(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121746
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20220812BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107816
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2021049549の分割
【原出願日】2017-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2016167901
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】森 智彦
(57)【要約】
【課題】どのような状況であっても道路側及び監視員通路側から円滑に消火用ホースを引き出すことのできる消火栓装置を提供する。
【解決手段】消火用ホース12を収納する本体部10を有し、本体部10は、消火用ホース12を保持するホース保持体11を内部に有し、ホース保持体11は、消火用ホース12を引き出す開口部20a,20bを側部に有し、本体部10は、ホース保持体11を上方に引き上げて開口部20a,20bを外部に露出させる機構を有し、ホース保持体11が上方に突き出ておらず、かつ前面扉30の閉鎖した状態で、ホース保持体11の前面側は、前面扉30の本体部10の内部側の面と対向するように位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用ホースを収納する本体部を有する消火栓装置であって、
前記本体部は、道路を有するトンネルの壁面に沿って前記道路の道路面より一段高く設けられている監視員通路の通路面に対し、前面が道路側に露出し、上面が前記監視員通路の上面側に露出し、前記前面に対向する背面が前記トンネルの壁面部側となるように埋設され、前記消火用ホースを保持するホース保持体を内部に有し、前記前面には前記道路側から開閉可能な前面扉が設けられ、
前記ホース保持体は、前記消火用ホースを該ホース保持体の外部へ引き出すための開口部であって、前記前面側に設けた正面開口部と、前記前面に対向する背面側に設けた背面開口部と、を有し、
前記本体部は、該本体部内から前記ホース保持体を前記通路面より上方に突き出るように押し上げることで前記正面開口部及び前記背面開口部が前記監視員通路の上面の上方の空間に位置して前記正面開口部が前記道路に面し前記背面開口部が前記監視員通路の前記トンネル壁面側の上面に面するように露出させる機構を有し、
前記ホース保持体が上方に突き出ておらず、かつ前記前面扉の閉鎖した状態で、前記ホース保持体の前記前面側は、前記前面扉の前記本体部の内部側の面と対向するように位置することを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端にノズルを有する消火用ホースを収納する本体部を有し、火災発生時には消火用ホースを本体部から引き出すことのできる消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や自動車専用道路などのトンネル内には、非常用設備として消火栓装置が設置される。消火栓装置は、トンネルの壁面などに所定間隔毎、例えば50メートル間隔で配置される。消火栓装置内には、先端にノズルを有した消火用ホースや、消火栓弁を含むバルブ類が収納され、道路側に面する扉を有する。消火栓装置の扉を開くことにより、消火用ホースを引き出すとともに、バルブ類を操作できるようになっている。
【0003】
トンネルには、道路側方の長さ方向に沿って、所定の高さを有する監視員通路が設けられる。消火栓装置は、監視員通路から操作できる壁面に埋込設置される。監視員通路は、トンネル内の車両通行を妨げることなく安全にトンネル内の各種機器の点検を行うために設けられている。
【0004】
しかし、監視員通路に面した壁面に消火栓装置を設置した場合、消火栓装置が路面よりも高い位置に配置されるため、手が届きにくかったり、あるいは利用者が道路から監視員通路に登って作業を行う必要がある。特に、監視員通路に手すりが設けられている場合には、消火用ホースを道路側に引き出しにくく、消火作業の邪魔になることがあった。そこで、監視員通路に消火栓装置を埋め込んで、消火栓装置の扉が道路側に面するように配置することが考えられる。このような消火栓装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
