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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121776
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】撹拌装置及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/70 20220101AFI20220815BHJP
【FI】
B01F7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018671
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】長尾 瑞恵
【テーマコード(参考)】
4G078
【Fターム(参考)】
4G078AA02
4G078AB20
4G078BA01
4G078BA09
4G078DA01
4G078DC01
(57)【要約】
【課題】高粘度の撹拌対象物や液面を浮遊する固体が含まれる撹拌対象物に対し、十分に撹拌して混合させることが可能な撹拌装置及び撹拌方法を提供する。
【解決手段】本発明の撹拌装置1は、側面で横置きに載置され、全体形状が略柱体状の撹拌槽11と、撹拌槽11の内部に於いて長手方向の中心軸方向に延在し、回転可能に軸支された回転軸12と、回転軸12に支持され、回転軸12の軸芯回りに回転する少なくとも1つの撹拌部材13とを備え、撹拌部材13は、一方端が回転軸12に接続され、他方端が回転軸12から離れる方向に延在する支柱13aと、支柱13aの他方端に設けられ、固体の撹拌対象物を掻き揚げることが可能な撹拌パドル13bとを有しており、撹拌パドル13bは回転軸12の延在方向に平行となる撹拌面を有し、撹拌面の面積は撹拌槽11に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し4~45%の範囲である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面で横置きに載置され、固体及び液体の撹拌対象物が投入される、全体形状が略柱体状の撹拌槽と、
前記撹拌槽の内部に於いて長手方向の中心軸方向に延在し、回転可能に軸支された回転軸と、
前記回転軸に支持され、当該回転軸の軸芯回りに回転する少なくとも1つの撹拌部材と、を備え、
前記撹拌部材は、一方端が前記回転軸に接続され、他方端が回転軸から離れる方向に延在する支柱と、前記支柱の他方端に設けられ、前記固体の撹拌対象物を掻き揚げることが可能な撹拌パドルとを有しており、
前記撹拌パドルは、前記回転軸の延在方向に平行となる撹拌面を有し、
前記撹拌面の面積は、前記撹拌槽に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し、4%~45%の範囲である撹拌装置。
【請求項2】
前記回転軸から前記撹拌部材に於ける前記撹拌パドルの最先端部までの最大距離は、前記回転軸から前記撹拌槽の内壁面までの最小距離に対し、90%~99.5%の範囲である請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記撹拌部材は、前記回転軸の任意の位置に、相互に離間した状態で複数設けられており、
各撹拌部材の支柱の長さ及び前記回転軸から延在する方向は、相互に同一又は異なっており、
各撹拌部材の撹拌パドルの撹拌面の面積及び形状は、相互に同一又は異なっている請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌部材は、前記回転軸の同一の位置に、それぞれの支柱が異なる方向に延在する様に複数設けられており、
各撹拌部材の支柱の長さは、相互に同一又は異なっており、
各撹拌部材の撹拌パドルの撹拌面の面積及び形状は、相互に同一又は異なっている請求項1~3の何れか1項に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記撹拌パドルの撹拌面の形状が、平板状又は環状フレーム状である請求項1~4の何れか1項に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記撹拌槽の内壁面は平滑面である請求項1~5の何れか1項に記載の撹拌装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の撹拌装置を用いた撹拌方法であって、
前記固体及び液体の撹拌対象物が前記撹拌槽内に投入された状態での液体の撹拌対象物の液面高さを、前記撹拌槽の内部に於ける底面から天面までの高さに対し30%~90%の範囲にして、
前記少なくとも1つの撹拌部材に於ける撹拌パドルの少なくとも一部が、前記液体の撹拌対象物の液面から表出する様に、前記撹拌部材を前記回転軸の軸芯回りに回転させ、
前記固体の撹拌対象物と前記液体の撹拌対象物とを撹拌し混合する撹拌方法。
【請求項8】
前記撹拌部材の回転速度が、1min-1~30min-1の範囲である請求項7に記載の撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌装置及び撹拌方法に関し、より詳細には、例えば、湿式メタン発酵のプロセスに於いて、メタン発酵の原料と水等との撹拌混合に用いることが可能な撹拌装置及び撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産糞尿や汚泥、食品残渣等に含まれる有機物をメタンガスと炭酸ガスまで分解して行われるメタン発酵に於いては、酸素のない嫌気的条件下でメタン発酵微生物(例えば、酸生成細菌、酢酸生成細菌及びメタン生成菌等。)の代謝作用を利用することにより行われている。メタン発酵は、発酵させる原料の固形物濃度によって、湿式メタン発酵と乾式メタン発酵に分類される。一般的に湿式メタン発酵は固形分濃度が全質量に対し4質量%~12質量%%の範囲の原料を対象とし、乾式メタン発酵は固形分濃度が全質量に対し20質量%~40質量%の範囲の原料を対象とする。但し、乾式メタン発酵に於いては、固形分濃度が高いことに起因して、撹拌装置の故障等の装置トラブルが多い。そのため、湿式メタン発酵の方が、乾式メタン発酵よりもその普及率が高い。
