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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121842
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】POP用台紙
(51)【国際特許分類】
   G09F 1/08 20060101AFI20220815BHJP
   B32B 3/02 20060101ALI20220815BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20220815BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220815BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G09F1/08 B
B32B3/02
B32B27/08
B32B27/32 Z
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018770
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】太田 崇智
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA08C
4F100AK03B
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK64A
4F100AK64C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA23A
4F100CA23C
4F100DB07B
4F100DE01A
4F100DE01C
4F100EJ37B
4F100JA06
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】折加工性、視認性、及び抜き加工性に優れ、POPとしての用途に適した台紙を提供する。
【解決手段】少なくとも1辺の折り目部を有するPOP用の台紙10であって、この台紙10は、熱可塑性樹脂製の無延伸シートAと、この無延伸シートAの両面又は片面に積層された空孔率が5%以下の熱可塑性樹脂製の延伸シートBとを有し、ガーレ柔軟度が2.5~6gFであり、スプリングバック値が0.5以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1辺の折り目部を有するPOP用の台紙であって、
熱可塑性樹脂製の無延伸シート(A)と、
前記無延伸シート(A)の両面又は片面に積層された、空孔率が5%以下の熱可塑性樹脂製の延伸シート(B)とを有し、
ガーレ柔軟度が2.5~6gFであり、
スプリングバック値が0.5以下である
台紙。
【請求項2】
前記無延伸シート(A)の厚みは、前記延伸シート(B)の平均厚みに対して3~6倍である
請求項1に記載の台紙。
【請求項3】
前記延伸シート(B)が前記無延伸シート(A)の両面に積層されている
請求項1又は請求項2に記載の台紙。
【請求項4】
前記折り目部が前記延伸シート(B)の延伸方向と略平行に設けられている
請求項1から請求項3のいずれかに記載の台紙。
【請求項5】
前記無延伸シート(A)がオレフィン系樹脂製である
請求項1から請求項4のいずれかに記載の台紙。
【請求項6】
前記無延伸シート(A)がフィラーを含有する
請求項1から請求項5のいずれかに記載の台紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店頭での広告媒体として用いられるPOP(Point of Purchase)用の台紙に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニなどの店頭においては、棚札等に使用されるPOP用の台紙として、一般的に無延伸の熱可塑性樹脂シートが使用されている。このようなPOP用台紙は、一又は複数箇所に折り目をつけて、商品棚等に展示される。しかし、台紙の素材として無延伸樹脂シートを採用した場合、台紙のコシが不十分となり、この台紙に折り目をつけて棚札等として利用したときに、台紙が波打つように湾曲するといったように、折加工性が低下するという問題が指摘されている。
【0003】
一方で、例えば特許文献1及び特許文献2には、熱可塑性樹脂製の無延伸シートの片面又は両面に熱可塑性樹脂製の延伸シートを積層した積層樹脂シートが開示されている。このように無延伸シートと延伸シートを積層することで、印刷性、耐水性、剛性に優れ、かつ軽量な樹脂シートを得ることができる。また、これらの文献において、積層樹脂シートは、例えばトランプカード、書類ファイル、吊り下げ用標識、台紙、花ラベル、情報記録媒体収納容器などに適用することができると説明されている。このため、これらの文献に記載の積層樹脂シートを、POP用の台紙に適用することで、従来の無延伸樹脂シートからなる台紙が抱えるコシが不十分であり湾曲しやすいという問題を解消し得ると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-332690号公報
