(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121803
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】貫通電極部材、収容ボックス、車両用ワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
H02G 9/10 20060101AFI20220815BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20220815BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20220815BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20220815BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20220815BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20220815BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20220815BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20220815BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20220815BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220815BHJP
【FI】
H02G9/10
H02G3/22
H02G1/06
H05K7/00 K
H05K7/00 M
H01R4/38 B
B60M7/00 X
B60L53/12
B60L53/30
B60L50/53
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018704
(22)【出願日】2021-02-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和2年度国土技術政策総合研究所 「令和2年度」委託研究、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】新藤 竹文
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】城本 政一
(72)【発明者】
【氏名】唐木 健次
(72)【発明者】
【氏名】渡部 敬史
【テーマコード(参考)】
4E352
5E012
5G352
5G363
5G369
5H125
【Fターム(参考)】
4E352AA01
4E352AA02
4E352AA18
4E352BB02
4E352BB10
4E352BB15
4E352CC02
4E352CC04
4E352CC12
4E352CC34
4E352DD01
4E352DR11
4E352DR40
4E352FF01
4E352GG04
5E012BA12
5G352CD11
5G352CG02
5G363AA01
5G363AA16
5G363BA01
5G363BA10
5G363CB01
5G369AA05
5G369AA19
5G369BA06
5G369CB01
5G369DD02
5G369EA02
5H125AA01
5H125AC04
5H125FF15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボックス本体の内外で配線を電気的に接続し、内部への水の浸入を確実に抑え、施工の容易化と、短工期化を図る貫通電極部材を提供する。
【解決手段】内部に電気機器が収容可能なボックス本体21の壁部23に形成された貫通孔25に設けられる貫通電極部材30であって、貫通孔25にネジ軸部31aが挿通され、導電性材料から形成されているボルト31と、導電性材料から形成されているナット32と、ネジ軸部31aが挿通された第一シールリング33と、ボルト31の頭部31bと第一シールリング33との間に挟み込まれ、ボックス内配線42が接続されるとともにネジ軸部31aが挿通された環状の第一端子35と、ナット32と壁部23との間に挟み込まれ、ネジ軸部31aが挿通された第二シールリング34と、ボックス外配線80が接続されるとともにネジ軸部31aが挿通された環状の第二端子36と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電気機器が収容可能なボックス本体の壁部に形成された貫通孔に設けられる貫通電極部材であって、
