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特開2022-121874可変速増速機、及び可変速増速機の始動方法
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  • 特開-可変速増速機、及び可変速増速機の始動方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121874
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】可変速増速機、及び可変速増速機の始動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20220815BHJP
   H02P 5/747 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H02P5/46 H
H02P5/747
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018837
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 義行
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅博
(72)【発明者】
【氏名】宮田 寛之
【テーマコード(参考)】
5H572
【Fターム(参考)】
5H572AA11
5H572CC05
5H572DD02
5H572EE03
5H572FF01
5H572FF02
5H572HA04
5H572HB07
5H572HC08
5H572PP01
(57)【要約】
【課題】可変速増速機を始動させるに際し、起動電力の増加を抑えて電源系統への影響を抑える。
【解決手段】可変速増速機は、電動装置と、変速装置と、前記電動装置を始動させる場合に、電源から供給される一定の定格周波数の電力を前記電動装置に供給する電力供給部とを備える。前記電動装置は、前記変速装置の定速入力軸を回転させる定速ロータを有する定速電動機と、前記変速装置の可変速入力軸に接続されている可変速ロータを有し、発電機モードにて発電機として機能するとともに、電動機モードにて電動機として機能する可変速電動機と、を有する。前記電力供給部は、前記定速電動機及び前記可変速電動機に接続され、前記電動装置を始動させる場合に、前記定速電動機及び前記可変速電動機に起動電力を供給した後に、前記発電機モードとなった前記可変速電動機で生成された電力を前記定速電動機に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を発生する電動装置と、
前記電動装置から定速入力軸及び可変速入力軸に伝達される回転駆動力を変速させて出力軸を介して駆動対象に伝える変速装置と、
前記電動装置を始動させる場合に、電源から供給される一定の定格周波数の電力を前記電動装置に供給する電力供給部とを備え、
前記電動装置は、
前記変速装置の前記定速入力軸を回転させる定速ロータを有する定速電動機と、
前記変速装置の前記可変速入力軸に接続されている可変速ロータを有し、発電機モードにて発電機として機能するとともに、電動機モードにて電動機として機能する可変速電動機と、を有し、
前記電力供給部は、前記定速電動機及び前記可変速電動機に接続され、前記電動装置を始動させる場合に、前記定速電動機及び前記可変速電動機に起動電力を供給した後に、前記発電機モードとなった前記可変速電動機で生成された電力を前記定速電動機に供給する可変速増速機。
【請求項2】
前記電力供給部は、
前記電源に接続されて前記定速電動機及び前記可変速電動機に供給する電力を生成するインバータと、
前記インバータと前記可変速電動機とを接続する第一配線と、
前記インバータと前記可変速電動機との間で前記第一配線から分岐し、前記定速電動機に接続される第二配線と、
前記第二配線に配置され、前記インバータから前記定速電動機への電力の供給状態をオン状態及びオフ状態で切り替え可能な第一スイッチと、
前記電源と前記定速電動機とを接続する第三配線と、
前記第三配線に配置され、前記電源から前記定速電動機への電力の供給状態をオン状態及びオフ状態で切り替え可能な第二スイッチと、