【特許文献2】特開平10-147393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、POP用台紙について十分なコシ(剛性)を得るために特許文献1及び特許文献2に記載の積層樹脂シートを採用した場合、台紙を折り曲げてもその折り目が復元してしまい、商品の広告や値段が印刷された台紙の標示部が上向きとなって、消費者がこの表示部を視認しにくくなるという問題が懸念される。このように、台紙の剛性が高すぎると、POPとして使用したときに視認性が低下するという問題が発生する。
【0006】
また、樹脂シートによってPOP用台紙を製造する際には、一般的に、樹脂製のブランクシートに対して打ち抜き加工を行い、所定形状のPOP用台紙を得る。このとき、製造効率や運送効率などの観点から、打ち抜き加工の際に、POP用台紙は加工後のシートから完全には切り離さずに、部分的に抜き代(廃棄部分)と連結したままとしておくことが多い。POP用台紙を利用する際には、例えば人手によってこの台紙と抜き代の連結部を破断させて、加工後のシートから台紙を取り外す作業が行われる。
【0007】
ここで、特許文献1及び特許文献2に記載の積層樹脂シートは、無延伸シートの表面に空隙率の高い多孔質の延伸シートを積層している。この積層樹脂シートをPOP用台紙のブランクシートとして採用して、このブランクシートに対して打ち抜き加工を行った場合、POP用台紙と抜き代との連結部を例えば人手によって引き離すと、この連結部であった部位に繊維状の樹脂片(本願明細書において「ヒゲ」という)が生じるという問題があった。このように、従来の積層樹脂シートは、抜き加工性が不十分なものであった。
【0008】
そこで、本発明は、折加工性、視認性、及び抜き加工性に優れたPOP用台紙を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1辺の折り目部を有するPOP用の台紙に関する。本発明に係る台紙は、共に熱可塑性樹脂製の無延伸シートAと延伸シートBとが積層されてなるものである。無延伸シートAは、台紙の基材層として機能する。延伸シートBは、台紙の印刷層として機能するものであり、無延伸シートAの両面又は片面に積層されている。また、延伸シートBには、台紙の剛性を補強する役割がある。
【0010】
本発明において、延伸シートBは、その空孔率が5%以下のものが用いられる。このように空隙率の低い延伸シートBを台紙の表面(印刷層)に用いることで、ブランクシートの打ち抜き加工後、台紙と抜き代の連結部を破断させたときに、その破断箇所にヒゲが発生することを抑制できる。すなわち、本発明者の研究により、連結部の破断箇所に生じるヒゲは、主に多孔質の延伸シートから引き出されたものであることが明らかになった。特に、本発明者は、ヒゲの発生量と延伸シートの空隙率に一定の相関があることを見出した。このため、空隙率の低い熱可塑性樹脂製の延伸シートを台紙の表面に用いることで、ヒゲの発生を抑制することができ、台紙の抜き加工性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明において、台紙のガーレ柔軟度は2.5~6gFとする。ガーレ柔軟度は、主に樹脂製シート等のこわさ(曲げ反発性)を評価するための指標である。ガーレ柔軟度を2.5gF以上とすることで、台紙に対して十分なコシを与えることができるため、台紙に折り目をつけて商品棚等に展示したときに、台紙全体が波打つように湾曲することを抑制できる。すなわち、台紙の折加工性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、台紙のスプリングバック値(以下「S値」ともいう)は0.5以下とする。スプリングバックとは、板状材料を所定の曲げ角度で曲げた後、弾性的効果により曲げた角度が復帰する現象をいい、スプリングバック値は、最初の曲げ角度に対する復帰後の曲げ角度の比で定義される。すなわち、スプリングバック値が大きすぎると、台紙の標示部が上向きになりすぎてしまい、この標示部が消費者から見えづらくなる。すなわち、POP用台紙の視認性が低下する。そこで、本発明では、このスプリングバック値を0.5以下に抑えることで、POP用の台紙としての適正な視認性を維持できる。
【0013】
本発明に係る台紙において、無延伸シートAの厚みは、延伸シートBの平均厚みに対して3~6倍であることが好ましい。延伸シートの平均厚みとは、延伸シートの総厚みMを延伸シートの積層数N(Nは1以上の整数)で割った値を意味する。例えば、無延伸シートAの両側に延伸シートBが積層されている場合は、延伸シートの平均厚みとは、2つの延伸シートBの厚みの合計値を2(積層数)で割った値となる。延伸シートの平均厚みに対する無延伸シートAの厚み割合が高すぎると、POP用台紙のガーレ柔軟度が低くなり、台紙が波打ったり、まっすぐ折ることが難しくなる場合がある。一方、無延伸シートAの厚み割合が低すぎると、POP用台紙のガーレ柔軟度が高くなり、手で折り目や曲げ部を施すことが困難になる場合がある。このため、本発明に係る台紙をPOP用として適切に機能させるためには、無延伸シートAの厚みは、延伸シートBの平均厚みに対して3~6倍の範囲とすることが好ましく、3.4~5倍がより好ましい。
