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特開2022-122055細長部材の撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122055
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】細長部材の撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/028 20060101AFI20220815BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
F16L1/028 Z
H02G1/06
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019117
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】戸江 斉也
(72)【発明者】
【氏名】磯村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】軍司 真也
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352CA09
(57)【要約】
【課題】細長部材を簡単に撤去することが可能な撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法を提供する。
【解決手段】撤去工具10は、配管に装着され、配管に吊り下げられた状態で配管の長手方向に移動可能な装着機構11と、装着機構11の底面部に接続され、その長手方向に伸縮可能な支持棒12と、支持棒12に接続され、支持棒12を長手方向に伸縮させる油圧シリンダ13と、支持棒12の基端部に接続され、掘削溝の底面に設置された状態で支持棒12を支持するベース部材14と、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長部材に装着され、前記細長部材に吊り下げられた状態で前記細長部材の長手方向に移動可能な装着機構と、
前記装着機構の底面部に接続され、その長手方向に伸縮可能な支持棒と、
前記支持棒に接続され、前記支持棒を長手方向に伸縮させるアクチュエータと、
前記支持棒の基端部に接続され、地面に設置された状態で前記支持棒を支持するベース部材と、
を備える撤去工具。
【請求項2】
前記装着機構は、
前記支持棒の先端部に支持され、前記ベース部材が地面に設置された状態で前記細長部材の下面部に接触し、前記細長部材を下方から支持する受け部と、
前記細長部材の上面部に接触し、前記細長部材上を転動可能な転動部と、
両端部がそれぞれ前記受け部と前記転動部とに接続され、前記受け部と前記転動部とを連結する連結部と、を備える、
請求項1に記載の撤去工具。
【請求項3】
前記受け部は、
前記細長部材の下面部に接触する当て板と、
前記当て板の下面部と前記支持棒の先端部とに接続される接続部材と、
前記接続部材に接続され、互いに対向する向きに延び、前記連結部の一端が取り付けられる一対の取り付け部材と、を備える、
請求項2に記載の撤去工具。
【請求項4】
前記接続部材は、前記支持棒に対して前記支持棒の長手方向に移動可能に支持され、
各取り付け部材は、前記接続部材が前記支持棒に向かって押し込まれると、その先端部が上向きに移動するように前記接続部材及び前記支持棒に支持されている、
請求項3に記載の撤去工具。
【請求項5】
前記当て板は、前記細長部材の長手方向に延びた状態で前記細長部材の下面部に接触する板状部材であり、前記接続部材に対して前記当て板の幅方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている、
請求項3に記載の撤去工具。
【請求項6】
前記装着機構は、前記受け部に設けられ、前記撤去工具が前記細長部材に吊り下げられた状態で前記細長部材の下面部に接触する補助車輪を備える、
請求項2から5のいずれか1項に記載の撤去工具。
【請求項7】
前記装着機構は、前記転動部に接続され、前記細長部材に対する前記転動部の動きを規制するロック機構をさらに備える、
請求項2から6のいずれか1項に記載の撤去工具。
【請求項8】
前記受け部は、前記細長部材の下面部に接触する当て板を備え、
前記ロック機構は、前記細長部材の上面部に接触する押し付け板と、前記押し付け板が先端部に接続され、前記押し付け板及び前記当て板が前記細長部材を挟み込むように前記押し付け板を前記細長部材の上面部に向けて移動させるアクチュエータと、を備える、
請求項7に記載の撤去工具。
【請求項9】
前記ベース部材の下面部は、前記ベース部材の長手方向に垂直な断面が下向きに凸となるように円弧状に形成されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の撤去工具。
【請求項10】
細長部材の撤去を支援する撤去支援システムであって、
前記細長部材に装着され、地面に設置された場合に前記細長部材を下方から支持し、前記細長部材に吊り下げられた場合に前記細長部材の長手方向に移動可能な第1の撤去工具と、
前記第1の撤去工具から離れた位置でかつ前記第1の撤去工具よりも前記細長部材の先端側に装着され、前記地面に設置された場合に前記細長部材を下方から支持し、前記細長部材に吊り下げられた場合に前記細長部材の長手方向に移動可能な第2の撤去工具と、
を備える撤去支援システム。
【請求項11】
前記第1の撤去工具は、
前記細長部材に接触し、前記細長部材上を転動可能な第1の転動部を備え、
前記第2の撤去工具は、
前記細長部材に接触し、前記細長部材上を転動可能な第2の転動部と、
前記第2の転動部に接続され、前記細長部材に対する前記第2の転動部の動きを規制するロック機構と、を備える、
請求項10に記載の撤去支援システム。
【請求項12】
第1の撤去工具と第2の撤去工具とを用いて細長部材を撤去する撤去方法であって、
前記第1の撤去工具及び前記第2の撤去工具を装着する装着工程と、
前記第2の撤去工具が前記細長部材の端部を支持した状態で、前記第1の撤去工具を前記細長部材の端部から離れる方向に移動させる第1の移動工程と、
