(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121950
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】間仕切りパネルの端部処理構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/82 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
E04B2/82 521A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018958
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000184621
【氏名又は名称】小松ウオール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】堀 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】中川 真人
(57)【要約】
【課題】良好なシール性、必要十分な気密性、遮音性を容易に実現する。
【解決手段】建築物の壁面Wに固定するチャンネル状の縦部材11と、間仕切りパネルP、Pの壁面側の支柱Sに固定するカバー部材12、12と、カバー部材12、12の先端部のシール材13、13とを設け、シール材13、13は、それぞれ縦部材11の前後の外側面に圧接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に固定するチャンネル状の縦部材と、間仕切りパネルの壁面側の端部の支柱に固定する前後一対のカバー部材と、該カバー部材の先端部に内向きに装着する前後一対のシール材とを備えてなり、該シール材は、それぞれ前記縦部材の外側面に圧接することを特徴とする間仕切りパネルの端部処理構造。
【請求項2】
前記カバー部材は、支柱の前面側または後面側と壁面側とにそれぞれ対応する規制部、固定部と、所定の間隔を隔てて前記規制部と平行に壁面側に突出させ、前記シール材用の内向きの収納部を先端部に形成する本体部とを備えることを特徴とする請求項1記載の間仕切りパネルの端部処理構造。
【請求項3】
前記規制部には、位置規制用の突条を形成することを特徴とする請求項2記載の間仕切りパネルの端部処理構造。
【請求項4】
前記縦部材には、クッション性の吸音材を収納することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の間仕切りパネルの端部処理構造。
【請求項5】
前記吸音材は、支柱上の前記カバー部材に圧接することを特徴とする請求項4記載の間仕切りパネルの端部処理構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、事務所フロア等に間仕切りを構築するに際し、間仕切りパネルの一端を建築物の壁面に適切に接続するための間仕切りパネルの端部処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所フロア等の室内空間を仕切る間仕切りパネルは、その一端を建築物の壁面に接続する場合、できるだけ良好な気密性、遮音性を接続部分に実現することが好ましく、そのための間仕切りパネルの端部処理構造が提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
従来の端部処理構造は、間仕切りパネルの壁面側の側端面に前後一対の横断面四半円弧状のシール部材を装着し、各シール部材は、自由端部が互いに接近する方向に配置されている。各シール部材は、自由端部を壁面に押し付けて弾性変形させることにより良好なシール性を実現し、必要十分な気密性、遮音性を確保することができるという。なお、各シール部材は、間仕切りパネルの壁面側の側端部に設ける角柱状の間隔調整部材に装着してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、シール部材は、それぞれの自由端部を建築物の壁面に接触させて弾性変形させるから、壁面に凹凸があったり、壁面が鉛直方向から傾いていたりすると、シール性が損われ、十分な気密性、遮音性が得られないことがあるという問題があった。なお、建築物の壁面は、たとえば鋼板の表面のような高度の滑らかさに仕上げたり、鉛直方向に厳密な高精度に仕上げたりすることは必ずしも実際的ではない。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、壁面に固定する縦部材にシール材を接触させて弾性変形させることによって、良好なシール性、必要十分な気密性、遮音性を容易に実現することができる間仕切りパネルの端部処理構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、建築物の壁面に固定するチャンネル状の縦部材と、間仕切りパネルの壁面側の端部の支柱に固定する前後一対のカバー部材と、カバー部材の先端部に内向きに装着する前後一対のシール材とを備えてなり、シール材は、それぞれ縦部材の外側面に圧接することをその要旨とする。
