(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121897
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】DAF分割確認方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220815BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220815BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20220815BHJP
B23K 26/53 20140101ALN20220815BHJP
【FI】
H01L21/78 W
H01L21/68 N
H01L21/78 X
H01L21/52 Z
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018874
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【テーマコード(参考)】
4E168
5F047
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD18
4E168AE01
4E168HA01
4E168JA11
5F047BB03
5F047FA77
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5F131EC63
5F131EC67
5F131EC72
5F131EC75
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ウエーハ裏面に配設されたDAF(Die Attach Film)が、チップ毎に適切に分割されたか否かを容易に確認する方法を提供する。
【解決手段】方法は、分割予定ラインに沿って複数のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10又は分割予定ラインに沿って分割起点が形成されたウエーハの裏面にDAF18を配設すると共に、環状のフレームFの開口にウエーハを位置付けて、DAFにダイシングテープT2を貼着し、ダイシングテープを介してDAF及びウエーハをフレームに支持する工程、ダイシングテープを拡張してチップ同士の間隔を拡張すると共に、DAFをチップに対応して分割する工程、ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを加熱して弛みをシュリンクする工程、ウエーハの表面に支持部材を配設してダイシングテープをDAFから剥離する工程及びDAFが各チップに対応して分割されているか否かを確認する工程を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの裏面に配設されたDAFがチップ毎に適切に分割されたか否かを確認するDAF分割確認方法であって、
分割予定ラインに沿って複数のチップに分割されたウエーハ、又は分割予定ラインに沿って分割起点が形成されたウエーハの裏面にDAFの一方の面を配設すると共に、該ウエーハを収容する開口を備えた環状のフレームの該開口にウエーハを位置付けて、DAFの他方の面にダイシングテープを貼着し、該ダイシングテープを介してDAF及びウエーハを該フレームに支持する支持工程と、
ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを拡張して隣接するチップ同士の間隔を拡張すると共に、DAFを該チップに対応して分割するDAF分割工程と、
ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを加熱して弛みをシュリンクするシュリンク工程と、
ウエーハの表面に支持部材を配設してダイシングテープをDAFから剥離するダイシングテープ剥離工程と、
DAFが各チップに対応して分割されているか否かを確認するDAF分割確認工程と、
から少なくとも構成されるDAF分割確認方法。
【請求項2】
該DAF分割確認工程で、DAFが各チップに対応して分割されていない場合は、該DAF分割工程において、ダイシングテープを拡張する際の拡張速度、拡張量を調整する請求項1に記載のDAF分割確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの裏面に配設されたDAFが、チップ毎に適切に分割されたか否かを確認するDAF分割確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画された表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され、所望の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ウエーハの表面から分割予定ラインに沿って裏面側に達しないハーフカット溝を形成し、その後、ウエーハの表面に保護テープを貼着してウエーハの裏面を研削して、ハーフカット溝の底を裏面に露出させることで、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する技術も提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
