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特開2022-121826チップ部品除去方法およびチップ部品除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121826
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】チップ部品除去方法およびチップ部品除去装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20220815BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220815BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H05K13/00 G
H01L21/52 C
H01L21/60 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018747
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 靖典
(72)【発明者】
【氏名】東野 繁
【テーマコード(参考)】
5E353
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
5E353BB08
5E353EE33
5E353EE63
5E353EE88
5E353JJ60
5E353KK01
5E353NN15
5E353NN18
5E353QQ22
5F044JJ01
5F044KK06
5F044LL01
5F044RR12
5F047AA07
5F047BA05
5F047CA08
(57)【要約】
【課題】 多数のチップ部品が実装された基板から、不良チップ部品を粘着フィルムに転写して取り外すのに際して、粘着フィルムを複数回利用可能とするチップ部品除去方法およびチップ部品除去装置を提供すること。
【解決手段】 粘着フィルムを非接触状態で対向させる工程と、前記不良チップ部品にレーザーを照射できるようレーザーの照射位置を前記不良チップの位置に合わせる工程と、前記粘着フィルム配置工程および前記位置合わせ工程の後に、前記粘着フィルムと前記不良チップ部品が非接触な状態で、前記粘着フィルム越しに前記不良チップ部品にレーザーを照射して前記不良チップ部品を加熱する工程と、前記粘着フィルムと前記不良チップ部品を密着させる工程と、前記粘着フィルムを前記基板から離隔する工程を備え、前記不良チップ部品を前記粘着フィルムに転写して、前記基板から取り外すチップ部品除去方法およびチップ部品除去装置提供する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のチップ部品が実装された基板から不良チップ部品を取り外すチップ部品除去方法であって、
前記不良チップ部品の前記基板と反対側に、粘着フィルムを非接触状態で対向させる粘着フィルム配置工程と、
前記不良チップ部品にレーザーを照射できるようレーザーの照射位置を前記不良チップの位置に合わせる位置合わせ工程と、
前記粘着フィルム配置工程および前記位置合わせ工程の後に、前記粘着フィルムと前記不良チップ部品が非接触な状態で、前記粘着フィルム越しに前記不良チップ部品にレーザーを照射して前記不良チップ部品を加熱する加熱工程と、
前記粘着フィルムと前記不良チップ部品を密着させる密着工程と、
前記粘着フィルムを前記基板から離隔する粘着フィルム離隔工程を備え、
前記不良チップ部品を前記粘着フィルムに転写して、前記基板から取り外すチップ部品除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ部品除去方法であって、
前記レーザーの波長が500nmから1400nmの範囲であって、
前記粘着フィルムが、前記レーザーの波長に対して50%以上の透過率を有していることを特徴とするチップ部品除去方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のチップ部品除去方法であって、
前記密着工程においてレーザーの照射を止めるチップ部品除去方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のチップ部品除去方法であって、
前記密着工程において、押圧治具により、前記粘着フィルムを加圧して前記不良チップ部品に密着させるチップ部品除去方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のチップ部品除去方法であって、
少なくとも前記加熱工程において、雰囲気ガス中の酸素濃度を下げるチップ部品除去方法。
