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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121650
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20220812BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G08B17/00 D
G08B17/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106851
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2021083786の分割
【原出願日】2017-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(57)【要約】
【課題】左右両側の監視エリアに対応して設けられた透光性窓の汚損状態を把握して清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【解決手段】連続した複数の監視エリアの境界毎に火災検知装置を配置して監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、火災検知装置に関する情報を表示する表示部と、表示部に前記情報を表示させる制御部とを備える。火災検知装置は、第一透光性窓の汚損状態を示す第一窓汚損度と、第二透光性窓の汚損状態を示す第二窓汚損度とを検出し、制御部は、第一窓汚損度と二窓汚損度とに基づき、表示部に、隣り合う境界にそれぞれ配置された一方の火災感知器の第一窓汚損度と他方の火災感知器の第二窓汚損度とが並ぶように、第一窓汚損度と第二窓汚損度の組を、複数の火災検知装置の配置の並び順に表示させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した複数の監視エリアの境界毎に火災検知装置を配置して前記監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、
前記火災検知装置に関する情報を表示する表示部と、
前記表示部に前記情報を表示させる制御部と、
を備え、
前記火災検知装置は、
前記火災検知装置が配置された前記監視エリアの境界に接して相互に隣接する前記監視エリアの各々に対応する第一透光性窓と第二透光性窓とを備え、
前記第一透光性窓及び前記第二透光性窓を介し、前記監視エリアの各々からの光線を受光することにより、前記監視エリアの各々における火災発生の有無を判定し、
相互に隣接する前記監視エリアの一方に対応する前記第一透光性窓の汚損状態を示す第一窓汚損度と、相互に隣接する前記監視エリアの他方に対応する前記第二透光性窓の汚損状態を示す第二窓汚損度とを検知し、
前記制御部は、
前記複数の火災検知装置が検知した前記第一窓汚損度と前記第二窓汚損度とに基づき、前記表示部に、隣り合う前記境界にそれぞれ配置された一方の前記火災感知器の第一窓汚損度と他方の前記火災感知器の第二窓汚損度とが並ぶように、前記第一窓汚損度と前記第二窓汚損度の組を、前記複数の火災検知装置の配置の並び順に表示させることを特徴とする防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災受信盤から引き出された信号回線に接続された火災検知装置により、トンネル長手方向に所定間隔に区分された監視エリアの火災を監視する防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両等を守るため、火災を監視する火災検知装置が設置され、防災受信盤から引き出された信号回線に接続されている。
【0003】
火災検知装置はトンネル長手方向に沿って例えば25m間隔、或いは50m間隔に区分された監視エリアの境界に設置され、火災検出装置は左右の両方向に検知エリアを持ち、隣接して配置された火災検知装置により同じ監視エリアの火災を重複して監視している。
【0004】
火災検知装置には左右の監視エリアに対応して左右に透光性窓が設けられており、透光性窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線、たとえば赤外線を監視している。
【0005】
トンネル内に設置している火災検知装置は、環境内を浮遊する汚損物質付着などにより時間の経過と共に透光性窓の汚れが増加することから、炎の監視機能を維持するために、透光性窓の汚れを監視しており、一定の期間毎に透光性窓の清掃を行っている。
【0006】
透光性窓の汚れ監視は、火災検知装置に設けた試験光源から定期的に試験光を、検知装置外部の検知出エリア側空間を経由し透光性窓に入射し受光素子で受光して、このときの受光レベルを初期無汚損時のそれと比較するなどして減光率を汚損度として求め、汚損度が所定の閾値を超えたら汚損信号を防災受信盤に送信して汚損警報を出力させている。火災検知装置の汚損警報が出力された場合には、汚損状態となった火災検知装置の透光性窓を清掃する対応が必要となる。
【0007】
また、汚損閾値に対しそれより低い汚損予兆閾値を設定し、汚損度が汚れ予兆閾値を超えた場合に汚損予兆信号を防災受信盤に送信して汚損予兆警報を出力させている。火災検知装置の汚損予兆警報については、汚損予兆状態となった火災検知装置の数が増加した場合に、定期清掃実施予定までの期間が長いときには、清掃作業の時期を早めるといった計画見直し等の対応が可能となる。
【0008】
