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特開2022-122000カーボンナノチューブ構造体及びそれを用いたカーボンナノチューブウェブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122000
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ構造体及びそれを用いたカーボンナノチューブウェブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/158 20170101AFI20220815BHJP
【FI】
C01B32/158
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019034
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】石川 宏典
(72)【発明者】
【氏名】長島 健太
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB05
4G146BC09
4G146BC42
4G146BC44
(57)【要約】
【課題】 カーボンナノチューブが均一に分布したカーボンナノチューブウェブを低コストで製造可能とすること。
【解決手段】 本発明の実施形態により、第1面とその裏面である第2面とを有する基材層と、上記基材層の第1面上に設けられた触媒層と、上記触媒層上で配列し、上記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイとを備えたカーボンナノチューブ構造体が提供される。上記基材層は、第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に、上記線分の長さよりも合計長さが短い1以上の脆弱部が設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその裏面である第2面とを有し、前記第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に、前記線分の長さよりも合計長さが短い1以上の脆弱部が設けられた基材層と、
前記第1面上に設けられた触媒層と、
前記触媒層上で配列し、前記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイと
を備えたカーボンナノチューブ構造体。
【請求項2】
前記1以上の脆弱部は、前記第2面に設けられた溝である請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項3】
前記第1面は、中央部とこれを取り囲んだ周縁部とを有し、前記カーボンナノチューブアレイの前記第1面への正射影は前記中央部内に位置し、前記1以上の脆弱部の前記第1面への正射影は前記周縁部内に位置した請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項4】
前記第1面は、中央部とこれを取り囲んだ周縁部とを有し、前記カーボンナノチューブアレイの前記第1面への正射影は前記中央部内に位置し、前記1以上の脆弱部の前記第1面への正射影は前記中央部内に位置した請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項5】
前記基材層は、ガラス、セラミックス、酸化物、窒化物、又はこれらから選択される2以上を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項6】
前記1以上の脆弱部の前記合計長さは、前記線分の前記長さの20%乃至80%の範囲内にある請求項1乃至5の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ構造体の前記基材層を前記1以上の脆弱部に沿って割断して、第1及び第2基材片を形成することと、
前記第1及び第2基材片を互いから引き離して、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記第1基材片の上に位置した部分と、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記第2基材片の上に位置した部分との間に、カーボンナノチューブウェブを生じさせることと
を含んだカーボンナノチューブウェブの製造方法。
【請求項8】
第1面とその裏面である第2面とを有し、前記第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に1以上の脆弱部が設けられた基材層と、前記第1面上に設けられた触媒層と、前記触媒層上で配列し、前記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイとを備えたカーボンナノチューブ構造体と、
前記基材層の一部と前記基材層の他の部分とをそれぞれ支持した第1及び第2支持部を含み、前記第1及び第2支持部の相対位置が固定された第1状態にあり、前記第1及び第2支持部がそれぞれ前記基材層の前記一部と前記基材層の前記他の部分とを支持したまま、前記第1及び第2支持部の互いからの距離が前記第1状態と比較してより長い第2状態へ変化可能な支持体と
を備えた支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項9】
前記1以上の脆弱部の合計長さは、前記線分の長さよりも短い請求項8に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項10】
前記第1状態において、前記第1及び第2支持部はそれらの間に隙間を有しており、前記1以上の脆弱部は、前記基材層の前記第2面のうち前記隙間に対応した部分に設けられている請求項8又は9に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項11】
前記1以上の脆弱部は、前記第2面に設けられた溝である請求項8乃至10の何れか1項に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項12】
前記基材層は、ガラス、セラミックス、酸化物、窒化物、又はこれらから選択される2以上を含む請求項8乃至11の何れか1項に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項13】
請求項8乃至12の何れか1項に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体の前記支持体を、前記第1状態から前記第2状態へと変化させることにより、
前記基材層を前記1以上の脆弱部に沿って割断して、前記基材層の前記一部及び前記基材層の前記他の部分にそれぞれ対応した第1及び第2基材片を形成するとともに、
前記第1及び第2基材片を互いから引き離して、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記第1基材片の上に位置した部分と、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記第2基材片の上に位置した部分との間に、カーボンナノチューブウェブを生じさせること
を含んだカーボンナノチューブウェブの製造方法。
【請求項14】
第1面とその裏面である第2面とを有している基材層と、前記第1面上に設けられた触媒層と、前記触媒層上で配列し、前記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイとを備えたカーボンナノチューブ構造体と、
前記基材層の一部と前記基材層の他の部分とをそれぞれ支持した第1及び第2支持部を含み、前記第1及び第2支持部の相対位置が固定された第1状態にあり、前記第1及び第2支持部がそれぞれ前記基材層の前記一部と前記基材層の前記他の部分とを支持したまま、前記第1及び第2支持部の互いからの距離が前記第1状態と比較してより長い第2状態へ変化可能な支持体と