前記第一スイッチ及び前記第二スイッチの切り替えを制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記電動装置を始動させる場合に、前記第一スイッチをオン状態とする共に前記第二スイッチをオフ状態とした後に、前記第二スイッチをオン状態とする共に前記第一スイッチをオフ状態とする請求項1に記載の可変速増速機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記インバータで生成する電力の周波数を、前記電源から供給される駆動電力の周波数に同期した場合に、前記第二スイッチをオフ状態からオン状態とする共に前記第一スイッチをオン状態からオフ状態とする請求項2に記載の可変速増速機。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の可変速増速機の始動方法であって、
前記定速電動機及び前記可変速電動機に前記電力供給部から電力を供給した後に、前記発電機モードとなった前記可変速電動機で生成した電力を前記定速電動機に供給する工程と、
前記電源のみから前記定速電動機に電力を供給する工程と、を含む可変速増速機の始動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変速増速機、及び可変速増速機の始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機等の回転機械を駆動するための可変速増速機として、定速電動機及び可変速電動機を有した電動装置と、遊星歯車変速装置と、を備えた構成が開示されている。定速電動機は、固定速シャフトを回転させて回転駆動力を発生する。固定速シャフトは、遊星歯車変速装置の定速入力軸を回転させる。可変速電動機は、可変速ロータを回転させる。可変速ロータは、遊星歯車変速装置の可変速入力軸を回転させる。遊星歯車変速装置は、定速入力軸及び可変速入力軸に伝達される回転駆動力を変速させて回転機械に伝える。このような構成の可変速増速機では、可変速電動機の回転数を変えることで、回転機械に接続される変速装置の出力軸の回転数を変える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/217483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、可変速増速機を始動させる際、定速電動機を始動させると、定格電力を超える大きな起動電力が発生することがある。その結果、定速電動機に電力を供給する商用電源等の電源系統に、電圧降下等の擾乱を発生させてしまうことがある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、可変速増速機を始動させるに際し、起動電力の増加を抑えて電源系統への影響を抑えることができる可変速増速機、及び可変速増速機の始動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る可変速増速機は、回転駆動力を発生する電動装置と、前記電動装置から定速入力軸及び可変速入力軸に伝達される回転駆動力を変速させて出力軸を介して駆動対象に伝える変速装置と、前記電動装置を始動させる場合に、電源から供給される一定の定格周波数の電力を前記電動装置に供給する電力供給部とを備え、前記電動装置は、前記変速装置の前記定速入力軸を回転させる定速ロータを有する定速電動機と、前記変速装置の前記可変速入力軸に接続されている可変速ロータを有し、発電機モードにて発電機として機能するとともに、電動機モードにて電動機として機能する可変速電動機と、を有し、前記電力供給部は、前記定速電動機及び前記可変速電動機に接続され、前記電動装置を始動させる場合に、前記定速電動機及び前記可変速電動機に起動電力を供給した後に、前記発電機モードとなった前記可変速電動機で生成された電力を前記定速電動機に供給する。
【0007】
本開示に係る可変速増速機の始動方法は、上記したような可変速増速機の始動方法であって、前記定速電動機及び前記可変速電動機に前記電力供給部から電力を供給した後に、前記発電機モードとなった前記可変速電動機で生成した電力を前記定速電動機に供給する工程と、前記電源のみから前記定速電動機に電力を供給する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の可変速増速機、及び可変速増速機の始動方法によれば、可変速増速機を始動させるに際し、起動電力の増加を抑えて電源系統への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る可変速増速機の構成を示す図である。
