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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122069
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】水栓用ハンドル及び水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
E03C1/042 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019140
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 一樹
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BC11
2D060BE11
(57)【要約】
【課題】ハンドル本体の小型化を図ることが容易な水栓用ハンドルを提供する。
【解決手段】水栓用ハンドル17は、操作軸16を収容する収容凹部23が設けられたハンドル本体20と、操作軸16とハンドル本体20との間に配置され、操作軸16に嵌合するとともにハンドル本体20に固定されるブッシュ30とを備えている。ハンドル本体20の収容凹部23には、軸線方向に突出する保持突部25が設けられている。ブッシュ30は、操作軸16が挿入される被挿入部、及び保持突部25に当接する鍔部36を有するブッシュ本体31を備えている。ブッシュ30は更に、ブッシュ本体31とは別部材として設けられ、被挿入部に挿入された操作軸16の外周面に対して弾性的に係合する爪部42を有する爪部材40を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の操作軸に取り付けて用いられる水栓用ハンドルであって、
前記操作軸を収容する収容凹部が設けられたハンドル本体と、
前記操作軸と前記ハンドル本体との間に配置され、前記操作軸に嵌合するとともに前記ハンドル本体に固定されるブッシュとを備え、
前記ハンドル本体の前記収容凹部には、前記操作軸の軸線方向に突出する保持突部が設けられ、
前記ブッシュは、
前記操作軸が挿入される被挿入部、及び前記保持突部に当接する鍔部を有するブッシュ本体と、
前記ブッシュ本体とは別部材として設けられ、前記被挿入部に挿入された前記操作軸の外周面に対して弾性的に係合する爪部を有する爪部材とを備えることを特徴とする水栓用ハンドル。
【請求項2】
前記爪部材の前記爪部は、前記ブッシュ本体の前記鍔部と重なる位置、又は当該位置よりも前記操作軸の基端側に位置している請求項1に記載の水栓用ハンドル。
【請求項3】
前記爪部材は、前記ハンドル本体の内面と前記ブッシュ本体との間に挟まれることにより位置決めされている請求項1又は請求項2に記載の水栓用ハンドル。
【請求項4】
前記爪部材は、金属製の板バネにより構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の水栓用ハンドル。
【請求項5】
前記ブッシュ本体は、前記鍔部が前記保持突部にねじ止めされることにより前記ハンドル本体に固定されている請求項1~4のいずれか一項に記載の水栓用ハンドル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の水栓用ハンドルを備えた水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用ハンドル及び水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水栓用ハンドルは、水栓本体に設けられた操作軸に固定されることにより、この操作軸と一体に操作される。例えば、特許文献1に記載の水栓用ハンドルは、操作軸の軸線方向に開口する収容凹部を備えている。また、この水栓用ハンドルは、収容凹部に設けられた操作軸の固定部を有している。更に、この水栓用ハンドルは、その収容凹部内に軸端が挿入される操作軸の径方向において、この収容凹部の内外を連通する孔部を有している。そして、この孔部を用いることにより、その収容凹部内に設けられた固定部に対する操作軸の固定作業を行う構成になっている。
