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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122061
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ステータおよびバスバーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
H02K3/50 A ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019128
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康文
(72)【発明者】
【氏名】竹原 明秀
(72)【発明者】
【氏名】北尾 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 玲二
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DB18
5H604PB03
5H604QB01
5H604QB15
(57)【要約】
【課題】ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に対して接着剤を用いてバスバーモジュールをより強固に固定する。
【解決手段】本開示のステータは、ステータコアと、当該ステータコアに巻回されたステータコイルと、当該ステータコイルに電気的に接続されると共にステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に固定されるバスバーモジュールとを含み、バスバーモジュールは、導電部材を保持するモジュール本体と、当該モジュール本体を貫通する孔部と、当該孔部の内部を複数の開口領域に区分けするように孔部の内周面の一部から当該内周面の他の部分まで延在し、孔部内に導入されて硬化した接着剤を介してコイルエンド部に固定されるブリッジ部とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、前記ステータコアに巻回されたステータコイルと、前記ステータコイルに電気的に接続されると共に前記ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に固定されるバスバーモジュールとを含むステータにおいて、
前記バスバーモジュールは、
導電部材を保持するモジュール本体と、
前記モジュール本体を貫通する孔部と、
前記孔部の内部を複数の開口領域に区分けするように前記孔部の内周面の一部から前記他の部分まで延在し、前記孔部内に導入されて硬化した接着剤を介して前記コイルエンド部に固定されるブリッジ部とを備えるステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータにおいて、
前記孔部の前記内周面は、前記コイルエンド部側に向かうにつれて前記孔部の中央部に近接するように傾斜しているステータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のステータにおいて、
前記ブリッジ部は、前記ステータコアの径方向に延在するように前記モジュール本体に形成されるステータ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のステータにおいて、前記ブリッジ部は、角のない断面形状を有するステータ。
【請求項5】
請求項4に記載のステータにおいて、
前記ブリッジ部は、前記モジュール本体の厚みよりも小さい外径を有する丸棒状に形成されると共に、前記モジュール本体の前記コイルエンド部側の表面に近接するように前記孔部内に配置されるステータ。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のステータにおいて、
前記ステータコアには、複数の前記ステータコイルが巻回され、
前記バスバーモジュールは、複数の前記ステータコイルの中性点を形成すると共に、複数の前記ステータコイルの各々を対応する動力線に接続するステータ。
【請求項7】
ステータのステータコアに巻回されたステータコイルに電気的に接続されると共に前記ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に固定されるバスバーモジュールにおいて、
導電部材を保持するモジュール本体と、
前記モジュール本体を貫通する孔部と、