を備えた支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項15】
前記第1状態において、前記第1及び第2支持部はそれらの間に隙間を有している請求項14に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項16】
前記基材層は、ガラス、セラミックス、酸化物、窒化物、又はこれらから選択される2以上を含む請求項14又は15に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体。
【請求項17】
請求項14乃至16の何れか1項に記載の支持体付きカーボンナノチューブ構造体の前記基材層に、1以上の脆弱部を、前記第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に形成することと、
前記支持体を、前記第1状態から前記第2状態へと変化させることにより、
前記基材層を前記1以上の脆弱部に沿って割断して、前記基材層の前記一部及び前記基材層の前記他の部分にそれぞれ対応した第1及び第2基材片を形成するとともに、
前記第1及び第2基材片を互いから引き離して、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記第1基材片の上に位置した部分と、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記第2基材片の上に位置した部分との間に、カーボンナノチューブウェブを生じさせることと
を含んだカーボンナノチューブウェブの製造方法。
【請求項18】
請求項7、13又は17に記載のカーボンナノチューブウェブの製造方法を含むカーボンナノチューブ膜の製造方法。
【請求項19】
長さ方向が揃った複数のカーボンナノチューブから各々がなる複数のカーボンナノチューブウェブを互いに積層することと、
前記複数のカーボンナノチューブウェブの1以上を請求項7、13又は17に記載のカーボンナノチューブウェブの製造方法により製造することと
を含むカーボンナノチューブ膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ構造体及びそれを用いたカーボンナノチューブウェブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に成長させたカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイは、例えば、カーボンナノチューブ糸の製造に利用可能である(例えば、非特許文献1を参照)。即ち、繭から糸を繰り出すようにして、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブ糸として得ることができる。このカーボンナノチューブ糸では、カーボンナノチューブの長さ方向は、カーボンナノチューブ糸の長さ方向とほぼ等しい。また、カーボンナノチューブ同士は、ファンデルワールス力によって互いに結合している。
【0003】
カーボンナノチューブアレイからは、上記と類似した方法により、カーボンナノチューブウェブを得ることも可能である(例えば、特許文献1を参照)。カーボンナノチューブウェブでは、カーボンナノチューブの長さ方向はほぼ等しい。
【0004】
カーボンナノチューブウェブは、例えば、複数のカーボンナノチューブウェブを積層してなるカーボンナノチューブ膜として用いる。カーボンナノチューブ膜には、合成樹脂を含浸させて、カーボンナノチューブを固定化して得られるものもある(例えば、特許文献2を参照)。なお、カーボンナノチューブウェブから撚糸を製造することも可能である(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
カーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブの分散液からなる塗膜を乾燥させることにより得ることもできる(例えば、特許文献4を参照)。カーボンナノチューブ膜は、例えば、ペリクルにおいてペリクル膜として利用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Jiang, et al., "Spinning continuous carbon nanotube yarns", Nature Vol.419 (2002)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-122021号公報
【特許文献2】特開2015-101039号公報
【特許文献3】特開2017-19690号公報
【特許文献4】国際公開第2018/008594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、カーボンナノチューブが均一に分布したカーボンナノチューブウェブを低コストで製造可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有し、上記第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に、上記線分の長さよりも合計長さが短い1以上の脆弱部が設けられた基材層と、上記第1面上に設けられた触媒層と、上記触媒層上で配列し、上記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイとを備えたカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0010】
本発明の他の側面によると、上記1以上の脆弱部は、上記第2面に設けられた溝である上記側面に係るカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0011】
本発明の他の側面によると、上記第1面は、中央部とこれを取り囲んだ周縁部とを有し、上記カーボンナノチューブアレイの上記第1面への正射影は上記中央部内に位置し、上記1以上の脆弱部の上記第1面への正射影は上記周縁部内に位置した上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0012】
本発明の他の側面によると、上記第1面は、中央部とこれを取り囲んだ周縁部とを有し、上記カーボンナノチューブアレイの上記第1面への正射影は上記中央部内に位置し、上記1以上の脆弱部の上記第1面への正射影は上記中央部内に位置した上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0013】
本発明の他の側面によると、上記基材層は、ガラス、セラミックス、酸化物、窒化物、又はこれらから選択される2以上を含む上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0014】
本発明の他の側面によると、上記1以上の脆弱部の上記合計長さは、上記線分の上記長さの20%乃至80%の範囲内にある上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0015】
本発明の他の側面によると、上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブ構造体の上記基材層を上記1以上の脆弱部に沿って割断して、第1及び第2基材片を形成することと、上記第1及び第2基材片を互いから引き離して、上記カーボンナノチューブアレイのうち上記第1基材片の上に位置した部分と、上記カーボンナノチューブアレイのうち上記第2基材片の上に位置した部分との間に、カーボンナノチューブウェブを生じさせることとを含んだカーボンナノチューブウェブの製造方法が提供される。
【0016】