監視員通路に消火栓装置を埋め込み、道路側に面するように消火栓装置の扉を設けた場合、道路側から消火栓装置に対するアクセスは良好になるが、逆に、監視員通路からは消火栓装置に対しアクセスしにくくなる。また、火災発生時において、消火栓装置の前に自動車が止まっている場合には、消火栓装置から消火用ホースを引き出しにくい。このように、状況によっては却って消火用ホースを引き出しにくくなる場合がある。
【0007】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、どのような状況であっても道路側及び監視員通路側から円滑に消火用ホースを引き出すことのできる消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係る消火栓装置は、消火用ホースを収納する本体部を有する消火栓装置であって、
前記本体部は、道路を有するトンネルの壁面に沿って前記道路の道路面より一段高く設けられている監視員通路の通路面に対し、前面が道路側に露出し、上面が前記監視員通路の上面側に露出し、前記前面に対向する背面が前記トンネルの壁面部側となるように埋設され、前記消火用ホースを保持するホース保持体を内部に有し、前記前面には前記道路側から開閉可能な前面扉が設けられ、
前記ホース保持体は、前記消火用ホースを該ホース保持体の外部へ引き出すための開口部であって、前記前面側に設けた正面開口部と、前記前面に対向する背面側に設けた背面開口部と、を有し、
前記本体部は、該本体部内から前記ホース保持体を前記通路面より上方に突き出るように押し上げることで前記正面開口部及び前記背面開口部が前記監視員通路の上面の上方の空間に位置して前記正面開口部が前記道路に面し前記背面開口部が前記監視員通路の前記トンネル壁面側の上面に面するように露出させる機構を有し、
前記ホース保持体が上方に突き出ておらず、かつ前記前面扉の閉鎖した状態で、前記ホース保持体の前記前面側は、前記前面扉の前記本体部の内部側の面と対向するように位置することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る消火栓装置によれば、道路側と監視員通路側の両方から消火用ホースを引き出して消火活動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ホース保持体が上端位置まで引き上げられた状態の消火栓装置の斜視図である。
【
図3】ホース保持体が上端位置まで引き上げられた状態の消火栓装置の正面図である。
【
図4】ホース保持体が上端位置まで引き上げられた状態の消火栓装置の背面図である。
【
図5】本実施形態の消火栓装置をトンネル内に設置した状態の説明図である。
【
図6】前面付近で切断した消火栓装置の縦断面図である。
【
図7】上面付近で切断した消火栓装置の横断面図である。
【
図8】ホース保持体が引き上げられた状態の前面付近で切断した消火栓装置の縦断面図である。
【
図9】本体部内においてホース保持体のラッチ部材と本体部のラッチ収容部とが近接した状態の斜視図である。
【
図10】下面付近で切断した消火栓装置の横断面図である。
【
図11】案内面部と回転体の関係を表した斜視図である。
【
図13】ホース保持体の上昇中の状態における回転部材と押圧部材との関係を表した斜視図である。
【
図14】ホース保持体が
図13より上昇した状態における回転部材と押圧部材との関係を表した斜視図である。
【
図15】ホース保持体が
図14より上昇した状態における回転部材と押圧部材との関係を表した斜視図である。
【
図16】ホース保持体が上昇後に降下した状態における回転部材と押圧部材との関係を表した斜視図である。
【
図17】ストッパ部に支持治具を取付けた場合における回転部材と押圧部材との関係を表した斜視図である。
【
図20】ロック解除部を操作した状態のハンドル部材の断面図である。
【
図22】上昇ラッチハンドルを設けた本体部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。
図1には本実施形態の消火栓装置1の斜視図を、
図2にはホース保持体11が上端位置まで引き上げられた状態の消火栓装置1の斜視図を、それぞれ示している。本実施形態の消火栓装置1は、