【0003】
湿式メタン発酵のプロセスは、一般的に原料受入槽に於ける前処理、発酵槽に於ける発酵処理、脱硫処理、及びガス貯留からなる。ここで、メタン発酵の原料は、原料中の水分が全質量に対し、例えば、80質量%前後と高めのものが多い。そのため、湿式メタン発酵では、前処理に於いて畜産糞尿や汚泥、食品残渣等の固形物に対し、加水等による水分量の調整(前処理)が必須となる。前処理に於ける原料と水との混合方法としては、例えば、縦軸撹拌機(特許文献1)や水中ミキサ等を用いた方法が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載の縦軸攪拌機は、竪形円筒撹拌槽の中心に槽外から回転可能な回転軸が配置されており、回転軸の下部に、撹拌槽の底壁面と僅かな間隙をもって平板状のボトムパドルが装着され、ボトムパドルの上側には縦材と横材からなる格子翼が装着されている。しかし、この様な縦軸攪拌機では、液体中に沈降している固体を液体と混合することができても、液面に浮遊している固体を液体中に沈めて撹拌混合することは困難である。そのため、特許文献1に記載の縦軸攪拌機では、十分な撹拌が困難である。
【0005】
水中ミキサとしては、例えば、一定速度で回転させることが可能なモータと、モータの回転シャフトに取り付けられる撹拌羽根と、撹拌羽根の外周を囲繞する様に設けられるガイドリングとを備えたものが挙げられる。しかし、この様な水中ミキサでは、縦軸攪拌機の場合と同様、水中に沈降している固体を水と混合することはできても、水面に浮遊している固体を水中に沈めて撹拌混合することは困難である。また、撹拌羽根が原料中の固形物との接触により摩耗し、撹拌性能が低下する場合がある。さらに、粘度が、例えば、数万cP以上の高粘度域にある原料を撹拌する場合には、撹拌可能な領域が設置される水中ミキサの周辺にとどまり、十分な撹拌が困難である。
【0006】
これらの問題点を解決する方法としては、例えば、横軸攪拌機(特許文献2)を用いた方法が挙げられる。特許文献2に記載の横軸攪拌機は、材料の投入口及び汚泥スラリーの排出口を有する円筒状の攪拌槽と、撹拌槽の内壁面に設けられた凹凸面を形成する多数の突起と、撹拌槽の内部にあって回転自在に取り付けられた複数の攪拌羽根部材とを備えている。また、撹拌羽根部材は回転軸に植設された支柱と支柱の先端に設けられた撹拌ブレードとを備えており、撹拌ブレードの先端は突起の先端に摺接する汚泥掻取り面として、また、撹拌ブレードの側面は汚泥撹拌面として構成されている。しかし、撹拌ブレードの撹拌面は回転軸の中心線に対して傾斜して設けられているため、撹拌ブレードが液面に浮遊する固体を掛止して液体中に沈み込ませようとしても固体が撹拌ブレードから外れ、固体を液体中に十分に沈み込ませて撹拌混合ができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-108557号公報
【特許文献2】特開2003-47992号公報
【特許文献3】特開平10-15372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、高粘度の撹拌対象物や液面を浮遊する固体が含まれる撹拌対象物に対し、十分に撹拌して混合させることが可能な撹拌装置及び撹拌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題は、以下に述べる発明により解決される。
即ち、本発明に係る撹拌装置は、前記の課題を解決するために、側面で横置きに載置され、固体及び液体の撹拌対象物が投入される、全体形状が略柱体状の撹拌槽と、前記撹拌槽の内部に於いて長手方向の中心軸方向に延在し、回転可能に軸支された回転軸と、前記回転軸に支持され、当該回転軸の軸芯回りに回転する少なくとも1つの撹拌部材と、を備え、前記撹拌部材は、一方端が前記回転軸に接続され、他方端が回転軸から離れる方向に延在する支柱と、前記支柱の他方端に設けられ、前記固体の撹拌対象物を掻き揚げることが可能な撹拌パドルとを有しており、前記撹拌パドルは、前記回転軸の延在方向に平行となる撹拌面を有し、前記撹拌面の面積は、前記撹拌槽に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し、4%~45%の範囲であることを特徴とする。
【0010】
前記の構成によれば、固体及び液体の撹拌対象物を撹拌するものとして、回転軸の軸芯回りに回転可能な撹拌部材が設けられている。また、撹拌部材は、一方端が回転軸に接続され他方端が回転軸から離れる方向に延在する支柱と、この支柱の他方端に設けられた撹拌パドルとを有しており、撹拌パドルは固体の撹拌対象物を掻き揚げることが可能となっている。さらに、撹拌パドルは、回転軸の延在方向に平行となる撹拌面を備えているため、例えば、固体の撹拌対象物が液面に浮遊するものである場合でも、撹拌パドルが当該固体の撹拌対象物を掛止し、液体中に沈めて撹拌混合することができる。また、撹拌パドルの撹拌面の面積を、撹拌槽に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し4%~45%の範囲とすることで、撹拌部材を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制しつつ、撹拌対象物の粘度が高い場合にも、撹拌が撹拌槽内で局所的にとどまるのを防止し、より広範囲での撹拌を可能にする。その結果、撹拌効率の向上が図れる。