【請求項6】
多数のチップ部品が実装された基板から不良チップ部品を取り外すチップ部品除去装置であって、
前記基板を保持して面内方向に位置調整可能な基板ステージと、
前記基板ステージが保持する基板に向けてレーザーを照射するレーザー光源と、
粘着フィルムの粘着面を、前記基板ステージが保持する基板に実装された不良チップ部品と対向させるよう配置することが可能な粘着フィルム移動手段と、
前記基板ステージと前記レーザー光源と前記粘着フィルム移動手段を制御する制御部を備え、
前記粘着フィルムが前記不良チップ部品に非接触の状態で、前記粘着フィルム越しに、前記不良チップ部品にレーザーを照射してから、前記粘着フィルムを密着させて、前記不良チップ部品を前記粘着フィルムに転写することで前記基板から取り外す、チップ部品除去装置。
【請求項7】
請求項6に記載のチップ部品除去装置であって、
前記粘着フィルムを加圧して前記不良チップ部品に密着させる押圧治具を更に備えたチップ部品除去装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のチップ部品除去装置であって、
前記粘着フィルムに転写された前記不良チップ部品を回収する不良チップ部品回収手段を更に備えたチップ部品除去装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載のチップ部品除去装置であって、
前記基板に向けて窒素ガスを放出するノズルを更に備えたチップ部品除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多数のチップ部品が実装された基板から不良チップ部品を取り外すチップ部品除去方法およびチップ部品除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロLEDと呼ばれる数十ミクロンサイズのLEDを画素とする所謂マイクロLEDディスプレイの開発が進んでいる。 マイクロLEDディスプレイは、TFT基板のサブピクセルにRGBのマイクロLEDチップを実装する構造が一般的である。
【0003】
マイクロLEDディスプレイに使用するマイクロLEDチップの数はサブピクセル数と同じであり膨大な数となる。例えば、4Kディスプレイにすると約2500万個のマイクロLEDチップが必要になる。
【0004】
このように膨大な数のマイクロLED等のチップ部品を実装する方法として様々な手法が提案されており、複数個のチップ部品をキャリアやスタンプに仮固定する方法等が検討されているが、実装不良をゼロにすることは極めて難しい。例えば、位置ズレや基板への未転写などの不良は一定の頻度で発生し、仮に実装不良の発生確率が0.1%であったとしても4KディスプレイのマイクロLEDディスプレイでは約2.5万個の実装不良が生じる。このため、実装不良のチップ部品(以後不良チップ部品と略す)を外して良品のチップ部品を実装するリワーク作業を如何に実施するかが大きな課題となっている。
【0005】
そこで、リワーク作業において、レーザーを用いて不良チップ部品を取り外す手法が有効とされている。すなわち、スポット径の小さいレーザーを使用することで、不良チップ部品のみにピンポイントで照射して加熱することが可能だからである。
【0006】
ここで、レーザーはチップ部品を透過する波長のものが好ましく、チップ部品を透過したレーザーが(金属で形成された)電極に吸収され、電極を加熱して近傍のはんだを融解することで、不良チップ部品は基板から取り外せる。
【0007】
ところで、はんだが融解したマイクロLED等の不良チップ部品の取り外しを行うために、粘着フィルムを用いる手法が提案されている(例えば特許文献1)。これは、数十ミクロンサイズのチップ部品をコレット吸着保持することが極めて難しいことに起因している。
【0008】
粘着フィルムを用いた不良チップ部品の取り外し方法を示したのが図12である。図12(a)において、レーザー光源3の照射位置をチップ部品Cの中の不良チップ部品Cdに合わせ、図12(b)において粘着フィルムAFをチップ部品Cと密着させてから、図12(c)のようにレーザー光源3からレーザーLを不良チップ部品に照射して加熱して、図12(d)のように粘着フィルムAFを基板Sから遠ざけることで、はんだが溶融した状態の不良チップ部品Cdは粘着フィルムAFに転写され基板Sから不良チップ部品Cdのみを取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許KR10-1918106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マイクロLEDチップや半導体チップ等のチップ部品を基板に実装する際に用いられている一般的な無鉛はんだの融点は200℃から230℃であり、再融解では300℃近い温度が必要なこともある。このような高温にはんだを加熱した場合、伝熱によりチップ部品も高温に加熱される。これに対して樹脂成分を主とする粘着フィルムは200℃以上の高温下に晒されると熱変形や変質を生じる。
