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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121822
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】異物防護装置、及び異物防護方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018738
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】592093833
【氏名又は名称】青山機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】速水 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 英俊
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054EA07
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち特許文献1に示されるような従来技術よりも低コストで、掘削に伴う異物(砂礫など)による拡張パッキンの拡張阻害を抑制することができる異物防護装置と、これを用いた異物防護方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の異物防護装置は、シールドマシンの掘削に伴って生じる異物から発進坑口に設置される拡張式パッキンを防護するもので、遮蔽体を備えたものである。この遮蔽体は、水を流過させるが異物は通過させない機能を有するものである。本願発明の異物防護装置は発進坑口に設置され、シールドマシンのカッタ回転部と拡張式パッキンとの間にある遮蔽体が、拡張式パッキンの拡張動作を阻害するような異物の通過を防ぐ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンの掘削に伴って生じる異物から、発進坑口又は到達坑口に設置される拡張式パッキンを防護する異物防護装置であって、
水を流過させるが前記異物は通過させない遮蔽体を、備え、
前記拡張式パッキンより地山側であって、前記シールドマシンのスキンプレート外周の一部又は全部に対応するように、前記発進坑口又は前記到達坑口に設置され、
前記シールドマシンのカッタ回転部と前記拡張式パッキンとの間にある前記遮蔽体が、該拡張式パッキンの拡張動作を阻害する前記異物の通過を防ぐ、
ことを特徴とする異物防護装置。
【請求項2】
前記遮蔽体が、複数の線材によって形成されるブラシ状である、
ことを特徴とする請求項1記載の異物防護装置。
【請求項3】
シールドマシンの掘削に伴って生じる異物から、発進坑口又は到達坑口に設置される拡張式パッキンを、異物防護装置によって防護する方法であって、
前記拡張式パッキンより地山側であって、前記シールドマシンのスキンプレート外周の一部又は全部に対応するように、前記異物防護装置を前記発進坑口又は前記到達坑口に設置する異物防護装置設置工程と、
前記発進坑口から地山に向かって、又は地山から前記到達坑口に向かって、前記シールドマシンによる掘削を行う掘削工程と、を備え、
前記異物防護装置は、水を流過させるが前記異物は通過させない遮蔽体を、有し、
前記掘削工程において、前記シールドマシンのカッタ回転部と前記拡張式パッキンとの間にある前記遮蔽体が、該拡張式パッキンの拡張動作を阻害する前記異物の通過を防ぐ、
ことを特徴とする異物防護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シールドマシンの発進坑口や到達坑口内に設置される拡張式パッキンに関する技術であり、より具体的には、拡張パッキンの拡張を阻害するような異物をこの拡張パッキンまで移動させない異物防護装置と、これを用いた異物防護方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、トンネル切羽の安定を図りつつシールドマシンで地中を掘進し、セグメントで覆工することによって、地下に鉄道トンネルや道路トンネル、上下水道用のトンネル、共同溝や電力通信用のトンネルなどを構築する工法である。
【0003】
シールド工法によって構築されるトンネル(以下、単に「シールドトンネル」という。)は地表面よりも深い位置で計画されることから、シールドトンネルの起点側にはシールドマシンを掘進深さまで降ろすための発進立坑が形成され、一方、シールドトンネルの終点側にはシールドマシンを地上に引き上げるための到達立坑が形成されるのが一般的である。
【0004】