前記孔部の内部を複数の開口領域に区分けするように前記孔部の内周面の一部から前記内周面の他の部分まで延在し、前記孔部内に導入されて硬化した接着剤を介して前記コイルエンド部に固定されるブリッジ部と、
を備えるバスバーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータコアと、当該ステータコアに巻回されたステータコイルとを含むステータ、およびステータコイルに電気的に接続されるバスバーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の導電線を有すると共に、ステータコアから軸方向に突出した複数のコイルエンド(引出線)と端子台の電極とを電気的に接続する配電部材を含むステータが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる特許文献1には、それぞれ複数の導電線を保持する配電部材の保持部にボルト挿通孔を有するフランジ部といった当該配電部材を他の部品に固定するための固定部を設けることが記載されている。このように配電部材を他の部品に固定することで、配電部材や、配電部材とコイルエンドとの溶接部、配電部材と端子台との接続部における振動の発生が抑制される。
【0003】
また、従来、ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部の軸方向における外側端面に対向して設けられたバスバーモジュールを含むステータが知られている(例えば、特許文献2参照)。このステータのバスバーモジュールは、複数のステータコイルに電流を流すための複数の導体板(バスバー)と、当該複数の導体板を内蔵する樹脂製のモジュール本体とを含む。また、ステータの径方向におけるモジュール本体の端部(周縁部)には、当該モジュール本体をステータの軸方向に貫通する貫通溝が複数形成されている。各貫通溝の上記径方向における端部側の開口は、モジュール本体と一体に形成されたブリッジにより閉じられている。そして、バスバーモジュールとコイルエンド部とは、ブリッジを包囲すると共にコイルエンド部に付着するように塗布された接着剤によって互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6673518号公報
【特許文献2】特開2020-114116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたステータのように、配電部材をボルトにより他の部材に固定する場合、配電部材の周辺にボルトや固定部を配置するためのスペースが必要となり、ステータが大型化してしまうおそれがある。従って、特許文献2に記載されたように、接着剤を用いてバスバーモジュールをコイルエンド部に固定することが好ましい。しかしながら、特許文献2に記載されたステータでは、貫通溝およびブリッジがモジュール本体の周縁部に形成されており、ブリッジを完全に包囲するように接着剤を塗布することは容易ではない。このため、モジュール本体と接着剤と接触面積の不足により各ブリッジとコイルエンド部との接着強度を十分に確保し得なくなるおそれがある。このため、モジュール本体と接着剤と接触面積を増やして各ブリッジとコイルエンド部との接着強度を向上させることが求められている。
【0006】
そこで、本開示は、ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に対して接着剤を用いてバスバーモジュールをより強固に固定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻回されたステータコイルと、前記ステータコイルに電気的に接続されると共に前記ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に固定されるバスバーモジュールとを含むステータにおいて、前記バスバーモジュールが、導電部材を保持するモジュール本体と、前記モジュール本体を貫通する孔部と、前記孔部の内部を複数の開口領域に区分けするように前記孔部の内周面の一部から前記内周面の他の部分まで延在し、前記孔部内に導入されて硬化した接着剤を介して前記コイルエンド部に固定されるブリッジ部とを含むものである。
【0008】
