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特開2022-121866水冷用のスプレーノズルの運転方法、冷却水の噴射装置
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  • 特開-水冷用のスプレーノズルの運転方法、冷却水の噴射装置 図1
  • 特開-水冷用のスプレーノズルの運転方法、冷却水の噴射装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121866
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】水冷用のスプレーノズルの運転方法、冷却水の噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20220815BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20220815BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20220815BHJP
   B05B 15/52 20180101ALI20220815BHJP
【FI】
B22D11/16 Z
B22D11/124 F
B21B45/02 320
B05B15/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018826
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142023
【氏名又は名称】株式会社共立合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信宏
(72)【発明者】
【氏名】塚口 友一
(72)【発明者】
【氏名】千本 剛
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】浴本 貴生
【テーマコード(参考)】
4D073
4E004
【Fターム(参考)】
4D073AA10
4D073BB01
4D073BB03
4D073CC07
4D073CC17
4E004KA07
4E004KA20
4E004MD10
(57)【要約】
【課題】水冷用のスプレーノズルにおいて、詰まりをより確実に抑制する。
【解決手段】冷却水の噴射の停止の後、気体の停止と気体の噴射の組み合わせを少なくとも2回繰り返す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷用のスプレーノズルの運転方法であって、
冷却水の噴射の停止の後、気体の停止と気体の噴射の組み合わせを少なくとも2回繰り返す、スプレーノズルの運転方法。
【請求項2】
前記気体の噴射において噴射される気体の流量は、1回あたり1m/h以上20m/hである請求項1に記載のスプレーノズルの運転方法。
【請求項3】
前記気体の噴射において気体の噴射時間は、1回あたり10秒以下である、請求項1又は2に記載のスプレーノズルの運転方法。
【請求項4】
冷却水の噴射装置であって、
スプレーノズルと、
前記スプレーノズルへの気体、及び、冷却水の供給及び停止を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記冷却水の噴射の停止の後、前記気体の停止と前記気体の噴射の組み合わせを少なくとも2回繰り返す制御を行う、
冷却水の噴射装置。
【請求項5】
前記気体の噴射において噴射される気体の流量は、1回あたり1m/h以上20m/hである請求項4に記載の冷却水の噴射装置。
【請求項6】
前記気体の噴射において気体の噴射時間は、1回あたり10秒以下である、請求項4又は5に記載の冷却水の噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳片、鋼板、鋼管等の製造に用いられる水冷用のスプレーノズルの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋳片、鋼片、鋼板又は鋼管等の製造工程におけるこれら材料の冷却は、適切な表面性状や組織を得るため、及び、均質化や安定した操業を確保する観点から重要である。
【0003】
この冷却のために、冷却水を材料に供給する手段として水冷用のスプレーノズルが用いられる。水冷用のスプレーノズルは、ノズル吐出孔から冷却水を材料に向けて噴射することで冷却対象に冷却水を供給して冷却を行う。
一方、スプレーノズルのノズル吐出孔は細いため詰まりが生じやすい。そして詰まりが生じると材料の冷却ができなくなり、製品の品質や製造に影響を与えてしまう。
【0004】
特許文献1、特許文献2にはノズル吐出孔の詰まりを防止するために空気をパージすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-143998号公報