【0014】
本発明に係る台紙において、延伸シートBは無延伸シートAの両面に積層されていることが好ましい。これにより、台紙の反り(カール)を抑制するとともに、台紙全体の剛性を高めることができる。また、無延伸シートAの両面に積層された延伸シートBの厚みは、同じであっても異なっていてもよい。
【0015】
本発明に係る台紙において、折り目部は延伸シートBの延伸方向と略平行に設けられていることが好ましい。なお、略平行とは、折り目部と延伸シートの延伸方向の角度差が2度以内であれば許容されることを意味する。このように延伸シートの延伸方向に沿って台紙に折り目を付けることにより、スプリングバック値を上記した所望範囲内としやすくなる。
【0016】
本発明に係る台紙において、無延伸シートAはオレフィン系樹脂製であることが好ましい。無延伸シートAをオレフィン系樹脂製とすることにより、店頭掲示の際、冷蔵庫や冷凍庫掲示で室温との気温差による結露が起こった場合でも、POPのヨレ等による視認性悪化することなく掲示可能となる。またポリオレフィン系樹脂を使用すれば安価に提供することができ、コストメリットもある。さらに、無延伸シートAと延伸シートBに同じオレフィン系樹脂を使用することで、使用済みPOPを回収して再原料化、すなわちリサイクルをすることも可能となる。
【0017】
本発明に係る台紙において、無延伸シートAはフィラーを含有することが好ましい。無延伸シートAがフィラーを含有することで、台紙の不透明度を向上させることができ、よりPOPに適した台紙となる。なお、フィラーの種類としては、無機フィラーと有機フィラーのどちらでもよいが、無機フィラーのほうが台紙の不透明度を向上させるという観点においては効果的である。また、有機フィラーを採用する場合に、不透明度向上のために中空フィラーを採用するとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、折加工性、視認性、及び抜き加工性に優れ、POPとしての用途に適した台紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、POP用台紙の実施形態を示している。
図2図2は、折り目に沿って折り曲げられたPOP用台紙を支持レーンの溝に差し込んだ状態を模式的に示した側面図である。
図3図3は、POP用台紙の断面構造を模式的に示している。
図4図4は、スプリングバック値の測定方法を示している。
図5図5は、折加工性の評価方法を示している。
図6図6は、視認性の評価方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0021】
図1は、POP用台紙10の代表的なパターンを示している。また、図1には、各パターンの寸法例が表記されている。ただし、図1(a)に示した第1パターンと図1(b)に示した第2パターンは、POP用台紙の一例であり、本発明の台紙の形状や寸法はこれに限定されるものではない。また、図1では、本発明に係る樹脂製台紙の製造時における樹脂の流れ方向(MD)と、その直交方向(TD)を矢印で示している。
【0022】
図1に示されるように、第1パターンと第2パターンの共通点として、POP用台紙10は、商品の広告や値段等を印刷するための標示部11と、この標示部11を支持するための支持部12とに分けられる。また、支持部12は、端部12aと中間部12bとに分けられる。この中間部12bは、端部12aと標示部11の間に位置する部位である。具体的には、台紙10のMD方向と略並行に山折線13と谷折線14が形成されている。山折線13によって、標示部11と支持部12とが区分けされる。また、谷折線14によって、支持部12のうち、端部12aと中間部12bとが区分けされる。
【0023】
図2は、図1に示したPOP用台紙10を山折線13と谷折線14に沿って折り曲げたものを、支持レーン20の溝に差し込んだ状態を示している。なお、図2に示された台紙10は、図1(b)の第2パターンに対応したものであるが、図2のように側面から見た状態は、基本的に図1(a)の第1パターンも同様である。図2に示されるように、POP用台紙10は、山折線13と谷折線14に沿って折り曲げた後、この谷折線14の先端を支持レーン20の溝に差込むことによって、店頭の商品棚などに展示される。この谷折線14が溝に差し込まれることによって、台紙10は支持レーン20上に保持される。また、台紙10の標示部11は、支持レーン20の正面側に垂れ下がるような格好となる。これにより、台紙10の標示部11に印刷された広告や値段を消費者に対して提示できる。
【0024】