図2】上記可変速増速機の電動装置の構成を示す断面図である。
図3】上記可変速増速機の制御装置の機能ブロック図である。
図4】本開示の実施形態に係る可変速増速機の始動方法の手順を示すフローチャートである。
図5】本開示の実施形態に係る可変速増速機の始動方法において、定速電動機にインバータ及び可変速電動機から電力を供給する工程を示す図である。
図6】本開示の実施形態に係る可変速増速機の始動方法において、商用電源から定速電動機に駆動電力を供給する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示による可変速増速機、可変速増速機の始動方法を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
(可変速増速機の構成)
図1に示すように、本実施形態の可変速増速機1は、回転駆動力を発生する電動装置50と、電動装置50で発生した回転駆動力を変速させて駆動対象に伝える変速装置10と、電力供給部100と、を備えている。可変速増速機1は、例えば、圧縮機システム等の流体機械システムに適用することができる。可変速増速機1は、工場等の可変速増速機1が設置されるエリアに予め敷設され、一定の定格周波数の電力を供給可能な商用電源(電源)200から供給される電力によって駆動される。可変速増速機1及び商用電源200は、流体機械システムの一部を構成している。本実施形態の可変速増速機1の駆動対象は、例えば圧縮機Cである。
【0012】
電動装置50は、定速で回転する定速ロータ52を有する定速電動機51と、任意の回転数で回転する可変速ロータ72を有する可変速電動機71とを有している。定速ロータ52と可変速ロータ72は、それぞれ変速装置10と接続されている。
【0013】
定速電動機51は、定速電動機支持部51Sによって架台90に支持されている。可変速電動機71は、可変速電動機支持部71Sによって架台90に支持されている。変速装置10は、変速装置支持部10Sによって架台90に支持されている。これら支持部により、重量物である電動装置50及び変速装置10の確実な固定が可能となる。
【0014】
変速装置10は、電動装置50で発生した回転駆動力を変速させて駆動対象に伝える。本実施形態の変速装置10は、外歯車や内歯車で構成された複数の遊星歯車(不図示)や、太陽歯車(不図示)を有する遊星歯車変速装置である。変速装置10は、定速電動機51の駆動力によって定速で回転する定速入力軸Acと、可変速電動機71の駆動力によって任意の回転数で回転する可変速入力軸Avとを有している。定速入力軸Acは、円筒状の可変速入力軸Avの内部に挿通された状態で配置されている。変速装置10は、定速電動機51において定速で回転される定速入力軸Acと、可変速電動機71において回転速度が制御される可変速入力軸Avとにより得られた回転駆動力を、歯車によって変速して出力軸Aoに伝達している。つまり、可変速増速機1は、可変速電動機71の回転数を変えることによって、駆動対象に接続される変速装置10の出力軸Aoの回転数を変えることができる。
【0015】
以下、軸線Arが延びている方向を軸方向Daとする。可変速増速機1における軸方向Daの一方側を出力側Do、出力側Doの反対側を入力側Diとする。また、軸線Arを中心とする径方向を単に径方向Drという。本実施形態の可変速増速機1では、変速装置10に対して軸線方向の入力側Diに電動装置50が配置されている。また、電動装置50に対して出力側Doに変速装置10が配置されている。圧縮機Cは、可変速増速機1に対して出力側Doに配置されている。
【0016】
図2に示すように、定速電動機51は、軸線Arを中心として自転し、変速装置10の定速入力軸Acに接続される定速ロータ52と、定速電動機ケーシング61と、を有している。
【0017】
定速ロータ52は、軸線Arを中心として円柱状を成す定速ロータ軸53と、定速ロータ軸53の外周に固定されている導体56と、を有する。
【0018】
定速ステータ66は、定速ロータ52の導体56の径方向Drの外側Droに配置されている。この定速ステータ66は、複数のコイルで形成されている。
【0019】