シールドトンネルの掘進を行うにあたっては、当然ながら発進立坑内の掘進深さ(以下、「発進坑口」という。)にシールドマシンを設置する必要があり、通常は分割されたシールドマシンを地上から吊下ろして発進坑口で組み立てている。シールドマシンが組み立てられると発進坑口から地山に向かって掘進していくが、この掘進に伴って発進坑口には地下水や土砂が流入してくる。発進坑口への地下水や土砂の流入を許容すると、発進立坑が水没することによって作業員の人的災害が生じるおそれがあり、また地山が崩壊することによって周辺環境に相当な悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
そこで図6に示すように、発進坑口にパッキンを設置することがある。発進坑口に設けられたリング状の坑口金物の内周側にパッキンを取り付け、このパッキンがシールドマシンの外周(つまりスキンプレート)と坑口金物との隙間を閉鎖することによって、発進坑口への地下水や土砂の流入を防ぐわけである。ただし、シールドマシンのカッタ回転部がパッキンを通過するときにこのパッキンに干渉してしまうこともあり、この場合は拡張式パッキンが好んで使用される。
【0006】
図7は、拡張式パッキンの動作の例を模式的に示すステップ図であり、図6に示す「A部」の拡大断面図である。図7(a)に示すように、はじめ拡張パッキンは坑口金物に沿うような位置にあり、スキンプレートと坑口金物との間には所定の隙間が生じている。これにより、カッタ回転部が拡張パッキンに干渉することなくシールドマシンは地山側に前進していくことができる。カッタ回転部が通過すると、図7(b)に示すように拡張パッキンが拡張し、スキンプレートと坑口金物との隙間が閉鎖される。これにより、シールドマシンの掘進中に生じる地下水や土砂が発進坑口に流入することを防ぐことができる。
【0007】
カッタ回転部が拡張パッキンを通過すると若干の掘進が行われることとなり、すなわちある程度は掘削土砂が発進坑口に流入することもある。この場合、発進坑口に、特に拡張パッキン周辺に砂礫などが堆積していることもあり、その状態から拡張パッキンが拡張すると図8に示すようにスキンプレートと坑口金物との隙間が十分閉鎖されない結果となる。このようにスキンプレートと拡張パッキンとの間に砂礫が挟まった状態では地下水の流入を許してしまい、発進立坑が水没するおそれもあることから作業員の安全を考えると回避しなければならない。
【0008】
これまでにも、発進立坑内への地下水の流入を課題とした対策技術が示されており、例えば特許文献1では、円筒形立坑のリング状鋼板に取り付けられたワイヤーブラシパッキンによって地下水の流入を防止する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3190336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示される技術は、円筒形立坑内への地下水侵入を防止することを課題としており、これを解決するためにワイヤーブラシパッキン(あるいはパッキンシーリングチューブ)が掘進マシン外周に三次元状態に接触する構成としている。そして、当然ながらワイヤーブラシパッキンやパッキンシーリングチューブは止水可能な構造とされる。
【0011】
ところで、ワイヤーブラシのみで止水することは通常は考え難い。そこで特許文献1でも、「ワイヤーブラシパッキン200内にはグリス材21が充填される。(段落番号[0019])」こととしている。しかしながら、ワイヤーブラシパッキン200内にグリス材21を充填することで止水機能を果たすためには、相当量のグリス材21を必要とするうえ、その充填装置も設置しなければならないことから、止水のために相当のコストや手間がかかることとなる。また、仮にワイヤーブラシのみで止水する場合は、袋状の材料でワイヤーブラシを覆う構造としたり、相当に密なワイヤー配置構造としたりするなど、いずれにしろ特別なワイヤーブラシを利用することが考えられ、やはりその調達費用は押し上げられる。さらに、掘進マシン外周に三次元状態に接触することから、ワイヤーブラシは掘進マシンの全周にわたって設置されることとなり、この点においても止水のために相当のコストや手間がかかる。
【0012】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち特許文献1に示されるような従来技術よりも低コストで、掘削に伴う異物(砂礫など)による拡張パッキンの拡張阻害を抑制することができる異物防護装置と、これを用いた異物防護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、拡張パッキンが拡張するまでの短期間だけ砂礫などの流入を防止することとし、したがって地下水の流過は許容するが砂礫などは通過させない遮蔽体を利用する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0014】