本発明の他の側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有し、上記第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に1以上の脆弱部が設けられた基材層と、上記第1面上に設けられた触媒層と、上記触媒層上で配列し、上記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイとを備えたカーボンナノチューブ構造体と、上記基材層の一部と上記基材層の他の部分とをそれぞれ支持した第1及び第2支持部を含み、上記第1及び第2支持部の相対位置が固定された第1状態にあり、上記第1及び第2支持部がそれぞれ上記基材層の上記一部と上記基材層の上記他の部分とを支持したまま、上記第1及び第2支持部の互いからの距離が上記第1状態と比較してより長い第2状態へ変化可能な支持体とを備えた支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0017】
本発明の他の側面によると、上記1以上の脆弱部の合計長さは、上記線分の長さよりも短い上記側面に係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0018】
本発明の他の側面によると、上記第1状態において、上記第1及び第2支持部はそれらの間に隙間を有しており、上記1以上の脆弱部は、上記基材層の上記第2面のうち上記隙間に対応した部分に設けられている上記側面の何れかに係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0019】
本発明の他の側面によると、上記1以上の脆弱部は、上記第2面に設けられた溝である上記側面の何れかに係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0020】
本発明の他の側面によると、上記基材層は、ガラス、セラミックス、酸化物、窒化物、又はこれらから選択される2以上を含む上記側面の何れかに係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0021】
本発明の他の側面によると、上記側面の何れかに係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体の上記支持体を、上記第1状態から上記第2状態へと変化させることにより、上記基材層を上記1以上の脆弱部に沿って割断して、上記基材層の上記一部及び上記基材層の上記他の部分にそれぞれ対応した第1及び第2基材片を形成するとともに、上記第1及び第2基材片を互いから引き離して、上記カーボンナノチューブアレイのうち上記第1基材片の上に位置した部分と、上記カーボンナノチューブアレイのうち上記第2基材片の上に位置した部分との間に、カーボンナノチューブウェブを生じさせることを含んだカーボンナノチューブウェブの製造方法が提供される。
【0022】
本発明の他の側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有している基材層と、上記第1面上に設けられた触媒層と、上記触媒層上で配列し、上記基材層の厚さ方向に各々が伸びた複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイとを備えたカーボンナノチューブ構造体と、上記基材層の一部と上記基材層の他の部分とをそれぞれ支持した第1及び第2支持部を含み、上記第1及び第2支持部の相対位置が固定された第1状態にあり、上記第1及び第2支持部がそれぞれ上記基材層の上記一部と上記基材層の上記他の部分とを支持したまま、上記第1及び第2支持部の互いからの距離が上記第1状態と比較してより長い第2状態へ変化可能な支持体とを備えた支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0023】
本発明の他の側面によると、上記第1状態において、上記第1及び第2支持部はそれらの間に隙間を有している上記側面に係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0024】
本発明の他の側面によると、上記基材層は、ガラス、セラミックス、酸化物、窒化物、又はこれらから選択される2以上を含む上記側面の何れかに係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体が提供される。
【0025】
本発明の他の側面によると、上記側面の何れかに係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体の上記基材層に、1以上の脆弱部を、上記第2面の輪郭上の2点を結ぶ線分の位置に形成することと、上記支持体を、上記第1状態から上記第2状態へと変化させることにより、上記基材層を上記1以上の脆弱部に沿って割断して、上記基材層の上記一部及び上記基材層の上記他の部分にそれぞれ対応した第1及び第2基材片を形成するとともに、上記第1及び第2基材片を互いから引き離して、上記カーボンナノチューブアレイのうち上記第1基材片の上に位置した部分と、上記カーボンナノチューブアレイのうち上記第2基材片の上に位置した部分との間に、カーボンナノチューブウェブを生じさせることとを含んだカーボンナノチューブウェブの製造方法が提供される。
【0026】
本発明の他の側面によると、上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブウェブの製造方法を含むカーボンナノチューブ膜の製造方法が提供される。
【0027】
本発明の他の側面によると、長さ方向が揃った複数のカーボンナノチューブから各々がなる複数のカーボンナノチューブウェブを互いに積層することと、上記複数のカーボンナノチューブウェブの1以上を上記側面の何れかに係るカーボンナノチューブウェブの製造方法により製造することとを含むカーボンナノチューブ膜の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、カーボンナノチューブが均一に分布したカーボンナノチューブウェブを低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ構造体を概略的に示す斜視図。
図2図1に示すカーボンナノチューブ構造体の部分拡大図。
図3図1に示すカーボンナノチューブ構造体の上面図。
図4図1に示すカーボンナノチューブ構造体をD方向からみた正面図。
図5】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ構造体を概略的に示す上面図。
図6】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブウェブの製造方法が含む一工程を示す斜視図。
図7】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブウェブの製造方法が含む一工程を示す斜視図。
図8】比較例に係る方法によって製造したカーボンナノチューブウェブの走査電子顕微鏡写真。
図9】比較例に係る方法によって製造したカーボンナノチューブウェブの走査電子顕微鏡写真。
図10】実施例に係る方法によって製造したカーボンナノチューブウェブの走査電子顕微鏡写真。
図11】実施例に係る方法によって製造したカーボンナノチューブウェブの走査電子顕微鏡写真。
図12】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の製造方法により製造されるカーボンナノチューブ膜を概略的に示す斜視図。
図13】第1変形例に係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体を概略的に示す斜視図。
図14図13に示す支持体付きカーボンナノチューブ構造体の上面図。
図15図13に示す支持体付きカーボンナノチューブ構造体の下面図。
図16】カーボンナノチューブ構造体受け用フレームの一形態を概略的に示す上面図。
