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▶ 腸内フローラ移植臨床研究株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121673
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】生体導入補助溶剤及びその利用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/04 20060101AFI20220812BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20220812BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220812BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A61K47/04
A61K9/10
A61K35/741
A61P1/00
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107348
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2020503570の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2018036062
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518372246
【氏名又は名称】腸内フローラ移植臨床研究株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(74)【代理人】
【識別番号】100113044
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 智子
(72)【発明者】
【氏名】清水 真
(57)【要約】
【課題】生体への導入を目的とする物質を、より効率よく生体に導入することが可能となる生体導入補助溶剤を提供すること。
【解決手段】
下記の(II)及び(III)を含むことを特徴とする、生体導入補助溶剤。
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(II)及び(III)を含むことを特徴とする、生体導入補助溶剤。
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【請求項2】
請求項1記載の補助溶剤を用いて、目的物を非ヒト動物の生体に導入する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な気泡を含む生体微生物含有組成物、及びその製造方法、並びに生体導入補助溶剤等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生体に存在する微生物の働きに注目が集まっており、その中でも「腸内フローラ」のバランスの重要性が指摘されている。
【0003】
「腸内フローラ」とは、同じ種類や性質の腸内微生物が、ある程度集合して腸壁に生息している様子が、同じ種類の花がかたまって咲いている花園のように見えることから命名された用語である。
【0004】
この「腸内フローラ」における微生物の「種類や種類毎の比率」は、「腸内フローラバランス」と言われており、生物の種類や、個体ごとよって異なるものであるが、特に「全ての病気は腸から始まる」と言われてきた様に、何らかの疾患に罹患している場合や、体調不良の場合には、健康な同種の生物(ヒトである場合にはヒト)の傾向と比べて、「腸内フローラバランス」が異なっていることが分かって来ている。
【0005】
「腸内フローラバランス」の改善方法としては、例えば代表的なものとしては、乳酸菌飲料等の摂取等が挙げられるが、それだけでは劇的な改善が難しい。
【0006】
そこで、2013年頃、オランダの研究グループが「健康な個体由来の腸内フローラ自体を患者の腸内に直接移植する」という画期的な方法(腸内フローラ移植)を用い(非特許文献1)、その効果が注目を集めた結果、現在では、各種の疾患治療を目指したプロジェクトが、国内外を問わず数多く進行中である(非特許文献2)。
【0007】
この「腸内フローラ移植」とは、具体的には「糞便(由来)微生物移植」を意味しており、糞便を生理食塩水等の溶媒で溶解して得られた腸内微生物を含む組成物を、他の個体に移植するという技術である。
【0008】
しかしながら、従来の「腸内フローラ移植」技術には、色々と改善すべき点があると言われている。
【0009】
第一に、従来法では、移植した生体微生物が、生体に生きたまま定着(以下、「生着」と記載する。)するにはある程度の日数を要すると思われる点である。
そのため、移植した「腸内フローラ」がその数日間のあいだにほとんど排泄されてしまい、結果的に患者の体内に留まれない一因となっていると考えられる。
【0010】
第二に、従来用いられている投与方法の殆どが、大腸内視鏡方式を採っていることから、患者にかかる負担が大きい点が挙げられる。
【0011】
第三に、最も大きな課題として、種々の試みにも拘わらず、移植後の生体微生物の定着率(以下、「生着率」と記載する。)が、わずか2~3割に留まると報告されており、その結果、最終目標である疾患治療においても、期待されたほどの効果が得られていないという大きな問題を抱えている点である。
【0012】
一方、直径が数十μm以下の微細な気泡、いわゆるマイクロバブルや、1μm未満のナノバブル等を発生させる装置の開発が進み(特許文献1等)、それらの気泡を含有する溶液が、医療、農業、水産・養殖業等の種々の分野で利用されるようになって来ている。
【0013】
しかし本発明のように、微細な気泡を含む溶液(いわゆるナノバブル水)を用いて、菌を生きたまま生体に生着させる技術思想は、これまで無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012-582号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Duodenal Infusion of Donor Feces for Recurrent Clostridium difficile(Els van Nood, et al, The new england journal of medicine,January 31,2013,vol. 368,no. 5, P.407-415)
【非特許文献2】炎症性腸疾患における糞便微生物移植法の過去・現在・未来(モダンメディア、62巻、3号、2016[腸内細菌叢]、P.69-74)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、生体微生物を、微細な気泡と共に溶媒中に含有させることによって、驚くべきことに、ムコ多糖類等からなる腸壁の粘膜等に阻まれることなく腸内細菌が生体に容易に生着し、またその生着速度や生着率も、従来の方法と比べて飛躍的に向上することを見出し、本発明に到達したものであって、本発明の目的とするところは、生体への生着効果、中でも特に腸管その他の粘膜を介した生体への生着効果に優れた、「生体微生物含有組成物」及びそれを用いた「生体微生物バランス調整用組成物」等を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的は、下記第一の発明から第十六の発明によって、達成される。
【0018】
<第一の発明>
下記の(I)乃至(III)を含むことを特徴とする、生体微生物含有組成物。
(I)少なくとも1種以上の生体微生物
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【0019】
<第二の発明>
気泡中の気体成分が、下記の1種又は2種以上であることを特徴とする、第一の発明に記載の組成物。
(i)大気
(ii)水素
(iii)窒素
(iv)オゾン
(v)酸素
(vi)二酸化炭素
(vii)アルゴン
【0020】
<第三の発明>
(I)が、腸内細菌であることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明に記載の組成物。
【0021】
<第四の発明>
(I)が、投与対象者と同じ又は異なる1又は2以上の個体由来の、生体微生物であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれか一項に記載の組成物。
【0022】
<第五の発明>
第一の発明乃至第四の発明のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、生体微生物バランス調整用組成物。
【0023】
<第六の発明>
生体微生物バランスが、腸内フローラバランスであることを特徴とする、第五の発明に記載の組成物。
【0024】
<第七の発明>
投与経路が口腔、目、耳、鼻、膣、尿道、皮膚又は肛門からであることを特徴とする、第一の発明乃至第六の発明のいずれか一項に記載の組成物。
【0025】
<第八の発明>
粘膜を介して生着させるためのものであることを特徴とする、第一の発明乃至第七の発明のいずれか一項に記載の組成物。
【0026】
<第九の発明>
少なくとも、下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とする、第一の発明乃至第八の発明のいずれか一項に記載の組成物の、製造方法。
<BR>
(1)(II)の溶媒中に、(III)の気泡を発生させる工程。
(2)(I)を(II)に分散及び/又は溶解させる工程。
<BR>
(I)少なくとも1種以上の生体微生物
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【0027】
<第十の発明>
更に下記(3)の工程を含むことを特徴とする、第九の発明に記載の製造方法。