【0003】
また、図7に示すように、従来、水栓用ハンドル60には、水栓の操作軸61に嵌合するブッシュ62と、このブッシュ62が固定されるハンドル本体63とを備えるものがある。例えば、この水栓用ハンドル60のブッシュ62は、可撓性を有した弾性爪64を備えている。そして、操作軸61に対して軸線方向から嵌着されることにより、この弾性爪64が、その操作軸61の軸端に係合する構成になっている。
【0004】
また、この水栓用ハンドル60のハンドル本体63は、その操作軸61の軸線方向に開口する収容凹部65の内側に設けられた保持突部66と、この保持突部66に設けられた嵌合凹部67と、を備えている。そして、この従来例の水栓用ハンドル60は、その嵌合凹部67にブッシュ62が嵌合する状態で、このブッシュ62に設けられている鍔部68が、その保持突部66に対してねじ部材69によりねじ止めされる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-71082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成においては、ハンドル本体63の収容凹部65内に突出する保持突部66が設けられている。保持突部66は、ブッシュ62の鍔部68をハンドル本体63に固定するための部位であるが、保持突部66を設けた場合には、水栓用ハンドル60が大型化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する水栓用ハンドルは、水栓の操作軸に取り付けて用いられる水栓用ハンドルであって、前記操作軸を収容する収容凹部が設けられたハンドル本体と、前記操作軸と前記ハンドル本体との間に配置され、前記操作軸に嵌合するとともに前記ハンドル本体に固定されるブッシュとを備え、前記ハンドル本体の前記収容凹部には、前記操作軸の軸線方向に突出する保持突部が設けられ、前記ブッシュは、前記操作軸が挿入される被挿入部、及び前記保持突部に当接する鍔部を有するブッシュ本体と、前記ブッシュ本体とは別部材として設けられ、前記被挿入部に挿入された前記操作軸の外周面に対して弾性的に係合する爪部を有する爪部材とを備える。
【0008】
図7に示すように、ブッシュ62に弾性爪64が一体に形成される従来構成の場合、弾性爪64は、ブッシュ62における保持突部66に固定される部位である鍔部68から、操作軸61の軸線方向先端側へ延びる形状に形成される。これにより、弾性爪64の撓り及び強度を確保している。しかしながら、この場合、操作軸61に係合する弾性爪64の爪部64aから、操作軸61の軸線方向基端側に離れた位置に鍔部68が位置することになり、これに合わせて保持突部66を軸線方向基端側に大きく突出させる必要がある。その結果、保持突部66が設けられる収容凹部65を軸線方向に大きく形成せざるを得ず、ハンドル本体63が大型化する。
【0009】
一方、上記構成においては、ハンドル本体の保持突部に固定される鍔部を有するブッシュ本体と、爪部材とを別部材にしている。これにより、爪部材の爪部の位置と鍔部の位置とをそれぞれ独立して設計することが可能になる。そのため、操作軸の軸線方向において、爪部材の爪部に対して、従来構成よりも近い位置に鍔部を配置することができる。つまり、ハンドル本体の保持突部とブッシュの鍔部とが当接する部分を、操作軸の先端に近い位置に配置することができる。その結果、ハンドル本体の収容凹部に必要な軸線方向の長さが短くなり、ハンドル本体の小型化、特に軸線方向の小型化を図ることが容易になる。
【0010】
上記水栓用ハンドルにおいて、前記爪部材の前記爪部は、前記操作軸の軸線方向において、前記ブッシュ本体の前記鍔部と重なる位置、又は当該位置よりも前記操作軸の基端側に位置していることが好ましい。上記構成によれば、ハンドル本体を軸線方向に小型化できる効果がより顕著に得られる。
【0011】