ネジ軸部、及び前記ネジ軸部の一端に形成された頭部を有し、前記貫通孔に前記ネジ軸部が挿通され、導電性材料から形成されているボルトと、
前記壁部を挟んで前記ボルトの前記頭部とは反対側で前記ネジ軸部に装着され、導電性材料から形成されているナットと、
前記ボルトの前記頭部と前記壁部との間に挟み込まれ、前記ネジ軸部が挿通された第一シールリングと、
前記ボルトの前記頭部と前記第一シールリングとの間に挟み込まれ、第一配線が接続されるとともに前記ネジ軸部が挿通された環状の第一端子と、
前記ナットと前記壁部との間に挟み込まれ、前記ネジ軸部が挿通された第二シールリングと、
前記ナットと前記第二シールリングとの間に挟み込まれ、第二配線が接続されるとともに前記ネジ軸部が挿通された環状の第二端子と、を備える
ことを特徴とする貫通電極部材。
【請求項2】
前記第一シールリング、及び前記第二シールリングは、前記ボルトと前記ナットとを締結した場合に、前記ネジ軸部の軸方向に弾性変形可能な材料から形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の貫通電極部材。
【請求項3】
前記第一シールリング、及び前記第二シールリングの少なくとも一方と前記壁部との境界部に形成され、止水性を有するコーキング部、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の貫通電極部材。
【請求項4】
内部に電気機器が収容可能な中空状のボックス本体と、
請求項1から3のいずれか一項に記載の貫通電極部材と、を備える
ことを特徴とする収容ボックス。
【請求項5】
車両の走行路の走行面を形成する路面形成部材と、
前記走行面よりも下方に設けられ、前記車両にワイヤレスで給電する送電電極と、
前記路面形成部材に埋設された請求項4に記載の前記収容ボックスと、
前記貫通電極部材を介して前記収容ボックス内の前記電気機器と前記送電電極とを接続する電極配線と、を備える
ことを特徴とする車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項6】
他の前記貫通電極部材を介して前記収容ボックス内の前記電気機器と、前記収容ボックス外の接地部とを接続する接地配線、を更に備える
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用ワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通電極部材、収容ボックス、車両用ワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、中空のボックスの内部側の配線と外部側の配線とを電気的に接続するため、ボックスの壁部を貫通するネジ軸と、ネジ軸の両端にそれぞれ装着されたナットとを用いる端子金具の構成が開示されている。この構成において、ネジ軸は、ボックスの壁部に形成された貫通孔に挿通される。ボックスの内部側の配線、外部側の配線は、それぞれ、ナットとボックスの壁部との間に挟み込まれるようになっている。
【0003】
ところで、例えば、内部に各種の電気機器が収容されるボックス(ハンドホールと称されることもある)を、道路中に埋設することがある。このようなボックスは、道路に大量の雨水が染み込んだ場合、ボックスが実質的に水没した状態となることがある。このような場合、特許文献1に開示されたような構成では、ボックスの貫通孔とボルトとの隙間を通してボックスの外部から内部に水が浸入してしまい。その結果、ボックスに収容された電気機器が損傷してしまう可能性がある。このため、貫通孔とボルトとの隙間をコーキング材等でシールすることも行われるが、施工の手間が掛かるうえに、コーキング材が硬化するまで養生しなければならず、工期の長期化にも繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ボックス本体の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックス本体の内外で配線を電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることが可能な、貫通電極部材、収容ボックス、車両用ワイヤレス給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の貫通電極部材は、内部に電気機器が収容可能なボックス本体の壁部に形成された貫通孔に設けられる貫通電極部材であって、ネジ軸部、及び前記ネジ軸部の一端に形成された頭部を有し、前記貫通孔に前記ネジ軸部が挿通され、導電性材料から形成されているボルトと、前記壁部を挟んで前記ボルトの前記頭部とは反対側で前記ネジ軸部に装着され、導電性材料から形成されているナットと、前記ボルトの前記頭部と前記壁部との間に挟み込まれ、前記ネジ軸部が挿通された第一シールリングと、前記ボルトの前記頭部と前記第一シールリングとの間に挟み込まれ、第一配線が接続されるとともに前記ネジ軸部が挿通された環状の第一端子と、前記ナットと前記壁部との間に挟み込まれ、前記ネジ軸部が挿通された第二シールリングと、前記ナットと前記第二シールリングとの間に挟み込まれ、第二配線が接続されるとともに前記ネジ軸部が挿通された環状の第二端子と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、ボックス本体の壁部を挟んで配置される第一配線と第二配線とが、第一端子、ボルト、ナット、及び第二端子を介して電気的に接続される。第一端子、第二端子と壁面との間には、第一シールリング、第二シールリングが挟み込まれるので、壁部の貫通孔を通して、ボックスの外部から内部に水が侵入することが抑えられる。また、第一シールリング、第二シールリングを挟み込み、ボルト及びナットを締め付けるのみで止水性が確保されるので、施工を容易、かつ短工期で行うことができる。このようにして、ボックス本体の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックス本体の内外で配線を電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明の貫通電極部材は、前記第一シールリング、及び前記第二シールリングが、前記ボルトと前記ナットとを締結した場合に、前記ネジ軸部の軸方向に弾性変形可能な材料から形成されている。
【0009】
このような構成によれば、ボルトとナットを締結することで、第一シールリング、第二シールリングが、ネジ軸部の軸方向に弾性変形して圧縮される。これにより、第一シールリング、第二シールリングを、壁面や、第一端子、第二端子に密着させることができる。したがって、貫通電極部材が設けられた部分において、高いシール性を容易に確保することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の貫通電極部材は、前記第一シールリング、及び前記第二シールリングの少なくとも一方と前記壁部との境界部に形成され、止水性を有するコーキング部、をさらに備える。
【0011】
このような構成によれば、第一シールリング、及び第二シールリングの少なくとも一方と壁部との境界部に形成したコーキング部により、より高い止水性を確保することができる。
【0012】
本発明の収容ボックスは、内部に電気機器が収容可能な中空状のボックス本体と、上記したような貫通電極部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、貫通電極部材を介して、ボックス本体の内外で配線を電気的に接続することができる。これにより、ボックス本体の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックス本体の内外で配線を電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることが可能となる。
【0014】
本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、車両の走行路の走行面を形成する路面形成部材と、前記走行面よりも下方に設けられ、前記車両にワイヤレスで給電する送電電極と、前記路面形成部材に埋設され、上記したような前記収容ボックスと、前記貫通電極部材を介して前記収容ボックス内の前記電気機器と前記送電電極とを接続する電極配線と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、電極配線と収容ボックスの内部に配置された電気機器とを、貫通電極部材を介して電気的に接続することができる。これにより、ボックス本体の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックス本体の内外で配線を電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることができる収容ボックスを備えた車両用ワイヤレス給電システムを提供することが可能となる。
【0016】
本発明の一態様においては、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、他の前記貫通電極部材を介して前記収容ボックス内の前記電気機器と、前記収容ボックス外の接地部とを接続する接地配線、をさらに備える。
【0017】