【0011】
このため、図12(b)のようにチップ部品Cと粘着フィルムAFを密着した状態で、図12(c)のようにレーザーLを照射すると、レーザーL照射当初から加熱される不良チップ部品Cdの熱が粘着フィルムAFに蓄積され、粘着フィルムAFが熱変形や変質することがある。このように変形、変質した粘着フィルムAFを再利用することは困難である。
【0012】
ところで、粘着フィルムAFを再利用しないのであれば、熱変形や変質を生じても不良チップ部品の取り外しに支障となることは少ない。しかし、数万個の不良チップ部品の取り外しを行うのに際して、粘着フィルムAFを再利用しない場合、チップリペア工程に占める粘着フィルムAFのコストが大きくなり、最終製品のコストにも影響を及ぼす。
【0013】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、多数のチップ部品が実装された基板から、不良チップ部品をレーザーで加熱して粘着フィルムに転写して取り外すのに際して、粘着フィルムに与える熱ダメージを抑えて、粘着フィルムを複数回利用可能とするチップ部品除去方法およびチップ部品除去装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
多数のチップ部品が実装された基板から不良チップ部品を取り外すチップ部品除去方法であって、
前記不良チップ部品の前記基板と反対側に、粘着フィルムを非接触状態で対向させる粘着フィルム配置工程と、前記不良チップ部品にレーザーを照射できるようレーザーの照射位置を前記不良チップの位置に合わせる位置合わせ工程と、前記粘着フィルム配置工程および前記位置合わせ工程の後に、前記粘着フィルムと前記不良チップ部品が非接触な状態で、前記粘着フィルム越しに前記不良チップ部品にレーザーを照射して前記不良チップ部品を加熱する加熱工程と、前記粘着フィルムと前記不良チップ部品を密着させる密着工程と、前記粘着フィルムを前記基板から離隔する粘着フィルム離隔工程を備え、
前記不良チップ部品を前記粘着フィルムに転写して、前記基板から取り外すチップ部品除去方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のチップ部品除去方法であって、
前記レーザーの波長が500nmから1400nmの範囲であって、
前記粘着フィルムが、前記レーザーの波長に対して50%以上の透過率を有していることを特徴とするチップ部品除去方法である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のチップ部品除去方法であって、
前記密着工程においてレーザーの照射を止めるチップ部品除去方法である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のチップ部品除去方法であって、
前記密着工程において、押圧治具により、前記粘着フィルムを加圧して前記不良チップ部品に密着させるチップ部品除去方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のチップ部品除去方法であって、
少なくとも前記加熱工程において、雰囲気ガス中の酸素濃度を下げるチップ部品除去方法である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、
多数のチップ部品が実装された基板から不良チップ部品を取り外すチップ部品除去装置であって、
前記基板を保持して面内方向に位置調整可能な基板ステージと、前記基板ステージが保持する基板に向けてレーザーを照射するレーザー光源と、粘着フィルムの粘着面を、前記基板ステージが保持する基板に実装された不良チップ部品と対向させるよう配置することが可能な粘着フィルム移動手段と、前記基板ステージと前記レーザー光源と前記粘着フィルム移動手段を制御する制御部を備え、
前記粘着フィルムが前記不良チップ部品に非接触の状態で、前記粘着フィルム越しに、前記不良チップ部品にレーザーを照射してから、前記粘着フィルムを密着させて、前記不良チップ部品を前記粘着フィルムに転写することで前記基板から取り外す、チップ部品除去装置である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のチップ部品除去装置であって、
前記粘着フィルムを加圧して前記不良チップ部品に密着させる押圧治具を更に備えたチップ部品除去装置である。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のチップ部品除去装置であって、