図1(a)に示した第1パターンでは、台紙10の支持部12の横幅が、標示部11の横幅よりも狭く形成されている。特に、支持部12の中間部12bには、端部12aの横幅よりも更に狭く加工されたくびれ状の部位が設けられている。台紙10を第1パターンのような形状とすることで、標示部11を目立たせることができる。他方で、図1(b)に示した第2パターンでは、台紙10全体がMD方向を長辺とする短冊状(矩形状)に成型されている。このため、第2パターンは、標示部11と支持部12の横幅が一致する。POP用台紙10の形状は、第1パターンと第2パターンのどちらを採用することとしてもよい。なお、台紙10は、基本的に谷折線14を有するものであれば、その他の様々な形状とすることもできる。つまり、山折線13は省略してもよい。山折線13を省略した場合、標示部11は支持レーン20の溝に差し込まれた谷折部14の位置から、緩やかにカーブを描いて支持レーン20の正面側に垂れ下がるような格好になる。
【0025】
また、折加工性の観点から、台紙10の山折線13と谷折線14に沿って、この台紙10の表面側又は裏面側にミシン目を形成しておいてもよい。例えば、図1に示した第1パタ及び第2パターンの台紙10には、その表面側に、山折線13と谷折線14に沿ってミシン目が形成されている。
【0026】
また、図1では、ブランクシートから台紙10を打ち抜き加工した際に、この台紙10と残余の抜き代との連結部とされていた部位を符号15(黒丸)で示している。打ち抜き加工を行う際には、この連結部15を、台紙10の周縁に2~4箇所程度設けておくとよい。この連結部15は、台紙10を抜き代から分離する際に、例えば人手によって破断される。従来、この連結部15には、ヒゲ(繊維状の樹脂片)が発生しやすいとされていたが、詳しくは後述するとおり、本発明によればこのヒゲの発生を抑制することができる。
【0027】
図3は、POP用台紙10の断面構造を示している。図3に示されるように、本実施形態において、台紙10は、熱可塑性樹脂製の無延伸シートAと、この無延伸シートAの両面に設けられた延伸シートBとが厚み方向に積層した構造となっている。なお、本実施形態では、無延伸シートAの両面に延伸シートBを積層しているが、延伸シートBは無延伸シートAの片面のみに積層することとしてもよい。
【0028】
無延伸シートAは、熱可塑性樹脂製のシートであり、その製造時に延伸処理が行われていないものが用いられる。無延伸シートAに使用する熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、無延伸シートAを構成する樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。これらの中でも、安価であることからポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。また無延伸シートAと、後述する延伸シートBの両方にポリオレフィン系樹脂を使用することにより、使用済みPOPを回収してリサイクルすることが容易になるため好ましい。なお、上記熱可塑性樹脂の原料は、石油資源由来であっても、バイオマス原料由来であっても、その両者の併用であってもよい。また上記熱可塑性樹脂は、フレッシュ樹脂であってもリサイクル樹脂であっても、その両者の併用であってもよい。また、無延伸シートAは、単層であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。
【0029】
無延伸シートAは、フィラーを含有することが好ましい。フィラーを含有することにより、POP用台紙10の不透明度を所望の範囲に調整しやすくなる。フィラーは、無機フィラーであってもよいし、有機フィラーであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。有機フィラーとしては、無延伸シートAの主要成分樹脂の融点より高い融点またはガラス転移温度を有するものが使用できる。例えば無延伸シートAの主要成分がオレフィン系樹脂である場合、使用される有機微細粉末としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で、融点が120~300℃またはガラス転移温度が120~280℃を有するものを挙げることができる。フィラーの平均粒径は、通常0.01~15μm程度である。なお、有機フィラーとしては、POP用台紙の不透明度向上に効果的であることから、中空樹脂粒子が好ましい。フィラーを含有する場合、その含有量は、通常15~35質量%程度である。
【0030】
延伸シートBは、熱可塑性樹脂製のシートであり、その製造時に延伸処理が行われたものが用いられる。延伸シートBに使用する熱可塑性樹脂の種類は特に制限されず、例えば無延伸シートAに使用する熱可塑性樹脂として挙げたものと同様の樹脂を使用することができる。延伸シートBは、単層であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。
【0031】
