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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122016
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】作用物質供給装置及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/003 20210101AFI20220815BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
F24F7/00 A
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019059
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】淵▲崎▼ 礼奈
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA13
4C180CA04
4C180CA06
4C180EC01
4C180FF07
4C180GG14
4C180GG17
4C180GG19
4C180HH05
4C180KK02
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】人への作用物質を居室内に行きわたらせることが可能な空調システムを提供する。
【解決手段】空調機から送気された空気に、居室内の人に作用させる作用物質を供給する作用物質供給装置であって、液状の作用物質を貯留する貯留タンクと、ダクト内に設けられ、貯留タンクに貯留された液状の作用物質が含侵される多孔質素材からなる吸水体とを備えた構成とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機からダクトを介して居室に送気される空気に、居室内の人に作用させる作用物質を供給する作用物質供給装置であって、
液状の作用物質を貯留する貯留タンクと、
前記ダクト内に設けられ、前記貯留タンクに貯留された液状の作用物質が含侵される多孔質素材からなる吸水体と、
を備えた作用物質供給装置。
【請求項2】
前記吸水体は、前記ダクトの内周に沿って設けられることを特徴とする請求項1に記載の作用物質供給装置。
【請求項3】
前記吸水体は、一部が前記ダクトの内周に接触し、ダクトの内周との間に隙間を形成することを特徴とする請求項2に記載の作用物質供給装置。
【請求項4】
前記吸水体は、前記ダクトの延長方向に伸縮可能とされたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の作用物質供給装置。
【請求項5】
前記吸水体は、前記ダクトを流れる空気に横切るように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の作用物質供給装置。
【請求項6】
前記吸水体は、前記ダクトを流れる空気が流通可能な貫通孔を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれかに記載の作用物質供給装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6いずれかに記載の作用物質供給装置を備えた空調システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6いずれかに記載の作用物質供給装置を備え、
前記吸水体が設けられるダクトが、前記吸水体に含侵された液状の作用物質を吸水体から含侵可能な多孔質素材からなる空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作用物質供給装置及び空調システムに関し、特に、人への作用物質を居室内に行きわたらせることが可能な作用物質供給装置及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然の植物性の精油等の人への作用物質を居室内で気化させることにより、その成分の効能によって人を肉体的或いは精神的に良い方向に導き、癒しやリラックス等が得られることが知られている。