(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121996
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/20 20180101AFI20220815BHJP
F21S 43/20 20180101ALI20220815BHJP
F21S 43/50 20180101ALI20220815BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20220815BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220815BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S43/20
F21S43/50
F21W102:10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019030
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真義
(57)【要約】
【課題】要求される意匠性や機能性に柔軟に応え得る二色成形品を備えた車両用灯具を提供する。
【解決手段】光を透過させる樹脂部材を用いた二色成形品を有する車両用灯具であって、前記二色成形品は、透明な樹脂部材である第1部材と、前記第1部材よりも透過率が高く、前記第1部材とは異なる透明な樹脂部材である第2部材との一体成形品であり、前記第1部材が一次成形品であり、前記第2部材が二次成形品である二色成形品を備えるように車両用灯具を構成した。透明な二色成形品を、透過率が異なる二つの透明樹脂部材を一体成形することで、一部領域に透過率の高い高透過率領域を設けることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる樹脂部材を用いた二色成形品を有する車両用灯具であって、
前記二色成形品は、透明な樹脂部材である第1部材と、前記第1部材よりも透過率が高く、前記第1部材とは異なる透明な樹脂部材である第2部材との一体成形品であり、
前記第1部材が一次成形品であり、前記第2部材が二次成形品である、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材の接合部は、前記第1部材が、前記第2部材へ延在して積層した構成である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材とが積層する積層部の長さは、前記第1部材の厚みと前記第2部材の厚みのうち、より薄い部材の厚みの略二倍である、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1部材の厚みと前記第2部材の厚みのうち、より薄い部材の厚みをT、前記第1部材と前記第2部材とが積層する積層部の長さをLとすると、0.8×T<L<2×Tを満たす、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、二色成形品を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、内蔵した発光素子の出射光を透過するためのインナーレンズ、アウターレンズ、カバーなどを備える。これらレンズやカバーには、光を透過するために、透光性のある樹脂部材が用いられ、設置作業効率や空間利用効率から二色成形品が用いられることがある。例えば特許文献1では、アウターレンズの透明樹脂と、脚部の不透明樹脂とが一体成形された二色成形品が用いられている。特許文献2では、複数のランプ室を備えるコンビネーションランプの二色レンズに、透光性のある赤色樹脂部材と透明部材を使用した二色成形品が用いられている。これらの二色成形品は、同種の樹脂材料を異なる色で着色し、一体成形することで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-78923号
【特許文献2】特開2010-244953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年の車両用灯具の意匠や機能の複雑化から、より柔軟に意匠性や機能性に応え得る二色成形品が求められている。
【0005】
本発明は、これに鑑みてなされたものであり、柔軟に意匠性や機能性に応え得る二色成形品を備えた車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示の車両用灯具においては、光を透過させる樹脂部材を用いた二色成形品を有する車両用灯具であって、前記二色成形品は、透明な樹脂部材である第1部材と、前記第1部材よりも透過率が高く、前記第1部材とは異なる透明な樹脂部材である第2部材との一体成形品であり、前記第1部材が一次成形品であり、前記第2部材が二次成形品であるように構成した。
