(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121813
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ケーサのホットメルト塗布状態検査装置
(51)【国際特許分類】
B65B 57/00 20060101AFI20220815BHJP
B65B 43/26 20060101ALI20220815BHJP
G01N 25/72 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B65B57/00 A
B65B43/26 B
G01N25/72 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018724
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】津田 洋平
【テーマコード(参考)】
2G040
3E030
【Fターム(参考)】
2G040AA07
2G040BA14
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA06
2G040DA15
2G040GA01
2G040GA07
2G040HA06
3E030AA02
3E030DA06
3E030EA02
3E030GA04
(57)【要約】
【課題】成形後のケースのホットメルトによる接着箇所の良否を高精度に検査する。
【解決手段】搬送コンベヤ4の運転速度が高速から低速に変更されると、判定部9Bは、ホットメルトHMがケース102の接着箇所2D(8箇所)に塗布されてからサーモカメラ8で熱画像が撮影するまでの経過時間txを計測し、予め保存した経過時間と温度変化に関する基礎データと経過時間txを照合して、搬送コンベヤ4が低速の場合の温度の閾値36℃を採用する。
次に、判定部9Bは、上記熱画像において各接着箇所2Dを囲繞する判定範囲A1を設定し(
図3)、そこで36℃以上となる部分の面積S2を求め、次に、8箇所全ての判定範囲A1に関して、判定範囲A1の面積S1に対する上記面積S2の比率RX1~RX8を求め、それらの比率が全て所定の閾値内であればケース102の接着箇所2Dは良品であると判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材料及び該包装材料が折り曲げられて成形されるケースを搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送される包装材料の接着箇所にホットメルトを塗布するホットメルト塗布手段と、上記包装材料の接着箇所に該包装材料のフラップを折り曲げて重合させる折り曲げ押圧手段と、上記接着箇所に重合されたフラップの温度を検出する温度検出手段と、上記温度検出手段によって検出した検出温度を基にして上記接着箇所の良否を判定する判定手段とを備えたケーサのホットメルト塗布状態検査装置において、
上記温度検出手段は、ケースの熱画像を撮影するサーモカメラからなり、
上記判定手段は、上記包装材料にホットメルトが塗布されてからの経過時間と接着箇所の良否判定のための閾値とに関する基礎データを予め保存しており、
上記判定手段は、ホットメルト塗布手段が包装材料の接着箇所にホットメルトを塗布してから上記サーモカメラでケースが撮影された時点までの経過時間を計測して、上記基礎データに基づいて上記経過時間に対応する上記閾値を設定することを特徴とするケーサのホットメルト塗布状態検査装置。
【請求項2】
上記基礎データは、上記包装材料にホットメルトが塗布されてからの経過時間と接着箇所に重合されたフラップの温度変化との関係からなり、
上記判定手段は、包装材料にホットメルトを塗布してからケースが撮影された時点までの経過時間が計測されると、上記基礎データに基づいて当該経過時間に対応する温度を閾値として設定し、さらに、サーモカメラが撮影した熱画像において接着箇所を囲繞する判定範囲を設定し、該判定範囲の面積に対する上記接着箇所の上記温度の閾値以上となる部分の面積の比率を求め、当該比率が予め設定された所定の範囲内であれば、当該検査対象となったケースの接着箇所は正常である判定することを特徴とする請求項1に記載のケーサのホットメルト塗布状態検査装置。