さらに、ウエーハの表面から、又は裏面からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置付けて照射して、分割予定ラインに沿ってウエーハの内部に改質層を形成し、その後、ウエーハの表面に保護テープを貼着して、ウエーハの裏面を研削することによりウエーハを所望の厚みに形成すると共に、該研削時に付与される外力によって、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する技術が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-193241号公報
【特許文献2】特開2014-007333号公報
【0006】
上記した特許文献1、2に記載された技術によって個々に分割されたデバイスチップの裏面側には、該デバイスチップを基板等に実装、積層する際に使用されるDAF(Die Attach Film)を配設される。デバイスチップにDAFを配設する場合は、ウエーハの裏面全体にDAFを配設すると共に、該DAFに重ねてダイシングテープを配設し、ウエーハを収容する開口部を備えた環状のフレームで該ダイシングテープの外周を支持し、該ダイシングテープを拡張することにより、該DAFを個々のデバイスチップに対応して分割している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、DAFを個々のデバイスチップに対応して分割するDAF分割工程を実施する際に、ダイシングテープを拡張する際の拡張速度、拡張量、デバイスチップの大きさ等によっては、デバイスチップに対応してDAFが良好に分割されない場合があることから、従来においては、該DAF分割工程を実施した後に、ウエーハの表面の分割予定ラインに形成された分割溝側から顕微鏡でDAFの分割状態を確認し、必要に応じて、ダイシングテープを拡張する際の拡張速度、拡張量等の分割条件を調整している。しかし、ウエーハの表面に形成された分割溝側からウエーハの裏面側に配設されるDAFの分割状態を確認することは容易ではなく、該DAFの分割状態を確認するのに時間が掛かることから、生産性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの裏面に配設されたDAFが、チップ毎に適切に分割されたか否かを容易に確認することができるDAF分割確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハの裏面に配設されたDAFがチップ毎に適切に分割されたか否かを確認するDAF分割確認方法であって、分割予定ラインに沿って複数のチップに分割されたウエーハ、又は分割予定ラインに沿って分割起点が形成されたウエーハの裏面にDAFの一方の面を配設すると共に、該ウエーハを収容する開口を備えた環状のフレームの該開口にウエーハを位置付けて、DAFの他方の面にダイシングテープを貼着し、該ダイシングテープを介してDAF及びウエーハを該フレームに支持する支持工程と、ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを拡張して隣接するチップ同士の間隔を拡張すると共に、DAFを該チップに対応して分割するDAF分割工程と、ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを加熱して弛みをシュリンクするシュリンク工程と、ウエーハの表面に支持部材を配設してダイシングテープをDAFから剥離するダイシングテープ剥離工程と、DAFが各チップに対応して分割されているか否かを確認するDAF分割確認工程と、から少なくとも構成されるDAF分割確認方法が提供される。
【0010】
該DAF分割確認工程で、DAFが各チップに対応して分割されていない場合は、該DAF分割工程において、ダイシングテープを拡張する際の拡張速度、拡張量を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、DAF分割確認方法は、分割予定ラインに沿って複数のチップに分割されたウエーハ、又は分割予定ラインに沿って分割起点が形成されたウエーハの裏面にDAFの一方の面を配設すると共に、該ウエーハを収容する開口を備えた環状のフレームの該開口にウエーハを位置付けて、DAFの他方の面にダイシングテープを貼着し、該ダイシングテープを介してDAF及びウエーハを該フレームに支持する支持工程と、ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを拡張して隣接するチップ同士の間隔を拡張すると共に、DAFを該チップに対応して分割するDAF分割工程と、ウエーハとフレームとの間にあるダイシングテープを加熱して弛みをシュリンクするシュリンク工程と、ウエーハの表面に支持部材を配設してダイシングテープをDAFから剥離するダイシングテープ剥離工程と、DAFが各チップに対応して分割されているか否かを確認するDAF分割確認工程と、から少なくとも構成され、支持部材でウエーハ及びDAFを支持して、DAF側を上面に向けることができることから、DAFが配設された側から、DAFがチップに対応して適正に分割されたか否かを容易に、確実に確認することができ、これにより、DAF分割工程における分割手段の調整も適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態において加工されるウエーハに切削溝又は分割起点を形成する態様を示す斜視図である。