本願発明の異物防護装置は、シールドマシンの掘削に伴って生じる異物から発進坑口(あるいは到達坑口)に設置される拡張式パッキンを防護するもので、遮蔽体を備えたものである。この遮蔽体は、水を流過させるが異物は通過させない機能を有するものである。本願発明の異物防護装置は、拡張式パッキンより地山側であってシールドマシンのスキンプレート外周の一部(あるいは全部)に対応するように、発進坑口(あるいは到達坑口)に設置される。これにより、シールドマシンのカッタ回転部と拡張式パッキンとの間にある遮蔽体が、拡張式パッキンの拡張動作を阻害するような異物の通過を防ぐことができる。
【0015】
本願発明の異物防護装置は、複数の線材によって形成されるブラシ状の遮蔽体を用いたものとすることもできる。
【0016】
本願発明の異物防護方法は、本願発明の異物防護装置を用いて、シールドマシンの掘削に伴って生じる異物から発進坑口(あるいは到達坑口)に設置される拡張式パッキンを防護する方法であって、異物防護装置設置工程と掘削工程を備えた方法である。このうち異物防護装置設置工程では、拡張式パッキンより地山側であってシールドマシンのスキンプレート外周の一部(あるいは全部)に対応するように、本願発明の異物防護装置を発進坑口(あるいは到達坑口)に設置する。一方の掘削工程では、発進坑口から地山(あるいは地山から到達坑口)に向かってシールドマシンによる掘削を行う。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の異物防護装置、及び異物防護方法には、次のような効果がある。
(1)少なくとも拡張パッキンが拡張するまでの間は砂礫などの流入を防止することから、拡張パッキンの拡張阻害を抑制することができる。その結果、拡張パッキンは十分に拡張してスキンプレートと坑口金物との隙間を閉鎖し、シールドマシン掘進中、発進坑口への地下水や土砂の流入を抑制することができ、発進立坑の水没や地山の崩壊を回避することができる。
(2)砂礫などは通過させないものの地下水の流過は許容することから、特別なワイヤーブラシ等を調達する必要がなく、したがって特許文献1に示されるような従来技術よりも低コストで実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明の異物防護装置が設置された発進坑口からシールドマシンが発進する状況を模式的に示す断面図。
図2】(a)はリング状の坑口金物の内周に取り付けられた異物防護装置を模式的に示す断面図、(b)は遮蔽体を具備する異物防護装置の一部を模式的に示す拡大正面図、(b)は異物防護装置の遮蔽体を模式的に示す拡大側面図。
図3】本願発明の異物防護装置の効果により、拡張パッキンが十分に拡張してスキンプレートと坑口金物との隙間が閉鎖された状況を模式的に示す断面図。
図4】本願発明の異物防護装置が設置された到達坑口にシールドマシンが進入する状況を模式的に示す断面図。
図5】本願発明の異物防護方法の主な工程を示すフロー図。
図6】パッキンが設置された発進坑口と、地山に掘進するシールドマシンとを、模式的に示す断面図。
図7】(a)は拡張式パッキンが拡張する前の状態を模式的に示すステップ図、(b)は拡張式パッキンが拡張した状態を模式的に示すステップ図。
図8】スキンプレートと拡張パッキンとの間に異物が挟まった状態を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の異物防護装置、及び異物防護方法の実施の例を図に基づいて説明する。
【0020】
1.全体概要
本願発明は、シールドマシンが発進坑口から掘進を開始(つまり発進)するときや到達坑口まで到達するときに、拡張式パッキンの拡張を阻害するような異物(例えば砂礫など)から拡張式パッキンを保護するものである。より詳しくは、発進坑口(あるいは到達坑口)であって拡張式パッキンよりも地山側に配置された本願発明の異物防護装置が、拡張式パッキンの拡張動作開始までの間、シールドマシン発進に伴って生じる掘削土砂(例えば砂礫など)を遮断し、すなわち掘削土砂を拡張式パッキンまで移動させないことによって正常な拡張動作を可能にすることを目的として創案された発明である。なお、本願発明の異物防護装置は遮蔽体を備えており、そしてこの遮蔽体は地下水を流過させるが掘削土砂は通過させないという機能を有している。これにより本願発明の異物防護装置は、過度に高機能を求められることなく、拡張パッキンが拡張するまでの間は砂礫などの流入を防止することができる。
【0021】
2.異物防護装置
次に、本願発明の異物防護装置について詳しく説明する。なお、本願発明の異物防護方法は、本願発明の異物防護装置を用いて異物から拡張式パッキンを保護する方法である。したがって、まずは本願発明の異物防護装置について説明し、その後に本願発明の異物防護方法について説明することとする。
【0022】