例えば、特許文献1のように、芳香拡散器の容器本体内に入れられた精油またはその希釈油を芯材により吸い上げ、芯材から表面が外部に露出する吸水体に吸収させて、送風ファンによりオイル容器の下方から上方に向かって流れる風により吸水体に吸収された精油を居室内に気化させる装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-73464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような装置では、気化した作用物質の居室内における濃度分布にむらが生じてしまうという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、人への作用物質を居室内に行きわたらせることが可能な作用物質供給装置及び空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための作用物質供給装置の構成として、空調機からダクトを介して居室に送気される空気に、居室内の人に作用させる作用物質を供給する作用物質供給装置であって、液状の作用物質を貯留する貯留タンクと、ダクト内に設けられ、貯留タンクに貯留された液状の作用物質が含侵される多孔質素材からなる吸水体とを備えた構成とした。
本構成によれば、空調機から送気された空気がダクト内を流れるときに、吸水体に含侵された液状の作用物質を気化させて、居室に送気することができるので、人への作用物質を居室内に行きわたらせることができる。
吸水体は、ダクトの内周に沿って設けたり、一部をダクトの内周に接触させてダクトの内周との間に隙間を形成ようにしたり、ダクトの延長方向に伸縮可能としても良い。また、吸水体は、前記ダクトを流れる空気に横切るように設けても良い。吸水体は、ダクトを流れる空気が流通可能な貫通孔を設けても良い。
前記課題を解決するための空調システムの構成として、請求項1乃至請求項6いずれかに記載の作用物質供給装置を備える構成としたり、吸水体が設けられるダクトが、吸水体に含侵された液状の作用物質を吸水体から含侵可能な多孔質素材からなる構成とすることにより、人への作用物質を居室内に行きわたらせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】空調システムの概略図である。
図2】作用物質供給装置の構成例を示す図である。
図3】供給部を示す図である。
図4】環状吸水体の形状を示す図である。
図5】供給部の作用を示す図である。
図6】供給部の他の形態を示す図である。
図7】供給部の他の形態を示す図である。
図8】環状吸水体の他の形状を示す図である。
【0007】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態に係る作用物質供給装置が設けられた空調システムの一例を示す概略図であり、図1(a)及び図1(b)は、居室2の互いに直交する断面を表している。
図1に示す空調システム1は、所謂床下空調装置であって、居室2外に設けた空調機3から居室2の環境が最適化されるように空気の温湿度を調整した温風や冷風を、ダクト4を通じて居室2の床5下に設けられた床下空間6に送気し、床5に設けた吹出口7を介して居室2に給気として吹き出させ、居室2の壁8に設けられた吸込口9から居室2内の空気を取り込み、ダクト10を通じて空調機3に戻すことで循環可能に構成される。
【0009】
居室2は、床5、壁8及び天井11等により1つの空間として区画される。床5は、大梁14上に設けられたコンクリートスラブ15から所定距離離間するように、コンクロートスラブ15上に設けた支持部材16により支持され、コンクリートスラブ15との間で床下空間6を形成する。床5は、例えば、床下地基板17及び床仕上材18を密着させて形成される。コンクリートスラブ15には、床5に対向する面に断熱材19等が貼り付けられている。
【0010】
本実施形態では、ダクト4は、例えば、空調機3から床下空間6の近傍まで延長する通気ダクト12と、通気ダクト12に接続され、床下空間6に設けられる膨縮ダクト13とで構成される。通気ダクト12は、金属や樹脂などからなる管であって、空調機3から送気された温風や冷風が通過する。
【0011】
