(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012160
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】水解性原紙ロール製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20220107BHJP
D21H 19/12 20060101ALI20220107BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
D21H27/00 Z
D21H19/12
A47K10/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113789
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】518061650
【氏名又は名称】有限会社アイ・ティ・シー
(71)【出願人】
【識別番号】504175730
【氏名又は名称】有限会社 伸栄技研
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】伊住 信弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 賢司
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 健二
【テーマコード(参考)】
2D135
4L055
【Fターム(参考)】
2D135AA21
2D135AB02
2D135AD01
2D135AD04
2D135AD08
2D135AD13
2D135AD19
4L055AG07
4L055AG46
4L055BD01
4L055BE10
4L055CH04
4L055CH15
4L055CH16
4L055FA20
4L055FA22
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】抄紙機での保守作業の頻度を低減して抄紙機の稼働率を向上させると共に、水解性原紙ロールの歩留りを向上させ、また水解性清拭物品製造用加工機の長寿命化を図る。
【解決手段】カルボキシメチルセルロース及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより乾燥した一次原紙ロールを形成する。次いで、薬液塗布装置付き巻取機1により、一次原紙ロール2a、2bを支持し、該一次原紙ロール2a、2bから原紙4a、4bを巻戻しながら乾燥部9へ導くと共に、巻戻された原紙4a、4bが、乾燥部9が有する加熱ローラ8に至る前に、原紙4bにカルボキシメチルセルロースと塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含む水解性薬液6を供給し、その水解性薬液6の供給を受けた原紙4bを、乾燥部9で乾燥させながら巻取ることより水解性原紙ロール10を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロース及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより乾燥した一次原紙ロールを形成する抄紙工程と、
薬液塗布装置付き巻取機により、前記一次原紙ロールを支持し、該一次原紙ロールから前記原紙を巻戻しながら乾燥部へ導くと共に、前記巻戻された原紙が、前記乾燥部が有する加熱ローラに至る前に、前記原紙にカルボキシメチルセルロースと塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含む水解性薬液を供給する薬液供給工程と、
前記薬液塗布装置付き巻取機において、前記水解性薬液の供給を受けた原紙を、前記乾燥部で乾燥させながら巻取ることより水解性原紙ロールを形成する乾燥・巻取工程とからなる水解性原紙ロール製造方法。
【請求項2】
カルボキシメチルセルロース及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより乾燥した一次原紙ロールを形成する抄紙工程と、
薬液塗布装置付き巻取機により、前記一次原紙ロールを複数個支持し、該複数個の一次原紙ロールから夫々前記原紙を同時に巻戻しながら乾燥部へ導くと共に、前記巻戻された複数の原紙が、前記乾燥部が有する加熱ローラに至る前に、前記複数の原紙のうちの対向する原紙の少なくとも片方の原紙に原紙相互間から、カルボキシメチルセルロースと塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含む水解性薬液を供給する薬液供給工程と、
