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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121880
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】排水トラップ
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20220815BHJP
   C02F 1/467 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
E03C1/28 A
C02F1/467
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018847
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】591138201
【氏名又は名称】コンドーエフアルピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】近藤 太郎
【テーマコード(参考)】
2D061
4D061
【Fターム(参考)】
2D061DB07
2D061DD09
2D061DD14
2D061DE10
2D061DE30
4D061DA08
4D061DB01
4D061EA02
4D061EB08
4D061EB19
4D061EB27
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB31
(57)【要約】
【課題】汚染空気の逆流と細菌の増殖とを持続的に防止できる排水トラップを提供する。
【解決手段】排水トラップXは、ハウジング5と、ハウジング5の内部空間を、貯留空間7と排出空間8とに仕切る区画体1と、を備え、区画体1は、導電性を有する弁体15と、弁体15を支持する導電性の弁座16と、弁座16に電気的に接続された正電極9A及び負電極9Bと、を有しており、正電極9A及び負電極9Bは、貯留空間7の内部で互いに離間して配置されており、貯留空間7に貯留された液体の圧力を受けて弁体15が弁座16から離間したときには、正電極9Aと負電極9Bとの電気的な接続が遮断され、圧力が低下して弁体15が弁座16に当接したときには、弁体15及び弁座16を介して正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流入口と液体を排出する排出口とを有するハウジングと、
前記ハウジングの内部空間を、前記流入口と連通して液体を貯留する貯留空間と前記排出口と連通して液体を排出する排出空間とに仕切る区画体と、を備え、
前記区画体は、導電性を有する弁体と、当該弁体を支持し互いに電気的に絶縁された少なくとも2箇所の第一導電性部分を有する弁座と、当該弁座の前記第一導電性部分の夫々に電気的に接続された正電極及び負電極と、を有しており、
前記正電極及び前記負電極は、前記貯留空間の内部で互いに離間して配置されており、
前記貯留空間に貯留された液体の圧力を受けて前記弁体が前記弁座から離間したときには、前記正電極と前記負電極との電気的な接続が遮断され、前記圧力が低下して前記弁体が前記弁座に当接したときには、前記正電極と前記負電極とが前記弁体及び前記弁座を介して電気的に接続される排水トラップ。
【請求項2】
前記区画体は、前記弁座から前記貯留空間に向けて突出し、前記第一導電性部分の夫々と電気的に接続された第二導電性部分を含む突出部を有しており、
前記突出部の前記第二導電性部分の夫々に前記正電極及び前記負電極が各別に固定されている請求項1に記載の排水トラップ。
【請求項3】
前記弁座の前記第一導電性部分及び前記突出部の前記第二導電性部分の夫々の表面には、前記正電極及び前記負電極と各別に電気的に接続された導電膜が形成されている請求項2に記載の排水トラップ。
【請求項4】
前記突出部は平面視で円環状に形成されており、前記正電極と前記負電極とが、夫々、前記突出部の表面に沿って半円筒状に配置されている請求項2又は3に記載の排水トラップ。
【請求項5】
前記正電極及び前記負電極は、前記ハウジングの底部に載置された平板部材で形成されており、
前記区画体は、一端部に前記弁座を形成し、他端部が前記平板部材と電気的に接続された弁座部材を有しており、
前記弁座部材は、前記弁座の前記第一導電性部分と前記平板部材とを夫々電気的に接続する第三導電性部分を有している請求項1に記載の排水トラップ。
【請求項6】
前記弁座と前記正電極及び前記負電極とが兼用されている請求項1から5のいずれか一項に記載の排水トラップ。
【請求項7】