前記第1の撤去工具が前記細長部材を支持した状態で、前記第1の移動工程で前記第1の撤去工具が移動した方向に前記第2の撤去工具を移動させる第2の移動工程と、
前記第2の移動工程で移動した前記第2の撤去工具よりも端部側に位置している前記細長部材を切断する切断工程と、
前記切断工程で切断された前記細長部材の断片を撤去する撤去工程と、
を含む撤去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長部材の撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備の老朽化に伴い地中に配置された配管の撤去が行われることがある。配管は、港湾施設から発電所まで延びるパイプラインのように、かなりの長い距離にわたって地中に配置されることがあり、このような配管の撤去作業に要する時間や労力を低減するための試みがなされている。例えば、特許文献1には、管路内に配置されたガス管を管路に接続された立坑から撤去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-219326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、管路内に水を注入してガス管を浮上させ、この状態でガス管の一端を立坑からロープで引き出し、引き出されたガス管を切断して撤去する必要があり、作業の省力化を図る点で改善の余地がある。また、特許文献1の方法は、地中に埋設された埋設配管の撤去に適用することができない。このため、埋設配管の撤去作業では、作業員が入れる大きさの掘削溝を掘削し、作業員が掘削溝に入って作業を実施する必要があり、多大な時間や労力を要するという問題が解消していない。このような問題は、配管を撤去する場合に限られず、地中送電線のような他の細長部材を撤去する場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、細長部材を簡単に撤去することが可能な撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る撤去工具は、
細長部材に装着され、前記細長部材に吊り下げられた状態で前記細長部材の長手方向に移動可能な装着機構と、
前記装着機構の底面部に接続され、その長手方向に伸縮可能な支持棒と、
前記支持棒に接続され、前記支持棒を長手方向に伸縮させるアクチュエータと、
前記支持棒の基端部に接続され、地面に設置された状態で前記支持棒を支持するベース部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、細長部材を簡単に撤去することが可能な撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る撤去支援システムの構成を示す側面図である。
図2】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る第1の撤去工具の構成を示す側面図、正面図である。
図3】(a)、(b)は、いずれも本発明の実施の形態に係る第1の撤去工具における装着機構の構成を示す側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る第1の撤去工具における装着機構の構成を示す正面図である。
図5】(a)、(b)は、いずれも本発明の実施の形態に係る第1の撤去工具における装着機構の構成を示す断面図である。
図6】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る第2の撤去工具の構成を示す側面図、正面図である。
図7】(a)、(b)は、いずれも本発明の実施の形態に係る第2の撤去工具における装着機構の構成を示す側面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る第2の撤去工具における装着機構の構成を示す正面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る撤去支援システムにおける油圧回路の構成を示す回路図である。
図10】本発明の実施の形態に係る撤去作業の準備工程を示す模式図である。
図11】(a)~(c)は、いずれも本発明の実施の形態に係る第1の移動工程の流れを示す模式図である。
図12】(a)~(d)は、いずれも本発明の実施の形態に係る第2の移動工程の流れを示す模式図である。
図13】(a)、(b)は、いずれも本発明の変形例に係る第2の撤去工具における装着機構の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る細長部材の撤去工具、撤去支援システム及び撤去方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。実施の形態では、細長部材として配管を用いる場合を例に説明するが、「細長部材」には、液体や気体を輸送する配管のみならず、送電線、配電線、その他ケーブルが含まれるものとする。
【0010】
また、実施の形態では、一定長さの掘削溝に配置されている配管のうち、上方に持ち上げることが可能な配管の自由端側を「先端側」と称す。また、その反対側であって地中に埋設された配管に隣接し、自由端側を持ち上げた際に曲げ変形の起点となる側を「基端側」と称する。また、「地面」は、地盤面のみならず、掘削溝の底面や建屋の床面のような各種機器を設置可能なあらゆる面を含むものとする。
【0011】
以下、図1を参照して、実施の形態に係る撤去支援システム1の構成を説明する。撤去支援システム1は、作業員による土壌に埋設された配管の撤去作業を支援するシステムである。撤去支援システム1は、配管を撤去するために形成された掘削溝において、配管の自由端部(以下、単に「端部」と称することがある。)を地盤面GLよりも上方に持ち上げることで、地上にいる作業者による配管の切断及び撤去を可能にする。配管は、撤去支援システム1により配管の自由端部が持ち上げられることで、先端側から基端側に向かって下向きに傾斜させられる。
【0012】
掘削溝は、掘削機を用いて地盤面GLを配管に沿って溝状に掘削することで形成される。掘削溝の深さは、配管の上面が露出される程度でよく、その幅は、配管の直径と略同一でよい。掘削溝は、配管の一部を外部に露出させるが、その他の部分は地中に埋設されたままである。