膨縮ダクト13は、床下空間6、具体的には前述の断熱材19と床下地基板17との間に延長して設けられる。膨縮ダクト13は、例えば、可撓性を有する布又は不織布等の多孔質の素材からなる。膨縮ダクト13は、ファスナー等の開閉機構を有し、ファスナーを閉じることで筒状に、ファスナーを開くことでシート状に変形可能に構成される。さらに、膨縮ダクト13の端部には、筒状にした状態において、端部の閉塞を可能とするファスナーが設けられている。膨縮ダクト13は、筒状に形成した状態において、一方の端部が通気ダクト12に接続され、他方の端部が閉鎖された袋状とされる。このような膨縮ダクト13は、例えば、所謂ソックダクト等と称される。
【0012】
膨縮ダクト13は、空気の流入前はしぼんだ状態にあり、通風ダクト12から空気が流入することで図1に示すように膨張する。そして、膨縮ダクト13に流入した空気は、布又は不織布等の繊維の網目により形成される多孔からしみ出るように膨縮ダクト13を膨張させながら床下空間6に吹き出される。
【0013】
吹出口7は、床下空間6と居室2とを連通するように床5に設けられる。吹出口7には、例えば、ファン7Aが設けられ、ファン7Aの動作により膨縮ダクト13から吹き出された空気が床下空間6から居室2へと送出される。なお、ファン7Aは、必須ではない。また、吹出口7をなくし、床5を形成する床下地基板17及び床仕上材18に、床下空間6から居室2に貫通する孔を複数有するものを用いても良い。
【0014】
吸込口9は、居室2内の空気と熱交換をした後の空気を取り込むための開口として、例えば、壁面などに設けられる。吸込口9には、空調機3と居室2とを結ぶダクト10が接続される。ダクト10は、通気ダクト12と同様な、金属や樹脂等からなる管により構成される。
【0015】
前述の空調システム1は、人に対して作用する作用物質を空調機3から送気された空気に含ませる作用物質供給装置30を備える。ここでいう人への作用物質とは、例えば、芳香成分、消臭成分、除菌成分、殺菌成分などの物質を含み、揮発性を有する溶液Lをいう。このような溶液Lには、フィトンチッド溶液、消毒散布材、消臭剤、芳香剤等が挙げられる。
【0016】
図2は、作用物質供給装置30の概略構成図である。
図2に示すように、作用物質供給装置30は、膨縮ダクト13内を流れる空気に作用物質を供給する供給部31と、供給部31に溶液Lを供給する溶液タンク32と、溶液タンク32から供給部31への溶液Lの供給を制御する制御部33と、を備える。供給部31は、膨縮ダクト13内に設けられ、溶液タンク32及び制御部33は、膨縮ダクト13外に設けられる。
【0017】
図3は、本実施形態に係る供給部31を示す図である。
供給部31は、全体として略円環状に形成され、例えば、外周が膨縮ダクト13の内周に接触し、内周側を通気ダクト12から流入する空気が流通可能とされる。供給部31は、例えば、膨縮ダクト13が最大膨張したときの内径寸法に対応し、膨縮ダクト13の内周面によって保持可能な外径寸法が設定される。
【0018】
供給部31は、例えば、溶液管34と、環状吸水体35とを備える。
図3(a)に示すように、溶液管34は、概略円環状に形成され、供給部31における基体を構成する。溶液管34は、例えば、内周側が一つの円形に形成され、外周側が半径の異なる半円形を組み合わせた外観を有するように形成される。溶液管34の外周側において、半径の小さい半円側を小径部38といい、半径の大きい半円側を大径部39という。大径部39は、膨縮ダクト13が膨張したときの内周面に密着可能な寸法に設定されている。小径部38を形成する外周壁38o及び大径部39の外周壁39oは、接続壁41;41を介して接続される。
【0019】
図3(b)(図3(a)におけるk-k断面)に示すように、溶液管34は、半径方向の断面視において矩形状の中空部40を有する。中空部40は、小径部38から大径部39に連続する一つの空間を形成する。接続壁41;41は、例えば、平面状に形成され、溶液管34を半径方向に切断する同一平面上に位置するように設けられる。図3(c)に示すように、各接続壁41には、大径部39側の中空部40に貫通する矩形状の開口部41mが形成される。この開口部41mから後述する環状吸水体35が中空部40内に挿入される。
【0020】