前記弁体は絶縁性の球体で形成されており、該球体の表面全域に導電膜が形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水経路中に設けられる排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
排水トラップは、空調機のドレンなどの液体を汚水桝に排水する排水経路中に設けられる。従来、液体が流入する流入口と液体を排出する排出口とを有するハウジングを備えた排水トラップが知られている(特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の排水トラップは、ハウジングの内部空間を、流入口と連通して液体を貯留する貯留空間と排出口と連通して液体を排出する排出空間とに仕切る区画体を備えている。この区画体の閉弁により貯留空間と排出空間とが非連通となり、貯留空間に貯留された液体の水封作用も相俟って、汚染空気や臭気などの逆流を防止するものである。この排水トラップでは貯留空間に貯留された液体により、ハウジングの内面や区画体が汚れた場合、区画体を着脱可能に構成していることから清掃を容易なものとしている。
【0004】
特許文献2に記載の排水トラップは、ハウジングの上部に流入口を設け、ハウジングの側部に排出口を設けることにより、ハウジングの底部に封水空間を形成している。また、特許文献2に記載の排水トラップは、封水空間に酸化還元電位の異なる電極対を浸漬し、この電極対を流入口に設けた電極短絡部材により常時電気的に接続させている。その結果、封水中のマイナスに帯電した雑菌を正極に引き寄せて、死滅させると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/116531号
【特許文献2】特開2008-291610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の排水トラップは、区画体を備えることにより、貯留空間に液体が少ない状態でも汚染空気や臭気などの逆流を確実に防止できるものである。一方、貯留空間に貯留される液体が排出されないまま長時間滞留すると、液体内部に細菌が増殖し、この増殖した細菌が逆流してしまうおそれがあった。
【0007】
特許文献2に記載の排水トラップは、封水空間に発生する細菌の増殖を抑制することが可能となるものの、封水空間に液体が少ない状態では汚染空気や臭気などが逆流してしまう。しかも、電極短絡部材により電極対を常時短絡させる構成上、電極対を構成する金属が封水中に溶出しやすく、持続性の観点から問題があった。
【0008】
そこで、汚染空気の逆流と細菌の増殖とを持続的に防止できる排水トラップが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る排水トラップの特徴構成は、液体が流入する流入口と液体を排出する排出口とを有するハウジングと、前記ハウジングの内部空間を、前記流入口と連通して液体を貯留する貯留空間と前記排出口と連通して液体を排出する排出空間とに仕切る区画体と、を備え、前記区画体は、導電性を有する弁体と、当該弁体を支持し互いに電気的に絶縁された少なくとも2箇所の第一導電性部分を有する弁座と、当該弁座の前記第一導電性部分の夫々に電気的に接続された正電極及び負電極と、を有しており、前記正電極及び前記負電極は、前記貯留空間の内部で互いに離間して配置されており、前記貯留空間に貯留された液体の圧力を受けて前記弁体が前記弁座から離間したときには、前記正電極と前記負電極との電気的な接続が遮断され、前記圧力が低下して前記弁体が前記弁座に当接したときには、前記正電極と前記負電極とが前記弁体及び前記弁座を介して電気的に接続される点にある。
【0010】
本構成では、貯留空間に液体が多い状態では弁体が弁座から離間すると共に水封作用により汚染空気等の逆流を防止し、貯留空間に液体が少ない状態では弁体が弁座に当接することにより汚染空気等の逆流を防止することができる。一方、貯留空間に液体が少ない状態では排出口から液体が排出されないため、この液体が長時間滞留すると液体内部に細菌が増殖し、この増殖した細菌が逆流してしまうおそれがある。
【0011】
そこで、本構成では、貯留空間の内部で互いに離間して配置される正電極及び負電極を設け、貯留空間に貯留された液体の圧力が低下して弁体が弁座に当接したときには、弁体及び弁座を介して正電極と負電極とが電気的に接続されるように構成している。その結果、貯留空間に滞留した液体内部のマイナスに帯電した細菌が正電極に引き寄せられ、死滅する。このため、貯留空間に液体が少ない状態であっても、汚染空気の逆流を防止しつつ、液体中の細菌の増殖を抑制することができる。
【0012】