【0013】
撤去支援システム1は、配管に装着され、掘削溝の底面に設置された状態で配管を下方から支持する撤去工具10(第1の撤去工具)と、撤去工具10よりも配管の端部側に装着され、掘削溝の底面に設置された状態で配管を下方から支持する撤去工具20(第2の撤去工具)と、を備える。
【0014】
各撤去工具10、20は、いずれも長手方向に伸縮可能に構成され、各撤去工具10、20をそれぞれ伸縮させることで、撤去工具10、20の一方だけで配管を支持したり、その両方で配管を支持したりすることができる。また、各撤去工具10、20は、配管からの荷重を受けない状態で配管の長手方向に移動可能に構成されている。このため、撤去工具10、20の一方だけに配管を支持させると、撤去工具10、20の他方を配管の長手方向に移動させることができる。
【0015】
配管の撤去作業においては、各撤去工具10、20を配管の先端側から配管の基端側に向かって順次移動させる。具体的に説明すると、撤去工具20が配管を支持した状態で、撤去工具10を移動させ、次に、撤去工具10が配管を支持した状態で、撤去工具20を移動させる。各撤去工具10、20の配管の先端側から基端側への移動が順次完了すると、作業員は、撤去工具20より先端側に位置している配管を図1に示す切断箇所で切断し、撤去する。配管の撤去作業では、各撤去工具10、20を配管の先端側から基端側へ向けて移動させる工程と、撤去工具20より先端側に位置している配管を切断し、撤去する工程とを繰り返すことで、作業員を地上に配置したままでも地中に埋設された全ての配管を撤去できる。
【0016】
次に、図2図5を参照して、実施の形態に係る撤去工具10の構成を説明する。図2に示すように、撤去工具10は、配管の長手方向に移動可能となるように配管に装着される装着機構11と、装着機構11の底面部に接続され、装着機構11を下方から支持する伸縮可能な支持棒12と、支持棒12に設けられ、支持棒12を長手方向に伸縮させる油圧シリンダ13と、支持棒12の基端部に設けられ、掘削溝の底面に設置された状態で支持棒12を支持するベース部材14と、を備える。
【0017】
装着機構11は、配管を上下から挟み込むように配管に装着され、配管からの荷重が抜けた状態で配管の長手方向に走行可能となる機構である。装着機構11は、支持棒12の先端部に接続され、ベース部材14が掘削溝の底面に設置された状態で配管の下面部に接触し、配管を支持する荷重受け部11aと、配管の上面部に接触した状態で配管上を転動する転動部11bと、配管の両側面側に配置され、荷重受け部11aと転動部11bとを連結する一対の連結部11cと、を備える。
【0018】
図3及び図4に示すように、荷重受け部11aは、配管の長手方向に延びるように配置され、配管の下面部に接触する当て板11dと、当て板11dの底面部から下方に延び、支持棒12の先端部に接続される円筒部材11eと、当て板11dの幅方向に離して配置され、当て板11dの下面部から当て板11dの長手方向に平行に延びる一対のアーム部材11fと、一対のアーム部材11fの先端部に回転可能に支持される補助車輪11gと、円筒部材11eの周面部から当て板11dの幅方向に延び、互いに対向するように配置され、各連結部11cの一端が着脱自在に取り付けられる取り付け部材11hと、を備える。
【0019】
当て板11dは、配管の下面部に面で接触する板状部材である。当て板11dの上面部は、配管の断面形状に合わせて円弧状に形成されている。当て板11dの長手方向及び幅方向は、配管が当て板11dに設置された状態において配管の長手方向及び径方向とそれぞれ一致する。
【0020】
円筒部材11eは、当て板11dの底面部と支持棒12の先端部とを接続する接続部材の一例である。円筒部材11eは、当て板11dの長手方向及び幅方向に対して垂直な向きに延びている。
【0021】
補助車輪11gは、撤去工具10が配管に吊り下げられ、配管に対して傾斜したときに配管の下面部に接触し、撤去工具10の姿勢を安定させる車輪である。補助車輪11gは、単一のローラであってもよく、配管の周方向に並べて配置された複数のローラで構成されてもよい。補助車輪11gは、図3(a)に示すように、当て板11dが配管を支持している場合には配管の下面部に接触しない。他方、撤去工具10が配管に吊り下げられた場合には、図3(b)に示すように、先端側から基端側に向かって下向きに傾斜した配管に対して撤去工具10が傾斜するため、配管の下面部に接触する。そして、補助車輪11gは、撤去工具10の移動に伴い配管の下面部を転動する。
【0022】
図5に示すように、円筒部材11eは、支持棒12に対して支持棒12の長手方向に移動可能に接続されている。各取り付け部材11hは、アーム状に延び、円筒部材11eが支持棒12に押し込まれると、その先端部が円筒部材11eと逆向きに移動するように円筒部材11e及び支持棒12に支持されている。なお、図5では、理解を容易にするために、補助車輪11gの図示を省略している。
【0023】
取り付け部材11hの基端部は、円筒部材11eの周面部に設けられた縦溝を通して円筒部材11eに配置され、支持棒12に対して回転軸11nの周りに回転可能に支持されている。円筒部材11eの縦溝の両側には、円筒部材11eの周面部から円筒部材の径方向に延びる一対の支持部11pが設けられ、取り付け部材11hの中間部は、各支持部11pに対して回転軸11qの周りに回転可能に支持されている。回転軸11n、11qは、互いに同一方向に延びているため、支持棒12が円筒部材11eに対して支持棒12の長手方向(上下方向)に移動すると、回転軸11nも上下方向に移動し、取り付け部材11hを回転軸11qの周りに回転させることができる。
【0024】
装着機構11は、上記の構成を備えるため、当て板11dが配管からの荷重を受けない状態では、図5(a)に示すように、取り付け部材11hが先端部に向かって上向きに配置され、各連結部11cが配管に対して緩んだ状態となる。他方、当て板11dが配管からの荷重を受けている状態では、図5(b)に示すように、当て板11dが支持棒12に向けて押し込まれるため、取り付け部材11hが先端部に向かって下向きに配置され、各連結部11cが配管を締め付ける状態となる。