このような構成によれば、収容ボックスの外部に配置された接地配線と、収容ボックスの内部に配置された電気機器とを、他の貫通電極部材を介して、止水性を確保しつつ、電気的に接続することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボックス本体の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックスの外部の配線と内部の配線とを電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ワイヤレス給電システムの構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の車両用ワイヤレス給電システムに備えられた収容ボックスを示す図であり、
図1のI-I矢視断面図である。
【
図3】
図2の収容ボックスに備えられた貫通電極部材の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る貫通電極部材の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明による貫通電極部材、収容ボックス、車両用ワイヤレス給電システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係る車両用ワイヤレス給電システムの構成を示す断面図を
図1に示す。
図1に示す車両用ワイヤレス給電システム1は、走行路2を走行する車両100に対し、ワイヤレス給電を行う。給電対象となる車両100は、例えば、電気自動車である。走行路2は、例えば、高速道路、一般道路等の道路である。車両100は、走行路2の走行面F上を、走行路2の延伸方向Daに沿って走行する。車両用ワイヤレス給電システム1は、走行路2を形成する路面形成部材3と、送電電極5と、収容ボックス20と、給電装置60と、を主に備えている。
【0022】
図2は、
図1の車両用ワイヤレス給電システムに備えられた収容ボックスを示す図であり、
図1のI-I矢視断面図である。
図2に示すように、路面形成部材3は、表層部4と、路盤6と、グランド部(接地部)7と、を主に備えている。これら表層部4、路盤6、グランド部7は上方から下方に向けて積層されている。
【0023】
表層部4は、車両100が走行する走行面Fを形成する。表層部4は、車両100の重量や走行時の振動に耐え得る強度を持ち、且つ、効率低下の点から比較的薄い素材であることが好ましい。表層部4は、吸水性が少ない材料から形成するのが好ましい。このような表層部4は、例えば、アスファルト材料又はセメント系材料に、骨材としてセラミックス系材料、シリコン系材料(例えばガラス)のうちの少なくとも一種を混入させた素材からなる。ここで、アスファルト材料又はセメント系材料に混入させる骨材としては、セラミックス系材料、シリコン系材料に限らず、比誘電率及び誘電正接の少なくとも一方が、一般的な骨材よりも小さい物質を採用することもできる。表層部4としては、これ以外にも、アスファルト材料、コンクリート材料、セラミックス材料、プラスチック、発泡スチロール等を適用することができる。また、これら材料から表層部4が構成される場合には、表層部4は、単一の素材で構成されているだけでなく、複数の素材を複層したもの、あるいは複合したものであってもよい。また、表層部4は、金属繊維など導電性が高い物質をコンクリート等に混入し、電気抵抗を低くした部材からなるものであってもよい。
【0024】
路盤6は、送電電極5の下側に配置されている。路盤6は、上下方向に所定の厚さを有している。路盤6は、絶縁性の素材からなると共に、誘電損失が少ない素材から形成するのが好ましい。路盤6は、上方から下方へ水を通す通水性を有しているのが好ましい。路盤6は、具体的には、セラミックス材料(例えばセラミックス)、及びシリコン系材料(例えばガラス)の少なくとも一種を含む礫材によって形成するのが好ましい。路盤6は、セラミックス材料の礫材のみ、シリコン系材料の礫材のみ、あるいはセラミックス材料の礫材とシリコン系材料の礫材とを混合させたものであってもよい。路盤6は、上記の材料に加えて、さらに他の材料を含んでいてもよい。路盤6は、他の材料として砕石を含むことも可能である。また、路盤6は、上記材料に加え、上記材料の下側に配置され上記材料を下方から支持し、上方から下方へ水を通す流路を有する路盤支持ユニットを含んでもよい。路盤6を通過して下方にたまった水を道路外に排出するため、道路の一定区間ごとに例えば雨水の排水管に接続する排水管(図示せず)を路盤6の下方に設けてもよい。
【0025】
グランド部7は、路盤6の下側に配置されている。グランド部7は、路盤6を下方から支持する。グランド部7は、例えば、支持地盤である。
なお、上記の表層部4、路盤6、グランド部7については、その具体的な材質、構成を適宜変更可能である。
【0026】