前記粘着フィルムに転写された前記不良チップ部品を回収する不良チップ部品回収手段を更に備えたチップ部品除去装置である。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項6から請求項8のいずれかに記載のチップ部品除去装置であって、
前記基板に向けて窒素ガスを放出するノズルを更に備えたチップ部品除去装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、多数のチップ部品が実装された基板から不良チップ部品をレーザーで加熱して粘着フィルムに転写して取り外すチップ部品除去方法およびチップ部品除去装置において、粘着フィルムに与える熱ダメージを抑えられ、粘着フィルムを複数回利用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係るチップ部品除去装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係るチップ部品除去方法について説明するもので、(a)不良チップ部品とレーザーの照射位置を合わせる位置合わせ工程を示し、(b)同位置合わせ工程を粘着フィルムが存在する状態で行う状態を示し、(c)粘着フィルムとチップ部品が非接触な状態で粘着フィルム越しに不良チップ部品にレーザーを照射して加熱する加熱工程を示し、(d)粘着フィルムを不良チップ部品に密着させる密着工程を示し、(e)不良チップ部品が転写された粘着フィルムを基板から隔離する粘着フィルム隔離工程を示す図である。
図3】不良チップ部品を取り外す前後のはんだの状況について説明するもので(a)不良チップ部品が基板に実装された状態を示し、(b)不良チップを取り外す際にはんだの多くが基板側に残った状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態1に係る粘着フィルムに転写された不良チップ部品を回収する不良チップ部品回収手段の一例の動作について説明するもので(a)粘着フィルムに不良チップ部品が転写された状態を示し、(b)不良チップ部品が回収ロールと接触した状態を示し、(c)不良チップ部品が回収ロールに転写された状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態1に係る粘着フィルムに転写された不良チップ部品を回収する不良チップ部品回収手段の別例の動作について説明するもので(a)粘着フィルムに不良チップ部品が転写された状態を示し、(b)不良チップ部品がヘラで剥離される状態を示し、(c)粘着フィルムから剥離された不良チップ部品が回収ボックスに落下する状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係るチップ部品除去装置を用いたチップ部品除去方法について説明するもので、(a)チップ部品とレーザーの照射位置を合わせる位置合わせ工程を粘着フィルムが存在する状態で行う様子を示し、(b)粘着フィルムとチップ部品が非接触な状態で粘着フィルム上に押圧治具を配置して、粘着フィルム越しに不良チップ部品にレーザーを照射して加熱する様子を示し、(c)押圧治具を用いて粘着フィルムを不良チップ部品に密着させる様子を示し、(d)不良チップ部品が転写された粘着フィルムを基板から隔離する様子を示す図である。
図7】本発明の実施形態2に係るチップ部品除去装置における別の動作例を示す図である。
図8】本発明の実施形態2に係るチップ部品除去装置が粘着フィルム把持爪を備えた例について説明するもので、(a)位置合わせ工程後のレーザー照射前の様子を示し、(b)押圧治具を用いて粘着フィルムを不良チップ部品に密着させて加熱する様子を示し、(c)粘着フィルム把持爪を利用して粘着フィルムを剥離した様子を示す図である。
図9】チップ部品のサイズとレーザー光強度分布の関係を示す図である。
図10】本発明の実施形態3に係るチップ部品除去装置の概略構成を示す図である。
図11】本発明の実施形態3のチップ部品除去装置におけるチップ部品のサイズとレーザー光強度分布の関係を示す図である。
図12】粘着フィルムを用いたチップ部品除去方法の従来例について説明するもので(a)チップ部品とレーザーの照射位置を合わせる位置合わせ工程を示し、(b)粘着フィルムを不良チップ部品に密着させる密着工程を示し、(c)粘着フィルム越しに不良チップ部品にレーザーを照射して加熱する加熱工程を示し、(d)不良チップ部品が転写された粘着フィルムを基板から隔離する粘着フィルム隔離工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。図1は本発明の実施形態1におけるチップ部品除去装置1の構成を示す図である。