ところで、防災受信盤による火災検知装置の汚損監視の方法として、火災検知装置で検知した汚損度に基づき、正常、汚損予兆、汚損といった汚損状態の進行度合いをトンネル長さ方向の順に表示するようにしており、これによりトンネル全体の火災検知装置の汚損度合や汚損の傾向を把握することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-315285号公報
【特許文献2】特開2002-063664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、防災受信盤により火災検知装置で検知した汚損度に基づき、正常、汚損予兆、汚損といった汚損状態の進行度合いをトンネル長さ方向の順に表示するようにした防災システムにあっては、火災検知装置が左右の監視エリアに対応して設けられた右側透光性窓の左側透光性窓の汚損状態を区別しておらず、両方の透光性窓の汚損度が汚損予兆閾値に達していなければ正常、何れか一方の透光性窓が汚損予兆閾値を超えた場合は汚損予兆、更に、何れか一方の透光性窓が汚損閾値を超えた場合は汚損と判断して、汚損状態の進行度合いをトンネル長さ方向の順に表示している。
【0011】
このような防災受信盤による火災検知装置の汚損状態の表示は、火災検知装置に設けられた透光性窓の清掃の必要性をみるためのものであるが、火災検知装置の透光性窓清掃の必要性を検討し、清掃作業を計画するにあたっては、汚損状態の進行度合いをトンネル長さ方向の順(配置順)に表示することが必ずしも効率的とは言えない面がある。また、従来の防災システムでは、左右の透光性窓を区別せずに汚損状態を表示しているため、清掃の必要性が正確に判断できない可能性がある。
【0012】
例えば、トンネル長手方向の順に汚損度を表示しても、どの検知装置が清掃の必要があるのか、あるいは清掃の緊急度が高いのかについては目視により探索するなどが必要になる。
【0013】
また例えば、トンネル内に設置された火災検知装置の汚損状態は、トンネル内を流れる気流の方向により、左右に設けられた透光性窓の一方の汚損の進み具合が他方に比べ早まる場合があり、このため例えば、ある火災検知装置の一方の透光性窓が汚損予兆状態となっても、他方の透光性窓が正常な(非汚損あるいは汚れが軽度である)場合があり、このような場合に、防災受信盤には火災検知装置の透光性窓は汚損予兆状態にあるものとして表示され、この場合、両方の透光性窓が汚損予兆状態にある場合に比べ緊急度が高くないが、そのことがただちに把握できず効率的でない。
【0014】
また、同じ監視エリアを重複して監視している隣接して配置された火災検知装置において、同じ監視エリアを監視している一方の火災検知装置の透光性窓が汚損状態となっても、同じ監視エリアを監視している他方の火災検知装置の透光性窓が正常状態にあれば、その監視エリアに監視機能は正常状態にある火災検知装置の透光性窓による監視で維持されており、これが分かると汚損状態となった火災検知装置の清掃には比較的時間的な余裕があることにもなるが、この場合も従来の左右の透光性窓の汚損を考慮しない従来の表示にあっては、汚損状態となった火災検知装置の清掃を必要以上に急がざるを得ず、清掃の必要性が適切に判断できない可能性が残る。
【0015】
本発明は、火災検知装置の左右両側の監視エリアに対応して設けられた透光性窓の汚損状態を把握して清掃の必要性を適切に判断可能とする防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(防災監視システム)
本発明は、連続した複数の監視エリアの境界毎に火災検知装置を配置して監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、
火災検知装置に関する情報を表示する表示部と、
表示部に情報を表示させる制御部と、
を備え、
火災検知装置は、
火災検知装置が配置された監視エリアの境界に接して相互に隣接する監視エリアの各々に対応する第一透光性窓と第二透光性窓とを備え、
第一透光性窓及び第二透光性窓を介し、監視エリアの各々からの光線を受光することにより、監視エリアの各々における火災発生の有無を判定し、
相互に隣接する監視エリアの一方に対応する第一透光性窓の汚損状態を示す第一窓汚損度と、相互に隣接する監視エリアの他方に対応する第二透光性窓の汚損状態を示す第二窓汚損度とを検知し、
制御部は、
複数の火災検知装置が検知した第一窓汚損度と第二窓汚損度とに基づき、表示部に、隣り合う境界にそれぞれ配置された一方の火災感知器の第一窓汚損度と他方の火災感知器の第二窓汚損度とが並ぶように、第一窓汚損度と第二窓汚損度の組を、複数の火災検知装置の配置の並び順に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、受信装置から引き出された信号回線に、所定方向に沿って所定間隔に区分された監視エリアの境界に配置された複数の火災検知装置が接続された防災システムに於いて、火災検知装置は、ふたつの監視エリアからの放射線を、各々に対応した透光性窓を介して受光して電気信号に変換し、当該電気信号に基づいて、対応する監視エリアにおける火災を判定した場合に火災判定信号を受信装置に送信する火災判定部と、一方の透光性窓の汚損状態を示す第一窓汚損度と他方の透光性窓の汚損状態を示す第二窓汚損度を検知して、これらに応じた汚損度検知信号を受信装置に送信する汚損検知部とを備え、受信装置は、火災検知装置から火災判定信号を受信して警報する火災監視制御部と、複数の火災検知装置から受信した第一窓汚損度と第二窓汚損度を、所定の順番に従って表示させる汚損表示制御部とを備えたため、例えば、トンネルの長手方向に沿って所定間隔に区分された監視エリアの境界に設置されて第一、第二の透光性窓に対応する監視エリアにおける火災を監視する複数の火災検知装置にあっては、受信装置で複数の火災検知装置に設けられた第一窓汚損度と第二窓汚損度が所定の順番に表示されることで、例えば、正常、汚損予兆、汚損といった汚損度合を第一、第二の透光性窓毎に捉え、透光性窓の清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【0018】