本開示のステータは、ステータコイルに電気的に接続されると共にステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に固定されるバスバーモジュールを含む。また、バスバーモジュールのモジュール本体には、当該モジュール本体を貫通すると共に接着剤が導入される孔部と、当該孔部内に導入されて硬化した接着剤を介してコイルエンド部に固定されるブリッジ部とが形成されている。そして、ブリッジ部は、孔部の内部を複数の開口領域に区分けするように当該孔部の内周面の一部から当該内周面の他の部分まで延在する。これにより、ブリッジ部の両側に開口領域が形成され、孔部に導入された接着剤は、ブリッジ部に当たった後、当該ブリッジ部の両側の開口領域を通過してコイルエンド部に達することになる。この結果、ブリッジ部を包囲するように接着剤を当該ブリッジ部に付着させると共に、接着剤を孔部の内周面に付着させることが可能となり、接着剤とモジュール本体との接触面積を十分に確保することができる、更に、ブリッジ部の両側に開口領域が形成されることで、接着剤は、モジュール本体の周縁部よりも十分に内側でブリッジ部および孔部の内周面に付着して硬化する。これにより、モジュール本体の周縁部の貫通溝に接着剤を導入する場合に比べて、コイルエンド部に対するモジュール本体の固定強度を向上させることができる。従って、本開示のステータでは、ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に対して接着剤を用いてバスバーモジュールをより強固に固定することが可能となり、複数のステータコイルとバスバーモジュールとの電気的接続状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のステータを示す概略構成図である。
図2】本開示のステータを示す平面図である。
図3】本開示のステータに含まれるステータコイルを例示する模式図である。
図4】本開示のバスバーモジュールを示す概略構成図である。
図5】本開示のバスバーモジュールの要部を示す拡大図である。
図6図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】バスバーモジュールをコイルエンド部に固定する手順を説明するための模式図である。
図8】バスバーモジュールとコイルエンド部との固定部を示す拡大図である。
図9】本開示のバスバーモジュールに適用可能な他のブリッジ部を例示する拡大図である。
図10】本開示の他のステータを例示する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のステータ1を示す概略構成図であり、図2は、ステータ1を示す平面図である。これらの図面に示すステータ1は、図示しないロータと共に、例えば電気自動車やハイブリッド車両の走行駆動源あるいは発電機として用いられる三相交流電動機(回転電機)を構成する。本実施形態のステータ1は、環状のステータコア2と、ステータコイル3u(U相コイル)と、ステータコイル3v(V相コイル)と、ステータコイル3w(W相コイル)とを含む。
【0012】
ステータ1のステータコア2は、例えばプレス加工により略円環状に形成された電磁鋼板2p(図2参照)を複数積層してカシメにより積層方向に連結することにより形成される。ただし、ステータコア2は、例えば強磁性粉体を加圧成形すると共に焼結させることより環状に形成されてもよい。また、ステータコア2は、ロータが配置される中心孔2oと、環状の外周部(ヨーク部)から軸心(ステータコア2の中心)に向けて径方向に延在すると共に周方向に一定の間隔をおいて隣り合う図示しない複数のティース部と、互いに隣り合うティース部の間に形成された複数のスロット(図示省略)とを含む。複数のスロットは、それぞれステータコア2の径方向に延在すると共に一定の間隔をおいて周方向に並び、中心孔2oで開口する。また、ステータコア2の各スロット内には、図示しないインシュレータ(絶縁紙)が配置される。
【0013】
ステータ1の各ステータコイル3u,3v,3wは、ステータコア2の複数のスロット(インシュレータ内)に差し込まれる複数のセグメントコイル4を電気的に接続することにより形成される。セグメントコイル4は、例えばエナメル樹脂等からなる絶縁被膜が表面に成膜された平角線を略U字状に曲げ加工することにより形成された電気導体である。また、各セグメントコイル4は、2つ(一対)の脚部40(図1参照)を有し。各脚部40の先端部では、絶縁被膜が除去されて導電体が露出している。
【0014】
各セグメントコイル4の2つの脚部40は、それぞれステータコア2の互いに異なるスロットに挿通され、ステータコア2の一方の端面(図1における上端面)から突出した各セグメントコイル4の脚部40には、図示しない曲げ加工装置を用いた曲げ加工(捻り加工)が施される。そして、各脚部40の先端部は、対応する他のセグメントコイル4(脚部40)の先端部に溶接(本実施形態では、例えばTIG溶接)により電気的に接続される。これにより、複数のステータコイル3u,3v,3wがステータコア2に対して巻回される。また、ステータコア2の軸方向における一端側(図1における上端)には環状のコイルエンド部3aが形成され、他端側(図1における下端)には環状のコイルエンド部3bが形成される。コイルエンド部3a,3bは、それぞれステータコイル3u,3v,3wすなわち複数のセグメントコイル4により形成され、ステータコア2の軸方向における対応する端面から外側に突出する。