【0026】
チップ部品除去装置1は、基板Sに実装されている多数のチップ部品Cの中の不良チップ部品Cdを粘着フィルムAFに転写して取り外す装置である。ここで、基板SとしてTFT基板、チップ部品Cとしてはサイズが数十μmのマイクロLEDチップを想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、チップ部品はサイズが数十から数百μmのミニLEDチップやミリサイズのミリLEDチップ、基板Sが配線基板でチップ部品がメモリ素子等の半導体チップのケースにも適用し得る。
【0027】
粘着フィルムAFは少なくとも一方の面に粘着性を有する柔軟なフィルムであり、基体フィルムに粘着層を設けた2層構造のフィルムであってもよく、厚みは柔軟性と強度の関係から10から200μmの範囲にあることが好ましく、20μm程度が特に望ましい。また、不良チップ部品Cdに照射するレーザーの波長に対して少なくとも50%の透過率を有する一方で吸収率が10%以下、望ましくは透過率70%以上で吸収率5%以下のものを用いる。具体的な素材としてはシリコーン系の樹脂が好適である。
【0028】
チップ部品除去装置1は、基板ステージ2、レーザー光源3、粘着フィルム移動手段4および制御部10を構成要素としている。また、必要に応じてレーザー照射位置と不良チップ部品Cdの位置関係を確認するためのカメラ5を備えてもよい。
【0029】
基板ステージ2は基板Sを吸着保持するとともに基板Sの面内方向に位置調整する機能を有している。
【0030】
レーザー光源3は不良チップ部品Cdにレーザーを照射して電極部分を加熱するもので、LEDチップや半導体チップを透過しつつバンプ電極Bを加熱する可視光から近赤外線を照射するものであり、具体的な波長としては500nmから1400nmが好適である。
【0031】
粘着フィルム移動手段4は粘着フィルムAFを不良チップ部品Cd上に配置するとともに、上下に移動させるものである。粘着フィルム移動手段4は、ロール状に巻かれた粘着フィルムAFを巻出部4aから巻出して平板状で搬送して巻取部4bによってロール状に巻取る搬送系と、搬送系を移動させる(図示しない)移動機構によって構成されている。
【0032】
カメラ5は、不良チップ部品Cdの位置とレーザー照射位置の相対位置関係を測定するのに用いるものであり、不良チップ部品Cdとレーザー照射位置を合わせる際に用いることが出来る。
【0033】
制御部10は、チップ部品除去装置1の動作を制御するもので、基板ステージ2、レーザー光源3、粘着フィルム移動手段4と接続され、チップ部品除去装置1がカメラ5を備えている場合はカメラ5と接続される。
【0034】
制御部10は基板ステージ2と接続して、基板Sの吸着保持のオンオフや、基板ステージの面内方向位置を制御する機能を有している。
【0035】
制御部10はレーザー光源3と接続して、レーザー照射の有無や出力を制御する機能を有している。
【0036】
制御部10は粘着フィルム移動手段4と接続して、巻出部4aと巻取部4bを制御して粘着フィルムAFの搬送を制御する機能と、(図示しない)移動機構の制御により巻出部4aと巻取部4bを含む搬送系の空間位置を調整する機能を有している。
【0037】
また、カメラ5を備える場合においては、制御部10はカメラ5と接続して、カメラ5が取得した画像を入力して位置情報を解析する機能と、カメラ5の空間位置を制御する機能を有している。
【0038】
以下、本発明の実施形態1のチップ部品除去装置1で、基板Sに実装されている不良チップ部品Cdを取り外すチップ部品除去方法について図2を用いて説明する。
【0039】
まず、図2(a)は、不良チップ部品Cdにレーザーを照射できるよう、レーザーの照射位置を合わせる位置合わせ工程を示している。位置合わせ工程において、レーザー照射位置が定まっているのであれば、ステージ2を移動させて不良チップ部品Cdをレーザー照射位置に合わせる。この際、ステージ2上での基板Sの配置位置、基板S面内での不良チップ部品Cdの位置が判っていれば、カメラ5を用いることなく制御部10はステージ2の位置を調整することが可能である。ただし、ステージ2等のチップ部品回収装置1を構成する構造材が熱変形して寸法変化をするのであれば、カメラ5を用いて位置合わせをするのが望ましい。
【0040】
