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  • 特開-処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121959
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/452 20060101AFI20220815BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 23/648 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 23/86 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 23/20 20060101ALI20220815BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20220815BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20220815BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C23C16/452
B01J23/652 M
B01J23/46 311M
B01J23/46 301M
B01J23/648 M
B01J23/656 M
B01J21/06 M
B01J23/86 M
B01J23/20 M
B01J23/30 M
H01L21/02 Z
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018968
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】514115065
【氏名又は名称】株式会社C&A
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 彰
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 圭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】村上 力輝斗
(72)【発明者】
【氏名】庄子 育宏
【テーマコード(参考)】
4G169
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC52B
4G169BC55B
4G169BC56B
4G169BC58B
4G169BC59B
4G169BC60B
4G169BC64B
4G169BC66B
4G169BC70B
4G169BC71B
4G169BC74B
4G169BC75B
4G169CD10
4K030AA06
4K030BA29
4K030CA12
4K030EA01
4K030FA17
4K030JA05
5F045AA03
5F045AB02
5F045AC01
5F045BB08
5F045DP03
5F045EF05
(57)【要約】
【課題】高温に加熱した発熱体の触媒効果を利用して、ガスから反応性ラジカルを生成して用いる処理装置で用いられる発熱体の耐久性を向上させる。
【解決手段】処理装置は、基板台102とガス突出部103との間に配置された発熱体106を備え、発熱体106は、例えば、融点が1500℃以上のW、Re、Os、Ta、Mo、Nb、Ir、Ru、Hf、Rh、V、Cr、Zr、Pt、Ti、Pd、Feからなる高融点金属、およびRu、Rh、Ir、Pt、Os、Pdからなる白金族のうち少なくとも1種を主成分とする金属または合金から構成され発熱体106の結晶組成は、単結晶もしくは大きな結晶粒からなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した発熱体を触媒体として用いてガスを分解して処理をする処理装置であって、
前記発熱体は、高融点金属および白金族のうち少なくとも1種を主成分とする金属または合金から構成され、
前記発熱体は結晶であり、単結晶もしくは大きな結晶粒からなる
ことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の処理装置において、
大きな結晶粒からなる前記発熱体の結晶粒の個数は、0.1mm2あたり100個以下とされていることを特徴とする処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の処理装置において、
前記発熱体の前記結晶粒の個数は、0.1mm2あたり10個以下とされていることを特徴とする処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置において、
前記発熱体を構成する主成分は、50wt%以上とされていることを特徴とする処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の処理装置において、
前記発熱体を構成する主成分は、80wt%以上とされていることを特徴とする処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の処理装置において、
前記ガスは、化学的気相成長法における原料ガスであり、
加熱した前記発熱体を触媒体として用いて前記原料ガスを分解して化学的気相成長を実施する
ことを特徴とする処理装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の処理装置において、
前記ガスは、ドライエッチング法におけるエッチングガスであり、
加熱した前記発熱体を触媒体として用いて前記エッチングガスを分解してドライエッチングを実施する