(3)投与対象者の属性及び/又は環境によって、(I)中の生体微生物の「種類や種類毎の比率」、及び/又は(I)を採取する1又は2以上の個体を決定する工程。
【0028】
<第十一の発明>
下記の工程を含むことを特徴とする、第一の発明乃至第八の発明のいずれか一項に記載の組成物の、組成の決定方法。
(A)投与すべき「生体微生物バランス」のタイプを想定する工程。
(B)(A)で想定した「生体微生物バランスタイプ」を達成し得る、投与対象者と同じ又は異なる1又は2以上の個体由来の「生体微生物」を選定する工程。
【0029】
<第十二の発明>
組成物を、肛門から投与するための器具であって、管状部位を有することを特徴とする、第一の発明乃至第八の発明のいずれか一項に記載の組成物の、投与用器具。
【0030】
<第十三の発明>
下記の(II)及び(III)を含むことを特徴とする、生体導入補助溶剤。
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【0031】
<第十四の発明>
第一の発明乃至第八の発明のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、体質及び/又は体調改善剤。
【0032】
<第十五の発明>
第一の発明乃至第八の発明のいずれか一項に記載の組成物を生体に導入し、疾患の予防及び/又は治療,あるいは体質及び/又は体調の改善をする方法。
【0033】
<第十六の発明>
第十三の発明に記載の生体導入補助溶剤を用いて、目的物を生体に導入する方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明の組成物は、従来法に比べて、患者負担の少ない簡便な方法で施与することもでき、投与の方法・経路に関わらず、より迅速・確実な生着効果が達成されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明で使用した実施例Aの「生体導入補助溶剤(ナノバブル水A)」(測定用の250倍希釈液)中の、気泡の大きさ、数量等を測定した結果である。
図2】実施例2の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(アトピー性皮膚炎患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図3】実施例3の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(肺腺癌患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図4】実施例4の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(慢性膵炎患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図5】実施例5組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(糖尿病II型患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図6】実施例6の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(糖尿脂質異常症患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図7】実施例7の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(過敏性腸症候群患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図8】実施例8の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(潰瘍性大腸炎患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図9】実施例9の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(うつ病患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図10-1】本発明の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を「レシピエント」(ジアルジア感染症患者)に投与した、手順を示す図である。
図10-2】本発明の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(ジアルジア感染症患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図11-1】本発明の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を「レシピエント」(慢性疲労症患者)に投与した、手順を示す図である。
図11-2】本発明の組成物(「ドナー」由来の腸内フローラ)を投与した場合の、「レシピエント」(慢性疲労症患者)の腸内フローラ変化を示す図である。
図12】実施例Bの生体導入補助溶剤(ナノバブル水B)に、生体微生物を含有させた場合の保存による安定性を、生理食塩水と比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
[本発明の生体微生物含有組成物]
本発明の「生体微生物含有組成物」は、下記の(I)乃至(III)を含むことを特徴とするものである。
(I)少なくとも1種以上の生体微生物
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【0038】
《本発明で用いられる(I)の生体微生物》
(生体微生物の大分類)
本発明で用いられる(I)の生体微生物とは、ヒト及びその他の生物の、体内又は体表面等を含めたあらゆる生体部位に常在する、すべての微生物を言い、例えば細菌、真菌、ウイルス等に分類される。
【0039】
また、これらの生体微生物には、生体から採取したままの微生物のほか、それらを培養して人為的に増殖させたもの、それらが突然変異したもの、又は形質転換その他の手法によって、人為的に改変した微生物等も含まれる。
【0040】
(生体微生物中の中分類)
上記の生体微生物の各大分類には、各々下記の中分類が含まれる。
【0041】
(細菌の中分類)
細菌の中分類としては、具体的には、腸内、眼内、耳鼻内、口腔内、膣内、気道内、皮膚などに常在する細菌等が挙げられる。
【0042】
(真菌の中分類)
真菌の中分類としては、酵母様真菌、カンジダ菌、イースト菌等が挙げられる。
【0043】
(ウイルスの中分類)
ウイルスの中分類としては、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、痘瘡ウイルス、EBウイルス、ムンプスウイルス等のDNA、RNA両ウイルス等が挙げられる。
【0044】
尚、本発明の組成物が、「腸内フローラバランス調整用組成物」の場合には、(I)の生体微生物としては、好ましくは腸内微生物、より好ましくは腸内細菌が挙げられる。
【0045】
(腸内細菌の小分類)
腸内細菌の小分類としては、具体的には、例えば以下のようなものが挙げられる。
Bifidobacterium
Lactobacillales
Bacteroides
Prevotella
Clostridium cluster IV
Clostridium subcluster XIVa
Clostridium cluster IX
Clostridium cluster XI
Clostridium cluster XVIII
その他のClostridium
【0046】
また、腸内細菌としては、同種(例えばヒトを対象とする場合はヒト)由来の腸内細菌が好ましい。
【0047】
(用いられる中分類・小分類の数)
本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「生体微生物(I)」としては、通常、上記の「中分類」の中の1種類を用いることが好ましいが、2種類以上の「中分類」を用いることが好ましい場合もある。
また、各中分類中の「小分類」としては、その1種又は2種以上を、後述する投与対象者(以下、「レシピエント」と記載することがある。)の「属性及び/又は環境」その他の状況に応じて、適宜使い分けることができる。
【0048】
例えば本発明の「生体微生物含有組成物」が、後述する「生体微生物バランス調整用組成物」に用いられる場合には、(I)は、2種以上の生体微生物の混合物であることが好ましく、特に「生体微生物(I)」が「腸内微生物」の場合には、健康なヒト由来の2種以上の腸内微生物、又は「腸内フローラ」の全体を用いることが好ましい。
【0049】
特定の腸内微生物の不足が何らかの疾患の原因であることが明らかであれば、当該微生物種のみの投与で十分かもしれないが、疾患と特定の腸内微生物の因果関係は、現時点ではそこまで明白でない場合も多く、その場合には、当該特定の腸内微生物の投与よりは、健康なヒトの腸内微生物を複数若しくは「腸内フローラ」を丸ごと移植することが、治療の早道と考えられるからである。
【0050】
(生体微生物の由来)
本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「生体微生物(I)」は、投与対象者と同じ又は異なる個体由来のものを用いることができる。
【0051】
「投与対象者と同じ(個体)」とは、投与対象者(レシピエント)自身のことである。
【0052】
尚、「本発明の組成物にとって望ましい活性や生体内バランス」を有する「生体微生物(I)」を採取するには、投与対象者とは異なる個体、中でも、(少なくとも投与対象者が罹患している疾患等に関して)健康な動物(好ましくはヒト)由来のものが好ましい。
【0053】
(生体微生物のブレンド)