上記水栓用ハンドルにおいて、前記爪部材は、前記ハンドル本体の内面と前記ブッシュ本体との間に挟まれることにより位置決めされていることが好ましい。上記構成によれば、部品点数を増加させることなく、爪部材を位置決めできる。
【0012】
上記水栓用ハンドルにおいて、前記爪部材は、金属製の板バネにより構成されていることが好ましい。上記構成によれば、爪部材を薄く形成した場合にも強度を確保できる。厚さの薄い爪部材を採用することにより、ハンドル本体の収容凹部に必要とされる、操作軸の径方向における長さが短くなり、ハンドル本体の径方向の小型化を図ることが容易になる。
【0013】
上記水栓用ハンドルにおいて、前記ブッシュ本体は、前記鍔部が前記保持突部にねじ止めされることにより前記ハンドル本体に固定されていることが好ましい。
ハンドル本体に対するブッシュ本体の固定方法がねじ止めである場合、保持突部にねじの挿入代を確保するために、保持突部の突出高さが高くなる。そのため、保持突部に固定される鍔部と操作軸の基端部とが干渉しやすい。ブッシュ本体と爪部材とを別部材として、軸線方向において、鍔部に近い位置に爪部を位置させる構成を採用することにより、鍔部よりも奥側に深く操作軸を差し込む必要が無くなる。これにより、鍔部と操作軸の基端部との間の距離を離すことができ、その結果、鍔部と操作軸の基端部との干渉を抑制できる。
【0014】
上記課題を解決する水栓は、上記水栓用ハンドルを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水栓用ハンドルのハンドル本体の小型化を図ることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】水栓の斜視図。
図2】ハンドル本体の斜視図。
図3】水栓の分解斜視図。
図4】水栓用ハンドルの分解斜視図。
図5】水栓用ハンドルの分解断面図。
図6】水栓用ハンドルの断面図。
図7】従来技術の水栓用ハンドルにおける嵌合部材の固定構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、キッチンキャビネットのカウンタなどの壁部(図示略)に設置される水栓本体11を備えている。水栓本体11は、上下方向に延在する略円筒状の胴部12と、胴部12から分岐して径方向に延びる側方延伸部13とを備えている。側方延伸部13の先端には、吐出口13aが設けられている。なお、本実施形態において記載する上下方向は、図1に示すように水栓10を設置した状態における上下方向を意味する。
【0018】
図3及び図5に示すように、胴部12の上端には、上方に向かって凸となるドーム状の球面座14が設けられている。球面座14には、上下方向に貫通する孔部14aが設けられている。したがって、胴部12の上端は、上方に臨む開口端となっている。
【0019】
水栓本体11の胴部12の内部には、弁ユニット15が収容されるとともに、球面座14の孔部14aには、弁ユニット15の上端部に位置する操作軸16が配置されている。操作軸16の先端は、開口端である胴部12の上端から上方に突出している。操作軸16は、略四角軸状の外形を有している。操作軸16の先端部の外周面には、操作軸16の軸線方向に直交する方向に延びる係合溝16aが設けられている。
【0020】
図1に示すように、水栓10は、水栓本体11の上端に取り付けられる水栓用ハンドル17を備えている。水栓用ハンドル17は、操作軸16の先端部に対して、所謂、スナップフィットによる係合関係によって取り付けられている。操作軸16に取り付けられた状態の水栓用ハンドル17は、操作軸16に対して、操作軸16周りの相対回転、並びに操作軸16の軸線方向及び径方向の相対移動が規制されており、操作軸16と一体に回動及び傾動する。なお、以下では、操作軸16の軸線方向及び径方向をそれぞれ、軸線方向及び径方向と記載する。
【0021】
水栓10は、水栓用ハンドル17を操作軸16と一体に傾動操作することにより、吐出口13aから吐出される湯水の流量を調節可能である。また、水栓10は、例えば、水栓用ハンドル17を操作軸16と一体に回動操作することにより、吐出口13aから吐出される湯水の温度を調節可能である。なお、水栓用ハンドル17を操作した際に、水栓本体11の胴部12の上端に設けられている球面座14の上を水栓用ハンドル17が摺動することで、水栓用ハンドル17と水栓本体11との間に隙間が形成され難くなっている。