【請求項3】
上記基礎データは上記包装材料にホットメルトが塗布されてからの経過時間と接着箇所における所定温度での面積変化との関係からなり、
上記判定手段は、包装材料にホットメルトを塗布してからケースが撮影された時点までの経過時間が計測されると、上記基礎データに基づいて当該経過時間に対応する面積の閾値を設定し、さらに、サーモカメラが撮影した熱画像において接着箇所を囲繞する判定範囲を設定し、該判定範囲の面積に対する上記接着箇所の上記閾値の面積の比率を求め、当該比率が予め設定された所定の範囲内であれば、当該検査対象となったケースの接着箇所は正常である判定することを特徴とする請求項1に記載のケーサのホットメルト塗布状態検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーサのホットメルト塗布状態検査装置に関し、より詳しくは、シート状の包装材料を折り曲げてケースを成形し、その内部に物品を収容するケーサにおいて、ケースを成形する際に折り曲げられたフラップとその接着箇所がホットメルト(接着剤)によって正常に接着されたか否かを検査するケーサのホットメルト塗布状態検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の包装材料の所要箇所を折り曲げて、折り曲げたフラップをホットメルトで重合箇所に接着してケースを成形するようにしたケーサは公知であり、さらに、そのようなケーサにおいて、ホットメルトを塗布した接着箇所の外面の温度を温度センサによって検出し、該温度センサによる検出温度と判定温度を比較することで、ホットメルトの供給状態の良否を判定するケース検査装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されたような、いわゆる「ラップラウンドケーサ」においては、上流側および下流側に配置された処理装置の稼働状態に応じて包装材料及びケースを搬送する搬送手段の搬送速度を変更しながら運転するようになっている。具体的には、ケーサの上流側においてケース内に収容される容器の貯溜状態が十分な場合は、常用速度で搬送手段を運転し、容器の貯溜状態が不十分である場合やケーサの下流側の処理装置が停止したような場合には、搬送手段の搬送速度を落として運転する。そのため、ホットメルトの供給状態を検査する搬送領域においては、上述した事情等により搬送手段によるケースの搬送速度が加減速されることがある。また、ケースを成形する最終過程において、折り曲げた内フラップの外面にホットメルトを塗布し、そこに外フラップを折り曲げて重合させた直後は、ホットメルトの熱が外フラップの表面(外面)まで到達しきれておらず、その後に外フラップの表面温度が上昇する搬送区間が発生する。さらに、ホットメルトが内フラップの外面に塗布されてからの経過時間の変動によっても外フラップの表面の温度が変化する。
そのため、特許文献1のケース検査装置においては、ホットメルトがケースの所要箇所に塗布されてから温度センサでケースの温度検出する時点での検査条件がばらついて、高精度な検査が難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、包装材料及び該包装材料が折り曲げられて成形されるケースを搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送される包装材料の接着箇所にホットメルトを塗布するホットメルト塗布手段と、上記包装材料の接着箇所に該包装材料のフラップを折り曲げて重合させる折り曲げ押圧手段と、上記接着箇所に重合されたフラップの温度を検出する温度検出手段と、上記温度検出手段によって検出した検出温度を基にして上記接着箇所の良否を判定する判定手段とを備えたケーサのホットメルト塗布状態検査装置において、
上記温度検出手段は、ケースの熱画像を撮影するサーモカメラからなり、
上記判定手段は、上記包装材料にホットメルトが塗布されてからの経過時間と接着箇所の良否判定のための閾値とに関する基礎データを予め保存しており、