【0025】
図3及び図4に戻り、転動部11bは、配管の幅方向に延びるように配置される回転軸11iと、回転軸11iに回転可能に支持され、配管の上面部に接触し、配管上を転動する車輪11jと、回転軸11iの両端部に設けられ、互いに対向する向きに延び、各連結部11cの他端が着脱自在に取り付けられる一対の取り付け部材11kと、を備える。
【0026】
車輪11jは、撤去工具10が配管に吊り下げられた場合に、撤去工具10からの荷重を支持すると共に、撤去工具10の移動に伴い配管上を転動する車輪である。車輪11jは、単一のローラであってもよく、配管の周方向に並べて配置された複数のローラで構成されてもよい。車輪11jは、撤去工具10が配管に吊り下げられた場合に撤去工具10からの荷重を受け止めるため、荷重を受けた状態でも回転できるように補助車輪11gよりも径が大きいことが好ましい。
【0027】
連結部11cは、荷重受け部11a及び転動部11bを連結する変形可能な連結手段である。連結部11cは、例えば、金属製のチェーンである。連結部11cには、その長さを調整するためのショートニングクラッチ11mが設けられている。連結部11cの長さは、撤去工具10が配管に吊り下げられ、転動部11bが撤去工具10からの荷重を受け止める際に、荷重受け部11aが配管の下面部に接触しない程度に多少の遊びを持たせて設定されている。
【0028】
図2に戻り、支持棒12は、装着機構11を下方から支持する伸縮可能な棒である。支持棒12は、先端側に配置される内側筒状部材12aと、基端側に配置され、内側筒状部材12aの長手方向の位置を調整可能な外側筒状部材12bと、を備える。内側筒状部材12aの外径は、外側筒状部材12bの内径よりも小さく、内側筒状部材12aは、外側筒状部材12bの内部に進退自在に受け入れられている。なお、支持棒12の長手方向は、外側筒状部材12bに対して内側筒状部材12aが進退する方向である。
【0029】
油圧シリンダ13は、支持棒12を長手方向に伸縮させるアクチュエータの一例である。油圧シリンダ13は、例えば、複動油圧シリンダである。油圧シリンダ13の一端は、金具を介して内側筒状部材12aに接続され、油圧シリンダ13の他方は、金具を介して外側筒状部材12bに接続されている。
【0030】
油圧シリンダ13は、筒状のシリンダ本体と、シリンダ本体内に進退自在に配置されたピストンロッドと、を備える。ピストンロッドは、シリンダ本体内における作動油の流れによりシリンダ本体に対して相対的に移動する。
【0031】
ベース部材14は、切削溝の地面に設置された状態で支持棒12を支持する部材である。ベース部材14は、支持棒12の基端部に対してベース部材14の幅方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている。ベース部材14は、配管からの荷重が加えられた場合に掘削溝の底面にめり込まない程度の大きさで形成されている。ベース部材14の下面部は、U字状の掘削溝の断面に合わせて断面円弧状に形成されている。なお、ベース部材14の長手方向及び幅方向は、当て板11dの長手方向及び幅方向とそれぞれ同一方向に延びている。
【0032】
撤去工具10は、上記の構成を備えるため、ベース部材14が掘削溝の底面に設置され、当て板11dに配管からの荷重が加えられた場合、図5(b)に示すように、円筒部材11eに対して内側筒状部材12aが相対的に上向きに移動することにより、内側筒状部材12aに支持された取り付け部材11hの基端部が押し上げられる。その結果、取り付け部材11hの先端部が下向きに移動し、各連結部11cが締まる。この状態では、図3(a)に示すように、荷重受け部11aが配管に対して摩擦抵抗により移動できず、かつ、各連結部11cが締められることで当て板11dと車輪11jとで配管を上下から押し付けられるため、転動部11bの動きを規制できる。
【0033】
他方、ベース部材14が掘削溝の底面から離れ、当て板11dに対する配管からの荷重が抜けた場合、図5(a)に示すように、円筒部材11eに対して内側筒状部材12aが相対的に下向きに移動することにより、取り付け部材11hの基端部が押し下げられる。その結果、取り付け部材11hの先端部が上向きに移動し、各連結部11cが緩む。この状態では、図3(b)に示すように、転動部11bは撤去工具10からの荷重を受けながら配管の長手方向に移動できる。このとき、先端側から基端側に向かって下向きに傾斜した配管に対して撤去工具10が重力の作用により傾斜するため、補助車輪11gが配管の下面部に接触する。その結果、補助車輪11gと転動部11bとで配管を上下から挟み込み、移動時における撤去工具10の姿勢を安定させることができる。
以上が、撤去工具10の構成である。
【0034】
次に、図6図8を参照して、実施の形態に係る撤去工具20の構成を説明する。図6に示すように、撤去工具20は、撤去工具10と同様に、装着機構21と、支持棒22と、油圧シリンダ23と、ベース部材24と、を備える。支持棒22、油圧シリンダ23及びベース部材24は、それぞれ支持棒12、油圧シリンダ13及びベース部材24と同一又は同等の構成を備える。以下、装着機構21の構成を説明する。
【0035】
装着機構21は、装着機構11と同様に、荷重受け部21aと、転動部21bと、荷重受け部21aと転動部21bとを連結する一対の連結部21cと、を備える。それに加えて、装着機構21は、転動部21bに接続され、配管に対する転動部21bの移動を規制するロック機構21dをさらに備える。
【0036】
図7及び図8に示すように、荷重受け部21aは、配管の長手方向に延びるように配置され、配管の下面部に接触する当て板21eと、当て板21eの底面部から下方に延び、支持棒12の先端部に接続される円筒部材21fと、円筒部材21fの周面部から当て板21eの幅方向に延び、互いに対向するように配置され、各連結部21cの一端が着脱自在に取り付けられる一対の取り付け部材21gと、を備える。
【0037】
当て板21eは、配管の下面部に面で接触する板状部材である。当て板21eの上面部は、配管の断面形状に合わせて断面円弧状に形成されている。当て板21eの長手方向及び幅方向は、配管が当て板21eに設置された状態において配管の長手方向及び径方向とそれぞれ一致する。
【0038】