ことを特徴とする処理装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の処理装置において、
前記発熱体の温度は、1000℃~3400℃となることを特徴とする処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的気相成長装置やエッチング装置などのガスを用いた処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原料ガスを効率良く分解して薄膜を形成する化学的気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法として、高温に加熱した発熱体(ワイヤ、フィラメント)表面の触媒効果を利用した触媒CVD法がある(特許文献1参照)。触媒CVD法は、ホットワイヤCVD法ともよれば、高温に加熱された発熱体において、原料ガスを効率良く分解して反応性ラジカルを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-152863公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したホットワイヤCVD法では、発熱体の材料としてタングステン,タンタル,モリブデンなどの金属が用いられている。ところで、ホットワイヤCVD法による薄膜形成において発熱体は千数百℃という高温に加熱される。特に、シラン、ジボラン、ホスフィンを含む原料ガスや酸素、水素を含むプロセスガスが用いられる場合、発熱体は高温で腐食環境や酸化環境に曝される。このため、高温や化学反応による消耗が懸念され、高温環境における耐酸化性、化学的安定性などの高い耐久性が求められる。このように、高温に加熱した発熱体の触媒効果を利用して、ガスから反応性ラジカルを生成して用いる処理装置では、発熱体の耐久性が問題となる。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、高温に加熱した発熱体の触媒効果を利用して、ガスから反応性ラジカルを生成して用いる処理装置で用いられる発熱体の耐久性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る処理装置は、加熱した発熱体を触媒体として用いてガスを分解して処理をする処理装置であって、発熱体は、高融点金属および白金族のうち少なくとも1種を主成分とする金属または合金から構成され、発熱体は結晶であり、単結晶もしくは大きな結晶粒からなる。
【0007】
上記処理装置の一構成例において、大きな結晶粒からなる発熱体の結晶粒の個数は、0.1mm2あたり100個以下とされている。また、発熱体の結晶粒の個数は、0.1mm2あたり10個以下とされている。
【0008】
上記処理装置の一構成例において、発熱体を構成する主成分は、50wt%以上とされている。
【0009】
上記処理装置の一構成例において、発熱体を構成する主成分は、80wt%以上とされている。
【0010】
上記処理装置の一構成例において、ガスは、化学的気相成長法における原料ガスであり、加熱した発熱体を触媒体として用いて原料ガスを分解して化学的気相成長を実施する。
【0011】
上記処理装置の一構成例において、ガスは、ドライエッチング法におけるエッチングガスであり、加熱した発熱体を触媒体として用いてエッチングガスを分解してドライエッチングを実施する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、触媒体として用いられる発熱体の結晶組成を、単結晶もしくは大きな結晶粒からなるものとしたので、発熱体の耐久性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る処理装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、発熱体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態1に係る処理装置について図1を参照して説明する。この処理装置は、気相における処理が行われる処理室101と、処理室101の内部に配置されて処理対象の基板121が載置される基板台102と、基板台102の上方に配置されたガス突出部103とを備える。処理室101は、図示しないゲートバルブを備えて基板121の搬入搬出を可能とし、ゲートバルブを閉じることで内部を密閉された空間とする。また、処理室101の排気管104には、例えば、ロータリーポンプなどの真空ポンプからなる排気機構(不図示)接続されている。排気管104には、排気バルブ(不図示)が設けられている。排気機構により、処理室101内部の排気を可能としている。
【0015】
ガス突出部103は、例えば、複数の吐出孔(ノズル)を備えたシャワーヘッドノズルである。ガス突出部103には、ガス供給配管105が接続され、ガス供給機構(不図示)からのガスが供給可能とされている。ガス供給部によるガス突出部103へのガスの供給は、ガス供給配管105に設けられたガスバルブ(不図示)の開閉動作により制御される。ガス供給配管より供給されるガスは、ガス突出部103に導入され、ガス突出部103の吐出孔より吐出し、基板台102の上に載置されている基板121の上に供給される。
【0016】
また、この処理装置は、基板台102とガス突出部103との間に配置された発熱体106を備える。発熱体106には、例えば、電源(不図示)が接続され、通電によって1500℃程度に加熱可能とされている。
【0017】