上記判定手段は、ホットメルト塗布手段が包装材料の接着箇所にホットメルトを塗布してから上記サーモカメラでケースが撮影された時点までの経過時間を計測して、上記基礎データに基づいて上記経過時間に対応する上記閾値を設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、ホットメルト塗布手段が包装材料の接着箇所にホットメルトを塗布してから上記サーモカメラでケースが撮影された時点までの経過時間が変動しても、上記基礎データに基づいて上記経過時間に対応する上記閾値を基にして、判定手段は接着箇所の良否を判定することができる。そのため、従来と比較して接着箇所の良否の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図1のサーモカメラで撮影したケースの側面の熱画像を示す図。
【
図4】
図1のケース検査装置の判定部に保存されている、ホットメルトの塗布時点からの経過時間と接着箇所の温度変化に関する基礎データを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、
図1ないし
図2において1はケーサであり、このケーサ1はいわゆる「ラップラウンドケーサ」と称されるものである。このケーサ1は、以下のようにして包装材料2を折り曲げてケース102として成形するとともに、その内部に所定数の容器3を収容するようになっている。
すなわち、本体部2Aにおける前後の側壁と天面部2Aaが鉛直上方に向けて折り曲げられて、左右両側が開放した半製品状態の包装材料2が搬送コンベヤ4によって所定間隔を維持して矢印方向に搬送されるようになっており、搬送過程における収容領域Aにおいて各包装材料2内に側方からプッシャ5によって所定数(10本)の容器3を押し込んで収容するようになっている。
容器3が収容された包装材料2は搬送コンベヤ4によるその後の搬送過程において、本体部2Aの天面部2Aaと本体フラップ2Ab、左右両側の各一対の内フラップ2Bを図示しない折り曲げ押圧手段によって直角に折り曲げられた後に、左右の両側の各内フラップ2Bの外面の4箇所(合計で8箇所)の接着箇所2Dに外方からホットメルト塗布手段6によってホットメルトHM(接着剤)が塗布されるようになっている(
図3も参照)。つまり、包装材料2の両側面に位置する合計8箇所の接着箇所2DにホットメルトHMが塗布されるようになっている。その後、左右両側にある各一対の外フラップ2Cが折り曲げ押圧手段によって折り曲げられて内フラップ2Bに重合・押圧されるようになっており、それら重合状態の両フラップ2B、2Cの合計8箇所の接着箇所2DがホットメルトHMによって接着されるようになっている。それによって、所定数の容器3を収容したケース102が成形されるようになっている。
搬送コンベヤ4の搬送過程における検査領域Bに左右一対のサーモカメラ8が配置されており、容器3を収容して成形後のケース102は、サーモカメラ8によって外フラップ2Cの外面の熱画像が撮影されるようになっている(
図3参照)。後に詳述するが、サーモカメラ8が撮影した外フラップ2Cの外面の熱画像を基にして、ホットメルトHMによる両フラップ2B、2Cにおける合計8箇所の接着箇所2Dが正常に接着されているか否かを制御装置9の判定部9Bで判定するようになっている。
制御装置9の判定部9Bによって良否が判定された後の各ケース102は、搬送コンベヤ4によって図示しない下流側の処理装置に向けて搬送されるようになっており、判定部9Bによって不良品と判定されたケース102は図示しない下流側の所定位置で搬送経路上から排除されるようになっている。
【0009】
本実施例のケーサ1は、ケースとして半製品状態の包装材料2および成形されたケース102を所要の搬送速度(運転速度)で搬送する搬送コンベヤ4と、搬送コンベヤ4の搬送過程における収容領域Aの一側に配置されて所定数の容器3を搬送コンベヤ4上の包装材料2内に押し込んで収容するプッシャ5と、搬送コンベヤ4の搬送過程における収容領域Aから検査領域Bの直前の領域にわたる上方側に配置されて、包装材料2の本体部2Aや内フラップ2B、外フラップ2C等を折り曲げて押圧する図示しない折り曲げ押圧手段と、折り曲げられた後の左右両側の内フラップ2Bの外面の接着箇所2DにホットメルトHMを射出して塗布するホットメルト塗布手段6と、検査領域Bに配置されて、外フラップ2Cが折り曲げられて内フラップ2Bに重合・押圧された後に接着箇所2Dを含めた外フラップ2Cの熱画像を撮影するサーモカメラ8と、これらの各構成要素の作動を制御するとともに、サーモカメラ8が撮影した熱画像を基にしてケース102の接着箇所2Dの良否を判定する制御装置9を備えている。