【
図2】切削溝又は分割起点が形成されたウエーハを研削装置のチャックテーブルに載置する態様を示す斜視図である。
【
図3】(a)研削装置によってウエーハを個々のチップに分割する態様を示す斜視図、(b)個々のチップに分割されたウエーハの斜視図である。
【
図6】
図5に示す分割装置によって実施されるDAF分割工程の実施態様を示す一部拡大断面図である。
【
図7】シュリンク工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図8】DAF分割確認工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図9】(a)ダイシングテープ剥離工程の別の実施形態を示す斜視図、(b)DAF分割確認工程の別の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成されるDAF分割確認方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
本実施形態のDAF分割確認方法を実施するに際し、分割予定ラインに沿って複数のチップに分割されたウエーハ、又は分割予定ラインに沿って分割起点が形成されたウエーハを用意する。まず、
図1~3を参照しながら、分割予定ラインに沿って複数のチップに分割されたウエーハを用意する手順について説明する。
図1の上段には、本実施形態の被加工物である加工前のウエーハ10が示されている。このウエーハ10は、複数のデバイス12が、分割予定ライン14によって区画された表面10aに形成されたものである。
【0015】
上記した加工前のウエーハ10を、分割予定ライン14に沿って個々のデバイスチップに分割するために、例えば、
図1の左方側に示すように、加工前のウエーハ10を、切削ブレード22を備えた切削装置20(一部のみ示している)に搬送する。切削装置20は、ウエーハ10を保持する保持手段、該保持手段を移動させる移動手段、該保持手段に保持されたウエーハ10を撮像する撮像手段(いずれも図示は省略する)を備え、切削ブレード22は、図示を省略するモータにより回転駆動される。ウエーハ10を、該保持手段に保持し、該移動手段を作動して、該保持手段を該撮像手段の直下に位置付け、該撮像手段によりウエーハ10を撮像して、アライメントを実施する。該アライメントにより検出された分割予定ライン14の位置情報に基づいて、分割予定ライン14を、図中X方向に整合させる。次いで、切削ブレード22を、ウエーハ10の表面10a側の所定の分割予定ライン14に沿うように位置付け、該移動手段により、該保持手段と切削ブレード22とをX方向に相対的に移動させて加工送りし、分割予定ライン14に沿って切削溝100を形成する。切削溝100は、図に示すように、ウエーハ10の裏面10bに達しない深さのハーフカット溝である。切削溝100の深さは、追って説明するウエーハ分割工程において、裏面10b側を仕上がり厚みになるまで研削した場合に、裏面10bから切削溝100が露出する深さに設定される。上記した切削ブレード22と該移動手段とを作動させることにより、ウエーハ10を保持した保持手段と切削ブレード22とを、X方向、X方向と直交するY方向、及び回転方向において、適宜相対的に移動させて、
図1の左下側に示すように、ウエーハ10上の全ての分割予定ライン14に沿って切削溝100を形成する。
【0016】
次いで、
図2の左側に示すように、ウエーハ10の表面10aに、BG(バックグラインド)テープT1を貼着して一体とする。ウエーハ10とBGテープT1とを一体としたならば、
図2の下方に示す研削装置30に搬送し、保持面32と保持面32を囲繞する枠体34とからなるチャックテーブル31に、BGテープT1側を下方に、ウエーハ10の裏面10b側を上方に向けて載置する。チャックテーブル31の保持面32は、通気性を有する部材により構成され、図示を省略する吸引手段に接続されており、該吸引手段の作用により、チャックテーブル31に載置されたウエーハ10を吸引保持する。
【0017】
図3(a)に示すように、研削装置30は、研削手段36を備えている。研削手段36は、チャックテーブル31上に吸引保持されたウエーハ10の裏面10bを研削して薄化するための手段であり、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル362と、回転スピンドル362の下端に装着されたホイールマウント364と、ホイールマウント364の下面に取り付けられる研削ホイール366と、研削ホイール366の下面に環状に配設された複数の研削砥石368とを備えている。
【0018】