図1は、本願発明の異物防護装置100が設置された発進坑口からシールドマシンMCが発進する状況を模式的に示す断面図である。本願発明の異物防護装置100が利用される発進坑口(あるいは到達坑口)には、リング状の坑口金物400の内周側に拡張式パッキン200が設置される。もちろんこの図に示すように、拡張式パッキン200に加えて予備パッキン300が設置された発進坑口(あるいは到達坑口)に本願発明の異物防護装置100を利用することもできる。
【0023】
異物防護装置100は、発進坑口(あるいは到達坑口)であって拡張式パッキン200よりも地山側に設置される。より詳しくは、図2(a)に示すようにリング状の坑口金物400の内周側に取り付けられる。なおこの図では、シールドマシンMCのスキンプレート外周の全部に対応するように、つまり坑口金物400の全周にわたって異物防護装置100が取り付けられているが、これに限らずのスキンプレート外周の一部に対応するように、つまり坑口金物400のうち部分的に(1又は2以上の個所に)異物防護装置100を取り付けてもよい。
【0024】
また異物防護装置100は、図2(b)や図2(c)に示すように遮蔽体110を備えている。図2(b)は遮蔽体110を具備する異物防護装置100の一部を正面から見た拡大図であり、図2(c)は異物防護装置100の遮蔽体110を側方から見た拡大図である。この遮蔽体110は、既述したようにシールドマシンMCの掘削に伴って生じる砂礫といった掘削土(以下、便宜上「異物」という。)は通過させない(遮蔽可能な)機能を有するとともに、地下水などの流体(液体やガスなど)は流過させる機能を有するものである。例えば図2では遮蔽体110として、複数の線材によって形成されるブラシ状のもの(ワイヤーブラシなど)を示している。そのほか遮蔽体110としては、メッシュ状のもの(金網など)、あるいはたわし状のもの(金たわしなど)なども利用することができる。ただし、シールドマシンMCの移動に応じて容易に変形し得る弾性を有し、かつ相当の強度を有する材質製とするのが望ましい。
【0025】
異物防護装置100は、図1に示すように遮蔽体110がシールドマシンMCの軸方向に対して略垂直(垂直含む)となるように設置するとよい。特許文献1をはじめとする従来技術では、発進坑口にワイヤーブラシなどを設置する場合、その姿勢が斜方向となるように(つまり、寝かせるように)設置していた。例えば特許文献1の場合、その図10に示されるようにワイヤーブラシパッキンの先端側が前方(シールドマシンMCの進行方向)に緩く傾くように設置されている。これは特許文献1のワイヤーブラシパッキンが、シールドマシンMCの進行の妨げとならないように配慮されたためであり、しかも止水性と密着性を目的としているためである。一方、本願発明の異物防護装置100(特に、遮蔽体110)は、異物の通過を防ぐことを目的とするものであって、地下水などの流過は許容することから、止水性と密着性は求められない。したがって、遮蔽体110を緩傾斜として(つまり、寝かせて)配置する必要がなく、またシールドマシンMC(スキンプレート)に密着させる必要もない。すなわち遮蔽体110は、シールドマシンMCの軸方向に対して略垂直となるように配置することができ、しかも遮蔽体110の先端とスキンプレートとの間に所定の隙間(ただし、想定される異物の大きさ以下の隙間)が生じた状態で設置することもできる。このようにシールドマシンMCの軸方向に対して略垂直となるように遮蔽体110を設置すると、流れてくる異物の通過を防ぐのみならず、付着(粘着)した異物をまさにブラシの先端で掃き取る効果も期待できる。
【0026】
図1では、シールドマシンMCが地山側に進行する際、カッタ回転部CTが干渉しないように拡張パッキン200は坑口金物400に沿うような位置にあり(つまり、折り畳まれており)、シールドマシンMCのスキンプレートと坑口金物400との間には所定の隙間が生じている。一方、カッタ回転部CTは既に地山内に進入しており、すなわちある程度の異物が発進坑口に流入している。ところが、遮蔽体110が地下水などは流過させるものの異物は通過させない機能を有することから、遮蔽体110が異物のそれ以上の移動(図では左側への移動)を制限し、つまり拡張パッキン200の位置まで異物が到達することを防止している。
【0027】
このように、異物防護装置100の遮蔽体110によって掘削に伴う異物が遮断されることから、スキンプレートと拡張パッキン200との間に砂礫が挟まった状態(図8)を回避することができ、図3に示すように拡張パッキン200は十分に拡張してスキンプレートと坑口金物400との隙間を閉鎖することができる。その結果、シールドマシンMCによる掘進中、発進坑口への地下水や土砂の流入を抑制することができ、発進立坑の水没や地山の崩壊を回避することができる。
【0028】