【0010】
搬送手段としての搬送コンベヤ4は、半製品状態の包装材料2及び成形後のケース102を前後で所定間隔を維持して矢印方向に搬送するようになっている。本実施例においては、搬送コンベヤ4によって包装材料2を搬送しながらそれをケース102として成形して下流側の処理装置へ搬送するようになっている。搬送コンベヤ4の搬送速度(運転速度)は、制御装置9によって制御されるようになっており、ケーサ1の運転開始時においては、制御装置9は、常用運転速度として搬送コンベヤ4を高速(例えば毎分60cm)で運転させるようになっている。制御装置9は、所要に応じて搬送コンベヤ4を常用運転速度から低速(例えば毎分48cm)に運転速度を加減速するようになっている。
搬送コンベヤ4によって搬送される包装材料2は、収容領域Aの直前までは、本体部2Aの前後の側壁、天面部2Aaが鉛直上方を向けた状態となっており、かつ、内フラップ2B、外フラップ2Cは折り曲げられていない半製品の状態で搬送コンベヤ4上に供給されて、収容領域Aへ搬送されるようになっている。
搬送コンベヤ4における上流側となる領域の隣接位置に、搬送コンベヤ4と平行に図示しない容器供給コンベヤが配置されており、この容器供給コンベヤによって所定数(例えば10本)毎の容器3がプッシャ5による供給位置Cに間欠的に供給されるようになっている。
容器3は、その内部に飲料が充填されて口部にキャップが取り付けられており、本実施例では、そのように飲料が2l充填された10本の容器3を1つのケース102に収容することを想定している。
容器供給コンベヤ上の供給位置Cと搬送コンベヤ4上とにわたってプッシャ5が進退動可能に配置されており、このプッシャ5の作動は制御装置9によって制御されるようになっている。プッシャ5は、搬送コンベヤ4の走行と同期して同一方向に移動されるとともに、供給位置C上と搬送コンベヤ4上とにわたって搬送コンベヤ4の直交方向に進退動されるようになっている。
容器供給コンベヤによって1グループ10本の容器3が供給位置Cに供給されると、後退端に位置していたプッシャ5が前進されて供給位置Cから搬送コンベヤ4に向けて前進されるので、供給位置Cの10本の容器3が収容領域Aを移動中の包装材料2内に収容されるようになっている。なお、収容領域Aにおいて容器3が収容される際に、搬送コンベヤ4上の包装材料2は、図示しない折り曲げ押圧手段によってプッシャ5とは反対側となる前後一対の内フラップ2Bが本体部2A側へ直角に折り曲げられることで、搬送方向の左側の開口は閉鎖される。その状態の包装材料2内に10本の容器3がプッシャ5によって収容されるようになっている。
収容領域Aから検査領域Bの直前の領域にわたって、搬送コンベヤ4の上方側に図示しない折り曲げ押圧手段が配置されており、この折り曲げ押圧手段の作動は制御装置9によって制御されるようになっている。
そして、10本の容器3が収容された後の包装材料2が収容領域Aを通過すると、本体部2Aの天面部2Aaと本体フラップ2Abが折り曲げ押圧手段によって直角に折り曲げられるとともに、プッシャ5側に位置した前後一対の内フラップ2Bも直角に折り曲げられる。そのため、左右両側の上下一対の外フラップ2Cだけが折り曲げられていない状態の包装材料2がホットメルト塗布手段6の位置へ搬送されるようになっている。
【0011】
収容領域Aの隣接下流側となる搬送コンベヤ4の搬送領域の両側に、左右一対のホットメルト塗布手段6が配置されており、ホットメルト塗布手段6は、制御装置9によって作動を制御されるようになっている。ホットメルト塗布手段6の隣接上流側の位置には、搬送コンベヤ4上の包装材料2を検出する検出センサ7が配置されている。
前述したプッシャ5が搬送コンベヤ4上から供給位置Cに向けて後退された後に、容器3を収容後の包装材料2が搬送コンベヤ4によって搬送されてきて検出センサ7によって検出されると、その検出信号が制御装置9に送信される。すると、制御装置9は、左右両側のホットメルト塗布手段6を同時に作動させる。
これにより、左右両側の内フラップ2Bの外面の各4箇所(合計8箇所の接着箇所2D)にホットメルト塗布手段6によって同時にホットメルトHMが射出されて塗布されるようになっている(