定速電動機ケーシング61は、軸線Arを中心として円筒状を成し、内周側に定速ステータ66が固定されている定速電動機ケーシング本体62と、円筒状の定速電動機ケーシング本体62の軸方向Daの両端を塞ぐ蓋63i,63oとを有している。各々の蓋63i,63oには、定速ロータ軸53を、軸線Arを中心として自転可能に支持する定速ロータ軸受65i,65oが取り付けられている。
【0020】
定速ロータ軸53の入力側端は、定速電動機ケーシング61の入力側の蓋63iから、入力側に突出している。
【0021】
可変速電動機71は、軸線Arを中心として自転し、可変速入力軸Avに接続される可変速ロータ72と、可変速ロータ72の外周側に配置されている可変速ステータ86と、可変速ステータ86が内周側に固定されている可変速電動機ケーシング81と、を有している。
【0022】
可変速ロータ72は、可変速ロータ軸73と、可変速ロータ軸73の外周に固定されている導体76と、を有している。可変速ロータ軸73は、軸線Arを中心として円筒状を成し、軸方向Daに貫通した軸挿通孔74を有している。可変速ロータ軸73の軸挿通孔74には、定速入力軸Acが挿通されている。可変速ロータ軸73の出力側端には、径方向Drの外側Droに向かって広がる環状のフランジ73oが形成されている。
【0023】
可変速ステータ86は、可変速ロータ72の導体76の径方向Drの外側Droに配置されている。可変速ステータ86は、複数のコイルで形成されている。
【0024】
可変速電動機ケーシング81は、軸線Arを中心として円筒状を成し、内周側に可変速ステータ86が固定されている可変速電動機ケーシング本体82と、円筒状の可変速電動機ケーシング本体82の出力側端を塞ぐ出力側蓋83oと、可変速ステータ86よりも入力側に配置され円筒状の可変速電動機ケーシング本体82の内周側に固定されている入口側蓋83iと、を有している。各々の入口側蓋83i及び出力側蓋83oには、可変速ロータ軸73を、軸線Arを中心として自転可能に支持する可変速ロータ軸受85i,85oが取り付けられている。
【0025】
本実施形態の可変速増速機1において、定速ロータ52と、可変速ロータ72と、定速入力軸Acと、可変速入力軸Avと、出力軸Aoとは同一の軸線上に配置されている。
【0026】
図1に示すように、定速電動機51は、外部から電力を供給することによって定速ロータ52(内歯車17)を軸線Arの周方向の第一方向R1に回転させるように設定されている。定速ロータ52が第一方向R1に回転することによって、定速入力軸Acは、第一方向R1に回転する。
【0027】
変速装置10の出力軸Aoは、定速電動機51の定速ロータ52が第一方向R1に最大回転数で回転することにより、第一方向R1に回転するように設定されている。即ち、定速電動機51の正回転は第一方向R1であり、変速装置10の出力軸Aoの正回転は、第一方向R1である。圧縮機Cは、出力軸Aoが正回転することにより、正常に作動する。
【0028】
可変速電動機71は、可変速ロータ72軸線Arの周方向の第一方向R1及び第二方向R2に回転駆動させることができる。即ち、可変速電動機71は、正回転及び逆回転が可能である。可変速ロータ72の第一方向R1の回転数を上げることによって、変速装置10の出力軸Aoの第二方向R2の回転数が上がる。
【0029】
可変速電動機71は、可変速ロータ72を外部の力で回転させることで、電力を発生させて発電機として機能する。可変速電動機71が発電機として機能する状態を発電機モードと呼ぶ。
【0030】
可変速電動機71は、電力が供給されることで可変速ロータ72を回転させることで、電動機として機能する。可変速電動機71が電動機として機能する状態を電動機モードと呼ぶ。
【0031】
電力供給部100は、商用電源200と、定速電動機51と、可変速電動機71とに電気的に接続されている。したがって、図1に示すように、電力供給部100は、商用電源200や可変速電動機71から供給される電力を定速電動機51や可変速電動機71へ供給する。電力供給部100は、電動装置50を始動させる際に、電動装置50を始動させるために必要な電力であって商用電源200から供給される一定の定格周波数の電力を電動装置50に起動電力として供給する。その後、電力供給部100は、通常運転時には、発電機モードとなった可変速電動機71で生成された電力を定速電動機51に供給する。本実施形態の電力供給部100は、インバータ101と、第一配線111と、第二配線112と、第三配線113と、第一スイッチ121と、第二スイッチ122と、制御装置150と、を備えている。
【0032】