本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「生体微生物(I)」は、2以上の個体由来のものをブレンドして用いることが好ましい場合もある。
【0054】
なぜなら、同じ分類に属する微生物であっても、由来個体によって、微生物自体の生育活性や、産生する酵素量その他の活性に差があり、2以上の個体由来のものを用いることで、より確実に投与対象者に生着し、その治療等に役立つ可能性があるからである。
【0055】
(生体微生物の種類・種類毎の比率)
(I)の「生体微生物」を、複数種類使用する場合の「種類」やその「種類毎の比率」は、本発明の「生体微生物含有組成物」を投与したい対象(ヒトを含む動物)(レシピエント)が、もともとその個体内で有している「生体微生物」の、「種類」や「種類毎の比率」(生体微生物バランス)と、「レシピエント」とは異なる健康な個体の「生体微生物バランス」との比較に基づき、個別に決定することが好ましい。
【0056】
また、「生体微生物」の「種類」や「種類毎の比率」は、上記のほか、後述する「本発明の組成物の製造方法」の工程(3)等において記載したような、「レシピエント」の「属性及び/又は環境」、及び「生体微生物移植」の技術分野でこれまで蓄積されてきた知見や経験等をも加味して慎重に決定することが好ましい。
【0057】
実際に使用する(I)としては、「レシピエント」とは別の、例えば1又は2以上の健康な個体(好ましくはヒト、以下「ドナー」と記載することがある。)、から採取した生体微生物群全体を、菌体の選別等をせず、そのまま用いることが、好ましい場合もある。
なぜなら、既に健康であることが確認された個体の生体微生物バランスを保ったまま、「レシピエント」に移植でき、また、健康な個体の生体微生物中に含まれる、治療効果を期待して意識的に選択した主要な生体微生物以外の、種々の生体微生物をも、併せて投与できるからである。
このような他の種々の生体微生物も、「ドナー」の健康維持の一因となっている可能性も十分にある。
【0058】
(組成物中の生体微生物(I)の含有比率)
本発明の「生体微生物含有組成物」中の、「生体微生物(I)」の濃度(含有比率)は、後述する「レシピエント」の「属性及び/又は環境」や、投与方法・投与回数・投与期間等によっても異なるため、適宜決定する。
【0059】
(生体微生物の取得方法)
本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「生体微生物(I)」の取得方法には、特に制限は無いが、「健康体の生体微生物バランスの再現性の確保」や「取得の簡便性」等の点から、健康な「ドナー」由来の「生体試料」(生体微生物が腸内細菌の場合には、糞便等)を、下記の方法で処理して得られる「生体微生物(I)」を用いることが好ましく、特に健康なヒト由来のものが好ましい。
【0060】
(生体試料の処理方法)
生体試料から、本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「生体微生物(I)」を取得するには、例えば下記のような方法を用いて生体試料を濾過・精製する方法が挙げられる。
【0061】
生体試料を、生体試料処理溶液に浸し、軽度の撹拌で半自然溶解させ、その後滅菌したガーゼなどで複数回フィルタリングして食物残渣などの不純物を濾過する。
尚、生体試料処理溶液としては、本発明の「生体微生物含有組成物」に用いる「生体微生物(I)」を失活させない限り、特に制限は無く、純水(精製水)や生理食塩水等を用いることができる。
【0062】
また、この生体試料処理溶液で生体試料を処理した後に、あらためて後述する「溶媒(II)」と置き換えても問題は無いが、ワンステップ余計に行うことによる生体微生物失活等のリスクを避けるため、或いはより迅速かつ確実に、「生体微生物(I)」を気泡で包み込むためには、この段階で、本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「溶媒(II)」を用いることが好ましい。
【0063】
更に、この「溶媒(II)」には、予め「ナノサイズ以下の気泡(III)」を発生させておくことが、より好ましい。
「生体微生物(I)」を含む「溶媒(II)」を取得してから、「ナノサイズの気泡(III)」を発生させる方法でも良いが、あらかじめ(III)を発生させた(II)を用いて、(I)を含む溶液を調製する方が、「生体微生物(I)」の失活を最小限にできると考えられるからである。
【0064】
尚、用いる溶媒(II)の量は特に制限されないが、例えば約Agの「生体試料」に対して、1.5~4Aml(25~67w/v%)、例えば2Aml(50w/v%)の溶媒を使用する方法等が挙げられる。
尚、(II)の量は、「生体試料」の状態(含まれる水分量)等によって、適宜決定することができる。
【0065】
また、濾過は、1乃至複数回、好ましくは3回以上繰り返し行うことが好ましい。
【0066】
(ドナーのタイプ)
尚、(I)を取得するための「生体試料」の提供者となる「ドナー」としては、特に「生体試料」として「糞便」を用いる場合には、心理的なイメージ等から、「レシピエント」の二親等以内の近親者が好まれる傾向にある。
しかし、治療効果を最優先とするならば、遺伝的又は生活環境的に「生体微生物バランス」も近いと考えられる近親者では無く、敢えて「生体微生物バランス」の全く異なる近親者以外の第三者「ドナー」を選ぶことも、考慮に値すると考えられる。
【0067】
(ドナー数)
また、その第三者「ドナー」も、1人に限定するのではなく、複数の方が、長期的な「生体微生物バランス」の改善には好ましい場合もある。
【0068】
《本発明で用いられる(II)の溶媒》
本発明で用いられる(II)の溶媒としては、特に限定されず、精製水、生理食塩水、ミネラルウォーター、清涼飲料水等でも良い。
【0069】
本発明の「生体微生物含有組成物」の、生体へのなじみや生着性を上げる観点や、防腐効果等を考慮すると、(II)として、生理食塩水等を用いても良い。
【0070】
一方、(II)の溶媒中に(III)の気泡を発生させる装置として、ステンレス製等の機器を用いる場合には、機器が錆びるのを防止する観点からは、精製水やミネラルウォーターが好ましい場合もある。
【0071】
従って、本発明の「生体微生物含有組成物」を製造する場合には、一貫して同じ溶媒(II)を用いることもできるが、製造の各段階によって、(II)の溶媒の種類を使い分けることもできる。
【0072】
尚、本発明の「生体微生物含有組成物」には、製造直後の「原液」や、「レシピエント」に投与する直前の「希釈液」等、各段階の組成物が含まれる。
【0073】
本発明の「生体微生物含有組成物」には、本発明の効果を阻害しない、例えば(I)の生体微生物を死滅させない範囲で、各種の添加剤を含有させることもできる。
【0074】
《本発明で用いられる(III)のナノサイズ以下の気泡》
本発明で用いられる(III)のナノサイズ以下の気泡中の「気体成分」としては、例えば以下のようなものが好ましいが、必ずしもこれらに限定されるものでは無い。
【0075】
(気泡中の気体の種類)
気泡中の「気体成分」は、下記の1種又は2種以上であることが好ましい。
【0076】
(i)大気
(ii)水素
(iii)窒素
(iv)オゾン
(v)酸素
(vi)二酸化炭素
(vii)アルゴン
【0077】
(i)の大気を単独で用いる場合、例えば(ii)乃至(vii)のような特別な「気体成分」を準備しなくて良い点で、現実的であり、好ましい。
【0078】
尚、「大気」あるいは「2種以上の混合気体」を(II)の溶媒に導入した場合の、「溶媒(II)中に発生した気泡(III)」中の「各気体成分の封入比率」を正確に測定することは、容易ではない。
溶媒(II)中に気泡(III)を発生させる過程で、溶媒(II)中に溶け込み得る「量」や「スピード」が、「気体成分」毎に異なり、また、発生した気泡(III)中に封入された「気体成分」の「種類」や「比率」を正確に判定すること自体が容易ではないからである。
しかしながら、例えば単独種からなる「気体成分(仮にXとする。)」を用いた場合には、大気等の混合気体を用いる場合に比べて、「溶媒(II)中に発生した気泡(III)」中の、「気体成分(X)」の「封入比率」が高くなる筈であり、それによって、上述したような、「気体成分(X)」の特性を、より活かすことができると考えられる。
【0079】
尚、腸内細菌を用いた「生体微生物含有組成物」を製造する場合、気泡中の水素の比率を、大気よりも高めると、下記のメリットが期待できるため好ましい。
【0080】
1,水素を使用した本発明のナノバブル水の酸化還元電位(ターゲットは-150mV±15mV)が、腸管の酸化還元電位(-50mV~-250mV)と同程度の低さであることから、それに被覆された細菌が腸内に定着しやすいと考えられること。
【0081】
2,腸管内に炎症がある場合、酸化還元電位が高くなる傾向にあり、免疫反応が亢進して移植した菌がレシピエントの免疫によって跳ね返されがちだが、水素の酸化還元電位の低さによる抗炎症作用で、その反応を和らげることができると考えられること。
【0082】
3,水素分子を含んだ本発明の「ナノバブル水」により、腸内細菌の主なグループである通性嫌気性菌と偏性嫌気性菌のどちらも生かさず殺さずの状態を保持することができ、移植後に腸管内という適切な環境下で菌が再び活動を始めるまでのあいだ、菌液の細菌同士のバランスを歪めないまま、比較的長期間、菌を休眠させた状態で菌液の保存が可能であると考えられること。
【0083】
気泡中の水素の比率を、大気よりも高めるには、水素単独を用いるほか、大気と水素を併用する方法等が挙げられる。
【0084】
この場合、大気と水素単独の気体を同時に封入しても良いが、大気とともに封入する水素の濃度を段階的に増やしていく、或いは、当初は大気単独を用い、後半の段階で、水素を封入する等の方法が挙げられ、これらの方法を用いることで、溶媒中への溶解等による水素の損失が最小限に抑えられ、より多くの水素を気泡中に封入することができると考えられる。
【0085】