【0007】
透過率が異なる二種の透明樹脂部材を用いて、両部材を一体成形することにより、透明な二色成形品の一部領域に、透過率の高い高透過率領域を設けることができる。割れやすい第1部材を所望の領域に用いて、高透過率領域を形成し、柔軟な第2部材を用いて複雑な三次元形状を形成するなど、各部材の特性を活かして、設計要求に柔軟に対応した二色成形品を形成できる。
【0008】
また、ある態様では、前記第1部材と前記第2部材の接合部は、前記第1部材が、前記第2部材へ延在して積層した構成とした。接合部を部分積層形態とすることで、必要接合強度と、軽量要求の両者を満足する二色成形品を提供できる。
【0009】
また、ある態様では、前記第1部材と前記第2部材とが積層する積層部の長さは、前記第1部材の厚みと前記第2部材の厚みのうち、より薄い部材の厚みの略二倍とした。
【0010】
また、ある態様では、前記第1部材の厚みと前記第2部材の厚みのうち、より薄い部材の厚みをT、前記第1部材と前記第2部材とが積層する積層部の長さをLとすると、0.8×T<L<2×Tを満たすよう構成した。軽量性と接合強度を両立させた二色成形品を提供できる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、柔軟に意匠性や機能性に応え得る二色成形品を備えた車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る車両用灯具の概略正面図である。
【
図2】同車両用灯具の縦断面図である。
図1のII-II線に沿った縦断面図である。
【
図3】
図2のA部の拡大図であり、ランプカバーの拡大断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る車両用灯具の分解斜視図である。
【
図6】同車両用灯具のインナーレンズの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両用灯具1の概略正面図である。
【0015】
車両用灯具1は前照灯であり、車両の前部の左右両側にそれぞれ装着される。車両用灯具1は、ランプボディ2と、ランプカバー4を備える。ランプボディ2は前方に開口部を有し、ランプボディ2の開口部に、透光性を有する樹脂で形成されたランプカバー4が取り付けられる。ランプボディ2とランプカバー4は、車両用灯具1の筐体であり、ランプボディ2とランプカバー4の内側には灯室Sが画成される。画成された灯室S内には、ランプユニットLUおよび光学装置5が収容されている。
【0016】
ランプユニットLUは、光を前方に照射し、車両前方に所定の配光を形成するよう構成された光学ユニットである。光学装置5は、不可視光(赤外線)を前方に照射することにより車両前方の物体の有無を検知する光学センサである。光学装置5の前方にあたるランプカバー4の一部領域は、光透過率の高い高透過率領域4aとなっている。
【0017】
図2は、
図1のII-II線に沿った車両用灯具1の縦断面図である。
図2に示すように、ランプユニットLUは、リフレクター11、発光素子である光源12、及び投影レンズ14を備える。リフレクター11、光源12、および投影レンズ14は、それぞれ金属製の支持部材13に支持される。
【0018】
光源12には、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、EL(Electro Luminescence)素子などの半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電灯(ディスチャージランプ)等を用いることができる。
【0019】
リフレクター11は、光源12から出射した光L1を投影レンズ14に導くように構成されており、内面が所定の反射面11aとなっている。
【0020】
投影レンズ14は、例えば、前方側表面及び後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなり、リフレクター11での反射光をランプカバー4に向けて透過させる。
【0021】
実施形態においては、配光を形成するランプユニットLUに上記プロジェクタ型を採用したが、これに限らず、ランプユニットLUには、従来周知の構成、例えばリフレクター型などの光学ユニットを用いても構わず、その種類は問わない。
【0022】
光学装置5は、ランプユニットLUの下部に配置され、図示しない取付部材によりランプボディ2に固定されている。
【0023】