【0011】
前記構成に於いて、前記回転軸から前記撹拌部材に於ける前記撹拌パドルの最先端部までの最大距離は、前記回転軸から前記撹拌槽の内壁面までの最小距離に対し、90%~99.5%の範囲であることが好ましい。
【0012】
撹拌部材の撹拌パドルの最先端部と撹拌槽の内壁面との隙間を前記数値範囲内に設定することで、撹拌パドルと撹拌槽の内壁面との間に固体の撹拌対象物が挟まるのを低減し、撹拌パドルや撹拌槽の内壁面の摩耗を低減又は抑制する。また、撹拌が撹拌槽内で局所的にとどまるのを防止し、より広範囲での撹拌を可能にして、撹拌効率の向上を図ることができる。
【0013】
また前記構成に於いて、前記撹拌部材は、前記回転軸の任意の位置に、相互に離間した状態で複数設けられており、各撹拌部材の支柱の長さ及び前記回転軸から延在する方向は、相互に同一又は異なっており、各撹拌部材の撹拌パドルの撹拌面の面積及び形状は、相互に同一又は異なっているのが好ましい。
【0014】
また前記構成に於いて、前記撹拌部材は、前記回転軸の同一の位置に、それぞれの支柱が異なる方向に延在する様に複数設けられており、各撹拌部材の支柱の長さは、相互に同一又は異なっており、各撹拌部材の撹拌パドルの撹拌面の面積及び形状は、相互に同一又は異なっているのが好ましい。
【0015】
前記の構成に於いて、前記撹拌パドルの撹拌面の形状が、平板状又は環状フレーム状であることが好ましい。
【0016】
撹拌パドルの撹拌面の形状を平板状にすることにより、例えば、撹拌部材を回転させて撹拌する際に、液面に浮遊する固体の撹拌対象物を撹拌パドルに確実に捕捉させることができ、撹拌効率の向上を図ることができる。また、撹拌パドルの撹拌面の形状を環状フレーム状にすることにより、撹拌対象物が高粘度の場合であっても撹拌動力が過大となるのを抑制しながら撹拌することができる。
【0017】
さらに前記構成に於いては、前記撹拌槽の内壁面は平滑面であることが好ましい。
【0018】
例えば、前述の特許文献2の様に、撹拌ブレードの先端を撹拌槽内壁の突起先端に摺接する汚泥掻取り面として設けた場合、当該突起に固体の撹拌対象物が堆積し、固体の撹拌対象物を液体の撹拌対象物と均一に混合するのが困難になる。また、固体の撹拌対象物が、硬く機械的強度の大きい汚泥塊の様なものである場合、撹拌槽内壁の突起の部分で撹拌ブレードの先端に激しい摩耗を生じさせ、これにより撹拌性能の低下を招来する。しかし、前記構成の様に撹拌槽の内壁面を平滑面とすることで、当該内壁面に固体の撹拌対象物が堆積するのを防止し、固体の撹拌対象物と液体の撹拌対象物との撹拌混合を一層良好にすることができる。また、固体の撹拌対象物が硬く、機械的強度の大きいものであっても、撹拌パドルの先端の摩耗を抑制又は低減し、撹拌性能の低下を防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る撹拌方法は、前記の課題を解決するために、前記撹拌装置を用いた撹拌方法であって、前記固体及び液体の撹拌対象物が前記撹拌槽内に投入された状態での液体の撹拌対象物の液面高さを、前記撹拌槽の内部に於ける底面から天面までの高さに対し30%~90%の範囲にして、前記少なくとも1つの撹拌部材に於ける撹拌パドルの少なくとも一部が、前記液体の撹拌対象物の液面から表出する様に、前記撹拌部材を前記回転軸の軸芯回りに回転させ、前記固体の撹拌対象物と前記液体の撹拌対象物とを撹拌し混合することを特徴とする。
【0020】
前記構成に於いては、固体及び液体の撹拌対象物が撹拌槽内に投入された状態での液体の撹拌対象物の液面高さを、撹拌槽の内部に於ける底面から天面までの高さに対し30%~90%の範囲に設定する。また、撹拌部材の少なくとも1つについては、撹拌パドルの少なくとも一部が液体の撹拌対象物の液面から表出する様に、回転軸の軸芯回りに回転させる。さらに、撹拌パドルの撹拌面は回転軸の延在方向に平行となっている。これにより、前記構成では、例えば、固体の撹拌対象物が液面に浮遊するものである場合でも、撹拌パドルが液面から表出する際には、当該固体の撹拌対象物を掻き上げた後、液面に落下させることができる。また、撹拌パドルが液中に沈み込む際には、固体の撹拌対象物を掛止し、液体中に沈めて撹拌することができる。
【0021】
また前記構成では、撹拌パドルの撹拌面の面積は、撹拌槽に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し4%~45%の範囲に設定されるので、撹拌部材を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制しつつ、撹拌対象物の粘度が高い場合にも、撹拌が撹拌槽内で局所的にとどまるのを防止して混合させることができる。
【0022】
前記の構成に於いては、前記撹拌部材の回転速度が、1min-1~30min-1の範囲であることが好ましい。
【0023】
前記撹拌部材の回転速度を1min-1以上にすることにより、撹拌対象物の粘度が高い場合(例えば、粘度が数万cP以上である場合)にも、撹拌部材による良好な撹拌を維持することができる。その一方、撹拌部材の回転速度を30min-1以下にすることにより、撹拌部材を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制することができる。また、固体の撹拌対象物との接触により、撹拌パドル等が摩耗するのを低減又は防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べる様な効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、例えば、固体の撹拌対象物が液面に浮遊するものである場合でも、撹拌部材の撹拌パドルが当該固体の撹拌対象物を掛止し、液体中に沈めて撹拌混合することができる。また、撹拌対象物の粘度が高い場合でも、撹拌槽内で局所的な撹拌にとどまるのを防止し、より広範囲での撹拌を可能にして撹拌効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態1に係る撹拌装置を表す断面側面図である。