ウエーハ10をチャックテーブル31上に吸引保持したならば、研削手段36の回転スピンドル362を
図3(a)において矢印R1で示す方向に、例えば6000rpmで回転させると共に、チャックテーブル31を矢印R2で示す方向に、例えば300rpmで回転させる。そして、図示を省略する研削水供給手段により、研削水をウエーハ10の裏面10b上に供給しつつ、図示を省略する研削送り手段を作動して研削手段36を図中矢印R3で示す方向に下降させて、研削砥石368をウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール366を、例えば1μm/秒の速度で研削送りする。この際、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10の厚みが仕上がり厚みとなるまで、裏面10b側を所定量研削する。上記したように、ウエーハ10の表面10aには、分割予定ライン14に沿って、仕上がり厚みに相当する深さの切削溝100が形成されていることから、裏面10b側を該所定量研削することにより、
図3(b)に示すように、ウエーハ10の裏面10b側に切削溝100が露出して、ウエーハ10は、個々のデバイスチップ12’に分割される(ウエーハ分割工程)。ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されたならば、研削手段36を停止して、上方に退避させる。
【0019】
なお、本発明は、上記したように、ウエーハ10の表面10a側に切削溝100を形成し、裏面10b側を研削して、ウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割することに限定されず、例えば、レーザー加工によって、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って分割起点を形成する分割起点形成工程を実施し、該分割起点に外力を付与することでウエーハ分割工程を実施するようにしてもよい。以下に、
図1~3を参照しながら、分割起点形成工程を実施してウエーハ分割工程を実施する実施態様について説明する。
【0020】
図1の上方に示す加工前のウエーハ10を用意したならば、
図1の右側に示すレーザー加工装置40に搬送する。レーザー加工装置40は、ウエーハ10を保持する保持手段、該保持手段を図中X方向、Y方向、及び回転方向に移動させる移動手段、及びウエーハ10を撮像する撮像手段(いずれも図示は省略する)と、ウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザー光線LBを照射するレーザー光線照射手段41とを備えている。
【0021】
レーザー加工装置40に搬送されたウエーハ10は、裏面10b側を上方に向けて該保持手段に吸引保持される。なお、図示は省略するが、ウエーハ10を該保持手段に保持する際には、デバイス12を保護するために、ウエーハ10の表面10aに保護テープを貼着することが好ましい。該保持手段に保持されたウエーハ10は、該撮像手段の直下に位置付けられ、アライメント工程が実施される。該撮像手段は、赤外線を照射すると共に反射した赤外線を捕らえ電気信号に変換して図示を省略する制御手段に出力する。該アライメント工程が実施されることにより、ウエーハ10の裏面10b側から、表面10aに形成された分割予定ライン14の位置を検出すると共に、該移動手段によってウエーハ10を回転して所定方向の分割予定ライン14をX方向に整合させる。
【0022】
次いで、該移動手段を作動して、レーザー光線照射手段41の集光器42の直下に、分割予定ライン14の加工開始位置を位置付け、ウエーハ10の分割予定ライン14の内部にレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射すると共に、ウエーハ10をX方向に加工送りする。これにより、
図1に示すように、ウエーハ10の内部に、所定の分割予定ライン14に沿って改質層からなる分割起点110を形成する。なお、本実施形態では、図に示すように、分割予定ライン14に沿って、集光点の深さを3段階に分けて変更してレーザー光線LBを照射し、3層の改質層からなる分割起点110を形成している。このように、所定の分割予定ライン14に沿って分割起点110を形成したならば、ウエーハ10をY方向に分割予定ライン14の間隔だけ割り出し送りして、Y方向で隣接する未加工の分割予定ライン14を集光器41の直下に位置付ける。そして、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点をウエーハ10の分割予定ライン14の内部に位置付けて照射し、ウエーハ10をX方向に加工送りして分割起点110を形成する。このように、ウエーハ10をX方向、及びY方向に加工送りして、X方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って分割起点110を形成する。次いで、チャックテーブル31と共にウエーハ10を90度回転させて、既に分割起点110を形成した分割予定ライン14に直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX方向に整合させる。そして、残りの分割予定ライン14に対しても、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射して、