しかも、本構成では、貯留空間に貯留された液体の圧力を受けて弁体が弁座から離間したときには、正電極と負電極との電気的な接続が遮断されるため、排出口から液体が排出され続けている間は、電極の液体への溶出を防止できる。この排出口から液体が排出され続けている間は、貯留空間に液体が長時間滞留することがないため、細菌も増殖することなく、水封作用により汚染空気等の逆流が防止される。このように、開弁状態に電極の溶出を防止しつつ閉弁状態に細菌の増殖を抑制することが可能となるため、汚染空気の逆流と細菌の増殖とを持続的に防止できる排水トラップを提供できた。
【0013】
他の特徴構成は、前記区画体は、前記弁座から前記貯留空間に向けて突出し、前記第一導電性部分の夫々と電気的に接続された第二導電性部分を含む突出部を有しており、前記突出部の前記第二導電性部分の夫々に前記正電極及び前記負電極が各別に固定されている点にある。
【0014】
本構成のように、区画体に突出部を設け、この突出部の第二導電性部分に正電極及び負電極を固定すれば、別途電極の支持部材を設ける必要が無く、安価に構成できると共に、排水トラップのコンパクト化が図られる。
【0015】
他の特徴構成は、前記弁座の前記第一導電性部分及び前記突出部の前記第二導電性部分の夫々の表面には、前記正電極及び前記負電極と各別に電気的に接続された導電膜が形成されている点にある。
【0016】
本構成のように、弁座及び突出部の表面に導電膜を形成すれば、弁座や突出部自体を導電性部材で構成する場合に比べ、材料コストを低減することができる。
【0017】
他の特徴構成は、前記突出部は平面視で円環状に形成されており、前記正電極と前記負電極とが、夫々、前記突出部の表面に沿って半円筒状に配置されている点にある。
【0018】
本構成のように、正電極と負電極とが、夫々、突出部の表面に沿って半円筒状に配置されていれば、両電極の表面積を大きく確保することが可能となるため、細菌を確実に死滅させることができる。
【0019】
他の特徴構成は、前記正電極及び前記負電極は、前記ハウジングの底部に載置された平板部材で形成されており、前記区画体は、一端部に前記弁座を形成し、他端部が前記平板部材と電気的に接続された弁座部材を有しており、前記弁座部材は、前記弁座の前記第一導電性部分と前記平板部材とを夫々電気的に接続する第三導電性部分を有している点にある。
【0020】
本構成のように、正電極及び負電極をハウジングの底部に配置された平板部材で構成すれば、貯留空間に液体が極めて少ない状況下においても、細菌を死滅させることができる。
【0021】
他の特徴構成は、前記弁座と前記正電極及び前記負電極とが兼用されている点にある。
【0022】
本構成のように、弁座と正電極及び負電極とを兼用すれば、弁座に別途導電性部材を設ける必要がなく、効率的である。
【0023】
他の特徴構成は、前記弁体は絶縁性の球体で形成されており、該球体の表面全域に導電膜が形成されている点にある。
【0024】
本構成のように、弁体を形成する球体表面全域に導電膜を設ければ、加工が容易であるばかりか、液体の圧力を受けた球体が回転しても、閉弁時に正電極及び負電極を確実に導通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】排水トラップの縦断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】弁体、弁座及び除菌機構の分解斜視図である。
図5】排水トラップの分解斜視図である。
図6】別実施形態1にかかる弁体、弁座及び除菌機構の分解斜視図である。
図7】別実施形態2にかかる排水トラップの断面図である。
図8】別実施形態3にかかる排水トラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る排水トラップの実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0027】
図1図5に示すように、排水トラップXは、液体を受け入れる受入管部2(流入口の一例)と液体を排出する排出管部3(排出口の一例)とが側壁51に形成された有底筒状のハウジング5と、ハウジング5の内部空間4を閉塞する蓋部6と、内部空間4を受入管部2から液体を受け入れて貯留する貯留空間7と排出管部3に連通して液体を排出する排出空間8とに仕切る区画体1とを備えている。以下、蓋部6側を上、ハウジング5の底部52側を下として説明することがある。
【0028】