光学装置5は、投光部5aと受光部5bとを備える。投光部5aは、レーザダイオードであり、不可視光である光L2を車両前方に投光する。受光部5bは、投光部5aが照射した光の反射光の一部を光L3として受光し、電気信号として取り出す。例えば、先行車両が光学装置5の検出範囲まで近づくと、投光部5aから出射した光L2は、先行車両で反射され、反射した一部の反射光が光L3として受光部5bに受光される。これにより、車両の近接が検知される。
【0024】
ランプカバー4は、主として高透過率領域4aを形成する第1部材10と、その他の領域を主として形成する第2部材20から構成される。ランプカバー4は、第1部材10と第2部材20とが一体成形されることにより得られる二色成形品である。
【0025】
第1部材10および第2部材20は、両者ともに透明樹脂で構成される。このため、両部材から成形されるランプカバー4は全体が透明に構成される。
【0026】
第1部材10は、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate、通称アクリル樹脂)やシクロオレフィン樹脂などの比較的光透過率の高い樹脂部材で構成される。第2部材20は、例えばポリカーボネイト(Polycarbonate)やポリエチレン樹脂など、第1部材10よりも光透過率の低い樹脂部材で構成される。
【0027】
光学装置5の前方領域に高透過率領域4aが配置されるように、ランプカバー4は成形されている(
図1参照)。光学装置5から投光された光L2は高透過率領域4aを通過して灯具前方に出射し、光L3は灯具外から高透過率領域4aを通過して、光学装置5に入射する。光学装置5の前方、即ち光L2と光L3の通過部に高透過率領域4aを形成することで、透過部材を通過する際の光の減衰を抑制し、光学装置5の使用性能を向上させている。
【0028】
透過率の異なる二種類の透明部材を用いてこれを一体成形することで、透明な二色成形品の所望の領域に、透過率の高い高透過率領域4aを設けることができる。
【0029】
本開示の二色成形品の構成は、ランプカバー4に適用されたが、これに限らず、光を投光および/または受光する光学装置の前方領域に配置されるインナーレンズやアウターレンズなどにも好適となっている。光学装置には、例えば、ミリ波レーダーなどの他の光学センサ、カメラなどの撮像装置、インターネット接続する通信装置、光を照射する発光素子、路面に所望の描画パターンを投影する路面描画装置なども含まれる。
【0030】
一般的な樹脂部材において、光透過率が比較的高い樹脂部材は、射出成形において割れやすく、複雑な形状にはあまり好適な材料とは言い難い。相対的に光透過率の低い樹脂部材は、しなやかで加工しやすく、複雑な三次元的形状に好適な材料となっている。光透過率の異なる樹脂部材を二色成形に用いることで、所望の領域のみ光透過率が高く、他領域では複雑な形状を有する二色成形品が形成できる。各樹脂部材の特性を活かして一体成形させることで、総重量、スペース、透過率、強度、形状を考慮した、複雑な意匠や高度な機能が要求される車両用灯具のレンズやカバーに、柔軟に対応できる二色成形品を構成できる。また一体成形させて1部品とすることにより、設置のための作業効率も向上する。
【0031】
(二色成形品)
ランプカバー4について、詳しく説明する。
図3は、
図2に示すA部の拡大図であり、主として第1部材10と第2部材20との接合部の構成を示す。
【0032】
図3に示すように、第1部材10と第2部材20との接合部においては、平面状の第2部材20に対して、第1部材10が接合面4cから第2部材20の内側に沿って延在し、第2部材20の背面側に積層することで、両部材は接合している。従来の二色成形品においては、両部材の接合部は突き当て構造であり、突き当て面に脚部を設けて接合面積を増加させる構成となっている。本実施形態では、第1部材10を第2部材20に延在させて積層させることで、従来品よりも接合面積を増加させて接合強度を向上させた。
【0033】
二つの部材が積層する積層部は、その長さが長いほど接合強度が増加するが、反面、積層させることにより、積層部分は厚みが増し、重量増加と透過率の低下を招く。このため、本実施形態においては、第1部材10と第2部材20とが積層する積層部4bの長さLを所定の長さに留める部分積層形態を用いて、接合強度と透過率の確保を両立させた。
【0034】
ここで、第1部材10の厚みをTHI1、第2部材20の厚みをTHI2として、より薄い方の厚みをTとし(THI1>THI2ならばT=THI2、THI1≦THI2ならばT=THI1)、積層部4bの長さを長さLとすると、長さLは、厚みTに対して、0.8倍~2倍が好ましく、1.0倍~1.2倍であるとより好ましい。
【0035】
ランプカバー4を射出成形する際には、まず第1部材10が成形され(一次成形)、第2部材20によりまとめ成形(二次成形)されることで、ランプカバー4が成形される。
【0036】