図17図16に示すカーボンナノチューブ構造体受け用フレームのA-A線断面図。
図18】カーボンナノチューブ構造体受け用フレームの一形態を概略的に示す上面図。
図19図18に示すカーボンナノチューブ構造体受け用フレームのB-B線断面図。
図20図18に示すカーボンナノチューブ構造体受け用フレームのC-C線断面図。
図21】フォトマスクに取り付けられたペリクルを概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、以下で参照する図において、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図において、寸法比や形状は、実物とは異なる可能性がある。
【0031】
<カーボンナノチューブ構造体>
図1は、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ構造体を概略的に示す斜視図であり、図2はその部分拡大図である。図1及び図2に示すカーボンナノチューブ構造体は、基材層31と、触媒層32と、複数のカーボンナノチューブ1200からなるカーボンナノチューブアレイ120とをこの順序で含む。なお、図1では触媒層32は省略している。
【0032】
基材層31は、少なくとも一方の面が平坦である。また、基材層31には、その厚さ方向に対して平行な割断面を生じるように、割断を誘起する脆弱部Gが設けられている。基材層31については後掲で詳述する。
【0033】
触媒層32は、基材層31の平坦な上記面上に設けられている。触媒層32は、例えば、鉄、ニッケル及びコバルトなどの金属からなる。
【0034】
基材層31と触媒層32との間には、下地層が介在していてもよい。下地層は、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化シリコンからなる。
【0035】
カーボンナノチューブアレイ120は、多数のカーボンナノチューブ1200の集合体である。これらカーボンナノチューブ1200は、触媒層32上で、触媒層32の表面である支持面から、この面に対して略垂直に伸びている。即ち、カーボンナノチューブ1200は、基材層31の厚さ方向に伸びている。なお、用語「カーボンナノチューブアレイ」は、用語「カーボンナノチューブフォレスト」と同義である。
【0036】
カーボンナノチューブ1200は、シングルウォールナノチューブであってもよく、マルチウォールナノチューブであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。また、カーボンナノチューブ1200は、アームチェアチューブ、ジグザグチューブ、カイラルチューブ、及びそれらの2以上の組み合わせの何れであってもよい。
【0037】
カーボンナノチューブ1200の長さは、例えば、0.1mm乃至5mmの範囲内にある。なお、図1におけるカーボンナノチューブ1200の長さと径との比は、実際の比よりも遥かに小さい。
【0038】
カーボンナノチューブアレイ120は、例えば、スーパーグロースCVD(水分添加CVD)などのCVD(Chemical Vapor Deposition)によって製造することができる。カーボンナノチューブアレイ120は、他の方法で製造してもよい。
【0039】
以下、基材層31について詳細に説明する。
基材層31には、上述のとおり、その厚さ方向に対して平行な割断面を生じるように、割断を誘起する脆弱部Gが設けられている。基材層31が脆弱部Gを備えることにより、脆弱部Gの長さ方向が割断ラインとなる割断を生じさせることができる。カーボンナノチューブウェブの製造においては、基材層31の割断後の2つの基材片(後述する図6及び図7に示す第1基材片31aと第2基材片31b)の互いからの距離を増加させることにより、カーボンナノチューブ1200をウェブ状に引き出す。この場合、従来のようにカーボンナノチューブアレイの端部を把持具で把持してカーボンナノチューブをウェブ状に引き出す必要がない。このため、把持具でカーボンナノチューブを均一に把持できないことに起因するカーボンナノチューブウェブの粗密の発生を抑制することができる。
【0040】
また、基材層31に形成された脆弱部Gが割断を誘起するため、基材層31として、例えばガラス等の劈開性を有しない汎用材料を使用した場合にも、割断ラインに凹凸を生じ難くなる。このため、基材層31としては、劈開性を有する材料に限られず広範な汎用材料を使用することができる。例えば、基材層31は、シリコン又はサファイアなどの単結晶であってもよく、またガラス、セラミックス、酸化物、窒化物などの多結晶でもよく、それらの組み合わせであってもよい。またそれらに化学的、物理的な平坦化処理を施してもよい。基材層31として例えば無アルカリガラスのような安価な汎用材料を使用した場合にも、カーボンナノチューブが均一に分布したカーボンナノチューブウェブを製造することが可能となる。
【0041】
脆弱部Gは、基材層31の面のうち、触媒層32が設けられた面(以下において、「第1面」という。)311の反対側の面(以下において、「第2面」という。)312に設けられている。脆弱部Gは、基材層31に対し、その厚さ方向に対して平行な割断面を生じるように割断を誘起するものであればよく、例えば、レーザー光照射手段や、レーザーカッタ、熱カッタ、エアカッタ、圧縮水カッタ等の公知の切り欠け手段により形成される。図1に示される脆弱部Gは、第2面312に切り欠けを入れることにより形成される溝である。
【0042】
脆弱部Gは、カーボンナノチューブアレイ120を作製する前に、予め基材層31に形成してもよく、或いはカーボンナノチューブアレイ120を作製した後に基材層31に形成してもよい。基材層31に対する脆弱部Gの形成が、カーボンナノチューブアレイにダメージを与える可能性を考慮すると、脆弱部Gは、予め基材層31に形成されていることが好ましい。
【0043】
以下、脆弱部Gについて、図3乃び図4を参照しながら説明する。
図3は、図1に示すカーボンナノチューブ構造体の上面図であり、図4は、図1に示すカーボンナノチューブ構造体をD方向からみた正面図である。図3及び図4に示されるカーボンナノチューブ構造体は、図1と同様、触媒層32が省略されている。
【0044】
この脆弱部Gは、基材層31の第2面312の輪郭312a上の2点を結ぶ線分Lに沿って1以上設けられており、その合計の長さは線分Lの長さより短い。脆弱部Gは、合計長さが線分Lの長さより短いものであれば、1つであってもよいし、線分Lよりも合計長さが短い2以上の脆弱部Gが、線分Lに沿って互いから離間して配列されたものであってもよい。このように脆弱部Gを線分Lの全長にわたり形成せず、1以上の脆弱部Gの合計長さを線分Lの全長より短くすることには、以下の理由がある。
【0045】
すなわち、基材層31に脆弱部Gを設けることにより、従来技術が有する問題点を解決してカーボンナノチューブウェブの粗密の発生を抑制することができ、また基材層31として広範な汎用材料を使用することが可能となる。その一方で、基材層31に脆弱部形成のための加工処理を施すことで、基材層31に亀裂や割れが生じやすくなったり、割断ラインに凹凸を生じ易くなることがあり、これがカーボンナノチューブアレイへダメージを与えることが考えられる。また、基材層31に亀裂や割れが生じやすくなることにより、カーボンナノチューブウェブを製造するまでのハンドリング性能が落ちることも予想される。1以上の脆弱部Gの合計長さを線分Lの長さより短くすることで、割断ラインに生じ得る凹凸や基材層31の亀裂や割れを効果的に防止することができ、カーボンナノチューブが更に均一に分布したカーボンナノチューブウェブを製造することが可能となる。
【0046】
本発明の実施形態において、1以上の脆弱部Gの合計長さは、例えば、線分Lの長さの20%乃至80%の範囲内であってよく、30%乃至60%の範囲内であってよい。
【0047】