図1に示すように、箱状の本体部10を有し、その内部には、先端にノズル13を有する消火用ホース12や消火栓弁を含むバルブ類などが収納されている。本体部10の前面には、メンテナンス時などに開けられる扉部30が設けられている。
【0012】
火災発生時には、
図2に示すように、本体部10内に収納されたホース保持体11を引き上げることにより、ホース保持体11に保持された消火用ホース12を引き出し、消火活動を行うことができる。消火用ホース12は、先端部にノズル13を有している。
【0013】
ホース保持体11は、巻回された消火用ホース12を収納可能な箱状のホース収納部20と、消火栓装置1の上面を構成する上面部21と、本体部10内に収納される部分の四隅に設けられる支柱部22とを有している。
図3にはホース保持体11が上端位置まで引き上げられた状態の消火栓装置1の正面図を、
図4にはホース保持体11が上端位置まで引き上げられた状態の消火栓装置1の背面図を、それぞれ示している。ホース収納部20は、正面側の側部に、消火用ホース12を引き出すための正面開口部20aを有している。また、ホース収納部20は、背面側の側部にも、消火用ホース12を引き出すための背面開口部20bを有している。背面開口部20bは、正面開口部20aよりも低い位置に形成されている。
【0014】
図5には、本実施形態の消火栓装置1をトンネル内に設置した状態の説明図を示している。トンネルは、道路60の側部に監視員通路61を有している。監視員通路61は、道路60の長さ方向に沿って、1m程度の高さを有するように形成されている。消火栓装置1は、監視員通路61に埋め込まれるように設置される。監視員通路61に設置された消火栓装置1は、上面部21が監視員通路61の上面と略面一状とされる。このため、通常時において、消火栓装置1が監視員通路61における通行に支障を来さないようにすることができる。
【0015】
火災発生時には、
図2に示されているように、ホース保持体11が上方に向かって突出することで、ホース収納部20の正面開口部20aと背面開口部20bが監視員通路61の上面よりも上方に露出する。この状態で、道路60からは、正面開口部20aを介して消火用ホース12を引き出すことができる。また、監視員通路61からは、背面開口部20bを介して消火用ホース12を引き出すことができる。このように、本実施形態の消火栓装置1は、ホース保持体11が本体部10から上方に引き上げられる構造となっており、これによって消火用ホース12を収納するホース収納部20の正面開口部20aや背面開口部20bが露出する。このため、消火栓装置1を監視員通路61に埋め込むように設置した場合に、道路60側と監視員通路61側の両方から消火用ホース12を引き出すことができる。特に、消火栓装置1の前に自動車が止まっていても、ホース保持体11が本体部10に対して引き上げられる構造であるため、確実に消火用ホース12を引き出すことができる。
【0016】
次に、ホース保持体11の引き上げ構造について詳細に説明する。
図6には、前面付近で切断した消火栓装置1の縦断面図を示している。この図に示すように、本体部10内には、消火用ホース12を収納したホース保持体11が納まっており、本体部10は、ホース保持体11を昇降させるための駆動部31を有している。
【0017】
駆動部31は、本体部10に固定された弾性駆動部材32と、弾性駆動部材32とホース保持体11とを連結するワイヤ33と、ワイヤ33が引っ掛けられる2つの滑車部材34,35とで構成されている。弾性駆動部材32は、ホース保持体11が本体部10内に納まった状態において、ワイヤ33を引っ張る方向に付勢するバネ部材であって、コンストンばねが用いられる。コンストンばねは、所定のストロークの範囲内において一定の付勢力を発生する。弾性駆動部材32としては、コンストンばねに限らず、その他の種類の弾性部材を用いてもよい。
【0018】
弾性駆動部材32から上方に伸びるワイヤ33は、滑車部材34によって水平方向に向きを変え、さらに滑車部材35によって下方に向きを変える。ワイヤ33は、下端部においてホース保持体11の下部に形成されるワイヤ固定部25に連結固定されている。弾性駆動部材32がワイヤ33を引っ張る方向に付勢していることにより、下部にワイヤ33が固定されたホース保持体11は、上方に向かって引き上げられる方向に付勢されていることになる。
【0019】