前記薬液塗布装置付き巻取機において、前記少なくとも片方に水解性薬液の供給を受けた複数の原紙を、前記加熱ローラ上で重ね合わせて積層原紙とし、該積層原紙を前記乾燥部で乾燥させながら巻取ることより水解性原紙ロールを形成する乾燥・巻取工程とからなる水解性原紙ロール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水解性のワイパーのようにトイレ等の汚れを拭き取ることができ、しかもトイレ等に流すことができる水解性清拭物品を製造するために用いる水解性原紙ロールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水解性原紙ロールを製造するには、例えば、特許文献1に開示されているように、木材パルプを主材とする紙料に、カルボキシメチルセルロースを含む添加剤を内添して紙料を調成した後、その紙料を抄紙機で抄紙して湿った帯状の水解紙を形成しつつ、その水解紙を脱水乾燥して乾いた水解紙とし、その乾いた帯状の水解紙を水解性原紙としてロール状に巻取ることにより水解性原紙ロールを形成するようにしている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、抄紙機において紙を乾燥部で乾燥する直前に、カルボキシメチルセルロースを含む添加剤と第1の剥離剤とを湿紙に噴射して外添すると共に、乾燥機の加熱ローラの表面に第2の剥離剤を供給するようにする方法もある。
【0004】
そして水解性原紙ロールを用いて水解性清拭物品を製造するには、例えば水解性清拭物品製造用の加工機に水解性原紙ロールを装架して、その水解性原紙ロールから帯状の水解性原紙を巻戻しながら切断して所定寸法のシート片を形成し、そのシート片に、湿潤強度を増大させるための塩化カルシウム等を含む薬液を噴射して含浸させ、その薬液が含浸されたシート片を折り畳むという方法を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-185289号公報
【特許文献2】特開2005-076141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述の、カルボキシメチルセルロースを含む添加剤を紙料に内添する水解性原紙ロール製造方法では、抄紙する際、及び抄紙された湿紙を脱水、乾燥する際に、湿紙に含まれる接着力が強い糊状のカルボキシメチルセルロースにより、紙料を抄くワイヤーパートで目詰まりを起こし易く、また湿紙を搬送するためのベルトコンベア装置のフェルト製ベルトに付着してフェルト製のベルト等を汚すと同時に紙の地合形成を不良にすることが多い。そのため、抄紙機のワイヤーパートのワイヤーや脱水乾燥パートのフェルト製ベルトの洗浄を頻繁に行う必要がある。ワイヤーやフェルト製ベルト等の洗浄作業は面倒で手間がかかり、また排水処理にも手間がかかるので、この洗浄作業や排水処理作業が抄紙機の稼働率低下の原因となっている。また抄紙機で製造した水解性原紙ロールを用いて水解性清拭物品を製造する際に、水解性のシート片へ噴射した塩化カルシウム等を含む薬液が、水解性清拭物品製造用の加工機に付着して、その加工機を腐食させる。つまり塩化カルシウムを含む薬液の噴射が、水解性清拭物品製造工程でも加工機の保守作業を面倒で手間のかかるものにし、抄紙機の稼働率を低下させ、加工機の寿命を短くする原因になっている。
【0007】
また、前述の、抄紙機において湿紙を乾燥部で乾燥する直前に添加剤及び第1の剥離剤を紙に外添する水解性原紙ロール製造方法では、ワイヤーパートでの目詰まりを回避し、脱水パートのフェルト製ベルトの汚れを抑えることができるものの、湿紙に添加されている糊状のカルボキシメチルセルロースが乾燥部の加熱ローラに焦げ付いて紙が破れる場合があり、これを防ぐためには、加熱ローラ付近に剥離剤の噴射装置を設置して、加熱ローラの表面や加熱ローラ直前の湿紙に、剥離剤を噴射して塗布する必要がある。また抄紙機では、添加剤の外添時における湿紙の走行速度とワイヤーパートにおける抄紙速度とが同じであるため、添加剤外添時における湿紙の走行速度を適正にすることが難しく、水解性原紙ロールの歩留りの向上や生産量の増大を図る際の妨げになっている。更に、水解性清拭物品製造用の加工機での塩化カルシウムを含む薬液の付着による腐食の問題も解決されない。
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、抄紙機での保守作業の頻度を低減して抄紙機の稼働率を向上させると共に、水解性原紙ロールの歩留りを向上させ、また水解性清拭物品製造用の加工機の長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の第1の側面に係る水解性原紙ロールの製造方法によれば、カルボキシメチルセルロース及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより乾燥した一次原紙ロールを形成する抄紙工程と、薬液塗布装置付き巻取機により、前記一次原紙ロールを支持し、該一次原紙ロールから前記原紙を巻戻しながら乾燥部へ導くと共に、前記巻戻された原紙が、前記乾燥部が有する加熱ローラに至る前に、前記原紙にカルボキシメチルセルロースと塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含む水解性薬液を供給する薬液供給工程と、前記薬液塗布装置付き巻取機において、前記水解性薬液の供給を受けた原紙を、前記乾燥部で乾燥させながら巻取ることにより水解性原紙ロールを形成する乾燥・巻取工程とからなるよう構成できる。