大気と水素を同時に用いる場合の比率は、特に制限されるものでは無いが、例えば封入操作に使用する「(ii)水素」の量を、使用する「(i)大気」の量の10倍以上とすることが好ましいと考えられ、より好ましくは、使用する「(i)大気」の量の100倍以上である。
【0086】
(気泡の大きさ)
本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる気泡の大きさは、主にナノサイズ以下である必要があるが、具体的な大きさは、用いられる「生体微生物(I)」によって臨機応変に変更することができる。
【0087】
「生体微生物(I)」がウイルスの場合には、ウイルスを被覆し、特に粘膜等を介した生着率を上げるために、気泡の大きさは、ウイルス自体の大きさ(一般に10~100nm)より小さいことが好ましい。
【0088】
「生体微生物(I)」が細菌の場合には、細菌を被覆し、特に粘膜等を介した生着率を上げるために、気泡の大きさは、細菌自体の大きさ(一般に1μm(1000nm)前後)より小さいことが好ましい。
【0089】
「生体微生物(I)」が真菌の場合には、真菌を被覆し、特に粘膜等を介した生着率を上げるために、気泡の大きさは、真菌自体の大きさ(一般に数μm)より小さいことが好ましい。
【0090】
(全気泡中のナノサイズ以下の気泡の比率)
「生体微生物含有組成物」中の全気泡中、「ナノサイズ以下の気泡(III)」が必ずしも100%である必要は無い。
【0091】
しかし、従来の「気泡を有しない溶媒を使用した生体微生物移植用組成物」と比較して、「本発明の組成物」に含まれる「生体微生物(I)」が、より確実に生体に生着する理由は、「生体微生物(I)」よりも小さい「ナノサイズ以下の気泡(III)」が「生体微生物(I)」を被覆し、生体への生着を助けるためと考えられることから、個々の「生体微生物(I)」を被覆し得る程度に多数含んでいることが好ましい。
【0092】
更に、ナノサイズよりも大きな気泡の圧壊による組成物変性が少ない点や、「生体微生物(I)」の生着率がより高まるという点では、できるだけ「ナノサイズ以下の気泡(III)」の比率が高いことが望ましい。
【0093】
また、気泡の大きさは、必ずしも均質にはならず、ある程度の気泡径分布を有するのが一般的である。
【0094】
そのため、具体的な目安としては、気泡の「平均径」が、使用する「生体微生物(I)」よりも小さければ、「生体微生物(I)」を被覆できるほど小さな気泡も多数含まれると考えられ、例えば「生体微生物(I)」が細菌の場合には、平均気泡径が1000nm未満の溶液を用いることが好ましく、より好ましくは、平均気泡径900nm以下である。
【0095】
(組成物中の気泡の数)
本発明の「生体微生物含有組成物」中の気泡の数は、多いほうが望ましい。
具体的な数は(I)の濃度(生体微生物(I)の数)によっても異なり、一概には言えないが、「ナノサイズ以下の気泡(III)」を製造することのできる公知の製造機器を用いた場合に一般的に発生し得る、数千個~数億個/mlであれば十分であることが、確認できている。
【0096】
(生体微生物(I)の気泡による被覆)
尚、「ナノサイズ以下の気泡(III)」は、気泡を含有する溶媒(II)と「生体微生物(I)」を軽く撹拌又は混合することによって、自然と「生体微生物(I)」の周りを被覆するように結合すると考えられ、その被覆が十分である程、ムコ多糖類等の腸壁の粘膜等に阻まれずに、より迅速・確実に生体へ生着できるのでは無いかと考えられる。
【0097】
(気泡の製造方法)
本発明の「生体微生物含有組成物」に用いられる「(III)のナノサイズ以下の気泡」は、後述する本発明の製造方法の工程(1)によって発生させることができる。
【0098】
(組成物の製造方法)
本発明の「生体微生物含有組成物」は、後述する本発明の製造方法等によって製造することができる。
【0099】
(本発明の「生体微生物含有組成物」の投与量)
本発明の「生体微生物含有組成物」の投与量も、本発明の組成物中の「生体微生物(I)」の濃度(含有比率)や量、後述する「レシピエント」の「属性及び/又は環境」等によって適宜決定されるが、概ね一回あたり、50ml~300ml投与することが好ましい。
【0100】
(本発明の「生体微生物含有組成物」の投与回数)
本発明の「生体微生物含有組成物」の投与回数も、本発明の組成物中の「生体微生物(I)」の濃度(含有比率)や量、後述する「レシピエント」の「属性及び/又は環境」等によって適宜決定され、一回でも効果が見られるケースもあるが、一般的には、少なくとも、二回以上に分けて複数回投与することが、「レシピエント」への生体微生物の生着を確実にするため好ましい場合もある。複数回投与の回数に、特に制限は無いが、患者の負担等を考慮すれば、10回程度以内とすることが好ましい場合もある。
【0101】
尚、複数回に分けて投与する際には、後述する「レシピエント」の「属性及び/又は環境」等を勘案し、投与期間の長さや投与回数、組成物中の「生体微生物(I)」の量や濃度(含有比率)等を適宜決定することができるが、各投与後の経過を見て、当初の計画を適宜柔軟に変更することもできる。
また、複数回投与の場合には、通常、「生体微生物(I)」の濃度を変化させながら、濃度勾配を付けて投与することが、生体に馴染み易く、より確実に生着させることができるため好ましい場合もある。
【0102】
(本発明の「生体微生物含有組成物」の投与期間)
本発明の「生体微生物含有組成物」の投与期間も、本発明の組成物中の「生体微生物(I)」の濃度(含有比率)や量、後述する「レシピエント」の「属性及び/又は環境」等によって適宜決定されるが、生着効果を高めるためには、1回の投与と次の投与の間は、数時間~数日間開けることが好ましく、また全体の投与期間としては、例えば10回に分けて投与する場合でも、1~数ヶ月以内とすることが好ましい。
あまり投与と投与の間隔を開けすぎない方が、連続投与の効果が発揮され易いからである。
尚、投与間隔は、必ずしも一定間隔である必要は無く、ケース毎に段々と間隔を長くする場合や、段々と間隔を短くする場合のほか、「レシピエント」の体質・体調や疾患の回復程度等を見ながら、適宜ランダムな間隔を設定する等、様々な方法が考えられる。
【0103】
(投与する、本発明の「生体微生物含有組成物」の種類)
「生体微生物含有組成物」は、製造当初から、複数「ドナー」由来のブレンド物として製造することもできるが、単一「ドナー」由来のものを複数製造しておき、「レシピエント」の体質・体調や疾患の回復程度等を見ながら、移植毎に適当な「ドナー」由来のものを、適宜使用することが好ましい場合もある。
「レシピエント」の体質・体調や疾患の回復程度あるいは体調不良等の不測の事態の有無によっては、導入すべき生体微生物の種類も、当然変わってくるからである。
【0104】
(本発明の「生体微生物含有組成物」の投与経路)
本発明の「生体微生物含有組成物」は、口腔、目、耳、鼻、膣、尿道、皮膚又は肛門等から投与するための組成物等として、種々の投与方法によって投与対象部位に届けることができる。
【0105】
尚、本発明の「生体微生物含有組成物」の中でも、「粘膜」を介して生着させるための組成物が、生体微生物の生着効果を高め得る本発明の利点を、より活かせるため好ましい。
【0106】
「粘膜」とは、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器等の、主に中空製の体内器官内面にある、柔らかい組織であって、具体的には、例えば腸管内側における、ムコ多糖類等からなる腸粘膜等が挙げられる。
【0107】
(本発明の「生体微生物含有組成物」の投与器具)
本発明の「生体微生物含有組成物」を投与するための器具としては、後述する本発明の「組成物投与用器具」のほか、生体内に組成物を投与するための公知の器具として、例えば大腸内視鏡、十二指腸内視鏡等の内視鏡検査装置、市販の腸カテーテル等が挙げられる。
【0108】
投与位置をピンポイントで選択できる点では、内視鏡検査装置等が好ましいが、本発明の「組成物投与用器具」や、市販の腸カテーテルを用いた投与の方が、事前の食事制限や腸管洗浄、事後の下剤の服用等も不要で、何より体内に長い管を導入する際の投与対象者の負担も少ないという点で好ましい。
【0109】
また、腸カテーテルを用いた投与の場合、必ずしも腸管内全体を網羅する管を使用する必要は無く、「十数センチメートル(例えば市販のゴム製腸カテーテル)」の管でも、十分に「生体微生物(I)」を生体に生着させることが可能である。
【0110】
これは、生体微生物は、いずれもその種類ごとに固有の生物活動電位を持っており、同じ帯電状態である同種の生体微生物同士は引き合うという性質を有していることから、肛門から投与した生体微生物は、遠く離れた生体内の、同じ種類の生体微生物めがけて、自ら移動するためと考えられる。
【0111】
尚、本発明の「生体微生物含有組成物」中では、「ナノサイズ以下の気泡(III)」が「生体微生物(I)」を被覆していると考えられることから、この気泡によって、生物活動電位が増幅され、より生体微生物同士が接近し易くなっている可能性が考えられる。
【0112】
(本発明の「生体微生物含有組成物」の形態等)
本発明の「生体微生物含有組成物」は、組成物中の「ナノサイズ以下の気泡(III)」の崩壊や「生体微生物(I)」の失活等を引き起こさない限り、公知の組成物の形態を取ることができるが、例えば液状物やゲル状物等の形態が好ましい。
口腔から投与する場合の「口腔用組成物」の代表的な製品としては、ヒト又は非ヒト動物用の、「医薬品」、「医薬部外品」等の治療用組成物、「飲食品」、「栄養補助食品」等が挙げられる。
「眼科用組成物」としては、「点眼薬」等が挙げられる。
「耳鼻科用組成物」としては、「点鼻薬」等が挙げられる。
「経皮投与用組成物」としては、「パップ剤」等の「貼付剤」や「軟膏」や「スプレー」等の「塗り薬」が挙げられる。
また、肛門から投与するための組成物としては、「医薬品」、「医薬部外品」等の治療用組成物等が挙げられる。
【0113】
[本発明の生体微生物バランス調整用組成物]
本発明の「生体微生物バランス調整用組成物」は、上記の本発明の「生体微生物含有組成物」を含むことを特徴とするものである。