小径部38は、外周壁38oに中空部40に貫通する貫通孔38Hを備える。本実施形態では、貫通孔38Hは、大径部39を下にして接続壁41;41を水平位置に配置したときに、小径部38の最も高い位置に設けられている。貫通孔38Hには、中空部40内に溶液Lを流入させるための管45が取り付けられる。この管45には、溶液タンク32から延長するチューブ43が接続される。
【0021】
図4に示すように、環状吸水体35は、吸水性を有するように、フェルト等の多孔質素材で構成され、例えば、周方向の一部が切り欠かれたC字状に形成される。環状吸水体35は、延長方向に交差する断面形状が、例えば、開口部41mの開口形状に合致する矩形状に形成される。
【0022】
環状吸水体35は、一方の接続壁41の開口部41mから大径部39側の中空部40内に挿入される。中空部40に挿入された環状吸水体35は、大径部39の外周壁39oの内周面に沿って他方の接続壁41の開口部41mから再び露出し、小径部38の外周に沿って管45を挟むように配置される。これにより、環状吸水体35の一部が中空部40内に進入した状態で、他部が小径部38の外周壁38oに沿って露出する。
【0023】
供給部31は、チューブ43を介して溶液タンク32と接続される。溶液タンク32は、溶液Lを貯留し、供給部31内に溶液Lを供給する。溶液タンク32は、作用物質供給装置30における溶液Lを蓄える主タンク、溶液管34が副タンクとして機能する。
【0024】
図2に示すように、制御部33は、居室2内の人への作用物質の状態を制御するための装置である。制御部33は、例えば、バルブ46、制御ユニット47、センサー48及びセンサー49とを備える。バルブ46は、チューブ43の途中に設けられる。バルブ46は、例えば、制御ユニット47から入力される電気的な信号に基づいて開閉し、溶液タンク32から溶液管34への溶液Lの供給を制御する。
【0025】
制御ユニット47は、演算手段としてのCPUや記憶手段としてのROM,RAM等を有する所謂コンピュータである。制御ユニット47は、バルブ46、センサー48及びセンサー49と電気的に接続され、センサー48及びセンサー49から入力される信号に基づいてバルブ46の開閉を制御する。センサー48は、居室2内に設けられ、居室2内の空気中に含まれる気化した溶液Lの濃度を検出する。センサー49は、供給部31に設けられ、溶液管34内における溶液Lの液量を検出する。
【0026】
前述の制御部33によれば、例えば、居室2への作用物質の供給を次のように動作させることができる。制御部33は、センサー48により検出された居室2内の空気中に含まれる気化した溶液Lの濃度の閾値よりも大きいときには、バルブ46を閉じて溶液管34への溶液Lの供給を停止する。これにより、溶液管34内における溶液Lの液量が少なくなり、溶液管34内において溶液Lに含侵される環状吸水体35の体積を小さくすることで、居室2内における作用物質の濃度を低くすることができる。
【0027】
制御部33は、居室2内の空気中に含まれる気化した溶液Lの濃度が閾値以下のときにはバルブ46を開くことで溶液管34への溶液Lの供給を開始する。この溶液管34への溶液Lの供給により、溶液管34内における溶液Lの液量が多くなり、液面が上昇する。これにより、溶液管34内において溶液Lに含侵される環状吸水体35の体積を大きくし、環状吸水体35による溶液Lの吸い上げ量を増加させることで居室2内における作用物質の濃度を高くすることができる。
【0028】
制御部33は、センサー49により検出された液量が、溶液管34に貯留可能な最大溶液量に達したときに、バルブ46を閉じて溶液管34への溶液Lの供給を停止する。最大溶液量は、例えば、溶液管34から環状吸水体35が露出する開口部から漏れ出ない高さ等に設定される。
溶液管34に貯留可能な最大溶液量よりも少ないときには、センサー48に基づいてバルブ46を制御する。
【0029】
なお、制御部33による溶液タンク32から供給部31への溶液Lの供給に関する制御は、前述の構成に限定されず、適宜変更すれば良い。
【0030】