ここまでシールドマシンMCが発進坑口から発進する例で説明したが、本願発明の異物防護装置100は、シールドマシンMCが到達坑口に到達するケースにも利用することができる。図4では、シールドマシンMCが地山側から到達坑口に進入する際、カッタ回転部CTが干渉しないように拡張パッキン200は折り畳まれており、シールドマシンMCのスキンプレートと坑口金物400との間には所定の隙間が生じている。一方、シールドマシンMCは、その一部(図では左側)が地山内に残された状態で到達坑口を進行しており、すなわちある程度の異物が到達坑口に引き込まれている。ところが、遮蔽体110が地下水などは流過させるものの異物は通過させない機能を有することから、遮蔽体110が異物のそれ以上の移動(図では右側への移動)を制限し、つまり拡張パッキン200の位置まで異物が到達することを防止している。これにより、拡張パッキン200は十分に拡張してスキンプレートと坑口金物400との隙間を閉鎖することができる。
【0029】
3.異物防護方法
続いて、本願発明の異物防護方法ついて説明する。なお、本願発明の異物防護方法は、ここまで説明した異物防護装置100を用いて異物から拡張式パッキンを保護する方法である。したがって、異物防護装置100について説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の異物防護方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.異物防護装置」で説明したものと同様である。
【0030】
既述したとおり本願発明の異物防護装置100は、シールドマシンMCが発進坑口から発進するケースに利用することができるし、シールドマシンMCが到達坑口に到達するケースにも利用することができる。同様に、本願発明の異物防護方法に関しても、シールドマシンMCが発進坑口から発進するケースでも、シールドマシンMCが到達坑口に到達するケースでも実施することができる。なお便宜上ここでは、シールドマシンMCが発進坑口から発進する例で説明する。
【0031】
図5は、本願発明の異物防護方法の主な工程を示すフロー図である。この図に示すように、まずは発進立坑を形成し(図5のStep10)、発進坑口に坑口金物400を設置する(図5のStep20)。そして、坑口金物400の内周側に本願発明の異物防護装置100を取り付ける(図5のStep30)。このとき、シールドマシンMCのスキンプレート外周の全部に対応するように(つまり、坑口金物400の全周にわたって)異物防護装置100を取り付けることもできるし、あるいはスキンプレート外周の一部に対応するように(つまり、坑口金物400のうち部分的に)異物防護装置100を取り付けることもできる。また、拡張式パッキン200や予備パッキン300も、坑口金物400の内周側の所定位置に設置する(図5のStep40)。ただしこの時点においては、拡張式パッキン200や予備パッキン300は坑口金物400に沿うような位置にある(つまり、折り畳まれている)。
【0032】
地上から分割されたシールドマシンMCを発進立坑内に吊下ろし、発進坑口でシールドマシンMCを組み立てる(図5のStep50)。組み立てが完成すると、シールドマシンMCを地山側に移動させ(図5のStep60)、さらにカッタ回転部CTが拡張式パッキン200や予備パッキン300を通過すると、これら拡張式パッキン200や予備パッキン300を拡張する(図5のStep70)。図1に示すように、シールドマシンMCが移動していくとカッタ回転部CTが地山内に進入し、ある程度の異物が発進坑口に流入していくが、遮蔽体110が地下水などは流過させるものの異物は通過させない機能を有することから、遮蔽体110が異物のそれ以上の移動を制限する。これにより、スキンプレートと拡張パッキン200との間に砂礫が挟まった状態(図8)を回避することができ、図3に示すように拡張パッキン200は十分に拡張してスキンプレートと坑口金物400との隙間を閉鎖することができる。
【0033】
スキンプレートと坑口金物400との隙間が閉鎖されると、その状態を維持しつつ本格的にシールドマシンMCによる掘削を行っていく(図5のStep80)。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願発明の異物防護装置、及び異物防護方法は、地下に構築される道路トンネルのほか、鉄道トンネルや、上下水道用のトンネル、共同溝や電力通信用のトンネルの構築に際して利用することができる。また、小口径から大口径のシールドマシンによる掘進、あるいは泥水式シールド工法や土圧式シールド工法でも利用することができ、広範囲の土質に対応することもできる。本願発明によれば安全にトンネル構造物という社会基盤(社会インフラストラクチャ)を構築することができることを考えると、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0035】
100 本願発明の異物防護装置
110 (異物防護装置の)遮蔽体
200 拡張式パッキン
300 予備パッキン
400 坑口金物
CT カッタ回転部
MC シールドマシン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8