図1の右下に示すように、ウエーハ10の全ての分割予定ライン14に沿って分割起点110を形成する(分割起点形成工程)。なお、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って改質層を形成する際には、必ずしもウエーハ10の裏面10b側からレーザー光線LBを照射することに限定されず、分割予定ライン14上にテスト用電極等がない場合等であれば、ウエーハ10の表面10a側から照射するようにしてもよい。
【0023】
上記したように、全ての分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の内部に分割起点110を形成したならば、
図2の右方側に示すように、分割起点110が形成されたウエーハ10の表面10aにBGテープT1を貼着して、研削装置30に搬送し、研削装置30のチャックテーブル31に、BGテープT1側を下方に向けて載置して吸引保持する。その後、上記したウエーハ分割工程と同様の手順により、
図3に示す研削手段36によって、ウエーハ10の裏面10b側を研削する。ウエーハ10の裏面10b側から、研削手段36によって研削加工が施されて所望の仕上がり厚みになるまでウエーハ10が薄化されることにより、分割起点110に対して外力が付与されて、ウエーハ10が分割起点110に沿って破断され個々のデバイスチップ12’に分割される。なお、本発明は、上記したレーザー加工によって、ウエーハ10の分割予定ライン14の内部に改質層を形成して分割起点110を形成することに限定されず、ウエーハ10の表面10a側から吸収性を有する波長のレーザー光線を照射して、分割予定ライン14に沿ってアブレーション加工を実施して、分割起点となるレーザー加工溝を形成するようにしてもよい。
【0024】
次いで、
図4に示すように、ウエーハ10をフレームに支持する支持工程を実施する。該支持工程を実施する際しに、まず、
図4の下方側に示すように、ウエーハ10と同じ寸法の円形のシート状のDAF18、ダイシングテープT2、及びウエーハ10を収容可能な開口Faを備えた環状のフレームFを用意する。
図4の左上方には、上記したウエーハ分割工程によってウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を示し、以下に説明する支持工程、DAF分割工程、シュリンク工程、及びダイシングテープ剥離工程については、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10をフレームFに支持したものとして説明する。
【0025】
個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を用意したならば、ウエーハ10の裏面10bにDAF18の一方の面18a(図では上面)を配設する。ウエーハ10の裏面10b側をフレームFの開口Faに位置付けて、DAF18の他方の面18bにダイシングテープT2を貼着し、ダイシングテープT2を介してDAF18及びウエーハ10をフレームFに支持して支持工程が完了する。なお、ウエーハ10の表面10a側に貼着されたBGテープT1は、該支持工程を実施した後に剥離しておく。
【0026】
上記した支持工程を実施したならば、フレームFに保持されたウエーハ10とフレームFとの間にあるダイシングテープT2を拡張して隣接するデバイスチップ12’同士の間隔を拡張すると共に、DAF18をデバイスチップ12’に対応して分割するDAF分割工程を実施する。
図5を参照しながら、本実施形態のDAF分割工程を実施するのに好適な分割装置50について説明する。分割装置50は、ウエーハ10をダイシングテープT2、DAF18を介して支持するフレームFを保持するフレーム保持手段51と、フレーム保持手段51に保持されるフレームFに貼着されたダイシングテープT2を拡張し、ウエーハ10に配設されたDAF18を個々のデバイスチップ12’に対応して分割する分割手段52とを備えている。
【0027】
フレーム保持手段51は、上記した環状のフレームFを保持すべく環状に形成されたフレーム保持部材51aと、フレーム保持部材51aの外周に均等の間隔で配設された固定手段としての複数のクランプ51b(図示の実施形態では4つ)とを備えている。フレーム保持部材51aの上面は平坦に形成され、フレームFが載置される。そして、フレーム保持部材51aの上面に載置されたフレームFは、クランプ51bによってフレーム保持部材51aの上面に固定される。
【0028】
上記フレーム保持部材51aの内側には、円板形状の基台54に下端が固定された拡張ドラム53が配設されている。拡張ドラム53は、平面視で、フレームFの開口Faの内径より小さく、且つダイシングテープT2にDAF18を介して支持されたウエーハ10の外径より大きく形成される。図示の実施形態における分割手段52は、拡張ドラム53の周囲に複数(例えば4つ)配置され、基台54に固定されるエアシリンダ52aと、エアシリンダ52aから上方に延び、フレーム保持部材51aの下面に上端が連結されるピストンロッド52bとを備える。エアシリンダ52aには制御用エアーが図示を省略する連通路を介して供給されており、エアシリンダ52aの作用により、ピストンロッド52bが上下方向に進退することで、フレーム保持部材51aが上下方向に進退される。