当て板21eは、円筒部材21fの先端部に対して当て板21eの幅方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている。当て板21eは、支持棒22に対する回転角度が制限されている。支持棒22に対する回転角度を制限するのは、転動部21bの移動距離を制限するためである。具体的に説明すると、転動部21bが配管の先端側から基端側に向かって移動する際に、ベース部材24が掘削溝の底面に設置されたままであるため、転動部21bが移動するにつれて支持棒22が掘削溝の底面に向かって徐々に倒れる。このとき、支持棒22に対する当て板21eの回転角度が制限されていると、掘削溝の底面に対する支持棒22の傾きを制限でき、結果として転動部21bの移動距離を制限できる。
【0039】
円筒部材21fは、当て板21eの底面部と支持棒22の先端部とを接続する接続部材の一例である。円筒部材21fは、当て板21eの長手方向及び幅方向に対して垂直な向きに延びている。
【0040】
転動部21bは、互いに配管の径方向に並べて配置され、配管の長手方向に延びる一対の支持部材21hと、一対の支持部材21hに対して垂直方向に延びる軸周りに回転可能に支持され、配管の上面部に接触した状態で配管上を転動する一対の車輪21iと、各支持部材21hに設けられ、互いに対向する向きに延び、各連結部21cの他端が着脱自在に取り付けられる一対の取り付け部材21jと、を備える。
【0041】
支持部材21hは、例えば、正面視でT字状に形成された板状部材である。支持部材21hは、左右方向に延び、両端部で一対の車輪21iを回転可能に支持する車輪支持部と、車輪支持部から上方に延び、ロック機構21dの油圧シリンダを支持する油圧シリンダ支持部と、を備える。
【0042】
一対の車輪21iは、装着機構21が配管に装着されると、配管の長手方向に並ぶように配置され、撤去工具20が配管からの荷重を受け持つ場合に、撤去工具20の荷重を支持する。各車輪21iは、単一のローラであってもよく、配管の周方向に並べられた複数のローラから構成されてもよい。転動部21bでは、配管上に一対の車輪21iが配置されているため、ロック機構21dの動作時に姿勢を安定させることができる。
【0043】
連結部21cは、荷重受け部21a及び転動部21bを連結する変形可能な連結手段であり、例えば、金属製のチェーンである。連結部21cには、その長さを調整するためのショートニングクラッチ21kが設けられている。
【0044】
ロック機構21dは、転動部21bの一対の支持部材21hに挟まれるように配置され、長手方向に伸縮可能な油圧シリンダ21mと、油圧シリンダ21mの先端部に接続され、油圧シリンダ21mに押し出されることで配管に押し付け可能な押し付け板21nと、を備える。
【0045】
油圧シリンダ21mは、油圧シリンダ13と同一又は同等の構成を備える。油圧シリンダ21mのシリンダ本体は、支持部材21hの油圧シリンダ支持部に接続され、油圧シリンダ21mのプッシュロッドは、押し付け板21nの上面部が接続されている。油圧シリンダ21mのシリンダ本体は、油圧シリンダ21mの動作時に支持部材21hに対する姿勢が変化しないように少なくとも2箇所で各支持部材21hに固定されている。
【0046】
押し付け板21nは、配管の上面部に押し付けられ、当て板21eと共に配管を上下から挟み込むことで、配管に対して撤去工具20をロックする部材である。押し付け板21nの下面部は、配管の断面形状に合わせて円弧状に形成されている。
【0047】
撤去工具20は、上記の構成を備えるため、ベース部材24が掘削溝の底面に設置されると、図7(b)に示すように、装着機構21の荷重受け部21aは、配管の下面部に接触し、配管を下方から支持する。この状態では、荷重受け部21aが配管に対して摩擦抵抗により移動できないため、転動部21bの動きも規制される。さらに、ロック機構21dを作動させることで、撤去工具20は配管に対して一層強固にロックされる。他方、撤去工具10だけに配管を支持させ、撤去工具20に加えられた配管からの荷重を取り除くと、図7(a)に示すように、荷重受け部21aは配管から下方に離れる。この状態で、ロック機構21dを解除すると、一対の車輪21iが撤去工具20の荷重を受け持ちながら配管上を転動可能になり、転動部21bが配管の長手方向に移動できる。
以上が、撤去工具20の構成である。
【0048】
次に、図9を参照して、実施の形態に係る撤去支援システム1の油圧回路の構成を説明する。撤去支援システム1は、2つの撤去工具10、20と、油圧発生装置30と、油圧制御装置40と、を備える。各撤去工具10、20の油圧シリンダ13、21m、23、油圧発生装置30及び油圧制御装置40は、チューブを介して作動油が互いに流動可能に接続されている。
【0049】
油圧発生装置30は、各油圧シリンダ13、21m、23に加圧された作業油を供給する装置である。油圧発生装置30は、作動油を貯蔵する油タンク31と、油タンク31と各油圧シリンダ13、21m、23とに接続され、油タンク31から作動油を吸い込み、吸い込まれた作動油を加圧して各油圧シリンダ13、21m、23に供給する油圧ポンプ32と、を備える。
【0050】
油圧制御装置40は、各油圧シリンダ13、21m、23及び油圧発生装置30に接続され、ユーザの操作に応じて油圧発生装置30から各油圧シリンダ13、21m、23への作動油の流れを制御する装置である。油圧制御装置40は、マニュアルバルブ41と、3つの開閉ボールバルブ42と、分配器43と、を備える。
【0051】
マニュアルバルブ41は、油圧ポンプ32から供給された作動油を油圧シリンダ13、21m、23の先端側のカプラ及び基端側のカプラのいずれに供給するかを切り換えるバルブである。マニュアルバルブ41は、例えば、4方向バルブである。
【0052】
各開閉ボールバルブ42は、マニュアルバルブ41と各油圧シリンダ13、21m、23との間に接続され、各油圧シリンダ13、21m、23への作動油の供給及び遮断を個別に切り換えるバルブである。
【0053】
分配器43は、各油圧シリンダ13、21m、23とマニュアルバルブ41とに接続され、マニュアルバルブ41から供給された作動油を各油圧シリンダ13、21m、23に分配して供給し、各油圧シリンダ13、21m、23から吐出された作動油を集めてマニュアルバルブ41に向けて排出する。