【0114】
本発明の「生体微生物含有組成物」は、疾患等によって崩れた生体内での微生物のバランス(複数の微生物の種類や種類毎の比率等)を調整するのに有用だからである。
中でも、特に「腸内フローラバランス調整用組成物」の主成分として用いることが好ましい。
【0115】
尚、「生体微生物バランス」とは、ある個体の生体中の「全ての生体微生物バランス」を指す場合と、「特定の生体器官中の生体微生物バランス」を指す場合があるが、本発明の「生体微生物バランス調整用組成物」は、特定器官の「生体微生物バランス」、中でも「腸内に棲息する生体微生物のバランス」すなわち、いわゆる「腸内フローラバランス」の調整に、特に有用である。
【0116】
その具体的な組成は、上述の「生体微生物含有組成物」そのものであっても良いし、更にその他の、生体微生物バランスの調整に有用な成分を含んでいても良い。
【0117】
本発明の「生体微生物バランス調整用組成物」の、「投与量」、「投与回数」、「投与期間」、「投与経路」、「投与用器具」、「形態」等は、本発明の「生体微生物含有組成物」のところで記載した通りである。
【0118】
[本発明の組成物の製造方法]
本発明の「生体微生物含有組成物」及び「生体微生物バランス調整用組成物」(以下、併せて「本発明の組成物」と記載することがある。)の製造方法は、少なくとも、下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とするものである。
【0119】
(1)(II)の溶媒中に、(III)の気泡を発生させる工程。
(2)(I)を(II)に分散及び/又は溶解させる工程。
【0120】
(I)少なくとも1種以上の生体微生物
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡(以下、「ナノバブル」と記載することがある。)
【0121】
《工程の順序》
上記の工程は、(2)、(1)の順に行っても良いが、製造工程での生体微生物の失活のリスクを最小限に抑えることができるという観点からは、(1)、(2)の順に実施することが好ましい。
【0122】
また、これらの各工程の前後に、他の工程を加えることもできる。
【0123】
《工程(1)の方法》
工程(1)の「(II)の溶媒中に、(III)の気泡を発生させる」方法としては、例えば下記のような方法、あるいはこれらの併用方法等が挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
【0124】
気液混合せん断方式:
気体を液体と共に高速旋回させる方法である。
【0125】
超音波方式:
液体に、衝撃派やキャビテーションを加えて、一旦できた気泡を更に圧壊する方法である。
【0126】
加圧溶解方式:
気体と液体に圧力をかけ、一気に放出することで、気泡を発生させる方法である。
【0127】
微細孔方式:
オリフィス等を用い、圧力をかけながら気体を供給する方法である。
【0128】
電気分解方式:
水溶液中に浸漬した細線から、気体を発生させる方法である。
【0129】
上記の中でも、「気液混合せん断方式」は、マイクロバブルの更なるせん断処理により、安定したナノサイズ以下の気泡を発生させることができるため好ましい。
【0130】
また、具体的には、例えば、下記1)及び2)等の市販の装置を併用する等して、ナノバブルを発生させることができる。
1)協和機設社製マイクロナノバブル発生装置「バヴィタス(登録商標)HYK-25」による、直径1マイクロメートル以下の気泡生成(回転せん断方式)
2)株式会社亞八和社製「νG7(登録商標)」によるマイクロナノバブルの、ナノバブル化(ステンレス製フィルター)
【0131】
《工程(2)の方法》
工程(2)の「(I)を(II)に分散及び/又は溶解させる」方法としては、「生体微生物(I)」を、上述の工程(1)で調製した「気泡(III)を含有する溶媒(II)」を用いて処理する方法等が挙げられる。
【0132】
「処理」とは、上述の(生体試料の処理方法)にも記載した通り、例えば「ドナー」の生体内から取り出した、目的とする「生体微生物(I)」を含む「生体試料」を、「気泡(III)を含有する溶媒(II)」中で軽く撹拌した後、濾過等の方法を用いて(I)以外の不要物等を除去したり、予め精製した「生体微生物(I)」を、「気泡(III)を含有する溶媒(II)」等の溶媒で希釈すること等を言う。
尚、使用する溶媒(II)の量や濾過の回数等は、上述の(生体試料の処理方法)にも記載した通りである。
【0133】
尚、「気泡(III)を含有する溶媒(II)」に変えて、「溶媒(II)」を用いて上記の処理を行った後、当該溶媒(II)中に気泡(III)を発生させても良いが、「生体微生物(I)」の失活を最小限に抑えるためには、「気泡(III)を含有する溶媒(II)」を用いて処理することが好ましい。
【0134】
《工程(3)の追加》
「本発明の組成物」の製造方法には、(1)や(2)と共に、更に以下の(3)の工程を含むことができる。
【0135】
(3)「レシピエント」の「属性及び/又は環境」によって、(I)中の生体微生物の種類や種類毎の比率、及び/又は(I)を採取する1又は2以上の個体を決定する工程。
【0136】
「属性」とは、「レシピエント」に備わる性質や特徴等を含むものであり、例えば、「レシピエント」自身の体調、持っている疾患の種類と重症度、年齢、性別、身長、体重、体型、血圧、既往症、飲食習慣や喫煙習慣等を含む生活習慣等を含むものである。
また「環境」とは、「レシピエント」の居住又は勤務する生活地域の気候帯、温・湿度、タバコの煙や排気ガス等の有無、家族構成、職業、ペットの有無、投与時期における季節や気候等を含む、生活環境等を含むものである。
【0137】
健康な「ドナー」由来の「生体微生物(I)」を、ある程度の「塊」として採取し、そのまま(例えば「腸内フローラ」一式等のように生体試料由来の複数の生体微生物の集合体ごと)用いる場合には、特に上記(3)のような工程は必ずしも必要無いが、複数「ドナー」からの「塊」をブレンドして用いる場合や、疾患の種類その他の条件によって、敢えて特定の生体微生物の比率を劇的に変化させる必要がある場合等には、(3)のような工程を設けることが好ましい場合もあるからである。
【0138】
尚、(3)の工程を実施する場合には、(2)の工程の前後のいずれで行っても良い。
【0139】
[本発明の組成物の組成の決定方法]
「本発明の組成物」の組成の決定方法は、下記の工程を含むことを特徴とするものである。
(A)投与すべき「生体微生物バランス」のタイプを想定する工程。
(B)(A)で想定した「生体微生物バランスタイプ」を達成し得る、投与対象者と同じ又は異なる1又は2以上の個体由来の「生体微生物」を選定する工程。
【0140】
尚、本発明において「組成」とは、本発明の組成物中の、
「生体微生物(I)中の生体微生物の種類や種類毎の比率」や「生体微生物(I)自体の濃度(含有比率)」のほか、
「溶媒(II)」の種類や含有比率、
「ナノサイズの気泡(III)」の「気泡径」、「気体成分の種類」、「気泡の数」
等を含めた総合的なものを言うが、
本発明の組成物にとっては、「生体微生物(I)中の生体微生物の種類や種類毎の比率」
及び
「ナノサイズの気泡(III)」の「気泡径」、「気泡の数」
が特に重要である。
【0141】
(A)の工程における「生体微生物バランスタイプの想定」とは、「生体微生物(I)」が複数種の生体微生物の集合体である場合に、その中の特定の種類の微生物の比率を指標として、個々の投与対象者(患者)ごとに、罹患している疾患の治療に役立つと思われる理想的な「生体微生物バランス」をイメージすることを意味する。
イメージするための具体的な検討項目としては、例えば下記のようなものが例として挙げられる。
【0142】
(A)-i:
投与対象者の「生体微生物バランス」。
【0143】
「生体微生物バランス」とは、「個体全体」或いは「特定の生体器官内」の、生体微生物の種類や種類毎の比率(数量比)等を言う。
「生体微生物バランス」の測定方法としては、種々公知のものが知られており、特に限定されるものではなないが、例えば個々の生体微生物が有している「当該生体微生物に特徴的な遺伝子」を、DNAシーケンサー等を用いて測定する方法等が挙げられる。
但し、「体調や疾患」等と「腸内フローラバランス」の特徴には、一定の相関関係があることが分かってきていること等から、例えば後述する(A)-iiiの「レシピエント」の属性として、体調や疾患の種類・程度を検討すれば、この(A)-iの検討は、必ずしも必要無い。
【0144】
(A)-ii:
少なくとも当該疾患に関しては健康であると思われる別個体の「生体微生物バランス」の傾向。
【0145】
例えば、(A)-iの分析等の結果、投与対象者の「生体微生物バランス」中の、特定の「腸内細菌A」が、健康な個体の生体微生物バランス中のAの比率の傾向と比較して、極端に不足していると判断した場合、「腸内細菌A」を十分に含む「生体微生物バランス」を、投与すべき理想的な「生体微生物バランス」としてイメージする。
【0146】
(A)の工程で想定する、投与すべき「生体微生物バランス」のタイプは、この他にも、例えば更に下記の項目を確認又は検討すること等によって修正を加えることができる。
【0147】
(A)-iii:
投与対象者(「レシピエント」)の「属性及び/又は環境」。
尚、ここで言う「属性及び/又は環境」とは、上述の本発明の組成物の製造方法において記載したものを意味する。
【0148】
(A)-iv:
これまで蓄積されてきた、「生体微生物移植」による治療結果の知見。
【0149】
(B)の工程では、(A)で想定したタイプを達成し得るように、「レシピエント」と同じ又は異なる1又は2以上の個体由来の「生体微生物」を選定する。
【0150】
具体的には、例えば、健康な1又は2以上の個体の「生体微生物バランス」と比較して、多い(又は少ない)生体微生物を見極め、これらのバランスが良い1又は2以上の個体由来の「生体微生物」を選定することによって、実施することができる。
【0151】
[本発明の組成物の投与用器具]