図3参照)。ホットメルトHMは、横長の楕円状に内フラップ2Bに塗布されるようになっており、ホットメルト塗布手段6から射出される際のホットメルトHMの温度は例えば45℃に設定されている。
また、ホットメルト塗布手段6が作動された時点の時刻、つまりホットメルトHM(接着剤)が内フラップ2Bの接着箇所2Dに塗布された時点の時刻は、制御装置9の判定部9Bへ伝達されるようになっており、その後、判定部9BはホットメルトHMの塗布の時点からのサーモカメラ8が作動されるまでの経過時間txを計測するようになっている。
【0012】
この後、ホットメルトHMが左右の内フラップ2Bの合計8箇所の接着箇所2Dに塗布された包装材料2は、搬送コンベヤ4によって検査領域Bへ搬送される直前の搬送過程において、図示しない折り曲げ押圧手段によって左右両側の前後各一対の外フラップ2Cが内フラップ2Bに向けて直角に折り曲げられてそこに重合・押圧される。これにより、左右両側の内フラップ2Bの各4箇所の接着箇所2DのホットメルトHMによって内フラップ2Bの外面と外フラップ2Cの内面が相互に接着され、全体として横長のケース102が成形されるようになっている。
【0013】
以上のようにして、搬送コンベヤ4によって包装材料2が搬送されつつ、その内部に容器3が収容されてからケース102として成形されるが、成形後のケース102に関して左右合計で8箇所のホットメルトHMによる接着箇所2Dが正常に接着されているか否かを検査する必要がある。そこで、ホットメルト塗布手段6の隣接下流側となる検査領域Bにサーモカメラ8が設けられており、サーモカメラ8によるケース102の熱画像を基にして、制御装置9の判定部9Bがケース102の接着箇所の良否を判定するようになっている。
本実施例は、包装材料2の内フラップ2Bの接着箇所2DにホットメルトHMが塗布された時点からサーモカメラ8によるケース102の外フラップ2Cの撮影時点(検査時点)までの経過時間txとホットメルトHMによる外フラップ2Cの外面の温度変化との関係に着目して、搬送コンベヤ4の運転速度が常用運転速度(高速)から加減速された場合においても、常用運転速度の場合と実質的に同じ検査条件でケース102の接着箇所2Dの良否の判定を行うことが特徴となっている。
【0014】
検査領域Bには、搬送コンベヤ4の一側から他側に向けて検査光Lを投光して搬送コンベヤ4によって搬送されてくるケース2を検出するケース検出センサ12が配置されており、そのすぐ隣接下流位置には、ケース102の左右両側の外フラップ2Cにおける接着箇所2Dの熱画像を同時に撮影するサーモカメラ8が配置されている。
左右のサーモカメラ8が撮影した接着箇所2Dの熱画像は、制御装置9の判定部9Bに送信されるようになっており、判定部9Bはサーモカメラ8による熱画像を基にして接着箇所2Dの良否を判定するようになっている。本実施例においては、ケース検出センサ12、サーモカメラ8および制御装置9の判定部9Bによってホットメルト塗布状態検査装置13が構成されている。
【0015】
ケース検出センサ12は、搬送コンベヤ4の一側から他側に向けて検査光Lを投光している。検査領域Bの隣接上流位置で前述のようにして成形されたケース102が搬送コンベヤ4によって搬送されて検査光Lが遮断されることで、ケース102が検出されるようになっている。このケース検出センサ12がケース102を検出すると、その検出信号は制御装置9へ伝達されるようになっている。
制御装置9は、上記搬送コンベヤ4、ホットメルト塗布手段6、折り曲げ押圧手段及びサーモカメラ8等の作動を制御する作動制御部9Aと、サーモカメラ8が撮影したケース102の外フラップ2Cの熱画像を基にして、接着箇所2Dの良否を判定する判定部9Bとを備えている。
作動制御部9Aは、搬送コンベヤ4の運転速度、折り曲げ押圧手段の作動、プッシャ5の作動とそのタイミング及びホットメルト塗布手段6等の作動を上述したように制御するとともに、ホットメルト塗布状態検査装置13のサーモカメラ8の作動も制御するようになっている。
ケーサ1の作動時においては、作動制御部9Aは、原則として搬送コンベヤ4を常用運転速度(高速)で作動させており、所要の場合には搬送コンベヤ4の運転速度を加減速するようになっている。