【0029】
本実施形態の分割装置50は、概ね上記したとおりの構成を備えており、
図5に加え、
図6を参照しながら、本実施形態のDAF分割工程について、より具体的に説明する。
【0030】
本実施形態のDAF分割工程を実施するに際し、
図5に示すように、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10の表面10a側を上方に向けて、分割装置50のフレーム保持部材51aの上面にフレームFを載置し、クランプ51bによって固定する。このとき、拡張ドラム53の上端は、
図6に示すように、フレーム保持部材51aの上面と略同一高さとなる基準位置(実線で示す)に位置付けられている。次いで、フレーム保持部材51aに接続された複数の分割手段52のエアシリンダ52aを作動させて、ピストンロッド52bをエアシリンダ52a内に退避させて、フレーム保持部材51aを矢印R4で示す方向に下降させる。これにより、フレーム保持部材51aと共にフレームFも下降し、フレームFに支持されているダイシングテープT2は、フレーム保持部材51aに対して相対的に上昇する拡張ドラム53によって所定量拡張され(2点鎖線で示す)、ダイシングテープT2には放射状の引っ張り力が作用する。これにより、
図6に示すとおり、ウエーハ10において隣接するデバイスチップ12’同士の間隔が拡張され、DAF18が該デバイスチップ12’に対応して分割され、DAF分割工程が完了する。なお、
図6では、説明の都合上、DAF18を分割する前後で、ウエーハ10の上下方向の位置を変えて示しているが、実際のDAF分割工程では、ウエーハ10の上下方向の位置は不変であり、フレーム保持部材51aの上下方向の位置が変化する。また、エアシリンダ52aに投入される制御用エアーの圧力は、図示を省略するエアー供給源によって調整することが可能であり、ダイシングテープT2を拡張する際の拡張速度を所望の拡張速度に調整することが可能である。また、ピストンロッド52bの伸長量も調整することが可能であり、これにより、ダイシングテープT2の拡張量も所望の量になるように調整することが可能である。
【0031】
上記したDAF分割工程を実施したならば、上記の分割装置50から、ウエーハ10を支持したフレームFを搬出する。このとき、ウエーハ10を支持するダイシングテープT2は、上記したDAF分割工程が実施されることによって弛んだ状態となっている。そこで、
図7に示すように、加熱手段60を、ウエーハ10とフレームFとの間に露出するダイシングテープT2の近傍に位置付ける。該加熱手段60は、例えば、ヒーターと送風手段を備えており、先端から外部に温風を噴射する手段である。この加熱手段60を
図7に示すように位置付けたならば、加熱手段60から温風を噴射させると共に、フレームFを矢印R5で示す方向に回転させて、ウエーハ10を支持するダイシングテープT2の全域を加熱する。これにより、ウエーハ10とフレームFとの間にあるダイシングテープT2の弛みがシュリンク(収縮)されて、上記したDAF分割工程を実施する前の状態と略同様の状態に戻り、シュリンク工程が完了する。
【0032】
上記したように、シュリンク工程を実施したならば、
図7に示すように、ウエーハ10の表面10a側に、ウエーハ10と同寸法で形成された支持部材T3を配設する。該支持部材T3は、例えば、ガラス板、PET等の樹脂板、又は樹脂テープ等から適宜選択される。ウエーハ10の表面10aに支持部材T3を配設する際には、支持部材T3側の支持面に対し、接着剤が塗布される。このようにしてウエーハ10の表面10aに支持部材T3を配設したならば、ダイシングテープT2を、ウエーハ10の裏面10b側に配設されたDAF18から剥離して、ダイシングテープ剥離工程が完了する。
【0033】
なお、上記した支持工程、DAF分割工程、シュリンク工程、及びダイシングテープ剥離工程は、支持工程において、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10をフレームFに支持したものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持工程において、
図4の右上方に示すように、分割予定ライン14に沿って分割起点110が形成されているが個々のデバイスチップ12’に分割されていないウエーハ10の裏面10bを、DAF18の一方の面18a上に配設して、ダイシングテープT2を介してDAF18及びウエーハ10をフレームFに支持するようにしてもよい。その場合は、上記のDAF分割工程を実施することにより、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されると同時に、DAF18が、デバイスチップ12’に対応して分割される。よって、その場合は、上記のウエーハ分割工程を省略して、DAF分割工程を実施することが可能であり、DAF分割工程を実施した後、上記したのと同様に、シュリンク工程、ダイシングテープ剥離工程を実施することができる。