延伸シートBとしては、空孔率が5%以下のものが用いられる。特に延伸シートの空孔率は、3%以下であることが好ましく、無孔であることがより好ましい。空孔率が高すぎると、打ち抜き加工後のシートから台紙10を取り外した際にヒゲが生じる恐れがある。なお延伸シートBの「空孔率」とは、延伸シートBの全体積に対して同シート中の空孔が占める体積の割合(体積率)を意味する。延伸シートBの空孔率は、空孔が同シート全体に均一に分布している前提で、同シートの断面に対して空孔が占める面積の割合(面積率)と等しい。そのため本発明における延伸シートBの空孔率は、同シートの断面を走査型電子顕微鏡により観察し、画像解析装置に観察画像を取り込み、同観察領域を画像解析することによって算出した、断面上の空孔の面積率として得ることができる。具体的には、延伸シートBからガリウム収束イオンビーム等の手法によって空孔が潰れないように断面観察用の試料を作製する。この試料の断面観察を、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM-6490)等を使用して適切な倍率(例えば2000倍等)で行う。得られた断面写真の観察領域を画像解析装置((株)ニレコ製、商品名:LUZEX AP)等を使用して、試料断面中の空孔が占める面積の割合(面積率)を算出し、これを空孔率とすることができる。
【0032】
延伸シートBは、フィラーを含有していてもよい。延伸シートBにおけるフィラーの含有量は、通常40質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましく、フィラーを含有しないことが特に好ましい。
【0033】
なお、延伸シートBとしては、空孔率が5%以下であれば、例えばガーレ柔軟度が0.20~0.50gF程度の市販の熱可塑性樹脂延伸シートを使用してもよい。
【0034】
本発明において、無延伸シートA及び延伸シートBは、上記以外にも、必要に応じて、安定剤、光安定剤、分散剤、及び滑剤等の公知の添加剤をさらに含有してもよい。
【0035】
本発明に係るPOP用台紙10は、上記した熱可塑性樹脂製の無延伸シートAの片面又は両面に、熱可塑性樹脂製の延伸シートBを貼り合わせることにより得られる。特に無延伸シートAの両面に延伸シートBを貼り合わせることにより、台紙10のカールが抑制されるとともに、剛性が高まるという利点がある。
【0036】
無延伸シートAに延伸シートBを一体に貼り合わせる方法は種々あるが、その中でも以下に示す(1)~(3)のいずれかの方法であることが好ましい。
(1)無延伸シートA用の樹脂組成物を押出機内で溶融混練した後、その樹脂組成物を共押出ダイによって押し出す。その際に、無延伸シートA用の樹脂組成物が未だ溶融状態を保っているうちに、その樹脂組成物の熱を利用して、その樹脂組成物の片面に金属ロール又はゴムロールによって延伸シートBを加圧溶着させる。(サーマルラミネート法)
(2)無延伸シートAと延伸シートBをホットメルト接着剤又は溶剤型接着剤で貼り合わせる。
(3)上記(2)の場合に、共押出法により公知の接着性ホットメルト接着剤層を無延伸シートAの表面に設けるか、ホットメルト接着剤層を備える延伸シートBを用いる。
なお、ホットメルト接着剤および溶剤型接着剤としては、公知のものから選択して使用することができる。例えば特開平8-332690号公報に記載の接着剤などを使用することができる。
【0037】
本発明の台紙10は、そのガーレ柔軟度が2.5~6gFの範囲とされる。特に台紙10のガーレ柔軟度は、3~5gFであることが好ましい。POP用の台紙10の形状は、その設置場所や目的によって様々である。通常は台紙10の設置者などが、所望の形状に打ち抜き加工されたシートからPOP用台紙10を手でむしり取り、折り目や曲げ部を施して店頭に設置する。このとき、特に図2(b)に示したような長い短冊状の台紙10を長辺と略平行に山折りにする場合、台紙10自体の剛性が低すぎると山折り後の台紙10が波打ったり、まっすぐ折ることが難しくなる。一方、台紙10の剛性が高すぎると、手で折り目や曲げ部を施すことが困難になる。このため、POP用途を想定した場合、台紙10のガーレ柔軟度は2.5~6gFの範囲内とすることが好ましい。
【0038】
[ガーレ柔軟度の測定方法]
本願明細書において、ガーレ柔軟度は、JAPAN TAPPI No.40:2000に準拠し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で、ガーレ剛軟度試験機(商品名:GAS-100、大栄科学精器製作所社製)を用いて、台紙のMD方向(長手方向)とTD方向(幅方向)それぞれについて測定する。特に、延伸シートBの延伸方向に対するガーレ柔軟度が、上記した2.5~6gFの範囲を満たすことが好ましい。また、延伸シートBが二軸延伸シートの場合、シートの縦方向(MD)及び横方向(TD:Transverse Direction)の少なくとも一方の延伸方向のガーレ柔軟度が上記範囲を満たすことが好ましく、両方の延伸方向におけるガーレ柔軟度が上記範囲を満たすことがより好ましい。
【0039】