【0015】
本実施形態において、ステータコイル3u,3v,3wは、図3に示すように、ダブルスター結線(2Y結線)により結線される。すなわち、ステータコイル3uは、互いに並列に接続される第1コイルU1および第2コイルU2を含み、第1および第2コイルU1,U2は、それぞれ所定のセグメントコイル4の一方の脚部40により形成される引出線40uおよび中性線40nを含む。また、ステータコイル3vは、互いに並列に接続される第1コイルV1および第2コイルV2を含み、第1および第2コイルV1,V2は、それぞれ所定のセグメントコイル4の一方の脚部40により形成される引出線40vおよび中性線40nを含む。更に、ステータコイル3wは、互いに並列に接続される第1コイルW1および第2コイルW2を含み、第1および第2コイルW1,W2は、それぞれ所定のセグメントコイル4の一方の脚部40により形成される引出線40wおよび中性線40nを含む。
【0016】
また、本実施形態において、ステータコイル3u(第1および第2コイルU1,U2)の2つの引出線40uと、ステータコイル3v(第1および第2コイルV1,V2)の2つの引出線40vと、ステータコイル3w(第1および第2コイルW1,W2)の2つの引出線40wとは、それぞれ図4に示すバスバーモジュールBMの対応する端子Tu,Tv,Twに溶接(本実施形態では、例えばTIG溶接)により電気的に接続される。更に、ステータコイル3u(第1および第2コイルU1,U2)の2つの中性線40nと、ステータコイル3v(第1および第2コイルV1,V2)の2つの中性線40nと、ステータコイル3w(第1および第2コイルW1,W2)の2つの中性線40nとは、バスバーモジュールBMの対応する端子Tnに溶接(本実施形態では、例えばTIG溶接)により電気的に接続される。
【0017】
バスバーモジュールBMは、ステータコイル3u,3v,3wの中性点を形成すると共に、当該ステータコイル3u,3v,3wと動力線50u,50v,50wとを電気的に接続するものである。図4に示すように、バスバーモジュールBMは、U相のステータコイル3uに対応したバスバーBuと、V相のステータコイル3vに対応したバスバーBvと、W相のステータコイル3wに対応したバスバーBwと、中性点を形成するバスバーBnと、樹脂等の絶縁体により形成されたモジュール本体BBとを含む。モジュール本体BBは、導電部材であるバスバーBu,Bv,BwおよびBnを互いに接しないように保持(内蔵)する。また、本実施形態において、バスバーモジュールBMのモジュール本体BBは、インサート成形等により略円弧に延在するように形成されている。
【0018】
バスバーBuは、それぞれステータコイル3uの第1または第2コイルU1,U2の引出線40uに電気的に接続される2つの端部(端子)Tuと、1つの端部(端子)Tpuとを含む。また、バスバーBvは、それぞれステータコイル3vの第1または第2コイルV1,V2の引出線40vに電気的に接続される2つの端部(端子)Tvと、1つの端部(端子)Tpvとを含む。更に、バスバーBwは、それぞれステータコイル3wの第1または第2コイルW1,W2の引出線40wに電気的に接続される2つの端部(端子)Twと、1つの端部(端子)Tpwとを含む。また、バスバーBnは、3つの端部(端子)Tnを含む。バスバーBu-Bnの端部Tu,Tv,Tw,Tn,Tpu,Tpv,Tpwは、それぞれモジュール本体BBから外部に露出される。
【0019】
バスバーBuの端部Tpuは、動力線50uの先端部(絶縁被覆が除去された導体露出部)51に溶接(本実施形態では、例えばTIG溶接)により電気的に接続される。また、バスバーBvの端部Tpvは、動力線50vの先端部51に溶接により電気的に接続され、バスバーBvの端部Tpwは、動力線50wの先端部51に溶接により電気的に接続される。動力線50u,50v,50wは、例えば表面に絶縁被膜が成膜された導電体により形成されており、それぞれ樹脂製の保持部材6により保持される。
【0020】