ホットメルトHMが塗布されて成形された後のケース102が搬送コンベヤ4によって搬送されてケース検出センサ12によって検出されて、ケース検出センサ12による検出信号が制御装置9へ伝達されると、作動制御部9Aは信号を受信してから所定時間t2(例えば2秒)が経過すると、左右のサーモカメラ8を作動させる。これにより、ケース検出センサ12で検出されたケース102は、その左右両側の合計8箇所の接着箇所2Dを含めた外フラップ2Cの外面の熱画像がサーモカメラ8によって同時に撮影されるようになっており、該撮影された外フラップ2Cの熱画像は制御装置9の判定部9Bに送信されるようになっている。
図3は、サーモカメラ8が撮影したケース102の左側の外フラップ2Cの外面の熱画像を示したものである。この
図3における楕円で示した4箇所が、接着箇所2Dに対応する外フラップ2Cの高温部分である。
【0016】
制御装置9の判定部9Bは、サーモカメラ8から送信された外フラップ2Cの接着箇所2Dと対応する外面の熱画像を基にして、接着箇所2Dの良否を以下のようにして判定する。
ここで、前述したように、制御装置9の判定部9Bは、上記ホットメルト塗布手段6によって当該ケース102(包装材料2)の内フラップ2Bの接着箇所2DにホットメルトHMが塗布された時点からの外フラップ2Cがサーモカメラ8で撮影されるまでの経過時間txを計測している。
そして、先ず、
図3に想像線で示すように、判定部9Bは、ホットメルトHMが塗布された合計8箇所の接着箇所2Dと対応する箇所に、接着箇所2Dを囲繞する長方形の判定範囲A1を設定するとともに、該判定範囲A1の面積S1を求めてそれを保存する。
次に、判定部9Bは、8箇所のそれぞれの判定範囲A1の接着箇所2Dについて、閾値としての所定温度以上(例えば38℃以上)である部分の面積S2を求める。
この後、判定部9Bは、8箇所のそれぞれの判定範囲A1毎に、それぞれの判定範囲A1内における閾値である所定温度(38℃)以上となった部分の面積S2と判定範囲A1の面積S1との比率RX1~RX8を求める。つまり、8箇所の接着箇所2Dと対応する判定範囲A1について、それぞれ面積の比率S2/S1の比率RX1~RX8が求める。
そして、判定部9Bは、8箇所について求めた上記比率RX1~RX8のそれぞれが、予め設定された所定の閾値内(例えば±10%以内)であるか否かを確認して、8箇所の比率RX1~RX8の1箇所でも所定の閾値から外れている場合には、当該ケース102の接着箇所2DのホットメルトHMの供給量は不足または過剰であって、当該検査対象となったケース102は不良品であると判定する。他方、8箇所の比率RX1~RX8の全てが所定の閾値内(±10%以内)であれば、判定部9Bは当該検査対象となったケース102は良品であると判定する。
以上は、ケーサ1の運転が開始されて常用運転速度(高速)で搬送コンベヤ4が運転されている場合の判定部9Bによる判定処理であるが、何らかの原因で搬送コンベヤ4が常用運転速度(高速)から低速に減速される場合がある。例えば、容器供給コンベヤによる容器供給位置Cへの容器3の供給が過剰となった場合や搬送コンベヤ4の下流側の図示しない処理装置が停止したような場合などである。
このように搬送コンベヤ4の運転速度が高速から低速に切り換えられると、常用運転速度(高速)で搬送コンベヤ4がケース102を搬送する場合と比較して、ホットメルトHMが包装材料2の内フラップ2Bの接着箇所2Dに塗布されてから検査領域Bのサーモカメラ8によって外フラップ2Cが撮影される時点までの経過時間txが遅くなる。
この経過時間txが遅くなると、接着箇所2Dに対応する箇所の熱画像における上記面積S2を求める対象となった所定温度38℃以上となる部分の面積S2は、常用運転速度(高速)で搬送コンベヤ4が走行される場合と比較すると小さくなる。つまり、サーモカメラ8でケース102の外フラップ2Cの熱画像を撮影しても、搬送コンベヤ4が常用運転速度(高速)の場合と比較すると低速の場合においては、ホットメルトHMが塗布されてからサーモカメラ8で外フラップ2Cで熱画像を撮影する際の条件が異なることになる。
そこで、本実施例においては、搬送コンベヤ4が常用運転速度(高速)から低速に切り換えられた場合には、判定部9Bは、予め設定された上記面積S2を求めるための閾値となる所定温度38℃を補正して、補正後の閾値となる温度で前述した判定処理を行うようにしている。