図2図1のA-A’線矢視断面図である。
図3】本発明の実施の形態2に係る撹拌装置を表す断面側面図である。
図4】本発明の他の実施の形態に係る撹拌装置に於いて、撹拌部材の変形例を示す部分拡大平面図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る撹拌装置を表す断面図である。
図6】本発明の他の実施の形態に係る撹拌装置を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
[撹拌装置]
本実施の形態1に係る撹拌装置について、図1及び図2を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態1に係る撹拌装置を表す断面側面図である。図2は、図1のA-A’線矢視断面図である。尚、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0027】
図1に示す様に、本実施の形態の撹拌装置1は、いわゆる横置き型の撹拌装置であり、撹拌槽11と、回転軸12と、撹拌部材13と、固体投入口16と、液体投入口17と、取出し口18とを少なくとも備える。本実施の形態の撹拌装置1は、例えば、湿式メタン発酵に於いて、畜産糞尿や汚泥、食品残渣等の固体の撹拌対象物と、水等の液体の撹拌対象物とを撹拌して混合する前処理等に好適に利用できる。
【0028】
撹拌槽11は、図1及び図2に示す様に、全体形状が円柱体状であり、側面を横置きに載置される。撹拌槽11の内壁面は平滑面であることが好ましい。これにより、内壁面に突部等が設けられる場合の様に、固体の撹拌対象物が堆積するのを防止し、固体の撹拌対象物と液体の撹拌対象物との撹拌混合を一層良好にすることができる。また、撹拌槽11の内壁面と撹拌部材13との間に固体の撹拌対象物が挟まれるのを低減することができる。その結果、固体の撹拌対象物が硬く、機械的強度が大きい場合にも、撹拌槽11の内壁面や撹拌部材13の先端が摩耗するのを抑制又は低減することができる。
【0029】
回転軸12は、撹拌槽11の内部に於いて長手方向の中心軸方向に延在している。回転軸12は撹拌槽11を貫通しており、撹拌槽の外部に設けられている一対の軸受け14a、14b間に横架されている。また、回転軸12の一方の端部にはモータ15が連結されている。そして、回転軸12は、モータ15の駆動により任意の回転数で回転させることができる。これにより、撹拌部材13を、図2の矢印で示す方向に旋回させることができる。尚、回転軸12は、撹拌部材13が内壁面に接触しない範囲内で、撹拌槽11内部の長手方向に於ける中心軸から外れた位置に設けられていてもよい。
【0030】
回転軸12の延在方向(軸方向)に対し垂直となる方向の断面形状は、略円形状となっている。その場合の前記断面形状の直径は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0031】
撹拌部材13は、固体の撹拌対象物と液体の撹拌対象物とを撹拌する機能を有しており、回転軸12に4つ設けられている。各撹拌部材13は、支柱13aと、1つの撹拌パドル13bとからなる。
【0032】
支柱13aは棒状であり、その一方端は回転軸12に接続され、他方端は回転軸12に対し離れる方向に延在している。また、他方端には、撹拌パドル13bが設けられている。これにより、各撹拌部材13は、回転軸12の回転と共に、当該回転軸12の軸芯回りに回転可能となっている。また、各支柱13aは、回転軸12に於いてそれぞれ等間隔で相互に離間した位置に、当該回転軸12に対し垂直となる様に接続されている。さらに、各支柱13aは、回転軸12から離れる方向が、回転軸12の軸方向から見て、相互180°異なる様に延在している。支柱13aの横断面形状(支柱13aの軸方向に対し垂直となる方向の断面形状)は、略円形状となっている。但し、本発明はこの横断面形状に限定されない。支柱13aの横断面形状は、例えば、矩形状等であってもよい。
【0033】
撹拌パドル13bは、全体形状が長方形状の平板であり、撹拌パドル13bの中央部で支柱13aに接続されている。尚、撹拌パドル13bは長方形状の平板であるため、当該撹拌パドル13bの撹拌面も長方形状となっている。また、撹拌パドル13bは、その撹拌面が回転軸12の軸方向(延在方向)に平行となる様に、支柱13aの他方端に設けられている(図2参照。)。撹拌面を回転軸12の軸方向に対し平行にすることで、例えば、固体の撹拌対象物が液面に浮遊するものであっても、撹拌パドル13bが固体の撹拌対象物を確実に捕捉し、液体中に沈めて効果的に撹拌混合するのを可能にする。
【0034】
撹拌面の面積は、撹拌槽11に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し4%~45%であることが好ましく、6%~30%であることがより好ましく、12%~15%であることが特に好ましい。前記撹拌面の面積を4%以上にすることにより、撹拌が撹拌槽11内で局所的にとどまるのを防止し、良好な撹拌を維持することができる。その一方、前記撹拌面の面積を45%以下にすることにより、撹拌部材13を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制することができる。即ち、撹拌面の面積を前記数値範囲内にすることで、撹拌効率の向上を図ることができる。
【0035】