本発明の台紙10は、そのスプリングバック値(S値)が0.5以下とされる。特に台紙のS値は、0.4以下であることが好ましく、0.37以下であることが特に好ましい。S値の下限は特に制限されないが、0であってもよいし、0.1又は0.2であってもよい。台紙10を山折線13で折り曲げた後にその折り曲げ状態を解放すると、台紙10の弾性的効果により山折線13の角度が復元して標示部11が上向きになる。このとき、台紙10のS値が大きすぎると、標示部11が上向きになりすぎてしまい、消費者が標示部10の印刷を見にくくなる。このため、POP用台紙10の視認性を高めるために、S値は0.5以下とすることが適切である。
【0040】
[スプリングバック値の測定方法]
図4は、本願明細書におけるスプリングバック値の測定方法を示している。すなわち、スプリングバック値は次の方法により測定する。まず、測定対象となる台紙から試験片(縦7.0cm×横6.5cm)を作製し、その短辺から3.2cmの部分に、この短辺と平行なミシン目(ピッチ1mm,幅0.15mm,深さ0.10mm)を入れる(図4(a)参照)。その後、試験片をミシン目に沿って谷折りにした後、プレス機にて20℃、荷重0.5MPaで10秒間プレスする(図4(b)参照)。荷重除荷後、25℃、相対湿度30RH%で10分間放置し、戻った角度θを測定する(図4(c)参照)。この角度θの測定は3回行い、その平均値を用いて、次の式にてスプリングバック値(Δθ/θ)を求める。
式:Δθ/θ=(θ-0°)/(180°-0°)=θ/180°
なお、このスプリングバック値の計算式は、『材料』(第34巻第379号p98-102)における「用紙におけるスプリングバックと折りたたみ特性」の記載の式を参考にしたものである。
【0041】
本発明において、POP用台紙10の不透明度に特に制限はなく、得られる台紙10の用途やデザインに応じて適宜設定すればよい。ただし、台紙10の不透明度は、標示部11に表示する情報の視認性の観点から、80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましい。なお、本発明における不透明度は、JIS-P-8149-2000に準拠して求められた値である。
【0042】
無延伸シートAの厚みと延伸シートBの平均厚みの比は、3~6:1であることが好ましく、3.4~5:1であることがより好ましい。延伸シートBの平均厚みに対する無延伸シートAの厚み割合が高すぎる場合(すなわち延伸シートBの厚み割合が低すぎる場合)、台紙10のガーレ柔軟度が低くなり、台紙10が波打ったり、まっすぐ折ることが難しくなる場合がある。このため、無延伸シートAの厚み割合が高すぎるものは、POP用の台紙10としては適さない。一方で、延伸シートBの平均厚みに対する無延伸シートAの厚み割合が低すぎる(すなわち延伸シートBの厚み割合が高すぎる)と、台紙10のガーレ柔軟度が高くなり、手で折り目や曲げ部を施すことが困難になる場合がある。このため、台紙10をPOP用として用いることを想定した場合、無延伸シートAと延伸シートBの厚み比は上記範囲とすることが好ましい。無延伸シートAの両面に積層された延伸シートBの厚みは、同じであっても異なっていてもよい。
【0043】
台紙10の総厚みは、その材料に応じて、POP用途として適切な不透明度や、ガーレ柔軟度、及びスプリングバック値を満たすように適宜設定すればよい。例えば、POP用台紙10の総厚みは、通常100~800μmであり、250~600μmであることが好ましく、300~400μm程度であることが特に好ましい。台紙10が薄すぎると不透明度およびガーレ柔軟度の値が本発明の範囲より小さくなりやすい。一方で、台紙10が厚すぎるとガーレ柔軟度およびスプリングバック値が大きくなりやすい。
【実施例0044】
以下、本発明のPOP用台紙を実施例に基づいてより具体的に説明するとともに、実施例と比較例の対比により本発明の効果を検証する。
【0045】
[実施例1]
熱可塑性樹脂無延伸シートAとして、プロピレン・エチレンランダム共重合体「商品名;ノバテックFX-4、日本ポリケム(株)製」(a1)と、MFR2.3g/10分のプロピレン単独重合体「商品名;ノバテックFY6C」55重量%、粒径1.5μmの炭酸カルシウム45重量%を配合した組成物(a2)とを、それぞれ別々の押出機で220℃の温度で溶融混練し、一台のダイ内に供給しダイ内で積層させた後、押し出して(a1)/(a2)/(a1)の三層構造のシートを得た。無延伸シートAの厚さは、240μmであり、各層の厚さは、それぞれa1:15μm/a2:220μm/a1:5μmであった。また、熱可塑性樹脂延伸シートBとして、(株)ユポ・コーポレーション製の厚み60μm、不透明度30%、ガーレ柔軟度0.32mgFのポリオレフィン系合成紙(商品名;ユポトレースTPRA60、空孔率0.1%)を用いた。次いで、延伸シートBを無延伸シートAが未だ軟化状態を保っているうちに、無延伸シートAの両面にサーマルラミネートして、厚みが350μm、不透明度98%の複合積層樹脂シートを得た。最後に、得られた積層シートを、図2(a)の第1パターンと図2(b)の第2のパターンの形状及び寸法に打ち抜き、POP用台紙を得た。このPOP用台紙を実施例1とした。
【0046】
[比較例1]
比較例1として、ポリオレフィン系樹脂95質量%および無機フィラー5質量%を含む、厚み340μmのシーダム(株)製の無延伸ポリプロピレンシートを使用した。この無延伸ポリプロピレンシートを実施例1と同じ形状及び寸法に打ち抜き、POP用台紙を得た。