送電電極5は、走行面Fよりも下方に配置されている。本実施形態において、送電電極5は、表層部4の下側に配置されている。
図1に示すように、送電電極5は、走行面Fの幅方向Dw(延伸方向Daに交差する方向)に間隔を開けて二本一対で配置されている。二本一対の送電電極5として、幅方向Dwに間隔を開けて第一導体5A及び第二導体5Bが配置されている。第一導体5Aと第二導体5Bとの間は、路盤6により絶縁が図られている。路盤6は、送電電極5(第一導体5A、第二導体5B)とグランド部7との間に発生する誘電損失を抑える。
第一導体5A、第二導体5Bは、板形状、シート形状に形成されている。第一導体5A及び第二導体5Bは、ワイヤレス給電を行うための電力の送電路であり、例えば、走行路2の延伸方向Daに沿って帯板状に延びている。第一導体5A及び第二導体5Bは、延伸方向Daに所定長を有している。第一導体5A及び第二導体5Bは、延伸方向Daに沿って、複数組が並べて配置されている。
【0027】
第一導体5A及び第二導体5Bは、高周波電力のスキンデプスを十分満足する厚みを有する、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料から形成されている。第一導体5A及び第二導体5Bは、その表面が、防水被覆(図示無し)によって覆われている。防水被覆(図示無し)は、例えば防水ゴムをはじめとする、適宜公知の防水材料によって形成されている。
【0028】
図2の例では、第一導体5A及び第二導体5Bは、例えば、路盤6と表層部4との境界部分に埋設されている。第一導体5A及び第二導体5Bは、表層部4に埋設されていてもよい。また、第一導体5A及び第二導体5Bは、路盤6に埋設されていてもよい。
【0029】
収容ボックス20は、路面形成部材3に埋設されている。
図1に示すように、収容ボックス20は、延伸方向Daで前後する第一導体5A及び第二導体5Bの間に配置されている。収容ボックス20は、幅方向Dwにおいて、各組の第一導体5Aと第二導体5Bとの間に配置されている。収容ボックス20は、給電装置60から送給される電力を、第一導体5A及び第二導体5Bに供給する。
【0030】
給電装置60は、外部の一般配電網等から供給される電力を、各収容ボックスに送給する。給電装置60は、変圧器61と、高周波電源62と、給電制御部63と、を備えている。変圧器61は、外部から供給される電力の電圧を、高周波電源62に入力する所定の電圧に変圧する。高周波電源62は、変圧器61から入力される電力から、定められた周波数域の高周波電力を生成する。給電制御部63は、高周波電源62から入力される高周波電力を、収容ボックス20を介して、収容ボックス20の前後に位置する第一導体5A及び第二導体5Bに供給する。なお、給電装置60は、走行路2に配置された複数の収容ボックス20に、電力を分配して供給するようにしてもよい。
【0031】
給電装置60と、収容ボックス20とは、電源配線65を介して接続されている。収容ボックス20と、第一導体5A、第二導体5Bのそれぞれとは、電極配線82を介して接続されている。
【0032】
図2に示すように、上記収容ボックス20は、ボックス本体21と、蓋体22と、貫通電極部材30と、を備えている。
ボックス本体21は、壁部23として、側壁23aと、底壁23bと、を有している。側壁23aは、上下方向に延びる筒状を成している。底壁23bは、上下方向に交差する面に沿って配置され、側壁23aの下方を閉塞している。これにより、ボックス本体21は、上方に開口を有する有底筒状に形成されている。このようなボックス本体21は、コンクリート系材料、樹脂系材料等、絶縁性を有した材料から形成されている。ボックス本体21は、絶縁性の高さから、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、および天然ゴムなど絶縁性の高い高分子材料で形成するのが好ましい。
【0033】
また、ボックス本体21の内周面には、防湿性断熱材(図示無し)を配置することで、結露発生を抑制するのが好ましい。ボックス本体21の底壁23b上には、例えばセラミックス製砕石など吸水性の少ない断熱材を設置することで、結露発生を抑制するのが好ましい。
【0034】
蓋体22は、ボックス本体21の上部の開口を閉塞する。蓋体22は、ボックス本体21の開口に対して開閉可能(着脱可能)に構成されている。蓋体22は、走行面Fに露出するように配置されている。蓋体22とボックス本体21の開口との間には、止水性を有するシールパッキン等が配置されている。
【0035】