本体部10の内部下面には、ホース保持体11の下端部に当接するように緩衝部材27が設けられている。緩衝部材27は、弾性を有するゴム等の部材からなり、上方に引き上げられていたホース保持体11を本体部10内に収納する際に、ホース保持体11の下端部に当接することで、衝撃を緩和することができる。また、本体部10の内部上面には、ホース保持体11が引き上げられた際に、その下端部に当接可能な緩衝部材28が設けられている。本体部10上部の緩衝部材28は、ホース保持体11が上端位置まで引き上げられた際に、ホース保持体11の下端部に当接することで、衝撃を緩和することができる。なお、緩衝部材としてはこの構成には限られず、例えば本体部10とホース保持体11との間にダンパーあるいはショックアブソーバーを設けるようにしてもよい。
【0020】
図1に示すように、ホース保持体11の上面部21には、ロック解除部24が設けられている。ロック解除部24は、本体部10に対して係合されるロック係合部23と連係されている。ロック係合部23が本体部10に対して係合していることで、弾性駆動部材32による付勢力に対抗して、本体部10内に納まった状態を維持する。ロック解除部24を押し上げるように操作すると、ロック解除部24と連係されたロック係合部23は、本体部10に対する係合状態が解除される。ロック係合部23による本体部10に対する係合状態が解除されると、ホース保持体11は、弾性駆動部材32の付勢力によりワイヤ33によって上方に引き上げられる。弾性駆動部材32の付勢力は、消火用ホース12を収納したホース保持体11の重量よりも大きくなるように設定されている。このため、ロック係合部23の係合状態が解除されたホース保持体11は、弾性駆動部材32の付勢力のみによって、自動的に上方に引き上げられる。
【0021】
ホース収納部20の上面部21について、図面上は平滑面であるが、縞鋼板を用いて表面が凹凸を有するようにしてもよい。上面部21は監視員通路61と面一状となるので、上面部21の凹凸により監視員通路61を歩行する作業員等の滑りを防止できる。
【0022】
ロック解除部24は、上面部21の左右方向中央部に配置されている。このため、ロック解除部24を操作してホース保持体11の収納状態を解除した際に、ホース保持体11をバランス良く引き上げることができる。
【0023】
上面部21には、ロック解除部24を挟んで両側に第1銘板部21aと第2銘板部21bが配置されている。第1銘板部21aと第2銘板部21bは、いずれもホース保持体11の引き上げ方を説明する図及び文字が表示されている。第1銘板部21aは本体部10の正面側を向いており、第2銘板部21bは本体部10の背面側を向いている。これにより、道路60側と監視員通路61側の両方から銘板部を確認することができる。
【0024】
第1銘板部21aと第2銘板部21bは、接着等で上面部21の表面に固定される。上面部21が前述の縞鋼板である場合には、第1銘板部21aと第2銘板部21bを設ける領域のみ、縞鋼板の凹凸面を平滑面に加工し、第1銘板部21aと第2銘板部21bを接着固定する。また、縞鋼板の凹凸面をそのままにして、第1銘板部21aと第2銘板部21bの表面に凹凸形状が出るようにしつつ、接着固定してもよい。
【0025】
図7には、上面付近で切断した消火栓装置1の横断面図を示している。この図に示すように、駆動部31を構成する弾性駆動部材32は、本体部10の4箇所に設けられていて、ホース保持体11の四隅部に各ワイヤ33が連結される。このため、ホース保持体11は、四隅部をワイヤ33により引き上げられるので、安定的に引き上げがなされる。
【0026】
図8には、ホース保持体11が引き上げられた状態の前面付近で切断した消火栓装置1の縦断面図を示している。この図に示すように、ホース保持体11のワイヤ固定部25が本体部10の上部まで引き上げられると、後述するラッチ部材26によってホース保持体11がそれ以上、上方に引き上げられない状態となる。このとき、ホース保持体11は、側部のほぼ全体が本体部10の上方に露出し、正面開口部20a及び背面開口部20bも本体部10の外部に露出する。この状態において、利用者は消火用ホース12を道路側または監視員通路側から引き出して使用することができる。
【0027】
図9には、本体部10内においてホース保持体11のラッチ部材26と本体部10のラッチ収容部36とが近接した状態の斜視図を示している。ホース保持体11は、下部にラッチ部材26を有している。ラッチ部材26は、ホース保持体11から本体部10の内面に向かって突出する基部26aと、基部26aの先端部に上向きに設けられるマグネット部26bとを有している。
【0028】