【特許文献2】公開実用昭和56-45558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように空気をパージするのみでは十分に詰まりを防止することができるとは言えなかった。
【0007】
そこで本発明は、ノズル吐出孔の詰まりをより確実に抑制することができる水冷用のスプレーノズルの運転方法を提供することを課題とする。また、そのための冷却水の噴射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、水冷用のスプレーノズルの運転方法であって、冷却水の噴射の停止の後、気体の停止と気体の噴射の組み合わせを少なくとも2回繰り返す、スプレーノズルの運転方法である。
【0009】
本発明の他の態様は、冷却水の噴射装置であって、スプレーノズルと、スプレーノズルへの気体、及び、冷却水の供給及び停止を制御する制御装置と、を備え制御装置は、冷却水の噴射の停止の後、気体の停止と気体の噴射の組み合わせを少なくとも2回繰り返す制御を行う、冷却水の噴射装置である。
【0010】
気体の噴射において噴射される気体の流量は、1回あたり1m/h以上20m/hとすることができる。
【0011】
気体の噴射において気体の噴射時間は、1回あたり10秒以下とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より確実にスプレーノズルの詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】冷却水の噴射装置10の構成を模式的に表す図である。
図2】スプレーノズル11の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.冷却水の噴射装置
図1には冷却水の噴射装置10の構成を模式的に示した。図1に示したように、冷却水の噴射装置10は、スプレーノズル11及び制御装置12を有している。スプレーノズル11には冷却水が流れる水配管13及び空気が流れるエア配管14が接続されている。また、水配管13には電磁弁15が設けられ、電磁弁15の開閉により冷却水の供給及びその停止が切り替えられ、エア配管14には電磁弁16が設けられ、電磁弁16の開閉により空気の供給及びその停止が切り替えられる。この電磁弁15及び電磁弁16は電気的に制御装置12に接続され、制御装置12により電磁弁15及び電磁弁16の開閉が制御されている。以下、スプレーノズル11及び制御装置12について説明する。
なお、本形態では空気を用いているがこれに限らず他の気体が用いられてもよい。
【0015】
<スプレーノズル>
図2には、1つの形態にかかるスプレーノズル11の構造を示した。このスプレーノズル11は連続鋳造工程における鋳片の二次冷却用のスプレーノズルである。ただしこれは例示であり、他の工程の冷却に用いるスプレーノズルについても同様に考えることができる。他の工程としては例えば、鋳片の分塊圧延、形鋼圧延工程、熱間圧延工程等を挙げることができる。
【0016】
スプレーノズル11は、内側に中空部を有する混合器11a、導管11b、及び先端部材としてのノズルチップ11cを有して構成されている。
図2からわかるように、水配管13及びエア配管14が混合器11aに接続され、その中空部で空気と冷却水とが混合するように構成されている。また、導管11bの一端が混合器11aに接続されており、導管11bの他端にノズルチップ11cが配置されている。
従って、水配管13により供給された冷却水、及び、エア配管14により供給された空気は、混合器11aの中空部にて混合され、導管11bを流れてノズルチップ11cに達し、ノズルチップ11cに設けられたノズル吐出孔から材料(冷却対象)に向けて噴射される。
【0017】
ここで、ノズルチップ11cには表面処理による被覆が設けられてもよい。これによりさらにスプレーノズルの異物が除去されやすくなり、詰まりの抑制を効果的に行うことができる。表面処理の種類は特に限定されることはないが、例えばポリテトラフルオロエチレンや金属(例えば、Ni、Ni合金、Au、Au合金)等を挙げることができる。
【0018】
<制御装置>
制御装置12は、電気的に電磁弁15及び電磁弁16に接続され、電磁弁15及び電磁弁16の開閉を制御する。この開閉の制御は制御装置12に保存されているプログラムに基づいて行われ、冷却水及び空気の供給及び停止が切り替えられる。
具体的な制御の内容は、後述する水冷用のスプレーノズルの運転方法において説明する。
【0019】
このような制御装置12としては特に限定されることはないが、コンピュータを挙げることができる。この場合、制御装置は、記憶されたプログラムに基づいて演算を行う演算子、演算の際の作業領域として機能するRAM、制御の根拠なるプログラムや得られたデータが保存される記憶装置、電磁弁の作動のタイミングを得るためのセンサなどの外部機器からの信号を受信するポートとなる受信装置、及び、電磁弁に対して開閉の指令のための信号を出力するポートとなる出力装置を備えている。
【0020】
2.水冷用のスプレーノズルの運転方法