(左窓と右窓に分けて汚損度の大きい順に表示することの効果)
また、受信装置の汚損表示制御部は、複数の火災検知装置の第一窓汚損度と第二窓汚損度に分けて汚損度の大きい順に表示させるようにしたため、火災検知装置の汚損度が第一、第二の透光性窓に分けて、汚損度が大きい順に表示され、清掃の必要性の高い透光性窓の汚損度が例えば先頭に表示されることで、清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【0019】
(左窓と右窓の汚損度を組み合わせ表示することの効果)
また、汚損表示制御部は、汚損度の大きい順に表示された第一窓汚損度に、対応する第二窓汚損度を組み合わせて表示させ、且つ汚損度の大きい順に表示された第二窓汚損度に、対応する第一窓汚損度を組み合わせて表示させるようにしたため、汚損度の大きい順に従って先頭に表示された例えば第一窓汚損度に対応して同じ火災検知装置の第二窓汚損度が表示されることで、第一、第二の汚損度を考慮して清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【0020】
(火災検知装置の並び順に汚損度を表示することの効果)
また、受信装置の汚損表示制御部は、複数の火災検知装置の第一窓汚損度と第二窓汚損度の組を、複数の火災検知装置の並び順に表示させるようにしたため、トンネル内での火災検知装置の並び方向に沿って第一窓汚損度と右窓汚損度の組が表示され、トンネル内の配置位置に対応した第一、第二の汚損度を考慮して清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【0021】
(汚損度の大きい順に左窓と右窓の汚損度を混在表示することの効果)
また、受信装置の汚損表示制御部は、複数の火災検知装置の第一窓汚損度と第二窓汚損度を、汚損度の大きい順に混在して表示させるようにしたため、第一窓汚損度と第二窓汚損度が汚損度の大きい順に並べて表示されることで、清掃の必要性の最も高い透光性窓を把握して、清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【0022】
(重複監視する監視エリアの汚損度を並び順に表示することの効果)
また、受信装置の汚損表示制御部は、同一の監視エリアを重複して監視する何れか一方の火災検知装置の汚損度と他方の火災検知装置の汚損度とが隣接して並ぶように、複数の火災検知装置の第一窓汚損度と第二窓汚損度の組を、複数の火災検知装置並び順の順に表示させるようにしたため、隣接した2台の火災検知装置により重複して監視している同一の監視エリアに対するそれぞれの透光性窓に対応した一方の汚損度と他方の汚損度の関係が簡単且つ確実に分かり、例えば、一方の汚損度が汚損レベルに達していても、他方の汚損度が正常レベルに収まっていれば、その監視エリアは重複監視はできないが、汚損度が正常レベルにある他方の火災検知装置により正常に監視されており、一方の火災検知装置の汚損度が汚損レベルに達しても、清掃の必要性がひっ迫した状況にはないと判断することが可能となり、清掃の必要性を適切に判断可能とする。
【0023】
(火災検知装置による汚損予兆と汚損の判別と受信装置での識別表示による効果)
また、火災検知装置の汚損検知部は、第一窓汚損度又は第二窓汚損度が所定の汚損予兆閾値に達している場合に受信装置に汚損予兆状態を示す汚損予兆信号を送信し、第一窓汚損度又は第二窓汚損度汚が汚損予兆閾値よりも高い所定の汚損閾値に達している場合に受信装置へ汚損信号を送信し、受信装置の汚損表示制御部は、汚損予兆信号に対応した左窓汚損度又は右窓汚損度に汚損予兆状態を識別表示させ、汚損信号に対応した第一窓汚損度又は第二窓汚損度に汚損状態を識別表示させるようにしたため、例えば、第一窓汚損度と第二窓汚損度に分けて汚損度の大きい順に表示した場合に、先頭に表示されている大きな汚損度が、汚損状態にあるか、汚損予兆状態にあるかが、各々の識別表示により簡単に把握でき、汚損度の高い順に表示した場合の清掃の必要性の判断を、より適切に行うことを可能とする。
【0024】
(受信装置での汚損予兆と汚損の判定と識別表示による効果)
また、受信装置の汚損表示制御部は、第一窓汚損度又は第二窓汚損度が所定の汚損予兆閾値に達している場合に、第一窓汚損度又は第二窓汚損度に汚損予兆状態を識別表示させ、第一窓汚損度又は第二窓汚損度が汚損予兆閾値よりも高い所定の汚損閾値に達している場合に、第一窓汚損度又は第二窓汚損度に汚損状態を識別表示させるようにしたため、大きな汚損度の表示が、汚損状態にあるか、汚損予兆状態にあるかが、各々の識別表示により簡単に把握でき、汚損度の高い順に表示した場合の清掃の必要性の判断を、より適切に行うことを可能とする。
【0025】
また、汚損予兆状態と汚損状態の判断を受信装置で集中して行うことで、火災検知装置側の処理負担を低減可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】トンネル内の火災監視を例にとって本発明による防災システムの概要を示した説明図
図2】火災検知装置により重複監視するトンネル内の警戒エリアを示した説明図
図3】火災検出装置の機能構成の概略を示したブロック図
図4】火災検出装置の外観を示した説明図
図5】防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図