【0008】
なお、カバー部材は、支柱の前面側または後面側と壁面側とにそれぞれ対応する規制部、固定部と、所定の間隔を隔てて規制部と平行に壁面側に突出させ、シール材用の内向きの収納部を先端部に形成する本体部とを備えることができ、規制部には、位置規制用の突条を形成することができる。
【0009】
また、縦部材には、クッション性の吸音材を収納してもよく、吸音材は、支柱上のカバー部材に圧接してもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、前後一対のシール材は、それぞれ建築物の壁面上の縦部材の外側面(各側壁の外面をいう、以下同じ)に圧接し、シール材を装着するカバー部材と縦部材との間をシールすることにより、良好なシール性、必要十分な気密性、遮音性を容易に、しかも確実に実現することができる。なお、縦部材は、たとえば薄い鋼板をチャンネル状に曲げ加工して形成すればよく、その外側面は、一般に建築物の壁面より格段に滑らかである。また、前後のシール材は、それぞれチャンネル状の縦部材の外側面上の接触位置によってシール性能が変動せず、壁面に鉛直方向からの傾きがあっても、その影響を受けることなく、所定のシール性、気密性、遮音性を保持することができる。さらに、前後のカバー部材は、間仕切りパネルの厚さ方向に分離させることができ、間仕切りパネルや支柱の見込寸法が大きくなっても、形状を変更することなく簡単に対応可能である。ただし、縦部材は、前後の開口幅を支柱の見込寸法に関連させる。
【0011】
規制部、固定部、本体部を備えるカバー部材は、規制部により支柱の前面側または後面側に位置出しし、固定部を介して支柱の壁面側に固定することにより、規制部と平行に壁面側に突出する本体部の先端部の収納部内のシール材を内向きに保持するとともに、規制部、固定部や、壁面上の縦部材や支柱の各一部などを体裁よく隠蔽することができる。また、規制部、固定部を利用するカバー材の組付作業も、極めて簡単であって、格別な熟練を要しない。
【0012】
規制部に位置規制用の突条を形成すれば、カバー部材の位置出しを一層容易に、しかも正確にすることができる。
【0013】
縦部材に収納するクッション性の吸音材は、遮音性の向上に貢献する。なお、吸音材を支柱上のカバー部材に圧接すれば、一層良好な遮音性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
間仕切りパネルの端部処理構造は、建築物の壁面Wに固定する縦部材11と、間仕切りパネルP、Pの端部の支柱Sに固定する前後一対のカバー部材12、12と、各カバー部材12の先端部に装着する前後一対のシール材13、13とを備えてなる(
図1)。ただし、
図1において、間仕切りパネルP、P、支柱S、縦部材11、各カバー部材12、各シール材13は、それぞれ紙面の垂直方向に連続する。また、以下の説明において、
図1の上方、下方をそれぞれ前面側、後面側といい、左方を壁面側という。
【0017】
間仕切りパネルP、Pは、それぞれ表面板P1 の裏面側に石膏ボードの裏面材P2 を付設して構成されている。一方、角柱状の支柱Sの壁面側と反対側の間仕切りパネルP、P側には、複数の掛止金具H、Hが上下方向に装着されており(
図1、
図2)、各掛止金具Hは、支柱Sに形成する縦長の長孔S1 、S1 に掛止する装着用の脚H1 、H1 と、支柱Sの前面側、後面側に突出する上向きのフックH2 、H2 とを有する。そこで、各間仕切りパネルPは、表面板P1 の側端部を裏面側に折り曲げて形成する掛止部P3 上の図示しない縦長の掛止孔に各掛止金具HのフックH2 を挿入して掛止することにより、支柱Sの前面側または後面側に装着されている(
図1)。なお、間仕切りパネルPは、表面板P1 を介して支柱Sの前面側または後面側の1/2を覆うことができる。
【0018】
縦部材11は、たとえば薄い鋼板をチャンネル状に折曲げ加工して構成されている。縦部材11は、底面のアンカボルト11aを介して壁面Wに固定されている。なお、縦部材11の開口幅aは、支柱Sの前面側、後面側の見込寸法bに対し、a≒bとなっている。
【0019】
カバー部材12は、たとえばアルミニウムの押出形材からなり、規制部12a、固定部12b、本体部12cを備えている(
図1、
図3)。固定部12bは、規制部12aの一端から直角に屈曲して形成され、本体部12cは、規制部12aの他端から固定部12bと逆方向に屈曲する段部12dを介して規制部12aと平行に折り返すとともに、規制部12aから所定の間隔cを隔てて規制部12aより十分長く突出させて形成されている。また、本体部12cの先端部には、内向きの長短のリブ12e1 、12e2 を介してシール材13用の内向きの収納部12eが形成され、規制部12aには、位置規制用の同一高さの一対の平行な突条12f、12fが内向きに形成され、固定部12bには、止めねじ用のガイド溝12b1 、12b1 が形成されている。