以下、作用物質供給装置30について説明する。供給部31は、膨縮ダクト13に設けられたファスナー(開閉機構)を開き、膨縮ダクト13内に配置される。供給部31の膨縮ダクト13内への配置では、供給部31の外周が膨縮ダクト13の内周に接触し、供給部31の内周側の空間を空調機3から送出された空気が流通するように設けられる。これにより、溶液管34の小径部38の外周に露出する環状吸水体35が膨縮ダクト13に接触する。なお、溶液管34の小径部38の外周に露出する環状吸水体35は、膨縮ダクト13に設置したときに、膨縮ダクト13に接触した状態にあり、膨縮ダクト13が膨張したときにもその状態が維持される。溶液タンク32から供給部31に延長するチューブは、膨縮ダクト13のファスナーの一部を開いた状態とすることで膨縮ダクト13の外に露出される。
【0031】
そして、制御部33の動作により、溶液タンク32から供給部31に溶液Lが所定量供給されることにより、溶液Lは、環状吸水体35の毛細管現象により、環状吸水体35の全体に含侵し、さらに環状吸水体35と膨縮ダクト13の接触面から膨縮ダクトへと浸潤する。
【0032】
そして、膨縮ダクト13に浸潤した溶液Lは、図5に示すように、空調機3から冷風や温風が膨縮ダクト13内を通風することにより気化し、膨縮ダクト13の吹出孔20から床下空間6、ファン7Aを介して吹出口7から居室2内に温度や湿度の調整された空気とともに送られる。
【0033】
居室2内に送られた溶液Lを含む空気は、居室内2を循環し、空気居室2内に作用物質をむらなく分布させることができる。
【0034】
以上説明したように、空調システム1によれば、空調機3から膨縮ダクト13に送気された空気に作用物質を気化させて混合し、膨縮ダクト13の吹出孔20から床下空間6に吹き出し、床下空間6に拡散させて、居室2内に送気することにより、居室2内に空調機3により温度や湿度等が調整された空気とともに作用物質を居室2内にむらなく行き渡らせ、居室2内における濃度分布を均一化することができる。
【0035】
前述の実施形態では、作用物質供給装置30が設けられる空調システム1として、床下空調として設けられた膨縮ダクト13に設置した場合について説明したが、床下空調に限定されず、例えば、膨縮ダクト13を居室2の天井から吊り下げたり、天井裏などに設けられたものであっても良い。
【0036】
また、供給部31の構成は、前述の実施形態で示すものに限定されず、例えば、図6に示すように、溶液管34の内周側を流れる空気を横切るように棒状に形成した吸水体(以下、棒状吸水体)36を設けても良い。この場合、例えば、溶液管34に最大貯留量分の溶液Lが貯留されたときの液面に、棒状吸水体36が浸るように溶液管34の内周壁34iに穴をあけ、棒状吸水体36の両端部を中空部40内に進入させれば良い。これにより、膨縮ダクト13内を流れる空気に、より多くの作用物質を気化させることができ、居室2内に作用物質を供給することができる。
【0037】
なお、膨縮ダクト13に接する環状吸水体35に加え、膨縮ダクト13内を流れる空気を横切るように一本の棒状吸水体36を設けるものとして説明したが、複数設けても良く、また環状吸水体35、或いは棒状吸水体36のいずれか一方としても良い。
【0038】
また、膨縮ダクト13内に設けられる供給部31の数量は、一つに限定されず、複数設けるようにしても良い。
【0039】
前述の実施形態では、環状吸水体35が、溶液管34の小径部38の外周に沿うように構成したが、これに限定されない。例えば、図7(a)に示すように、吸水体350を螺旋状とし、図7(b)に示すように、一端側を溶液管34に貯留される溶液Lに接続させて膨縮ダクト13の延長方向沿って螺旋部分が延長するように配置すれば良い。
【0040】
また、例えば、供給部31を2つ設ける場合、図7(a)に示すように、溶液Lを吸収させる吸水体350を膨縮ダクト13の内周に接触可能な直径を有する螺旋状(以下、螺旋状吸水体という)とし、図7(c)に示すように、一端側を一方の溶液管34に貯留される溶液Lに侵入させ、他端側を他方の溶液管34に貯留される溶液Lに侵入させて、2つの溶液管34から吸水体350に溶液Lを吸収させることができる。
【0041】
このように吸水体350を螺旋状とし、膨縮ダクト13の延長方向に沿って配置することにより、前述の環状吸水体35を用いたときに比べ、膨縮ダクト13の延長方向に広く接触するため、溶液Lを膨縮ダクト13に効率的に行き渡らせることができ、膨縮ダクト13を流れる空気に溶液Lを多く気化させることができる。また、吸水体350を螺旋状とした場合、伸縮が可能となり、吸水体350から膨縮ダクト13へと浸潤させる範囲を可変とし、居室2への作用物質の供給量を調整することができる。