【0047】
[比較例2]
比較例2としては、実施例1の延伸シートBの代わりに、(株)ユポ・コーポレーション製の厚み60μm、不透明度85%のポリオレフィン系合成紙(商品名;ユポタック原紙SGS60、空孔率40%)を使用した。それ以外は実施例1と同様にして、厚みが350μm、不透明度99%の複合積層樹脂シートを得た。この複合積層樹脂シートを実施例1と同じ形状及び寸法に打ち抜き、POP用台紙を得た。
【0048】
[比較例3]
(I)ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)80質量部、炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製、平均粒子径:1.25μm)19.5質量部、および二酸化チタン(商品名:タイペークCR-60、石原産業社製、平均粒子径:0.21μm)0.5質量部を混合した樹脂組成物(5)を、270℃に設定した押出機で溶融混練した。その後、これをシート状に押し出し、さらにこれを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃にまで再度加熱させた後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向に4.8倍の延伸を行って縦延伸樹脂フィルムを得た。
(II)また、ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)46質量部、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名:モディックP928、三菱ケミカル社製)1質量部、炭酸カルシウム(商品名:カルファインYM23、丸尾カルシウム社製、平均粒子径:0.23μm)52.5質量部、および二酸化チタン(商品名:タイペークCR-60、石原産業社製、平均粒子径:0.21μm)0.5質量部を混合した樹脂組成物(1)を、高速ミキサーで混合した後、シリンダー温度を210℃に設定した二軸混練押出機を用いて、ベント孔で脱気しながら溶融混練した。また別に、ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)48.5質量部、エチレン-環状オレフィン共重合体(商品名:アペル 6011T、三井化学社製)48.5質量部、および炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製、平均粒子径:1.25μm)3質量部を混合した樹脂組成物(4)を、270℃に設定した押出機で溶融混練した。
次いで、これらの樹脂組成物(1),(4)を1台の多層ダイに供給してダイ内部で積層した後、得られた積層物をダイからシート状に共押し出しし、これを上述(I)の工程で得られた縦延伸樹脂フィルムの一方の面上に、樹脂組成物(1)の層が外側となるように積層し、三層構造の積層シートを得た。
(III)さらに、上述(II)とは別の押出機2台を用いて上述(II)と同様の手順で樹脂組成物(1)および樹脂組成物(4)をそれぞれ溶融混練したものを、上述(II)とは別の多層ダイに供給してダイ内部で積層した後、得られた積層物をダイからシート状に共押し出しし、これを上述(II)の工程で得られた三層構造の積層シートの縦延伸樹脂フィルム側(上述の樹脂組成物(5)の層側)の面上に、樹脂組成物(1)の層が外側となるように積層し、(1)/(4)/(5)/(4)/(1)の五層構造の積層シートを得た。
(IV)得られた五層構造の積層シートを60℃にまで冷却した後、再び150℃にまで再加熱して、テンターを用いてシート幅方向に9倍延伸し、次いで165℃でアニーリング処理した。その後、再び60℃にまで冷却した後、耳部をスリットして、五層構造(一軸延伸/一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸/一軸延伸)の総厚み寸法300μm((1)/(4)/(5)/(4)/(1)=5μm/3μm/284μm/3μm/5μm)の積層樹脂シートを得た。なお、二軸延伸層(5)の空孔率は59%、一軸延伸層(1)/(4)の空孔率は全体で34%であった。
(V)最後に、得られた積層樹脂シートを実施例1と同じ形状及び寸法に打ち抜き、POP用台紙を得た。
【0049】
[測定方法]
■ガーレ柔軟度
実施例1及び比較例1~3のそれぞれについて、前述した[ガーレ柔軟度の測定方法]に従いガーレ柔軟度を測定した。
【0050】
■スプリングバック値
実施例1及び比較例1~3のそれぞれについて、前述した[スプリングバック値の測定方法]に従いガーレ柔軟度を測定した。
【0051】
[評価方法]
■抜き加工性
実施例1及び比較例1~3のそれぞれについて、次の方法により抜き加工性を評価した。すなわち、実施例1及び比較例1~3にて得られた打ち抜き加工後のシートから、図1(a)の第1パターンのPOP用台紙を手でむしり取り、台紙と抜き代の連結部を破断させた。打ち抜いた部分の切断面のヒゲ発生状態と、手でむしり取った連結部のヒゲ発生状態を目視観察し、下記評価基準にて打抜き性を評価し、「○」以上を合格とした。