【0010】
前記構成により、カルボキシメチルセルロースを含む水解性薬液を、抄紙機では供給することなく、薬液塗布装置付き巻取機において乾燥した原紙に供給することができるので、抄紙機では、面倒な保守作業の頻度を大幅に低減することができ、抄紙機の稼働率を向上させることができる。また水解性薬液の原紙への供給は薬液塗布装置付き巻取機により、抄紙機のワイヤーパートの抄紙速度に関係なく、原紙の適正な走行速度の下で行うことができ、水解性原紙ロールの歩留りを向上させることができる。更に、水解性清拭物品製造用の加工機では、塩化カルシウムをシート片に含浸させる必要がなくなるので、複雑で高価な水解性清拭物品製造用の加工機が腐食しにくくなり、その寿命を従来に比べて大幅に延ばすことができる。
【0011】
本発明の第2の側面に係る水解性原紙ロールの製造方法によれば、カルボキシメチルセルロース及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより乾燥した一次原紙ロールを形成する抄紙工程と、薬液塗布装置付き巻取機により、前記一次原紙ロールを複数個支持し、該複数個の一次原紙ロールから夫々前記原紙を同時に巻戻しながら乾燥部へ導くと共に、前記巻戻された複数の原紙が、前記乾燥部が有する加熱ローラに至る前に、前記複数の原紙のうちの対向する原紙の少なくとも片方の原紙に原紙相互間から、カルボキシメチルセルロースと塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含む水解性薬液を供給する薬液供給工程と、前記薬液塗布装置付き巻取機において、前記少なくとも片方に水解性薬液の供給を受けた複数の原紙を、前記加熱ローラ上で重ね合わせて積層原紙とし、該積層原紙を前記乾燥部で乾燥させながら巻取ることにより水解性原紙ロールを形成する乾燥・巻取工程とからなるよう構成できる。
【0012】
前記構成により、嵩の大きい水解性原紙が巻取られている水解性原紙ロールを得ることができる。また水解性薬液が湿紙の、加熱ローラに直に接触する側に供給されないので、カルボキシメチルセルロースが加熱ローラや、その後の走行経路の案内メーラに付着しにくくなる。そのため薬液塗布装置付き巻取機を安定的に稼働させることができ、水解性原紙ロールの生産性を向上させることができる。また加熱ローラ等の洗浄作業の頻度を低減させることができるので、保守作業の面でも都合がよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の水解性原紙ロールの製造方法を実施するために使用する薬液塗布装置付き巻取機の正面図である。
【
図2】薬液塗布装置の変更態様を示す正面図である。
【
図4】
図3に示す噴射装置の別の変更態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための水解性原紙ロール製造方法を例示するものであって、本発明はそれを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(薬液塗布装置付き巻取機)
【0015】
図1は、本発明の水解性原紙ロール製造方法の第1実施形態で使用する薬液塗布装置付き巻取機の一例を示す。この薬液塗布装置付き巻取機1は、二つの一次原紙ロール2a、2bを支持する原紙ロール支持部3と、原紙ロール支持部3に支持した二つの一次原紙ロール2a、2bからの帯状の原紙4a、4bを同時に巻戻す、一次原紙ロール毎の巻戻し部5A、5Bと、巻戻された原紙4bに水解性薬液6を塗布するための薬液塗布装置7と、水解性薬液6の供給を受けた二つの原紙4a、4bを重ね合わせて積層原紙4cとすると共に、該積層原紙4cの反薬液供給側に接触して該積層原紙4cを加熱する加熱ローラ8を有する、積層原紙4cを乾燥させて水解性原紙4にするための乾燥部9と、この乾燥部9から、水解性原紙4を引取って巻取ることにより水解性原紙ロール10を形成する巻取部11とを備えている。
(一次原紙ロール)
【0016】
一次原紙ロール2a、2bは、抄紙機によって、CMC及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより形成される。この抄紙機は、公知の調成装置から供給された紙料を所定の濃度に調節するフォーマーと、フォーマーから供給された紙料を抄き網に紙層として形成するワイヤーパートと、ワイヤーパートにおいて形成された紙層をプレスロールのフェルトに挟んだ状態で紙層を圧搾、脱水して湿紙を形成するプレスパートと、プレスパートにおいて形成された湿紙を一台又は複数台の乾燥機によって乾燥させるドライパートと、ドライパートにおいて乾燥された帯状の紙をロール状に巻取って一次原紙ロールを形成するワインダーパートを備えている。そしてドライパートに、湿紙に水解性薬液6を外添する薬液供給装置や、剥離剤供給装置を備えていない点で、特開2005-076141号公報に記載の抄紙機と相違している。