撹拌パドル13bの厚さは、撹拌パドル13bの材料にもよるが、撹拌の際に当該撹拌パドル13bが変形するのを防止できる程度に機械的強度が保持されていれば特に限定されない。通常は、3mm~20mmの範囲であり、好ましくは6mm~16mm、より好ましくは9mm~12mmである。
【0036】
回転軸12から撹拌パドル13bの最先端部までの最大距離は、回転軸12から撹拌槽11の内壁面までの最小距離に対し90%~99.5%であることが好ましく、92.5%~98%であることがより好ましく、95%~96%であることが特に好ましい。回転軸12から撹拌パドル13bの最先端部までの最大距離を、回転軸12から撹拌槽11の内壁面までの最小距離に対して99.5%以下にすることにより、撹拌パドル13bと撹拌槽11の内壁面との間に固体の撹拌対象物が挟まるのを低減することができる。その結果、例えば、固体の撹拌対象物が機械的強度が大きく硬いものであっても、撹拌パドル13bや撹拌槽11の内壁面の摩耗を抑制しながら撹拌することができる。その一方、回転軸12から撹拌パドル13bの最先端部までの最大距離を、回転軸12から撹拌槽11の内壁面までの最小距離に対して90%以上にすることにより、撹拌が撹拌槽11内で局所的にとどまるのを防止し、より広範囲での撹拌を可能にする。その結果、撹拌効率の向上が図れる。
【0037】
固体投入口16は、固体の撹拌対象物を撹拌槽11の内部に投入するためのものであり、撹拌槽11の天面部に於いて任意の位置に設けられている。
【0038】
液体投入口17は、液体の撹拌対象物を撹拌槽11の内部に投入するためのものであり、撹拌槽11の天面部に於いて任意の位置に設けられている。
【0039】
取出し口18は、固体の撹拌対象物と液体の撹拌対象物とが撹拌により混合された撹拌混合物を取り出すためのものであり、撹拌槽11の底面部に於いて任意の位置に設けられている。
【0040】
尚、本実施の形態では撹拌部材13が4つ設けられている場合を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されない。例えば、撹拌部材13は、必要に応じて1つでもよく、複数であってもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、固体の撹拌対象物と液体の撹拌対象物とを投入するための投入口が分離している態様を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、固体の撹拌対象物と液体の撹拌対象物とを同時に投入できる様に、投入口を天面部の任意の位置に1箇所設ける態様であってもよい。
【0042】
[撹拌方法]
次に、本実施の形態に係る撹拌装置1を用いた撹拌対象物の撹拌方法について、図2を参照しながら以下に説明する。
【0043】
先ず、モータ15の駆動により回転軸12を回転させ、これにより撹拌部材13を回転軸12の軸芯回りに回転させる。次に、撹拌槽11の内部に液体投入口17から液体の撹拌対象物を投入する。さらに、固体投入口16から固体の撹拌対象物も投入して、液体及び固体の撹拌対象物の撹拌を行う。尚、固体の撹拌対象物の投入は一度に行ってもよく、逐次的に複数回行ってもよい。
【0044】
液体及び固体の撹拌対象物を投入した後の、撹拌槽11内に於ける液体の撹拌対象物の液面高さ(即ち、撹拌槽11の内部の底部から液体の撹拌対象物の液面までの高さ)は、撹拌槽11の内径を100%としたとき、30%~90%の範囲であり、好ましくは45%~80%、より好ましくは60%~75%の範囲となる様に調整される。前記液体の撹拌対象物の液面高さを前記数値範囲内に設定することで、回転軸12の軸芯回りに回転する撹拌部材の撹拌パドル13bが最頂部に到達したとき、撹拌パドル13bの少なくとも一部が液体の撹拌対象物の液面から表出させることができる。これにより、例えば、撹拌パドル13bが液面から表出する際には、当該撹拌パドル13bが液面に浮遊する固体を掻き上げ、その後、落下させることができる。また、撹拌パドル13bが液体中に沈み込む際には、撹拌パドル13bが液面に浮遊する固体を掛止して沈み込ませることができる。その結果、液面に浮遊する固体の撹拌対象物も効果的に撹拌することが可能になる。
【0045】
尚、撹拌槽11の内径は、当該撹拌槽11のみの寸法を意味し、固体投入口16、液体投入口17及び取出し口18の寸法は含まれない。
【0046】
また、撹拌部材13の回転速度は1min-1~30min-1が好ましく、1min-1~20min-1がより好ましく、1min-1~10min-1が特に好ましい。撹拌部材13の回転速度を1min-1以上にすることにより、撹拌対象物の粘度が高い場合(例えば、粘度が数万cP以上である場合)にも、撹拌部材13による良好な撹拌を維持することができる。その一方、撹拌部材13の回転速度を30min-1以下にすることにより、撹拌部材13を回転させるモータ15に対する負荷が過大となるのを抑制することができる。また、固体の撹拌対象物との接触により、撹拌パドル13b等が摩耗するのを低減又は防止することができる。
【0047】
撹拌パドル13bの撹拌面は、回転軸の延在方向に平行となっている。そのため、撹拌部材13は、撹拌面が撹拌対象物の液面に対し垂直となる様に撹拌を行う。これにより、撹拌面が回転軸の延在方向に対し平行でない場合と比較して、撹拌パドル13が液面から表出する際には、浮遊する固体の撹拌対象物を確実に掻き上げ、また、撹拌パドル13が液中に沈み込む際には、当該固体の撹拌対象物を掛止して液中に沈み込ませることが可能になる。その結果、撹拌効率の一層の向上が図れる。
【0048】
また、4つの撹拌部材13を、回転軸12の軸方向から見て、交互に180°異なる様に延在させることで、回転軸12が180°回転する毎に、液面に浮遊する固体の撹拌対象物を撹拌パドル13bで撹拌させることが可能になる。これにより、撹拌効率の向上が図れる。
【0049】