本体部10の内面には、ラッチ部材26のマグネット部26bを収容できる箱状のラッチ収容部36が設けられている。ラッチ収容部36は、下方に向かって開放状である。ホース保持体11が上昇することで、ラッチ部材26のマグネット部26bがラッチ収容部36内に納まり、ホース保持体11がそれ以上上昇することを阻止する。またラッチ収容部36は、マグネット部26bが磁力により磁着する平面部分を内部に有しており、上昇したホース保持体11が下降しないようにその位置を保持する。マグネット部26bよる保持力は、弾性駆動部材32による付勢力と合計して、少なくとも内部に水が充填された消火用ホース12がホース収納部20に収納された状態におけるホース保持体11の重量よりも大きくなるように設定される。
【0029】
ホース保持体11を円滑に上昇させるため、本体部10の内部には上下方向に沿う案内面部が設けられ、ホース保持体11には案内面部に沿って転がる回転体が設けられる。
図10には、下面付近で切断した消火栓装置1の横断面図を示している。この図に示すように、本体部10には、4箇所に案内面部45,46,47,48が配置される。案内面部45,46は、本体部10の左右側面方向を向いている。また、案内面部47,48は、本体部10の正面及び背面方向を向いている。
【0030】
各案内面部45,46,47,48に対応して、ホース保持体11には4つの回転体40,41,42,43が設けられる。回転体40,41,42,43は、カムフォロアによって構成される。ただし、回転体はカムフォロアに限られず、LMガイドやスライドレールによって代替することができる。
図11には、案内面部45と回転体40の関係を表した斜視図を示している。回転体40は、円柱状に形成されて、ホース保持体11に回転自在に支持されている。そして、回転体40の周面は、案内面部45の表面に当接しており、ホース保持体11の上下動に伴い案内面部45上を転がることができる。
【0031】
図12には、
図10のうち回転体付近の拡大図を示している。
図12(a)に示すように、回転体40は、図中右側から左側に向かって、案内面部45に対し当接している。
図12(b)に示すように、別の回転体41は、図中左側から右側に向かって、案内面部46に対し当接している。また、
図12(c)に示すように、別の回転体42は、図中上側から下側に向かって、案内面部47に対し当接している。また、別の回転体43は、図中下側から上側に向かって、案内面部48に対し当接している。このように、各回転体40,41,42,43は、それぞれ異なる4方向に向かって案内面部45,46,47,48に対し当接している。
【0032】
トンネルの道路は、長さ方向に沿って上り勾配または下り勾配を有していることがある。また、トンネルの道路は、幅方向においても勾配を有していることがある。このため、監視員通路に設けられる消火栓装置1は、道路の長さに沿う方向または道路の幅に沿う方向のいずれかあるいは両方に傾斜して設置されることがある。このような場合であっても、各回転体40,41,42,43がそれぞれ異なる4方向に向かって、案内面部45,46,47,48に対し当接していることにより、回転体のうち少なくともいずれか1つが、案内面部に対して当接するので、ホース保持体11の上下動に伴い案内面部上を転がることにより、確実にホース保持体11の上下動を案内することができる。このため、ホース保持体11の安定的な上下動を確保できる。
【0033】
次に、ホース保持体11の落下防止の構造について説明する。
図13には、ホース保持体11の上昇中の状態における回転部材50と押圧部材51との関係を表した斜視図を示している。ホース保持体11が上昇すると、前述のようにラッチ部材26によってホース保持体11が下降しないように固定されるが、強い衝撃力がホース保持体11に加わった場合など、ラッチ部材26がラッチ収容部36から外れる可能性もある。この場合であっても、ホース保持体11が上昇した状態を維持できるように、ホース保持体11の落下防止構造が設けられる。
【0034】
ホース保持体11の落下防止構造として、本体部10の内面には、回転部材50とストッパ部52及び当接体53が設けられる。回転部材50は、一端部が本体部10に対して回転可能に支持された細長い板状の部材である。ストッパ部52は、本体部10の内面に固定され、上面に支持面52aを有すると共に、支持面52aには凹部52bが形成されている。当接体53は、本体部10のストッパ部52よりも上方の内面に固定されている。
【0035】