図6】防災受信盤のメモリに記憶された汚損情報を一覧で示した説明図
図7】汚損表示の第1実施形態を示した説明図
図8】汚損表示の第2実施形態を示した説明図
図9】汚損表示の第3実施形態を示した説明図
図10】汚損表示の第4実施形態を示した説明図
図11】汚損表示の第5実施形態を示した説明図
図12】第5実施形態による他の表示形態を示した説明図
図13】第5実施形態による他の表示形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[防災システムの概要]
図1はトンネルの火災監視を例にとって本発明による防災システムの概要を示した説明図である。図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築されている。
【0028】
上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば50メートル間隔で火災検知装置16が設置されている。火災検知装置16は、左右に透光性窓を備えた2組の受光部を有することで、トンネル長手方向上り側および下り側の左右両方向に監視エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知装置との監視エリアが重複するように連続的に配置される。
【0029】
受信装置として機能する防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに対し電源および信号回線12a,12bが引き出されて火災検知装置16が接続されており、火災検知装置16には固有のアドレスが並び順に予め設定されている。なお、火災検知装置16にはアドレスに替えて固有のID(識別子)を並び順に設定しても良い。
【0030】
図2は火災検知装置により重複監視するトンネル内の監視エリアを示した説明図であり、図1の上り線トンネル1aを例にとっている。
【0031】
図2に示すように、上り線トンネル1aのトンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔で火災検知装置16が設置されている。これはトンネル内を長手方向に50メートル間隔の監視エリアAR1,AR2,…ARi-1,ARi,ARi+1,・・・に区分けし、境界に火災検知装置16が設置されている。各監視エリアは例えば長手方向50m×短手方向20mといった大きさになる。
【0032】
火災検知装置16には、左右の監視エリアを個別に監視する左側透光性窓(第一窓)を備えた左窓受光部と右側透光性窓(第二窓)を備えた右窓受光部が設けられている。ここで、火災検知装置16の左右関係は、本実施形態においては、火災検知装置16を正面から見た状態で定めている。
【0033】
例えば、監視エリアARiの左端に配置されたi番目の火災検知装置16と右端に配置されたi+1番目の火災検知装置16は、i番目の火災検知装置16の右窓受光部により監視エリアARiを監視し、同時に、i+1番目の火災検知装置16の左窓受光部により同じ監視エリアARiを重複して監視している。
【0034】
なお、トンネル入口側の最初の監視エリアAR1は、1番目の火災検知装置16の左窓受光部による単独監視となる。
【0035】
火災検知装置16は、左側又は右側の監視エリア内で起きた火災による炎からの放射線、例えば赤外線を、左窓受光部により観測して火災を監視すると共に、右窓受光部により観測して火災を監視しており、火災を検知した場合、予め設定された固有のアドレスと左窓検知か右窓検知かを示す識別情報を含む火災信号を防災受信盤10に送信する。
【0036】
また、火災検知装置16は受光部に設けられた透光性窓の汚損を例えば1日に1回の周期で左右独立に検知しており、検知した汚損度と左窓検知か右窓検知かを示す識別情報を含む汚損検知信号を防災受信盤10に送信する。
【0037】
更に、火災検知装置16は、周期的に検知した汚損度が所定の汚損予兆閾値を超えた場合に、汚損予兆情報と左窓検知か右窓検知かを示す識別情報を含む汚損予兆信号を防災受信盤10に送信し、汚損度が所定の汚損閾値を超えた場合に、汚損情報と左窓検知か右窓検知かを示す識別情報を含む汚損信号を防災受信盤10に送信する。
【0038】
[火災検知装置]
図3は火災検知装置の機能構成の概略を示したブロック図、図4は火災検知装置の外観を示した説明図である。
【0039】
図3に示すように、火災検知装置16は左窓火災検知部16Lと右窓火災検知部16Rを備えており、左窓火災検知部16Lに代表して示すように、受光センサを含む受光部38a,38b、これら各々に対応する増幅処理部40a,40b、制御部34及び伝送部35を備える。受光部38a,38bの前方には検知器カバーに設けた左側透光性窓36Lを配置しており、左側透光性窓36Lを介して外部の監視エリアからの光エネルギーを受光部38a,38bに入射している。
【0040】
また、左側透光性窓36Lの汚損を監視するため、試験光源部42、汚損受光部44及び増幅部46で構成する汚損検知部が設けられている。
【0041】
ここで、図4に示すように、火災検知装置16は、筐体52の上部に設けられたセンサ収納部54に左側透光性窓36Lと右側透光性窓36Rが設けられ、左側透光性窓36Lと右側透光性窓36Rの内部の各々に、図3に示した左窓火災検知部16Lと右窓火災検知部16Rの受光部等が配置されている。また、左側透光性窓36Lと右側透光性窓36Rの近傍の、受光部を見通せる位置に、個別の試験光源部42を収納した2組の試験光源用透光窓56が設けられている。
【0042】