撹拌時間(液体及び固体の撹拌対象物を投入した後の撹拌時間)は特に限定されず、液体及び固体の撹拌対象物の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0050】
尚、本実施の形態では、撹拌部材13を回転させた状態で、液体の撹拌対象物及び固体の撹拌対象物を撹拌槽11に順次投入する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、液体の撹拌対象物と固体の撹拌対象物を予め投入した後に、撹拌部材13を回転させ撹拌を行ってもよい。
【0051】
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2について、図3に基づき以下に説明する。図3は、本実施の形態2に係る撹拌装置を表す断面側面図である。尚、前記実施の形態1に係る撹拌装置1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
[撹拌装置]
本実施の形態2に係る撹拌装置2は、実施の形態1の撹拌装置1と比較して、撹拌部材13以外に、さらに4つの他の撹拌部材19を備えた点が異なる。
【0053】
撹拌部材19は、支柱19a及び撹拌パドル19bからなる。支柱19aは棒状であり、その一方端は回転軸12に於いて撹拌部材13が接続されている位置で接続されている。また、他方端は、支柱13aが回転軸12に対し離れる方向とは反対側の方向、すなわち、回転軸12の軸方向から見て180°異なる方向に延在している。
【0054】
支柱19aの横断面形状(支柱19aの延在方向に対し垂直となる方向の断面形状)は、略円形状となっている。但し、本発明はこの横断面形状に限定されない。例えば、矩形状等であってもよい。
【0055】
撹拌パドル19bの全体形状は長方形状であり、撹拌パドル19bの中央部で支柱19aに接続されている。尚、撹拌パドル19bは、全体形状が長方形状の平板であるため、当該撹拌パドル19bの撹拌面も長方形状となっている。また、撹拌パドル19bは、その撹拌面が回転軸12の軸方向(延在方向)に平行となる様に、支柱19aの他方端に設けられている。撹拌面を回転軸12の軸方向に対し平行にすることで、例えば、固体の撹拌対象物が液面に浮遊するものであっても、撹拌パドル19bが固体の撹拌対象物を確実に捕捉し、液体中に沈めて効果的に撹拌混合することができる。
【0056】
撹拌部材19の支柱19aの長さは、撹拌部材13の支柱13aよりも短くなる様に構成されている。また、撹拌部材19の撹拌パドル19bの面積は、撹拌部材13の撹拌パドル13bよりも小さくなる様に構成されている。これにより、撹拌部材19の撹拌パドル19bが撹拌部材13の撹拌パドル13bと接触するのを回避することができる。本実施の形態では、この様な構成を採用することにより、支柱13aが比較的長い撹拌部材13では、回転軸12からより遠い範囲での撹拌対象物の撹拌を行わせる一方、支柱19aが比較的短い撹拌部材19では、回転軸12の近傍での撹拌対象物の撹拌を行わせることができる。これにより、撹拌槽11全体でのより効率的、かつ均一な撹拌が可能になる。
【0057】
撹拌面の面積は、実施の形態1の場合と同様、撹拌槽11に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対し4%~45%であることが好ましく、より好ましくは6%~30%、さらに好ましくは12%~15%である。前記撹拌面の面積を4%以上にすることにより、撹拌が撹拌槽11内で局所的にとどまるのを防止し、より広範囲での撹拌を可能にする。その一方、前記撹拌面の面積を45%以下にすることにより、撹拌部材13及び撹拌部材19を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制することができる。即ち、撹拌面の面積を前記数値範囲内にすることで、撹拌効率の向上を図ることができる。尚、本実施の形態に於ける撹拌面の面積とは、撹拌パドル13bの撹拌面の面積と、撹拌パドル19bの撹拌面の面積の総和を意味する。
【0058】
撹拌パドル19bの最先端部と撹拌槽11の内壁面との隙間、即ち、回転軸12から撹拌パドル19bの最先端部までの最大距離は、撹拌パドル19bが撹拌部材13の撹拌パドル13bと接触しない範囲であれば特に限定されない。
【0059】
尚、本実施の形態では撹拌部材13及び撹拌部材19がそれぞれ4つ設けられている場合を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されない。撹拌部材13及び撹拌部材19は、必要に応じて、例えば1つでもよく、複数であってもよい。
【0060】
[撹拌方法]
本実施の形態に係る撹拌装置2を用いた撹拌対象物の撹拌方法は、前記実施の形態1に係る撹拌対象物の撹拌方法の場合と同様に行うことができる。従って、その詳細な説明については省略する。
【0061】
(その他の事項)
前記実施の形態1及び2では、撹拌部材が回転軸に設けられる位置、支柱の長さ、支柱の延在方向、撹拌パドルの撹拌面の面積、及び撹拌面の形状について、代表的なものを例にして本発明を説明した。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、撹拌部材が、回転軸の任意の位置に於いて、相互に離間した状態で複数設けられている場合、各撹拌部材の支柱の長さ及び前記回転軸から延在する方向は、相互に同一又は異なっていてもよい。さらに、各撹拌部材の撹拌パドルの撹拌面の面積、及び撹拌パドル(撹拌面)の形状も、相互に同一又は異なっていてもよい。
【0062】
また例えば、撹拌部材が、回転軸の同一の位置に於いて、それぞれの支柱が異なる方向に延在する様に複数設けられている場合、各撹拌部材の支柱の長さは相互に同一又は異なっていてもよい。さらに、各撹拌部材の撹拌パドルの撹拌面の面積、及び撹拌パドル(撹拌面)の形状も相互に同一又は異なっていてもよい。