ハウジング5は、樹脂材料を用いて成形されており、底部52を平らな面状とする円筒状に形成されている。受入管部2と排出管部3とは、側壁51から水平方向に延出する流路として側壁51と一体で形成されており、ハウジング5の側壁51において対向する位置に接続されている。そして、受入管部2の接続箇所2Aと排出管部3の接続箇所3Aとは、受入管部2の方が排出管部3よりも微小な所定値(例えば、5mm)だけ高くなるように高低差が付けられている。受入管部2の管軸方向Yと排出管部3の管軸方向Yとは、図1に示す縦断面視(側面視)において上下方向に平行にシフトしているが、図2に示す横断面視(平面視)において一致している。このように受入管部2と排出管部3との間に高低差を付けることにより、受入管部2から排出管部3に向けて液体が流動し易いように構成している。
【0029】
ハウジング5の側壁51の外面のうち、受入管部2および排出管部3が接続される方向と垂直な方向にある面が平坦面51aとなっている(図5参照)。また、側壁51の外面には、受入管部2の上方から排出管部3の下方に向かって傾斜した傾斜段部51bが設けられており、傾斜段部51bより蓋部6側は、傾斜段部51bより底部52側に比べて大径に構成されている。
【0030】
蓋部6は、平面視で円形状に形成してあり、ハウジング5の外周面および蓋部6の内周面に形成したねじ部18の螺合によりハウジング5に取付可能である(図1参照)。また、蓋部6の外周には、等間隔に径外方向に突出した複数の凸部6aが形成されており、この凸部6aに使用者の指を引っ掛けることにより蓋部6のハウジング5に対する取付けが容易なものとなっている(図5参照)。
【0031】
また、蓋部6の外側部には、その周方向の全周にわたって反射体23(例えば、反射テープ)を貼り付けてある。これにより、排水トラップXを天井裏に設置した場合に、作業者が反射体23に光を照射して排水トラップXの配設位置を容易に認識できる。排水トラップXを配設する排水経路の他にも、各種の経路を設置していることがあるので、例えば、排水トラップXに設ける反射体23を赤色とし且つ他の経路に設ける部材に黄色の反射体を設け、経路ごとに反射体を色分けすることもできる。
【0032】
区画体1は、円筒状の第1区画部10と第1区画部10からその周方向の全周に亘って外方側に延設する板状の第2区画部11とから構成されている。第1区画部10は、第2区画部11よりも上側領域において、周方向の一部を上下方向に沿って切り欠いた切欠部12と矩形状の開口部13とを有している(図5参照)。この開口部13は、切欠部12と対向する位置に配置してある。第2区画部11は、切欠部12の下端位置近傍を最下位とし且つ開口部13の中央位置近傍を最上位とするように、第1区画部10の周方向の全周に亘って傾斜する状態で設けてある(図1参照)。
【0033】
区画体1は、ハウジング5の内部空間4に着脱可能であり、ハウジング5の内部空間4に装着した状態において、ハウジング5の内部空間4の下方側を貯留空間7に仕切り、内部空間4の上方側を排出空間8に仕切っている。このように、区画体1が内部空間4を仕切ることにより、ハウジング5の底部52全体を貯留空間7としている。また、区画体1は、貯留空間7に設定量以上の液体が貯留した際、貯留空間7から排出空間8に液体を流通させるべく浮上する球体で形成された導電性の弁体15と、弁体15を受け止め支持する導電性の弁座16と、弁座16に電気的に接続された除菌機構9と、を有している。
【0034】
弁体15は、絶縁性の樹脂等で構成された中空球体15a(球体の一例)と、中空球体15aの表面全域を覆う導電膜15bとを有している(図1参照)。本実施形態の導電膜15bは、中空球体15aの表面に導電性塗料を塗布して形成されている。この導電性塗料は、導電性高分子塗料や導電性フィラーを分散させた分散塗料等で構成されている。弁体15は、弁座16の開口部分を完全に閉じることが可能な外径を有している。
【0035】
弁座16は、第1区画部10の内部空間において径方向内側に円環状に突出形成されている。図4に示すように、この弁座16は、樹脂等で構成される絶縁性部材の表面が、互いに対向する一対の第一導電膜16a(第一導電性部分の一例)で覆われており、夫々の第一導電膜16aが半円弧状に形成されている。この第一導電膜16aは、弁座16の表面に導電性塗料を塗布して形成されている。この導電性塗料は、導電性高分子塗料や導電性フィラーを分散させた分散塗料等で構成されている。
【0036】
弁座16の一対の第一導電膜16aの間には、絶縁性部材が露出した絶縁領域16bが形成されている。つまり、一対の第一導電膜16aは互いに電気的に絶縁されており、弁体15が弁座16に当接したときに、弁体15の導電膜15bを介して電気的に接続され、弁体15が弁座16から離間したときに、絶縁領域16bにより電気的接続が遮断される。
【0037】
図1の2点鎖線で示すように、貯留空間7に設定量以上の液体が貯留すると、弁体15が弁座16から浮上して開弁し、液体が貯留空間7から排出空間8に流通して排出管部3から排出される。そして、貯留空間7の液体の貯留量が設定量未満となると、弁体15が下降して弁座16に当接することで閉弁する。このとき、第1区画部10の内周面は、弁体15が上下方向に沿って浮上および下降するように案内している。