図2(b)は、制御部10が粘着フィルム移動手段4を移動させて、レーザー照射経路上に、不良チップ部品Cdと非接触な状態で粘着フィルムAFを配置する粘着フィルム配置工程を示している。この状態において、粘着フィルムAFの粘着性を有する面を不良チップ部品Cdと対向させており、粘着フィルムAFの搬送系は停止している。ここで、不良チップ部品Cd(の基板S側と反対の面)と粘着フィルムAFの粘着面の間隔は5から30mmが好適であり、10mm程度が望ましい。間隔が5mmより小だと、粘着フィルムAFが弛んだ場合に不良チップ部品Cdに接触する可能性があり好ましくない。また、間隔が30mmを超えると、粘着フィルムAFを透過する際にレーザーが散乱して不良チップ部品Cdを効率的に加熱することが困難になる。
【0041】
なお、図2においては、図2(a)の位置合わせ工程の後に粘着フィルム配置工程を行っているが、この順番が逆であってもよい。例えば、カメラ5を用いた位置合わせを行なわない場合や、カメラ5を用いた場合においても粘着フィルムAFの透明性が優れている場合においては、図2(b)のように粘着フィルム配置工程の後に、位置合わせ工程を行っても問題ない。
【0042】
粘着フィルム配置工程と位置合わせ工程の両工程が行われた状態において、不良チップ部品Cdに粘着フィルムAFが非接触の状態で、図2(c)のように粘着フィルムAF越しにレーザーLを照射して不良チップ部品Cdを加熱する加熱工程を行う。加熱工程においては、不良チップ部品CdのバンプBと基板Sの電極とを接合させているはんだを融解させる。はんだが融解する条件については、チップ部品Cのサイズ、レーザーLのパワー、等のパラメーターに応じて決めるのが良い。この状態において、粘着フォルムAFはレーザーLを透過して吸収は僅かであり、加熱されている不良チップ部品Cdとは接触していないので、大きな温度上昇はない。
【0043】
不良チップCdのバンプBと基板Sの電極とを接合させているはんだが融解する直前から直後のタイミングで、制御部10は粘着フィルム移動手段4を(粘着フィルム搬送系が停止した状態で)降下して、図2(d)のように粘着フィルムAFを不良チップ部品Cd(および不良チップ部品Cd周辺のチップ部品C)に密着させる。
【0044】
図2(d)のように不良チップ部品Cdに粘着フィルムAFを密着させた後に、制御部10が粘着フィルム移動手段4を上昇させる粘着フィルム離隔工程により、図2(e)のように、はんだが融解することで接合力が弱まった不良チップ部品Cdは粘着フィルムAFに転写されて、基板Sから外れる。ここで、不良チップ部品Cd周辺のチップ部品Cは、はんだが融解しておらず基板Sに接合されていることから、粘着フィルムAFに転写されることはない。
【0045】
ところで、図3(a)に示すように基板SのバンプBは、はんだSDを介して電極Eと接続されているが、チップ部品Cを取り外す際は出来るだけ多くのはんだSDを基板S側に残るようにするのが望ましい(図3(b))。何故なら、基板S側にはんだSDが多く残っていれば、電極EにはんだSDを補充せずに、同じ個所に良品チップ部品を実装することが可能となるからである。このため、はんだSDがバンプBの界面付近で融解した段階で不良チップ部品Cdを取り外すのが望ましい。
【0046】
そこで、図2(c)から図2(d)の間でレーザーLの照射を停止するタイミングが重要となる。このタイミングは、粘着フィルムAFを密着する寸前のはんだの融解状態や、粘着フィルムAFが密着することによるはんだの温度低下、粘着フィルムAFの温度上昇等の影響を考慮して決める。すなわち、はんだが融解しているのであれば温度は極力低いことが望ましいが、粘着フィルムAFが不良チップCdに密着する前にレーザーLの照射を停止すると、粘着フィルムAF密着による不良チップ部品Cdからの伝熱によってはんだが再固化すこともある。このため、はんだが融解する温度より若干高温まで加熱してから、粘着フィルムAFが不良チップ部品Cdに密着した直後(0から1.0秒後)にレーザーLの照射を停止するのが良く、レーザーLの照射停止とほぼ同時に粘着フィルムAFを上昇させるのが良い。
【0047】
以上のように、本発明の実施形態1は、粘着フィルムAFが密着する前に不良半導体チップを加熱することができる。このため、粘着フィルムAFは、加熱状態の不良チップCdと密着する時間を短縮することができ、熱的ダメージが抑えられて再利用が可能になる。
【0048】
ところで、粘着フィルムAFを再利用する際は、転写された不良チップ部品Cdを回収する必要がある。この不良チップ部品Cdを回収する不良チップ部品回収手段の一例を示したのが図4である。図4の不良チップ部品回収手段では、巻出部4aと巻取部4bを含む搬送系を、回収ロール60に対して、図4(a)の関係になるように配置する。ここで、回収ロール60は表面に粘着性を有する回転ロールであり、搬送系を駆動して不良チップ部品Cdを搬送することにより、図4(a)から図4(b)に示すように不良チップ部品Cdは回収ロール60に転写される。
【0049】