次にスプレーノズルの運転方法について説明する。
【0021】
<冷却水の噴射時>
冷却対象を冷却するために冷却水を噴射する場面では、通常の通りに冷却水及び空気の供給がおこなわれ、スプレーノズルから冷却水と空気との混合流体が冷却対象に向けて噴射される。上記噴射装置10を用いる場合には、制御装置12に保存されたプログラムを演算子が演算し、その演算の結果に基づいた指令により、電磁弁15及び電磁弁16が開放状態とされ、水配管13から供給された冷却水、及び、エア配管14から供給された空気が、混合器11aの中空部にて混合され、導管11bを流れてノズルチップ11cに達し、ノズルチップ11cに設けられたノズル吐出孔から材料(冷却対象)に向けて噴射される。
【0022】
<冷却水の停止後>
冷却水の噴射を停止した後は、冷却水の供給は停止するとともに、「1回の空気の停止及び1回の空気の噴射」を1つの組み合わせとしてこの組み合わせを2回以上行う。これによりスプレーノズルのノズル吐出孔の異物を効率よく除去して、詰まりをより確実に抑制することができる。
繰り返しの回数は2回以上であれば特に限定されることはないが、回数が多いことで効果的に詰まりを抑制することができるため3回以上が好ましい。一方、回数を多くすることにより効果が飽和し、時間の無駄が生じる虞があるため、10回以下であることが好ましい。より好ましくは5回以下である。
【0023】
1回あたりの空気の停止時間は特に限定されることはないが、10秒以下であることが好ましく、より好ましくは5秒以下である。一方、1回あたりの空気の停止時間は1秒以上であることが好ましい。
また、1回あたりの空気の停止時間はその直後に行われる空気の噴射時間より短いことが好ましい。
【0024】
1回あたりの空気の噴射時間は特に限定されることはないが、20秒以下が好ましく、10秒以下であることが好ましい。一方、1回あたりの空気の噴射時間は2秒以上であることが好ましい。
また、1回あたりの空気の噴射流量は限定されることはないが、1m/h以上20m/hであることが好ましい。より好ましくは5m/h以上15m/h以下である。
【0025】
上記噴射装置10を用いる場合には、制御装置12に保存されたプログラムを演算子が演算し、その演算の結果に基づいた指令により、電磁弁15が閉鎖され、電磁弁16が開閉を繰り返すことで、上記した空気の停止及び噴射が行われる。
【実施例0026】
発明者は、冷却水の噴射が終了した後に、断続的にエアを噴射することによりスプレーノズルに残っている冷却水に加速度を与えることができるため、スプレーノズルの先端からの水切れが良くなり、これによりスプレーノズルのノズル吐出孔の異物を効率よく除去して、詰まりを抑制することができると考えた。そこで実施例では、冷却水の噴射の終了後に空気のみの噴射を行い、当該空気のみの噴射後にスプレーノズルから垂れ落ちた冷却水を回収してその量を測定した。具体的には次のように試験を行った。
【0027】
(1)実際の製造を模擬するため、測定対象としたスプレーノズル(1つ)の周囲の雰囲気に440℃設定の熱風を流す。
(2)熱風を流し始めてから60分経過後に、スプレーノズルから空気を噴射し始める。
(3)スプレーノズルから空気を噴射し始めてから5秒後、合わせて冷却水を噴射し始める。冷却水の流量は25L/分である。
(4)冷却水を噴射し始めてから70秒経過した時点で冷却水の噴射を停止する。冷却水の停止後、5秒後に空気の噴射を停止する。
(5)この空気の噴射を停止してから5秒後から、表1に表したパターンで空気の噴射及び停止を行う。噴射する空気量は、10m/hである。また、各例についてそれぞれ3回試験を行った。
(6)各例において最後の空気の噴射を終えると同時にスプレーノズルの下に容器を置き、20秒間、スプレーノズルから落ちた冷却水を集め、その量(質量)を測定した。
【0028】
上記(5)における空気の噴射条件、及び、上記(6)で集まった冷却水の量(結果)を表1に示す。表1では、合計の空気噴射時間ごとに、空気の停止と噴射のパターンを変更した条件を示した。また、結果は、各例で得た水量の合計を試験回数(3回)で除した平均値とした。
【0029】
【表1】
【0030】
表1からわかるように、合計の空気噴射時間が同じである場合、いずれも複数回に亘って断続的に空気の噴射及び停止を繰り返すことで、検出水量が大きく低下している。すなわち、複数回に亘って断続的に空気の噴射及び停止を繰り返すことでスプレーノズル内に残留する冷却水を効率よく排除することができる。
スプレーノズル内に残留する冷却水はスプレーノズルの詰まりの原因の1つとなるため、冷却水の効率よい排除によりスプレーノズルの詰まりも抑制することが可能となる。
また、複数回の空気の噴射のうちでも、回数が多い方がその効果は顕著となる。従って、少なくとも2回の噴射であれば効果は認められるが、3回以上であることがより好ましい。
【符号の説明】
【0031】
10 冷却水の噴射装置
11 スプレーノズル
12 制御装置
13 水配管
14 エア配管
15 電磁弁
16 電磁弁
図1
図2