このような収容ボックス20のボックス本体21の内部には、電気機器40が収容可能とされている。本実施形態では、ボックス本体21の内部には、電気機器40として、例えば、給電装置60から送給される高周波電力のインピーダンスを、第一導体5A、第二導体5Bに合わせて調整する、インピーダンス整合回路が収容されている。ここでは、インピーダンス整合回路の具体的な構成について、何ら限定するものではない。また、ボックス本体21内に収容する電気機器40としては、インピーダンス整合回路に限らず、適宜他の電気機器を収容してもよい。例えば、上述した給電装置60の構成例として示した、変圧器61、高周波電源62、給電制御部63のいずれか、又はいずれかの組合せを電気器機40として収容してよい。
【0036】
ボックス本体21の内部の電気機器40に電力を供給する電源配線65は、側壁23aを貫通して、ボックス本体21の内部に導設されている。電源配線65は、絶縁性を有した被覆65sを有している。電源配線65は、電気機器40に直接接続されている。電源配線65が側壁23aを貫通する部分には、リング状の防水コネクタ68等が配置され、止水性が確保されている
【0037】
貫通電極部材30は、ボックス本体21内の電気機器40と、ボックス本体21外のボックス外配線(第二配線)80とを接続する。本実施形態において、ボックス外配線80として、上記電極配線82と、接地配線83とが配置されている。これにともない、本実施形態において、収容ボックス20には、複数の貫通電極部材30が備えられている。複数の貫通電極部材30のうち、第一の貫通電極部材30Aは、電極配線82と電気機器40とを接続する。本実施形態において、電極配線82は、収容ボックス20に対して延伸方向Daの前後に配置された二組の第一導体5A及び第二導体5Bのそれぞれに接続されている。つまり、電極配線82は、計4本設けられている。それぞれの電極配線82を、ボックス本体21内の電気機器40に接続するため、第一の貫通電極部材30Aは、計4個備えられている。なお、電極配線82は、第一導体5A、第二導体5Bのそれぞれに2本ずつ備えるようにしてもよい。この場合、電極配線82、及び第一の貫通電極部材30Aは、計8組備えられる。
また、第二の貫通電極部材(他の貫通電極部材)30Bは、グランド部7に接地された接地配線83と電気機器40とを接続する。
【0038】
ボックス本体21内には、電気機器40と各貫通電極部材30とを接続する複数本のボックス内配線(第一配線)42が配置されている。本実施形態において、複数のボックス内配線42として、第一ボックス内配線42Aと、第二ボックス内配線42Bと、が配置されている。第一ボックス内配線42Aは、電気機器40と、第一の貫通電極部材30Aとを接続する。第二ボックス内配線42Bは、電気機器40と、第二の貫通電極部材30Bとを接続する。
【0039】
各貫通電極部材30(第一の貫通電極部材30A、第二の貫通電極部材30B)は、ボックス本体21の壁部23(側壁23aや底壁23b)に配置されている。第一の貫通電極部材30Aは、ボックス本体21の側壁23aに配置されている。第二の貫通電極部材30Bは、ボックス本体21の底壁23bに配置されている。
【0040】
図3は、
図2の収容ボックスに備えられた貫通電極部材の構成を示す断面図である。
図3に示すように、各貫通電極部材30は、ボルト31と、ナット32と、第一シールリング33と、第二シールリング34と、第一端子35と、第二端子36と、を備えている。
【0041】
ボルト31は、外周面に雄ねじ溝が形成されたネジ軸部31aと、ネジ軸部31aの一端に形成された頭部31bとを一体に有している。頭部31bは、ネジ軸部31aよりも大きな外径を有している。ボルト31の頭部31bは、壁部23に対し、例えばボックス本体21の内部側に配置されている。ボルト31のネジ軸部31aは、ボックス本体21の壁部23(側壁23a、底壁23b)に形成された貫通孔25に挿通されている。
ナット32は、壁部23を挟んでボルト31の頭部31bとは反対側、すなわちボックス本体21の外部側に配置されている。ナット32は、ネジ軸部31aに装着(螺着)されている。ボルト31及びナット32は、金属等の導電性材料から形成されている。
ここでは、ボルト31の頭部31bがボックス本体21の内部側に配置され、ナット32が、ボックス本体21の外部側に配置されるがこれに限定されない。ボルト31の頭部31bがボックス本体21の外部側に配置され、ナット32が、ボックス本体21の内部側に配置されてもよい。
【0042】
第一シールリング33は、ボルト31の頭部31bと壁部23との間に挟み込まれている。第二シールリング34は、ナット32と壁部23との間に挟み込まれている。第一シールリング33、第二シールリング34は、それぞれ、円環状で、その内側にネジ軸部31aが挿通されている。第一シールリング33、第二シールリング34は、電気絶縁性と、ボルト31とナット32とを締結した場合にネジ軸部31aの軸方向に弾性変形可能な弾性とを有した材料で形成されている。第一シールリング33、第二シールリング34は、例えば、ゴム系材料、シリコン系材料等によって形成されている。