インバータ101は、商用電源200や可変速電動機71から供給される電力の周波数を制御装置150からの指示に基づいて変換する。インバータ101は、商用電源200に接続されている。インバータ101は、例えば、三相交流電力を生成する。インバータ101は、定速電動機51及び可変速電動機71を始動させる際に、定速電動機51及び可変速電動機71に起動電力を供給する。インバータ101は、始動完了後の通常運転時には、可変速電動機71を定格運転させる可変速電動機71のみに起動電力とは周波数が異なる駆動電力を供給する。具体的には、インバータ101は、制御装置150から指示された周波数の電力を可変速電動機71に供給する。可変速電動機71の可変速ロータ72は、この周波数に応じた回転数で回転する。このように、可変速ロータ72の回転数が変化するため、可変速ロータ72に接続されている変速装置10の可変速入力軸Avの回転数も変化する。この結果、変速装置10の出力軸Aoの回転数が変化する。
【0033】
第一配線111は、インバータ101と可変速ステータ86とを接続する。第二配線112は、インバータ101と可変速電動機71との間で第一配線111から分岐している。第二配線112は、第一配線111と定速ステータ66とに接続されている。第三配線113は、商用電源200と定速ステータ66とに接続されている。本実施形態の第三配線113は、第二配線112に合流することで、定速ステータ66に接続されている。第三配線113は、商用電源200から供給される一定の定格周波数の電力を定速電動機51にインバータ101を介さず直接供給する。第三配線113からは、商用電源200からの電力が、定速電動機51の定速ロータ52を一定の回転数で回転させるための駆動電力として、定速電動機51に供給される。
【0034】
第一スイッチ121は、第二配線112の途中に配置されている。第一スイッチ121は、インバータ101から定速電動機51への電力の供給状態をオン状態及びオフ状態で切り替え可能とされている。つまり、第一スイッチ121がオン状態では、第二配線112を介してインバータ101から定速電動機51へ電力が供給される。一方、第一スイッチ121がオフ状態では、第二配線112を介するインバータ101から定速電動機51への電力が遮断される。
【0035】
第二スイッチ122は、第三配線113の途中に配置されている。第二スイッチ122は、商用電源200から定速電動機51への電力の供給状態をオン状態及びオフ状態で切り替え可能とされている。つまり、第二スイッチ122がオン状態では、第三配線113を介して商用電源200から定速電動機51へ電力が供給される。一方、第二スイッチ122がオフ状態では、第三配線113を介する商用電源200から定速電動機51への電力が遮断される。
【0036】
制御装置150は、電力供給部100を制御する。本実施形態の制御装置150は、インバータ101、第一スイッチ121、及び第二スイッチ122の動作を制御する。制御装置150は、コンピュータで構成されている。図3に示すように、制御装置150は、受付部151と、インターフェイス152と、スイッチ制御部153と、インバータ制御部154と、を有している。
【0037】
受付部151は、オペレータからの指示を直接受け付ける、又は上位制御装置からの指示を受け付ける。インターフェイス152は、受付部151への指示信号の受信、インバータ101、第一スイッチ121、及び第二スイッチ122への指示信号の送信を行う。
【0038】
スイッチ制御部153は、受付部151で受け付けた指示等に応じて、第一スイッチ121、及び第二スイッチ122の開閉動作を制御する。
【0039】
インバータ制御部154は、受付部151で受け付けた指示等に応じて、インバータ101を制御する。インバータ制御部154は、商用電源200から供給される電力の周波数を変える。インバータ101から電力が供給される定速電動機51の定速ロータ52、及び可変速電動機71の可変速ロータ72は、この周波数に応じた回転数で回転する。
【0040】
(可変速増速機の始動方法の手順)
次に、本実施形態の可変速増速機の始動方法について説明する。図4に示すように、本実施形態の可変速増速機の始動方法S10は、始動指示を受け付ける工程S11と、定速電動機及び可変速電動機にインバータから電力を供給する工程S12と、電力の周波数を定格周波数まで上昇させる工程S13と、商用電源のみから定速電動機51に駆動電力を供給する工程S14と、を備えている。
【0041】