各動力線50u,50v,50wの端子5u,5v,5w(図2参照)は、図示しない三相交流電動機のハウジングにステータ1が組み付けられた際に当該ハウジングに設置(固定)された図示しない端子台に固定され、電力線を介してインバータ(図示省略)に接続される。また、バスバーBnの各端部Tnには、ステータコイル3uの第1および第2コイルU1,U2の中性線40n、ステータコイル3vの第1および第2コイルV1,V2の中性線40n、およびステータコイル3wの第1および第2コイルW1,W2の中性線40nの対応する何れかが溶接(本実施形態では、例えばTIG溶接)により電気的に接続される。これにより、バスバーBnがステータコイル3u,3v,3wの中性点を形成する。
【0021】
更に、ステータコア2には、図1中上側のコイルエンド部3a側から図1中下側のコイルエンド部3b側に向けてワニス等の樹脂(熱硬化性樹脂)が塗布される。当該樹脂が硬化することで、各セグメントコイル4や図示しないインシュレータがステータコア2に固定される。また、セグメントコイル4の先端部同士の接合部といった導電体の露出部には、絶縁用の粉体が塗布される。ただし、導体の露出部に絶縁用の粉体を塗布する代わりに、ステータ1に対して、コイルエンド部3aを覆う環状の樹脂モールド部が形成されてもよい。
【0022】
上述のように構成されるステータ1では、複数のステータコイル3u,3v,3wがバスバーモジュールBMを介して動力線50u,50v,50wに電気的に接続される。かかるステータ1では、バスバーモジュールBMが他の部材に対して固定されない場合、当該バスバーモジュールBMのステータコア2に対する相対移動(振動)によりステータコイル3u,3v,3wとバスバーモジュールBM(端子Tu,Tv,Tw,Tn)との溶接部(電気的接続部)や、バスバーモジュールBM(端子Tpu,Tpv,Tpw)と動力線50u,50v,50wとの複数の溶接部(電気的接続部)に力が加えられ、それにより当該複数の溶接部の耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0023】
このため、本実施形態では、図2に示すように、図1中上側のコイルエンド部3a(それを形成する複数のセグメントコイル4)の軸方向における外表面(上面)にバスバーモジュールBMが接着剤により固定される。すなわち、バスバーモジュールBMのモジュール本体BBには、図4および図5に示すように、接着剤によりバスバーモジュールBMをコイルエンド部3aの外表面に固定するために、それぞれモジュール本体BBを貫通する複数(本実施形態では、2つ)の孔部Hが形成されている。本実施形態では、図4に示すように、モジュール本体BBの長手方向における両端部に孔部Hが1つずつ形成されている。各孔部Hは、図5および図6に示すように、コイルエンド部3aに向かうにつれて先細になるテーパー孔であり、多角形状の平面形状を有する。すなわち、各孔部Hの内周面Siは、漏斗状(すり鉢状)に形成されており、コイルエンド部3a側(図6における下側)に向かうにつれて当該孔部Hの中央部に近接するように傾斜する。
【0024】
更に、モジュール本体BBの各孔部Hの内部には、ブリッジ部BRが形成されている。本実施形態において、ブリッジ部BRは、図6に示すように、モジュール本体BBの厚みよりも小さい外径を有する丸棒状に形成されると共に、モジュール本体BBのコイルエンド部3a側の表面(図6における下面)に近接するように孔部H内に配置される。また、ブリッジ部BRは、対応する孔部Hの内周面Siの一部から当該一部と対向する内周面Siの他の部分まで延在し、孔部Hの内部を複数の開口領域OAに区分けする。すなわち、ブリッジ部BRの両側には、図5に示すように、開口領域OAが1つずつ形成される。更に、本実施形態において、ブリッジ部BRは、モジュール本体BBの円弧状に延びる長手方向の中心軸と直交する方向に延在する。すなわち、各ブリッジ部BRは、バスバーモジュールBMがコイルエンド部3aに固定された際に、ステータコア2の径方向に延在するようにモジュール本体BBに形成されている。
【0025】
バスバーモジュールBMをステータコア2の一端側に形成されたコイルエンド部3aに固定するに際しては、ステータコイル3u,3v,3wの引出線40u,40v,40wおよび中性線40n並びに動力線50u,50v,50wの先端部51にバスバーモジュールBMの対応する端子Tu,Tv,Tw,Tn,Tpu,TpvまたはTpwを溶接した後、当該バスバーモジュールBMを図示しない治具等によりコイルエンド部3aの外表面上に位置決めする。更に、各ステータコイル3u,3v,3wに例えば直流電源から電流を印加して、ステータコイル3u,3v,3wを所定温度まで加熱(予熱)する。次いで、図7に示すように、ノズルNをモジュール本体BBの孔部Hの上方まで移動させ、当該ノズルNから孔部Hに向けて接着剤Aを滴下する。本実施形態では、接着剤Aとして、セグメントコイル4やインシュレータをステータコア2に固定するのに用いられるワニスよりも高い粘度を有する高粘度ワニスが用いられる。