【0017】
この実施形態では、抄紙機に供給する原料は、針葉樹パルプと広葉樹のパルプとを、重量比が7:3~10:0となるよう混合したものである。そして抄紙された原紙は通常のトイレットペーパー用の原紙と略同様の物性を有するものである。
(原紙ロール支持部、巻戻し部)
【0018】
原紙ロール支持部3は、一次原紙ロール2a、2bの各巻芯12の両端部を着脱可能に支持することができるようになっている。巻戻し部5A、5Bは、一次原紙ロール2a、2bを矢印方向に回転駆動する表面駆動装置13と、一次原紙ロール2a、2bから巻戻された原紙4a、4bを夫々乾燥部9の加熱ローラ8へ導く走行経路14A、14Bとを備えている。
【0019】
表面駆動装置13は、図示しない無端ベルトを有しており、その無端ベルトを循環駆動しながら一次原紙ロール2a、2bの外周面に押付けることで、一次原紙ロール2a、2bを摩擦駆動することができる。走行経路14A、14Bには公知のダンサーローラ15と、加熱ローラ8と同じ外周速度で回転駆動される被駆動ローラ16が設けてあり、表面駆動装置13、13による一次原反ロール2a、2bの駆動速度を、ダンサーローラ15、15の変位量に応じて増減することにより、走行経路14A、14Bにおける原紙4a、4bの張力が、設定した所要値に維持されるようになっている。
(水解性薬液)
【0020】
水解性薬液6は、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCという。)と塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含んでいる。この実施形態では、水解性薬液6は、水にCMCと塩化カルシウムを、CMCが0.5~5重量%、塩化カルシウムが0.5~5重量%になるように配合したものである。CMCは、水が常温でも時間をかければ徐々に溶解するが、粉末のCMCは、水分を付加した瞬間に粒子同士が結合して、粒状のかたまりになりやすいので、完全に溶解させるには少量ずつ入れてかなりの時間をかけて攪拌する必要がある。CMCを容易に溶解させるには、温水を用いるとよく、水解性薬液6を作るには、まずタンクに水を入れ、その水を、ヒーター等を使用して加熱することで温水を作る。温水の温度は摂氏60度から摂氏90度くらいとするのが望ましい。温水ができたら、攪拌機で水を攪拌しながらCMCを温水に投入する。そしてCMCが完全に溶解してから塩化カルシウムを入れて溶解させる。
(薬液塗布装置)
【0021】
薬液塗布装置7は、この実施形態では、水解性薬液6の粘度が比較的高くても、その水解性薬液6を安定的に原紙4bに塗布することができるようにするために、転写ローラ17を備えている。この転写ローラ17は、下側の原紙4aと上側の原紙4bの相互間配置してあり、原紙4aの走行時に、加熱ローラ8と同じ外周速度で回転駆動され、当該転写ローラ17上を通過する原紙4bに、容器18の中に貯めた水解性薬液6を塗布することができる。そして薬液塗布装置7による水解性薬液6の原紙への塗布量は、原紙の重量に対する水解性薬液6の重量が半分程度になるよう、例えば100グラムの原紙に対して約50グラムの水解性薬液3を塗布している。なお、水解性薬液6の原紙への塗布量は、薬液濃度等の変更等に伴い、増大させたり減少させたりすることもあり得る。また転写ローラ17は外周面が平坦なものでも、外周面に網目状等様々なパターンで細溝を形成したものでもよい。
(乾燥部)
【0022】
乾燥部9は、薬液塗布装置7の下流側に配置してあり、加熱ローラ8上を走行する、水解性薬液6を受けた積層原紙4を覆うように配置した蒸気回収フード19と、積層原紙4をジグザグに走行させる走行経路を有する乾燥箱20とを備えている。加熱ローラ8は、被駆動ローラであり、原紙4aを挟んで、薬液塗布装置7による水解性薬液6の塗布側の反対側つまり原紙4aの下側に配置してある。蒸気回収フード19は、加熱ローラ8上の積層原紙4から水分が蒸発して生じた蒸気を巻取機の外に排気することができ、乾燥箱20は、その箱内に熱風を送り込んで、その箱内を走行する積層原紙4に直接熱風を当てて加熱し、積層原紙4から水分が蒸発して生じた蒸気を機外に排気することができる。
(巻取部)
【0023】
巻取部11は、この実施形態では、平行に並ぶ二つの表面駆動ローラ21、22を有する巻取装置からなり、積層原紙4を加熱ローラ8から表面駆動ローラ22に至る走行経路14Cを経て、二つの表面駆動ローラ21、22の上に載せた巻芯23に導き、先端部を巻芯23に巻付けた積層原紙4を表面駆動ローラ21、22により巻芯23と共に表面駆動することにより、積層原紙4を巻取ることができる。