始動指示を受け付ける工程S11では、オペレータ又は上位制御装置からの可変速増速機1を始動させる指示を、受付部151が受け付ける。受付部151が、始動の指示を受け付けると、工程S12に移行する。
【0042】
定速電動機及び可変速電動機にインバータから電力を供給する工程S12では、定速電動機51及び可変速電動機71にインバータ101から電力を供給した後に、発電機モードとなった可変速電動機71で生成した電力を定速電動機51に供給する。具体的には、図1に示すように、第一スイッチ121をオン状態(閉じた状態)とし、第二スイッチ122をオフ状態(開いた状態)とする。工程S12では、商用電源200からインバータ101に供給された電力を、インバータ101から定速電動機51及び可変速電動機71に三相交流の起動電力をとして供給する。インバータ101から供給される起動電力により、定速ロータ52及び可変速ロータ72が回転し始める。その後、可変速ロータ72が回転することで、可変速電動機71は発電機モードとされ、電力が生成される。可変速電動機71で生成された電力は、第一配線111及び第二配線112を介して定速電動機51に回生される。これにより、図5に示すように、定速電動機51には、インバータ101から供給される電力と、可変速電動機71からの回生電力とが供給される。このため、可変速電動機71からの回生電力の分だけ、インバータ101から定速電動機51に供給する電力は少なくなる。
【0043】
電力の周波数を定格周波数まで上昇させる工程S13では、インバータ制御部154で、インバータ101から定速電動機51及び可変速電動機71に供給される電力の周波数を、適切なレート(ランプレート)で上昇させていくよう、インバータ101を制御する。インバータ制御部154は、インバータ101から定速電動機51及び可変速電動機71に供給される起動電力の周波数を、商用電源200から供給される電力の定格周波数に同期させるように上昇させていく。インバータ101から定速電動機51及び可変速電動機71に供給される電力の周波数が定格周波数に到達することで、インバータ101から第一配線111及び第二配線112を介して供給されている電力の周波数と、商用電源200から第三配線113を通して供給される予定の電力の周波数とが同期する。
【0044】
商用電源200のみから定速電動機51に駆動電力を供給する工程S14では、図6に示すように、スイッチ制御部153により、第一スイッチ121がオフ状態となる。これにより、インバータ101から定速電動機51への起動電力の供給が停止される。同時に、スイッチ制御部153により、第二スイッチ122がオン状態となる。これにより、定速電動機51には、インバータ101を介さず、商用電源200のみから第三配線113を通して、一定の定格周波数の電力が供給される。一方、可変速電動機71は、発電モードの運転が継続され、インバータ101は商用電力へ電力を供給されるようになる。この状態で、定格運転が継続される。
【0045】
(作用効果)
上記構成の可変速増速機1、及びその始動方法では、電動装置50を始動させる場合に、第一に、インバータ101を介して定速電動機51及び可変速電動機71に起動電力を供給する。これにより、可変速電動機71が発電機モードとして運転されて電力が生成される。可変速電動機71で生成された電力は定速電動機51に供給される。定速電動機51には、可変速電動機71で生成された電力が供給されるため、インバータ101を介して商用電源200から定速電動機51に供給する起動電力が、定格電力を超えるようなレベルにまで増加することが抑えられる。したがって、商用電源200で電圧降下等の擾乱が発生してしまうことが抑えられる。その結果、可変速増速機1を始動させるに際し、起動電力の増加を抑えて商用電源200を含む電源系統への影響を抑えることが可能となる。
【0046】
また、電動装置50を始動させる場合に、第二スイッチ122をオフ状態とすることで、商用電源200から定速電動機51への直接の電力の供給を遮断できる。この状態で、第一スイッチ121がオン状態となることで、第二配線112を通してインバータ101から定速電動機51に電力の供給が行われる。これにより、インバータ101から、第一配線111及び第二配線112を通して、定速電動機51及び可変速電動機71に起動電力が供給される。また、電動装置50の始動が完了した後、第一スイッチ121をオフ状態とし、インバータ101から定速電動機51への電気の供給を遮断する。この状態で第二スイッチ122をオン状態とすることで、定速電動機51に商用電源200から運転を継続するために必要な駆動電力が供給される。商用電源200から供給される一定の定格周波数の駆動電力によって、定速ロータ52は定速で回転駆動できる。一方、可変速電動機71は、インバータ101で制御された電力が供給されることによって、可変速ロータ72の回転数が制御できる。このように、可変速増速機1の始動時の電力の供給元の切り替えを簡易な構成で行うことができる。