【0038】
弁座16は、ハウジング5の内部空間4に区画体1を装着した状態において、排出管部3の下端部3aよりも低い位置に位置するように区画体1に配設してある。つまり、弁体15が弁座16から浮上してから液体が排出管部3から排出するまでに時間差を設けている。この時間差によって、受入管部2から貯留空間7に流入する液体が微量である場合でも、弁体15の弁座16からの浮上および弁体15の弁座16への下降が短時間で繰り返されることを抑制して騒音の発生を抑制している。
【0039】
また、弁座16は上下方向において第1区画部10の下端部よりも上方側に配置してあり、第1区画部10は、弁座16よりも下方側に延出する導電性の垂下部分10a(突出部の一例)を有している。このように垂下部分10aを設けることにより、貯留空間7をハウジング5の底部52にて反転するU字状の流路に形成して、貯留空間7に貯留する液体にて貯留空間7を水封するように構成してある。また、貯留空間7をハウジング5の底部52側に設けることにより、弁体15が弁座16から浮上するときには、貯留空間7に貯留する液体による貯留空間7の水封を常時行えるように構成してある。
【0040】
図1及び図4に示すように、本実施形態における垂下部分10aは、貯留空間7に突出した平面視円環状に形成されており、その内表面が一対の第二導電膜10a1(第二導電性部分の一例)で覆われている。夫々の第二導電膜10a1が平面視半円弧状に形成されており、一対の第二導電膜10a1の間には、絶縁性部材が露出した絶縁領域10a2が形成されている。この第二導電膜10a1は、弁座16の第一導電膜16aと同一材料を用いて、弁座16から垂下部分10aの内表面にかけて連続的に塗布されている。つまり、平面視において、弁座16の第一導電膜16aと垂下部分10aの第二導電膜10a1とが重複しており、弁座16の絶縁領域16bと垂下部分10aの絶縁領域10a2とが重複している。この構成から、弁座16の一対の第一導電膜16aと垂下部分10aの一対の第二導電膜10a1とは、夫々電気的に接続されている。
【0041】
除菌機構9は、弁座16の第一導電膜16aと垂下部分10aの第二導電膜10a1とに電気的に接続された正電極9A及び負電極9Bを有している。本実施形態における正電極9Aは亜鉛で構成されており、負電極9Bは銅で構成されている。なお、正電極9A及び負電極9Bは、酸化還元電位差のある金属であれば特に限定されず、正電極9Aを亜鉛以外に鉄、錫、アルミニウム等で構成し、負電極9Bを銅以外に銀、金、白金等で構成しても良い。
【0042】
正電極9A及び負電極9Bは、貯留空間7の内部で互いに離間して配置されており、垂下部分10aの一対の第二導電膜10a1と電気的に接続された状態で各別に固定されている。一対の第二導電膜10a1と正電極9A及び負電極9Bとの固定形態は、導電性接着剤での接着固定、レーザー等による溶着固定、ボルト固定等が挙げられる。上述したように、垂下部分10aの一対の第二導電膜10a1は、貯留空間7に突出した平面視半円弧状に形成されているため、正電極9A及び負電極9Bは、夫々垂下部分10a(一対の第二導電膜10a1)の内表面に沿って半円筒状に配置されている。このような構成から、貯留空間7に貯留された液体の圧力を受けて弁体15が弁座16から離間したときには、正電極9Aと負電極9Bとの電気的な接続が遮断され、貯留空間7に貯留された液体の圧力が低下して弁体15が弁座16に当接したときには、弁体15及び弁座16を介して正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続される。
【0043】
正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続されたときには、貯留空間7に滞留した液体内部のマイナスに帯電した細菌が正電極9Aに引き寄せられる。正電極9Aに引き寄せられた細菌は、表面電荷の放出によって細胞壁が破壊されて不活性化し、死滅する。これにより、貯留空間7に滞留した液体が腐敗することなく、清潔な状態を維持することが可能となり、ハウジング5内部や区画体1に生物膜が付着して汚れることを防止できる。
【0044】
図1図3に示すように、蓋部6と内部空間4に装着した区画体1との間には、蓋部6に対して密着し且つ区画体1との間での摩擦係数を小さくしたシールド部材17を設けてある。このシールド部材17は、シリコンなどの樹脂により円盤状に形成してある。そして、シールド部材17のうち、蓋部6と接触する側の上面が吸盤効果により蓋部6の裏面に密着する。また、シールド部材17のうち、内部空間4に装着した区画体1と接触する側の下面にすべり加工を施して、シールド部材17の下面と区画体1との間での摩擦係数を小さくしている。