発熱体106は、高融点金属および白金族のうち少なくとも1種を主成分とする金属または合金から構成されている。発熱体106は、例えば、融点が1500℃以上のW、Re、Os、Ta、Mo、Nb、Ir、Ru、Hf、Rh、V、Cr、Zr、Pt、Ti、Pd、Feからなる高融点金属、およびRu、Rh、Ir、Pt、Os、Pdからなる白金族のうち少なくとも1種を主成分とする金属または合金から構成され、ここで、発熱体106を構成する主成分は、50wt%以上とされていものである。よりよくは、発熱体106を構成する主成分は、80wt%以上とすることができる。
【0018】
また、発熱体106の結晶組成は、単結晶もしくは大きな結晶粒からなる。大きな結晶粒とは、結晶粒の個数が、0.1mm2あたり100個以下とされている状態であり、大きな結晶粒からなる発熱体106は、結晶粒の個数が、0.1mm2あたり100個以下とされている。この結晶粒の個数(密度)は、少ない(小さい)方がよりよい。例えば、発熱体106は、結晶粒の個数が、0.1mm2あたり50個以下とすることができる。さらに、より好ましくは、発熱体106は、結晶粒の個数が、0.1mm2あたり10個以下とすることができる。なお、上述した結晶粒の個数は、よく知られているように、走査型電子顕微鏡の観察により計数可能である。
【0019】
例えば発熱体106は、ワイヤとすることができる。この場合、発熱体106は、断面視円形、矩形とすることができ、径を0.1~20mmとすることができる。さらに好ましくは0.3~10mm、より好ましくは0.4~5mmとすることができる。また、発熱体106は、ロッド状、コイル状、メッシュ状とすることができる。発熱体106は、処理室101の内部で、基板台102の上方1mm~200mmに配置される。さらに好ましくは、発熱体106は、基板台102の上方5mm~150mm、より好ましくは10mm~120mmに配置される。
【0020】
発熱体106は、通電加熱などにより、1000℃~3400℃に加熱することができる。さらに好ましくは、発熱体106は、1500℃~3000℃、より好ましくは1700℃~2400℃に加熱することができる。
【0021】
この処理装置は、加熱した発熱体106を触媒体として用いて、ガス突出部103から吐出(供給)されるガスを分解して、基板台102上に載置される基板121に対して、所定の処理をする装置である。例えば、ガスを、化学的気相成長法における原料ガスとすることで、加熱した発熱体106を触媒体として用いて原料ガスを分解して、化学的気相成長を実施して、基板121の上に膜を形成する化学的気相成長装置とすることができる。例えば、化学的気相成長法により成膜では、シラン、ジシラン、メチルシラン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、炭化水素、ハロゲン化水素、アンモニア、ヒドラジン(N24)、ジボラン、ホスフィン、アルシン、ゲルマン、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルアルミニウムなどが原料ガスとして用いられる。
【0022】
また、この処理装置は、ガスを、ドライエッチング法におけるエッチングガスとすることで、加熱した発熱体106を触媒体として用いてエッチングガスを分解して、基板121に対してドライエッチング(例えば、反応性イオンエッチング)を実施するエッチング装置とすることができる。この種のドライエッチングでは、例えば、水素ガス、酸素ガス、ハロゲン化水素ガス、アンモニアガス、クロロカーボンガス、フルオロカーボンガス、ハロゲン化炭化水素ガス、無機ハロゲンガスなどが、エッチングガスとして用いられる。
【0023】
上述した実施の形態によれば、発熱体106を上述した金属または合金から構成し、かつ、単結晶もしくは大きな結晶粒となる結晶組成としたので、耐久性の向上が図れる。ここで、タングステンから構成した市販の発熱体と、実際に作製したタングステンから構成した発熱体106との断面の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。図2の(a)が市販の発熱体であり、図2の(b)が発熱体106である。図2に示すように、市販の発熱体は多結晶体であることが分かるが、発熱体106は、結晶粒が非常に大きいものなっている。
【0024】
走査型電子顕微鏡の観察結果より、多結晶となっているタングステンから構成した市販の発熱体は、結晶粒の密度が、35000個/mm2程度である。この市販の発熱体を、例えば、1×10-4Pa以下の真空雰囲気で、通電加熱により1600℃に加熱すると、100時間で破断した。一方、タングステンから構成した発熱体106は、結晶粒の密度が、3個/mm2程度である。タングステンから構成した発熱体106は、例えば、1×10-4Pa以下の真空雰囲気で、通電加熱により1600℃に加熱しても、1000時間経過しても破断しない。このように、実施の形態に係る処理装置で用いる発熱体106は、市販の発熱体に比較して、耐久性が向上している。
【0025】
以下、耐久性の試験結果について、表1に示す。耐久試験は、発熱体温度1600℃、酸素雰囲気とし、通電加熱を1000時間継続した。また、成膜試験は、発熱体温度1300℃で、ソースガスとしてSiH4ガスを20sccmで供給し、Si膜を480時間成膜した。
【0026】
【表1】
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、触媒体として用いられる発熱体の結晶組成を、単結晶もしくは大きな結晶粒からなるものとしたので、発熱体の耐久性が向上できるようになる。
【0028】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0029】
101…処理室、102…基板台、103…ガス突出部、104…排気管、105…ガス供給配管、106…発熱体、121…基板。
図1
図2