【0063】
尚、各撹拌部材の支柱を回転軸から異なる方向にそれぞれ延在させる場合、回転軸の軸方向から見たときの各支柱同士がなす角度は30°~180°の範囲であることが好ましい。前記角度を30°以上にすることにより、各撹拌部材による撹拌が、撹拌槽の中で局所的に行われるのを低減することができる。その結果、撹拌効率の向上が図れる。
【0064】
また、撹拌パドルの形状に関し、前記実施の形態1及び2では長方形状の平板である場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、図4(a)~図4(f)に示す平板状の撹拌パドルや、図4(g)に示す環状フレーム状の撹拌パドルであってもよい。図4(a)~図4(g)は、撹拌部材の変形例を示す部分拡大平面図である。
【0065】
図4(a)に示す撹拌部材21は、支柱21aと、平面形状が略長方形状であり、かつ板状の撹拌パドル21bとを備える。撹拌パドル21bは、その中央部で支柱21aに接続されている。また、撹拌パドル21bの全ての角部にはR加工が施されており、これにより固体の撹拌対象物との接触による摩耗を低減又は防止することができる。
【0066】
図4(b)に示す撹拌部材22は、支柱22aと、平面形状が一部の角部で切り欠きの略長方形状であり、かつ板状の撹拌パドル22bとを備える。撹拌パドル22bは、その中央部で支柱22aに接続されている。切り欠きは、支柱22aが接続されている端部とは反対側の端部の角部に於いて、切り欠き部22cが設けられた構造となっている。当該角部に切り欠き部22cを設けることで、固体の撹拌対象物との接触による摩耗を低減又は防止することができる。また、撹拌部材22を回転させるための撹拌動力の低減も図れる。
【0067】
図4(c)に示す撹拌部材23は、支柱23aと、平面形状が略円形状であり、かつ板状の撹拌パドル23bとを備える。また、図4(d)に示す撹拌部材24は、支柱24aと、平面形状が略楕円形状であり、かつ板状の撹拌パドル24bとを備える。これらの撹拌パドル23b、24bの様に、平面形状を略円形状又は略楕円形状にしても、固体の撹拌対象物との接触による摩耗を低減又は防止することができる。また、撹拌部材23、24を回転させるための撹拌動力の低減も図れる。
【0068】
図4(e)に示す撹拌部材25は、支柱25aと、平面形状が長方形状であり、かつ板状の第1撹拌パドル25b及び第2撹拌パドル25cとを備える。第1撹拌パドル25bは、第2撹拌パドル25cよりも長尺となっている。第1撹拌パドル25b及び第2撹拌パドル25cはそれぞれ、中央部で支柱25aに接続されている。また、第1撹拌パドル25bと第2撹拌パドル25cは、相互に任意の距離で離間している。この様な構造の撹拌部材25であると、液体の撹拌対象物の粘度が高い場合にも、撹拌部材25を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制することができる。また、液面に浮遊する固体の撹拌対象物を容易に掛止することができ、撹拌効率の向上が図れる。
【0069】
図4(f)に示す撹拌部材26は、支柱26aと、平面形状が長方形状であり、かつ板状の2つの撹拌パドル26bとを備える。2つの撹拌パドル26bは共に、中央部で支柱26aに接続されている。また、2つの撹拌パドル26bは、相互に任意の距離で離間している。この様な構造の撹拌部材26であっても、撹拌部材25の場合と同様、撹拌部材26を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制し、また、液面に浮遊する固体の撹拌対象物を容易に掛止することで、撹拌効率の向上が図れる。
【0070】
図4(g)に示す撹拌部材27は、支柱27aと、平面形状が矩形の環状フレーム状の撹拌パドル27bとを備える。撹拌パドル27bは、中央部で支柱27aに接続されている。撹拌パドル27bの中央に開口部27cを設けることで、撹拌の際に、撹拌パドル27bが受ける抵抗を低減することができる。これにより、液体の撹拌対象物の粘度が高い場合にも、撹拌部材27を回転させるための撹拌動力が過大となるのを抑制することができる。また、液面に浮遊する固体の撹拌対象物を容易に掛止することができ、撹拌効率の向上が図れる。
【0071】
尚、撹拌パドル21~27の撹拌面の面積や厚さについては、実施の形態1で詳述した通りである。
【0072】
また、前記実施の形態1及び2では、撹拌槽が円柱体状のものを例にして説明した。しかし、本発明の撹拌槽は柱体状のものであれば特に限定されるものではない。例えば、本発明は、図5に示す様な撹拌槽31を備えるものであってもよい。図5は、他の実施の形態に係る撹拌装置を表す断面図である。撹拌槽31は、長手方向の中心軸方向に垂直となる断面が、回転軸12より下方では半円形状、回転軸12より上方では矩形状の形状を有している。
【0073】
また本発明は、図6に示す様な撹拌槽32及び固体投入口33を備えるものであってもよい。図6は、他の実施の形態に係る撹拌装置を表す断面図である。撹拌槽32は、長手方向の中心軸方向に垂直となる断面が、天面部を除き、略円弧状となっている。固体投入口33は固体の撹拌対象物を撹拌槽32内に投入するためのものであり、撹拌槽32の天面部に設けられている。
【0074】
尚、撹拌槽31又は撹拌槽32を用いて固体及び液体の撹拌対象物の撹拌を行う場合、撹拌槽31又は撹拌槽32内での液体の撹拌対象物の液面高さ(固体及び液体の撹拌対象物が撹拌槽31又は撹拌槽32内に投入された状態での液面高さ)は、実施の形態1の場合と同様、撹拌槽31又は撹拌槽32の内部に於ける底面から天面までの高さに対し30%~90%、好ましくは45%~80%、より好ましくは60%~75%の範囲である。ここで、撹拌槽32の場合に於ける底面から天面までの高さとは、固体投入口33を含まず、撹拌槽32の内壁面までの高さを意味する。