【0026】
ノズルNから滴下されて孔部Hに導入された接着剤Aは、図7に示すように、ブリッジ部BRに当たった後、当該ブリッジ部BRの両側に形成された2つの開口領域OAを通過してコイルエンド部3aに達することになる。これにより、図8に示すように、ブリッジ部BRを包囲するように接着剤Aを当該ブリッジ部BRに付着させると共に、接着剤Aを孔部Hの内周面Siに付着させることが可能となり、接着剤Aとモジュール本体BBとの接触面積を十分に確保することができる、更に、ブリッジ部BRの両側に開口領域OAが形成されることから、接着剤Aは、モジュール本体BBの周縁部よりも十分に内側でブリッジ部BRおよび孔部Hの内周面Siに付着する。各孔部Hに対して予め定められた量の接着剤Aを滴下した後、各ステータコイル3u,3v,3wへの通電あるいは加熱炉内での加熱等により接着剤Aを硬化させる。これにより、各孔部H内に導入された接着剤Aが硬化し、硬化した接着剤Aを介して各ブリッジ部BRおよび内周面Siすなわちモジュール本体BBがコイルエンド部3aに固定されることになる。
【0027】
上述のように、バスバーモジュールBMによれば、接着剤Aとモジュール本体BBとの接触面積を十分に確保すると共に、モジュール本体BBの周縁部よりも十分に内側に接着剤Aを付着させることが可能となる。これにより、モジュール本体BBの周縁部の貫通溝に接着剤を導入する場合に比べて、コイルエンド部3aに対するモジュール本体BBの固定強度を向上させることができる。従って、ステータ1では、ステータコア2の一端側に形成されたコイルエンド部3aに対して接着剤Aを用いてバスバーモジュールBMをより強固に固定することが可能となり、複数のステータコイル3u,3v,3wおよび動力線50u,50v,50wとバスバーモジュールBMとの間の複数の溶接部に加えられる力を低減することができる。この結果、当該複数の溶接部の耐久性を確保して、複数のステータコイル3u,3v,3wおよび動力線50u,50v,50wとバスバーモジュールBMとバスバーモジュールBMとの電気的接続状態を良好に維持することが可能となる。
【0028】
また、バスバーモジュールBMにおいて、孔部Hの内周面Siは、コイルエンド部3a側に向かうにつれて当該孔部Hの中央部に近接するように傾斜している。これにより、接着剤Aを導入するためのノズルNと孔部Hとの位置ズレが生じたとしても、傾斜した内周面Siを伝ってブリッジ部BRおよびコイルエンド部3a側に接着剤Aをスムースに流し込むことができる。この結果、接着剤Aの使用量の増加を抑制すると共に、バスバーモジュールBMの固定作業に要する時間を短縮化することが可能となる。加えて、孔部Hがコイルエンド部3aに向かうにつれて先細になっているので、図8に示すように、接着剤Aと孔部Hの内周面Siとの接触面積を増加させてコイルエンド部3aに対するモジュール本体BBの固定強度を向上させることもできる。
【0029】
更に、上記バスバーモジュールBMにおいて、各ブリッジ部BRは、モジュール本体BBの厚みよりも小さい外径を有する丸棒状に形成される。これにより、ブリッジ部BRに付着して硬化した接着剤Aに応力が発生するのを抑制し、ブリッジ部BRと接着剤Aとの接着強度を良好に維持することが可能となる。加えて、各ブリッジ部BRは、モジュール本体BBのコイルエンド部3a側の表面に近接するように対応する孔部H内に配置される。これにより、ブリッジ部BRの周囲に十分な量の接着剤Aを留めて当該接着剤Aとモジュール本体BBとの接触面積を増加させることが可能となる。ただし、ブリッジ部BRは、円形の断面形状を有するものに限られず、ブリッジ部BRに付着して硬化した接着剤Aに応力が発生するのを抑制可能であれば、楕円形あるいは角部に面取りが施された多角形といった角のない断面形状を有するものであってもよい。
【0030】
また、上記バスバーモジュールBMにおいて、ブリッジ部BRは、ステータコア2の径方向に延在するようにモジュール本体BBに形成される。これにより、孔部Hのステータコア2の径方向における長さの増加を抑制しつつ、ブリッジ部BRの両側の開口面積を十分かつ適正に確保することが可能となり、ステータコア2の径方向における長さが短いモジュール本体BBの強度を良好に確保することができる。ただし、バスバーモジュールBMにおいて、孔部H内にステータコア2の周方向に沿って延在するようにブリッジ部BRが形成されてもよい。
【0031】
