゼ、TALENおよびジンクフィンガーヌクレアーゼが含まれる。ヌクレアーゼは、異種DNA結合および切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、異種切断ドメインを含むメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含むことができる、または代替的に、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更することができる(例えば、コグネイト結合部位とは異なる部位に結合するように工学技術で作製されたメガヌクレアーゼ)。
【0199】
本明細書に記載されるいずれのヌクレアーゼでも、ヌクレアーゼは、TALENとも呼ばれる、工学技術で作製されたTALE DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼドメイン(例えば、エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼドメイン)を含むことができる。使用者が選択した標的配列との堅牢な、部位特異的相互作用のためにこれらのTALENタンパク質を工学技術で作製するための方法および組成物は公開されている(米国特許第8,586,526号を参照)。一部の実施形態ではTALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断半ドメインを含む。他の実施形態ではTALEヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体化を必要としない(Boisselら、(2013年)Nucl Acid Res:1~13頁、doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照)。さらにヌクレアーゼドメインは、DNA結合機能性
を示すこともできる。
【0200】
なおさらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALEN(cTALEN)を含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結する単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに関してどこに配置されるかに応じて、TALE領域によって局在化されたニッカーゼとして作用することができるか、または二本鎖切断を引き起こすことができる(Beurdeleyら(2013年)Nat Comm:1~8頁、DOI: 10.1038/ncomms2782を参照)。任意のTALENを、さらなるTALEN(例えば、1つもしくは複数のメガTALによる1つもしくは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN))または他のDNA切断酵素と組み合わせて使用することができる。
【0201】
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)または切断活性を示すその一部を含む。天然に存在するメガヌクレアーゼは15~40塩基対の切断部位を認識し、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般的に分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(
1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989
年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~2
28頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argast
ら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照。
【0202】
天然に存在するメガヌクレアーゼ由来、主にLAGLIDADGファミリー由来のDNA結合ドメインは、植物、酵母、Drosophila、哺乳動物細胞およびマウスにおける部位特異的ゲノム改変を促進するために使用されているが、このアプローチは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存するいずれかの相同性遺伝子の改変(Monetら(1999年
)、Biochem. Biophysics. Res. Common. 255巻:88~93頁)または認識配列が導入される工学技術で作製される前のゲノムへの改変(Routeら(1994年)、Mol.
Cell. Biol. 14巻:8096~106頁、Chiltonら(2003年)、Plant Physiology. 133巻:956~65頁、Puchtaら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:5055~60頁、Rongら(2002年)、Genes Dev. 16巻:1568~81頁、Goubleら(2006年)、J. Gene Med. 8巻(5号):616~622頁)に限定されている。したがって、医学的にまたは生物工学的に関連する部位で新規結合特異性を示すメガヌクレアーゼを工学技術で作製する試みがなされている(Porteusら(2005年)、Nat. Biotechnol. 23巻:967~73頁、Sussmanら(20
04年)、J. Mol. Biol. 342巻:31~41頁、Epinatら(2003年)、Nucleic Acids Res. 31巻:2952~62頁、Chevalierら(2002年)Molec. Cell
10巻:895~905頁、Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res. 31巻:2952~2962頁、Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁、Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁、米国特許出願公開第20070117128号、第20060206949号、第20060153826号、第20060078552号および第20040002092)。さらに、メガヌクレアーゼ由来の天然に存在するまたは工学技術で作製されたDNA結合ドメインは、異種ヌクレアーゼ由来の切断ドメイン(例えば、FokI)と作動可能に連結することができる、および/またはメガヌクレアーゼ由来の切断ドメインは異種DNA結合ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE)と作動可能に連結することができる。
【0203】
他の実施形態では、ヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALE DNA結合ドメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)である。ZFNおよびTALENは、選り抜きの遺伝子中の標的部位に結合するように工学技術で作製されたDNA結合ドメイン(ジンクフィンガータンパク質またはTALE DNA結合ドメイン)および切断ドメインまたは切断半ドメイン(例えば、本明細書に記載される制限および/またはメガヌクレアーゼ由来)を含む。
【0204】
上で詳述されているように、ジンクフィンガー結合ドメインおよびTALE DNA結合ドメインは、選り抜きの配列に結合するように工学技術で作製することができる。例えばBeerliら(2002年)Nature Biotechnol. 20巻:135~141頁、Paboら(
2001年)Ann. Rev. Biochem. 70巻:313~340頁、Isalanら(2001年)Nature Biotechnol. 19巻:656~660頁、Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol. 12巻:632~637頁、Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol. 10巻:411~416頁を参照。工学技術で作製されたジンクフィンガー結合ドメインまたはTALEタンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。工学技術方法には、合理的な設計および様々な種類の選択が限定されずに含まれる。合理的な設計には、例えば、トリプレット(または、クアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々の、ジンクフィンガーまたはTALEアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーまたはTALE反復単位の1つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照。
【0205】
標的部位の選択;および融合タンパク質(および、それをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は当業者に公知であり、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第7,888,121号および第8,409,861号に詳細に記載されている。
【0206】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメイン、TALEおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば5またはそれより多くのアミノ酸長のリンカー(例えば、TGEKP(配列番号41)、TGGQRP(配列番号42)、TGQKP(配列番号43)、および/またはTGSQKP(配列番号44)を含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。長さが6またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照のこと。本明細書に記載されるタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。米国特許第8,772,453号も参照されたい。
【0207】
それによりZFN、TALENおよび/またはメガヌクレアーゼなどのヌクレアーゼは、任意のDNA結合ドメインおよび任意のヌクレアーゼ(切断)ドメイン(切断ドメイン、切断半ドメイン)を含むことができる。上記したように、切断ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であってもよく、例として、ジンクフィンガーもしくはTALエフェクターDNA結合ドメインとヌクレアーゼ由来切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインと異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインである。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを誘導することができる例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、2002~2003年のカタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁を参照のこ
と。DNAを切断するさらなる酵素は公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓のDNアーゼI;ミクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年も参照)。これらの酵素の1つまたは複数(または、それらの機能的断片)は、切断ドメインおよび切断半ドメインの供給源として使用することができる。
【0208】
同様に、上記のように、切断活性のために二量体化を必要とする切断半ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、2つの融合タンパク質が切断半ドメインを含む場合は、該2つの融合タンパク質が切断のために必要とされる。あるいは、2つの切断半ドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの切断半ドメインは同じエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができ、または、各切断半ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができる。さらに、2つの融合タンパク質のそれらのそれぞれの標的部位への結合が、切断半ドメインを、お互いとの空間配向に置き、切断半ドメインが、例えば二量体化によって機能的切断ドメインを形成することを可能にするように、2つの融合タンパク質のための標的部位が、好ましくはお互いに関して配置される。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド分離している。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介入することができる(例えば、2から50ヌクレオチド対、またはそれより多い)。一般に、切断部位は標的部位の間にあるが、切断部位から1~50塩基対の間(または、その間の任意の値)、1~100塩基対の間(または、その間の任意の値)、100~500塩基対の間(または、その間の任意の値)、500~1000塩基対の間(または、その間の任意の値)またはさらには1kb超を含む、切断部位から1またはそれより大きいキロベース離れて存在することができる。
【0209】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、DNA(認識部位で)に配列特異的に結合すること、および結合部位またはその近くでDNAを切断することが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、1本の鎖の上のその認識部位から9ヌクレオチドの位置、および他の鎖の上のその認識部位から13ヌクレオチドの位置で、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLiら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275~4279頁;Liら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764~2768頁;Kimら(1994a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:88
3~887頁;Kimら(1994b)J. Biol. Chem.269巻:31,978~31,
982頁を参照のこと。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、工学技術で作製されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素からの切断ドメイン(または、切断半ドメイン)、および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0210】
その切断ドメインは結合ドメインと分離できる例示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、ダイマーとして活性である。Bitinaiteら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:10,570~10,575頁。したがって
、本開示のために、開示される融合タンパク質で使用されるFok I酵素の部分は、切断半ドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー-Fok I融合物を使用した標的化二本鎖切断および/または細胞配列の標的化置き換えのために、各々Fok I切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質を、触媒活性切断ドメインを再構成するために使用することができる。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFok
I切断半ドメインを含有する単一のポリペプチド分子を使用することもできる。ジンクフィンガー-Fok I融合物を使用した標的化切断および標的化配列変更のパラメータは、この開示の他の場所で提供される。
【0211】
切断ドメインまたは切断半ドメインは、切断活性を保持する、または多量体化(例えば、二量体化)して機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であってよい。
【0212】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み入れられる、国際公開WO07/014275に記載される。さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを含有し、これらは本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003
年)Nucleic Acids Res.31巻:418~420頁を参照のこと。
【0213】
ある特定の実施形態では、切断ドメインは、以下に示す配列を有する結晶構造1FOK.pdbおよび2FOK.pdbを生成するために使用されるFokI切断ドメインを含む(Wahら(1997年)Nature 388巻:97~100頁を参照のこと):
【化16】
【0214】
FokIに由来する切断半ドメインは、配列番号40に示されているアミノ酸残基の1つまたは複数に変異を含むことができる。変異は、置換(野生型アミノ酸残基の異なる残基での置換)、挿入(1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入)および/または欠失(1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失)を含む。ある特定の実施形態では、残基414~426、443~450、467~488、501~502、および/または521~531(配列番号40に対して番号付けされる)の1つまたは複数を変異させ、これは、これらの残基が、Millerら((2007年)Nat Biotechnol 25巻:778~784頁)に
記載されているその標的部位に結合したZFNの分子モデルのDNA骨格の近くに位置するからである。ある特定の実施形態では、416位、422位、447位、448位、および/または525位の1つまたは複数の残基を変異させる。ある特定の実施形態では、変異は、野生型残基の異なる残基、例えば、セリン(S)残基での置換を含む。例えば、米国特許出願第15/685,580号を参照のこと。
【0215】
ある特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、その全ての開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,623,618号ならびに米国特許出願公開第20110201055号に記載される通り、ホモ二量体化を最小にするかまたは防止する1つまたは複数の工学技術で作製された切断半ドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位(配列番号40に対して番号付けされる)のアミノ酸残基は、全て、FokI切断半ドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。変異は、FokIと相同な天然の制限酵素において見出される残基に対する変異を含むことができる。好ましい実施形態では、416位、422位、447位、448位および/または525位(配列番号40に対して番号付けされる)における変異は、正に荷電したアミノ酸の非荷電または負に荷電したアミノ酸での置き換えを含む。別の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、全て配列番号40に対して番号付けされる、1つまたは複数のアミノ酸残基416、422、447、448、または525の変異に加えて、アミノ酸残基499、496および486に変異を含む。
【0216】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、例えば、米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号;同第8,961,281号および同第8,623,618号;米国特許公開第20080131962号および同第20120040398号に記載されている絶対ヘテロダイマー(obligate heterodimer)を形成する、FokIの工学技術で作製された切断半ドメインを含む。したがって、好ましい一実施形態では、本発明は、工学技術で作製された切断半ドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位(配列番号1に対して番号付けされる)における1つまたは複数の変異に加えて、486位の野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置き換えられており、499位の野生型Ile(I)残基がLeu(L)残基で置き換えられており、496位の野生型Asn(N)残基がAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換えられている(「ELD」または「ELE」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。別の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、野生型FokI切断半ドメインに由来し、アミノ酸残基416、422、447、448、または525における1つまたは複数の変異に加えて、野生型FokI(配列番号1)に対して番号付けされるアミノ酸残基490、538および537に変異を含む。好ましい実施形態では、本発明は、工学技術で作製された切断半ドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の変異に加えて、490位の野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられており、538位の野生型Ile(I)残基がLys(K)残基で置き換えられており、537位の野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられている(「KKK」または「KKR」)(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,962,281号を参照のこと)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。例えば、その開示は全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,623,618号を参照のこと。他の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、「Sharkey」変異および/または「Sharkey」の一部の変異を含む(Guoら、(2010年)J. Mol. Biol. 400巻(1号):96~107頁を参照のこと)。
【0217】
別の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、野生型FokI切断半ドメインに由来し、アミノ酸残基416、422、447、448、または525における1つまたは複数の変異に加えて、野生型FokIに対して番号付けされるアミノ酸残基490、および538における変異を含む。好ましい実施形態では、本発明は、工学技術で作製された切断半ドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の変異に加えて、490位の野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられており、538位の野生型Ile(I)残基がLys(K)残基で置き換えられている(「KK」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、工学技術で作製された切断半ドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の変異に加えて、486位の野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置き換えられており、499位の野生型Ile(I)残基がLeu(L)残基で置き換えられている(「EL」)(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,034,598号を参照のこと)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0218】
一態様では、本発明は、工学技術で作製された切断半ドメインが、FokI触媒ドメインの387位、393位、394位、398位、400位、402位、416位、422位、427位、434位、439位、441位、447位、448位、469位、487位、495位、497位、506位、516位、525位、529位、534位、559位、569位、570位、571位の1つまたは複数における野生型アミノ酸残基が変異したポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、FokIドメインにおけるこれらの変異により、FokIドメインとDNA骨格に含有されるリン酸との間の非特異的相互作用が防止されるまたは減少する。一部の実施形態では、1つまたは複数の変異により、野生型アミノ酸が正に荷電した残基から中性残基または負に荷電した残基に変更される。これらの実施形態のいずれにおいても、記載されている変異体は、1つまたは複数のさらなる変異を含むFokIドメインでも作製される。好ましい実施形態では、これらのさらなる変異は、二量体化ドメイン、例えば、499位、496位、486位、490位、538位および537位におけるものである。
【0219】
あるいは、ヌクレアーゼを、いわゆる「スプリット酵素」技術を使用して核酸標的部位にin vivoで組み立てることができる(例えば、米国特許出願公開第20090068164号を参照のこと)。そのようなスプリット酵素の構成成分は、別個の発現構築物の上で発現させることができるか、または1つのオープンリーディングフレームの中に連結させることもでき、ここで、個々の構成成分は、例えば、自己切断2AペプチドまたはIRES配列によって分離される。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであってよい。
【0220】
ヌクレアーゼ(例えば、ZFNおよび/またはTALEN)は、使用前に、例えば米国特許第8,563,314号に記載されるとおりに、酵母をベースとした染色体系において、活性についてスクリーニングすることができる。
【0221】
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼはCRISPR/Cas系を含む。系のRNA構成成分をコードするCRISPR(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)遺伝子座、およびタンパク質をコードするCas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.43巻:1565~1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.30巻:482~496頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年、PLoS Comput. Biol.1巻:
e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せ、ならびにCRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントを含有する。
【0222】
II型CRISPRは最も良く特徴付けられた系の1つであり、4つの逐次的ステップで標的化DNA二本鎖切断を実行する。先ず、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAはプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプレcrRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック塩基対合を通して、Cas9を標的DNAに向けるが、これは、標的認識のためのさらなる要件である。最後に、Cas9は標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生じさせる。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップで構成される:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、将来の攻撃を防止するためのCRISPRアレイへのエイリアンDNA配列の挿入、(ii)関連するタンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、続いて(iii)エイリアン核酸に対するRNA媒介干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかはCRISPR/Cas系の天然の機能に関与し、エイリアンDNAの挿入などの機能における役割を果たすなどである。
【0223】
一部の実施形態では、CRISPR-Cpf1系が使用される。Francisella sppにおいて同定されたCRISPR-Cpf1系は、ヒト細胞において堅牢なDNA干渉を媒介するクラス2CRISPR-Cas系である。機能は保存されているが、Cpf1とCas9とは、それらのガイドRNAおよび基質特異性を含む多くの態様において異なっている(Fagerlundら、(2015年)Genom Bio 16巻:251頁を参照
)。Cas9とCpf1タンパク質との間の主な差異は、Cpf1がtracrRNAを利用せず、そのためcrRNAのみを必要とすることである。FnCpf1 crRNAは、42~44ヌクレオチド長(19ヌクレオチド反復および23~25ヌクレオチドスペーサー)であり、二次構造を保持する配列変化を許容する単一のステムループを含有する。さらにCpf1 crRNAは、Cas9によって必要とされる工学技術で作製されたsgRNAより約100ヌクレオチド超有意に短く、FnCpflについてのPAM要件は置換鎖(displaced strand)上の5’-TTN-3’および5’-CTA-3’で
ある。Cas9およびCpf1の両方は、標的DNA中に二重鎖切断を作製するが、Cas9はガイドRNAのシード配列内に平滑末端切断を作製するためにそのRuvC様ドメインおよびHNH様ドメインを使用する一方で、Cpf1はシードの外側に互い違いの切断を産生するためにRuvC様ドメインを使用する。Cpf1が重要なシード領域から離れて、互い違いの切断を作製することから、NHEJは標的部位を破壊せず、したがってCpf1が、所望のHDR組換え事象が生じるまで同じ部位を切断し続けることができることを確実にする。それにより、本明細書に記載される方法および組成物において、用語「Cas」がCas9およびCfp1タンパク質の両方を含むことが理解される。それにより、本明細書において使用される「CRISPR/Casシステム」は、ヌクレアーゼおよび/または転写因子システムの両方を含む、CRISPR/Casおよび/またはCRISPR/Cfp1システムの両方を指す。
【0224】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であってよい。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列のポリペプチドと共通した定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、天然配列の断片、ならびに天然配列ポリペプチドの誘導体およびその断片が限定されずに含まれるが、ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通する生物学的活性を有する。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性改変および誘導体Casタンパク質などのその融合物を包含する。Casポリペプチドの適する誘導体またはその断片には、Casタンパク質の変異体、融合物、共有結合性改変またはそれらの断片が限定されずに含まれる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質の誘導体またはその断片を含むCasタンパク質は、細胞から得ることができるか、または化学的に合成するか、もしくはこれらの2つの手順の組合せによって得ることができる。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、または、Casタンパク質を天然に産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように遺伝子操作されているか、または、内因性Casと同じであるか異なるCasをコードする、外因的に導入される核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作されている細胞であってよい。一部の場合には、細胞はCasタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。一部の実施形態ではCasタンパク質は、AAVベクターを介した送達のための小さなCas9オルソログである(Ranら(2015年)Nature 510巻、186頁)。
【0225】
ヌクレアーゼ(複数可)は、標的部位で1つまたは複数の2本鎖および/または1本鎖切断を作製することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、触媒として不活性な切断ドメインを含む(例えば、FokIおよび/またはCasタンパク質)。例えば、米国特許第9,200,266号、第8,703,489号およびGuillingerら(2014年)Nature Biotech. 32巻(6号):577~582頁を参照。触媒として不活性な切断ドメインは、触媒として活性なドメインと組み合わせて1本鎖切断を作製するためのニッカーゼとして作用することができる。したがって、2つのニッカーゼは特異的領域において2本鎖切断を作製するために組み合わせて使用することができる。さらなるニッカーゼも、当技術分野において公知であり、例えばMcCafferyら(2016年)Nucleic Acids Res. 44巻(2号):e11頁. doi: 10.1093/nar/gkv878. Epub 2015
Oct 19において公知である。
【0226】
化合物
ある態様では、本発明は、中性脂質、荷電脂質、ステロイドおよび/またはポリマーとコンジュゲートした脂質などの他の脂質構成成分と組み合わせて、オリゴヌクレオチドを有する脂質ナノ粒子を形成することが可能なカチオン性脂質化合物を含むLNPを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの脂質ナノ粒子によりオリゴヌクレオチドが血清中での分解から遮蔽され、in vitroおよびin vivoにおけるオリゴヌクレオチドの細胞への有効な送達がもたらされると考えられる。
【0227】
一実施形態では、LNPは、遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドおよび式(I)
【化17】
(式中、
およびLは、それぞれ独立に、-O(C=O)-、(C=O)O-または炭素-炭素二重結合であり;
1aおよびR1bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R1aがHもしくはC~C12アルキルであり、R1bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
2aおよびR2bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R2aがHもしくはC~C12アルキルであり、R2bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR2bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
3aおよびR3bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R3aがHもしくはC~C12アルキルであり、R3bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR3bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
4aおよびR4bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R4aがHもしくはC~C12アルキルであり、R4bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
およびRは、それぞれ独立に、メチルまたはシクロアルキルであり;
は、各出現につき、独立に、HまたはC~C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、非置換C~C12アルキルである;またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、窒素原子を1つ含む5員、6員または7員複素環式環を形成しており;
aおよびdは、それぞれ独立に、0から24までの整数であり;
bおよびcは、それぞれ独立に、1から24までの整数であり;
eは、1または2である)
の構造を有する脂質化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【0228】
式(I)化合物のある特定の実施形態では、R1a、R2a、R3aまたはR4aの少なくとも1つは、C~C12アルキルである、またはLもしくはLの少なくとも1つは、-O(C=O)-もしくは-(C=O)O-である。他の実施形態では、R1aおよびR1bは、aが6である場合イソプロピルではない、またはaが8である場合n-ブチルではない。
【0229】
なおさらなる実施形態では、R1a、R2a、R3aまたはR4aの少なくとも1つは、C~C12アルキルである、またはLもしくはLの少なくとも1つは、-O(C=O)-もしくは-(C=O)O-であり、R1aおよびR1bは、aが6である場合イソプロピルではない、またはaが8である場合n-ブチルではない。
【0230】
式Iの化合物では、LまたはLのいずれか一方は-O(C=O)-または炭素-炭素二重結合であってよい。LおよびLは、それぞれ-O(C=O)-であってよい、またはそれぞれ炭素-炭素二重結合であってよい。
【0231】
式Iの一部の実施形態では、LまたはLの一方は-O(C=O)-である。式Iの他の実施形態では、LおよびLはどちらも-O(C=O)-である。
【0232】
式Iの一部の実施形態では、LまたはLの一方は-(C=O)O-である。式Iの他の実施形態では、LおよびLはどちらも-(C=O)O-である。
【0233】
式Iの一部の実施形態では、LまたはLの一方は炭素-炭素二重結合である。式Iの他の実施形態では、LおよびLはどちらも炭素-炭素二重結合である。
【0234】
式Iのさらに他の実施形態では、LまたはLの一方は-O(C=O)-であり、LまたはLの他方は-(C=O)O-である。式Iのその他の実施形態では、LまたはLの一方は-O(C=O)-であり、LまたはLの他方は炭素-炭素二重結合である。式Iのさらにその他の実施形態では、LまたはLの一方は-(C=O)O-であり、LまたはLの他方は炭素-炭素二重結合である。
【0235】
本開示全体を通して使用される「炭素-炭素」二重結合は、以下の構造:
【化18】
(式中、RおよびRは、各出現につき、独立に、Hまたは置換基である)
のうちの1つを指すことが理解される。
【0236】
例えば、一部の実施形態では、RおよびRは、各出現につき、独立に、H、C~C12アルキルまたはシクロアルキル、例えば、HまたはC~C12アルキルである。
【0237】
式Iの他の実施形態では、脂質化合物は、以下の構造(Ia):
【化19】
を有する。
【0238】
式Iの他の実施形態では、脂質化合物は、以下の構造(Ib):
【化20】
を有する。
【0239】
式Iのさらに他の実施形態では、脂質化合物は、以下の構造(Ic):
【化21】
を有する。
【0240】
式Iのある特定の実施形態では、a、b、cおよびdは、それぞれ独立に、2から12までの整数または4から12までの整数である。式Iの他の実施形態では、a、b、cおよびdは、それぞれ独立に、8から12までまたは5から9までの整数である。式Iの一部のある特定の実施形態では、aは0である。式Iの一部の実施形態では、aは1である。式Iの他の実施形態では、aは2である。式Iのその他の実施形態では、aは3である。式Iのさらに他の実施形態では、aは4である。式Iの一部の実施形態では、aは5である。式Iの他の実施形態では、aは6である。式Iのその他の実施形態では、aは7である。式Iのさらに他の実施形態では、aは8である。式Iの一部の実施形態では、aは9である。式Iの他の実施形態では、aは10である。式Iのその他の実施形態では、aは11である。式Iのさらに他の実施形態では、aは12である。式Iの一部の実施形態では、aは13である。式Iの他の実施形態では、aは14である。式Iのその他の実施形態では、aは15である。式Iのさらに他の実施形態では、aは16である。
【0241】
式Iの一部の実施形態では、bは1である。式Iの他の実施形態では、bは2である。式Iのその他の実施形態では、bは3である。式Iのさらに他の実施形態では、bは4である。式Iの一部の実施形態では、bは5である。式Iの他の実施形態では、bは6である。式Iのその他の実施形態では、bは7である。式Iのさらに他の実施形態では、bは8である。式Iの一部の実施形態では、bは9である。式Iの他の実施形態では、bは10である。式Iのその他の実施形態では、bは11である。式Iのさらに他の実施形態では、bは12である。式Iの一部の実施形態では、bは13である。式Iの他の実施形態では、bは14である。式Iのその他の実施形態では、bは15である。式Iのさらに他の実施形態では、bは16である。
【0242】
式Iの一部の実施形態では、cは1である。式Iの他の実施形態では、cは2である。式Iのその他の実施形態では、cは3である。式Iのさらに他の実施形態では、cは4である。式Iの一部の実施形態では、cは5である。式Iの他の実施形態では、cは6である。式Iのその他の実施形態では、cは7である。式Iのさらに他の実施形態では、cは8である。式Iの一部の実施形態では、cは9である。式Iの他の実施形態では、cは10である。式Iのその他の実施形態では、cは11である。式Iのさらに他の実施形態では、cは12である。式Iの一部の実施形態では、cは13である。式Iの他の実施形態では、cは14である。式Iのその他の実施形態では、cは15である。式Iのさらに他の実施形態では、cは16である。
【0243】
式Iの一部のある特定の実施形態では、dは0である。式Iの一部の実施形態では、dは1である。式Iの他の実施形態では、dは2である。式Iのその他の実施形態では、dは3である。式Iのさらに他の実施形態では、dは4である。式Iの一部の実施形態では、dは5である。式Iの他の実施形態では、dは6である。式Iのその他の実施形態では、dは7である。式Iのさらに他の実施形態では、dは8である。式Iの一部の実施形態では、dは9である。式Iの他の実施形態では、dは10である。式Iのその他の実施形態では、dは11である。式Iのさらに他の実施形態では、dは12である。式Iの一部の実施形態では、dは13である。式Iの他の実施形態では、dは14である。式Iのその他の実施形態では、dは15である。式Iのさらに他の実施形態では、dは16である。
【0244】
式Iの一部の他の種々の実施形態では、aとdは同じである。式Iの一部の他の実施形態では、bとcは同じである。式Iの一部の他の特定の実施形態では、aとdは同じであり、bとcは同じである。
【0245】
aとbの合計およびcとdの合計は、所望の特性を有する脂質を得るために変動させることができる因子である。式Iの一実施形態では、aおよびbは、それらの合計が14から24の範囲の整数になるように選択される。式Iの他の実施形態では、cおよびdは、それらの合計が14から24の範囲の整数になるように選択される。式Iのさらなる実施形態では、aとbの合計およびcとdの合計は同じである。例えば、式Iの一部の実施形態では、aとbの合計およびcとdの合計は、どちらも14から24の範囲であり得る同じ整数である。式Iのなおその他の実施形態では、a、b、cおよびdは、aとbの合計およびcとdの合計が12またはそれよりも大きくなるように選択される。
【0246】
式Iの一部の実施形態では、eは1である。式Iの他の実施形態では、eは2である。
【0247】
1a、R2a、R3aおよびR4aにおける置換基は、特に限定されない。式Iのある特定の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aは、各出現につき、Hである。式Iのある特定の他の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、C~C12アルキルである。式Iのある特定の他の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、C~Cアルキルである。式Iのある特定の他の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、C~Cアルキルである。式Iの前述の実施形態の一部では、C~Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0248】
式Iのある特定の実施形態では、R1a、R1b、R4aおよびR4bは、各出現につき、C~C12アルキルである。
【0249】
式Iのさらなる実施形態では、R1b、R2b、R3bおよびR4bの少なくとも1つは、Hである、またはR1b、R2b、R3bおよびR4bは、各出現につき、Hである。
【0250】
式Iのある特定の実施形態では、R1bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。式Iの他の実施形態では、R4bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。
【0251】
およびRにおける置換基は、前述の実施形態では特に限定されない。式Iのある特定の実施形態では、RまたはRの一方または両方が、メチルである。式Iのある特定の他の実施形態では、RまたはRの一方または両方が、シクロアルキル、例えば、シクロヘキシルである。これらの実施形態では、シクロアルキルは置換されていても置換されていなくてもよい。ある特定の他の実施形態では、シクロアルキルはC~C12アルキル、例えば、tert-ブチルで置換されている。
【0252】
における置換基は、前述の実施形態では特に限定されない。式Iのある特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、Hである。一部の他の実施形態では、Rは、各出現につき、Hである。式Iのある特定の他の実施形態では、Rは、C~C12アルキルである。
【0253】
式Iのある特定の他の実施形態では、RまたはRの一方は、メチルである。他の実施形態では、RおよびRの両方がメチルである。
【0254】
式Iの一部の異なる実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に5員、6員または7員複素環式環を形成している。前述の一部の実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に5員複素環式環、例えば、ピロリジニル環を形成している。
【0255】
種々の異なる実施形態では、LNPは、以下の表Iに記載の構造の1つを有する化合物を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0256】
上記の式(I)の化合物の任意の実施形態、ならびに上記の化合物式(I)の任意の特定の置換基および/または変数は、独立に、式(I)の化合物の他の実施形態ならびに/または置換基および/もしくは変数と組み合わせて、上で具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成することができることが理解される。さらに、特定の実施形態および/または請求項において任意の特定のR基、L基または変数a~eに関して置換基および/または変数の一覧が列挙されている場合には、個々の置換基および/または変数それぞれを特定の実施形態および/または請求項から削除することができること、ならびに残りの置換基および/または変数の一覧は本発明の範囲内に入るとみなされることが理解される。
【0257】
本説明において、示されている式の置換基および/または変数の組合せは、そのような寄与により安定な化合物がもたらされる場合にのみ許容されることが理解される。
【0258】
一部の実施形態では、式(II)の化合物の任意の1つまたは複数および遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、式(II)の化合物のいずれか、ならびに遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチド、ならびに中性脂質、ステロイドおよびポリマーとコンジュゲートした脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む。他の薬学的に許容される賦形剤および/または担体も組成物の種々の実施形態に含めることができる。
【0259】
一部の実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。一部の実施形態では、中性脂質は、DSPCである。種々の実施形態では、化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1から約8:1の範囲である。
【0260】
種々の実施形態では、組成物は、ステロイドまたはステロイド類似体をさらに含む。ある特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド類似体は、コレステロールである。これらの実施形態の一部では、化合物とコレステロールとのモル比は、約2:1から1:1の範囲である。
【0261】
種々の実施形態では、ポリマーとコンジュゲートした脂質は、ペグ化脂質である。例えば、一部の実施形態は、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などのペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタン二酸(PEG-S-DMG)などのPEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートもしくは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどのPEGジアルコキシプロピルカルバメートを含む。種々の実施形態では、化合物とペグ化脂質とのモル比は、約100:1から約25:1の範囲である。
【0262】
一部の実施形態では、LNPは、遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドおよび次式(II):
【化22】
(式中、
およびLは、それぞれ独立に、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、-NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-、-NRC(=O)O-または直接結合であり;
は、C~Cアルキレン、-(C=O)-、-O(C=O)-、-SC(=O)-、-NRC(=O)-または直接結合であり;
は、-C(=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR-または直接結合であり;
は、C~Cアルキレンであり;
は、HまたはC~C12アルキルであり;
1aおよびR1bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R1aがHもしくはC~C12アルキルであり、R1bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
2aおよびR2bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R2aがHもしくはC~C12アルキルであり、R2bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR2bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
3aおよびR3bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R3aがHもしくはC~C12アルキルであり、R3bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR3bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
4aおよびR4bは、各出現につき、独立に、(a)HもしくはC~C12アルキルであるか、または(b)R4aがHもしくはC~C12アルキルであり、R4bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成しているかのいずれかであり;
およびRは、それぞれ独立に、Hまたはメチルであり;
は、C~C20アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C12アルキルである、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に5員、6員または7員複素環式環を形成しており;
a、b、cおよびdは、それぞれ独立に、1から24までの整数であり;
xは、0、1または2である)
を有する脂質化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【0263】
式(II)の一部の実施形態では、LおよびLは、それぞれ独立に、-O(C=O)-、-(C=O)O-または直接結合である。式(II)の他の実施形態では、GおよびGは、それぞれ独立に、-(C=O)-または直接結合である。式(II)の一部の異なる実施形態では、LおよびLは、それぞれ独立に、-O(C=O)-、-(C=O)O-または直接結合であり;GおよびGは、それぞれ独立に、-(C=O)-または直接結合である。
【0264】
式(II)の一部の異なる実施形態では、LおよびLは、それぞれ独立に、-C(=O)-,-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NR-、-NRC(=O)O-、-NRS(O)NR-、-NRS(O)-または-S(O)NR-である。
【0265】
式(II)の前述の実施形態の他のものでは、化合物は、以下の構造(IIA)または(IIB)のうちの一方を有する:
【化23】
【0266】
式(II)の一部の実施形態では、化合物は、構造(IIA)を有する。式(II)の他の実施形態では、化合物は、構造(IIB)を有する。
【0267】
式(II)の前述の実施形態のいずれかでは、LまたはLの一方は-O(C=O)-である。例えば、式(II)の一部の実施形態では、LおよびLのそれぞれが-O(C=O)-である。
【0268】
式(II)の一部の異なる実施形態では、LまたはLの一方は-(C=O)O-である。例えば、式(II)の一部の実施形態では、LおよびLのそれぞれが、-(C=O)O-である。
【0269】
式(II)の異なる実施形態では、LまたはLの一方は直接結合である。本明細書において使用される「直接結合」とは、基(例えば、LまたはL)が存在しないことを意味する。例えば、式(II)の一部の実施形態では、LおよびLのそれぞれが直接結合である。
【0270】
式(II)の他の異なる実施形態では、R1aおよびR1bの少なくとも1つの出現に関して、R1aは、HまたはC~C12アルキルであり、R1bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。
【0271】
式(II)のさらに他の異なる実施形態では、R4aおよびR4bの少なくとも1つの出現に関して、R4aは、HまたはC~C12アルキルであり、R4bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。
【0272】
式(II)のその他の実施形態では、R2aおよびR2bの少なくとも1つの出現に関して、R2aは、HまたはC~C12アルキルであり、R2bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR2bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。
【0273】
式(II)の他の異なる実施形態では、R3aおよびR3bの少なくとも1つの出現に関して、R3aは、HまたはC~C12アルキルであり、R3bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR3bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。
【0274】
式(II)の種々の他の実施形態では、化合物は、以下の構造(IIC)または(IID):
【化24】
(式中、e、f、gおよびhは、それぞれ独立に、1から12までの整数である)のうちの一方を有する。
【0275】
式(II)の一部の実施形態では、化合物は、構造(IIC)を有する。式(II)の他の実施形態では、化合物は、構造(IID)を有する。
【0276】
構造(IIC)または(IID)の化合物の種々の実施形態では、e、f、gおよびhは、それぞれ独立に、4から10までの整数である。
【0277】
式(II)のある特定の実施形態では、a、b、cおよびdは、それぞれ独立に、2から12までの整数または4から12までの整数である。式(II)の他の実施形態では、a、b、cおよびdは、それぞれ独立に、8から12までまたは5から9までの整数である。一部のある特定の実施形態では、aは0である。式(II)の一部の実施形態では、aは1である。式(II)の他の実施形態では、aは2である。式(II)のその他の実施形態では、aは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、aは4である。式(II)の一部の実施形態では、aは5である。式(II)の他の実施形態では、aは6である。式(II)のその他の実施形態では、aは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、aは8である。式(II)の一部の実施形態では、aは9である。式(II)の他の実施形態では、aは10である。式(II)のその他の実施形態では、aは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、aは12である。式(II)の一部の実施形態では、aは13である。式(II)の他の実施形態では、aは14である。式(II)のその他の実施形態では、aは15である。式(II)のさらに他の実施形態では、aは16である。
【0278】
式(II)の一部の実施形態では、bは1である。式(II)の他の実施形態では、bは2である。式(II)のその他の実施形態では、bは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、bは4である。式(II)の一部の実施形態では、bは5である。式(II)の他の実施形態では、bは6である。式(II)のその他の実施形態では、bは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、bは8である。式(II)の一部の実施形態では、bは9である。式(II)の他の実施形態では、bは10である。式(II)のその他の実施形態では、bは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、bは12である。式(II)の一部の実施形態では、bは13である。式(II)の他の実施形態では、bは14である。式(II)のその他の実施形態では、bは15である。式(II)のさらに他の実施形態では、bは16である。
【0279】
式(II)の一部の実施形態では、cは1である。式(II)の他の実施形態では、cは2である。式(II)のその他の実施形態では、cは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、cは4である。式(II)の一部の実施形態では、cは5である。式(II)の他の実施形態では、cは6である。式(II)のその他の実施形態では、cは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、cは8である。式(II)の一部の実施形態では、cは9である。式(II)の他の実施形態では、cは10である。式(II)のその他の実施形態では、cは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、cは12である。式(II)の一部の実施形態では、cは13である。式(II)の他の実施形態では、cは14である。式(II)のその他の実施形態では、cは15である。式(II)のさらに他の実施形態では、cは16である。
【0280】
式(II)の一部のある特定の実施形態では、dは0である。式(II)の一部の実施形態では、dは1である。式(II)の他の実施形態では、dは2である。式(II)のその他の実施形態では、dは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、dは4である。式(II)の一部の実施形態では、dは5である。式(II)の他の実施形態では、dは6である。式(II)のその他の実施形態では、dは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、dは8である。式(II)の一部の実施形態では、dは9である。式(II)の他の実施形態では、dは10である。式(II)のその他の実施形態では、dは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、dは12である。式(II)の一部の実施形態では、dは13である。式(II)の他の実施形態では、dは14である。式(II)のその他の実施形態では、dは15である。式(II)のさらに他の実施形態では、dは16である。
【0281】
式(II)の一部の実施形態では、eは1である。式(II)の他の実施形態では、eは2である。式(II)のその他の実施形態では、eは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、eは4である。式(II)の一部の実施形態では、eは5である。式(II)の他の実施形態では、eは6である。式(II)のその他の実施形態では、eは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、eは8である。式(II)の一部の実施形態では、eは9である。式(II)の他の実施形態では、eは10である。式(II)のその他の実施形態では、eは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、eは12である。
【0282】
式(II)の一部の実施形態では、fは1である。式(II)の他の実施形態では、fは2である。式(II)のその他の実施形態では、fは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、fは4である。式(II)の一部の実施形態では、fは5である。式(II)の他の実施形態では、fは6である。式(II)のその他の実施形態では、fは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、fは8である。式(II)の一部の実施形態では、fは9である。式(II)の他の実施形態では、fは10である。式(II)のその他の実施形態では、fは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、fは12である。
【0283】
式(II)の一部の実施形態では、gは1である。式(II)の他の実施形態では、gは2である。式(II)のその他の実施形態では、gは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、gは4である。式(II)の一部の実施形態では、gは5である。式(II)の他の実施形態では、gは6である。式(II)のその他の実施形態では、gは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、gは8である。式(II)の一部の実施形態では、gは9である。式(II)の他の実施形態では、gは10である。式(II)のその他の実施形態では、gは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、gは12である。
【0284】
式(II)の一部の実施形態では、hは1である。式(II)の他の実施形態では、eは2である。式(II)のその他の実施形態では、hは3である。式(II)のさらに他の実施形態では、hは4である。式(II)の一部の実施形態では、eは5である。式(II)の他の実施形態では、hは6である。式(II)のその他の実施形態では、hは7である。式(II)のさらに他の実施形態では、hは8である。式(II)の一部の実施形態では、hは9である。式(II)の他の実施形態では、hは10である。式(II)のその他の実施形態では、hは11である。式(II)のさらに他の実施形態では、hは12である。
【0285】
式(II)の一部の他の種々の実施形態では、aとdは同じである。一部の他の実施形態では、bとcは同じである。式(II)の一部の他の特定の実施形態ではaとdは同じであり、bとcは同じである。
【0286】
aとbの合計およびcとdの合計は、所望の特性を有する脂質を得るために変動させることができる因子である。式(II)の一実施形態では、aおよびbは、それらの合計が14から24の範囲の整数になるように選択される。式(II)の他の実施形態では、cおよびdは、それらの合計が14から24の範囲の整数になるように選択される。式(II)のさらなる実施形態では、aとbの合計およびcとdの合計は同じである。例えば、式(II)の一部の実施形態では、aとbの合計およびcとdの合計は、どちらも14から24の範囲であり得る同じ整数である。式(II)のなおその他の実施形態では、a、b、cおよびdは、aとbの合計およびcとdの合計が12またはそれよりも大きくなるように選択される。
【0287】
1a、R2a、R3aおよびR4aにおける置換基は、特に限定されない。一部の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、Hである。式(II)のある特定の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aは、各出現につき、Hである。式(II)のある特定の他の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、C~C12アルキルである。ある特定の他の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、C~Cアルキルである。式(II)のある特定の他の実施形態では、R1a、R2a、R3aおよびR4aの少なくとも1つは、C~Cアルキルである。式(II)の前述の実施形態の一部では、C~Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0288】
式(II)の前述のある特定の実施形態では、R1a、R1b、R4aおよびR4bは、各出現につき、C~C12アルキルである。
【0289】
式(II)のさらなる実施形態では、R1b、R2b、R3bおよびR4bの少なくとも1つは、Hである、またはR1b、R2b、R3bおよびR4bは、各出現につき、Hである。
【0290】
式(II)のある特定の実施形態では、R1bは、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR1bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。式(II)の他の実施形態では、R4bが、それが結合している炭素原子と一緒に、隣接するR4bおよびそれが結合している炭素原子と一緒になって炭素-炭素二重結合を形成している。
【0291】
およびRにおける置換基は、前述の実施形態では特に限定されない。式(II)のある特定の実施形態では、RまたはRの一方は、メチルである。他の実施形態では、RまたはRのそれぞれがメチルである。
【0292】
における置換基は、前述の実施形態では特に限定されない。式(II)のある特定の実施形態では、Rは、C~C16アルキルである。一部の他の実施形態では、Rは、C~Cアルキルである。式(II)のこれらの実施形態の一部では、Rは、-(C=O)OR、-O(C=O)R、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NR、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NR、-NRC(=O)OR、-NRS(O)NR、-NRS(O)または-S(O)NRで置換されており、ここで、Rは、HまたはC~C12アルキルであり;Rは、C~C15アルキルであり、xは、0、1または2である。例えば、一部の実施形態では、Rは、-(C=O)ORまたは-O(C=O)Rで置換されている。
【0293】
式(II)の種々の前述の実施形態では、Rは、分枝状C~C15アルキルである。例えば、式(II)の一部の実施形態では、Rは、以下の構造:
【化25】
のうちの1つを有する。
【0294】
前述の式(II)他のある特定の実施形態では、RまたはRの一方は、メチルである。他の実施形態では、RおよびRの両方がメチルである。
【0295】
式(II)の一部の異なる実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に5員、6員または7員複素環式環を形成している。式(II)の一部の実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に5員複素環式環、例えば、ピロリジニル環を形成している。式(II)の一部の異なる実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に6員複素環式環、例えば、ピペラジニル環を形成している。
【0296】
式(II)のさらに他の実施形態では、Gは、C~Cアルキレン、例えば、Cアルキレンである。
【0297】
種々の異なる実施形態では、LNPは、以下の表IIに記載されている構造の1つを有する化合物を含む。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0298】
上記の式(II)の化合物の任意の実施形態、ならびに上記の式(II)の化合物の任意の特定の置換基および/または変数は、独立に、式(II)の化合物の他の実施形態ならびに/または置換基および/もしくは変数と組み合わせて、上で具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成することができることが理解される。さらに、特定の実施形態および/または請求項において任意の特定のR基、L基、G基、または変数a~h、またはxに関して置換基および/または変数の一覧が列挙されている場合には、個々の置換基および/または変数それぞれを特定の実施形態および/または請求項から削除することができること、ならびに残りの置換基および/または変数の一覧は本発明の範囲内に入るとみなされることが理解される。
【0299】
本説明において、示されている式の置換基および/または変数の組合せは、そのような寄与により安定な化合物がもたらされる場合にのみ許容されることが理解される。
【0300】
一部の実施形態では、式(II)の化合物の任意の1つまたは複数および遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、式(II)の化合物のいずれか、ならびに遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチド、ならびに中性脂質、ステロイドおよびポリマーとコンジュゲートした脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む。他の薬学的に許容される賦形剤および/または担体も組成物の種々の実施形態に含めることができる。
【0301】
一部の実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。一部の実施形態では、中性脂質は、DSPCである。種々の実施形態では、化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1から約8:1の範囲である。
【0302】
種々の実施形態では、組成物は、ステロイドまたはステロイド類似体をさらに含む。ある特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド類似体は、コレステロールである。これらの実施形態の一部では、化合物とコレステロールとのモル比は、約2:1から1:1の範囲である。
【0303】
種々の実施形態では、ポリマーとコンジュゲートした脂質は、ペグ化脂質である。例えば、一部の実施形態は、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などのペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタン二酸(PEG-S-DMG)などのPEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートもしくは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどのPEGジアルコキシプロピルカルバメートを含む。種々の実施形態では、化合物とペグ化脂質とのモル比は、約100:1から約25:1の範囲である。
【0304】
一部の実施形態では、LNPは、遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドおよび次式(III):
【化26】
(式中、
またはLの一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-であり、LまたはLの他方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-もしくは-NRC(=O)O-または直接結合であり;
およびGは、それぞれ独立に、非置換C~C12アルキレンまたはC~C12アルケニレンであり;
は、C~C24アルキレン、C~C24アルケニレン、C~Cシクロアルキレン、C~Cシクロアルケニレンであり;
は、HまたはC~C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C24アルキルまたはC~C24アルケニルであり;
は、H、OR、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NRC(=O)Rであり;
E Rは、C~C12アルキルであり;
は、HまたはC~Cアルキルであり;
xは、0、1または2である)
を有する脂質化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【0305】
式(III)の前述の実施形態の一部では、化合物は、以下の構造(IIIA)または(IIIB):
【化27】
(式中、
Aは、3~8員シクロアルキルまたはシクロアルキレン環であり;
は、各出現につき、独立に、H、OHまたはC~C24アルキルであり;
nは、1から15の範囲の整数である)のうちの一方を有する。
【0306】
式(III)の前述の実施形態の一部では、化合物は、構造(IIIA)を有し、式(III)の他の実施形態では、化合物は、構造(IIIB)を有する。
【0307】
式(III)の他の実施形態では、化合物は、以下の構造(IIIC)または(IIID):
【化28】
(式中、yおよびzは、それぞれ独立に、1から12の範囲の整数である)のうちの一方を有する。
【0308】
式(III)の前述の実施形態のいずれかでは、LまたはLの一方は-O(C=O)-である。例えば、式(III)の一部の実施形態では、LおよびLのそれぞれが-O(C=O)-である。式(III)の一部の異なる実施形態では、LおよびLは、それぞれ独立に、-(C=O)O-または-O(C=O)-である。例えば、式(III)の一部の実施形態では、LおよびLのそれぞれが-(C=O)O-である。
【0309】
式(III)の一部の異なる実施形態では、化合物は、以下の構造(IIIE)または(IIIF)のうちの一方を有する:
【化29】
【0310】
式(III)の前述の実施形態の一部では、化合物は、以下の構造(IIIG)、(IIIH)、(III I)または(IIIJ)のうちの1つを有する:
【化30】
【化31】
【0311】
式(III)の前述の実施形態の一部では、nは、2から12まで、例えば、2から8までまたは2から4の範囲の整数である。例えば、式(III)の一部の実施形態では、nは、3、4、5または6である。式(III)の一部の実施形態では、nは3である。式(III)の一部の実施形態では、nは4である。式(III)の一部の実施形態では、nは5である。式(III)の一部の実施形態では、nは6である。
【0312】
式(III)の一部の他の前述の実施形態では、yおよびzは、それぞれ独立に、2から10の範囲の整数である。例えば、式(III)の一部の実施形態では、yおよびzは、それぞれ独立に、4から9までまたは4から6の範囲の整数である。
【0313】
式(III)の前述の実施形態の一部では、Rは、Hである。式(III)の前述の実施形態の他のものでは、Rは、C~C24アルキルである。式(III)の他の実施形態では、Rは、OHである。
【0314】
式(III)の一部の実施形態では、Gは、置換されていない。式(III)の他の実施形態では、G3は、置換されている。式(III)の種々の異なる実施形態では、Gは、直鎖状C~C24アルキレンまたは直鎖状C~C24アルケニレンである。
【0315】
式(III)の一部の他の前述の実施形態では、RもしくはR、または両方がC~C24アルケニルである。例えば、式(III)の一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、以下の構造:
【化32】
(式中、R7aおよびR7bは、各出現につき、独立に、HまたはC~C12アルキルであり、aは、2から12までの整数であり、R7a、R7bおよびaは、それぞれ、RおよびRがそれぞれ独立に炭素原子を6個から20個まで含むように選択される)を有する。例えば、式(III)の一部の実施形態では、aは、5から9までまたは8から12の範囲の整数である。
【0316】
式(III)の前述の実施形態の一部では、R7aの少なくとも1つの出現は、Hである。例えば、式(III)の一部の実施形態では、R7aは、各出現につき、Hである。式(III)の他の異なる実施形態では、R7bの少なくとも1つの出現は、C~Cアルキルである。例えば、式(III)の一部の実施形態では、C~Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0317】
式(III)の異なる実施形態では、RもしくはR、または両方は、以下の構造のうちの1つを有する:
【化33】
【0318】
式(III)の前述の実施形態の一部では、Rは、OH、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NHC(=O)Rである。式(III)の一部の実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。
【0319】
式(III)の種々の異なる実施形態では、LNPは、以下の表IIIに記載されている構造のうちの1つを有する化合物を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【0320】
上記の構造(III)の化合物の任意の実施形態、ならびに上記の化合物の構造(III)の任意の特定の置換基および/または変数は、独立に、構造(III)の化合物の他の実施形態ならびに/または置換基および/もしくは変数と組み合わせて、上で具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成することができることが理解される。さらに、特定の実施形態および/または請求項において任意の特定のR基、L基、G基、A基、または変数a、n、x、y、もしくはzに関して置換基および/または変数の一覧が列挙されている場合には、個々の置換基および/または変数それぞれを特定の実施形態および/または請求項から削除することができること、ならびに残りの置換基および/または変数の一覧は本発明の範囲内に入るとみなされることが理解される。
【0321】
本説明において、示されている式の置換基および/または変数の組合せは、そのような寄与により安定な化合物がもたらされる場合にのみ許容されることが理解される。
【0322】
一部の実施形態では、構造(III)の化合物の任意の1つまたは複数および遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。例えば、一部の実施形態では、LNPは、構造(III)の化合物のいずれか、ならびに遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチド、ならびに中性脂質、ステロイドおよびポリマーとコンジュゲートした脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む。他の薬学的に許容される賦形剤および/または担体も組成物の種々の実施形態に含めることができる。
【0323】
一部の実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。一部の実施形態では、中性脂質は、DSPCである。種々の実施形態では、化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1から約8:1の範囲である。
【0324】