【0045】
蓋部6のハウジング5への取り付けにより区画体1が蓋部6から下方向の押圧力を受け、区画体1の一部を側壁51の全周に亘って上下方向に沿った成分の力を作用させつつ密着する密封部14を区画体1およびハウジング5の側壁51に備えている。この密封部14は、ハウジング5の側壁51に形成された本体側密封部14aと区画体1に形成された区画体側密封部14bとを有している。
【0046】
本体側密封部14aは、側壁51から内方側に突出する状態で側壁51の全周に亘って設けた段部である。そして、本体側密封部14aである段部は、ハウジング5の周方向において受入管部2の上端位置近傍を最上位とし且つ排出管部3の下端位置近傍を最下位とするようにハウジング5の周方向の全周に亘って傾斜する状態で設けてある。区画体側密封部14bは、区画体1の周方向の全周に亘って傾斜する第2区画部11の外方側端部である。そして、区画体側密封部14bは、その区画体側密封部14bに上下から挟み込む状態で樹脂部材20(例えば、エラストマ樹脂)で覆われている。
【0047】
ハウジング5の内部空間4に区画体1を装着した状態で、区画体1との間にシールド部材17を介在させてねじ部18の螺合によりハウジング5に蓋部6を取り付ける。このとき、蓋部6が区画体1を下方側に押圧して、本体側密封部14aおよび区画体側密封部14bが下方側への押圧力を受ける。本体側密封部14aおよび区画体側密封部14bは、その下方側への押圧力により区画体側密封部14bを本体側密封部14aに押し当てながら密着する。このように、ハウジング5の側壁51の内面全周に亘って区画体側密封部14bと本体側密封部14aとを密着して、貯留空間7と排出空間8との遮断を行っている。
【0048】
区画体側密封部14bの樹脂部材20には、内部空間4に区画体1を装着した状態で側壁51の排出管部3に向かう排出空間8の一部8aを排出管部3の下端部3aと同じ高さとする高さ調整部材21が配置されている。ハウジング5の側壁51の周方向において排出管部3に相当する位置では、本体側密封部14aである段部が排出管部3の下端部3aよりも下方に位置する。したがって、内部空間4に区画体1を装着したときに、排出管部3に向かう排出空間8の一部8aが排出管部3の下端部3aよりも低くなる。そこで、この高さ調整部材21を形成することにより、排出管部3に向かう排出空間8の一部での液体の貯留を抑制して液体の腐食の発生を抑制している。また、高さ調整部材21を区画体側密封部14bに設ける樹脂部材20にて兼用している。
【0049】
区画体1は、図5に示すように、内部空間4に装着したときに内部空間4から下側に突出する脚部19を備えている。この脚部19は、第1区画部10の周方向に間隔を隔てて複数設けてある。これにより、上下反転した状態で区画体1を内部空間に挿入すると、脚部19が内部空間4から上方側に突出して蓋部6をハウジング5に取り付けることができない。このようにして、区画体1を内部空間4に挿入するときに、上下方向での区画体1の向きを誤ることを防止している。
【0050】
ハウジング5および区画体1は透明で、且つ、弁体15はハウジング5および区画体1に対して識別可能な有色(例えば、青色)である。これにより、ハウジング5の内部空間4に区画体1を装着した状態において、作業者がハウジング5の外側から弁体15の位置を視認できる。したがって、区画体1を適正な位置に取り付けているか否かの確認および区画体1の汚れ具合の確認を容易に行うことができる。ここで、「透明」とは、ハウジング5の内部が透けて見える状態のことであり、無色透明又は有色透明が含まれ、また、半透明も含まれる。
【0051】
上述した実施形態における排水トラップXは、貯留空間7に液体が多い状態では弁体15が弁座16から離間すると共に水封作用により汚染空気等の逆流を防止し、貯留空間7に液体が少ない状態では弁体15が弁座16に当接することにより汚染空気等の逆流を防止することができる。一方、貯留空間7に液体が少ない状態では排出管部3から液体が排出されないため、この液体が長時間滞留すると液体内部に細菌が増殖しやすい。
【0052】
そこで、上述した除菌機構9は、貯留空間7の内部で互いに離間して配置される正電極9A及び負電極9Bを設け、貯留空間7に貯留された液体の圧力が低下して弁体15が弁座16に当接したときには、弁体15及び弁座16を介して正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続されるように構成している。その結果、貯留空間7に滞留した液体内部のマイナスに帯電した細菌が正電極9Aに引き寄せられ、死滅する。このため、貯留空間7に液体が少ない状態であっても、細菌が増殖した汚染空気の逆流を防止することができる。