再び図3を参照するに、右窓火災検知部16Rも左窓火災検知部16Lと同じ構成であるが、制御部34は両者に共通するユニットとして設けられ、例えばハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用される。また、制御部34にはプログラムの実行により実現される機能として、火災判定部48と汚損処理部50が設けられる。
【0043】
左窓火災検知部16Lは例えば2波長式の炎検知原理により火災を監視している。受光部38aは、左側透光性窓36Lを介して入射した光エネルギーの中から、炎に特有なCO2の共鳴放射帯である4.4~4.5μmの放射線を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過させて、受光センサにより該放射線のエネルギーを光電変換したうえで、増幅処理部40aにより増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する受光信号にして制御部34へ出力する。
【0044】
受光部38bは、左側透光性窓36Lを介して入射した光エネルギーの中から、5~6μmの放射エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過させて、受光センサにより該放射線のエネルギーを検知して光電変換したうえで、増幅処理部40bにより増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する受光信号にして制御部34へ出力する。
【0045】
制御部34に設けられた火災判定部48は、例えば、増幅処理部40a,40bから出力された受光信号レベルの相対比をとり、所定の閾値と比較することにより炎の有無を判定し、炎有りの判定により火災を検知した場合には、伝送部35に指示して、防災受信盤10からの自己アドレスに一致する呼出電文に対する応答電文に、火災判定情報と左窓検知を示す識別情報を設定することにより、火災判定信号として防災受信盤10へ送信する制御を行う。
【0046】
試験光源部42、汚損受光部44及び増幅部46で構成した汚損検知部は、制御部34の汚損処理部50からの指示により所定周期、例えば1日に1回の周期で試験光源部42を点滅して所定の試験光を発し、左側透光性窓36Lを介して汚損受光部44に入射しており、この試験光は汚損受光部44に設けた受光センサで電気信号に変換され、増幅部46で増幅して制御部34に、左側透光性窓36Lの汚損度に応じた汚損検知信号が出力される。
【0047】
制御部34の汚損処理部50は、増幅部46からの汚損検知信号が得られた場合、予め記録された無汚損時の汚損検知信号レベルと汚損処理により得られた汚損検知信号レベルとを比較して現行率度を算出することで汚損度を検知する。検知した汚損度を、制御部34に指示して、自己アドレスに一致する呼出電文に対する応答電文に、汚損度の値を示す汚損情報と左窓検知を示す識別情報を設定することにより、汚損検知信号として防災受信盤10に送信する制御を行う。
【0048】
汚損処理部50による上記の汚損検知は、防災受信盤10からの定期的な(例えば1日に1回)の汚損処理実施指示信号を受けて実施され、汚損検知信号はこの応答信号として返送されるようにもできる。
【0049】
また、制御部34の汚損処理部50は、検知された汚損度が、所定の汚損予兆閾値を超えた場合に、伝送部35に指示して、自己アドレスに一致する呼出電文(或いは先の汚損処理実施指示信号)に対する応答電文に、汚損予兆情報と左窓検知を示す識別情報を設定することにより、汚損予兆信号として防災受信盤10へ送信する制御を行う。
【0050】
ここで、防災受信盤10に対して送信する汚損情報に汚損度を付す場合には、汚損予兆閾値との比較処理および汚損予兆の判定は防災受信盤10側で行ってもよい。この場合、汚損予兆閾値は防災受信盤10に設定登録される。
【0051】
また、制御部34の汚損処理部50は、増幅部46からの汚損検知信号に基づく汚損度が、汚損予兆閾値より高い所定の汚損閾値を超えた場合に、伝送部35に指示して、防災受信盤10からの、自己アドレスに一致する呼出電文に、汚損情報と左窓検知を示す識別情報を設定することにより、汚損信号として防災受信盤10へ送信する制御を行う。
【0052】
なお、防災受信盤10に対して送信する汚損情報に汚損度を付す場合には、汚損閾値との比較処理および汚損の判定は防災受信盤10側で行ってもよい。この場合、汚損閾値は防災受信盤10に設定登録される。
【0053】
ここで、制御部34の汚損処理部50は、増幅部46からの汚損検知信号に基づき汚損具合を示す左側透光性窓36Lの減光率を求め、この減光率を汚損度として防災受信盤10に送信すると共に、汚損予兆及び汚損の判定処理を行う。
【0054】
汚損処理部50による左側透光性窓36Lの減光率の算出は、左側透光性窓36Lに汚損がない工場出荷時、火災監視開始時又は清掃終了時の汚損検知信号のレベルを基準レベルErとして記憶し、増幅部46から検知レベルEの汚損検知信号が得られる毎に、減光率Dを
D=1-(E/Er)
として算出する。
【0055】
このようにして算出される減光率Dは、透光性窓36の汚損度合に比例して変動する値であり、以下の説明では、減光率を汚損度として説明する。
【0056】
また、汚損処理部50で汚損予兆の判定に使用する汚損予兆閾値は、左側透光性窓36Lがやや汚損しているが受光部38a,38bによる監視エリアの全体の火災監視可能を維持できる(所定規模の火災を検知できる)所定の第1の汚損レベル、例えば減光率75パーセントに設定される。
【0057】
更に、汚損処理部50で汚損の判定に使用する汚損閾値は、受光部による監視エリアの全体の監視ができなくなる、第1の汚損レベルより高い所定の第2の汚損レベル、例えば減光率85パーセントに設定される。
【0058】
このような汚損検知部50の処理は、右側透光性窓36Rの汚損に対しても同様となる。