脆弱部Gを設けることによる基材層31における亀裂又は割れの発生や、割断ラインにおける凹凸の発生は、上記のとおり、1以上の脆弱部Gの合計長さを線分Lの長さより短くすることにより効果的に抑制される。これに加え、基材層31の厚みを増大したり、剛性を高めることも、それらの発生の抑制に有効である。そして本発明の実施形態では、上述したとおり、基材層31として汎用材料を使用することができるため、基材層31の厚みを増大することや、剛性の高い材料を使用することに容易に対処することができる。
【0048】
なお、基材層31として汎用材料を使用することの利点はこれ以外にもある。すなわち、カーボンナノチューブウェブの面積を幅方向に拡大する必要がある場合、基材層31として安価な汎用材料を使用することができれば、基材層31を大面積化することにより容易に対処することができる。これに対し、基材層31として高価な単一結晶性を有する基材しか使用できない場合、基材層31の大面積化による方法は、生産性を損ねる虞がある。
【0049】
線分Lの方向は特に限定されるものではなく、割断面を形成したい位置に応じて適宜決定される。線分Lの方向は、例えば、基材層31の幅方向と平行な方向であってよい。なお、基材層31が例えばシリコン又はサファイアなどの劈開面を有する材料からなる場合は、上記線分Lの方向は、劈開面に対して平行であることが好ましい。基材層31が例えばシリコンからなるとき、劈開面は、シリコン単結晶の(110)面又は(111)面である。
【0050】
脆弱部Gは、線分Lに沿って形成されたものであればよいが、線分Lに対する位置については、以下のように考えることができる。例えば、図3及び図4において、基材層31の第1面311を中央部311aとこれを取り囲んだ周縁部311bとに分ける。但し、図面上では中央部311aと周縁部311bの境界線は省略している。基材層31の第2面312に形成される脆弱部Gの位置を、第1面311に正射影したとき、脆弱部Gの正射影位置は、中央部311a内であってもよいし、周縁部311b内であってもよいし、中央部311a及び周縁部311bの双方であってもよい。
【0051】
図3及び図4に示されるカーボンナノチューブ構造体において、脆弱部Gは、基材層31の幅方向に平行な線分Lの両端部であって、正射影位置が周縁部311b内となる位置に存在している。これに対し、脆弱部Gの正射影位置が中央部311a内になる例として、図5を示す。図5は、図1に示されるカーボンナノチューブ構造体とは異なるカーボンナノチューブ構造体を概略的に示す上面図であり、図1と同様、触媒層32を省略している。図5に示されるカーボンナノチューブ構造体において、脆弱部Gは、正射影位置が中央部311a内となる位置に存在している。
【0052】
脆弱部Gの形成によるカーボンナノチューブアレイ120へのダメージの発生を抑制する観点からは、脆弱部Gは、図3及び図4に示されるように、正射影位置が周縁部311b内となる位置に存在することが好ましい。これは、カーボンナノチューブアレイ120の位置を、図示しない触媒層32を介して基材層31の第1面311に正射影したとき、カーボンナノチューブアレイ120の正射影位置が、第1面311の中央部311a内にあるためである。
【0053】
すなわち、脆弱部Gの形成位置を、その正射影位置がカーボンナノチューブアレイ120の正射影位置と重ならないようにすることにより、脆弱部Gが形成されることによるカーボンナノチューブアレイ120へのダメージをより抑えることができる。ダメージとしては、例えば、切り欠きなどによる溝としての脆弱部Gの加工に起因したカーボンナノチューブアレイ120へのダメージが挙げられる。カーボンナノチューブアレイ120へのダメージを抑制することは、カーボンナノチューブが均一に分布したカーボンナノチューブウェブを製造する上で極めて重要である。
【0054】
また、図3及び図4に示されるカーボンナノチューブ構造体において、脆弱部Gは線分Lの両端部に形成されているが、一方の端部のみに形成されている場合にも割断面を誘起することは可能である。
【0055】
<カーボンナノチューブウェブ>
上記のカーボンナノチューブ構造体を使用すると、例えば、以下の方法によりカーボンナノチューブウェブを製造することができる。
【0056】
図6及び図7はそれぞれ、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブウェブの製造方法に含まれる工程を示す斜視図である。図6及び図7では、図1と同様、触媒層32を省略している。
【0057】
この方法では、先ず、図1に示すカーボンナノチューブ構造体を準備する。
次に、図6に示すように、基材層31を脆弱部Gの長さ方向に沿って割断して、第1基材片31a及び第2基材片31bを得る。基材層31の割断は、例えば、基材層31の一対の端部を把持し、基材層31の第2面312が凹になるように上記の端部へ力を加えることにより行ってもよい。或いは、基材層31の割断は、基材層31の第2面312が凸になるように上記の端部へ力を加えることにより行ってもよい。得られる第1基材片31a及び第2基材片31bの各々は、図7に示す割断面Sを有している。なお、図7に示す割断面Sにおいて、脆弱部Gは省略している。
【0058】
その後、図7に示すように、第1基材片31a及び第2基材片31bの互いからの距離を増加させる。これにより、カーボンナノチューブアレイ120のうち第1基材片31a上に位置した第1部分120aの端面と、カーボンナノチューブアレイ120のうち第2基材片31b上に位置した第2部分120bの端面とから、カーボンナノチューブをウェブ状に引き出す。
【0059】
なお、図示しない触媒層は、例えば、基材層31を割断した時点で、第1基材片31a上に位置した部分と、第2基材片31b上に位置した部分とに分割される。或いは、図示しない触媒層は、第1基材片31a及び第2基材片31bの互いからの距離を増加させることにより、第1基材片31a上に位置した部分と、第2基材片31b上に位置した部分とに分割される。
【0060】
径方向に隣り合ったカーボンナノチューブ1200には、ファンデルワールス力が作用する。それ故、例えば、カーボンナノチューブアレイ120の端面又はその一部を把持し、これをカーボンナノチューブアレイ120から遠ざかる方向へ引っ張ると、カーボンナノチューブ1200が次々にカーボンナノチューブアレイ120から引き出される。従って、接着剤等を使用することなしに、カーボンナノチューブウェブ121が得られる。これについて、更に詳しく説明する。
【0061】
上記の通り、カーボンナノチューブアレイ120において、カーボンナノチューブ同士は、ファンデルワールス力によって互いに結合している。第1基材片31a及び第2基材片31bを互いから引き離すと、第1部分120aと第2部分120bとの境界近傍に位置したカーボンナノチューブは、ファンデルワールス力による結合を維持しようとする。第1基材片31a及び第2基材片31bの互いからの距離を増加させると、第1部分120a及び第2部分120bからカーボンナノチューブが次々に引き出されるとともに、第1部分120aと第2部分120bとの間に位置したカーボンナノチューブは、ファンデルワールス力による結合を維持するべく、各々の長さ方向が第1基材片31a及び第2基材片31bの互いからの相対的な移動の方向に対して略平行になるように配向を変化させる。その結果、第1基材片31aと第2基材片31bとの間に、カーボンナノチューブウェブ121が生じる。
【0062】
このようにして得られるカーボンナノチューブウェブ121は、それ自体を単独で取り扱うことが可能な自立膜である。このカーボンナノチューブウェブ121では、接着剤等を使用していないにも拘わらず、カーボンナノチューブは互いに結合している。
【0063】
また、このカーボンナノチューブウェブ121では、カーボンナノチューブの多くは、それらを引き出した方向に伸びた形状を有している。即ち、このカーボンナノチューブウェブ121が含んでいるカーボンナノチューブは、長さ方向がほぼ等しい。
【0064】
そして、このカーボンナノチューブウェブ121では、カーボンナノチューブは均一に分布している。
【0065】