【0053】
しかも、本実施形態では、貯留空間7に貯留された液体の圧力を受けて弁体15が弁座16から離間したときには、正電極9Aと負電極9Bとの電気的な接続が遮断されるため、排出管部3から液体が排出され続けている間は、電極9A,9Bの液体への溶出を防止できる。この排出管部3から液体が排出され続けている間は、貯留空間7に液体が長時間滞留することがないため、細菌も増殖することなく、水封作用により汚染空気等の逆流が防止される。このように、開弁状態に電極9A,9Bの溶出を防止しつつ閉弁状態に細菌の増殖を抑制することが可能となるため、汚染空気の逆流を持続的に防止できる排水トラップXとなっている。
【0054】
また、上述したように、区画体1の第1区画部10に垂下部分10aを設け、この垂下部分10aに正電極9A及び負電極9Bを固定すれば、別途電極9A,9Bの支持部材を設ける必要が無く、安価に構成できると共に、排水トラップXのコンパクト化が図られる。また、弁座16及び垂下部分10aの表面に導電膜16a,10a1を形成すれば、弁座16や垂下部分10a自体を導電性部材で構成する場合に比べ、材料コストを低減することができる。さらに、正電極9Aと負電極9Bとが、夫々、垂下部分10aの表面に沿って半円筒状に配置されていれば、両電極9A,9Bの表面積を大きく確保することが可能となるため、細菌を確実に死滅させることができる。
【0055】
〔別実施形態〕
図6図8には、別実施形態に係る排水トラップXが示されている。なお、図面の理解を容易にするため、同様の部材には同一の名称,符号を用いており、異なる構成のみ説明する。
【0056】
(1)図6に示すように、除菌機構9としての正電極9A及び負電極9Bを、ハウジング5の底部52に載置された一対の平板部材90で構成しても良い。本実施形態における区画体1は、一端部に弁座16を形成した導電性を有する一対の導電性部材30(弁座部材の一例、第一導電性部分および第三導電性部分の一例)を有しており、導電性部材30の他端部が正電極9A及び負電極9Bと電気的に接続されている。正電極9Aを構成する第一平板部材90Aは、平面視半円状で形成されており、負電極9Bを構成する第二平板部材90Bは、第一平板部材90Aに対して左右対称の平面視半円状で形成されている。これら第一平板部材90Aと第二平板部材90Bとは、貯留空間7の内部で互いに離間した状態で、ハウジング5の底部52に固定されている。一対の平板部材90A,90Bとハウジング5の底部52との固定形態は、接着固定、レーザー等による溶着固定、ボルト固定等が挙げられる。
【0057】
一対の導電性部材30は、導電性を有する金属等で構成されており、夫々が左右対称の第一導電性部材30A及び第二導電性部材30Bで形成されている。第一導電性部材30Aは、平面視半円弧状の第一基部30Aaと、第一基部30Aaの中途部分から第一平板部材90Aに向かって延出した棒状の第一棒状部30Abとを有している。同様に、第二導電性部材30Bは、平面視半円弧状の第二基部30Baと、第二基部30Baの中途部分から第二平板部材90Bに向かって延出した棒状の第二棒状部30Bbとを有している。この一対の導電性部材30は、樹脂等の絶縁性部材で構成された絶縁部材31(弁座部材の一例)を介して、第1区画部10の内部空間において径方向内側に円環状に突出形成された突出部位10bに支持されている。絶縁部材31は、一対の段差部31a1を有する平面視円環状に形成されており、この一対の段差部31a1の夫々に第一基部30Aa及び第二基部30Baが支持されている。また、絶縁部材31には、第一基部30Aaと第二基部30Baとの間を区画する一対の区画壁31bが形成されており、この区画壁31bにより第一導電性部材30Aと第二導電性部材30Bとが互いに離間している。
【0058】
この構成から、除菌機構9は、貯留空間7の内部で互いに離間して配置される正電極9A及び負電極9B(ハウジング5の底部52に載置された一対の平板部材90)を設け、貯留空間7に貯留された液体の圧力が低下して弁体15が弁座16に当接したときには、弁体15及び弁座16(導電性部材30)を介して正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続されるように構成している。その結果、貯留空間7に滞留した液体内部のマイナスに帯電した細菌が正電極9Aに引き寄せられ、死滅する。このため、貯留空間7に液体が少ない状態であっても、細菌が増殖した汚染空気の逆流を防止することができる。しかも、正電極9A及び負電極9Bをハウジング5の底部52に配置された平板部材90で構成するので、貯留空間7に液体が極めて少ない状況下においても、細菌を死滅させることができる。
【0059】