本発明の「組成物の投与用器具」は、上述した「生体微生物含有組成物」や「生体微生物バランス調整用組成物」等の「本発明の組成物」を、肛門等から投与するための器具の一例であって、「管状部位」を有することを特徴とするものである。
【0152】
「管状部位」としては、例えば市販の腸カテーテル等のチューブ状物等を用いることができる。
尚、この「管状部位」の長さは、「レシピエント」の年齢や体型等によっても異なるが、例えば5cm以上であることが好ましく、より好ましくは10cm以上、更に好ましくは15cm以上、特に好ましくは18cm以上である。
但し、必ずしも、腸管内全体を網羅するほど長いものである必要は無く、逆に長すぎることによる「組成物」の物性変化等のリスクを避けるためには、例えば50cm以内であることが好ましい場合もある。
【0153】
上記器具には、下記の部位をも備えることができる。
【0154】
「貯蔵部位」:注射器「本体」、大腸内視鏡に付属する「タンク」、イルリガートルや点滴パックにおける「薬液容器」等のような、本発明の「組成物」を貯蔵できる部位。
【0155】
「押し出し機構」:ポンプのような、「貯蔵部位」内の「組成物」を、押し出すことのできる機構。
【0156】
尚、例えばイチジク浣腸等のような使い捨てタイプの浣腸容器のように、「貯蔵部位」自体が、貯蔵部位内部の貯蔵物を押し出せる機構となっていても良い。
【0157】
[本発明の生体導入補助溶剤]
本発明の「生体導入補助溶剤」は、下記の(II)及び(III)を含むものであり、本発明では、「ナノバブル水」と記載することもある。
【0158】
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【0159】
尚、「生体導入」とは、生着、付着のほか、血管の内外や、生体内の空洞(腸管内)等に存在させる等して、導入物の機能を生体内で発揮しうる状態に置くことを意味する。
【0160】
具体的には、投与経路として、口腔、目、耳、鼻、膣、尿道、皮膚又は肛門が挙げられるが、中でも粘膜を介する導入が好ましく、特に好ましくは、腸壁を介した導入である。
【0161】
この「生体導入補助溶剤」によって生体導入を促す対象物としては、主に有機物が挙げられ、中でも、生体微生物が好ましく、特に好ましくは腸内細菌であるが、ミネラルなどの無機物であっても良い。
尚、生体導入を促す対象物が、「生体微生物」の場合には、本発明の「生体導入補助溶剤」で「生体微生物」を、粘膜上の「粘液」中に導入することによって、生体微生物の産生する有機酸などを、「粘膜」を経由して、生体内に深く浸透させることができる。
【0162】
本発明の「生体導入補助溶剤」を用いることによって、後述する試験例等から明らかな通り、導入目的とする物質を、より効率よく生体に導入することが可能となる。
【0163】
[本発明の体質及び/又は体調改善剤]
本発明の「体質及び/又は体調改善剤」は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とするものであり、具体的には下記のものを含む。
【0164】
(I)少なくとも1種以上の生体微生物
(II)溶媒
(III)ナノサイズ以下の気泡
【0165】
本発明の「体質及び/又は体調改善剤」の導入によって、後述する試験例等から明らかな通り、数多くの疾患や体調不良に悩む患者の体質及び/又は体調を改善し、引いては疾患の予防及び/又は治療に役立てることが可能となる。
【0166】
[本発明の体質及び/又は体調改善方法]
本発明の「体質及び/又は体調改善方法」は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物を生体に導入し、疾患の予防及び/又は治療,あるいは体質及び/又は体調の改善をする方法である。
【0167】
本発明の「体質及び/又は体調改善方法」によって、後述する試験例等から明らかな通り、数多くの疾患や体調不良に悩む患者の体質及び/又は体調を改善し、引いては疾患の予防及び/又は治療に役立てることが可能となる。
【0168】
[本発明の目的物を生体に導入する方法]
本発明の「目的物を生体に導入する方法」は、上記本発明の「生体導入補助溶剤」を用いることを特徴とするものである。
【0169】
この「目的物を生体に導入する方法」によって、後述する試験例等から明らかな通り、数多くの疾患や体調不良に悩む患者の生体内に、目的物を従来法よりも効率良く導入することができる。
【実施例0170】
本発明の「生体微生物含有組成物」の実施例の記載に先立って、それらの実施例において用いた、本発明の「生体導入補助溶剤」、つまり「(III)ナノサイズ以下の気泡」を含む「(II)溶媒」(以下、「ナノバブル水」と記載する)及び「腸内フローラバランス」の詳細について説明する。
【0171】
[実施例A:生体導入補助溶剤]
《材料及び方法:Material and method》
【0172】
(「ナノバブル水A」の製造)
上述の装置等を用いて、ミネラルウォーター及び大気を用いて、本発明の「生体導入補助溶剤A(ナノバブル水A)」を作製した。
【0173】
ベックマン・コールター株式会社製の「Multisizer3」を用いて、上記で作製した「ナノバブル水A」を、気泡径測定の便宜上、250倍に希釈し、当該希釈溶液中の、気泡の大きさ、数量等を測定した。
結果を図1に示す。
【0174】
本発明で用いた「ナノバブル水A」の分析結果は、「*」で示した、図中の最も上部の折れ線グラフである。
【0175】
図1の分析結果:
平均気泡径:830nm
気泡個数:約43.5万個/ml
【0176】
従って、本発明で用いた「ナノバブル水A」(250倍希釈の前)の気泡個数は、おおよそ1億個/ml程度であると考えられる。
【0177】
[実施例B:生体導入補助溶剤]
気泡を生じさせる際に封入する気体として、大気と共に水素を用い、水素の封入のタイミングを封入の後半にして、気泡中の水素濃度を高めたほかは、実施例Aと同様にして、本発明の「生体導入補助溶剤B(ナノバブル水B)」を製造した。
尚、封入に用いた水素は、大気の約250倍量を使用した。
【0178】
本発明で用いた「ナノバブル水B」(250倍希釈の前)の気泡個数も、おおよそ1億個/ml程度であると考えられる。
【0179】
[「腸内フローラバランス」の測定]
各「ドナー」あるいは「レシピエント」から採取した糞便を濾過・精製した溶液中の「腸内細菌の種類と種類毎の比率(数量比)」を、腸内細菌毎に特有の公知の遺伝子を指標として測定し、各々の個体の「腸内フローラバランス」とした。
腸内細菌毎に特有の遺伝子は、下記の装置を用いて測定した。
DNAシーケンサー:イルミナ株式会社製、「MiSeq」
【0180】
[実施例1:生体微生物(腸内細菌)含有組成物(原液)]
《腸内フローラバンクの開設》
約80名の「ドナー」(健康なヒト)由来の糞便中の「腸内フローラバランス」を測定するとともに、当該糞便から、上述の「ナノバブル水A」(250倍希釈前のもの)を用い、本発明の「生体微生物含有組成物(原液)」を製造して、「腸内フローラバンク」を開設した。
【0181】
具体的には、「ドナー」毎に採取した糞便「50~150g」を、各々1.5~4倍、即ち「75~600ml」の「ナノバブル水A」(250倍希釈する前のもの)に浸し、軽く撹拌して糞便を半自然溶解させた。
尚、「ナノバブル水A」の量は、「ドナー」の糞便の状態(含まれる水分量)等によって、適宜決定した。
【0182】
次に、この溶解液を、滅菌したガーゼを用いて、光学顕微鏡(低倍率)で食物残渣等の不要物が確認できなくなるまで複数回濾過し、「ドナー」別に「生体微生物含有組成物(原液)」を製造した。
尚、滅菌したガーゼは、「生体微生物(I)」や「ナノバブル(III)」が通過できるサイズの空隙を有するものを使用した。
【0183】
[実施例2~9:生体微生物(腸内細菌)含有組成物(希釈液)]
【0184】
(A)投与する「腸内フローラバランス」のタイプの想定:
(A)-i:投与対象者の「生体微生物(腸内フローラ)バランス」測定
投与対象者として、図2~9に示す、各種疾患の患者を選定した。
これらの患者(以下「レシピエント」)の糞便を採取し、腸内細菌の遺伝子分析によって、その「腸内フローラバランス」を測定した。
その結果を図2~9に示す(左の棒グラフ)。
【0185】
(A)-ii:「ドナー」の「腸内フローラバランス」傾向の確認
各「レシピエント」毎に、少なくともそれぞれが罹患している疾患に関しては健康と思われる「ドナー」の「腸内フローラバランス」の傾向を確認した。
【0186】
そして、(A)-iで測定した「レシピエント」の「腸内フローラバランス」と、(A)-iiで確認した傾向とを比較した上で、更に各(A)-iiiの「レシピエント」の「属性及び/又は環境」のほか、(A)-ivの、これまで蓄積されてきた「腸内フローラ移植」の知見をも総合的に勘案して、各「レシピエント」に投与すべき「腸内フローラバランス」のタイプを想定した。
【0187】
(C)健康な「ドナー」由来の「腸内フローラ」の選定:
上述の「腸内フローラバンク」から、(B)で決定した「生体微生物バランスタイプ」を達成し得る「腸内フローラ」を持つ「ドナー」を、「レシピエント」に応じて、各々4~6名選定した。
【0188】
(生体微生物含有組成物(希釈液)の製造)
図2~9の各種疾患を罹患している「レシピエント」ごとに、4~6種の「生体微生物含有組成物(原液)」をブレンドした(原液ブレンド物)。
その後、各「レシピエント」毎に製造した原液ブレンド物を、それぞれ生理食塩水で複数の濃度に希釈し、約5~50倍の濃度勾配を有する複数の「生体微生物(腸内細菌)含有組成物(希釈液)」を製造した。
【0189】
各種疾患毎に選定した、複数「ドナー」由来の「生体微生物(腸内細菌)含有組成物(希釈液)」の「腸内フローラバランス」を、図2~9に示す(右の棒グラフ)。
【0190】
[実施例10:生体微生物(腸内細菌)含有組成物の投与用器具]
「管状部位」として12fr(フレンチ:外径)~15frの腸カテーテル(約50cm程度)を用い、組成物の「貯蔵部位」として、腸カテーテルを先端に繋いだ浣腸容器又はイルリガートル(Irrigator)又は点滴パックを用い、本発明の組成物の「投与用器具」を製造した。