更に、バスバーモジュールBMの孔部H内には、図9に示すように、互いに交差(直交)する2つのバーにより構成されるブリッジ部BR′が形成されてもよい。かかる態様では、ブリッジ部BR′を構成する各バーの両側に開口領域OAを確保すると共に、ブリッジ部BR′と接着剤Aとの接触面積をより大きくすることが可能となる。また、図示を省略するが、ブリッジ部は、格子状あるいは放射状に延びる複数のバーにより形成されたものであってもよい。更に、バスバーモジュールBMには、孔部Hおよびブリッジ部BRがそれぞれ少なくとも1つ設けられればよく、それぞれ3つ以上設けられてもよい。
【0032】
また、上記バスバーモジュールBMは、複数のステータコイル3u,3v,3wの中性点を形成するバスバーBnを含むと共に、複数のステータコイル3u,3v,3wの各々を対応する動力線50u,50v,50wに接続するものであるが、これに限られるものではない。すなわち、バスバーモジュールBMは、複数のステータコイル3u,3v,3wの各々を対応する動力線50u,50v,50wに接続する機能のみを有するものであってもよく、複数のステータコイル3u,3v,3wの中性点を形成する機能のみを有するものであってもよい。
【0033】
また、上記バスバーモジュールBMは、複数のセグメントコイル4を電気的に接続することにより形成された複数のステータコイル3u,3v,3wを含むステータ1に適用されるものとして説明されたが、これに限られるものではない。すなわち、バスバーモジュールBMは、図10に示すような複数のカセットコイル(集中巻きコイル)400を電気的に接続することにより複数のステータコイルが形成されるステータ1Bに適用されてもよい。カセットコイル400は、ステータコア2Bへの装着に先立って、例えば長方形状(正方形状を含む)の断面を有する1本の平角線を当該ステータコア2Bのティース部2tの外周面に沿うように巻回軸に沿って複数段(例えば10段程度)だけ巻回すると共に、巻回軸の周りに複数回(図10の例では、2回)若しくは1回だけ巻回することにより形成されるものである。
【0034】
更に、上記ステータ1のステータコイル3u,3v,3wは、ダブルスター結線(2Y結線)により結線されたものであるが、これに限られるものではない。すなわち、ステータコイル3u,3v,3wは、シングルスター(1Y)結線、4Y結線、あるいはデルタ結線といった2Y結線以外の他の態様で結線されてもよい。また、バスバーモジュールBMは、孔部Hに導入される接着剤Aを介してステータコア2の端面(上端面)に固定されてもよい。更に、接着剤Aは、比較的高い粘度を有するものであれば、高粘度ワニス以外の熱硬化性樹脂等であってもよい。
【0035】
以上説明したように、本開示のステータは、ステータコア(2,2B)と、前記ステータコア(2,2B)に巻回されたステータコイル(3u,3v,3w)と、前記ステータコイル(3u,3v,3w)に電気的に接続されると共に前記ステータコア(2)の一端側に形成されたコイルエンド部(3a)に固定されるバスバーモジュール(BM)とを含むステータ(1,1B)において、前記バスバーモジュール(B)が、導電部材(Bu,Bv,Bw,Bn)を保持するモジュール本体(BB)と、前記モジュール本体(BB)を貫通する孔部(H)と、前記孔部(H)の内部を複数の開口領域(OA)に区分けするように前記孔部(H)の内周面(Si)の一部から前記内周面(Si)の他の部分まで延在し、前記孔部(H)内に導入されて硬化した接着剤(A)を介して前記コイルエンド部(3a)に固定されるブリッジ部(BR)とを含むものである。
【0036】
本開示のステータは、ステータコイルに電気的に接続されると共にステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に固定されるバスバーモジュールを含む。また、バスバーモジュールのモジュール本体には、当該モジュール本体を貫通すると共に接着剤が導入される孔部と、当該孔部内に導入されて硬化した接着剤を介してコイルエンド部に固定されるブリッジ部とが形成されている。そして、ブリッジ部は、孔部の内部を複数の開口領域に区分けするように当該孔部の内周面の一部から当該内周面の他の部分まで延在する。これにより、ブリッジ部の両側に開口領域が形成され、孔部に導入された接着剤は、ブリッジ部に当たった後、当該ブリッジ部の両側の開口領域を通過してコイルエンド部に達することになる。この結果、ブリッジ部を包囲するように接着剤を当該ブリッジ部に付着させると共に、接着剤を孔部の内周面に付着させることが可能となり、接着剤とモジュール本体との接触面積を十分に確保することができる、更に、ブリッジ部の両側に開口領域が形成されることで、接着剤は、モジュール本体の周縁部よりも十分に内側でブリッジ部および孔部の内周面に付着して硬化する。これにより、モジュール本体の周縁部の貫通溝に接着剤を導入する場合に比べて、コイルエンド部に対するモジュール本体の固定強度を向上させることができる。従って、本開示のステータでは、ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に対して接着剤を用いてバスバーモジュールをより強固に固定することが可能となり、複数のステータコイルとバスバーモジュールとの電気的接続状態を良好に維持することができる。