種々の実施形態では、組成物は、ステロイドまたはステロイド類似体をさらに含む。ある特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド類似体は、コレステロールである。これらの実施形態の一部では、化合物とコレステロールとのモル比は、約5:1から1:1の範囲である。
【0325】
本明細書に開示されるLNPの種々の実施形態では、ポリマーとコンジュゲートした脂質は、ペグ化脂質である。例えば、一部の実施形態は、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などのペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタン二酸(PEG-S-DMG)などのPEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートもしくは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどのPEGジアルコキシプロピルカルバメートを含む。種々の実施形態では、化合物とペグ化脂質とのモル比は、約100:1から約20:1の範囲である。
【0326】
一部の実施形態では、LNPは、遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドおよび次式(IV):
【化34】
(式中、
は、-O(C=O)R、-(C=O)OR、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NRまたは-NRC(=O)ORであり;
は、-O(C=O)R、-(C=O)OR、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NR;-NRC(=O)ORまたは直接結合であり;
およびGは、それぞれ独立に、C~C12アルキレンまたはC~C12アルケニレンであり;
は、C~C24アルキレン、C~C24アルケニレン、C~CシクロアルキレンまたはC~Cシクロアルケニレンであり;
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、HまたはC~C12アルキルまたはC~C12アルケニルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C12アルキルまたはC~C12アルケニルであり;
およびRは、それぞれ独立に、分枝状C~C24アルキルまたは分枝C~C24アルケニルであり;
は、-C(=O)N(R)Rまたは-C(=O)ORであり;
は、C~C12アルキルであり;
は、HまたはC~CアルキルまたはC~Cアルケニルであり;
は、H、アリールまたはアラルキルであり;
xは、0、1または2である)
を有する脂質化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【0327】
式(IV)のある特定の実施形態では、Gは、置換されていない。その他の特定の実施形態では、Gは、C~C12アルキレンであり、例えば、一部の実施形態では、Gは、C~Cアルキレンである、または他の実施形態では、Gは、C~C12アルキレンである。
【0328】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、化合物は、以下の構造(IVA):
【化35】
(式中、yおよびzは、それぞれ独立に、2から12の範囲の整数である)を有する。
【0329】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、Lは、-O(C=O)R、-(C=O)ORまたは-C(=O)NRであり、Lは、-O(C=O)R、-(C=O)ORまたは-C(=O)NRである。例えば、一部の実施形態では、LおよびLのそれぞれが、-(C=O)O-である。他の実施形態では、Lは-(C=O)ORであり、Lは-C(=O)NRである。
【0330】
前述の式(IV)の化合物の他の実施形態では、化合物は、以下の構造(IVB)、(IVC)または(IVD)のうちの1つを有する:
【化36】
【0331】
前述の実施形態の一部では、化合物は、構造(IVB)を有し、他の実施形態では、化合物は、構造(IVC)を有し、さらに他の実施形態では、化合物は、構造(VID)を有する。
【0332】
前述の一部の異なる実施形態では、化合物は、以下の構造(IVE)、(VIF)または(IVG):
【化37】
(式中、yおよびzは、それぞれ独立に、2から12の範囲の整数である)のうちの1つを有する。
【0333】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、yおよびzは、それぞれ独立に、2から10まで、2から8まで、4から10までまたは4から7の範囲の整数である。例えば、式(IV)の一部の実施形態では、yは、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。式(IV)の一部の実施形態では、zは、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。式(IV)の一部の実施形態では、yとzは同じであり、他の実施形態では、yおよびzは異なる。
【0334】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、RもしくはR、または両方が分枝状C~C24アルキルである。例えば、式(IV)の一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、以下の構造:
【化38】
(式中、
7aおよびR7bは、各出現につき、独立に、HまたはC~C12アルキルであり;
aは、2から12までの整数であり、
7a、R7bおよびaは、それぞれ、RおよびRがそれぞれ独立に炭素原子を6個から20個までを含むように選択される)を有する。例えば、一部の実施形態では、aは、5から9までまたは8から12の範囲の整数である。
【0335】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、R7aの少なくとも1つの出現は、Hである。例えば、式(IV)の一部の実施形態では、R7aは、各出現につき、Hである。前述の式(IV)の化合物の他の異なる実施形態では、R7bの少なくとも1つの出現は、C~Cアルキルである。例えば、一部の実施形態では、C~Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0336】
式(IV)の異なる実施形態では、RもしくはR、または両方は、以下の構造のうちの1つを有する:
【化39】
【0337】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、C~C12アルキルである。例えば、式(IV)の一部の実施形態では、R、R、RおよびRは、n-ヘキシルであり、他の実施形態では、R、R、RおよびRは、n-オクチルである。
【0338】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、Rは、-C(=O)N(R)Rである。式(IV)のその他の特定の実施形態では、Rは、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチルまたはn-ノニルである。式(IV)のある特定の実施形態では、Rは、H、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0339】
式(IV)の一部の実施形態では、Rは、-C(=O)ORである。式(IV)のある特定の実施形態では、Rは、ベンジルであり、他の実施形態では、Rは、Hである。
【0340】
式(IV)の前述の実施形態の一部では、R、RおよびRは、独立に、-OR、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-C(=O)R、-OC(=O)R、-C(=O)ORおよび-OROHからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で、必要に応じて置換されており、ここで、
は、各出現につき、独立に、HまたはC~Cアルキルであり;
は、各出現につき、独立に、C~Cアルキルであり;
は、各出現につき、独立に、C~Cアルキレンである。
【0341】
式(IV)のある特定の個別の実施形態では、Rは、以下の構造のうちの1つを有する:
【化40】
【0342】
式(IV)の種々の異なる実施形態では、化合物は、以下の表IVに記載されている構造のうちの1つを有する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0343】
上記の式(IV)の化合物の任意の実施形態、ならびに上記の式(IV)の化合物の任意の特定の置換基および/または変数は、独立に、式(IV)の化合物の他の実施形態ならびに/または置換基および/もしくは変数と組み合わせて、上で具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成することができることが理解される。さらに、特定の実施形態および/または請求項において任意の特定のR基、L基、G基、または変数a、x、y、もしくはzに関して置換基および/または変数の一覧が列挙されている場合には、個々の置換基および/または変数それぞれを特定の実施形態および/または請求項から削除することができること、ならびに残りの置換基および/または変数の一覧は本発明の範囲内に入るとみなされることが理解される。
【0344】
本説明において、示されている式の置換基および/または変数の組合せは、そのような寄与により安定な化合物がもたらされる場合にのみ許容されることが理解される。
【0345】
一部の実施形態では、式(IV)の化合物の任意の1つまたは複数および遺伝子編集/遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、式(IV)の化合物のいずれか、ならびに遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチド、ならびに中性脂質、ステロイドおよびポリマーとコンジュゲートした脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む。他の薬学的に許容される賦形剤および/または担体も組成物の種々の実施形態に含めることができる。
【0346】
一部の実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。一部の実施形態では、中性脂質は、DSPCである。種々の実施形態では、化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1から約8:1の範囲である。
【0347】
種々の実施形態では、組成物は、ステロイドまたはステロイド類似体をさらに含む。ある特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド類似体は、コレステロールである。これらの実施形態の一部では、化合物とコレステロールとのモル比は、約5:1から1:1の範囲である。
【0348】
種々の実施形態では、ポリマーとコンジュゲートした脂質は、ペグ化脂質である。例えば、一部の実施形態は、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などのペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタン二酸(PEG-S-DMG)などのPEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートもしくは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどのPEGジアルコキシプロピルカルバメートを含む。種々の実施形態では、化合物とペグ化脂質とのモル比は、約100:1から約20:1の範囲である。
【0349】
一部の実施形態では、LNPは、次式(V):
【化41】
(式中、
およびRは、それぞれ独立に、炭素原子を10個から30まで含有する、直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル鎖であり、ここで、アルキル鎖は、必要に応じて1つまたは複数のエステル結合によって遮られている;wは、30から60の範囲の平均値を有する)
を有するペグ化脂質またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を含む。
【0350】
式(V)の一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子を12個から16個まで含む直鎖状の飽和アルキル鎖である。他の実施形態では、平均wは、約45である。
【0351】
式(V)の他の実施形態では、平均wは、42から55の範囲である。例えば、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54または55。一部の特定の実施形態では、wは、約49である。
【0352】
一部の実施形態では、ペグ化脂質は、以下の構造(Va):
【化42】
(式中、平均wは、約49である)を有する。
【0353】
送達
投与目的に関して、本発明のLNPは、未加工の化学物質として投与することもでき、または医薬組成物として製剤化することもできる。本発明の医薬組成物は、遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドなどの治療剤を含むLNP、構造(I)、(II)、(III)および/または(IV)の化合物、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。構造(I)、(II)、(III)および/または(IV)の化合物は、組成物中に、脂質ナノ粒子を形成し、例えば、特定の目的の疾患または状態を処置するために治療剤を送達するために有効な量で存在する。適切な濃度および投与量は、当業者が容易に決定することができる。
【0354】
タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ)、ポリヌクレオチドならびに/または本明細書に記載されるタンパク質および/もしくポリヌクレオチドを含む組成物は、例えばタンパク質および/またはmRNA構成成分を含むLNPの注射によってを含む任意の適する手段によって標的細胞に送達することができる。
【0355】
適する細胞としては、真核および原核細胞ならびに/または細胞株が挙げられるがこれらに限定されない。そのような細胞またはそのような細胞から生成された細胞株の非限定的例は、T細胞、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞を含む。ある特定の実施形態では細胞株は、CHO-K1、MDCKまたはHEK293細胞株である。適する細胞は、例として、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、造血幹細胞、ニューロン幹細胞および間葉系幹細胞などの幹細胞も含む。
【0356】
DNA結合ドメインを含むタンパク質を送達する方法はまた、例えば、その全ての開示は参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に記載されるものを包含する。
【0357】
DNA結合ドメインおよび本明細書に記載されるこれらのDNA結合ドメインを含む融合タンパク質も、1つまたは複数のDNA結合タンパク質をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することができる。さらに、さらなる核酸(例えば、ドナー)もこれらのベクターを介して送達することができる。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどを限定されずに含む、任意のベクター系を使用することができる。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号も参照。さらに、これらのベクターのいずれもが1つもしくは複数のDNA結合タンパク質コード配列および/またはさらなる核酸を必要に応じて含むことができることは明らかである。それにより、本明細書に記載される1つまたは複数のDNA結合タンパク質、および必要に応じてさらなるDNAが細胞に導入される場合、それらは同じベクター上でまたは異なるベクター上で運ばれ得る。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは1つまたは複数のDNA結合タンパク質をコードする配列および所望のさらなる核酸を含むことができる。
【0358】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移行法は、工学技術で作製されたDNA結合タンパク質をコードする核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入するために、ならびに所望のさらなるヌクレオチド配列を共導入するために使用することができる。そのような方法は、核酸(例えば、DNA結合タンパク質および/またはドナーをコードする)を細胞にin vitro投与するために使用できる。ある特定の実施形態では、核酸は、in vivoまたはex vivo遺伝子治療用途のために投与される。非ウイルス性のベクター送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系にはDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれ、それらは、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson、Science 256巻:808~813頁(19
92年);NabelおよびFelgner、TIBTECH 11巻:211~217頁(1993年);MitaniおよびCaskey、TIBTECH 11巻:162~166頁(1993年);Dillon、TIBTECH 11巻:167~175頁(1993年);Miller、Nature 357巻:455~
460頁(1992年);Van Brunt、Biotechnology 6巻(10号):1149~1
154頁(1988年);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8巻:35~36頁(1995年);KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin
51巻(1号):31~44頁(1995年);Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Boehm(編)(1995年);およびYu
ら、Gene Therapy 1巻:13~26頁(1994年)を参照のこと。
【0359】
核酸の非ウイルス性の送達方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、脂質ナノ粒子、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、mRNA、人工ビリオンおよび作用物質によって強化されたDNAの取込みが含まれる。例えばSonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションを、核酸の送達のために使用することもできる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の核酸は、mRNAとして送達される。同様に好ましいのは、翻訳効率の増加のためおよび/またはmRNA安定性のためのキャッピングされたmRNAの使用である。特に好ましいのは、ARCA(抗リバースキャップ類似物)キャップまたはそのバリアントである。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,074,596号および第8,153,773号を参照。
【0360】
さらなる例示的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが含まれる、(例えば、US6008336を参照のこと)。リポフェクションは、例えば、US5,049,386;US4,946,787;およびUS4,897,355に記載され、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)、Lipofectin(商標)およびLipofectamine(商標)RNAiMAX))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションのために適するカチオン性および中性脂質には、Felgner、WO91/17424、WO91/16024のものが含まれる。送達は、細胞に対して(ex vivo投与)、または標的組織に対して(in vivo投与)であり得る。
【0361】
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、Science 270巻:404~410頁(1995年);Blaeseら、Cancer Gene Ther.2巻:291~297頁(1995年);Behrら、Bioconjugate Chem.5巻:382~389頁(1994年);Remyら、Bioconjugate Chem.5
巻:647~654頁(1994年);Gaoら、Gene Therapy 2巻:710~722頁(1995年);Ahmadら、Cancer Res.52巻:4817~4820頁(1992年)
;米国特許第4,186,183号、4,217,344号、4,235,871号、4,261,975号、4,485,054号、4,501,728号、4,774,085号、4,837,028号および4,946,787号を参照のこと)。
【0362】
送達のさらなる方法には、送達する核酸をEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)にパッケージすることの使用が含まれる。これらのEDVは、二重特異的抗体の1つのアームが標的組織への特異性を有し、他方がEDVへの特異性を有する二重特異的抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体はEDVを標的細胞表面に運び、次に、EDVはエンドサイトーシスによって細胞に運ばれる。細胞に入ると、内容物は放出される(MacDiarmidら(2009年)Nature Biotechnology 27巻(7号):643頁を参照
されたい)。
【0363】
所望により、工学技術で作製されたDNA結合タンパク質、および/またはドナーをコードする核酸の送達のための、RNAウイルスベースのまたはDNAウイルスベースの系の使用は、体内の特異的細胞にウイルスを向かわせて、核にウイルスのペイロードを輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接的に(in vivoで)投与することができるか、または、それらは細胞をin vitroで処置するために使用することができ、改変された細胞は患者に(ex vivoで)投与される。核酸の送達のための従来のウイルスベースの系には、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ワクシニアベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが限定されずに含まれる。宿主ゲノムへの組込みは、レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス遺伝子導入方法で可能であり、挿入される導入遺伝子の長期発現をしばしばもたらす。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において、高い形質導入効率が観察された。
【0364】
外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的標的集団を拡張することによって、レトロウイルスの向性を変更することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させ、高いウイルス力価を一般的にもたらすことができるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最高6~10kbの外来配列のためのパッケージング能力を有するシス作用性ロングターミナルリピートで構成される。ベクターの複製およびパッケージングのために最小限のシス作用性LTRが十分であり、それらは次に、恒久的導入遺伝子発現を提供するために標的細胞の中に治療的遺伝子を組み込むために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくものおよびそれらの組合せが含まれる(例えば、Buchscherら、J. Virol.66巻:2731~2739頁(1992年);Johannら、J. Virol.66巻:1635~1640頁(1992年);Sommerfeltら、Virol.176巻:
58~59頁(1990年);Wilsonら、J. Virol.63巻:2374~2378頁(1989年);Millerら、J. Virol.65巻:2220~2224頁(1991年);PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0365】
一過性の発現が好まれる適用では、アデノウイルスをベースにした系を使用することができる。アデノウイルスをベースにしたベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターで、高い力価および高レベルの発現が得られた。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、例えば、核酸およびペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入するためにも使用される(例えば、Westら、Virology 160巻:38~47頁(1987年);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin、Human Gene Therapy 5巻:793~80
1頁(1994年);Muzyczka、J. Clin. Invest.94巻:1351頁(1994年)を参照のこと。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol.5巻:3251~3260頁(1985年);Tratschinら、Mol. Cell. Biol.4巻:2072~2081頁(1984年);HermonatおよびMuzyczka、PNAS USA 81巻:6466~6470頁(1984年);およびSamulskiら、J. Virol.63巻:03822~3828頁(1989年)を含む、いくつかの刊行物に
記載されている。
【0366】
臨床試験での遺伝子導入のために少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが今日利用でき、それらは、形質導入剤を生成するためにヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠損ベクターの補完を含むアプローチを利用する。
【0367】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験で使用されたレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood 85巻:3048~305頁(1995年);Kohnら、Nat. Med.1巻:1017~102頁(1995年);Malechら、PNAS USA 94巻:22 12133~12138頁(1997年))。PA317/pLASNは、遺伝子治療治験で使用された最初の治療的ベクターであった。(Blaeseら、Science 270巻:475