【0042】
膨縮ダクト13の延長方向に沿って延長させる吸水体350の形状は、螺旋状に限定されず、例えば、山折りと谷折りの繰り返し構造を有する筒状の蛇腹としても良い。なお、蛇腹には、山と谷が軸方向に独立した伸縮可能な蛇腹(以下、伸縮蛇腹という)と、山と谷が螺旋状に軸方向に延長するもの(以下、螺旋蛇腹という)のいずれであっても良いが、伸縮蛇腹を用いることで、溶液Lを吸水体から膨縮ダクト13に浸潤させる範囲を可変とすることができる。
【0043】
また、吸水体350の形状は、網目により形成された筒状体であっても良い。このように形成しても溶液Lを吸水体から膨縮ダクト13に浸潤させる範囲を可変とすることができる。
【0044】
溶液管34の形状および吸水体350の形状は、ダクトの断面形状に応じて設定すれば良い。ダクトの断面形状が円形の場合には、溶液管34の形状を円形とし、吸水体350の形状を、円筒状の螺旋や、軸方向に伸縮、非伸縮の円筒形の蛇腹などとし、ダクトの断面形状が矩形の場合には、溶液管34の形状を矩形とし、吸水体350の形状を、矩形筒状の螺旋や、軸方向に伸縮、非伸縮の矩形筒状の蛇腹などとすれば良い。
【0045】
なお、ダクト内に設けられる溶液管34は、ダクト内を流れる空気の流れを極力妨げないように形成することが好ましく、この溶液管34に貯留された溶液Lに吸水体350の一部が浸潤するように構成すれば良い。
【0046】
また、吸水体350を螺旋蛇腹とする場合、例えば、蛇腹において山折り部分に螺旋状の骨材を中空とし、内部に溶液Lを流通可能とし、該骨材から吸水体350に溶液Lが染み出るように構成することで、溶液管34において溶液Lを貯留する機能を省略することもできる。
【0047】
なお、供給部31の設置対象となるダクトは、前述の吸水体350から溶液Lが浸潤可能な多孔質素材からなる膨縮ダクト13に限定されず、金属や樹脂等の溶液Lが浸潤しないものであっても良い。この場合、ダクト内に設けられる溶液管には、ダクト同士を連結するフランジ部や、ダクトに穴を開けて溶液Lを供給すれば良い。
【0048】
また、環状吸水体35や吸水体350をダクトの内周面に接触するように形成するとしたが、露出する環状吸水体35や吸水体350の外周面の全面がダクトの内周面に接触する必要はなく、例えば、環状吸水体35を用いて例示すると、図8に示すように、環状吸水体35や吸水体350の外周面に円周方向に凹凸を有するように構成しても良い。このように環状吸水体35や吸水体350を構成することにより、環状吸水体35や吸水体350の外周面とダクトの内周面との間に、ダクト内を流れる空気が通過可能な隙間が形成され、ダクト内を流れる空気と環状吸水体35や吸水体350との接触面積が広がり、溶液Lの気化効率を向上させることができる。
【0049】
また、環状吸水体35や吸水体350は、必ずしもダクトの断面形状に対応させて形成する必要はなく、前述の棒状吸水体36のように、ダクト内を流れる空気に晒すように設けても良い。この場合の吸水体の形状としては、平板状に形成し、ダクト内を流れに沿うように配置すれば良い。
【0050】
また、吸水体に、ダクトを流れる空気が流通可能な貫通孔を複数設けることにより、ダクト内を流れる空気と環状吸水体35や吸水体350との接触面積が広がり、溶液Lの気化効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 空調システム、2 居室、3 空調機、4 ダクト、5 床、6 床下空間、
7 吹出口、7A ファン、8 壁、9 吸込口、10 ダクト、11 天井、
12 通気ダクト、13 膨縮ダクト、14 大梁、15 コンクリートスラブ、
16 支持部材、17 床下地基板、18 床仕上材、19 断熱材、20 吹出孔、
30 作用物質供給装置、31 供給部、32 溶液タンク、34 溶液管、
35 環状吸水体、36 棒状吸水体、40 中空部、41 接続壁、42 溝、
42 溶液タンク、45 管、46 バルブ、47 制御ユニット、
48;49 センサー、350 吸水体、L 溶液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8