【0022】
図3に示すように、水栓用ハンドル17は、ハンドル本体20と、操作軸16に嵌合するとともにハンドル本体20に固定されるブッシュ30とを備えている。
図2及び図5に示すように、ハンドル本体20は、金属により形成される一体成型品である。ハンドル本体20は、軸線方向に延びる円筒状のハンドル周壁21a及びハンドル周壁21aの一方側の端部である上端を塞ぐカバー端壁21bを有する有底扁平略円筒状のカバー部21を備えている。カバー部21のハンドル周壁21aには、その外周から径方向外側に向かって延びるレバー部22が設けられている。カバー部21の筒内には、軸線方向の一方側である下方に開口する収容凹部23が設けられている。収容凹部23は、ブッシュ30及び操作軸16を収容するための部位である。
【0023】
収容凹部23の内部には、カバー端壁21bから軸線方向に突出する一対の支持壁24及び一対の保持突部25が形成されている。一対の支持壁24及び一対の保持突部25は、それぞれ共通の空間を挟んで対向するように配置されている。
【0024】
具体的には、一対の支持壁24は、レバー部22が延びる方向に所定の間隔をあけて対向するように設けられている。なお、レバー部22が延びる方向は、水栓用ハンドル17を傾動操作した際の傾動方向に平行な面に沿った方向である。一対の保持突部25は、レバー部22が延びる方向に直交する方向に所定の間隔をあけて対向するように設けられている。一対の支持壁24及び一対の保持突部25の対向面である各内面は、軸線方向に平行な平面状である。各保持突部25は、一対の支持壁24の側縁同士を接続するように形成されている。また、保持突部25は、支持壁24よりも突出高さが低くなっている。各保持突部25の先端面25aは、軸線方向に直交する平面状であり、先端面25aには、ねじ孔25bが形成されている。
【0025】
収容凹部23の内部には、一対の支持壁24及び一対の保持突部25とカバー端壁21bとにより区画される嵌合凹部26が形成されている。嵌合凹部26は、略四角柱状の外形を有するとともに下方に開口する空間であり、嵌合凹部26には、ブッシュ30が収容される。
【0026】
図3~5に示すように、ブッシュ30は、樹脂により構成されるブッシュ本体31と、ブッシュ本体31とは別部材として設けられ、金属により構成される爪部材40とを備えている。ブッシュ本体31は、軸線方向に延びる四角筒状のブッシュ周壁32を備えている。ブッシュ周壁32の一方の端部である上端には、当該端部を塞ぐブッシュ端壁33が設けられている。
【0027】
四角筒状のブッシュ周壁32は、対向する二つの第1壁部32aと、対向する二つの第2壁部32bと備えている。第1壁部32aの上部には、当該壁部を貫通する窓部34が形成されている。また、第1壁部32aの外面には、窓部34を囲む拡張壁35が径方向外方に突出するように設けられている。
【0028】
拡張壁35の上面には、軸線方向に貫通して窓部34に連通する挿入孔35aが形成されている。拡張壁35の外側の側面には、拡張壁35から更に径方向外方に突出する鍔部36が設けられている。鍔部36は、軸線方向に直交する平板状の部位である。鍔部36には、軸線方向に関する貫通孔36aが設けられている。また、鍔部36は、その上面36bが窓部34の下端よりも上に位置するように形成されている。つまり、鍔部36は、その軸線方向における位置が窓部34と重なるように形成されている。
【0029】
爪部材40は、金属製の平板材を略U字状に曲げ加工してなる板バネである。爪部材40は、軸線方向に延びる一対の弾性片部41を備えている。一対の弾性片部41の各先端部には、互いに対向する方向に突出する爪部42が設けられている。また、爪部材40は、一対の弾性片部41の基端同士を接続する連結部43を備えている。爪部材40は、可撓性を有しており、両爪部42を接近離間させる方向に一対の弾性片部41を弾性変形可能である。
【0030】