図3に示すように、第1部材10と第2部材20の接合面4cは、勾配が第1部材10側に傾いている。これは、勾配は金型からの抜き勾配であり、先に第1部材10が成形され、その後に第2部材20が成形されることを示す。
【0037】
一次成形品は、まとめ成形される際に、金型に強固に抑えられるため、従来は、割れにくく、キズがつきにくいしなやかな材料が好適となっている。しかし、透明部材においては、一般的に、透過率が低くなるほど融解温度が高い傾向がある。このため、異なる透過率の樹脂部材を用いて二色成形する本実施形態においては、光透過率の高い第1部材10を一次成形品として、第2部材20でまとめ成形することで、必要な接合強度を備えたランプカバー4を成形した。
【0038】
また、一次成形される第1部材10を、まとめ成形を行う第2部材20の内側に延在させることで、二色成形工程において、金型の構成がシンプルとなり、ランプカバー4を成形しやすくなるという利点がある。即ち、第1部材10を成形後の金型入れ替えの際に成形品を保持する機構と、第2部材20でのまとめ成形後に突き出し機構を、金型に設ける必要がなくなく、金型が構成しやすくなる。
【0039】
(試験データ)
異種樹脂部材の二色成形においては、接合強度の確保が問題となる。このため、ランプカバー4では、溶融温度の低い第1部材10を一次成形し、第2部材20でまとめ成形し、なおかつ接合部を積層形態とすることで、必要強度を確保した。ここで、ランプカバー4が必要接合強度を満たすための積層部長さの好適値について、試験データを用いて詳しく説明する。
【0040】
図4は、第1部材10を構成する樹脂部材Aと第2部材20を構成する樹脂部材Bを用いて、これを一体成形させた二色成形品を試験片とした試験データのグラフである。
図4下部に試験片の構成を示す。試験片はランプカバー4と同等に構成され、接合部で、相対的に光透過度の高い樹脂部材Aを樹脂部材B側へ延在している。両部材が部分積層された積層部の長さL1を異ならしめた試験片にて各試験を行った。
【0041】
図4(A)が同試験片の引っ張り強度を示すグラフであり、
図4(B)が同試験片の曲げ強度を示すグラフである。
図4(A)および
図4(B)の横軸は、積層部の長さL1を両部材の厚みT1との比値(L1/T1)で示した。
【0042】
従来の二色成形品は、少なくとも一方が着色された同樹脂部材同士による一体成形品である。このため、脚部の高さが厚みT1の0.2倍(接合部厚さが厚みT1の1.2倍)の突き当て構造で、樹脂部材Aと樹脂部材Aを用いてこれを一体成形させた二色成形品を従来品とし、従来品の同試験結果を図に点線で示した。
【0043】
なお、試験片の両部材の厚みは、全て同等であり一定となっている。
【0044】
図4に示すように、積層部の長さを増加させると、引っ張り強度および曲げ強度は増加する。従来品と比較すると、積層部の長さL1が各部材の厚みT1の0.8倍程度で、各強度の値は従来品と同程度となる。さらに長さL1が厚みT1程度(L1/T1=1.0)であれば、引っ張り強度および曲げ強度は従来品以上となり、従来品以上の接合強度を有すると言える。このため、積層部の長さL1は、厚みT1の0.8倍以上とすることが好ましく、さらに重量増加の抑制から、各部材の厚みT1の2倍以内が好ましい。さらに積層部の長さL1は厚みT1の0.8~1.2倍程度であると、従来品と比較しても十分な接合強度が確保され、かつ重量増加は最小限度に抑えられるため、より好ましい。両部材の厚みが異なる場合は、より薄い方の厚みを基準としても同等であり、これを基準とできる。
【0045】
(第2実施形態)
図5は、第2の実施形態にかかる車両用灯具101の主要構成を示す分解斜視図である。
図6は、車両用灯具101の鉛直断面図である。特に1の突起部に注目した。
【0046】
車両用灯具101はアクセサリランプであり、LED光源61を実装した基板60、インナーレンズ70、およびアウターレンズ80を主に含んで構成される。
【0047】
基板60は細長の形状を有するとともに、複数(本実施形態においては3個)のLED光源61が所定の間隔で直線状に実装されている。
【0048】
インナーレンズ70は、異なる二種の透明部材が一体成形された二色成形品であり、基板60に実装されたLED光源61の光出射面側に配置され、LED光源61の光出射面に対向する側の面が光の入射面71を構成し、LED光源61と反対側の面が光の出射面73を構成している。
【0049】
インナーレンズ70は、平板状のベース部74に対して、出射面73側へ突出する中空の突起部77を複数有し、それぞれの突起部77は、それぞれのLED光源61の前方に配置されるように構成される。
【0050】
突起部77は円柱台形状の外形を有し、円形の天井面79と、環状傾斜面である側面78から構成される。中空で薄肉の無底箱形状となっており、出射面73側では、ベース部74に孔74aが形成されている(