【0059】
[防災受信盤]
図5は防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図である。図5に示すように、防災受信盤10は制御部18を備え、制御部18は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、火災監視制御部31と汚損表示制御部32の機能が設けられる。また、制御部18のハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0060】
制御部18に対しては伝送部20a,20bが設けられ、伝送部20a,20bから引き出された信号回線12a,12bに上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに設置された火災検知装置16がそれぞれ複数台接続されている。
【0061】
また、制御部18に対しスピーカ、警報表示灯等を備えた警報部22、液晶ディスプレイ等を備えた表示部24、プリンタ25、各種スイッチ等を備えた操作部26、外部監視設備と通信するIG子局設備を接続するモデム28が設けられ、更に、換気設備、警報表示板設備、ラジオ再放送設備、カメラ監視設備、照明設備及び消火ポンプ設備を接続したIO部30が設けられている。
【0062】
防災受信盤10の火災監視制御部31は、伝送部20a,20bを介して火災検知装置16のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出電文を繰り返し送信しており、火災検知装置16は自己アドレスに一致する呼出電文を受信すると、直前に検知した汚損度、汚損予兆、汚損等の検知情報と左窓検知か右窓検知かを示す識別情報を含む応答電文を返信する。
【0063】
なお、防災受信盤10の火災監視制御部31は、火災検知装置16からの電文の受信により火災を判定した場合は警報部22に指示して火災警報を出力させると共にIO部30に指示して他設備に連動制御を行なわせる。
【0064】
[防災受信盤による汚損監視]
(汚損情報の収集記憶)
防災受信盤10の汚損表示制御部32は、火災検知装置16から受信した応答電文に設定された汚損度情報と左窓検知か右窓検知かの識別情報に基づき、制御部18のメモリに図6に示す火災検知装置16の汚損情報100を記憶している。
【0065】
図6のメモリに記憶された汚損情報100は、火災検知装置16のアドレスに対応して図3の左窓火災検知部16Lで検知された左窓汚損度LDiと右窓火災検知部16Rで検知された左窓汚損度RDiが記憶されている。なお、iは火災検知装置16の任意のアドレスを示している。
【0066】
ここで、図1に示した上り線トンネル1aと下り線トンネル1bのトンネル長を例えば各1キロメートルとすると、50メートル間隔で20台の火災検知装置16が配置されており、図6の汚損情報100にあっては、20台の火災検知装置16について設定されたアドレス01~20に対応して左窓汚損度LD01~LD20と右窓汚損度RD01~RD20が記憶された場合を例にとっている。また、左窓汚損度LD01~LD20と右窓汚損度RD01~RD20は、透光性窓の減光率を示すアナログ値となる。
【0067】
汚損表示制御部32は、操作部26による汚損状態を確認するための所定の操作が行われた場合に、図6の汚損情報100に基づき、アドレスに対応した左窓汚損度と右窓汚損度の一覧を、所定の順番に従って表示部24の液晶ディスプレイに表示すると共に、プリンタ25により印刷出力させる制御を行う。
【0068】
また、防災受信盤10の汚損表示制御部32は、図6の汚損情報100に基づき、アドレスに対応した左窓汚損度と右窓汚損度の一覧を表示部24の液晶ディスプレイに表示させる場合や、プリンタ25により印刷出力させる場合に、左窓汚損度と右窓汚損度を汚損予兆や汚損に対応して色分け等により識別表示させる制御を行う。
【0069】
このような汚損表示制御部32による汚損情報の表示制御の実施形態は以下のようになる。
【0070】
(汚損表示の第1実施形態)
図7は汚損表示の第1実施形態を示した説明図である。図7に示すように、防災受信盤10の汚損表示制御部32による本実施形態の汚損表示102は、図6に示した汚損情報100に基づき、左窓汚損情報102と右窓汚損情報104に分けて表示している。表示は上り線、下り線ごとに行われるが、上り線側のみ図示する。
【0071】
左窓汚損情報102は、上り線側火災検知装置16のアドレスAiに対応して左窓汚損度LDiを、汚損度の大きい順に並べている。また、右窓汚損情報104は、火災検知装置16のアドレスAiに対応して右窓汚損度RDiを、汚損度の大きい順に並べている。
【0072】
また、左窓汚損情報102について、汚損度が最大の先頭のアドレス15の左窓汚損度LD15は、対応する火災検知装置16から汚損信号が受信されていることから、斜線で示すように汚損状態にあることを識別表示している。また、汚損度が2番目から4番目のアドレス09,04,12の左窓汚損度LD09,LD04,LD12は、対応する火災検知装置16から汚損予兆信号が受信されていることから、砂地で示すように汚損予兆状態にあることを識別表示している。
【0073】
また、右窓汚損情報104についても、汚損度が最大の先頭のアドレス07の右窓汚損度RD07は、対応する火災検知装置16から汚損信号が受信されていることから、斜線で示すように汚損状態にあることを識別表示している。また、汚損度が2番目から3番目のアドレス01,09の左窓汚損度RD01,RD09は、対応する火災検知装置16から汚損予兆信号が受信されていることから、砂地で示すように汚損予兆状態にあることを識別表示している。
【0074】