~480頁(1995年))。MFG-Sパッケージベクターで、50%またはそれより高い形質導入効率が観察された。(Ellemら、Immunol Immunother.44巻(1号):1
0~20頁(1997年);Dranoffら、Hum. Gene Ther.1巻:111~2頁(1997年)。
【0368】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損非病原性パルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV 145bp逆方向末端反復だけを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組込みに起因する効率的な遺伝子導入および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特徴である。(Wagnerら、Lancet 351巻:9117 1702~3頁(1998年)、Kearnsら、Gene Ther.9巻:7
48~55頁(1996年))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9、AAVrh10ならびにAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6などの偽型化AAVを含む他のAAV血清型を、本発明に従って使用することもできる。
【0369】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高い力価で産生することができ、いくつかの異なる細胞型を容易に感染させることができる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1bおよび/またはE3遺伝子を置き換えるように工学技術で作製され、その後、複製欠損ベクターは欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増殖する。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋肉において見出されるものなどの非分裂、分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivoで形質導入させることができる。従来のAdベクターは、大きな運搬能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Stermanら、Hum. Gene Ther.7巻:1083~9頁(1998年))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Roseneckerら、Infection 24巻:1 5~10頁(1996年);Stermanら、Hum. Gene Ther.9巻:7号、1083~1089頁(1998年);Welshら、Hum. Gene Ther.2巻:205~18頁(1995年);Alvarezら、Hum. Gene Ther.5巻
:597~613頁(1997年);Topfら、Gene Ther.5巻:507~513頁(1
998年);Stermanら、Hum. Gene Ther.7巻:1083~1089頁(1998年)が含まれる。
【0370】
パッケージング細胞は、宿主細胞を感染させることが可能であるウイルス粒子を形成するために使用される。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージするψ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージするプロデューサー細胞株によって通常生成される。ベクターは、パッケージングおよび以降の宿主への組込み(適用可能な場合)のために必要とされる最小限のウイルス配列を一般的に含有し、他のウイルス配列は発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる。欠落しているウイルスの機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、宿主ゲノムへのパッケージングおよび組込みのために必要であるAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列を一般的に所有するだけである。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするが、ITR配列を欠いているヘルパープラスミドを含有する細胞株にパッケージされる。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して、有意な量でパッケージされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によって低減することができる。さらに、AAVは、バキュロウイルス系を使用して製造することができる(例えば米国特許第6,723,551号および第7,271,002号を参照)。
【0371】
293またはバキュロウイルス系からのAAV粒子の精製は、典型的にはウイルスを産生する細胞の成長、続く細胞上清からのウイルス粒子の回収または、細胞を溶解することおよび粗溶解物からウイルスを回収することを含む。次にAAVは、イオン交換クロマトグラフィー(例えば米国特許第7,419,817号および第6,989,264号を参照)、イオン交換クロマトグラフィーならびにCsCl密度遠心分離(例えばPCT公開WO2011094198A10)、免疫親和性クロマトグラフィー(例えばWO2016128408)またはAVBセファロース(例えばGE Healthcare Life Sciences)を使用する精製を含む、当技術分野において公知の方法によって精製される。
【0372】
多くの遺伝子治療適用では、遺伝子治療ベクターが特定の組織型に高度の特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外部表面のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって所与の細胞型に対して特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型に存在することが公知である受容体に親和性を有するように選択される。例えば、Hanら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻:9747~9751頁(1995年))は、
モロニーマウス白血病ウイルスは、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変することができること、および組換えウイルスは、ヒト上皮増殖因子受容体を発現するある特定のヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス-標的細胞対に拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、選択される事実上いかなる細胞受容体に特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように、工学技術で作製することができる。上の記載はウイルスベクターに主に適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取込みを有利にする、特異的取込み配列を含有するように工学技術で作製することができる。
【0373】
CRISPR/Cas系の送達方法は、上記のこれらの方法を含むことができる。例えば、動物モデルにおいて、in vitroで転写されたCasをコードするmRNAまたは組換えCasタンパク質を1細胞期胚にガラス針を使用して直接注射して、動物をゲノム編集することができる。CasおよびガイドRNAをin vitroで細胞において発現させるために、典型的には、それらをコードするプラスミドを、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによって細胞にトランスフェクトする。また、組換えCasタンパク質とin vitroで転写されたガイドRNAの複合体を形成することができ、そこで、Cas-ガイドRNAリボ核タンパク質が目的の細胞に取り込まれる(Kim
ら(2014年)Genome Res 24巻(6号):1012頁)。治療目的では、Cas
およびガイドRNAをウイルスによる技法とウイルスによらない技法の組合せによって送達することができる。例えば、CasをコードするmRNAをナノ粒子送達によって送達することができ、一方で、ガイドRNAおよび任意の所望の導入遺伝子または修復鋳型をAAVによって送達する(Yinら(2016年)Nat Biotechnol 34巻(3号)、328頁)。
【0374】
遺伝子治療ベクターは、下記のように、一般的に全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内注入)または局所適用による、個々の患者への投与によってin vivoで送達することができる。あるいは、ベクターは、細胞に、例えば個々の患者から外植される細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)、または汎用性ドナー造血幹細胞にex vivoで送達することができ、続いて、通常ベクターを取り込んだ細胞の選択の後に、細胞を患者に再移植することができる。
【0375】
診断、研究、移植のための、または遺伝子治療のためのex vivo細胞トランスフェクション(例えば、宿主生物へのトランスフェクトした細胞の再注入を介して)は、当業者に周知である。好ましい実施形態では、細胞は、被験体生物から単離され、DNA結合タンパク質核酸(DNA-binding proteins nucleic acid)(遺伝子またはcDNA)を用いてトランスフェクトされ、被験体生物(例えば、患者)に再注入されて戻される。ex vivoトランスフェクションに適する種々の細胞型は、当業者に周知である(例えば、Freshneyら、Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique(第3版、1994年))および患者から細胞をどのように単離および培養するかについての考察について、それに引用される参考文献を参照)。
【0376】
一実施形態では、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためにex
vivo手順で使用される。幹細胞を使用する有利な点は、in vitroで幹細胞は他の細胞型に分化できること、または哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入することができ、そこで幹細胞が骨髄中で生着することである。GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインを使用して臨床に重要な免疫細胞型にCD34+細胞をin
vitroで分化させるための方法は公知である(Inabaら、J. Exp. Med. 176
巻:1693~1702頁(1992年)を参照)。
【0377】
幹細胞は、形質導入および分化のために公知の方法を使用して単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR-1(顆粒球)ならびにIad(分化した抗原提示細胞)などの不必要な細胞に結合する抗体を用いて骨髄細胞をパニングすることによって骨髄細胞から単離される(Inabaら、J. Exp. Med. 176巻:1693~1702頁(1992年)を参照)。
【0378】
改変された幹細胞はまた、一部の実施形態において使用することができる。例えば、アポトーシスに対して抵抗性にされたニューロン幹細胞は、幹細胞が本発明のZFP TFも含有する場合、治療用組成物として使用することができる。アポトーシへの抵抗性は、幹細胞において、例えば、BAX-特異的ZFNまたはBAK-特異的ZFNを使用して(米国特許出願第12/456,043号を参照)、または、カスパーゼ中で破壊されているもの、例えば再度カスパーゼ6特異的ZFNを使用して、BAXおよび/またはBAKをノックアウトすることによって生じさせることができる。
【0379】
治療用DNA結合タンパク質(またはこれらのタンパク質をコードする核酸)を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、in vivoでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。代替的に、裸のDNAを投与することができる。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される、注射、注入、局所適用およびエレクトロポレーションを限定されずに含む経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者に利用可能であり、周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路を使用することができるが、特定の経路が別の経路より速く(immediate)、より有効な反応を
しばしば提供することができる。
【0380】
DNAの造血幹細胞への導入のための方法は、例えば米国特許第5,928,638号に開示されている。造血幹細胞、例えばCD34+細胞への導入遺伝子の導入のために有用なベクターには、35型アデノウイルスが含まれる。
【0381】
免疫細胞(例えば、T細胞)への導入遺伝子の導入のために適切なベクターには、非組込み型のレンチウイルスベクターが含まれる。例えば、Oryら(1996年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:11382~11388頁;Dullら(1998年)J. Virol.72巻:8463~8471頁;Zufferyら(1998年)J. Virol.72巻:9873~9880頁;Follenziら(2000年)Nature Genetics 25巻:217~222頁を参照のこと。
【0382】
上記したように、開示された方法および組成物は、限定されずに、原核細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳動物細胞ならびに、T細胞および任意の種類の幹細胞を含むヒト細胞を含む、任意の種類の細胞において使用することができる。タンパク質発現のために適する細胞株は当業者に公知であり、限定されずにCOS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、perC6、Spodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、ならびにSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞を含む。これらの細胞株の後代、バリアントおよび派生物も使用することができる。
【0383】
組成物
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって一部決定される。
【0384】
本発明の組成物の投与は、同様の有用性をもたらすために許容される作用物質の投与形式のいずれかによって実施することができる。本発明の医薬組成物は、固体、半固体の形態、液体の形態または気体の形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、懸濁剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア剤、およびエアロゾル剤などに製剤化することができる。そのような医薬組成物の投与の典型的な経路としては、限定することなく、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣内、および鼻腔内が挙げられる。本明細書において使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内注射または注入技法を含む。本発明の医薬組成物は、組成物が患者に投与されると、その中に含有される活性成分が生物により利用可能になるように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、1回または複数回の投与量単位を取り、例えば、錠剤は単一の投与量単位であってよく、本発明の化合物のエアロゾル形態の容器に複数の投与量単位を保持することができる。そのような剤形の実際の調製方法は、公知である、または当業者には明らかになろう;例えば、Remington: The
Science and Practice of Pharmacy、第20版(Philadelphia College of Pharmacy and Science、2000年)を参照のこと。投与される組成物は、いずれにして
も、本発明の教示と一致して、目的の疾患または状態を処置するための治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を含有する。
【0385】
本発明の医薬組成物は、固体または液体の形態であってよい。一態様では、担体(複数可)は粒子であり、したがって、組成物は、例えば錠剤または散剤の形態である。担体(複数可)は、液体であってよく、組成物は、例えば、経口シロップ剤、注射用液剤またはエアロゾル剤であり、これは、例えば、吸入による投与に有用である。
【0386】
経口投与が意図されている場合、医薬組成物は固体または液体の形態であることが好ましく、ここで、本明細書で固体または液体のいずれかとみなされる形態には、半固体、半流動体、懸濁液およびゲルの形態が含まれる。
【0387】
経口投与用の固体組成物としては、医薬組成物を、散剤、顆粒剤、圧縮錠、丸剤、カプセル剤、チューインガム、ウェーハなどの形態に製剤化することができる。そのような固体組成物は、典型的には、1つまたは複数の不活性な希釈剤または食用担体を含有する。さらに、以下の1つまたは複数が存在してよい:結合物質、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなど;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトースまたはデキストリンなど、崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、トウモロコシデンプンなど;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotexなど;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリンなど;香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味物質など;および着色剤。
【0388】
医薬組成物がカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態である場合、医薬組成物は、上記の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体担体を含有することができる。
【0389】
医薬組成物は、液剤、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、溶剤、エマルション剤または懸濁剤の形態であってよい。液体は、2つの例として、経口投与用または注射による送達用の場合がある。経口投与が意図されている場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、防腐剤、色素/着色料および調味料の1つまたは複数を含有する。注射によって投与されることが意図された組成物では、界面活性物質、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤および等張化剤の1つまたは複数を含めることができる。
【0390】
本発明の液体の医薬組成物は、それが溶液であるか懸濁液であるかまたは他の同様の形態であるかにかかわらず、以下のアジュバントの1つまたは複数を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒としての機能を果たし得る合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒など;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および、張度を調整するための作用物質、例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖など;凍結保護物質としての機能を果たす作用物質、例えば、スクロースまたはトレハロースなど。非経口用調製物は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスまたはプラスチック製の複数回用量バイアルに封入することができる。生理食塩水が好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、滅菌されていることが好ましい。
【0391】
非経口投与または経口投与のいずれかが意図された本発明の液体の医薬組成物は、本発明の化合物を、適する投与量が得られる量で含有すべきである。
【0392】
本発明の医薬組成物は、局所的投与が意図されたものであってよく、その場合、担体は、液剤、エマルション剤、軟膏剤またはゲル基剤を適切に含むことができる。基剤は、例えば、以下:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定剤の1つまたは複数を含むことができる。局所的投与用の医薬組成物中には増粘剤が存在してよい。経皮投与が意図されている場合、組成物は、経皮吸収パッチまたはイオン導入デバイスを含むことができる。
【0393】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与が意図された、例えば、直腸内で溶けて薬物を放出する坐薬の形態であってよい。直腸内投与用の組成物は、適する非刺激性賦形剤として油性基材を含有することができる。そのような塩基としては、限定することなく、ラノリン、カカオバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0394】
本発明の医薬組成物は、固体または液体の投与量単位の物理的形態を改変する種々の材料を含むことができる。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティング殻を形成する材料を含むことができる。コーティング殻を形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラック、および他の腸溶コーティング剤から選択することができる。あるいは、活性成分をゼラチンカプセルで包むことができる。
【0395】
固体または液体の形態の本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に結合し、それにより、化合物の送達を補助する作用物質を含むことができる。この能力で作用することができる、適する作用物質には、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、またはタンパク質が含まれる。
【0396】
本発明の医薬組成物は、エアロゾル剤として投与することができる投与量単位からなってよい。エアロゾル剤という用語は、コロイド性の系から加圧パッケージからなる系にわたる種々の系を示すために使用される。送達は、活性成分を分配する、液化ガスもしくは圧縮ガスによるものまたは適するポンプ系によるものであってよい。本発明の化合物のエアロゾル剤は、活性成分(複数可)を送達するために、一相系、二相系、または三相系で送達することができる。エアロゾル剤の送達は、必要な容器、活性化因子、弁、副次容器などを含み、これらを一緒にしてキットを形成することができる。当業者は、過度な実験を伴わずに好ましいエアロゾル剤を決定することができる。
【0397】
本発明の医薬組成物は、製薬技術分野において周知の方法体系によって調製することができる。例えば、注射によって投与されることが意図された医薬組成物は、本発明の脂質ナノ粒子を滅菌された蒸留水または他の担体と組み合わせて、溶液を形成することによって調製することができる。均一な溶液または懸濁液の形成を促進するために界面活性物質を添加することができる。界面活性物質は、本発明の化合物と非共有結合により相互作用して、水性送達系中への化合物の溶解または均一な懸濁を促進する化合物である。
【0398】
本発明の組成物またはそれらの薬学的に許容される塩は、治療有効量で投与され、治療有効量は、使用される特定の治療剤の活性;治療剤の代謝安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事;投与の方式および時間;排出速度;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;および治療を受ける被験体を含めた種々の因子に応じて変動する。
【0399】
本発明の組成物は、1つまたは複数の他の治療剤の投与と同時に、その前に、またはその後に投与することもできる。そのような併用治療は、本発明の組成物の単一の医薬投薬形態(pharmaceutical dosage formulation)および1つまたは複数のさらなる活性薬剤の投与、ならびに本発明の組成物および各活性薬剤のそれ自体の別々の医薬投薬形態での投与を含む。例えば、本発明の組成物および他の活性薬剤を、患者に、錠剤もしくはカプセル剤などの単一の経口投薬組成物として一緒に投与することもでき、または各作用物質を、別々の経口投薬形態で投与することもできる。別々の投薬形態を使用する場合、本発明の化合物および1つまたは複数のさらなる活性薬剤は、基本的に同じ時間に、すなわち、同時に投与することもでき、または別々に時間をずらして、すなわち、逐次的に投与することもできる;併用治療は、これらのレジメン全てを含むものと理解される。
【0400】
上記の化合物および組成物の調製方法は本明細書において下に記載されており、かつ/または当技術分野で公知である。
【0401】
本明細書に記載のプロセスにおいて、中間化合物の官能基を適する保護基によって保護する必要があり得ることが当業者には理解されよう。そのような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに適する保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが含まれる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに適する保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。メルカプトに適する保護基には、C(O)R”(ここで、R”はアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが含まれる。カルボン酸に適する保護基には、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルが含まれる。保護基は、当業者には公知であり、本明細書に記載されている標準の技法に従って付加することまたは除去することができる。保護基の使用は、Green, T.W.およびP.G.M. Wutz、(1999年)、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wileyに詳細に記載されている。
当業者には理解される通り、保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂または2-クロロトリチル-塩化物樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