(評価基準)
〇:切断面、連結部いずれも、ヒゲの発生がほぼ認められなかった。
△:切断面には大きなヒゲ発生は認められなかったが、連結部にはヒゲの発生があった。
×:切断面、連結部のいずれにも、ヒゲの発生が認められた。
【0052】
■折加工性
実施例1及び比較例1~3のそれぞれについて、次の方法により抜き加工性を評価した。すなわち、実施例1及び比較例1~3にて得られた打ち抜き加工後のシートから、図1(a)の第2パターンのPOP用台紙(幅7.0cm×長さ70cm)を手でむしり取り、長辺側端部から3.2cmの位置で長辺と並行に山折りし、反対側の長辺側端部から1.0cmの位置で長辺と並行に谷折りにした。その後、図2に示したように、POP用台紙の谷折線のみを、支持レーンの溝(幅1.0cm、深さ0.7cm)に差し込み、POP用台紙を支持レーンに設置した。支持レーンに設置した台紙を、図5に示されるように、俯瞰視点から観察し、台紙の波打ちの数と量を評価した。なお、波打ち数は山及び谷それぞれをカウントし、波打ち量が1.0cm以下であればカウントしないこととした。また、波打ち量は、支持レーンの溝の中心から山及び谷の頂部までの距離とした。折加工性の評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
〇:波打ち数が2以下かつ、最大波打ち量が2.0cm未満
△:波打ち数が3であること、または最大波打ち量が2.0cm以上3.0cm未満であることの少なくとも一方を満たす
×:波打ち数が4以上であること、または最大波打ち量が3.0cm以上であることの少なくとも一方を満たす。
【0053】
■視認性
実施例1及び比較例1~3のそれぞれについて、次の方法により視認性を評価した。
すなわち、図6に示したように、「折加工性」の評価に用いたPOP用台紙及び支持レーンを、地面から高さ1.65の位置に設置した。設置位置から0.60m離れた高さ1.5mの位置にて、設置したPOP用台紙を観察し、POP用台紙の標示部に印字された、文字サイズ12ptの漢字を含む11文字を確認し、その視認性を評価した。視認性の評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
〇:良好(1秒以内に読むことができる。)
×:不良(読むのに1秒より長い時間を要した。)
【0054】
実施例1及び比較例1~3について、上記の測定結果及び評価結果を表にまとめると次のとおりである。
【表1】
【0055】
上記の結果から、POP用台紙のガーレ柔軟度は、折加工性の観点から、実施例1のように4.3gF程度が最適であることが確認された。また、比較例2においても、折加工性の評価試験においてPOP用台紙に波打ちは発生しなかったことから、POP用台紙のガーレ柔軟度は、3.9gF程度でも問題ないといえる。また、比較例3においては、折加工性の評価試験においてPOP用台紙に若干波打ちは発生したものの、ほとんど目立たない程度であり実際の使用に際して特段の問題はないことが確認された。このため、POP用台紙のガーレ柔軟度は、2.8gF程度でも許容し得る。これらの結果から、POP用台紙のガーレ柔軟度の下限値は、2.5gF程度に設定することが妥当である。また、POP用台紙のガーレ柔軟度の下限値は、折加工性の観点からは高く設定しても特に問題はないといえることから、実施例1のガーレ柔軟度の約1.4倍程度の6gFであれば十分に許容範囲であると推察される。
【0056】
また、POP用台紙のスプリングバック値(S値)は、視認性の観点から、実施例1、比較例1、及び比較例2のように、0.36~0.39程度とすることが適正であることが確認された。他方で、実施例3のように、S値が0.5を超えると、視認性が不良となることがわかった。これらの結果から、POP用台紙のS値は0.5以下とすることで、視認性を確保することができるといえる。
【0057】
また、比較例2及び比較例3のように、多孔質層を含むシートはヒゲの発生が認められ、抜き加工性に劣ることが確認された。特に全層が多孔質層である比較例3は、ヒゲの発生が顕著であった。一方で、実施例1及び比較例1のように、多孔質層を含まないか、多孔質層を含んでいても空隙率が0.1%程度であれば、ヒゲの発生はほとんど見受けられなかった。このため、抜き加工性の観点からは、空隙率が5%以下のシートを用いることが好適であるといえる。
【0058】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態及び実施例の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0059】
10…POP用台紙 11…標示部
12…支持部 12a…端部
12b…中間部 13…山折線
14…谷折線 15…連結部
20…支持レーン
A…無延伸シート B…延伸シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6