図8及び図9は、比較例に係る方法によって製造したカーボンナノチューブウェブの走査電子顕微鏡写真である。図8及び図9に示すカーボンナノチューブウェブは、カーボンナノチューブアレイの端面の一部を把持具で把持し、この状態で把持具をカーボンナノチューブアレイから遠ざけることにより得られたものである。
【0066】
このカーボンナノチューブウェブでは、カーボンナノチューブの長さ方向はほぼ等しい。しかしながら、幅方向におけるカーボンナノチューブの密度には、大きなばらつきがある。これは、カーボンナノチューブアレイの端面の一部を把持具で把持した際に、カーボンナノチューブを均一に把持できなかったためである。
【0067】
図10及び図11は、実施例に係る方法によって製造したカーボンナノチューブウェブの走査電子顕微鏡写真である。図9及び図10に示すカーボンナノチューブウェブは、基材層31として無アルカリガラスを使用し、図1乃至図4で説明したカーボンナノチューブ構造体を用い、図6及び図7を参照しながら説明した方法により得られたものである。
【0068】
このカーボンナノチューブウェブでは、カーボンナノチューブの長さ方向はほぼ等しい。そして、幅方向におけるカーボンナノチューブの密度に、大きなばらつきはない。
【0069】
なお、2つの基材層31の各々の上に触媒層32及びカーボンナノチューブアレイ120を順次形成し、それら基材層31の端面同士を突き合わせてカーボンナノチューブアレイ120を接触させ、その後、基材層31を互いから引き離しても、カーボンナノチューブウェブ121は形成されない。これは、ファンデルワールス力による結合が十分に形成されないためである。
【0070】
<カーボンナノチューブ膜>
カーボンナノチューブウェブ121は、単独で使用してもよい。或いは、カーボンナノチューブウェブ121は、カーボンナノチューブ膜において使用してもよい。
【0071】
カーボンナノチューブ膜は、複数のカーボンナノチューブウェブの積層体を含んでいる。例えば、カーボンナノチューブ膜は、長さ方向が揃った複数のカーボンナノチューブから各々がなり、互いに積層された複数のカーボンナノチューブウェブを含む。一例によれば、カーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブのみからなる。これらカーボンナノチューブウェブの1以上、例えば、これらカーボンナノチューブウェブの全ては、図4を参照しながら説明したカーボンナノチューブウェブである。これらカーボンナノチューブウェブは、隣り合った各2つの間で、カーボンナノチューブの長さ方向が異なるように積層されていることが好ましい。
【0072】
図12は、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ構造体を用いて形成されるカーボンナノチューブ膜を概略的に示す斜視図である。
図12のカーボンナノチューブ膜12は、第1カーボンナノチューブウェブ121aと第2カーボンナノチューブウェブ121bとを含んでいる。第1カーボンナノチューブウェブ121a及び第2カーボンナノチューブウェブ121bは重なり合っている。
【0073】
第1カーボンナノチューブウェブ121aは、複数の第1カーボンナノチューブ1200aによって形成されている。第1カーボンナノチューブ1200aは、第1方向D1に各々が伸び、径方向に配列している。
【0074】
第2カーボンナノチューブウェブ121bは、複数の第2カーボンナノチューブ1200bによって形成されている。第2カーボンナノチューブ1200bは、第1方向D1と交差する第2方向D2に各々が伸び、径方向に配列している。一例によれば、第1方向D1と第2方向D2とは直交している。第1方向D1と第2方向D2とは、斜めに交差していてもよい。
【0075】
上述したカーボンナノチューブ膜12は、例えば、以下の方法により製造することができる。
先ず、図6乃び図7を参照しながら説明した方法により、第1カーボンナノチューブウェブ121a及び第2カーボンナノチューブウェブ121bを製造する。次に、第1カーボンナノチューブウェブ121a及び第2カーボンナノチューブウェブ121bを、第1カーボンナノチューブ1200aの長さ方向と第2カーボンナノチューブ1200bの長さ方向とが交差するように重ね合わせる。そして、この積層体をプレスする。このプレスは、積層体の全体に対して行ってもよく、1以上の部分に対してのみ行ってもよい。また、プレスは行わなくてもよい。以上のようにして、カーボンナノチューブ膜12を得る。
【0076】
このカーボンナノチューブ膜12では、第1カーボンナノチューブウェブ121a及び第2カーボンナノチューブウェブ121bの各々は、図5乃び図6を参照しながら説明した方法によって得られたものである。それ故、第1カーボンナノチューブウェブ121aにおいては、第1カーボンナノチューブ1200aが均一に分布している。また、第2カーボンナノチューブウェブ121bにおいては、第2カーボンナノチューブ1200bが均一に分布している。
【0077】
なお、第1カーボンナノチューブウェブ121aには、第1方向D1以外の方向に伸びたカーボンナノチューブや、屈曲したカーボンナノチューブが不可避的に存在し得る。同様に、第2カーボンナノチューブウェブ121bには、第2方向D2以外の方向に伸びたカーボンナノチューブや、屈曲したカーボンナノチューブが不可避的に存在し得る。
【0078】
また、図12では、第1カーボンナノチューブウェブ121aは、第1カーボンナノチューブ1200aが面内方向にのみ配列し、厚さ方向に積層されていない単分子膜の如く描かれているが、第1カーボンナノチューブ1200aは、面内方向に配列するとともに、厚さ方向に積層されていてもよい。同様に、図12では、第2カーボンナノチューブウェブ121bは、第2カーボンナノチューブ1200bが面内方向にのみ配列し、厚さ方向に積層されていない単分子膜の如く描かれているが、第2カーボンナノチューブ1200bは、面内方向に配列するとともに、厚さ方向に積層されていてもよい。
【0079】
図12では、第1カーボンナノチューブ1200aは同じ径を有しているが、それらの径は同じでなくてもよい。同様に、図12では、第2カーボンナノチューブ1200bは同じ径を有しているが、それらの径は同じでなくてもよい。また、図12では、第1カーボンナノチューブ1200aと第2カーボンナノチューブ1200bとは同じ径を有しているが、それらの径は同じでなくてもよい。
【0080】
また、図12では、第1カーボンナノチューブウェブ121aと第2カーボンナノチューブウェブ121bとは接しているが、それらは互いから離間していてもよい。即ち、第1カーボンナノチューブ1200aと第2カーボンナノチューブ1200bとは、互いに接触していてもよく、互いから離間していてもよい。
【0081】
カーボンナノチューブ膜12は、3以上のカーボンナノチューブウェブを含んでいてもよい。この場合、カーボンナノチューブ膜12は、2以上の第1カーボンナノチューブウェブ121aと、1以上の第2カーボンナノチューブウェブ121bとを含んでいてもよい。或いは、カーボンナノチューブ膜12は、1以上の第1カーボンナノチューブウェブ121aと、2以上の第2カーボンナノチューブウェブ121bとを含んでいてもよい。或いは、カーボンナノチューブ膜12は、1以上の第1カーボンナノチューブウェブ121aと、1以上の第2カーボンナノチューブウェブ121bと、それらとはカーボンナノチューブの長さ方向が異なること以外は同様の構造を有する1以上のカーボンナノチューブウェブとを含んでいてもよい。
【0082】
<変形例>
上述したカーボンナノチューブ構造体及びそれを用いた方法には、様々な変形が可能である。
【0083】
(第1変形例)
第1変形例を、図13乃至図15を参照しながら説明する。
図13は、第1変形例に係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体を概略的に示す斜視図であり、図14はその上面図であり、図15はその下面図である。なお、図13乃至15では、触媒層32を省略している。
【0084】