【0402】
さらに、遊離塩基または遊離酸の形態で存在する脂質は全て、適切な無機もしくは有機塩基または酸を用いて当業者に公知の方法によって処理することにより、それらの薬学的に許容される塩に変換することができる。脂質の塩は、標準の技法によってそれらの遊離塩基または遊離酸の形態に変換することができる。以下の反応スキームは、式(I)、(II)、(III)または(IV)の脂質を作製する方法を例示するものである。
【0403】
一般的な反応スキーム1
【化43】
式(I)の脂質の実施形態(例えば、化合物A-5)は、一般的な反応スキーム1(「方法A」)に従って調製することができ、ここで、Rは、飽和もしくは不飽和C~C24アルキルまたは飽和もしくは不飽和シクロアルキルであり、mは、0または1であり、nは、1から24までの整数である。一般的な反応スキーム1を参照して、構造A-1の化合物は、商業的な供給源から購入してもよいし、または当業者によく知られている方法に従って調製してもよい。A-1、A-2およびDMAPの混合物をDCCで処理して、臭化物A-3を得る。臭化物A-3、塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)およびN,N-ジメチルジアミンA-4の混合物を、あらゆる必然的なワークアップおよび/または精製ステップ後にA-5が生成するのに十分な温度で、そのために十分な時間にわたって加熱する。
【0404】
一般的な反応スキーム2
【化44】
式(I)の化合物の他の実施形態(例えば、化合物B-5)は、一般的な反応スキーム2(「方法B」)に従って調製することができ、ここで、Rは、飽和もしくは不飽和C~C24アルキルまたは飽和もしくは不飽和シクロアルキルであり、mは、0または1であり、nは、1から24までの整数である。一般的な反応スキーム2に示されている通り、構造B-1の化合物は、商業的な供給源から購入してもよいし、または当業者によく知られている方法に従って調製してもよい。B-1の溶液(1当量)を酸塩化物B-2(1当量)および塩基(例えば、トリエチルアミン)で処理する。粗生成物を酸化剤(例えば、クロロクロム酸ピリジニウム)で処理し、中間生成物B-3を回収する。次いで、粗製物B-3、酸(例えば、酢酸)、およびN,N-ジメチルアミノアミンB-4の溶液を還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)で処理して、任意の必要なワークアップおよび/または精製後にB-5を得る。
【0405】
出発材料A-1およびB-1は飽和メチレン炭素のみを含むものとして上に示されているが、炭素-炭素二重結合を含む化合物を調製するために炭素-炭素二重結合を含む出発材料を使用することもできることに留意するべきである。
【0406】
一般的な反応スキーム3
【化45】
異なる式(I)の脂質の実施形態(例えば、化合物C-7またはC9)は、一般的な反応スキーム3(「方法C」)に従って調製することができ、ここで、Rは、飽和もしくは不飽和C~C24アルキルまたは飽和もしくは不飽和シクロアルキルであり、mは、0または1であり、nは、1から24までの整数である。一般的な反応スキーム3を参照して、構造C-1の化合物は、商業的な供給源から購入してもよいし、または当業者によく知られている方法に従って調製してもよい。
【0407】
一般的な反応スキーム4
【化46】
式(II)の化合物の実施形態(例えば、化合物D-5およびD-7)は、一般的な反応スキーム4(「方法D」)に従って調製することができ、ここで、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R、R、R、R、L、L、G、G、G、a、b、cおよびdは、本明細書で定義されている通りであり、R7’は、RまたはC~C19アルキルを表す。一般的な反応スキーム1を参照して、構造D-1およびD-2の化合物は、商業的な供給源から購入してもよいし、または当業者によく知られている方法に従って調製してもよい。D-1およびD-2の溶液を、還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)で処理して、任意の必要なワークアップ後にD-3を得る。D-3および塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)の溶液を塩化アシルD-4(またはカルボン酸およびDCC)で処理して、任意の必要なワークアップおよび/または精製後にD-5を得る。D-5をLiAlH4 D-6で還元して、任意の必要なワークアップおよび/または精製後にD-7を得ることができる。
【0408】
一般的な反応スキーム5
【化47】
式(II)の脂質の実施形態(例えば、化合物E-5)は、一般的な反応スキーム5(「方法E」)に従って調製することができ、ここで、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R、R、R、R、R、L、L、G、a、b、cおよびdは、本明細書で定義されている通りである。一般的な反応スキーム2を参照して、構造E-1およびE-2の化合物は、商業的な供給源から購入するしてもよいし、または当業者によく知られている方法に従って調製してもよい。E-1(過剰量)、E-2および塩基(例えば、炭酸カリウム)の混合物を加熱して、任意の必要なワークアップ後にE-3を得る。E-3および塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)の溶液を塩化アシルE-4(またはカルボン酸およびDCC)で処理して、任意の必要なワークアップおよび/または精製後にE-5を得る。
【0409】
一般的な反応スキーム6
【化48】
一般的な反応スキーム6は、式(III)の脂質を調製するための例示的な方法(方法F)を提供する。一般的な反応スキーム6におけるG、G、RおよびRは、式(III)に関して本明細書で定義されている通りであり、G1’は、G1の炭素1つ分短いホモログを指す。構造F-1の化合物は、購入するか、または当技術分野で公知の方法に従って調製する。F-1とジオールF-2を適切な縮合条件下(例えば、DCC)で反応させることによってエステル/アルコールF-3を得、次いでそれを酸化して(例えば、PCC)アルデヒドF-4にすることができる。F-4とアミンF-5の還元的アミノ化条件下での反応によって式(III)の脂質を得る。
【0410】
一般的な反応スキーム7
【化49】
一般的な反応スキーム7(「方法G」)は、構造(IV)の化合物を調製するための例示的な方法を提供する。一般的な反応スキーム7におけるR、R、R、R、R、yおよびzは、本明細書で定義されている通りである。R’、X、mおよびnは、G-5、G-6、G-8、およびG-10が構造(IV)を有する化合物になるように選択される変数を指す。例えば、R’はRまたはRであり、XはBrであり、mは、yまたはzであり、nは、0から23の範囲の整数である。構造G-1の化合物は、購入するか、または当技術分野で公知の方法に従って調製する。アミン/酸G-1をアルコールG-2(例えば、ベンジルアルコール)を用い、適する条件および試薬(例えば、p-TSA)を使用して保護して、エステル/アミンG-3を得る。エステル/アミンG-3をエステルG-4とカップリングして(例えば、DIPEAを使用して)、ベンジルエステルG-5を得る。化合物G-5を、必要に応じて、適切な条件(例えば、Pd/C、H)を使用して脱保護して酸G-6を得る。酸G-6をアミンG-7と反応させて(例えば、塩化オキサリル/DMFを使用して)、アミドG-8を得ることもでき、あるいは、アルコールG-9と反応させて(例えば、DCC/DMAPを使用して)、エステルG-10を得ることもできる。G-5、G-6、G-8、およびG-10はそれぞれ構造(IV)の化合物である。
【0411】
一般的な反応スキーム8
【化50】
一般的な反応スキーム8(「方法H」)は、構造(IV)の化合物を調製するための例示的な方法を提供する。一般的な反応スキーム8におけるR、R、R、R、yおよびzは、本明細書で定義されている通りである。R’、X、mおよびnは、H-6が構造(IV)を有する化合物になるように選択される変数を指す。例えば、R’はRまたはRであり、XはBrであり、mはyまたはzであり、nは、0から23の範囲の整数である。構造H-1の化合物は、購入するか、または当技術分野で公知の方法に従って調製する。保護されたアミン/酸H-1とアミンH-2の反応を適切なカップリング条件下(例えば、NHS、DCC)で行って、アミドH-3を得る。酸性条件(例えば、TFA)を使用した脱保護ステップの後、アミンH-4をエステルH-5と適する条件下(例えば、DIPEA)でカップリングして、H-6、構造(IV)の化合物を得る。
【0412】
一般的な反応スキーム9
【化51】
一般的な反応スキーム9(「方法I」)は、構造(IV)の化合物を調製するための例示的な方法を提供する。一般的な反応スキーム9におけるR、R、R、R、R、yおよびzは、本明細書で定義されている通りである。R’、X、mおよびnは、I-7が構造(IV)を有する化合物になるように選択される変数を指す。例えば、R’はRまたはRであり、XはBrであり、mはyまたはzであり、nは、0から23の範囲の整数である。構造I-1、I-2、I-4およびI-5の化合物は、購入するか、または当技術分野で公知の方法に従って調製する。アミン/酸I-1とアルコールI-2の反応を適切なカップリング条件下(例えば、p-TSA)で行ってアミン/エステルI-3を得る。並行して、酸I-4とアミンI-5を適する条件下(例えば、塩化オキサリル/DMF)でカップリングすることによってアミドI-6を調製する。I-3およびI-6を塩基性条件下で(例えば、DIPEA)組み合わせて、I-7、構造(IV)の化合物を得る。
【0413】
当業者は、これらの化合物を同様の方法によってまたは当業者に公知の他の方法を組み合わせることによって作製することが可能であり得ることが理解される。当業者は、下記と同様に、構造(I)、(II)、(III)および(IV)の他の化合物を、適切な出発構成成分を使用し、必要に応じて合成パラメータを改変することによって作製することが可能であり得ることも理解される(さらに、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるPCT特許公開番号WO2015/199952、WO2017/004143およびWO2017/075531を参照のこと)。
【0414】
適用
疾患の処置および予防における、工学技術で作製された遺伝子治療の使用は、今後何年間も薬の最も意味のある開発の1つになることが予想される。本明細書に記載の方法および組成物は、所望の標的部位が切断の主要部位になることを確実にするために、これらの新規のツールの特異性を増大させるのに役立つ。in vitro、in vivoおよびex vivoにおける適用全てに関してこの技術の完全な潜在性を現実化するためにはオフターゲットの切断を最小化または排除することが求められる。
【0415】
例示的な遺伝子疾患には、軟骨無形成症、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(OMIM番号102700)、副腎白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、アルファ1アンチトリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不応症、アペール症候群、不整脈原性右室心筋症、異形成、毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangictasia)、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴム乳首様母斑
症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、ネコ鳴き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成症、ファンコニー貧血、進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasia ossificans progressive)、脆弱X症候群、ガラクトース血症(galactosemis)
、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター症候群(Klinefleter syndrome)、クラッペ病、ランガー・ギデオン症候群、白血球接着不全症(LA
D、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症(nephrogenic diabetes insipdius)、神経線維腫症、ニーマン・ピック病(Neimann-Pick disease)、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー・ウィリー症候群、早老症、プロテウ
ス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリポ症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、シュワックマン・ダイアモンド症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・サックス病、血小板減少橈骨欠損症(TAR)症候群、トリーチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル・リンダウ病(von Hippel-Landau disease)、ワールデンブルグ症候群、ウィリアムズ
症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖性症候群(XLP、OMIM番号308240)が限定されずに含まれる。
【0416】
標的化DNA切断および/または相同組換えによって処置することができるさらなる例示的な疾患には、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病およびテイ・サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)および血友病が含まれる。
【0417】
そのような方法により、遺伝子疾患を処置するために、宿主における感染(ウイルスまたは細菌)を処置することも可能になる(例えば、ウイルスまたは細菌受容体の発現を遮断し、それにより、宿主生物体における感染および/または拡散を予防することによって)。
【0418】
感染したまたは組み込まれたウイルスゲノムの標的化切断を使用して、宿主におけるウイルス感染を処置することができる。さらに、ウイルスに対する受容体をコードする遺伝子の標的化切断を使用して、そのような受容体の発現を遮断し、それにより、宿主生物体におけるウイルス感染および/またはウイルス拡散を予防することができる。ウイルス受容体(例えば、HIVに対するCCR5受容体およびCXCR4受容体)をコードする遺伝子の標的化変異誘発を使用して、受容体をウイルスに結合できなくし、それにより、新しい感染を予防し、既存の感染症の拡散を遮断することができる。米国特許出願第2008/015996号を参照のこと。標的化することができるウイルスまたはウイルス受容体の非限定的な例には、HSV-1およびHSV-2などの単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)、HHV6およびHHV7が含まれる。ウイルスの肝炎ファミリーには、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)が含まれる。Picornaviridae(例えば、ポリオウイルスなど);Caliciviridae;Togaviridae(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);Flaviviridae;Coronaviridae;Reoviridae;Birnaviridae;Rhabodoviridae(例えば、狂犬病ウイルスなど);Filoviridae;Paramyxoviridae(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);Orthomyxoviridae(例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスおよびC型インフルエンザウイルスなど);Bunyaviridae;Arenaviridae;Retroviradae;レンチウイルス(例えば、HTLV-I;HTLV-II;HIV-1(HTLV-III、LAV、ARV、hTLRなどとしても公知)HIV-II);サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルスおよびダニ媒介脳炎ウイルスを限定されずに含む、他のウイルスまたはそれらの受容体を標的化することができる。これらの説明および他のウイルスについては例えば、Virology、第3版(W. K. Joklik編、1988年);Fundamental Virology、第2版(B. N. FieldsおよびD. M. Knipe編、1991年)を参照のこと。HIVに対する受容体としては、例えば、CCR-5およびCXCR-4が挙げられる。
【0419】
上記の通り、本明細書に記載の組成物および方法は、遺伝子改変、遺伝子補正、および遺伝子破壊のために使用することができる。遺伝子改変の非限定的な例には、相同組換え修復(HDR)に基づく標的化組込み;HDRに基づく遺伝子補正;HDRに基づく遺伝子改変;HDRに基づく遺伝子破壊;NHEJに基づく遺伝子破壊および/またはHDR、NHEJ、および/または一本鎖アニーリング(SSA)の組合せが含まれる。一本鎖アニーリング(SSA)は、5’-3’エキソヌクレアーゼによりDSBが切除されて2つの相補的な領域が曝露することによって同じ配向で生じる2つの反復配列間の二本鎖切断の修復を指す。次いで、2つのダイレクトリピートをコードする一本鎖が互いとアニーリングし、アニーリングした中間体が、一本鎖尾部(いかなる配列ともアニーリングしていない一本鎖DNAの部分)が消化され、ギャップがDNAポリメラーゼによって埋められ、DNA末端が再結合するように処理され得る。この結果、ダイレクトリピート間に位置する配列の欠失が生じる。
【0420】
切断ドメイン(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas系)を含む組成物および本明細書に記載の方法は、種々の遺伝子疾患および/または感染症の処置においても使用することができる。
【0421】
組成物および方法は、一遺伝子遺伝子治療のための短いパッチ遺伝子変換または標的化組込みによる体細胞変異の補正;ドミナントネガティブ対立遺伝子の破壊;病原体が細胞に侵入または増殖性感染するために必要な遺伝子の破壊;例えば遺伝子活性を改変して機能的組織の分化もしくは形成を促進することおよび/または遺伝子活性を破壊して機能的組織の分化もしくは形成を促進することによる先進組織工学;例えば、分化を遮断する遺伝子を破壊して幹細胞の特定の系列経路への分化を促進すること、幹細胞分化を刺激することができる遺伝子もしくはsiRNA発現カセットの標的化挿入、幹細胞分化を遮断することができ、より良好な拡張および多能性の維持を可能にする遺伝子もしくはsiRNA発現カセットの標的化挿入、ならびに/またはレポーター遺伝子を容易なマーカーにより幹細胞の分化状態および培地中でどのように変化するか、サイトカイン、成長条件、遺伝子の発現、siRNA、shRNAもしくはmiRNA分子の発現、細胞表面マーカーに対する抗体への曝露、もしくはこの状態を変更する薬物をスコア化することを可能にする多能性もしくは分化状態のマーカーである内因性遺伝子とインフレームで標的化挿入することによって分化を遮断または誘導すること;体細胞核移植、例えば、患者の独自の体細胞を単離し、意図された標的遺伝子を適切な様式で改変し、細胞クローンを生成し(および品質管理してゲノム安全性を確実にする)、これらの細胞から核を単離し、未授精卵に移して、直接注射することもできるか、または患者に生着させる前に分化させることができ、それにより、組織拒絶反応を低減または排除する、患者に特異的なhES細胞を生成することができる;MHC受容体をノックアウトすることによる普遍的幹細胞(例えば、免疫学的同一性が低減したまたは総じて消失した細胞を生成する)を限定されずに含む、幹細胞に基づく治療に適用することもできる。この手順のための細胞型には、T細胞、B細胞、造血幹細胞、および胚性幹細胞が限定されずに含まれる。さらに、患者独自の体細胞から生成される人工多能性幹細胞(iPSC)も使用することができる。したがって、これらの幹細胞またはそれらの誘導体(分化細胞型または組織)は、潜在的に、それらの起源または組織適合性にかかわらずあらゆる人に生着させることができる。
【0422】
組成物および方法はまた、体細胞治療に使用することもでき、それにより、生物学的特性が増強するように改変された細胞のストックの産生が可能になる。そのような細胞は、細胞のドナー供給源およびレシピエントに対するそれらの組織適合性に関係なく、種々の患者に注入することができる。
【0423】
治療への適用に加えて、工学技術で作製されたヌクレアーゼに使用した場合に本明細書に記載のバリアントによってもたらされる特異性の増大は、作物工学、細胞株工学および疾患モデルの構築に使用することができる。絶対ヘテロダイマー切断半ドメインにより、ヌクレアーゼ特性を改善するための容易な手段がもたらされる。
【0424】
記載されている工学技術で作製された切断半ドメインはまた、介在領域を欠失させるかまたは2つの特異的な遺伝子座を一度に変更するかのいずれかで、多数の標的での同時切断を必要とする遺伝子改変プロトコールにおいても使用することができる。2つの標的での切断には、4つのZFNまたはTALENの細胞発現が必要であり、これにより、潜在的に10種の異なる活性なZFNまたはTALENの組合せが生じる。そのような適用のために、これらの新規のバリアントで野生型ヌクレアーゼドメインを置換することにより、望ましくない組合せの活性が排除され、オフターゲット切断の機会が低減する。ある特定の所望のDNA標的での切断には、ヌクレアーゼ対A+Bの活性が必要であり、第2の所望のDNA標的での同時切断には、ヌクレアーゼ対X+Yの活性が必要であり、次いで、本明細書に記載の変異の使用により、AとA、AとX、AとYなどの対形成を防ぐことができる。したがって、これらのFokI変異により、「変則的な」対形成結果としての非特異的切断活性が低減し、より効率的なヌクレアーゼの直交性変異体対の生成が可能になる(米国特許公開第20080131962号および同第20090305346号を参照のこと)。
【0425】
本明細書で指摘される全ての特許、特許出願および公開は、参照によりそれらの全体が本明細書によって組み込まれる。
【0426】
理解の明快性のために開示は例証および例として多少詳細に提供されたが、本開示の精神または範囲から逸脱せずに様々な変更および改変を実施することができることは当業者に明らかである。したがって、前述の開示および以下の実施例は限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例0427】
(実施例1)
ZFNの調製
基本的にUrnovら(2005年)Nature 435巻(7042号):646~651頁
、Perezら(2008年)Nature Biotechnology 26巻(7号);808~816頁、および米国特許第9,394,545号および同第9,150,847号;PCT特許出願PCT/US2016/032049号および米国特許公開第20170211075号および同第20170173080号に記載されている通り、マウスアルブミン、TTRおよびPCSK9遺伝子内の部位を標的とするZFNを設計し、プラスミドベクターに組み入れた。ZFNを試験し、全て活性であることが見出された。使用したZFNを以下の表4に示し、標的とした配列を表5に示す:
【表4-4】
【表4-5】
【表5】
【0428】
一部のZFNをさらに改変してZFP骨格またはFokIドメイン内のアミノ酸と接触する潜在的なリン酸を取り除いた。これらの残基は、DNA骨格上のリン酸と相互作用し、それにより非特異的切断を導く潜在性を有する(米国特許出願第15/697,917号に記載されている)。表6は、ZFP骨格を、示されている位置で潜在的な非特異的リン酸接触が取り除かれるように変異させた親および誘導体ZFNを示す。
【表6】
【0429】
マウスALB遺伝子のイントロン1、マウスPCSK9遺伝子のエクソン2、およびマウスTTR遺伝子のエクソン2を標的とするZFN(全て上の表4および5に示されている)を、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、Xenopusベータ-グロビン遺伝子に由来する配列を含有する5’UTR、HBB遺伝子に由来する配列の二重カセットを含有する3’UTR、および64塩基対のポリAトラクトを含有する個々のベクター(pVAV-GEM)にサブクローニングした。Xenopus 5’UTR、HBB 3’UTR、およびWPRE 3’UTRの配列は以下の通りであった:
Xenopusベータ-グロビン5’UTR[Falconeら(1991年)Molecular and Cellular Biology 11巻(5号):2656~2664頁]:
【化52】
二重HBB 3’UTR[Russellら(1996年)Blood 87巻:5314~5323頁]:
【化53】
WPRE 3’UTR(米国特許出願第15/141,333号を参照のこと):
【化54】
【0430】
(実施例2)
方法
mRNA合成:メッセンジャーRNA(mRNA)を、Trilink Biotechnologiesにおいて、in vitro転写(IVT)を使用し、改変されていない残基または改変されたヌクレオシド(2チオウリジン(「2tU」)、および5メチルシトシン(「5mC」))の画分のいずれかを用い、SpeI直線化ZFN構築物で生成した。mRNAを、抗リバースキャップ類似物(ARCA)キャップとの同時転写で、「Cap1」mRNAを生成するためにIVT後にワクシニアウイルスキャッピング酵素をmRNA Cap 2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素と一緒に使用して酵素的に、または「Cap1」(CleanCap)を生成するために化学的に、のいずれかでキャッピングした。mRNAを、シリカビーズカラムを通して精製し(例えば、Bowmanら(2012年)Methods 941巻 Conn G.L.(編)、New York、N.Y. Humana Pressを参照のこと)、次いで、パッケージした(シリカ精製されたもの)、または、その後
、HPLCカラムに流し、分画して、二本鎖RNA種を除去し、次いで、パッケージした(HPLC精製されたもの、例えば、Karikoら(2011年)Nucl Acid Res 39巻
:e142頁;Weissmanら(2013年)Synthetic Messenger RNA and and Cell
Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology 969巻、Rabinovich, P.H.編を参照のこと)。
【0431】