以上が、撤去支援システム1の油圧回路の構成である。
【0054】
次に、図10図12を参照して、実施の形態に係る撤去支援システム1を用いた配管の撤去方法を説明する。
【0055】
まず、撤去作業の準備工程を実行する。具体的には、埋設された配管の撤去を開始する地点においてライナープレートで土留めしながら地盤面GLを掘り下げ、配管の一部を露出させる立坑を形成する。次に、立坑内に作業員を立ち入らせ、立坑内の配管を切断させる。次に、切断された配管の端部の一方にスリングを取り付ける。
【0056】
次に、スリングが取り付けられた配管の端部から長手方向に一定長さ、例えば、30m程度の長さで細長い掘削溝を掘削し、配管を露出させる。掘削溝には作業員が入ることがないため、掘削溝へのランナープレートの設置は不要である。また、掘削溝の幅も配管の径と同じ程度、例えば、30cm~40cm程度であればよい。
【0057】
次に、図10に示すように、クレーンで配管に取り付けられたスリングを牽引することで、配管の端部を地盤面GLよりも上方に引き上げる。配管は、基端側にある掘削溝の境界面を起点として上方に湾曲するため、配管の端部を地盤面GLよりも上方に引き上げることができる。一例として切削溝の長さが30m程度で配管の埋設深さが2mであれば、スリングによる牽引力を調整することで、長さ約1mだけ配管を地盤面GLより上方に持ち上げるとよい。
【0058】
次に、各撤去工具10、20の装着機構11、21をそれぞれ配管に装着する装着工程を実行する。具体的には、連結部11c、21cの各端部を各取り付け部材11h、11k、21g、21jから取り外し、装着機構11、21を配管の周りに配置し、この状態で連結部11c、21cの各端部を取り付け部材11h、11k、21g、21jに再び接続することで、装着機構11、21をそれぞれ配管に装着する。なお、掘削溝の長さが30mの場合であれば、撤去工具10、20は、掘削溝の基端側の端部から約25m離れた位置に装着するとよい。その後、撤去工具20では、ロック機構21dを作動させ、配管に対して撤去工具20をロックした状態とする。
【0059】
次に、配管の端部からスリングを取り外す。この時点でスリングによる配管の牽引を中止しても、撤去工具10、20が下方から配管を支持しているため、配管の端部が地盤面GLよりも上方に持ち上げられた状態がそのまま維持される。
【0060】
次に、配管の先端側から基端側に向けて撤去工具10を移動させる第1の移動工程を実行する。以下、図11を参照して、第1の移動工程の流れを説明する。撤去工具10の移動を開始する時点では、図11(a)に示すように、撤去工具10、20は、配管の端部を地盤面GLよりも上方に持ち上げられた状態となるように支持している。
【0061】
次に、図11(b)の矢印Aで示すように、撤去工具20を長手方向に伸ばしていくと、配管の荷重を撤去工具20だけで支える状態となる。このとき、各取り付け部材11hの先端部が上向きに移動するため、各連結部11cは配管を締め付けた状態から緩んだ状態に変化する。さらに撤去工具20を長手方向に伸ばしていくと、撤去工具10が掘削溝の底面から持ち上げられる。すると、図11(b)の矢印Bで示すように、撤去工具10の転動部11bは、重力の作用により配管の基端側に向かって移動を開始する。このとき、転動部11bの車輪11jと補助車輪11gとが配管を挟み込んでいるため、撤去工具10は安定した姿勢で配管の基端側に移動する。
【0062】
次に、図11(c)に示すように、撤去工具10のベース部材14が掘削溝の底面に接触すると、撤去工具10の配管の基端側への移動が停止する。この状態では、配管は撤去工具20により支持されたままである。
以上が、第1の移動工程の流れである。
【0063】
次に、配管の先端側から基端側に向けて撤去工具20を移動させる第2の移動工程を実行する。以下、図12を参照して、第2の移動工程の流れを説明する。まず、図12(a)の矢印Aで示すように、撤去工具20を長手方向に縮める。すると、配管の荷重が撤去工具10に徐々に移行し、撤去工具10、20の両方により配管が支持される。
【0064】
次に、撤去工具20のロック機構21dの作動を解除し、図12(b)の矢印Bに示すように撤去工具10を長手方向に伸ばすと、撤去工具20に対する配管からの荷重が抜ける。すると、図12(b)の矢印Cに示すように、撤去工具20の転動部21bは、重力の作用により配管の基端側に向かって移動を開始する。このとき、ベース部材24は、掘削溝の底面に接触したままであり、配管の基端側に向かって移動しない。このため、支持棒22が転動部21bの動きに従って徐々に傾斜する。
【0065】
次に、ベース部材24に対する支持棒22の回転が当て板21eの円筒部材21fに対する回転角度の制限により停止すると、撤去工具20の転動部21bの移動が停止する。
【0066】
次に、撤去工具20のロック機構21dを再び作動させ、図12(c)の矢印Dに示すように撤去工具20を長手方向に縮めると、図12(c)の矢印Eに示すように撤去工具20のベース部材24が配管の基端側に向かって引きずられた状態で移動し、図12(d)に示すように撤去工具20の移動が完了する。
以上が、第2の移動工程の流れである。
【0067】
上記の移動工程で撤去工具10、20の配管の先端側から基端側への移動が完了すると、図12(d)のF-F線で示すように、撤去工具20よりも先端側に突き出した配管を切断し(切断工程)、切断された配管の断片を撤去する(撤去工程)。その後、第1の移動工程、第2の移動工程、切断工程及び撤去工程を繰り返すことで、掘削溝に沿って延びる配管を順次撤去していく。配管の端部を地盤面GLよりも上方に持ち上げられなくなった場合、掘削溝の隣に新たな掘削溝を掘削し、第1の移動工程、第2の移動工程、切断工程及び撤去工程を繰り返していけばよい。
以上が、撤去支援システム1を用いた撤去方法の流れである。
【0068】