【0075】
その他、本発明は、角柱体状の撹拌槽にも適用可能である。撹拌槽が角柱体状の場合、具体的には、四角柱状、五角柱状、六角柱状等が挙げられる。但し、撹拌槽が三角柱状の場合、撹拌槽の底面部と側面部とがなす角部に於いて、固体の撹拌対象物が詰まることがあるため、好ましくない。
【実施例0076】
(実施例1)
本実施例では、図1及び図2に示す撹拌装置1を用いて、撹拌対象物としてのコーヒー粕、茶粕及び水の撹拌を行った。尚、撹拌装置1の仕様は以下の通りとした。
撹拌槽11の直径:600mm
撹拌槽11の容量:200L
撹拌パドル13のサイズ:縦65mm、横300mm、厚さ9mm
撹拌パドル13bの撹拌面の総面積:78000mm
撹拌パドル13bの撹拌面の面積の、撹拌槽11に於ける長手方向の中心軸を通る断面の最大断面積に対する割合:15%
回転軸12から撹拌パドル13bの最先端部までの最大距離の、回転軸12から撹拌槽11の内壁面までの最小距離に対する割合:95%
撹拌パドル13bと撹拌槽11の内壁面との間の隙間:15mm
【0077】
先ず、撹拌装置1のモータ15を駆動させ、回転軸12を回転させることで撹拌部材13を回転軸12の軸芯回りに回転させた。続いて、液体投入口17から撹拌槽11の内部に水を投入した。水の投入後、固体投入口16から撹拌槽11の内部にコーヒー粕(水分率66質量%、固形物率34質量%)及び茶粕(水分率76質量%、固形物率24質量%)を一度に投入した。
【0078】
尚、撹拌部材13の回転速度は、コーヒー粕、茶粕及び水の投入後に於いて、5min-1となる様に設定した。また、コーヒー粕の投入量は29.4kg、茶粕の投入量は41.7kg、水の投入量は128.9kgとした。コーヒー粕、茶粕及び水の投入後の撹拌対象物の液面高さは、撹拌槽11の直径(撹拌槽11の内部に於ける底面から天面までの高さ)に対し、72%とした。また、コーヒー粕及び茶粕の固形分からなる固体の撹拌対象物の質量割合は、撹拌対象物の全質量に対し10質量%であった。
【0079】
コーヒー粕及び茶粕を投入し、撹拌が30分経過した後の、コーヒー粕、茶粕及び水の撹拌の程度について目視にて確認を行った。その結果、30分経過後の撹拌状態は良好であり、コーヒー粕、茶粕及び水は均一に混合されていた。
【0080】
また、30分経過した後の撹拌対象物の粘度についても測定した。撹拌対象物の粘度の測定は、ブルックフィールドデジタル粘度計LVDV-I+(型番、英弘精機株式会社製)を用いて行った。その結果、撹拌対象物の粘度は105,000cPであった。これにより、撹拌対象物が高粘度の状態になっても、撹拌装置1での撹拌が良好に行えることが確認された。
【0081】
(実施例2)
本実施例では、コーヒー粕(水分率66質量%、固形物率34質量%)の投入量を38.2kg、茶粕(水分率76質量%、固形物率24質量%)の投入量を54.2kg、水の投入量を107.6kgとし、コーヒー粕及び茶粕の固形分からなる固体の撹拌対象物の質量割合を、撹拌対象物の全質量に対し13質量%に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、コーヒー粕、茶粕及び水の撹拌を行った。
【0082】
その結果、コーヒー粕及び茶粕を投入し、撹拌が30分経過した後の、コーヒー粕、茶粕及び水の撹拌状態は良好であり、これらの撹拌対象物が均一に混合されていることが目視で確認できた。また、30分経過した後の撹拌対象物の粘度は235,000cPであり、撹拌対象物が極めて高粘度の状態になっても、撹拌装置1での撹拌が良好に行えることが確認された。
【0083】
(実施例3)
本実施例では、コーヒー粕(水分率66質量%、固形物率34質量%)の投入量を88.2kg、水の投入量を111.8kgとし、コーヒー粕の固形分からなる固体の撹拌対象物の質量割合は、撹拌対象物の全質量に対し15質量%に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、コーヒー粕及び水の撹拌を行った。
【0084】
その結果、コーヒー粕を投入し、撹拌が30分経過した後の、コーヒー粕及び水の撹拌状態は良好であり、これらの撹拌対象物が均一に混合されていることが目視で確認できた。また、30分経過した後の撹拌対象物の粘度は1,776cPであり、撹拌装置1での撹拌が良好に行えることが確認された。
【0085】
(実施例4)
本実施例では、コーヒー粕(水分率66質量%、固形物率34質量%)の投入量を117.6kg、水の投入量を82.4kgとし、コーヒー粕の固形分からなる固体の撹拌対象物の質量割合は、撹拌対象物の全質量に対し20質量%に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、コーヒー粕及び水の撹拌を行った。
【0086】
その結果、コーヒー粕を投入し、撹拌が30分経過した後の、コーヒー粕及び水の撹拌状態は良好であり、これらの撹拌対象物が均一に混合されていることが目視で確認できた。また、30分経過した後の撹拌対象物の粘度は82,000Pであり、撹拌対象物が高粘度の状態になっても、撹拌装置1での撹拌が良好に行えることが確認された。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【符号の説明】
【0089】
1、2 撹拌装置
11、31、32 撹拌槽
12 回転軸
13、19、21~27 撹拌部材
13a、19a、21a~27a 支柱
13b、19b、21b~24b、26b、27b 撹拌パドル
25b 第1撹拌パドル
25c 第2撹拌パドル
15 モータ
16 固体投入口
17 液体投入口
18 取出し口
22c 切り欠き部
27c 開口部
33 固体投入口

図1
図2
図3
図4
図5
図6