図13乃至図15に示す支持体付きカーボンナノチューブ構造体は、支持体層33を更に含んでいること以外は、図1乃至図5を参照しながら説明したカーボンナノチューブ構造体と同様である。なお、この変形例では、1以上の脆弱部Gの合計長さが線分Lの長さより短いことは必須要件とされない。
【0085】
支持体層33は、第1支持部33aと第2支持部33bとを含んでいる。第1支持部33aは、基材層31の第2面312の一部に接合され、第1端面を有している。第2支持部33bは、基材層31の第2面312の他の一部に接合され、第1端面と向き合った第2端面を有している。第1端面及び第2端面の長さ方向は、脆弱部Gに誘起され割断する割断面に対して平行である。
【0086】
第1端面及び第2端面は、互いに接していてもよく、互いから離間していてもよい。支持体層33は、第1支持部33a及び第2支持部33bの相対位置が固定された第1状態にあり、第1支持部33a及び第2支持部33bがそれぞれ基材層31の上記一部と基材層31の上記他の部分とを支持したまま、第1支持部33a及び第2支持部33bの互いからの距離が第1状態と比較してより長い第2状態へ変化可能である。
【0087】
支持体層33を設けると、図6乃び図7を参照しながら説明した方法において、脆弱部Gが設けられた基材層31に亀裂や割れが生じることをより効果的に防止することができる。また、支持体層33がカーボンナノチューブをウェブ状に引き出す際の把持部分となったり、支持体層33により第1基材片31a及び第2基材片31bの破壊が生じ難くなる。これらによりハンドリング性能も向上する。更に、支持体層33を設けると、割断ラインに凹凸を更に生じ難くなる。それ故、この支持体付きカーボンナノチューブ構造体を用いた場合、1以上の脆弱部の合計長さが線分Lの長さより短いことを必須要件としなくても、カーボンナノチューブが均一に分布したカーボンナノチューブウェブを製造することが可能となる。
【0088】
支持体層33又は第1支持部33a及び第2支持部33bの材料としては、例えば、ガラス、シリコンウェハ等を使用することができる。
【0089】
第1支持部33a及び第2支持部33bは、ここでは、一体化されていない。第1支持部33a及び第2支持部33bは、第1端面及び第2端面をそれぞれ有していれば、一体化されていてもよい。
【0090】
例えば、支持体層33として溝を有する層を設けた場合、支持体層33のうち溝によって仕切られた2つの部分を第1支持部33a及び第2支持部33bとすることができる。この場合、溝の一方の側壁は第1端面であり、溝の他方の側壁は第2端面である。
【0091】
或いは、第1支持部33a及び第2支持部33bは、互いに対して接合していてもよい。例えば、第1支持部33a及び第2支持部33bを、互いに対して弱く接合させてもよい。或いは、第1支持部33a及び第2支持部33bを、光照射や加熱等によって接着力が低下する接着剤で互いに対して接合させてもよい。
【0092】
第1支持部33a及び第2支持部33bが一体化されている場合、カーボンナノチューブ構造体の取り扱いが更に容易になる。
【0093】
基材層31と第1支持部33a及び第2支持部33bは、互いに対して弱く接合させてもよいし、或いは、光照射や加熱等によって接着力が低下する接着剤で互いに対して接合させてもよい。
【0094】
図1乃至図5を参照して説明したカーボンナノチューブ構造体においては、1以上の脆弱部Gの合計長さが線分Lの長さよりも短いことを必須要件として含むが、第1変形例に係る支持体層33を含む支持体付きカーボンナノチューブ構造体においても、1以上の脆弱部Gの合計長さが線分Lの長さより短いことが好ましい。第1変形例において、1以上の脆弱部Gの合計長さは、線分Lの長さの20%乃至80%の範囲内であってよく、30%乃至60%の範囲内であってよい。
【0095】
支持体層33を含む支持体付きカーボンナノチューブ構造体において、基材層31が備える脆弱部Gは、基材層31と第1支持部33a及び第2支持部33bとを接合する前に予め基材層31に形成されていてもよいし、基材層31と第1支持部33a及び第2支持部33bとを接合した後に基材層31に形成されてもよい。後者の場合、第1支持部33a及び第2支持部33bは、図15に示されるような隙間33cをそれらの間に有している。脆弱部Gは、隙間33cから基材層31に対し加工される。
【0096】
図1乃至図5を参照して説明したカーボンナノチューブ構造体及び図13乃至図15を参照して説明した支持体付きカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブウェブの製造に供されるまでの間のハンドリングにおいて、カーボンナノチューブ構造体受け用フレームに収容された状態で周囲環境の影響から保護される。脆弱部Gを備えた基材層31は、亀裂や割れを生じやすい。基材層31に生じた亀裂や割れはカーボンナノチューブアレイにダメージを与える虞があるため、カーボンナノチューブ構造体受け用フレームに収容して周囲環境の影響から保護することが好ましい。
【0097】
図16は、カーボンナノチューブ構造体受け用フレームの一形態を概略的に示す上面図であり、図17はそのA-A線断面図である。この受け用フレームは、上面が開口し、枠体101と底面102を含む。枠体101は、4つの側壁をなす平面視矩形状の枠体であり、底面102の外縁上に立設される。底面102は板状部材であり、中央部に孔部103が形成されている。これら部材は、それぞれ独立の部材として成形し、接合したものであってもよいし、一体的に成形したものであってもよい。これら部材の材料としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、コージライトや、耐熱表面処理を施したアルミニウム等が挙げられる。
【0098】
図18は、カーボンナノチューブ構造体受け用フレームの他の形態を概略的に示す上面図であり、図19はそのB-B線断面図であり、図20はそのC-C線断面図である。この受け用フレームは、第1枠体101aと第1底面102aとから構成される第1フレームと、第2枠体101bと第2底面102bとから構成される第2フレームとが組み合わされてなり、全体として図16及び図17に示される受け用フレームと同様の外観を有する。第1フレーム及び第2フレームの材料としては、図16及び図17に示す受け用フレームにおいて説明したのと同様のジルコニア、アルミナ、コージライトや、耐熱表面処理を施したアルミニウム等が挙げられる。
【0099】
この受け用フレームは、図19及び図20に示される矢印の方向に第1フレーム及び第2フレームの各々をスライドさせることにより、各々の部材に分割することができる。図18乃至20に示される受け用フレームに収容されていたカーボンナノチューブ構造体を取り出すとき、第1フレーム及び第2フレームをスライドさせて分割する。このためカーボンナノチューブ構造体を上下動させることなく受け用フレームから取り出すことができる。これにより、脆弱部Gを有する基材層31が不意に割れたり破損することを効果的に防止することができる。
【0100】
(第2変形例)
第2変形例に係るカーボンナノチューブ構造体は、基材層31に脆弱部Gが設けられていないこと以外は、図13乃至図15を参照して説明した支持体付きカーボンナノチューブ構造体と同様である。このように第2変形例に係る支持体付きカーボンナノチューブ構造体は脆弱部Gが設けられていないため、これを用いてのカーボンナノチューブウェブの製造方法は、まず、基材層31の第2面312の輪郭312a上の2点を結ぶ線分Lの位置に1以上の脆弱部を形成する工程を含む。ここでも1以上の脆弱部Gの合計長さが線分Lの長さより短いことが好ましく、線分Lの長さの20%乃至80%の範囲内であってよく、30%乃至60%の範囲内であってよい。
【0101】
<応用例>
上記のカーボンナノチューブウェブ121から得られるカーボンナノチューブ膜12は、例えば、ペリクルにおいてペリクル膜又はその一部として使用することができる。
【0102】