【0047】
また、インバータ制御部154により、電動装置50の始動の完了時に、インバータ101で生成する電力の周波数を、商用電源200から供給される駆動電力の周波数に同期させることができる。したがって、定速電動機51へインバータ101を介さずに商用電源200から電力を直接供給するように切り替えた際に、定速ロータ52の回転数が変動することが抑えられる。これにより、スムーズに電源供給系統の切り替えを行うことができる。
【0048】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0049】
なお、上記実施形態では、可変速増速機1の各部構成について説明したが、各部構成を適宜変更してもよい。例えば、変速装置10の歯車構成等は、内歯車及び外歯車のどのような歯車を使用した構成であってもよい。
【0050】
<付記>
実施形態に記載の可変速増速機1、可変速増速機1の始動方法は、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係る可変速増速機1は、回転駆動力を発生する電動装置50と、電動装置50から定速入力軸Ac及び可変速入力軸Avに伝達される回転駆動力を変速させて出力軸Aoを介して駆動対象に伝える変速装置10と、前記電動装置50を始動させる場合に、電源から供給される一定の定格周波数の電力を前記電動装置50に供給する電力供給部100とを備え、電動装置50は、変速装置10の定速入力軸Acを回転させる定速ロータ52を有する定速電動機51と、変速装置10の可変速入力軸Avに接続されている可変速ロータ72を有し、発電機モードにて発電機として機能するとともに、電動機モードにて電動機として機能する可変速電動機71と、を有し、前記電力供給部100は、定速電動機51及び可変速電動機71に接続され、電動装置50を始動させる場合に、定速電動機51及び可変速電動機71に起動電力を供給した後に、前記発電機モードとなった可変速電動機71で生成された電力を定速電動機51に供給する。
【0052】
この可変速増速機1は、電動装置50を始動させる場合に、第一に、電力供給部100を介して定速電動機51及び可変速電動機71に電力を供給する。これにより、可変速電動機71が発電機モードとして運転されて電力が生成される。可変速電動機71で生成された電力は定速電動機51に供給される。定速電動機51には、可変速電動機71で生成された電力が供給されるため、電力供給部100を介して電源から定速電動機51に供給する電力が、定格電力を超えるようなレベルにまで増加することが抑えられる。したがって、電源で電圧降下等の擾乱が発生してしまうことが抑えられる。その結果、可変速増速機1を始動させるに際し、起動電力の増加を抑えて電源を含む電源系統への影響を抑えることが可能となる。
【0053】
(2)第2の態様に係る可変速増速機1は、(1)の可変速増速機1であって、電力供給部100は、前記電源に接続されて前記定速電動機51及び前記可変速電動機71に供給する電力を生成するインバータ101と、インバータ101と可変速電動機71とを接続する第一配線111と、インバータ101と可変速電動機71との間で第一配線111から分岐し、定速電動機51に接続される第二配線112と、第二配線112に配置され、インバータ101から定速電動機51への電力の供給状態をオン状態及びオフ状態で切り替え可能な第一スイッチ121と、前記電源と定速電動機51とを接続する第三配線113と、第三配線113に配置され、前記電源から定速電動機51への電力の供給状態をオン状態及びオフ状態で切り替え可能な第二スイッチ122と、前記第一スイッチ121及び前記第二スイッチ122の切り替えを制御装置150とを備え、前記制御装置150は、前記電動装置50を始動させる場合に、前記第一スイッチ121をオン状態とする共に前記第二スイッチ122をオフ状態とした後に、前記第二スイッチ122をオン状態とする共に前記第一スイッチ121をオフ状態とする。