LNP:LNPを、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015/199952、WO2017/004143およびWO2017/075531に記載されている一般的な手順に従って調製した。簡単に述べると、カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよび式(IVa)のPEG-脂質をエタノール中におよそ50:10:38.5:1.5または47.5:10:40.8:1.7のモル比で可溶化した。脂質ナノ粒子(LNP)を、mRNAの総脂質に対する比0.03~0.04w/wで調製した。ZFN mRNAを10~50mMのクエン酸緩衝剤、pH4中0.05~0.2mg/mLまで希釈した。シリンジポンプを使用して、毎分15mlを上回る総流速でエタノール性脂質溶液とmRNA水溶液を約1:5~1:3(vol/vol)の比で混合した。次いで、エタノールを除去し、外部の緩衝剤を透析によってPBSで置き換えた。最後に、脂質ナノ粒子を、0.2μm孔の滅菌フィルターを通して濾過した。脂質ナノ粒子の粒径サイズは、Malvern Zetasizer Nano(Malvern、UK)を使用して準弾性光散乱によって決定して60~90nmであった。製剤を、約24時間以内に上で調製したまま使用する、または、必要に応じて、より長期間の保管安定性のために凍結保護物質としてスクロースを最終濃度300mMで添加する。
【0432】
固有の製剤番号(例えば、I-6、I-5、およびII-9)は独特のカチオン性脂質を指し、他の3つの脂質構成成分は一定のままである。代表的な脂質の合成は本明細書において下に、および、それぞれが参照により本明細書に組み込まれるWO2015/199952、WO2017/004143およびWO2017/075531において記載されている。
【0433】
in vitro形質導入:ZFN mRNAを含有するLNPの活性を評価するために、懸濁液中にHepa1-6細胞を含有する培地にLNPを導入し、細胞を接着させ、LNPを取り込ませ、3日間成長させた。次いで、形質導入された細胞をゲノムDNA(gDNA)のためにQiagenスピンカラムを使用して採取した。
【0434】
in vivo形質導入:Charles Riverから購入した8~10週齢のC57BL6に、希釈したLNPまたは希釈したLNPとZFN切断部位に隣接する相同アームを含有するヒトIDSもしくはヒトFIX導入遺伝子および導入遺伝子のコード配列のすぐ上流のスプライスアクセプターをコードするAAVドナーの混合物を含有する水溶液200μLを尾静脈に静脈内注射した。一部の動物には、LNP投薬の30分前に5mg/kgのデキサメタゾンを腹腔内注射した。次いで、動物をLNP投薬の7日後に屠殺した、または7日もしくは14日の間隔でLNPを再投薬した後に屠殺し、肝組織を採取した。肝臓をスナップ凍結し、左葉および右葉の両方のごく一部を切開し、gDNAのためにFastPrep-24 Homogenizer(MP Biomedicals)、Lysis Matrix D solution(MP Biomedicals)、およびMasterPure DNA Purification kit(Epicentre)を使用して採取した。
【0435】
インデル分析(ヌクレアーゼ活性):およそ200bpの、ZFN切断部位を含有する総ゲノムDNA配列を増幅するためにプライマーを設計した。次いで、アンプリコンにMiseqまたはNextseq(Illumina)のいずれかを実行し、野生型ゲノム配列からの挿入および欠失(インデル)を定量化した。
【0436】
IDS酵素活性アッセイ:動物屠殺時に、マウス血液を、クエン酸ナトリウムを含有するチューブ中に収集し、細胞画分を除去してマウス血漿を得た。次いで、血漿を水中1:100に希釈し、イズロネート-2-スルファターゼ(IDS)基質(4-メチルウンベリフェリル-α-イズロネート2-スルフェート)と一緒に37℃で4時間インキュベートした。次いで、0.4Mのリン酸ナトリウム溶液を添加して反応を停止させた。次いで、組換えヒトイズロニダーゼ(IDUA)を添加し、次いで、溶液を37℃で24時間インキュベートした。首尾よく切断されたIDS基質から蛍光生成物が生じ、次いでそれを蛍光プレートリーダーにおいて365nm励起/450nm放出で測定する。
【0437】
hFIX ELISA:マウス血漿をPBS中1:100に希釈し、hFIXタンパク質レベルに関してサンドイッチELISAキット(Affinity Biologicals)を実行した。マイクロプレートリーダーを使用して450nmにおける吸光度を読み取った。
【0438】
mPCSK9 ELISA:マウス血漿をPBS中1:100に希釈し、mPCSK9タンパク質レベルに関してサンドイッチELISAキット(Boster Biological Technology)を実行した。マイクロプレートリーダーを使用して450nmにおける吸光度を読み取った。
【0439】
mTTR ELISA:マウス血漿を、0.5%BSAを伴うPBS中1:10,000に希釈し、mTTRタンパク質レベルに関してサンドイッチELISAキット(Cusabio)を実行した。マイクロプレートリーダーを使用して450nmにおける吸光度を読み取った。
【0440】
I-5の調製:化合物I-5を以下の方法Bに従って調製した:
塩化メチレン(40mL)およびテトラヒドロフラン(20mL)中ヘキサン-1,6-ジオール(10g)の溶液を2-ヘキシルデカノイルクロリド(10g)およびトリエチルアミン(10mL)で処理した。溶液を1時間撹拌し、溶媒を除去した。反応混合物をヘキサンに懸濁させ、濾過し、濾液を水で洗浄した。溶媒を除去し、残留物を、ヘキサン、その後、溶離液として塩化メチレンを使用してシリカゲル(50g)カラムを通過させ、6-(2’-ヘキシルデカノイルオキシ)ヘキサン-1-オールを油として得た(7.4g)。
【0441】
精製した生成物(7.4g)を塩化メチレン(50mL)中に溶解させ、クロロクロム酸ピリジニウム(5.2g)で2時間処理した。ジエチルエーテル(200mL)を添加し、上清を、シリカゲルベッドを通して濾過した。濾液から溶媒を除去し、得られた油状物を、酢酸エチル/ヘキサン(0~5%)勾配を使用してシリカゲル(50g)カラムを通過させた。6-(2’-ヘキシルデカノイルオキシ)ドデカナールを油状物として回収した(5.4g)。
【0442】
塩化メチレン(20mL)中、生成物(4.9g)、酢酸(0.33g)および2-N,N-ジメチルアミノエチルアミン(0.40g)の溶液をトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.1g)で2時間処理した。溶液を水性水酸化ナトリウムで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、溶媒を除去した。残留物を、メタノール/塩化メチレン(0~8%)勾配を使用してシリカゲル(50g)カラムを通過させて、所望の生成物を無色の油状物として得た(1.4g)。
【0443】
I-6の調製:化合物I-6を以下の方法Bに従って調製した:
塩化メチレン(80mL)中ノナン-1,9-ジオール(12.6g)の溶液を2-ヘキシルデカン酸(10.0g)、DCC(8.7g)およびDMAP(5.7g)で処理した。溶液を2時間撹拌した。反応混合物を濾過し、溶媒を除去した。残留物を温めたヘキサン(250mL)中に溶解させ、結晶化させた。溶液を濾過し、溶媒を除去した。残留物を塩化メチレン中に溶解させ、希塩酸で洗浄した。有機画分を無水硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、溶媒を除去した。残留物を、0~12%酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として使用してシリカゲルカラム(75g)を通過させ、9-(2’-ヘキシルデカノイルオキシ)ノナン-1-オールを油状物として得た(9.5g)。
【0444】
生成物を塩化メチレン(60mL)中に溶解させ、クロロクロム酸ピリジニウム(6.4g)で2時間処理した。ジエチルエーテル(200mL)を添加し、上清を、シリカゲルベッドを通して濾過した。濾液から溶媒を除去し、得られた油状物を、酢酸エチル/ヘキサン(0~12%)勾配を使用してシリカゲル(75g)カラムを通過させ、9-(2’-エチルヘキサノイルオキシ)ノナナールを油状物として得た(6.1g)。
【0445】
塩化メチレン(20mL)中、粗生成物(6.1g)、酢酸(0.34g)および2-N,N-ジメチルアミノエチルアミン(0.46g)の溶液をトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.9g)で2時間処理した。溶液を、水性水酸化ナトリウム、その後、水で洗浄した塩化メチレンで希釈した。有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、溶媒を除去した。残留物を、メタノール/塩化メチレン(0~8%)勾配を使用してシリカゲル(75g)カラムを通過させ、その後、塩化メチレン/酢酸/メタノール勾配を使用して第2のカラム(20g)を通過させた。精製した画分を塩化メチレン中に溶解させ、希薄な水性水酸化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水、濾過し、溶媒を除去して、所望の生成物を無色の油状物として得た(1.6g)。
【0446】
II-9の調製:化合物II-9を以下の方法Dに従って調製した:
【化55】
ステップ1:
3-ジメチルアミン-1-プロピルアミン(1当量、1.3mmol、133mg、163μL;MW102.18、d0.812)およびケトン9a(1当量、0.885g、1.3mmol)をDCE(8mL)中で混合し、次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.4当量、1.82mmol、386mg;MW211.94)およびAcOH(1当量、1.3mmol、78mg、74μL、MW60.05、d1.06)で処理した。混合物を室温、Ar雰囲気下で2日間撹拌した。反応混合物をヘキサン-EtOAc(9:1)で希釈し、0.1NのNaOH(20mL)を添加することによってクエンチした。有機相を分離し、sat NaHCO3、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、デカンテーションし、濃縮させて、所望の生成物9bをわずかに黄色く濁った油状物として得た(1.07g、1.398mmol)。
【0447】
ステップ2:
ベンゼン(10mL)中ノナノイルクロリド(1.3当量、1.27mmol、225mg)の溶液を、ベンゼン(10mL)中、ステップ1からの化合物9b(0.75g、0.98mmol)およびトリエチルアミン(5当量、4.90mmol、0.68mL)およびDMAP(20mg)の溶液に室温、10分でシリンジによって添加した。添加後、混合物を室温で終夜撹拌した。メタノール(5.5mL)を添加して過剰な塩化アシルを除去した。3時間後に、混合物を、シリカゲルのパッド(1.2cm)を通して濾過した。濃縮により無色の油状物(0.70g)を得た。
【0448】
粗生成物(0.70g)を、シリカゲル(クロロホルム中0~4%MeOH)でフラッシュ乾燥カラムクロマトグラフィーによって精製した。これにより無色の油状物457mg、0.50mmol、51%が得られた。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.54-4.36 (非常に広幅, 見積値0.3H, アミド結合の回りの異性化が遅いため), 3.977, 3.973 (2組の二重線, 5.8 Hz, 4H), 3.63 (五重線類似, 6.8 Hz, 0.7H), 3.14-3.09 (m, 2H), 2.33-2.25 (m, 8H), 2.23, 2.22 (2組の一重線, 6H), 1.76-1.56
(m, 10H), 1.49-1.39 (m, 4H), 1.37-1.11 (62H), 0.92-0.86 (m, 15H)。
【0449】
II-11の調製:
化合物II-11を一般的な手順Dに従って調製して、無色の油状物239mg、0.26mmolを得、2ステップの総収率は52%であった。1HNMR (400 MHz, CDCl3)
δ: 4.87 (五重線類似, 6.3 Hz, 2H), 4.54-4.36 (非常に広幅, 見積値0.3H,
アミド結合の回りの異性化が遅いため), 3.63 (五重線類似, 6.8 Hz, 0.7H), 3.14-3.09 (m, 2H), 2.33-2.25 (m, 8H), 2.23, 2.22 (2組の一重線, 6H), 1.76-1.56 (m, 8H), 1.55-1.39 (m, 12H), 1.37-1.11 (62H), 0.92-0.86 (m, 15H)。
【0450】
II-36の調製
化合物II-36を一般的な手順Dに従って調製して、無色の油状物234mg、0.25mmolを得、総収率は2ステップで34%であった。1HNMR (400 MHz, CDCl3)
δ: 4.54-4.36 (広幅, 見積値0.3H, アミド結合の回りの異性化が遅いため), 3.977, 3.973 (2組の二重線, 5.8 Hz, 4H), 3.63 (五重線類似, 6.8 Hz, 0.7H),
3.17-3.10 (m, 2H), 2.53-2.43 (m, 6H), 2.34-2.26 (m, 6H), 1.83-1.71 (m, 6H), 1.70-1.57 (m, 8H), 1.49-1.38 (m, 4H), 1.37-1.11 (62H), 0.92-0.86 (m, 15H)。
【0451】
III-25の調製
塩化メチレン(150mL)中ノナン-1,9-ジオール(12.0g)の溶液を2-ブチルオクタン酸(5.0g)、DCC(7.7g)およびDMAP(4.5g)で処理した。溶液を終夜撹拌した。反応混合物を濾過し、溶媒を除去した。残留物をヘキサンに懸濁させ、濾過した。濾液を希塩酸で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水し、シリカゲルベッドを通して濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、メタノール/塩化メチレン(0~4%)勾配を使用してシリカゲルカラムを通過させて、9-(2’-ブチルオクタノイルオキシ)ノナン-1-オールを油状物として生成させた(6g)。
【0452】
9-(2’-ブチルオクタノイルオキシ)ノナン-1-オールを塩化メチレン(100mL)中に溶解させ、クロロクロム酸ピリジニウム(3.8g)で終夜処理した。ヘキサン(300mL)を添加し、上清を、シリカゲルベッドを通して濾過した。濾液から溶媒を除去し、得られた油状物をヘキサン中に溶解させた。懸濁液を、シリカゲルベッドを通して濾過し、溶媒を除去し、それにより、9-(2’-ブチルオクタノイルオキシ)ノナン-1-アールを無色の油状物として得た(3.1g)。
【0453】
塩化メチレン(50mL)中、9-(2’-ブチルオクタノイルオキシ)ノナン-1-アール(2.6g)、酢酸(0.20g)および4-アミノブタン-1-オール(0.26g)の溶液をトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.42g)で終夜処理した。溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、溶媒を除去した。残留物を、酢酸/メタノール/塩化メチレン(2~0/0~12/98~88%)勾配を使用してシリカゲルカラムを通過させた。純粋な画分を重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、化合物III-25を無色の油状物として得た(0.82g)。
【0454】
III-45の調製:
III-45を以下の通り調製した。塩化メチレン(50mL)中、9-(2’-ブチルオクタノイルオキシ)ノナン-1-アール(2.6g)、酢酸(0.17g)および3-アミノプロパン-1-オール(0.21g)の溶液をトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.34g)で終夜処理した。溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、溶媒を除去した。残留物を、酢酸/メタノール/塩化メチレン(2~0/0~8/98~96%)勾配を使用してシリカゲルカラムを通過させた。純粋な画分を重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、化合物45を無色の油状物として得た(1.1g)。
【0455】
III-49の調製:
無水THF20ml中2-ブチルオクチル8-ブロモオクタノエート(2当量、1.877g、4.8mmol)の溶液に、4-アミノ-1-ブタノール(1当量、2.4mmol、214mg、221ul)、炭酸カリウム(2当量、4.8mmol、664mg)、炭酸セシウム(0.3当量、0.72mmol、234mg)およびヨウ化ナトリウム(ca 5mg)を添加した。圧力丸底フラスコ中の混合物を6日間加熱した(油浴、80℃)。反応混合物を冷却し、濃縮した。残留物をヘキサンと酢酸エチルの混合物(ca 5:1)中に溶解させ、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲル上、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(クロロホルム中メタノール、1~4%)。これにより、化合物49を無色の油状物として得た(857mg、1.21mmol、50%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 6.55
(br. s, 1H), 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.55 (十分に分解していない三重線,
2H), 2.45-2.40 (m. 6H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.71-1.58 (m, 10 H),
1.51-1.42 (m, 4H), 1.39-1.19 (m, 44H), 0.93-0.87 (m, 12H)。
【0456】
IV-12の調製:化合物 IV-12を以下の反応スキームに従って調製した:
【化56】
Aの合成:
5-アミノバレリン酸(1当量、2.9g、24.8mmol)、ベンジルアルコール(2.3当量、58mmol、6.26g、6mL)、トルエン(70mL)およびp-トルエンスルホン酸一水和物(1.1当量、23.4mmol、4.45g)の混合物をDean-Stark条件下で20時間加熱して還流させた。混合物を室温まで冷却した。固体を濾過によって収集し、トルエン(20mL×2)およびジエチルエーテル(20mL)で洗浄した。所望の生成物(t-TsOH塩として)を白色固体として得た(7.503g、19.8mmol、80%)。
【0457】
Cの合成:
A(1当量、5.59mmol、2.5g)、B(塩の形態、1.4当量、3g、7.9mmol、MW379.47)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.5当量、27.67mmol、3.58g、4.82mL)および無水アセトニトリル(20mL)の混合物を密閉した圧力フラスコ中に入れて16時間加熱した(油浴、83C)。粗生成物を、シリカゲル上、カラムクロマトグラフィーによって精製した(ヘキサン-EtOAc-Et3N、95:5:0から75:25:1まで)。これにより、所望の生成物Cを黄色の油状物として得た(912mg、0.97mmol、35%)。
【0458】
Dの合成:
EtOH-EtOAc(1:10mL)中C(912mg、0.97mmol)の溶液に、10%Pd/C(25mg)を添加し、混合物を水素下で16時間撹拌した。反応混合物を、Celite(著作権)のパッドを通して濾過し、酢酸エチル(100mL)で洗浄した。濾液を濃縮して、粗生成物をわずかに黄色の油状物として得た(902mg)。粗生成物を、シリカゲル上、カラムクロマトグラフィーによって精製した(クロロホルム中0~10%メタノール)。これにより、所望の生成物Dを青白いロウとして得た(492mg、0.58mmol、60%)。
【0459】
IV-12の合成:
DCM(5mL)およびDMF(8mg)中D(492mg、0.58mmol)の溶液に塩化オキサリル(3.2mmol、406mg)を室温、Ar下で添加した。この混合物を室温で終夜撹拌し、濃縮した。残留物をDCM(5mL)中に溶解させ、再度濃縮して、あらゆる塩化オキサリルを除去した。DCM 10mL中に溶解させた残油状物(粘性の黄色の油状物)を、DCM(10mL)中、E(1.9mmol、356mg)およびトリエチルアミン(750μL)およびDMAP(5mg)の溶液に-15Cで5分のうちにシリンジによって添加した。添加後、混合物をゆっくりと室温まで上昇させ、終夜撹拌した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~5%メタノール)によって精製した後、所望の化合物IV-12を無色の油状物として得た(100mg)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.08 (t-like, 7.1 Hz, 1H), 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.54-3.44 (m, 4H), 3.23-3.17 (m, 2H), 2.44-2.33 (m, 8H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.71-1.55 (m, 12H), 1.52-1.36 (m, 6H), 1.36-1.08
(70H), 0.92-0.86 (m, 15H)。
【0460】
(実施例3)
LNPを介したヌクレアーゼの送達によるマウスアルブミンの切断
標的化ジンクフィンガーヌクレアーゼのin vivoにおいてマウスゲノム部位を切断する能力を試験するために、アルブミン特異的ヌクレアーゼをコードするmRNAを上記の通りLNPにカチオン性脂質I-6を使用して組み入れた。次いで、これらを上記の通りC57BL6マウスに1mg/kgから30mg/kgの用量の範囲で尾静脈を通じて静脈内注射した。
【0461】
データから、高量のZFNを使用することにより投薬の7日後に肝臓におけるヌクレアーゼ活性の増大がもたらされる、用量応答が示された(図1A、30724 ZFN mRNAおよび30725 ZFN mRNAを使用、mRNAは二重HBB 3’UTR、ARCAキャップを含み、25% tUおよび25% mCヌクレオシド置換も含んだ)。3mg/kgの一定用量を使用し、単回投薬または最初の投薬、続いて4日後、7日後、14日後、もしくは21日後の第2の投薬のいずれかを比較する実験も行った(図1Bを参照のこと)。これらの最初の実験では、第2の投薬に起因するヌクレアーゼ活性のいかなる増大も検出されなかった。30724/30725 ZFN対を含むLNPを、2mg/kgで投薬したI-6カチオン性脂質を含む同じLNP製剤中の第2のアルブミン特異的対48641/31523とも比較し、結果から、どちらの種類のLNPも肝臓におけるヌクレアーゼ活性のレベルが同等であることが示された(図1C)。
【0462】
個々のZFN mRNAをそれらの間に2A-自己切断性ペプチドを含む単一のmRNAとして一緒に供給した場合に生じるヌクレアーゼ活性を観察するための実験も実施した(図1D)。mRNA構築物は、二重HBB 3’UTRまたはWPRE 3’UTRのいずれかを有した。動物に2mg/kgで投薬し、WPRE 3’UTRを含むmRNAを含むLNPを投薬した動物では、肝臓における観察可能なヌクレアーゼ活性がより高かった。さらに、48641/31523 ZFN mRNAを含むLNPであって、I-5またはI-6カチオン性脂質のいずれかを含むLNPもin vivoヌクレアーゼ活性について比較した。これらの実験では、動物に2mg/kgのLNPを投薬し、採取された肝臓において非常に類似した量のヌクレアーゼ活性が示された(図1E)。最後に、48641/31523 ZFN mRNAをI-5 LNPに組み入れ、1.8mg/kgから5.4mg/kgまでの漸増用量のLNPを使用して活性について試験し(図1F)、LNP用量が増大するにしたがってヌクレアーゼ活性が増大することが見出された。
【0463】
48641/31523 ZFN mRNA対を使用してI-5 LNP製剤とII-9 LNP製剤を2つの異なる用量(1mg/kgまたは3mg/kg)で比較するための実験を行い、ここで、mRNAはWPRE 3’UTRを含み、ARCAキャッピングされており、また、25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換も含んだ。これらの実験では(図2A)、どちらの製剤についても、漸増量のLNPを投薬することにより、ヌクレアーゼ活性の増大がもたらされた。多数回投薬の活性をさらに調査するために、I-5製剤またはII-9製剤のいずれかを含むLNPおよび48641/31523 ZFN対をコードするmRNAを2mg/kg、28日間隔で注射した(図2B)。
【0464】
データから、用量が増大するにしたがってヌクレアーゼ活性が増大することが示された。LNPに組み込むZFNをコードするmRNAへの他のヌクレオシド組成の使用を調査するための実験も実施した。図2Cは、II-9カチオン性脂質LNPを使用し、2mg/kgで投薬した、25% 2tU/25% 5mCを含むmRNAで構成される対と25%のプソイドウリジン(pU)を含むmRNAで構成される対を比較した結果を示す。さらに、上記の25%のプソイドウリジンを含むmRNAを、同じくII-9 LNP製剤で、反復投薬を14日間隔で最大で合計3回の投薬、各投薬を2mg/kgで行い、反復投薬について試験した。データから、反復投薬時に切断の証拠の増大が検出可能であり、第3の投薬後に標的アルブミン遺伝子に見出されるインデルがおよそ25%に達したことが実証された。
【0465】
(実施例4)
LNP性能における精製およびキャップ構造の役割
次に、本発明者らは、mRNAの精製のために使用される方法がLNPの性能において果たす役割ならびにいずれのキャップをmRNAに組み入れるかの改変を調査した。II-9カチオン性脂質製剤に製剤化された、ZFN 48641/31523(WPRE 3’UTR、25% pU)をコードするmRNAを含むLNPの反復投薬を行い、ここで、各用量は3.5mg/kgであり、投薬は14日間隔で行った。これらの実験では、動物をLNP投薬の30分前に5mg/kgのデキサメタゾンで前処置した。さらに、本発明者らは、キャップ構造をARCAキャップ、Cap1またはCleancapの間で変動させた。データ(図3)から、HPLCによって精製され、Cap1キャップを含むmRNAを合計3回投薬した動物は、ARCAキャップを含む、シリカクロマトグラフィーによって精製されたmRNAよりも良好に機能することが示された(図3A)。48641/31523(WPRE 3’UTR、25% pU、Cap1)を使用した、2mg/kgで投薬する14日間隔での反復投薬も実施し、ここでも同様に動物をデキサメタゾンで前処置し、mRNAをHPLCまたはシリカクロマトグラフィーのいずれかによって精製した。
【0466】
結果(図3B)から、この実験ではシリカ精製レジメンにより、最も良好なヌクレアーゼ活性がもたらされることが示された。最後に、野生型mRNA塩基組成(「WT」)または25% pUのいずれかを含む、シリカにより精製したmRNAを用いた実験を行った。これらの実験はまた、3つの異なる種類のキャップ-ARCA、Cap1またはCleanCapを用いて行い、2mg/kgのII-9 LNP製剤を14日間隔で投薬した。これらの試験では(図3C)、Cap1 mRNAを用いて送達されたヌクレアーゼが最も高い活性を示した。
【0467】
(実施例5)
免疫抑制の使用
研究を継続し、ステロイド処置の使用を探究した。動物を、48641/31523 mRNA対(WPRE 3’UTR、25% pU、ARCAキャッピングおよびシリカ精製されたもの)、2mg/kgの14日間隔での反復投薬に供した。動物をデキサメタゾンで前処置したか、または前処置しなかった。結果(図4A)から、デキサメタゾンを用いた前処置により、検出可能なヌクレアーゼ活性をより大きくすることが可能であることが実証される。デキサメタゾンを用いた前処置の結果と、Solumedrol(登録商標)を用いた前処置および感染後3日間の処置を比較することによってステロイド処置をさらに試験した。どちらの処置も有効であり、Solumedrol(登録商標)がわずかにより効果的であることが見出された(図4B)。