以上説明したように、実施の形態に係る撤去工具10、20は、それぞれ配管に装着され、配管に吊り下げられた状態で配管の長手方向に自重で移動可能な装着機構11、21と、装着機構11、21の底面部に接続され、その長手方向に伸縮可能な支持棒12、22と、支持棒12、22に接続され、支持棒12、22を長手方向に伸縮させる油圧シリンダ13、23と、支持棒12、22の基端部に接続され、地面に設置された状態で支持棒12を支持するベース部材14、24と、を備える。このため、撤去工具10、20を配管に装着することで、大規模な土木工事を行うことなく、配管を簡単に撤去できる。また、作業員による配管の切断や撤去を地盤面GLで実施できるため、安全性や作業効率を一層向上させることができる。
【0069】
また、実施の形態に係る撤去工具10、20は、いずれも構造が単純であり、しかも軽量に構成できるため、メンテナンス性や可搬性の点で優れており、現場での実用性が高い。加えて、撤去工具10、20の各部を市販の汎用品で構成できるため、専用品を用いる場合に比べて製造コストも抑制できる。
【0070】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0071】
(変形例)
上記実施の形態では、円筒部材11eが内側筒状部材12aに対して移動すると、取り付け部材11hの先端部が上下に移動していたが、本発明はこれに限られない。例えば、内側筒状部材12aと円筒部材11eとを互いに固定してもよく、取り付け部材11hの基端部を円筒部材11eの周面部に固定してもよい。
【0072】
また、円筒部材11eが内側筒状部材12aに対して移動可能に支持されると共に、図示しないバネにより内側円筒部材12aから離れる方向に付勢されてもよい。これにより配管を当て板11dに設置する際に支持棒12に加わる衝撃を和らげると共に、当て板11dに加えられた荷重を取り除くと、当て板11dを元の位置に戻すことができる。
【0073】
上記実施の形態では、転動部11b、21bに車輪11j、21iを用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、車輪11j、21iをクローラーに置き換えてもよい。
【0074】
上記実施の形態では、転動部11b、21bを自重で走行させていたが、本発明はこれに限られない。車輪11j、21iにモータを接続し、モータが車輪11j、21iを駆動するように構成してもよい。
【0075】
上記実施の形態では、連結部11c、21cとしてチェーンを用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、連結部11c、21cとしてロープや紐を用いてもよい。
【0076】
上記変形例に関連して、例えば、図13(a)に示すように、連結部21cをチェーン21pと、チェーン21pの一端に接続されたコイルバネ21qとから構成してもよい。コイルバネ21qは、長手方向に伸びる弾性部材の一例である。図13(b)に示すように、油圧シリンダ21mにより押し付け板21nが配管に向かって押し込まれると、当て板21eに対して支持部材21hが相対的に持ち上げられる結果、コイルバネ21qが長手方向に伸びる。
【0077】
上記変形例は、配管の周りにウレタンフォームのような断熱材が被覆されている場合に特に有用である。その理由は、押し付け板21nの押し付けにより断熱材が変形するため、押し付け板21nの位置を観察するだけでは、押し付け板21nが配管本体に加えた荷重の程度を確認できないためである。上記変形例では、コイルバネ21qの伸びを観察することで、押し付け板21nが配管本体に加えた荷重の程度を把握できる。なお、弾性部材としてはコイルバネ21qに限られず、例えば、ゴムバンドであってもよい。また、連結部21cを弾性部材のみから構成してもよい。
【0078】
上記実施の形態では、一対の連結部11c、21cが荷重受け部11a、21a及び転動部11b、21bを連結していたが、本発明はこれに限られない。例えば、荷重受け部11a、21a及び転動部11b、21bを剛性部材からなる単一の連結部で連結してもよい。
【0079】
上記実施の形態では、ロック機構21dが転動部21bに設けられていたが、本発明はこれに限られない。例えば、ロック機構21dを荷重受け部21aに設け、押し付け板21nが配管を下方から押し付けるように構成してもよい。
【0080】
上記実施の形態では、撤去工具10の装着機構11を配管にロックするための機構を装着機構11に設けていなかったが、本発明はこれに限られない。例えば、装着機構11にロック機構21dと同一又は同等の構成を設けてもよい。このとき、転動部11bを転動部21bと同一又は同等の構成とすることで、配管に対する転動部11bの姿勢を安定させることができる。
【0081】
上記実施の形態では、支持棒12、22が2本の筒状部材を備えていたが、本発明はこれに限られない。支持棒12、22は、3本以上の筒状部材を備え、隣り合う筒状部材の一方が他方に対して突没自在に構成されてもよい。
【0082】
上記実施の形態では、アクチュエータとして油圧シリンダ13、21m、23を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、支持棒12を伸縮させたり、ロック機構21dを動作させたりするために、平板状の棒に歯車が付けられたラックと、モータに接続され、ラックの歯車と組み合わされたピニオンとを用いて、支持棒12、22を伸縮させてもよい。
【0083】
上記実施の形態では、ベース部材14、24の先端部が斜めに切りかかれているが、本発明はこれに限られない。ベース部材14、24の先端部は、土に引っ掛からないような形状であれば任意の形状でよい。
【0084】
上記実施の形態では、撤去工具10、20を埋設配管の撤去作業に適用していたが、本発明はこれに限られない。埋設配管以外の撤去作業に適用してもよい。例えば、撤去工具10、20を建屋内の地下部に設置された配管の撤去作業に適用してもよい。また、撤去工具10、20を配管の撤去作業に限られず、例えば、地中送電線のような他の細長部材の撤去作業に適用してもよく、配管、地中送電線のような細長部材の取替作業に適用してもよい。
【0085】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 撤去支援システム
10,20 撤去工具
11,21 装着機構
11a,21a 荷重受け部
11b,21b 転動部
11c,21c 連結部
11d,21e 当て板
11e,21f 円筒部材
11g 補助車輪