【0054】
このような構成によれば、電動装置50を始動させる場合に、第二スイッチ122をオフ状態とすることで、電源から定速電動機51への直接の電力の供給を遮断できる。この状態で、第一スイッチ121がオン状態となることで、第二配線112を通してインバータ101から定速電動機51に電力の供給が行われる。これにより、インバータ101から、第一配線111及び第二配線112を通して、定速電動機51及び可変速電動機71に起動電力が供給される。また、電動装置50の始動が完了した後、第一スイッチ121をオフ状態とし、インバータ101から定速電動機51への電気の供給を遮断する。この状態で第二スイッチ122をオン状態とすることで、定速電動機51に電源ら運転を継続するために必要な駆動電力が供給される。電源から供給される一定の定格周波数の駆動電力によって、定速ロータ52は定速で回転駆動できる。一方、可変速電動機71は、インバータ101で制御された電力が供給されることによって、可変速ロータ72の回転数が制御できる。このように、可変速増速機1の始動時の電力の供給元の切り替えを簡易な構成で行うことができる。
【0055】
(3)第3の態様に係る可変速増速機1は、(2)の可変速増速機1であって、前記制御装置150は、前記インバータ101で生成する電力の周波数を、前記電源から供給される駆動電力の周波数に同期した場合に、前記第二スイッチ122をオフ状態からオン状態とする共に前記第一スイッチ121をオン状態からオフ状態とする。
【0056】
これにより、定速電動機51へインバータ101を介さずに電源から電力を直接供給するように切り替えた際に、定速ロータ52の回転数が変動することが抑えられる。したがって、スムーズに電源供給系統の切り替えを行うことができる。
【0057】
(4)第4の態様に係る可変速増速機1の始動方法S10は、(1)から(3)の何れか一つの可変速増速機1の始動方法S10であって、定速電動機51及び前記可変速電動機71に前記電力供給部100から電力を供給した後に、前記発電機モードとなった前記可変速電動機71で生成した電力を前記定速電動機51に供給する工程と、前記電源のみから前記定速電動機51に電力を供給する工程と、を含む。
【0058】
これにより、定速電動機51には、可変速電動機71で生成された電力が供給されるため、電力供給部100を介して電源から定速電動機51に供給する電力が、定格電力を超えるようなレベルにまで増加することが抑えられる。したがって、電源で電圧降下等の擾乱が発生してしまうことが抑えられる。その結果、可変速増速機1を始動させるに際し、起動電力の増加を抑えて電源を含む電源系統への影響を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1…可変速増速機
10…変速装置
50…電動装置
51…定速電動機
51S…定速電動機支持部
52…定速ロータ
53…定速ロータ軸
56…導体
61…定速電動機ケーシング
62…定速電動機ケーシング本体
63i、63o…蓋
65i…定速ロータ軸受
65o…定速ロータ軸受
66…定速ステータ
71…可変速電動機
71S…可変速電動機支持部
72…可変速ロータ
73…可変速ロータ軸
73o…フランジ
74…軸挿通孔
76…導体
81…可変速電動機ケーシング
82…可変速電動機ケーシング本体
83i…入口側蓋
83o…出力側蓋
85i…可変速ロータ軸受
85o…可変速ロータ軸受
86…可変速ステータ
90…架台
100…電力供給部
101…インバータ
111…第一配線
112…第二配線
113…第三配線
121…第一スイッチ
122…第二スイッチ
150…制御装置
151…受付部
152…インターフェイス
153…スイッチ制御部
154…インバータ制御部
200…商用電源
Ac…定速入力軸
Ao…出力軸
Ar…軸線
Av…可変速入力軸
C…圧縮機
Da…軸方向
Di…入力側
Do…出力側
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
R1…第一方向
R2…第二方向
S10…可変速増速機の始動方法
S11…始動指示を受け付ける工程
S12…定速電動機及び可変速電動機にインバータから電力を供給する工程
S13…電力の周波数を定格周波数まで上昇させる工程
S14…電源のみから定速電動機に電力を供給する工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6