【0037】
また、前記孔部(H)の前記内周面(Si)は、前記コイルエンド部(3a)側に向かうにつれて前記孔部(H)の中央部に近接するように傾斜していてもよい。これにより、接着剤を導入するためのノズル等と孔部との位置ズレが生じたとしても、傾斜した内周面を伝ってブリッジ部およびコイルエンド部側に接着剤をスムースに流し込むことができる。この結果、接着剤の使用量の増加を抑制すると共に、バスバーモジュールの固定作業に要する時間を短縮化することが可能となる。加えて、孔部がコイルエンド部に向かうにつれて先細になっているので、接着剤と孔部の内周面との接触面積を増加させてコイルエンド部に対するモジュール本体の固定強度を向上させることもできる。
【0038】
更に、前記ブリッジ部(BR)は、前記ステータコア(2,2B)の径方向に延在するように前記モジュール本体(BB)に形成されてもよい。これにより、ブリッジ部の両側の開口面積を十分かつ適正に確保することが可能となる。
【0039】
また、前記ブリッジ部(BR)は、角のない断面形状を有するものであってもよい。これにより、ブリッジ部に付着して硬化した接着剤に応力が発生するのを抑制し、ブリッジ部と接着剤との接着強度を良好に維持することが可能となる。
【0040】
更に、前記ブリッジ部(BR)は、前記モジュール本体(BB)の厚みよりも小さい外径を有する丸棒状に形成されると共に、前記モジュール本体(BB)の前記コイルエンド部(3a)側の表面に近接するように前記孔部(H)内に配置されてもよい。これにより、ブリッジ部と接着剤との接着強度を良好に維持すると共に、ブリッジ部の周囲に十分な量の接着剤を留めて当該接着剤とモジュール本体との接触面積を増加させることが可能となる。
【0041】
また、前記ステータコア(2,2B)には、複数の前記ステータコイル(3u,3v,3w)が巻回されてもよく、前記バスバーモジュール(BM)は、複数の前記ステータコイル(3u,3v,3w)の中性点を形成すると共に、複数の前記ステータコイル(3u,3v,3w)の各々を対応する動力線(50u,50v,50w)に接続するものであってもよい。
【0042】
本開示のバスバーモジュールは、ステータ(1,1B)のステータコア(2,2B)に巻回されたステータコイル(3u,3v,3w)に電気的に接続されると共に前記ステータコア(2)の一端側に形成されたコイルエンド部(3a)に固定されるバスバーモジュール(BM)において、導電部材(Bu,Bv,Bw,Bn)を保持するモジュール本体(BB)と、前記モジュール本体(BB)を貫通する孔部(H)と、前記孔部(H)の内部を複数の開口領域(OA)に区分けするように前記孔部(H)の内周面の一部から前記内周面(Si)の他の部分まで延在し、前記孔部(H)内に導入されて硬化した接着剤(A)を介して前記コイルエンド部(3a)に固定されるブリッジ部(BR)とを含むものである。かかるバスバーモジュールでは、ステータコアの一端側に形成されたコイルエンド部に対して接着剤を用いてモジュール本体をより強固に固定することが可能となる。
【0043】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発明は、回転電機やステータの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,1B ステータ、2,2B ステータコア、2o 中心孔、2p 電磁鋼板、2t ティース部、3a,3b コイルエンド部、3u,3v,3w ステータコイル、4 セグメントコイル、40 脚部、40n 中性線,40u,40v,40w 引出線、400 カセットコイル、5u,5v,5w 端子、6 保持部材、50u,50v,50w 動力線、51 先端部、A 接着剤、BB モジュール本体、BM バスバーモジュール、Bn,Bu,Bv,Bw バスバー、BR,BR′ ブリッジ部、H 孔部、N ノズル、OA 開口領域、Si 内周面、Tn,Tpu,Tpv,Tpw,Tu,Tv,Tw 端部(端子)、U1,V1,W1 第1コイル、U2,V2,W2 第2コイル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10