【0034】
上記したようにダイシングテープ剥離工程を実施したならば、DAF18及び支持部材T3によって挟まれたウエーハ10を、
図8に矢印R6で示すように反転して、DAF18が配設された面を上方に向け、DAF18側から、DAF18がデバイスチップ12’に対応して適正に分割されているか否かを確認する。なお、
図8では、目視により確認する態様を示しているが、必ずしも目視により確認することに限定されず、図示を省略する撮像手段の直下に位置付けて、撮像手段により撮像された画像を確認したり、さらには、撮像した画像データを演算処理したりすることによって、DAF18がデバイスチップ12’に対応して適正に分割されているか否かを確認するようにしてもよい。以上により、DAF分割確認工程が完了する。
【0035】
ここで、上記したDAF分割工程の実施条件によっては、DAF分割確認工程において、
図8に示すように、DAF18が各デバイスチップ12’に対応して完全に分割されておらず、DAF分割工程が適切に実施されていなかったことが確認される。このような場合は、上記のDAF分割工程において、ダイシングテープT2を拡張する際の拡張速度、拡張量が適切でなかったと考えられる。したがって、上記DAF分割確認工程によって確認されたDAF18の分割結果に鑑みて、分割装置50によってダイシングテープT2を拡張する際の拡張速度、拡張量を適宜調整する。より具体的には、分割手段52のエアシリンダ52aに投入される制御用エアーの圧力を高めたり、ピストンロッド52bの伸長量を長くしたりするように調整する。
【0036】
上記した実施形態によれば、DAF分割確認工程において、支持部材T3でウエーハ10及びDAF18を支持して、DAF18側を上面に向けることができることから、DAF18側から、DAF18がデバイスチップ12’に対応して適正に分割されたか否かを容易に、確実に確認することができ、これにより、DAF分割工程における分割手段の調整も適切に実施することが可能となる。
【0037】
なお、上記した実施形態では、
図7に示すように、ウエーハ10の表面10a側に、ウエーハ10と同寸法で形成された支持部材T3を配設し、その後、ダイシングテープT2を、ウエーハ10の裏面10b側に配設されたDAF18から剥離するダイシングテープ剥離工程を実施したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図9(a)に示すように、DAF分割工程が完了したウエーハ10の表面10a側に、フレームFの開口Faよりも大きく、フレームFの外形よりも小さい樹脂のテープにより構成された支持部材T4を配設するようにしてもよい。より具体的には、
図9(a)に示す支持部材T4を用意し、ローラ70を矢印R7で示す方向に回転させながら、矢印R8で示す方向に移動させてウエーハ10の表面10a及びフレームFに支持部材T4を圧着する。そして、
図9(b)に示すように、フレームFを反転して、ダイシングテープT2側を上方に向けて、ダイシングテープT2を矢印R9で示す方向に引いて剥離する。これにより、ウエーハ10が支持部材T4によって支持され、ウエーハ10の表面10aに配設されたDAF18が露出して、上記したのと同様に、DAF18側から、DAF18がデバイスチップ12’に対応して適正に分割されているか否かを確認するDAF分割確認工程が実施される。
【0038】
なお、上記した実施形態では、本実施形態のDAF分割確認方法を実施するに際し、複数のデバイス12が分割ライン14によって区画され表面10aに形成されたウエーハ10を用意したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば、表面にデバイス12が形成されていない、いわゆるダミーウエーハを使用し、仮に表面に複数のデバイス12が形成されたと想定した場合の分割予定ラインに沿って複数のチップに分割されたダミーウエーハ、又は該分割予定ラインに沿って分割起点が形成されたダミーウエーハを被加工物として用意し、上記の支持工程、DAF分割工程、シュリンク工程、及びDAF分割確認工程を実施する場合も含む。このようにダミーウエーハを使用して、本発明のDAF分割確認方法を実施し、DAF分割工程において、ダイシングテープを拡張する際の拡張速度、拡張量を適正に調整することで、正規のウエーハ10を使用したDAF分割工程の失敗が回避されて、経済的な損失を最小限にすることができる。
【符号の説明】
【0039】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
18:DAF
20:切削装置
22:切削ブレード
30研削装置
31:チャックテーブル
32:保持面
34:枠体
36:研削手段
362:回転スピンドル
364:ホイールマウント
366:研削ホイール
368:研削砥石
40:レーザー加工装置
41:レーザー光線照射手段
42:集光器
50:分割装置
51:フレーム保持手段
52:分割手段
53:拡張ドラム
100:切削溝
110:分割起点
T1:BGテープ
T2:ダイシングテープ
T3:支持部材
T4:支持部材