【0043】
第一端子35は、ボルト31の頭部31bと第一シールリング33との間に挟み込まれている。第一端子35は、金属等の導電性材料から形成されている。第一端子35には、ボックス内配線42(第一ボックス内配線42A、第二ボックス内配線42B)が、圧着、ビス留め、溶接等によって接続されている。第一端子35は、円環状を成し、その内側にボルト31のネジ軸部31aが挿通されている。
【0044】
第二端子36は、ナット32と第二シールリング34との間に挟み込まれている。第二端子36は、金属等の導電性材料から形成されている。第二端子36には、ボックス外配線80(電極配線82、接地配線83)が、圧着、ビス留め、溶接等によって接続されている。第二端子36は、円環状を成し、その内側にボルト31のネジ軸部31aが挿通されている。
【0045】
このような貫通電極部材30は、ボルト31とナット32とが所定の締付力(締付トルク)で締結されている。これにより、第一シールリング33、第二シールリング34が、ネジ軸部31aの軸方向(
図3において紙面左右方向)に弾性変形して圧縮され、第一シールリング33、第二シールリング34が、壁部23や、第一端子35、第二端子36に押し付けられている。
【0046】
上述したような貫通電極部材30、収容ボックス20によれば、ネジ軸部31a、及びネジ軸部31aの一端に形成された頭部31bを有し、内部に電気機器40が収容可能なボックス本体21の壁部23に形成された貫通孔25にネジ軸部31aが挿通され、導電性材料から形成されているボルト31と、壁部23を挟んでボルト31の頭部31bとは反対側でネジ軸部31aに装着され、導電性材料から形成されているナット32と、ボルト31の頭部31bと壁部23との間に挟み込まれ、ネジ軸部31aが挿通された第一シールリング33と、ボルト31の頭部31bと第一シールリング33との間に挟み込まれ、ボックス内配線42が接続されるとともにネジ軸部31aが挿通された環状の第一端子35と、ナット32と壁部23との間に挟み込まれ、ネジ軸部31aが挿通された第二シールリング34と、ナット32と第二シールリング34との間に挟み込まれ、ボックス外配線80が接続されるとともにネジ軸部31aが挿通された環状の第二端子36と、を備えている。
【0047】
このような構成によれば、ボックス本体21の壁部23を挟んで配置されるボックス内配線42とボックス外配線80とが、第一端子35、ボルト31、ナット32、及び第二端子36を介して電気的に接続される。第一端子35、第二端子36と壁部23との間には、第一シールリング33、第二シールリング34が挟み込まれるので、壁部23の貫通孔25を通して、ボックス本体21の外部から内部に水が侵入することが抑えられる。また、第一シールリング33、第二シールリング34を挟み込み、ボルト31及びナット32を締め付けるのみで止水性が確保されるので、施工を容易、かつ短工期で行うことができる。このようにして、ボックス本体21の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックス本体21の内外で配線を電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることが可能となる。
また、ボルト31、ナット32を用いることで、高周波電力が通電する部分の断面積を容易に大きく確保することができる。
【0048】
また、第一シールリング33、及び第二シールリング34は、ボルト31とナット32とを締結した場合に、ネジ軸部31aの軸方向に弾性変形可能な材料から形成されている。
このような構成によれば、ボルト31とナット32を締結することで、第一シールリング33、第二シールリング34が、ネジ軸部31aの軸方向に弾性変形して圧縮される。これにより、第一シールリング33、第二シールリング34を、壁部23や、第一端子35、第二端子36に密着させることができる。したがって、貫通電極部材30が設けられた部分で、高いシール性を容易に確保することができる。
【0049】
また、上述したような車両用ワイヤレス給電システム1は、車両100の走行路2の走行面Fを形成する路面形成部材3と、走行面Fよりも下方に設けられ、車両100にワイヤレスで給電する送電電極5と、路面形成部材3に埋設された収容ボックス20と、第一の貫通電極部材30Aを介して収容ボックス20内の電気機器40と送電電極5とを接続する電極配線82と、を備えている。
【0050】
このような構成によれば、収容ボックス20の外部に配置された電極配線82と、収容ボックス20の内部に配置された電気機器40とを、第一の貫通電極部材30Aを介して電気的に接続することができる。これにより、ボックス本体21の内部への水の浸入を確実に抑えつつボックス本体21の内外で配線を電気的に接続するとともに、施工の容易化、短工期化を図ることができる収容ボックス20を備えた車両用ワイヤレス給電システム1を提供することが可能となる。