ここで、判定部9Bには、ケーサ1の運転前のサンプリングや過去の実績データ等を基にして、ホットメルトHMが包装材料2の接着箇所2Dに塗布されてからの経過時間と外フラップ2Cの接着箇所2Dの外面の温度変化とに関する基礎データが予め保存されている。
図4は、判定部9Bに保存されたホットメルトHMの塗布時点とその後の経過時間と温度変化とに関する基礎データを示したものである。
判定部9Bは、搬送コンベヤ4が常用運転速度(高速)から低速に切り換えられた場合には、検査対象となったケース102(包装材料2)がホットメルト塗布手段6によってホットメルトHMが塗布されてからサーモカメラ8で外フラップ2Cが撮影されるまでの経過時間txを計測しており、その経過時間txを
図4の基礎データと照らし合わせて、中速の場合の温度の閾値38℃の代わりに温度の閾値36℃を上記面積S2を求めるための閾値として採用する。
この後は、前述した常用運転速度の場合の処理と同様にして、判定部9Bは、サーモカメラ8が撮影した8箇所の接着箇所2Dと対応する箇所における補正後の温度の閾値36℃以上となる部分の面積S2をそれぞれ求めて、判定範囲A1の面積S1に対する各接着箇所2Dについて求めた面積S2の比率RX1~RX8を求める。
次に、判定部9Bは、8箇所について求めた比率RX1~RX8について、そのうちの1箇所でも所定の閾値内(±10%内)から外れている場合には、当該検査対象となったケース102の接着箇所2Dは不良品であると判定し、他方、判定部9Bは、8箇所について求めた比率RX1~RX8の全てが所定の閾値内(±10%内)であれば、当該検査対象となったケース102の接着箇所2Dは良品であると判定するようになっている。
【0017】
以上のように、本実施例のケーサ1のホットメルト塗布状態検査装置13は、何らかの原因で搬送コンベヤ4が常用運転速度(高速)から加減速された場合には、判定部9Bは、
図4に示した基礎データを参照して、包装材料2の接着箇所2DへのホットメルトHMの塗布時点からサーモカメラ8による外フラップ2Cの撮影時点までの経過時間txの変動に応じて、上記判定処理で上記面積S2を求めるための温度の閾値を補正し、該補正後の閾値を基にして良否の判定をするようになっている。
そのため、搬送コンベヤ4によるケース102(包装材料2)の搬送速度が変動してホットメルトHMの塗布時点からサーモカメラ8によるケース102の撮影時点までの経過時間txが変動した場合であっても、サーモカメラ8がケーサ102の外フラップ2Cの接着箇所2Dの対応箇所を撮影する時点の検査条件を実質的に同一にしてばらつきを抑制することができる。したがって、本実施例のホットメルト塗布状態検査装置13によれば、ケース102の接着箇所2Dの良否判定の検査精度を向上させることができる。
【0018】
なお、上記実施例においては、ケース102(包装材料2)に対するホットメルトHMの塗布時点からサーモカメラ8でケース102を撮影するまでの経過時間の変動に応じて、判定部9Bは判定処理の基礎とする比率RX1~RX8を求める際の温度の閾値を補正しているが、次のような処理を行ってもよい。つまり、ケース102(包装材料2)に対するホットメルトHMの塗布時点からサーモカメラ8でケース102を撮影するまでの経過時間の変動について、予め所定温度(例えば38℃)以上となる部分の面積と経過時間とに関して基礎データを作成してそれを判定部9Bに保存しておき、判定部9Bは、判定処理の際に予め保存した面積と経過時間とに関する基礎データと、サーモカメラ8で撮影したケース102における経過時間txを基礎データで照合して、経過時間txに応じた面積を上記判定処理をする際の補正後の面積の閾値とし採用し、それを基にして上述した良否の判定処理をするようにしても良い。
また、ケーサ1が配置されている建物内の室温の変化及びその時の外気温の変動に応じて、判定部9Bによる判定処理の基礎とする比率RXを求める際の温度の閾値を補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1…ケーサ 2…包装材料
2A…本体部 2B…内フラップ
2C…外フラップ 2D…接着箇所
3…容器(物品) 4…搬送コンベヤ(搬送手段)
6…ホットメルト塗布手段 8…サーモカメラ(温度センサ)
9…制御装置 9B…判定部(判定手段)
13…ホットメルト塗布状態検査装置
102…ケース