【0191】
「管状部位」の外径や、「貯蔵部位」の種類は、「レシピエント」の年齢、性別、症状などの複合的な要因に応じて決定した。
「レシピエント」が小児の場合、12fr、成人の場合には、12~15frのものを使用した。
【0192】
[試験例1:生体微生物の生着確認試験―a]
(「レシピエント」(患者)への投与)
実施例2~9で製造した「生体微生物(腸内細菌)含有組成物(希釈液)」を、各「レシピエント」に対し投与した。
【0193】
具体的には、上記実施例10の器具の腸カテーテル部分を、「レシピエント」の肛門から17~20cm程度挿入し、50~300mlずつ注腸法によって、本発明の「生体微生物含有組成物(希釈液)」を移植した。
【0194】
挿入の長さは、「レシピエント」の年齢や体型、及び症状等によって、移植量は、年齢、症状、又は投与回数等によって適宜決定した。
【0195】
尚、移植は、「レシピエント」の疾患の改善度合いや体調等を確認しながら、上述の約5~50倍の希釈液を用い、生体微生物の含有濃度を変化させながら濃度勾配を付けて、1~10回程度に分けて、1日~数ヶ月かけて投与した。
【0196】
(結果:「腸内フローラバランス」の変化)
各「レシピエント」から、1~10回の移植を実施した後(移植期間終了後)の便を採取し、腸内細菌の遺伝子分析によって、「腸内フローラバランス」を測定した。
その結果を、図2~9に示す(真ん中の棒グラフ)。
【0197】
図2~9のいずれの場合にも、「レシピエント」の「腸内フローラバランス(真ん中の棒グラフ)」が大きく改善され、「ドナー」(右の棒グラフ)の「腸内フローラバランス」に、かなり近づいていることが判明した。
【0198】
尚、移植後の「腸内フローラバランス」の変化は、移植した組成物が生着せずにそのまま排泄された結果によるものという見方もあるかもしれない。
しかし、移植した組成物中に含まれる菌の絶対量は、「レシピエント」自身の腸内細菌と比較してはるかに少なく、移植期間終了後の便中の「腸内フローラバランス」が図で示したほどに劇的に変化するためには、腸粘膜下に棲み着いた菌が対数増殖を繰り返し、「レシピエント」自身の菌として便中に反映されたと考えるのが自然である。
従って、図2~9(真ん中の棒グラフ)に示した、移植後の「腸内フローラバランス」は、移植された生体微生物が、「レシピエント」の生体内に、確かに生着した結果によるものと考えられる。
【0199】
尚、従来の(「ナノバブル水A」を用いない)「腸内フローラ移植」では、移植後「腸内フローラバランス」の変化は少なく、またその疾患の改善の度合いも満足のいくものではないと報告されている。
【0200】
これに対して、上記試験結果によれば、投与後、糞便中の「腸内フローラバランス」が明らかに改善され、健康な「ドナー」の「腸内フローラバランス」に大幅に近づいていた。
【0201】
つまり、上記の試験結果は、従来の「腸内フローラ移植」と比較した場合、驚くべきものなのである。
【0202】
(考察)
上記の結果は、「ナノサイズ以下」の気泡を用いることで、「(I)の生体微生物」である腸内細菌が、より確実に腸内に生着・増殖し、新たな生体微生物バランスを有する「腸内フローラ」を形成し得た、つまり実施例2~9の「生体微生物含有組成物」が、「生体微生物バランス調整用組成物」として機能したことを示している。
【0203】
おそらくは、ムコ多糖類等からなる腸管粘膜等による、体外物質の生体への侵入防止作用を、生体微生物を被覆しているであろう微細な気泡が、軽減したためと考えられる。
【0204】
従って、「本発明の組成物」の中でも、粘膜を介して「レシピエント」の生体内に生着させるための組成物が、本発明の組成物の利用価値が特に高いものとなる。
【0205】
[試験例2:生体微生物の生着確認試験-b]
(ヒト腸内フローラのマウスへの投与)
ナノバブル水Aに変えてナノバブル水Bを使用したほかは実施例1と同様にして、ヒトの糞便より「生体微生物含有組成物」(原液)を作成した。次に、実施例2~9と同様にして、本発明の「生体微生物含有組成物」(希釈液)を作成した。
また、比較のために、ナノバブル水に変えて生理食塩水を用いた従来法によって、比較のための「生体微生物含有組成物」(希釈液)を、同様に作成した。
本発明及び従来法による「生体微生物含有組成物」(希釈液)の、各々2ccを、それぞれ3匹のマウスに導入した。
マウスの尻尾を持って逆さ吊りにし、上から腸内に注腸によって導入することで、バックフローを最小限に抑えた。
【0206】
(マウス糞便の採取)
移植後ケージに入れ、投与前、投与直後、翌日(9時及び17時頃)、2日後(9時及び17時頃)、3日後(9時及び17時頃)、7日後(9時及び17時頃)に、それぞれ採便し、チルド保存後、次世代シーケンサー(イルミナ社Miseq)にて、腸内フローラ解析を行った。
【0207】
(結果:「腸内フローラバランス」の変化)
7日目に、移植した「生体微生物含有組成物」の腸内フローラバランスとは無関係に、「Blautia属」が、激増していた。
尚、「Blautia属」の増加率は、本発明の「生体微生物含有組成物」の場合、従来法の「生体微生物含有組成物」と比較しても、有意に高かった。
【0208】
(考察)
「Blautia属」は、臓器移植等を行った際に、宿主を守るために急激に増殖し、移植片対宿主病(Graft-versus-Host Disease)による致死率低下に関与するとの報告がある(Biology of Blood and Marrow Transplantation Volume 21, Issue 8, August 2015, Pages 1373-1383)。
従って、上述の結果は、移植された「ヒト由来の腸内フローラ」の少なくとも一部が、確かにマウスの腸に「生着した」こと、しかもその「生着量」が、従来法よりも有意に多いことを裏付けるものと考えられる。
尚、ヒトからヒトへの移植の場合は、いずれの方法でもこのような「Blautia属」の激増は見られないが、こうした「異種動物間移植」に特有の変化を利用することで、本発明の「生体微生物含有組成物」の優れた生着効果を確認することができた。
【0209】
[試験例3-1:体質及び/又は体調の改善効果確認試験-症例1]
[症例1]:34歳 男性
[診断名]:ジアルジア感染症
[主訴]:嘔気
[現病歴]:2011年にインドに2か月間滞在。その時に果物(水道水使用)を食べてから、下痢症状が続いていた。その後母国帰国後(米国)も下痢、嘔気などの消化器症状があり、精査したところランベル鞭毛虫によるジアルジア症と診断され、抗生剤を断続的に6か月間投与された。その後、検査上、ジアルジア症は治癒したが、数か月~1年後より砂糖を摂取すると気分が悪くなるようになった。特にデザートなどの精製糖を使った食品やアルコール、牛乳(ヨーグルトは可能)、摂取時の症状が目立つが、果物などの食物繊維が入っているものは問題なかった。また白米も多量に食べると症状が出たが全粒粉では症状は起こらなかった。
[既往歴]:特記すべきものなし
【0210】
[体質及び/又は体調の改善効果確認試験方法]
移植に用いた「生体微生物含有組成物」の組成、及び施行した腸内フローラ移植のプロトコルを、以下及び図10-1に示した。
【0211】
[「生体微生物含有組成物」の組成]
下記の通り、プロトコル中のUB1~UB3のそれぞれで移植に用いた「生体微生物含有組成物」を用意した。
【0212】
UB1:図10-2記載のドナーB由来の糞便を用いた、ナノバブル水B処理済み原液5ml/250ml生理食塩水希釈物
UB2:図10-2記載のドナーB由来の糞便を用いた、ナノバブル水B処理済み原液8ml/250ml生理食塩水希釈物
UB3:図10-2記載のドナーA由来の糞便を用いた、ナノバブル水B処理済み原液10ml/250ml生理食塩水希釈物
【0213】
[プロトコル]
1. 移植前に腸内フローラ検査(糞便)施行(1)
2. 移植菌液調整に生理食塩水を使い、注腸方式でフローラバンクからの糞便移植(S1)
3. 2週間後、腸内フローラ検査(糞便)(2)
4. その後、ウルトラファインバブル水(ナノバブル水B)で調整した菌液を注腸方式で糞便移植(UB1)
5. 1週間ごとに3回ウルトラファインバブル水(ナノバブル水B)による糞便移植(UB2、UB3)
6. 2週間後、腸内フローラ検査(糞便)(3)
7. それぞれの症状変化を問診により把握
【0214】
[経過]
≪S1~(2)≫
S1移植後に、腹部膨満感が強く、食事が食べにくい状態。移植3日後に3日間下痢があった。
≪UB1~UB2≫
UB1終了後、は腹部膨満感なし。下痢もなく、調子が良かった。
≪UB2~UB3≫
調子は良くなっている。便通は正常(毎日1回有形便)。
≪UB3~(3)≫
調子は良い。少しずつ、今まで症状が出ていた食品を食べているが、症状は出ていない。
【0215】
上記(1)(2)(3)で採取した糞便の腸内フローラバランスを調査した結果を図10-2に示す。
【0216】
[結果]
図10-2で示したように、ナノバブル水Bを用いた本発明の生体微生物含有組成物の移植(UB1~UB3)の施行後に、S1施行後では確認できなかったクロストリジウム属クラスターXIが出現し、また全体に占めるクロストリジウム属のバランスが増えている。
免疫調整及び精神症状が改善されていることが示唆される。また全体的なバランスもバクテロイデスの過剰発現が抑えられており、本発明の生体微生物含有組成物の移植(UB1~UB3)により改善傾向にあると考えられる。
【0217】
[考察]
最初の従来法であるS1の施行によって、体調が却って悪化したことと比較し、UB1施行以降、順調に体調が回復していったことから、本発明のナノバブル水Bを使用した「生体微生物含有組成物」が、従来の生理食塩水のみに生体微生物を溶解した「生体微生物含有組成物」と比較して有用であり、「体質及び/又は体調改善剤」としても利用可能であることは明らかである。
【0218】
[試験例3-2:体質及び/又は体調の改善効果確認試験-症例2]
[症例2]:52歳 男性
[主訴]:慢性疲労症状