図21は、フォトマスクに取り付けられた、本発明の一実施形態に係るペリクルを概略的に示す断面図である。
図21において、ペリクル1が取り付けられたフォトマスク2は、露光光として波長が13.5nmの極端紫外線(EUV光)を使用するEUVリソグラフィ用の反射型フォトマスクである。ペリクル1は、他のフォトマスクに取り付けてもよい。
【0103】
フォトマスク2は、基板21と、多層反射膜22と、キャッピング膜23と、吸収層24とを含んでいる。
【0104】
基板21は、平坦な表面を有している。基板21は、例えば、合成石英のように熱膨張率が小さい材料からなる。
【0105】
多層反射膜22は、基板21の上記表面上に設けられている。多層反射膜22は、EUV光に対する屈折率が異なる2以上の層を含んでいる。多層反射膜22は、繰り返し反射干渉により、EUV光に対して高い反射率を示し、他の光に対して低い反射率を示すように設計されている。
【0106】
ここでは、多層反射膜22は、EUV光に対する屈折率が互いに異なり、交互に積層された反射層22a及び22bを含んでいる。反射層22a及び22bは、例えば、一方が珪素からなり、他方がモリブデンからなる。なお、図21では、多層反射膜22は、反射層22a及び22bの組み合わせを3つ含んでいるが、通常は、より多くの組み合わせを、例えば、40程度の組み合わせを含む。
【0107】
キャッピング膜23は、多層反射膜22上に設けられている。キャッピング膜23は、吸収層24を得るためのパターニングの際やフォトマスク2を洗浄する際に、エッチング剤や洗浄剤から多層反射膜22を保護する役割を果たす。キャッピング膜23は、例えば、ルテニウムからなる。
【0108】
吸収層24は、キャッピング膜23上に設けられている。吸収層24には、半導体ウエハ上のフォトレジスト層に対する露光パターンに対応したパターンの開口部が設けられている。
【0109】
吸収層24は、EUV光に対して高い吸収率を示す材料からなる層である。吸収層24は、例えば、タンタル、酸化インジウム、酸化テルル、又はテルル化錫からなる。
【0110】
ペリクル1は、フォトマスク2に取り付けられている。ペリクル1は、ここでは、フォトマスク2の反射面に埃等が付着するのを防止する。なお、フォトマスクが透過型である場合には、ペリクル1は、フォトマスクの両面に取り付けてもよい。
【0111】
ペリクル1は、フレーム11とカーボンナノチューブ膜12とを含んでいる。
フレーム11は、図示しない接着剤を介して、フォトマスク2に取り付けられている。フレーム11は、カーボンナノチューブ膜12をフォトマスク2から離間させるスペーサとしての役割を果たす。フレーム11は、例えば、アルミニウムからなる。
【0112】
カーボンナノチューブ膜12は、露光光、ここではEUV光に対して高い透過率を示すペリクル膜である。カーボンナノチューブ膜12は、フレーム11を間に挟んでフォトマスク2と向き合うように、フレーム11に支持されている。具体的には、カーボンナノチューブ膜12の周縁部は、例えば、接着剤によってフレーム11に固定されている。
【0113】
カーボンナノチューブ膜12の厚さは、500nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブ膜12を厚くすると、露光光、ここではEUV光に対する透過率が低下する。カーボンナノチューブ膜12の厚さは、10nm以上であることが好ましい。カーボンナノチューブ膜12を薄くすると、その機械的強度が低下するとともに、カーボンナノチューブ膜12を埃等が透過する可能性が高まる。
【0114】
カーボンナノチューブ膜12は、径が30nm超の埃等を透過させないことが好ましい。即ち、カーボンナノチューブ膜12におけるカーボンナノチューブ間の隙間は、径が30nm超の埃等を透過させないものであることが好ましい。
【0115】
このカーボンナノチューブ膜12は、透過率の面内均一性に優れている。これについて、以下に説明する。
【0116】
カーボンナノチューブ膜は、例えば、カーボンナノチューブの分散液から塗膜を形成し、この塗膜から分散媒を除去することによって得ることも可能である。しかしながら、このような方法によると、分散媒を除去する過程でカーボンナノチューブの凝集を生じ得る。それ故、この方法で得られるカーボンナノチューブ膜では、カーボンナノチューブが高密度に存在している部分と、カーボンナノチューブが低密度に存在している部分とを生じ易い。
【0117】
また、カーボンナノチューブの分散液から得られるカーボンナノチューブ膜では、カーボンナノチューブの多くは湾曲及び/又は屈曲した形状を有している。それ故、この方法で得られるカーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブが交差した部分を数多く含む。EUV光の吸収は交差したそれぞれのカーボンナノチューブによっておこり、交差するカーボンナノチューブの数が多くなるほど吸収されるEUV光の量は多くなる。そのためカーボンナノチューブが交差した部分と、カーボンナノチューブが交差していない部分とでは、吸収されるEUV光の量が異なることが考えられる。また、これら交差部は、均一に分布している訳ではなく、不均一に分布している。
【0118】
従って、カーボンナノチューブの分散液から得られるカーボンナノチューブ膜は、透過率の面内均一性が不十分である。
【0119】
これに対し、カーボンナノチューブウェブ121では、上記の通り、カーボンナノチューブ1200の多くは、それらを引き出した方向に伸びた形状を有している。即ち、カーボンナノチューブ1200は、一方向に各々が伸び、径方向に配列している。また、カーボンナノチューブウェブ121では、上記の通り、カーボンナノチューブ1200は均一に分布している。そして、このカーボンナノチューブウェブ121では、カーボンナノチューブ1200が交差した部分は多くはない。それ故、カーボンナノチューブウェブ121を、それらが含んでいるカーボンナノチューブ1200の長さ方向が交差するように重ね合わせると、カーボンナノチューブ1200の交差部を均一に分布させることができる。
従って、このカーボンナノチューブ膜12は、透過率の面内均一性に優れている。
【0120】
なお、ここでは、カーボンナノチューブ膜12をペリクル膜又はその一部として使用することを説明したが、カーボンナノチューブ膜12は他の用途で使用することも可能である。
【0121】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0122】
1…ペリクル、2…フォトマスク、11…フレーム、12…カーボンナノチューブ膜、21…基板、22…多層反射膜、22a…反射層、22b…反射層、23…キャッピング膜、24…吸収層、31…基材層、31a…第1基材片、31b…第2基材片、311…第1面、311a…中央部、311b…周縁部、312…第2面、312a…第2面の輪郭、32…触媒層、33…支持体層、33a…第1支持部、33b…第2支持部、33c…隙間、101…枠体、101a…第1枠体、101b…第2枠体、102…底面、102a…第1底面、102b…第2底面、120…カーボンナノチューブアレイ、120a…第1部分、120b…第2部分、121…カーボンナノチューブウェブ、121a…第1カーボンナノチューブウェブ、121b…第2カーボンナノチューブウェブ、1200…カーボンナノチューブ、1200a…第1カーボンナノチューブ、1200b…第2カーボンナノチューブ、D1…第1方向、D2…第2方向、S…割断面、G…脆弱部、L…線分。
図1
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図3
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図7
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図10
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