また、図5は不良チップ回収手段の別例を示すものであり、図5(a)のヘラ61と回収ボックス62の方向に不良チップ部品Cdを搬送することにより、不良チップ部品Cdを図5(b)のようにヘラ61により粘着フィルムAFから剥離して、図5(c)のように回収ボックス62で回収する。
【0050】
図6は本発明の実施形態2で、基板Sに実装されている不良チップ部品Cdを取り外すチップ部品除去方法を説明するものである。実施形態2に係るチップ部品除去装置の構成が図1のチップ部品除去装置と異なるのは、押圧治具7を備えていることである。ここで、押圧治具7はレーザーLに対して透過性を有している。
【0051】
実施形態2は、実施形態1と同様な粘着フィルム配置工程と位置合わせ工程(図6(a))の後、粘着フィルムAF越しに不良チップ部品CdにレーザーLを照射する加熱工程(図6(b))、粘着フィルム密着工程(図6(c))と粘着フィルム隔離工程(図6(D))を行うものであるが、少なくとも密着工程において押圧治具7により粘着フィルムAFを不良チップ部品Cdに圧着するものである。これは、粘着フィルムAFの下降だけだと、不良チップ部品Cdとの密着力が弱く、粘着フィルムAFへの転写が失敗することが稀にあるためである。
【0052】
ところで、押圧治具7としては前述のレーザーLに対する透光性の他に、必要最小限の剛性を備えているものであれば良く、ガラスや透明樹脂を用いることが可能である
図6(b)から図6(C)では、粘着フィルムAFの搬送系と押圧治具7を同時に下降させて粘着フィルムAFを不良チップ部品Cdに密着させているが、巻出部4aおよび巻取部4bを含む搬送系を下降させて粘着フィルムAFに密着させようとすると動作に時間を要するため、粘着フィルムAFが不良チップ部品Cdに密着するまでに、はんだが過融解してバンプB側に多く転写してしまう懸念がある。そこで、図7に示すように押圧治具7を迅速に降下させるような動作であってもよい。
【0053】
更に、図8(a)のように粘着フィルム把持爪8を有する構成にすることで、基板Sに接合されたチップ部品Cから粘着フィルムAFの剥離が容易になる(図8(b)から図8(c))。すなわち、粘着フィルム把持爪8の動作のみで粘着フィルムAFを剥離することができるため、巻出部4aおよび巻取部4bを含む搬送系を上昇させるのに比べて迅速に粘着フィルムAFを基板Sから離隔することができる。
【0054】
ところで、チップ部品CのサイズとレーザーLスポットの強度分布の関係は、一般的に図9のようになる。すなわち、不良チップ部品Cdに隣接する正常なチップ部品Cが加熱されるのを防ぐため、不良チップ部品Cdの中心部に比べて、中心部以外のレーザーLの強度が弱くなる。このため、バンプBの位置により、はんだの融解度に差が生じ、全てのバンプについてはんだを融解させようとすると不良チップ部品Cdの温度を過度に上昇させる必要があり、本発明を用いても粘着フィルムに若干の熱的ダメージを及ぼす懸念がある。
【0055】
そこで、この問題を解決すべく構成されたのが、図10である。図10において、押圧治具7は、レーザーLを透過しない遮光部7Mにチップ部品Cのサイズに応じた透光窓7Hを設けたものであり。ここに大きな照射スポットを有するレーザーLを照射することで、図11のようにチップ部品Cの全体をほぼ均一に加熱できるような強度分布のみを得ることができる。なお、遮光部7Mの材質としてはレーザーLを反射して遮蔽するものが好ましく、金属が好適である。また、透光窓7Hとしてガラスや透明樹脂を用いてもよいが、遮光部7Mに用いる素材に穴を開けただけの透光窓7Hであってもよい。
【0056】
なお、以上の説明において、本発明のチップ部品除去は大気中で行うことを前提としているが、はんだの表面の酸化や再融解温度の上昇もあるので、はんだの酸化等を防ぐべく(大気中より)酸素濃度を下げて行ってもよい。
【0057】
この場合、実施形態のチップ部品除去装置をチャンバー内に入れて窒素等の不活性ガス雰囲気下でチップ部品除去を行なうのが望ましいが、装置が大がかりになるため、簡易的に不良チップ部品周辺の雰囲気中の酸素ガスの一部を窒素等の不活性ガスに置換してもよい。具体的には、基板Sに向けて窒素ガス等の不活性ガスを放出することが可能なノズルを配置して、少なくとも加熱工程において、基板S上の不良チップ部品Cd周辺の雰囲気ガス中の酸素濃度を下げるような方法でもよい。いずれにしても、加熱工程における酸素濃度を10%以下にするのが好ましく、5%以下にするのが更に望ましい。
【符号の説明】
【0058】
1 チップ部品除去装置
2 基板ステージ
3 レーザー光源
4 粘着フィルム移動手段
5 カメラ
7 押圧治具
8 粘着フィルム把持爪
10 制御部
AF 粘着フィルム
B バンプ
C チップ部品
Cd 不良チップ部品
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12