11h,21g 取り付け部材
21d ロック機構
21n 押し付け板
12,22 支持棒
13,21m,23 油圧シリンダ
14,24 ベース部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る撤去工具は、
略水平方向に延び、地面に設置された細長部材の自由端部を前記地面の上方に持ち上げることで前記細長部材の撤去作業を支援可能な撤去工具であって、
前記細長部材に装着され、前記撤去工具が前記細長部材に吊り下げられた状態で前記細長部材の長手方向に移動可能な装着機構と、
前記装着機構に接続され、その長手方向に伸縮可能な支持棒と、
前記支持棒に接続され、前記支持棒を長手方向に伸縮させるアクチュエータと、
前記支持棒の基端部に接続され、前記支持棒を伸長した状態で前記地面に設置されると、前記装着機構が装着された前記細長部材を前記地面の上方に持ち上げるように前記支持棒を支持するベース部材と、
を備える。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に延び、地面に設置された細長部材の自由端部を前記地面の上方に持ち上げることで前記細長部材の撤去作業を支援可能な撤去工具であって、
前記細長部材に装着され、前記撤去工具が前記細長部材に吊り下げられた状態で前記細長部材の長手方向に移動可能な装着機構と、
前記装着機構に接続され、その長手方向に伸縮可能な支持棒と、
前記支持棒に接続され、前記支持棒を長手方向に伸縮させるアクチュエータと、
前記支持棒の基端部に接続され、前記支持棒を伸長した状態で前記地面に設置されると、前記装着機構が装着された前記細長部材を前記地面の上方に持ち上げるように前記支持棒を支持するベース部材と、
を備える撤去工具。
【請求項2】
前記装着機構は、
前記支持棒の先端部に支持され、前記ベース部材が地面に設置された状態で前記細長部材の下面部に接触し、前記細長部材を下方から支持する受け部と、
前記細長部材の上面部に接触し、前記細長部材上を転動可能な転動部と、
両端部がそれぞれ前記受け部と前記転動部とに接続され、前記受け部と前記転動部とを連結する連結部と、を備える、
請求項1に記載の撤去工具。
【請求項3】
前記受け部は、
前記細長部材の下面部に接触する当て板と、
前記当て板の下面部と前記支持棒の先端部とに接続される接続部材と、
前記接続部材に接続され、互いに対向する向きに延び、前記連結部の一端が取り付けられる一対の取り付け部材と、を備える、
請求項2に記載の撤去工具。
【請求項4】
前記接続部材は、前記支持棒に対して前記支持棒の長手方向に移動可能に支持され、
各取り付け部材は、前記接続部材が前記支持棒に向かって押し込まれると、前記取り付け部材の先端部が前記接続部材の押し込み方向と逆向きに移動するように構成されている、
請求項3に記載の撤去工具。
【請求項5】
前記当て板は、前記細長部材の長手方向に延びた状態で前記細長部材の下面部に接触する板状部材であり、前記接続部材に対して前記当て板の幅方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている、
請求項3に記載の撤去工具。
【請求項6】
前記装着機構は、前記受け部に設けられ、前記撤去工具が前記細長部材に吊り下げられた状態で前記細長部材の下面部に接触する補助車輪を備える、
請求項2から5のいずれか1項に記載の撤去工具。
【請求項7】
前記装着機構は、前記転動部に接続され、前記細長部材に対する前記転動部の動きを規制するロック機構をさらに備える、
請求項2から6のいずれか1項に記載の撤去工具。
【請求項8】
前記受け部は、前記細長部材の下面部に接触する当て板を備え、
前記ロック機構は、前記細長部材の上面部に接触する押し付け板と、前記押し付け板が先端部に接続され、前記押し付け板及び前記当て板が前記細長部材を挟み込むように前記押し付け板を前記細長部材の上面部に向けて移動させるアクチュエータと、を備える、
請求項7に記載の撤去工具。
【請求項9】
前記ベース部材の下面部は、前記ベース部材の長手方向に垂直な断面が下向きに凸となるように円弧状に形成されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の撤去工具。
【請求項10】
細長部材の撤去を支援する撤去支援システムであって、
請求項1から9のいずれか1項に記載の撤去工具である第1の撤去工具であって、前記細長部材に装着され、地面に設置された場合に前記細長部材を下方から支持し、前記細長部材に吊り下げられた場合に前記細長部材の長手方向に移動可能な第1の撤去工具と、
請求項1から9のいずれか1項に記載の撤去工具である第2の撤去工具であって、前記第1の撤去工具から離れた位置でかつ前記第1の撤去工具よりも前記細長部材の先端側に装着され、前記地面に設置された場合に前記細長部材を下方から支持し、前記細長部材に吊り下げられた場合に前記細長部材の長手方向に移動可能な第2の撤去工具と、
を備える撤去支援システム。
【請求項11】
前記第1の撤去工具は、
前記細長部材に接触し、前記細長部材上を転動可能な第1の転動部を備え、
前記第2の撤去工具は、
前記細長部材に接触し、前記細長部材上を転動可能な第2の転動部と、
前記第2の転動部に接続され、前記細長部材に対する前記第2の転動部の動きを規制するロック機構と、を備える、
請求項10に記載の撤去支援システム。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の撤去工具である第1の撤去工具と請求項1から9のいずれか1項に記載の撤去工具である第2の撤去工具とを用いて細長部材を撤去する撤去方法であって、
前記第1の撤去工具及び前記第2の撤去工具を装着する装着工程と、
前記第2の撤去工具が前記細長部材の端部を支持した状態で、前記第1の撤去工具を前記細長部材の端部から離れる方向に移動させる第1の移動工程と、
前記第1の撤去工具が前記細長部材を支持した状態で、前記第1の移動工程で前記第1の撤去工具が移動した方向に前記第2の撤去工具を移動させる第2の移動工程と、
前記第2の移動工程で移動した前記第2の撤去工具よりも端部側に位置している前記細長部材を切断する切断工程と、
前記切断工程で切断された前記細長部材の断片を撤去する撤去工程と、
を含む撤去方法。