ホース保持体11には、押圧部材51が固定されている。押圧部材51は、ホース保持体11に固定される固定面部51aと、ホース保持体11の上昇に伴い回転部材50の下面に当接する当接面部51bとを有している。
図13は、ホース保持体11が上昇し、当接面部51bが回転部材50の下面に当接した状態を表している。
【0036】
図14には、ホース保持体11が
図13より上昇した状態における回転部材50と押圧部材51との関係を表した斜視図を示している。この図に示すように、ホース保持体11が上昇していくと、ホース保持体11に固定された押圧部材51も共に上昇し、回転部材50を回転させながら押し上げていく。回転部材50は、当接体53に当接するまで回転することができる。
【0037】
図15には、ホース保持体11が
図14より上昇した状態における回転部材50と押圧部材51との関係を表した斜視図を示している。この図に示すように、ホース保持体11がさらに上昇すると、回転部材50は押圧部材51による支持を失い、自重によって回転して、ストッパ部52の支持面52aの位置まで降下する。
【0038】
図16には、ホース保持体11が上昇後に降下した状態における回転部材50と押圧部材51との関係を表した斜視図を示している。この図に示すように、ホース保持体11が上端位置まで上昇した後に降下すると、押圧部材51も共に降下し、その下面がストッパ部52に支持された回転部材50に当接する。これにより、押圧部材51はそれ以上降下することができない。すなわち、押圧部材51が固定されたホース保持体11のそれ以上の落下が阻止される。ホース保持体11の落下を最低限にするため、回転部材50は本体部10の上部に配置される。
【0039】
図17には、ストッパ部52に支持治具54を取付けた場合における回転部材50と押圧部材51との関係を表した斜視図を示している。ホース保持体11が上昇して消火用ホース12を引き出し、消火活動を終えたら、消火用ホース12はホース保持体11に戻され、ホース保持体11は本体部10内に収納される。このとき、ホース保持体11は上昇した状態から降下されるが、そのままでは
図16のように回転部材50によってホース保持体11の降下が阻止される。そこで、
図17に示すように、ストッパ部52の凹部52bに棒状の支持治具54を挿入し、支持治具54の先端部で回転部材50の回転を阻止するように支持する。これにより、ホース保持体11の押圧部材51は、回転部材50に干渉されることなく降下することができ、ホース保持体11を元の位置に戻すことができる。ホース保持体11が元の位置に戻ったら、支持治具54は取り外される。
【0040】
このように、本体部10とホース保持体11に落下防止構造が設けられていることにより、ホース保持体11が上昇した消火用ホース12を引き出している際、不意にホース保持体11が下降することを防止し、確実な消火活動を可能とすることができる。
【0041】
ロック解除部24の構成についてより詳細に説明する。
図18には、ロック解除部24を有するハンドル部材70の平面図を示している。ハンドル部材70は、ロック解除部24を納める箱状の部材であり、本体部10の上面部21に埋設されてロック解除部24が上面側に露出するように配置される。
【0042】
図19には、
図18のA-A断面図を示している。ハンドル部材70内には、ロック解除部24の他に、ハンドル部材70内で水平方向にスライド移動可能なスライド部71が配置されている。スライド部71の上面は、本体部10に固定されているラッチ係止部75に対して当接している。前述のように、ホース保持体11は上向きに付勢されており、スライド部71の上面がラッチ係止部75に対し当接していることで、ホース保持体11の上方向への移動が規制されている。ラッチ係止部75は、スライド部71に当接する部分が本体部10に対し回転可能な部材によって形成されている。具体的には、ラッチ係止部75はベアリング部材により形成されている。
【0043】
ロック解除部24は、回転軸部24aを中心に回動可能となっており、図中左上側から手を差し入れて、引き上げるように操作することができる。ロック解除部24は、回動に伴いスライド部71を押圧する押圧部24bを下端部に有している。スライド部71は、ラッチ係止部75に対して当接している当接部71aと、ロック解除部24の押圧部24bが当接する被押圧部71bとを有している。
【0044】