(水解性原紙ロール製造方法の第一実施形態)
【0024】
次に、本発明の第一実施形態に係る水解性原紙ロール製造方法について説明する。この水解性原紙ロール製造方法は、CMC及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく、前述の抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより乾燥した一次原紙ロールを形成する抄紙工程と、
図1に示す薬液塗布装置付き巻取機1において、前記抄紙工程で形成した二つの一次原紙ロール2a、2bを、一次原反ロール支持部3で支持し、該一次原紙ロール2a、2bから夫々原紙4a、4bを同時に巻戻しながら走行経路14A、14Bにより乾燥部9へ導くと共に、巻戻された二つの原紙4a、4bが、乾燥部9が有する加熱ローラ8に至る前に、薬液塗布装置7により、原紙4bに、原紙4aと原紙4bの相互間から、CMCと塩化カルシウムとを夫々所要量ずつ含む水解性薬液6を供給する薬液供給工程と、薬液塗布装置付き巻取機1において、水解性薬液6の供給を受けた上側の原紙4bと下側の原紙4aとを、乾燥部9の加熱ローラ8上で重ね合わせて積層原紙4cとし、該積層原紙4cを乾燥部9の乾燥箱20で更に乾燥させて水解性原紙4にしながら巻取ることより水解性原紙ロール10を形成する乾燥・巻取工程とからなる。
(薬液塗布装置の他の形態)
【0025】
図2は、薬液塗布装置7の別の一例を示し、この薬液塗布装置7は、原紙4a、4bの相互間に配置した、原紙4a、4b毎の噴射装置24、24を備えている。噴射装置24は、
図3に示すように、帯状の原紙4a又は4bの幅方向に所定間隔で並ぶ複数のノズル25を有しており、このノズル25から水解性薬液6を、原紙4a又は4bの夫々全幅にわたり噴射することができる。そしてノズルは、
図2に示すように、水解性薬液6を、原紙4a又は4bの紙面に直交する方向から該原紙4a又は4bの走行方向に所定角度だけ傾斜した方向に噴射することができるように設けているので、噴射装置24は、走行中の原紙4a又は4bに略一様に水解性薬液6を塗布することができる。
図4に示す噴射装置24は、原紙4bの幅方向に所定間隔で並べると共に、原紙4bの長手方向に所定の間隔をとって、原紙4bの幅方向の相互間隔の半分だけ原紙4bの幅方向に互いにずれるように2列に並べた多数のノズル25を備えており、水解性薬液6を原紙4bに更に一様に塗布することができるようにしたものである。
(水解性原紙ロール製造方法の第二実施形態)
【0026】
本発明の水解性原紙ロール製造方法の第二実施形態では、
図1に示す薬液塗布装置7に替えて、
図2、
図3に示す薬液塗布装置7を備えた薬液塗布装置付き巻取機1を用いて水解性原紙ロール製造方法を実施するもので、薬液供給工程において、原紙4bに水解性薬液6を供給する代わりに、原紙4aと原紙4bの両方に原紙相互間から噴射装置25により水解性薬液6を噴射して塗布する点で、前述の第一実施形態と相違している。
【0027】
本発明によれば、必要に応じて、3つ以上の原紙を重ね合わせて水解性原紙とするために、3個以上の一次原紙ロールから夫々同時に原紙を巻戻すようにすることもあり得る。また
図1に示す薬液塗布装置付き巻取機1において、原反ロール支持装置3を一次原反ロール2bのみ支持するものに替え、走行経路14Aを無くし、薬液塗布装置7を、原紙2bの上側から水解性薬液6を原紙2bへ供給するものに替えて構成した別の薬液塗布装置付き巻取機を準備しておき、CMC及び塩化カルシウムのどちらも添加することなく抄紙機により帯状の原紙を抄紙しながら巻取ることにより、乾燥した一次原紙ロールを形成する抄紙工程と、前記別の薬液塗布装置付き巻取機により、一次原紙ロール2bを支持し、該一次原紙ロール2bから原紙4bを巻戻しながら乾燥部9へ導くと共に、巻戻された原紙4bが、乾燥部9が有する加熱ローラ8に至る前に、水解性薬液6を供給する薬液供給工程と、前記別の薬液塗布装置付き巻取機において、水解性薬液6の供給を受けた原紙4bを、乾燥部9により乾燥させながら巻取ることより水解性原紙ロールを形成する乾燥・巻取工程とからなる水解性原紙ロール製造方法を実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…薬液供給装置付き巻取機
2a…一次原反ロール、2b…一次原反ロール
3…原紙ロール支持部
4…水解性原紙、4a…原紙、4b…原紙、4c…積層原紙
5A…巻戻し部、5B…巻戻し部
6…水解性薬液
7…薬液塗布装置
8…加熱ローラ
9…乾燥部
10…水解性原紙ロール
11…巻取部
12…巻芯
13…表面駆動装置
14A…走行経路、14B…走行経路
14C…走行経路
15…ダンサーローラ
16…被駆動ローラ
17…転写ローラ
18…容器
19…蒸気回収フード
20…乾燥箱
21…表面駆動ローラ
22…表面駆動ローラ
23…巻芯
24…噴射装置
25…ノズル