【0020】
カバー部材12は、規制部12aを支柱Sの前面側または後面側に対応させ、固定部12bを壁面側に対応させて支柱Sに固定することができる。すなわち、規制部12aは、位置規制用の突条12f、12fを支柱Sの表面に当接して正確に位置出しし、固定部12bは、ビス12gを介して支柱Sにねじ止めされている。なお、支柱S上の各カバー部材12の本体部12cは、対応する間仕切りパネルPに対し、所定の目地dを介してほぼ同一面を形成している。
【0021】
シール材13は、断面略円筒状のシール部13aに対し、断面略角筒状の取付部13bが付設されている。取付部13bには、左右各一対のひれ状の取付片13c、13c…が対称形に形成されている。シール部13aは、取付部13bに向けて押圧すると適切に弾性変形し、取付片13c、13c…は、シール部13aに向けて斜めに傾斜しており、シール材13をカバー部材12の収納部12eに押し込むと、適切に弾性変形して抜け止めとして作用する。シール材13は、シール部13a、取付部13b、各取付片13cの弾性を個別に適切に設定し、たとえば弾性ゴムにより一体成形されている。
【0022】
シール材13、13は、それぞれ壁面W上の縦部材11の外側面に弾発的に圧接して弾性変形し、縦部材11、カバー部材12の間をシールして良好なシール性、十分な気密性、遮音性を実現することができる。なお、縦部材11には、スポンジなどのクッション性の吸音材14が収納され、吸音材14は、支柱S上のカバー部材12、12の固定部12b、12bに圧接している。
【0023】
かかる間仕切りパネルの端部処理構造の組付手順は、たとえば
図4のとおりである。
【0024】
まず、各カバー部材12の収納部12eにシール材13を収納した上(
図4(A))、固定部12bを支柱Sの壁面側に沿って移動させ(同図の各矢印方向)、規制部12aの突条12f、12fを支柱Sの表面に押し当てて位置出しする(
図4(B))。その後、ビス12gにより固定部12bをねじ止めしてカバー部材12を支柱Sの壁面側に固定する(同図)。つづいて、シール材13、13付きのカバー部材12、12、支柱Sを一体のまま壁面Wに向けて移動させ(
図4(C)の矢印方向)、シール材13、13を弾性変形させながら壁面W上の縦部材11に嵌合させて外側面に圧接し、図示しない床レール、天井レールの間に支柱Sを鉛直に固定してシール材13、13によるカバー部材12、12、縦部材11間のシールを完成させる。なお、支柱Sには、その後、間仕切りパネルP、Pを連結する。
【0025】
壁面Wとカバー部材12、12の先端との隙間Dが変動しても、シール材13、13は、縦部材11の外側面から外れない限りシール性能を維持することができるので、壁面Wに鉛直方向からの多少の傾きがあっても支障がない。なお、
図4(C)には、縦部材11内の吸音材14の図示が省略されている。吸音材14は、シール材13、13を縦部材11に嵌合させるに先き立って、縦部材11にあらかじめ収納して装着しておくものとする。
【0026】
間仕切りパネルの端部処理構造は、間仕切りパネルP、Pの中心線Lp に関して対称形であり(
図1)、前後のカバー部材12、12は、互いに同形に形成されている。そこで、カバー部材12、12は、間仕切りパネルP、Pの全体見込寸法が大きくなり、支柱Sの見込寸法b、縦部材11の開口幅aが大きくなっても(
図5)、同一形状のものを使用可能である。また、支柱Sは、2本を並列にして使用することも可能であり(
図6)、この場合でも、同一形状のカバー部材12、12を使用することができる。ただし、
図6において、カバー部材12と間仕切りパネルPとの間の目地dは、間仕切りパネルPの掛止部P3 を短くすることにより、
図1の目地dより広幅に形成されている。また、各掛止金具Hは、中心線Lp 側のフックH2 が切除されており、縦部材11の開口幅aは、支柱S、Sの合計の見込寸法bにほぼ等しくなっている。なお、
図5、
図6において、吸音材14は、支柱Sの壁面側にも併せて圧接してもよい。
【0027】
以上の説明において、各シール材13は、便宜的に弾性変形前の形状に統一して図示されている。また、縦部材11内の吸音材14は、これを省略してもよい。さらに、間仕切りパネルP、Pは、たとえば木質パネルやガラスパネルなどの他の任意の形式のパネルに変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、間仕切りパネルの一端を建築物の壁面に接続するに際し、良好なシール性、必要十分な気密性、遮音性を容易に実現することができ、事務所フロア等の任意の室内空間を仕切る間仕切りの用途に対して広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
W…壁面
P…間仕切りパネル
S…支柱
c…間隔
11…縦部材
12…カバー部材
12a…規制部
12b…固定部
12c…本体部
12e…収納部
12f…突条
13…シール材
特許出願人 小松ウオール工業株式会社