汚損状態又は汚損予兆状態にあることの識別表示は、対応する表示部位の背景又は文字を所定の色とする。例えば、汚損状態は赤で識別し、汚損予兆は黄色で識別させる。
【0075】
このように汚損度の大きい順に並べた左窓汚損情報102と右窓汚損情報104の表示を見ることで、左側透光性窓は、アドレス15の火災検知装置16について清掃の必要性が高まっており、右側透光性窓は、アドレス07の火災検知装置16について清掃の必要性が高まっていることが一目で把握でき、特に、両者については、斜線で示す汚損状態、即ち、減光率が85パーセントに達して警戒エリアの全域監視ができなくなっていることから、清掃の必要性が一層高いことが判断できる。
【0076】
一方、左側透光性窓についてはアドレス09,04,12の火災検知装置16が、右側透光性窓についてはアドレス01,15の火災検知装置16が、砂地で示す汚損予兆状態、即ち、減光率が85パーセント未満であるが75パーセントに達しており、清掃の必要性が次に高いと判断することできる。
【0077】
(汚損表示の第2実施形態)
図8は汚損表示の第2実施形態を示した説明図である。図8に示すように、防災受信盤10の汚損表示制御部32による本実施形態の汚損表示は、図7に示した左窓汚損表示102の左窓汚損度LDiに対し、同じ火災検知装置16における右窓汚損度RDiを組み合わせて表示している。表示は上り線、下り線ごとに行われるが、上り線側のみ図示する。
【0078】
また、図7に示した左窓汚損表示102の左窓汚損度LDiに対し、同じ火災検知装置16における右窓汚損度RDiを組み合わせ対応させて表示している。
【0079】
例えば、左窓汚損表示102の汚損度が最も高いアドレス15の左窓汚損度LD15に、同じアドレス15の右窓汚損度RD15を組み合わせて表示している。ここで、アドレス15の左窓汚損度LD15は汚損状態にあることから斜線で示す識別表示が行われ、また、同じアドレス15の右窓汚損度RD15は汚損予兆状態にあることから、砂地で示す識別表示が行われている。
【0080】
この場合、アドレス15の左窓汚損度LD15は減光率が85パーセントに達して汚損状態にあり、また、アドレス15の右窓汚損度RD15は減光率が85パーセント未満であるが75パーセントに達して汚損予兆状態にあり、アドレス15の火災検知装置16については、清掃の必要性が相当高くなっていると一目で把握できる。
【0081】
この点は、右窓汚損表示104をベースにした場合について同様であり、右窓汚損表示104で汚損度が最も高いアドレス07の右窓汚損度RD07に、同じアドレス07の左窓汚損度LL07を組み合わせて表示している。ここで、アドレス07の右窓汚損度RD07は汚損状態にあることから斜線で示す識別表示が行われ、また、同じアドレス07の左窓汚損度LD07は汚損度が低く正常な状態にあることが一目で把握できる。ここでも、アドレス15の火災検知装置16が清掃の必要性が相当高くなっていると一目で把握できる。
【0082】
(汚損表示の第3実施形態)
図9は汚損表示の第3実施形態を示した説明図である。図9に示すように、防災受信盤10の汚損表示制御部32による本実施形態の汚損表示106は、火災検知装置16のアドレスiの順番に、左窓汚損度LDiと右窓汚損度RDiの組を、並べて表示している。表示は上り線、下り線ごとに行われるが、上り線側のみ図示する。
【0083】
また、図7及び図8と同様に、汚損状態にある汚損度は斜線で示すように識別表示され、また、汚損予兆状態にある汚損度は砂地で示すように識別表示されており、汚損度のアナログ値を見なくとも、汚損の進み具合を直感的に把握できるようにしている。
【0084】
ここで、汚損状態と汚損予兆状態の識別表示は、汚損または汚損予兆状態にある左窓汚損度LDiと右窓汚損度RDiに対し行っているが、これに対応したアドレスiについても、汚損状態又は汚損予兆状態の識別表示を行っている。この識別表示として、例えばアドレス15のように、左窓汚損度LD15が汚損状態で右窓汚損度RD15が汚損予兆状態の場合は、高い方の汚損度LD15に対する汚損状態の識別表示を優先して行っている。
【0085】
このような汚損表示106は、図6に示したメモリに記憶している汚損情報100をそのまま読出して表示して、汚損状態と汚損予兆状態を識別表示させたものであり、トンネル内における火災検知装置16の並び順に、各火災検知装置16における左右の透光性窓の汚損度を把握して、清掃の必要性が判断可能となる。
【0086】
(汚損表示の第4実施形態)
図10は汚損表示の第4実施形態を示した説明図である。図10に示すように、防災受信盤10の汚損表示制御部32による本実施形態の汚損表示108は、左窓汚損度LDiと右窓汚損度RDiを、汚損度の大きい順に混在して表示させており、汚損表示108のアドレスには、火災検知装置16のアドレスiと左窓火災検知部を示す識別符号L又は右窓火災検知部を示す識別符号を組み合わせたアドレスiL又はiRが表示されている。なお、表示は上り線、下り線ごとに行われるが、上り線側のみ図示する。
【0087】
この例では、アドレス15Lの左窓汚損度LD15が最大であり、次がアドレス07Rの右窓汚損度RD07であり、両方とも汚損状態となる斜線の識別表示であるが、アドレス15の火災検知装置16の方がより清掃の必要性が高いことが判断できる。
【0088】
(汚損表示の第5実施形態)
図11は汚損表示の第5実施形態を示した説明図である。図11に示すように、防災受信盤10の汚損表示制御部32による本実施形態の汚損表示110は、同一の監視エリアARiを重複して監視するi番目の火災検知装置16の左窓汚損度LDiとi+1番目の火災検知装置16の右窓汚損度RLi+1とが隣接して並ぶように、アドレスiの順に表示させる制御を行う。表示は上り線、下り線ごとに行われるが、上り線側のみ図示する。