【0468】
(実施例6)
in vitro形質導入
我々のLNP製剤をin vitroでも試験して、この状況でヌクレアーゼ活性を検出することができるかを確かめた。カチオン性脂質II-9を含むLNP製剤中の様々なLNP濃度をHepa1-6細胞において試験した。図5Aは、mRNAが、WPRE 3’UTR、および野生型RNA残基または25% pUヌクレオシド置換のいずれかを含み、ARCAまたはCap1のいずれかでキャッピングされた、アルブミン特異的48641/31523対を使用した実験を示す。データから、全ての製剤が、ヌクレアーゼを細胞に導入することが可能であり、優れた活性を実現したことが実証される。さらに、マウスアルブミン(48641/31523)、PCSK9(58780/61748)またはTTR(59771/59790)に特異的なZFN対を試験するII-9製剤におけるin vitro試験も行った。
【0469】
結果(図5B)から、全てのLNP製剤が、ZFNをコードするmRNAのin vitroにおける細胞への形質導入に有効であったことが実証される。
【0470】
(実施例7)
マウスTTRおよびPCSK9のin vivo標的化
次に、本発明者らは、実施例6に記載のZFN対を、in vivoにおいて、II-9カチオン性脂質を含むLNPに製剤化された、ZFNをコードするmRNAの0.8mg/kgでの反復投薬を使用して試験し、ここで、動物はデキサメタゾンで前処置した。mRNAがWPRE 3’UTRおよびARCA-キャップを含む場合、およびmRNAが25% pUヌクレオシド置換を含む場合の、59771/59790 TTRおよび48641/31523アルブミン試薬を試験した、TTR特異的LNPとアルブミン特異的LNPの比較を行った。図6Aに結果が示されており、mTTR特異的LNPおよびmALB特異的LNPがどちらもin vivoにおいて活性であることが実証された。TTR試薬を用いて処置されたマウス(ノックアウトマウス)から血漿を収集し、実施例2において考察されている通り、TTR発現についてELISAによって分析した。結果(図6B)から、ELISAによって検出されるTTRタンパク質が緩衝剤またはアルブミンを標的とするZFNを含むLNPを用いて処置されたマウスと比較して減少したことが実証される。
【0471】
マウスPCSK9特異的ZFNをコードするmRNA(58780/61748)を用いてII-9カチオン性脂質製剤に製剤化されたLNPを使用した実験も行った。上記の通り、mRNAはWPRE 3’UTRおよびARCA-キャップを含み、mRNA配列は25% pUヌクレオシド置換を含んだ。動物をデキサメタゾンで前処置し、次いで、LNPを用いた反復投薬に供し、結果(図6C)から、mALB特異的LNPおよびmPCSK9特異的LNPがin vivoにおいて活性であることが実証された。TTR特異的ZFNを用いた実験と同様に、PCSK9を標的とするLNPを受けたマウスから血漿を収集し、ELISAを実施して、処置後の血漿中のPCSK9の濃度を評価した。結果(図6D)から、血漿中のPCSK9の量がアルブミン特異的LNPを用いて処置されたマウスと比較して低減したことが示され、これにより、ヌクレアーゼがin vivoにおいてそれらの標的の切断に有効であったことが示される。
【0472】
(実施例8)
導入遺伝子組込みのためのin vivoにおける標的化ヌクレアーゼのLNP送達の使用
in vivoにおいてLNPを介して導入遺伝子と組み合わせて送達されるZFNの使用も探究した。マウスアルブミン特異的ZFN mRNA(48641/31523)を、II-9カチオン性脂質製剤を含むLNPを介して送達し、ここで、mRNAはWPRE 3’UTRおよびCap1を含み、RNA配列の組成は25% pUを含んだ。マウスを、様々な用量(1~4mg/kg)のLNPを、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトIDS導入遺伝子ドナーを含むAAV2/8組成物ベクターゲノム1.5×1012と一緒に用いて静脈内処置した。動物をデキサメタゾンで前処置した。結果(図7A)から、アルブミン遺伝子座における最大50%のヌクレアーゼ活性、および実施例2に記載のアッセイを使用して血漿におけるIDS活性(図7B)が実証された。
【0473】
mRNAが、WPRE 3’UTRおよびCap1を含み、シリカ精製され、RNA配列の組成が25% pUを含む、II-9カチオン性脂質製剤を含めて製剤化した48641/31523 LNPをより低い用量(最大0.5mg/kg)で使用した試験も行った。図14に示されている通り、これらのより低い用量では、0.5mg/kg用量でおよそ15%の肝臓インデルが観察され、およそ800nmol/時間/mLのIDS活性が検出された。さらに、肝酵素の分析(図14C)から、これらの用量は、被験体における忍容性が良好であることが示された。
【0474】
mRNA組成に関してさらに特徴付けるための別の試験を、アルブミン特異的ZFNをコードするmRNAを使用して行った。48641 ZFN mRNAおよび31523
ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCヌクレオシド置換ならびにARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)を、カチオン性脂質I-5を含むLNP製剤に製剤化し、マウスに2mg/kgで、上記のヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV2/6またはAAV2/8、1.5×1012の1日後(前送達)またはそれと同時に(同時送達)注射した。動物をデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取し、結果(図8A)から、処置したマウスにおけるヌクレアーゼ(インデル)活性が示された。次いで、これらのマウスを血漿IDS活性について分析した(図8B)。最後に、様々なドナーAAV投与量を試験した。これらの実験では、48641/31523 LNP(mRNAが、WPRE 3’UTRおよびCap1を含み、シリカ精製され、RNA配列の組成が25% pUを含む、II-9カチオン性脂質製剤を含めて製剤化した)を単一の0.5mg/kg用量で与え、ドナーAAV2/8を2×1012vg/kg~6×1013vg/kgの範囲で与えた。次いで、血漿中のIDS導入遺伝子活性を記載されている通り検出した。結果(図15)から、血漿中で測定されたIDS活性の量は用量依存的応答を示すことが実証された。
【0475】
データから、IDS活性は、導入遺伝子をAAV2/6によって送達した試料においてより高かったことが示される。
【0476】
48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% 2tUおよび25% 5mCまたは25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)を使用したアルブミン特異的ZFNをコードするmRNAを使用して試験を行った。mRNAを混合し、LNP製剤I-5またはII-9に製剤化し、マウスに、2mg/kgで、上記のヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV2/8、1.5×1012と同時に注射した。動物をデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。
【0477】
結果(図8C)から、全ての製剤が活性であること、および25% pUヌクレオシド組成を有するmRNAを含むII-9 LNP製剤が最も活性であることが実証された。これらのマウスから血漿も収集し、IDS活性について分析した(図8D)。結果から、LNPおよびAAVドナーを含む全ての試料が活性であることが実証された。
【0478】
最後に、LNP製剤II-9に製剤化された、mRNA対(mRNAは、WPRE 3’UTRを含む;改変されていない残基または25% pUヌクレオシド置換を含む;ARCAまたはCap1でキャッピングされたもの;シリカまたはHPLCで精製されたもの)をコードする48641/31523 ZFNまたは48652/31527 ZFNのいずれかを含むLNPを使用し、マウスに、2mg/kgで、ヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV2/8、1.5×1012と同時に注射した試験を行った。動物をデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。
【0479】
ヌクレアーゼ活性の結果が図8Eに示されており、LNPおよびドナーAAVを含む組成物の全てが活性であったことが示される。この実験では、「25% pU、ARCA、シリカ」および「WT、Cap1、HPLC」と標識されたデータセットは、LNPを含むアルブミン特異的48641/31523を用いて行った実験の結果である。処置したマウスから血漿を収集し、IDS活性について分析した(図8F)。結果から、HPLCによって精製された野生型ヌクレオシドおよびCap1型のキャップを含む製剤により最も高い活性がもたらされることが実証された。
【0480】
導入遺伝子組込みに対する免疫抑制の影響をさらに特徴付けるために、48641/31523対を使用してさらなる実験を行った。これらの実験では、48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;改変されていない残基または25% pUヌクレオシド置換;Cap1;シリカ精製されたもの)を混合し、LNP製剤II-9に製剤化し、マウスに、2mg/kgで、ヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012と同時に注射した。動物を、LNP投薬の直前に5mg/kgのデキサメタゾンで前処置したか、またはLNP投薬の直前およびLNP投薬後さらに3日間、毎回5mg/kgで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取した。結果(図9A)から、LNPおよびAAVドナーを含む試料の全てにおけるヌクレアーゼ活性が実証された。これらのマウスから血漿を採取し、IDS活性について分析した(図9B)。処置したマウスの全てが血漿におけるIDS活性を有した。
【0481】
ドナーをコードするヒト第IX因子(hFIX)をアルブミン特異的ZFNと組み合わせて使用する実験も実施した。これらの実験では、48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA(WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)を混合し、LNP製剤II-9またはI-5に製剤化し、マウスに2mg/kgまたは3.5mg/kgで注射した。同時に、ZFN切断部位に隣接する相同アームおよび導入遺伝子コード領域のすぐ上流のスプライスアクセプターを有するヒトFIX導入遺伝子ドナーを含むベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012を注射した。動物をLNP投薬の直前にデキサメタゾンで前処置した。インデル分析のために肝臓を採取し、図10Aに結果が示されている。試験から、LNPおよびAAVドナーを受けたマウスの全てがヌクレアーゼ活性を有することが示された。処置したマウス由来の血漿をhFIXの存在について実施例2に記載の通り分析し、図10Bに結果が示されている。LNPおよびAAVドナーで処置したマウスの全てが、治療レベルのhFIXを含め、血漿中に検出可能なレベルのhFIXを有した。
【0482】
マウスに、48641/31523 ZFN対を、II-9カチオン性脂質を使用して製剤化されたZFNをコードするmRNAのLNP送達によって受けさせる反復投薬も実施した。mRNAは、WPRE 3’UTRおよびARCAキャップを含み、25% pUヌクレオシド組成を有した。LNPを2mg/kgで注射した。第1の投薬は、上記のヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012との同時送達も含み、動物を各LNP投薬の前にデキサメタゾンで前処置した。したがって、初回用量は、ZFN対を含むLNP、およびAAVドナーを含んだ。その後の投薬は、14日間隔で合計3回の投薬で行った。インデル分析のために肝臓を採取し、図11Aに結果が示されている。データから、LNPおよびAAVドナーを受けたマウスの全てが活性であること、およびその後の投薬でヌクレアーゼ活性が増大したことが実証された。血漿を収集し、IDS活性についてアッセイし(図11B)、結果から、ドナーおよびLNPを受けた動物の全てにおいてIDS活性が存在したこと、および活性がその後の投薬それぞれで増大したことが実証された。別の試験のセットを、投薬スケジュールを7日毎に短縮して行った。これらの実験では、II-9カチオン性脂質を含めて製剤化した同じLNPを使用し(48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNA、WPRE 3’UTR;25% pUヌクレオシド置換;ARCAでキャッピングされたもの;シリカ精製されたもの)、マウスを、第1の投薬時に2mg/kgの用量のLNP、およびIDSドナーを含むベクターゲノム(vg)AAV8、1.5×1012で処置した。図11Cに結果が示されており、LNPおよびAAVドナーを受けたマウスの全てが肝臓におけるヌクレアーゼ活性を示すことが実証された。血漿も採取し、IDS活性を前と同様にアッセイした(図11D)。結果から、LNP/AAV-ドナーによる処置を受けた試料の全てにおいてIDS活性が存在したこと、および活性が投薬期間にわたって増大したことが実証された。
【0483】
マウスに、48641/31523 ZFN対を、II-9カチオン性脂質を使用して製剤化されたZFNをコードするmRNAのLNP送達によって受けさせる反復投薬も実施した。mRNAは、WPRE 3’UTR、Cap1を含み、HPLCで精製されており、改変されていない残基を有した。LNPを0.5mg/kgで注射した。第1の投薬には、上記のヒトIDS導入遺伝子ドナーをコードするベクターゲノム(vg)AAV8またはAAV6、1.5×1012の同時送達も含め、また、動物を各LNP投薬の前にデキサメタゾンで前処置した。したがって、初回用量は、ZFN対を含むLNP、およびAAVドナーを含んだ。その後の投薬は、7日間隔で合計3回の投薬で行った。
【0484】
インデル分析のために肝臓を採取し、図20Aに結果が示されている。データから、LNPおよびAAVドナーを受けたマウスの全てが活性であること、およびその後の投薬でヌクレアーゼ活性が増大したことが実証された。
【0485】
血漿および組織を収集し、IDS活性についてアッセイし(それぞれ図20Bおよび20C)、結果から、ドナーおよびLNPを受けた動物の全てにおいてIDS活性が存在したこと、およびその後の投薬のそれぞれで活性が増大したことが実証された。
【0486】
(実施例9)
ヌクレアーゼの皮内送達
ヌクレアーゼを含むLNPをマウスの皮内に送達する試験を実施した。簡単に述べると、48641 ZFN mRNAおよび31523 ZFN mRNAを含むLNPを、I-5カチオン性脂質またはII-9カチオン性脂質のいずれかを使用して製剤化した。次いで、マウスの背側の領域を剃毛し、次いで、PBS中に様々な用量で希釈した製剤化mRNA LNP 50μLを皮内注射した。マウスを屠殺し、注射部位のすぐ周囲の皮膚を採取し、ヌクレアーゼ活性を上記の通り分析した。
【0487】
結果(図12)から、LNPを受けたマウスが注射部位の周囲の皮膚において検出可能なヌクレアーゼ活性を有したことが実証される。
【0488】
(実施例10)
in vivo標的化マウスアルブミン
種々の異なる製剤、II-9、II-11またはIII-45カチオン性脂質(図13)およびII-9、II-36、III-25、III-45、III-49、またはIV-12(図23)を使用してマウスアルブミンを標的化した。全て中間のアミノ脂質(N):mRNA(P)比で製剤化した。図23では、製剤II-9を、低N:P比および高N:P比、ならびに中間のN:P比であるがLNPをより大きな約100nmとしても製剤化した。ZFN 48641および31523を上記の通り使用し、ZFN対をコードするmRNAは25% pU置換、WPREおよびCap1を含み、シリカによって精製されたものであった。マウスを投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)で前処置した。投薬の反復を14日間空けて行い、マウスを第2の投薬の7日後に屠殺した。データ(図13および23)から、全てのLNP製剤が活性であったことが示された。
【0489】
ZFN 48641および31523を含有するLNP II-9製剤を使用した実験も実施し、ここで、ZFN対をコードするmRNAが、25% pU置換、WPRE 3’UTR、Cap1を含み、シリカ膜によって精製されたものか(0.5mg/kgのLNP用量)またはHPLCで精製されたもの(2.0mg/kg用量)であった。マウスを各LNP投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)で前処置した。投薬の反復を14日間空けて行い、各投薬の7日後にマウスのコホートを屠殺した。
【0490】
図16に示されている通り、その後のLNP投薬それぞれの後にゲノム改変(インデル)の蓄積が観察された。
【0491】
LNP II-9製剤を使用し、ZFN 48641および3152をコードする25% pU置換されたmRNA、または改変されていないmRNAを比較する実験も実施し、ここで、mRNAは、WPRE 3’UTR、Cap1を含み、シリカ精製されたものであった。マウスを投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)で前処置した。マウスに0.5mg/kgのLNPを投薬し、7日後に肝臓をゲノム改変分析のために採取した。
【0492】
図18に示されている通り、改変されていないZFN mRNAでは25% pU置換された試料よりも高いゲノム改変レベルがもたらされた。
【0493】
(実施例11)
ゲノム改変の生体内分布
ZFN 48641および31523を含有するLNP II-9製剤を使用してマウスアルブミンを標的化し、ここで、ZFN対をコードするmRNAは25% pU置換、WPRE 3’UTR、Cap1を含み、シリカ膜精製されたものであった。マウスをLNP投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)前処置した。マウスに2.0mg/kgのLNPを投薬し、7日後にマウスを屠殺し、肝臓、骨髄、および脾臓をゲノム改変分析のために採取した。
【0494】
さらに、マウスのコホートを屠殺し、肝臓を採取する前に処置しなかったか(「無灌流」)または肝臓を採取する前に緩衝生理食塩水を経心的に灌流させて肝臓内の血液細胞を除去した(「無選別」)。灌流を行った肝臓の画分をコラゲナーゼで消化して単一細胞懸濁液を作製し、次いで、クッパー細胞特異的マーカーおよび内皮細胞特異的マーカーを用いて蛍光免疫染色した。次いで、染色された細胞を内皮細胞マーカー陽性、クッパー細胞マーカー陽性、またはマーカー陰性(肝細胞)細胞集団にFACSで選別した。次いで、これらの選別された細胞からゲノムDNAを採取し、ゲノム改変(インデル)について分析した。
【0495】
図17Aは、種々の器官(肝臓、脾臓および骨髄)におけるゲノム改変(インデル)を示す。図17Bは、マウスバルク肝組織におけるゲノム改変が灌流を行ったマウスにおいて実質的により低く、これは血液中に標的化されなかった有核細胞が存在することに起因する可能性があることを示す。さらに、肝細胞は、肝臓内で最も高度に標的化された細胞集団である。
【0496】
(実施例12)
LNP投薬前の動物の絶食
ZFN 48641および31523を含有する製剤II-9カチオン性脂質(LNP
II-9製剤)を使用してマウスアルブミンを標的化し、ここで、ZFN対をコードするmRNAは25% pU置換、WPRE 3’UTR、Cap1を含み、シリカ膜精製されたものであった。動物のコホートを、免疫抑制およびLNP投薬を開始する前、終夜、およそ16時間にわたって食物を得られないようにした。全てのマウスをLNP投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)前処置した。マウスに0.5mg/kgのLNPを投薬し、7日後にマウスを屠殺し、肝臓をゲノム改変分析のために採取した。
【0497】
図19に示されている通り、終夜絶食させた動物におけるゲノム改変(インデル)は、LNP投薬前、終夜、食物を自由に得られた動物よりも高かった。
【0498】
(実施例13)
ポリA尾部の伸長およびmRNA転写物のコード領域からのウリジンの除去
ZFN 48641および31523を含有する製剤II-9カチオン性脂質を使用してマウスアルブミンを標的化し、ここで、ZFN対をコードするmRNAは、改変されていない残基、WPRE 3’UTR、Cap1を含み、シリカ膜精製されたものであった。全てのマウスをLNP投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)前処置した。マウスに0.5mg/kgのLNPを投薬し、7日後にマウスを屠殺し、肝臓をゲノム改変分析のために採取した。反復投薬したマウスには、14日間隔で投薬した。
【0499】
図21に示されている通り、動物におけるゲノム改変(インデル)の最高レベルは、mRNA上により長いポリA尾部が存在する場合、および得られるアミノ酸配列は同じに保持しながらmRNA転写物のコード領域内のゆらぎ位置のウリジンをできるだけ多く除去した(置き換えた)場合(約1250bpのコード領域から約50~60個のウリジンを除去した)に得られた。
【0500】
(実施例14)
最適化されたZFN構築物
ZFN 69121/69128および69052/69102を含有する製剤II-9カチオン性脂質を使用してマウスTTRを標的化し、ここで、ZFN対をコードするmRNAは、改変されていない残基、WPRE 3’UTR、Cap1、193個のpolyA尾部、ウリジン枯渇コードドメインを含み、シリカ膜精製されたものであった。全てのマウスをLNP投薬の30分前にデキサメタゾン(5mg/kg)前処置した。マウスに様々なLNP用量を投薬し、最初のLNP投薬の35日後にマウスを屠殺し、肝臓をゲノム改変分析のために採取した。
【0501】
図22Aに示されている通り、動物の意図されたマウスTTR遺伝子座においてオンターゲットのゲノム改変(インデル)が観察された。図22Bは、図22Aに記載されているマウスから収集された血漿におけるマウスTTR ELISAアッセイを示す。図22Cおよび22Dは、投薬の1日後に図22Aに記載されているマウスから収集された血清における肝機能検査(LFT)の結果を示す。「LFT」は、肝機能検査を指す;「ALT」は、アラニントランスアミナーゼを指す;「AST」は、アスパラギン酸トランスアミナーゼを指す。図22Eおよび22Fは、それぞれ、オフターゲットの器官である脾臓および腎臓における最小のゲノム編集を示す。
【0502】
結果から、in vivoにおける用量依存的なオンターゲットの切断、ならびに用量依存的なmTTRタンパク質発現のノックダウンが実証された。さらに、LNPで動物を処置することにより、肝機能にはいかなる注目すべき変化も引き起こされなかった。
【0503】
これらの実験により、特異的ヌクレアーゼをコードするmRNAのLNPを介した送達により、処置された動物の肝臓および皮膚における標的化切断をもたらすことができること、ならびに、ドナー導入遺伝子を含めることにより、標的化組込み、および肝臓からを含む処置された動物におけるin vivoでの導入遺伝子の発現をもたらすことができることが実証された。具体的には、mRNA-LNPとプロモーターレスヒトIDSまたはFIX導入遺伝子ドナーのいずれかを含むAAVを同時送達することにより、治療的に関連するレベルの酵素活性(1950nmol/時間/mL)およびタンパク質発現(1015ng/mL)が、それぞれ、血漿内でもたらされた(野生型レベルの7700倍に至るまで、およびヒトIDSに関する以前のマウス試験の8倍)。さらに、単回AAVドナー投薬後にmRNA-LNPを反復投与することにより、ゲノム編集および導入遺伝子発現のレベルが有意に増大した(2~3回の投薬後におよそ2倍)。遺伝子ノックアウト適用に関しては、エレクトロポレーションによってmRNAとして送達されたTTR遺伝子(トランスサイレチン関連アミロイドーシスの処置に関して臨床的に検証された遺伝子ノックアウト/ノックダウン標的)を標的とするZFNにより、in vitroにおいてマウス肝細胞株内で>99%のインデルをもたらすことが可能であった。次いで、これらのZFNをmRNAとして生成し、LNP中にパッケージし、野生型マウスに静脈内注射した。単回投薬(0.2mg/kg)後、肝組織における66%のインデルおよび血漿における81%のタンパク質ノックダウンが観察され、血清中で肝臓に関連するトランスアミナーゼの有意な増大は伴わなかった。
【0504】
要約すると、LNP媒介ZFN mRNA送達により、遺伝子疾患を有する被験体の処置および/または予防のための治療用導入遺伝子をもたらすゲノム編集を含む、高度に効率的なレベルのin vivoゲノム編集が駆動される。
図1A-1F】
図2A-2D】
図3A-3C】
図4A-4B】
図5A-5B】
図6A-6D】
図7A-7B】
図8A-8F】
図9A-9B】
図10A-10B】
図11A-11D】
図12
図13
図14A-14C】
図15
図16
図17A-17B】
図18
図19
図20A-20B】
図20C
図21
図22A-22B】
図22C-22D】
図22E-22F】
図23
【配列表】
2022121531000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0304
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0304】
一部の実施形態では、LNPは、遺伝子治療試薬としての活性を有するポリヌクレオチドおよび次式(III):
【化26】
(式中、
またはLの一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-であり、LまたはLの他方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-もしくは-NRC(=O)O-または直接結合であり;
およびGは、それぞれ独立に、非置換C~C12アルキレンまたはC ~C12アルケニレンであり;
は、C~C24アルキレン、C ~C24アルケニレン、C~Cシクロアルキレン、C~Cシクロアルケニレンであり;
は、HまたはC~C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、C~C24アルキルまたはC~C24アルケニルであり;
は、H、OR、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NRC(=O)Rであり;
E Rは、C~C12アルキルであり;
は、HまたはC~Cアルキルであり;
xは、0、1または2である)
を有する脂質化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0314
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0314】
式(III)の一部の実施形態では、Gは、置換されていない。式(III)の他の実施形態では、G3は、置換されている。式(III)の種々の異なる実施形態では、Gは、直鎖状C~C24アルキレンまたは直鎖状C ~C24アルケニレンである。
【外国語明細書】