図6参照)。インナーレンズ70は、各突起部77で各LED光源61を覆うようにして基板60に装着され、孔74aからLED光源61は突起部77の内部空間S2に配置される。
【0051】
内部空間S2に配置されたLED光源61から出射した光は、それぞれLED光源61の直前に位置する突起部77の側面78または天井面(正面)79の内表面78a,79aに入射し、その外表面78b,79bから出射する。インナーレンズ70から出射した光は、アウターレンズ80に入射する。
【0052】
ここで側面78の内表面78aには、表面を粗面化した、いわゆるシボ加工が施されており、光拡散特性が付されている。光拡散特性を持たせるために、シボ加工に限らず、ステップやドットなどを刻成してもよい。
【0053】
アウターレンズ80は、透明部材で形成され、インナーレンズ70の出射面73側に配置される。インナーレンズ70の出射面73と対向する側の面が光の入射面81を構成し、インナーレンズ70とは反対側の面が、光の出射面82を構成する。
【0054】
入射面81は、インナーレンズ70からの出射光をアウターレンズ80内に導光し、出射面82は入射面81から入射してアウターレンズ80内を導光された光をアウターレンズ80外、即ち、車両用灯具101外に出射する。
【0055】
入射面81は、かまぼこ型のシリンドリカルレンズ81aが連続して上下方向に並列されたレンズカットとなっている。アウターレンズ80に入射した光は、主として上下方向に拡散して、出射面82から車両用灯具101の前方に向かって照射される。
【0056】
(インナーレンズ70の構造)
ここで、インナーレンズ70について、詳しく説明する。
【0057】
図6に示すように、インナーレンズ70は、主として突起部77の天井面79を構成する第1部材110と、主として突起部77の側面78およびベース部74を構成する第2部材120とが一体成形された二色成形品である。第1実施形態同様、第1部材110は透過性の高い透明樹脂部材で構成され、第2部材120は、第1部材110よりも相対的に透過性の低い透明樹脂部材で構成される。
【0058】
LED光源61から放射状に出射した光は、一部が天井面79へ向かう。透過率の高い第1部材110から主として構成される天井面79は高透過率領域となり、また天井面79の内表面79aおよび外表面79bは平面であることから、天井面79に入射した光は、ほぼ減衰せず素通しで、そのまま出射する。これに対して、側面78は透過率の比較的低い第2部材120から主として構成され、さらにシボ加工が施されているため、LED光源61から出射し、側面78に向かった光は、上下左右に拡散されて出射する。
【0059】
このため、LED光源61が点灯されると、突起部77は、天井面79が強く光り、側面78が淡く光り、その境は中間的な明るさで光る。さらにこの光の形態はアウターレンズ80で拡散されるため、車両用灯具101は、規則的に並ぶ縦長の光点が強く輝き、その周囲が淡く輝く、斬新な光の意匠を提供する。本実施形態ではシボ加工は第2部材120にのみ施されたが、第1部材110、特に側面78を構成する積層部77bの内側にもシボ加工を施してもよい。また、LED光源61は直線配置に限られず、マトリクス配置やランダム配置でもよい。
【0060】
側面78の内表面78aはシボ加工を施された曲面であり、側面78の複雑な形状を不具合なく成形するために、側面78は主として第2部材120で構成される。天井面79は強く光らせる必要があるため、天井面79が主として透過率の高い第1部材110で構成される。透過率の異なる二種類の透明樹脂部材を用いて、各部材の特性を活かしてインナーレンズ70を構成することで、複雑な光の意匠を提供できる。
【0061】
第1部材110が一次成形され、第2部材120でまとめ成形されることでインナーレンズ70は形成される。ここで、第2部材120は、側面78の上端に、天井面79に向かって伸びるリブ120aを有する。第1部材110は、リブ120aで第2部材120と接合し、第2部材120の内側に延在してこれに積層する。第1部材110と第2部材120の接合部では、第1部材110が第2部材120の内面に沿って延在するため、第1部材110はリブ120aの形状に沿って屈曲し、側面78で積層部77bが形成される。
【0062】
上記に示すように、第1部材110は第2部材120の形状に沿って積層部を形成されるため、第2部材120は平板状に限られず、屈曲形状、湾曲形状であっても構わず、また突起部や凹部を備えたものであっても、問題なく本開示の構成を適用できる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1、101 :車両用灯具
4 :ランプカバー
4a :高透過率領域
4b :積層部
4c :接合面
10 :第1部材
20 :第2部材
T :厚み
L :長さ