図20には、ロック解除部24を操作した状態のハンドル部材70の断面図を示している。ロック解除部24を回転軸部24aを中心に回動させると、押圧部24bはスライド部71の被押圧部71aを図中左側に向かって押圧し、これによってスライド部71は図中左側に向かってスライド移動する。これに伴い、スライド部71の当接部71bは、ラッチ係止部75の下方位置から移動し、ハンドル部材70の上方向への移動規制状態が解除される。この状態で、ハンドル部材70を有するホース保持体11は、上向きの付勢力により上昇する。
【0045】
移動前のスライド部71は、ラッチ係止部75に対して上方向に圧力を受けた状態で当接しているので、スライド移動する際の摺動抵抗が大きいが、ラッチ係止部75が本体部10に対して回転可能であることにより、スライド移動の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0046】
図21には、ハンドル部材70の背面図を示している。ハンドル部材70の手を差し入れる奥側の面は、
図21のハッチングで示した領域を切り欠いて形成されている。ハンドル部材70は、ロック解除部24を納める凹状の領域を有しており、この領域に埃等が侵入すると、ロック解除部24の回動に支障を来す可能性がある。ハンドル部材70の奥側の面の一部を切り欠いていることで、ロック解除部24を納める凹状の領域に侵入した埃等を落下させてこの領域に溜まらないようにすることができる。
【0047】
図22には、上昇ラッチハンドル29を設けた本体部10の拡大図を示している。上昇ラッチハンドル29は、ホース保持体11に設けられるハンドル部材70と同様の構成を有し、本体部10の内部において両側上部に配置される。ホース保持体11は、下端両側にそれぞれラッチ係止部76を有しており、ホース保持体11が上端まで引き上げられると、本体部10の上昇ラッチハンドル29とラッチ係止部76とが係止され、ホース保持体11がそれ以上上昇しないようにすることができる。
【0048】
上昇したホース保持体11が下降させる際には、上昇ラッチハンドル29を操作してラッチ係止部76に対する係止状態を解除する必要がある。この操作は、本体部10の扉部30を開くことによっても可能であるが、道路側からしか作業ができず、また、扉部30を開くための手間を要する。
図22では、本体部10の両側上面に開口部16を設けているので、開口部16から手を本体部10内に入れ、上昇ラッチハンドル29の操作を行うことができる。これにより、監視員通路61側からでも上昇ラッチハンドル29の操作を行うことができると共に、道路側から操作する場合にも扉部30を開く必要がなく、作業を容易化することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施は本形態には限られず、その技術的思想の範囲内において、様々に適用されうる。本実施形態では、弾性駆動部材32による付勢力が、消火用ホース12を保持したホース保持体11の重量よりも大きくなるように設定され、ロック係合部23による本体部10への係合状態が解除されたら、弾性駆動部材32の付勢力によってホース保持体11が自動的に上方に引き上げられるようにしているが、弾性駆動部材32の付勢力を、消火用ホース12を保持したホース保持体11の重量と吊り合うようにし、火災発生時には利用者が小さな力でホース保持体11を引き上げるようにしてもよい。この場合、ホース保持体11は任意の高さで停止させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、駆動部31はホース保持体11の四隅部に配置されるように4つ設けたが、駆動部31の数及び配置は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ホース保持体11にロック係合部23と、ロック係合部23の係合状態を解除するロック解除部24とを設けたが、ホース保持体11を本体部10に固定しておく手段として、磁石によるものなどを用いてもよい。また、ロック解除部24として、本実施形態のように手で引くレバー状のものに限られず、プッシュ式の操作部などを用いることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 消火栓装置
10 本体部
11 ホース保持体
12 消火用ホース
13 ノズル
20 ホース収納部
23 ロック係合部
24 ロック解除部
26 ラッチ部材
30 扉部
31 駆動部
32 弾性駆動部材
33 ワイヤ
36 ラッチ収容部
50 支持部材
51 押圧部材
52 ストッパ部
53 当接体
54 支持治具
60 道路
61 監視員通路