爪部材40は、爪部材40の一対の弾性片部41を上方から、ブッシュ本体31の拡張壁35の挿入孔35aに挿入することにより、ブッシュ本体31の上部に組付けられる。図6に示すように、ブッシュ本体31に爪部材40を組付けた状態では、爪部材40の一対の弾性片部41の各爪部42は、ブッシュ周壁32の第1壁部32aに設けられた窓部34に位置している。そして、各爪部42の頂部42aが窓部34を通じてブッシュ周壁32の内部に突出する。このとき、窓部34に位置する各爪部42は、その軸線方向における位置が鍔部36の上面36bと重なっている。つまり、軸線方向において、各爪部42の頂部42aと鍔部36の上面36bとが近い位置に配置されている。
【0031】
また、ブッシュ本体31に爪部材40を組付けた状態では、爪部材40の連結部43は、ブッシュ本体31の上端に位置するブッシュ端壁33に当接する。なお、以下では、互いに組付けられた状態にあるブッシュ本体31及び爪部材40をブッシュ30と記載する場合がある。
【0032】
図5及び図6に示すように、ブッシュ30は、ハンドル本体20の嵌合凹部26に収容された状態にて、ビスなどのねじ部材50を用いたねじ止めによりハンドル本体20に固定されている。詳述すると、ハンドル本体20の保持突部25とブッシュ本体31の鍔部36とが軸線方向に重なるように位置合わせした状態として、ブッシュ本体31のブッシュ周壁32の上部をハンドル本体20の嵌合凹部26に下方側から挿入する。そして、ブッシュ周壁32と嵌合凹部26とを嵌め合わせる。このとき、嵌合凹部26を区画する一対の支持壁24とブッシュ周壁32の第2壁部32bとが当接するとともに、一対の保持突部25と、ブッシュ周壁32の第1壁部32aに設けられる拡張壁35とが当接する。また、保持突部25の先端面25aと鍔部36の上面36bとが当接する。
【0033】
そして、保持突部25のねじ孔25b及び鍔部36の貫通孔36aにねじ部材50を挿入してねじ止めすることにより、ハンドル本体20とブッシュ30とが組付けられる。また、ハンドル本体20とブッシュ30とが組付けられた状態において、爪部材40は、ハンドル本体20の嵌合凹部26の底面とブッシュ端壁33との間に挟まれることにより位置決めされている。
【0034】
図5及び図6に示すように、水栓用ハンドル17は、ブッシュ30のブッシュ周壁32に、水栓本体11の操作軸16の先端部を下方から挿入することにより操作軸16に取り付けられる。具体的には、ブッシュ周壁32に挿入された操作軸16の先端部に設けられた係合溝16aに、ブッシュ30の爪部材40の爪部42が弾性的に係合することにより、所謂、スナップフィットによる係合関係が形成される。この係合関係に基づいて、水栓用ハンドル17は、水栓本体11の操作軸16に対して、一体に回動可能及び傾動可能に固定されている。なお、本実施形態においては、ブッシュ30のブッシュ周壁32が、操作軸16が挿入される被挿入部に該当する。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、図7に示すように、ブッシュ62に弾性爪64が一体に形成される従来構成の場合、弾性爪64は、ブッシュ62における保持突部66に固定される部位である鍔部68から操作軸61の軸線方向先端側(図7の上側)へ延びる形状に形成されている。これにより、弾性爪64の撓り及び強度を確保している。しかしながら、この場合、操作軸61に係合する弾性爪64の爪部64aから、操作軸61の軸線方向基端側に離れた位置に鍔部68が位置することになり、これに合わせて保持突部66を軸線方向基端側に大きく突出させる必要がある。その結果、保持突部66が設けられる収容凹部65を大きく形成せざるを得ず、ハンドル本体63が大型化する。
【0036】
これに対して、本実施形態の水栓用ハンドル17においては、ブッシュ30に関して、ハンドル本体20の保持突部25に固定される鍔部36を有するブッシュ本体31と、操作軸16の係合溝16aに対して弾性的に係合する爪部材40とを別部材としている。これにより、爪部材40の爪部42の位置と鍔部36の位置とをそれぞれ独立して設計することが可能になる。
【0037】