【0089】
例えばアドレス01の火災検知装置16とアドレス02の火災検知装置16は、同一の監視エリアAR12を重複して監視していることから、アドレス01の右窓汚損度RD01とアドレス02の左窓汚損度LD2が隣接して並ぶように配置される。この関係は隣接して同一の監視エリアを重複して監視する他の火災検知装置16についても同様となる。
【0090】
また、図7及び図8と同様に、汚損状態にある汚損度は斜線で示すように識別表示され、汚損予兆状態にある汚損度は砂地で示すように識別表示されており、汚損度のアナログ値を見なくとも、汚損の進み具合を一見して把握できるようにしている。
【0091】
このような汚損表示110によれば、隣接した2台の火災検知装置16により重複して監視している同一の監視エリアに対するそれぞれの透光性窓(火災検知部)に対応した一方の汚損度と他方の汚損度の関係が簡単且つ確実に分かる。例えば、アドレス07の右窓汚損度RD07は斜線で示す汚損状態となっているが、同じ監視エリアAR08を重複して監視しているアドレス08の右窓汚損度RD08は正常レベルにあり、清掃の必要性がひっ迫した状況にはないと一目して判断することが可能となる。
【0092】
この点は、左窓汚損度LD15が汚損状態に達しているアドレス15についても、同じ監視エリアAR15を重複して監視しているアドレス14の左窓汚損度LD16は正常レベルにあり、同様に、清掃の必要性がひっ迫した状況にはないと容易に判断することが可能となる。
【0093】
図12の汚損表示120は、トンネル長手方向を横方向として汚損情報100を火災検知装置16のアドレス順に表示した実施形態を示している。
【0094】
図13の汚損表示130は、トンネル内の監視エリアAR1,AR2,・・・に対応して汚損情報100を火災検知装置16のアドレス順に表示した実施形態を示している。
【0095】
なお、図11乃至図13の汚損表示110、120、130を液晶ディスプレイで画面表示する際に、1画面に収まらない場合は、切替え表示やスクロール表示等の表示方法をとることになる。
【0096】
(汚損表示の第6実施形態)
防災受信盤10に設けられた汚損表示制御部32による汚損表示の第6実施形態として、図7乃至図13に示した第1乃至第5実施形態による汚損表示を、操作部26による所定の操作により、必要に応じて選択して表示させるようにしても良い。
【0097】
[本発明の変形例]
(火災検知装置)
上記の実施形態は2波長方式の火災検知装置を例にとっているが、これに限定されず、他の方式でも良い。例えば、前述した2波長に加え、CO2の共鳴放射帯である4.4~4.5μm帯に対し短波長側の、例えば、3.8μm付近の波長帯域における放射線エネルギーを2波長式と同様の手法で検知し、これらの3波長帯域における各受光信号の相対比によって炎の有無を判定する3波長式の炎検知器としても良い。
【0098】
(汚損予兆状態と汚損状態の検知)
上記の実施形態は、火災検知装置で予兆予報状態と予報状態を検知して防災受信盤に送信しているが、これに限定されない。例えば、防災受信盤で火災検知装置の左窓汚損度と右窓汚損度を収集して記憶していることから、防災受信盤の汚損表示制御部により、左窓汚損度又は右窓汚損度が所定の汚損予兆閾値に達している場合に、左窓汚損度又は右窓汚損度に汚損予兆状態を識別表示させ、また、左窓汚損度又は右窓汚損度が汚損予兆閾値よりも高い所定の汚損閾値に達している場合に、左窓汚損度又は右窓汚損度に汚損状態を識別表示させる良いにしても良い。これにより火災検知器装置側での処理負担を低減可能とする。
【0099】
なお、左窓と右窓とは、例えば左側受光部から右側受光部を覆うように湾曲した1枚の透光性窓であってもよい。この場合、左側火災検知部(受光部)のセンサ前方に該当する部分が本実施形態の左側透光性窓、右側火災検知部(受光部)のセンサ前方に該当する部分が右側透光性窓に相当する。
【0100】
(汚損度の表示内容)
上記の実施形態は、防災受信盤の汚損表示制御部は、左窓汚損度及び右窓汚損度を、汚損度のアナログ値(減光率)として表示しているが、これに限定されない。例えば、汚損度の度合を多段階に示す文字、符号、図形又は色彩により表示させるようにしても良い。このように汚損度の度合を文字、符号、図形又は色彩により多段階に表示することにより、汚損の度合を直感的に把握して、清掃の必要性を判断可能とする。
【0101】
なお、図7乃至図13に示した汚損表示の各実施形態において、汚損度の数値表示は必須でなく、省略してもよい。汚損度の数値表示を省略した場合でも、清掃の緊急度や優先度が簡単かつ効率的に把握できる点に変わりなく、本発明の目的を達することができる。
【0102】
また、図7乃至図13に示した汚損表示の各実施形態において、清掃逼迫度の高い監視エリアの順に汚損度又は汚損度の度合を表示しても良い。
【0103】
(その他)監視エリア
また本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0104】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
12a,12b:信号回線
16:火災検知装置
16L:左窓火災検知部
16R:右窓火災検知部
18,34:制御部
20a,20b,35:伝送部
31:火災監視制御部
32:汚損表示制御部
36L:左側透光性窓
36R:右側透光性窓
38a,38b:受光部
40a,40b:増幅処理部
42:試験光源部
44:汚損受光部
46:増幅部
48:火災判定部
50:汚損処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13