また、車両用ワイヤレス給電システム1では、送電電極5が走行面Fに近い位置に配置されるため、送電電極5と電気機器40とを接続する電極配線82は、雨水の路面形成部材3に侵入した雨水によって濡れやすい。このため、電極配線82の表面を伝って、第一の貫通電極部材30Aの部分に雨水が容易に到達する。これに対し、第一の貫通電極部材30Aにおける止水性を高めることで、ボックス本体21内への水の浸入を有効に抑えることができる。
さらに、車両用ワイヤレス給電システム1では、走行面F上を車両100が走行することで、路面形成部材3を介して第一の貫通電極部材30Aに振動が伝わりやすい。このような第一の貫通電極部材30Aに、ボルト31、及びナット32による接続構造を導入することで、水に加えて振動に対しても強固な接続構造を実現することができる。
【0051】
また、車両用ワイヤレス給電システム1は、第二の貫通電極部材30Bを介し、収容ボックス20内の電気機器40と、収容ボックス20外のグランド部7とを接続する接地配線83、をさらに備える。
このような構成によれば、収容ボックス20の外部に配置された接地配線83と、収容ボックス20の内部に配置された電気機器40とを、第二の貫通電極部材30Bを介して、止水性を確保しつつ、電気的に接続することができる。
【0052】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の貫通電極部材、収容ボックス、車両用ワイヤレス給電システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、
図4に示すように、上記実施形態で示した構成に加えて、第一シールリング33、及び第二シールリング34の少なくとも一方と壁部23との境界部に、コーキング部38を形成してもよい。コーキング部38は、第一シールリング33や第二シールリング34の外周部と、壁部23との境界部に、止水性を有するコーキング材を塗布することで形成される。コーキング部38は、第一シールリング33や第二シールリング34において壁部23に対向する面と、壁部23との境界部に、止水性を有するコーキング材を塗布することで形成してもよい。
【0053】
このような構成によれば、第一シールリング33、及び第二シールリング34の少なくとも一方と壁部23との境界部に形成したコーキング部38により、より高い止水性を確保することができる。
【0054】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、貫通電極部材30を用いて接続するボックス外配線80として、電極配線82、及び接地配線83を例に挙げたが、貫通電極部材30を用いて接続する配線数、配線の種類(用途)、配線数は適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、収容ボックス20の上部(蓋体22)を走行面F上に露出させるようにしたが、これに限られない。収容ボックス20は、その全体を路面形成部材3中に埋設してもよい。
また、収容ボックス20内に収容される電気機器40の用途、種類、数、構造等は適宜変更可能である。
【0055】
また、上記実施形態で示した貫通電極部材30や収容ボックス20は、車両用ワイヤレス給電システム1以外の用途にも使用可能である。
【0056】
また、車両用ワイヤレス給電システム1の各部の構成、例えば給電制御部63の構成や制御内容は適宜変更可能である。
【0057】
また、上記実施形態において、給電対象となる車両100は、電気自動車に限らず、例えば、電動カート、電動フォークリフト、電動自動運搬装置等(AGV)、新都市交通システム用の車両、物品搬送用のロボット等であってもよい。また、走行路2も、道路に限らず、AGV用の走路、新都市交通システム用の軌道、ロボットの軌道等であってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用ワイヤレス給電システム
2 走行路
3 路面形成部材
5 送電電極
7 グランド部(接地部)
20 収容ボックス
21 ボックス本体
23 壁部
25 貫通孔
30 貫通電極部材
30A 第一の貫通電極部材
30B 第二の貫通電極部材(他の貫通電極部材)
31 ボルト
31a ネジ軸部
31b 頭部
32 ナット
33 第一シールリング
34 第二シールリング
35 第一端子
36 第二端子
38 コーキング部
40 電気機器
42 ボックス内配線(第一配線)
80 ボックス外配線(第二配線)
82 電極配線
83 接地配線
100 車両
F 走行面