(2)図7に示すように、図6に示す除菌機構9としての一対の平板部材90に、導電性部材30に向かって突出した弾性片91を設けても良い。同図では第一導電性部材30Aを示しており、第一導電性部材30Aが下方に移動した際に、第一棒状部30Abの先端が弾性片91に接触して、弾性片91が下方に移動して第一平板部材90Aとの電気的な接続が得られる。上述したように、蓋部6が区画体1を下方側に押圧するため、区画体1に固定された導電性部材30も蓋部6の装着により下方に移動することとなる。その結果、弾性片91を介して導電性部材30と正電極9A及び負電極9Bとの電気的な接続を確実に得ることができる。
【0060】
(3)図8に示すように、排水トラップXの弁体15を平板状部材で構成しても良く、導電性を有する弁体15であれば特に限定されない。この場合でも、少なくとも弁体15と弁座16の対向する部位に夫々、導電膜15b,16aを設け、貯留空間7に貯留された液体の圧力を受けて弁体15が弁座16から離間したときには、正電極9Aと負電極9Bとの電気的な接続が遮断され、貯留空間7に貯留された液体の圧力が低下して弁体15が弁座16に当接したときには、弁体15及び弁座16を介して正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続されるように構成されている。
【0061】
(4)図4に示す実施形態では、区画体1の垂下部分10aの内表面に正電極9A及び負電極9Bを固定したが、区画体1の垂下部分10aの外表面にも正電極9A及び負電極9Bを固定しても良い。また、正電極9A及び負電極9Bは、夫々垂下部分10a(一対の第二導電膜10a1)の内表面に沿って半円筒状に配置したが、櫛歯状に配置するなど形状は特に限定されない。
(5)図6に示す実施形態では、正電極9A及び負電極9Bを左右対称の平面視半円状で形成したが、左右非対称の平面視半円状で形成しても良い。また、正電極9A及び負電極9Bを平面視矩形状に形成しても良く、形状は特に限定されない。
(6)図4に示す実施形態では、弁体15や弁座16に導電膜15b,16aを設けたが、弁体15が弁座16に当接したときに正電極9Aと負電極9Bとが電気的に接続され、弁体15が弁座16から離間したときに正電極9Aと負電極9Bとの電気的な接続が遮断される構成であれば、3箇所以上の導電膜や別途導電性部材を設けるなど、どのような形態であっても良い。
(7)図4及び図8の実施形態における弁座16の第一導電膜16a、図6及び図7の実施形態における導電性部材30を、正電極9A及び負電極9Bと同一の金属で構成しても良い。つまり、弁座16と正電極9A及び負電極9Bとを兼用すれば、弁座16に別途導電性部材を設ける必要がなく、効率的である。
【0062】
(8)蓋部6を省略して、区画体1を着脱不能に構成しても良い。
(9)上記実施形態では、ねじ部18の螺合により蓋部6をハウジング5に取付可能に構成したが、蓋部6を圧入してハウジング5に嵌め込むことによりハウジング5に取付可能とする嵌合式に構成しても良い。つまり、蓋部6をどのようにしてハウジング5に取り付けるかは適宜変更が可能である。
【0063】
(10)上記実施形態では、ハウジング5の底部52を平らな面状として、ハウジング5の底部52の全体を貯留空間7としているが、ハウジング5の底部52に段差を付けるなど、ハウジング5の底部52の形状を適宜変更してハウジング5の底部52の全体を貯留空間7とすることも可能である。
【0064】
(11)上記実施形態では、平面視におけるハウジング5の側壁51の形状および区画体1の形状を略楕円形状としているが、例えば、矩形状とすることもでき、どのような形状とするかは適宜変更が可能である。
【0065】
(12)上記実施形態では、弁体15としてボール状のものを例示しているが、例えば、弁体15を水平軸心周りで揺動自在な板状体にて構成することもでき、弁体15をどのような形態とするかは適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、排水経路中に設けられる排水トラップに適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 :区画体
2 :受入管部(流入口)
3 :排出管部(排出口)
4 :内部空間
5 :ハウジング
7 :貯留空間
8 :排出空間
9 :除菌機構
9A :正電極
9B :負電極
10a :垂下部分(突出部)
10a1 :第二導電膜(第二導電性部分)
15 :弁体
15a :中空球体(球体)
15b :導電膜
16 :弁座
16a :第一導電膜(第一導電性部分)
30 :導電性部材(弁座部材、第三導電性部分)
90 :平板部材
X :排水トラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8