[既往歴]:虫垂切除(20代)腰椎椎間板ヘルニア(30代)
[現病歴]:日常生活には支障ないが、午後からの疲労症状を自覚している。今回糞便移植の生着率評価目的の臨床試験に被験者として参加した。
【0219】
[体質及び/又は体調の改善効果確認試験方法]
移植に用いた「生体微生物含有組成物」の組成、及び施行した腸内フローラ移植のプロトコルを、以下及び図11-1に示した。
【0220】
[「生体微生物含有組成物」の組成]
下記の通り、プロトコル中のUB1~UB3のそれぞれで移植に用いた「生体微生物含有組成物」を用意した。
【0221】
UB1:図11-2記載のドナーD由来の糞便を用いた、ナノバブル水B処理済み原液5ml/250ml生理食塩水希釈物
UB2:図11-2記載のドナーC由来の糞便を用いた、ナノバブル水B処理済み原液8ml/250ml生理食塩水希釈物
UB3:図11-2記載のドナーD由来の糞便を用いた、ナノバブル水B処理済み原液10ml/250ml生理食塩水希釈物
【0222】
[プロトコル]
1. 移植前に腸内フローラ検査(糞便)施行(1)
2. 移植菌液調整に生理食塩水を使い、内視鏡を使用しフローラバンクからの糞便移植(S1)
3. 2週間後、腸内フローラ検査(糞便)(2)
4. その後、ウルトラファインバブル水(ナノバブル水B)で調整した菌液を注腸方式で糞便移植(UB1)
5. 1週間ごとに3回ウルトラファインバブル水(ナノバブル水B)による糞便移植(UB2、UB3)、それぞれ移植後に腸内フローラ検査(糞便)((3)(4)(5))
6. それぞれの症状変化を問診により把握
【0223】
[経過]
≪S1~UB1≫
S1施行翌日より疲労感に加え、腹部の蠕動亢進に伴う腹鳴、腹部不快感が断続的に続いた。
≪UB1~UB3≫
UB-1施行直後より腹部不快感は消失し、倦怠感等の自覚症状も改善した。
≪UB-3以降≫
排ガスはやや多い自覚はあるものの腹部不快や倦怠感は伴わない。
【0224】
上記(1)(2)(3)(4)(5)で採取した糞便の腸内フローラバランスを調査した結果を図11-2に示す。
【0225】
[結果]
図11-2で示したように、S1施行後にクロストリジウム属クラスターIXが顕著に増加しバランスが大きく崩れている。この崩れたバランスを取り戻すため、続くUB1以降の糞便移植でターゲットバランスに近づくよう、移植した菌と被験者の腸内細菌のせめぎ合いがうかがえる。精神状態に関しても、S1施行後に一時的に悪化した可能性が示唆されるが、UB3終了後は概ね良いバランスに収束し安定した精神状態であることがうかがえる。
【0226】
[考察]
最初の従来法であるS1の施行によって、体調が却って悪化したことと比較し、UB1施行以降、順調に体調が回復していったことから、本発明のナノバブル水を使用した「生体微生物含有組成物」が、従来の生理食塩水のみに生体微生物を溶解した「生体微生物含有組成物」と比較してはるかに有用であり、「体質及び/又は体調改善剤」としても利用可能であることは明らかである。
【0227】
[試験例4:各種疾患の改善効果確認試験]
尚、「本発明の組成物」を用いて、上述のような生着確認試験を、試験例1(図2~9)で示した以外の疾患も含めて、約300症例以上の患者に対して行った。
その結果、その相当数において、図2~9と同程度(あるいはそれ以上)の、生体微生物バランスの改善が見られ、更に各種疾患にも改善が見られた。
さらに、上述のような生着確認試験を伴わないものも含めると、「腸内フローラ移植」を800症例以上行っており、それらの相当数においても、疾患症状の改善などの効果が見られた。
【0228】
特に、「潰瘍性大腸炎」、「過敏性腸症候群」、「クローン病」、「躁うつ病」、「うつ病」、「アトピー性皮膚炎」、「便秘症」等については、その改善の度合いが大きく、「本発明の組成物」の生体への移植が、当該疾患の有効な治療方法として、大いに期待できる結果を示した。
【0229】
[試験例5:生着速度の確認試験]
試験例4で述べた、約300症例以上の生着確認試験においては、「レシピエント」の「属性及び/又は環境」等にもよるが、「本発明の組成物」を用いた場合、移植後の数分程度で、温感等による移植効果の実感が得られる場合があるほか、移植期間終了後の数時間から翌日以内に採取した最初の便において、多くのケースで「腸内フローラバランス」の変化が確認された。
【0230】
上記の結果から、本発明の組成物による「腸内フローラ移植」は、従来の「腸内フローラ移植」と比較して、驚異的な速さで、かつより確実に、腸内細菌が生着するものと考えられる。
【0231】
[試験例6:生体導入補助溶剤の有用性試験(微生物保存安定性試験)]
本発明の「生体導入補助溶剤」(ナノバブル水)を使用した本発明の「生体微生物含有組成物」が、生体に微生物等の有機物等を導入するのに好適であることは、上記試験例から明らかであるが、以下、本発明の「生体導入補助溶剤」の、微生物の保存溶液としての適性について試験を行った。
【0232】
(試験方法:Protocol)
下記1)及び2)の「腸内細菌含有組成物」について、極東製薬工業株式会社製の半流動高層生培地を用いて一週間培養した後、腸内細菌の増殖による培地の変化と細菌の持つ運動性の比較観察を行った。
【0233】
1)本発明実施例Bの「生体導入補助溶剤B」(ナノバブル水B)を用いて、ヒト糞便より、実施例1と同様にして調製した本発明の「腸内細菌含有組成物」(菌液:原液)
2)生理食塩水を用いて調製した従来の「腸内細菌含有組成物」(菌液:原液)
【0234】
上記の各菌液50μlを使用し、パスツールピペットにより細菌培養検査と同様の手法で上記培地に穿刺注入し、一週間後の様子を比較・観察した。
その結果を図12に示す。
【0235】
(結果)
図12の右側のチューブで示したように、2)の従来の「腸内細菌含有組成物」では、穿刺直後には、菌の発育により「好気部分(培地上部)」と「穿刺した高層部の嫌気部分(培地中~底部)」に、増殖による白濁した変化が見られたものの、一週間経過後も、それら以外の試験管内は培地自体の色調のまま透明度が高かった。
つまり、腸内細菌叢全体が継続的に培養・繁殖し生物学的な活性が維持されているようには見受けられなかった。
【0236】
一方、同じく図12の左側のチューブで示したように、1)の本発明の「腸内細菌含有組成物」では、穿刺直後の菌の発育による、「好気部分(培地上部)」と「穿刺した高層部の嫌気部分(培地中~底部)」の増殖による白濁した変化以外に、培地全体が白濁しており、明らかに培地全体の透明感が無くなっている。
このことは腸内細菌叢全体の生物活性がほぼ維持されていること、つまり、本発明の「生体導入補助溶剤」(ナノバブル水B)により調製した「腸内細菌含有組成物」(菌液:原液)の保存安定性が、一週間以上持続していたことを示すものである。
【0237】
(考察)
上記の結果から、以下の2つのことが考えられる。
【0238】
まずは、単純に、本発明の「生体導入補助溶剤」が、生体微生物の保存に、より適していることが考えられる。
【0239】
次に、他の試験例等において、本発明の「生体導入補助溶剤」及びそれを使用した「生体微生物含有組成物」がいずれも、従来技術と比較して、はるかに効率的に微生物等の有機物を生体に導入できたことの一つの理由が、生体微生物の、高い保存安定性にあった可能性を示すものと考えられる。

【産業上の利用可能性】
【0240】
「本発明の組成物」は、従来法に比べて、患者負担の少ない簡便な方法で施与することもでき、投与の方法・経路に関わらず、より迅速・確実な生着が達成されることから、各種疾患の治療等への応用が大いに期待されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(II)及び(III)を含むことを特徴とする、導入目的物を生体に導入するための補助溶剤。
(II)溶媒
(III)前記導入目的物を被覆するために有効な量のナノサイズ以下の気泡
【請求項2】
補助溶剤中に含まれる気泡が、下記の条件を満たすことを特徴とする、請求項1記載の補助溶剤。
(ア)平均気泡径:1000nm未満
(イ)気泡濃度:数千個/ml以上
【請求項3】
(イ)が43.5万個/ml以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載の補助溶剤。
【請求項4】
(ア)及び(イ)が、いずれもコールター原理に基づく測定の結果であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の補助溶剤。
【請求項5】
(ア)及び(イ)が、いずれもベックマン・コールター株式会社製の「Multisizer3」を用いて測定した結果であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の補助溶剤。
【請求項6】
補助溶剤の酸化還元電位が、-150mV±15mVであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の補助溶剤。
【請求項7】
(III)の気泡中の気体成分が、下記の(ii),(viii),又は(ix)のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の補助溶剤。
(ii)水素
(viii)水素及び大気の混合気体
(ix)水素を主成分とする混合気体
【請求項8】
導入目的物が生体微生物であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の補助溶剤。
【請求項9】
生体微生物が粘膜常在細菌であることを特徴とする、請求項8記載の補助溶剤。
【請求項10】
生体微生物が腸内細菌であることを特徴とする、請求項8記載の補助溶剤。
【請求項11】
導入目的物を、粘膜を介して導入するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の補助溶剤。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の補助溶剤を用いて、導入目的物を非ヒト動物の生体に導入する方法。