そのため、軸線方向において、爪部材40の爪部42に対して、従来構成よりも近い位置に鍔部36を配置することができる。つまり、ハンドル本体20の保持突部25とブッシュ30の鍔部36とが当接する部分である、保持突部25の先端面25a及び鍔部36の上面36bを、操作軸16の先端に近い位置に配置することができる。その結果、ハンドル本体20の収容凹部23に必要な軸線方向の長さが短くなり、ハンドル本体20の小型化、特に軸線方向の小型化を図ることが容易になる。
【0038】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)水栓用ハンドル17は、操作軸16を収容する収容凹部23が設けられたハンドル本体20と、操作軸16とハンドル本体20との間に配置され、操作軸16に嵌合するとともにハンドル本体20に固定されるブッシュ30とを備えている。ハンドル本体20の収容凹部23には、軸線方向に突出する保持突部25が設けられている。ブッシュ30は、操作軸16が挿入される被挿入部、及び保持突部25に当接する鍔部36を有するブッシュ本体31を備えている。ブッシュ30は更に、ブッシュ本体31とは別部材として設けられ、被挿入部に挿入された操作軸16の外周面に対して弾性的に係合する爪部42を有する爪部材40を備えている。
【0039】
上記構成によれば、ハンドル本体20の保持突部25とブッシュ30の鍔部36とが当接する部分を、操作軸16の先端に近い位置に配置することができる。その結果、ハンドル本体20の収容凹部23に必要な軸線方向の長さが短くなり、ハンドル本体20の小型化、特に軸線方向の小型化を図ることが容易になる。
【0040】
(2)爪部材40の爪部42は、ブッシュ本体31の鍔部36と重なる位置に位置している。
上記構成によれば、ハンドル本体20を軸線方向に小型化できる効果がより顕著に得られる。
【0041】
(3)爪部材40は、軸線方向において、ハンドル本体20の内面である、嵌合凹部26の底面とブッシュ端壁33との間に挟まれることにより位置決めされている。
上記構成によれば、部品点数を増加させることなく、爪部材40を位置決めできる。また、ブッシュ30をハンドル本体20に組付ける操作と同時に爪部材40を位置決めできる。
【0042】
(4)爪部材40は、金属製の板バネにより構成されている。
上記構成によれば、爪部材40を薄く形成した場合にも弾性片部41の強度を確保できる。厚さの薄い爪部材40を採用することにより、ハンドル本体20の収容凹部23に必要とされる径方向における長さが短くなり、ハンドル本体20の径方向の小型化を図ることが容易になる。
【0043】
(5)ブッシュ本体31は、鍔部36が保持突部25にねじ止めされることによりハンドル本体20に固定されている。
ハンドル本体20に対するブッシュ本体31の固定方法がねじ止めである場合、保持突部25にねじ部材50の挿入代を確保するために、保持突部25の突出高さが高くなる。そのため、保持突部25に固定される鍔部36と操作軸16の基端部とが干渉しやすい。
【0044】
固定方法がねじ止めである上記構成に、上記(1)の構成を採用して、軸線方向において、鍔部36に近い位置に爪部42を位置させることにより、操作軸16を鍔部36よりも奥側に深く差し込む必要が無くなる。これにより、鍔部36と操作軸16の基端部との間の距離を離すことができ、その結果、鍔部36と操作軸16の基端部との干渉を抑制できる。
【0045】
(6)被挿入部であるブッシュ周壁32は、爪部材40の爪部42が配置される窓部34が設けられる第1壁部32aと、窓部34が設けられていない第2壁部32bとを備えている。ハンドル本体20の収容凹部23には、水栓用ハンドル17を傾動操作した際の傾動方向に平行な面に沿った方向に所定の間隔をあけて位置し、軸線方向に突出する一対の支持壁24が設けられている。上記の傾動方向に平行な面に沿った方向において、窓部34が設けられていない第2壁部32bに支持壁24を当接させる構成になっている。
【0046】
上記構成によれば、水栓用ハンドル17を傾動操作した際に、ブッシュ周壁32において、窓部34が設けられない点で第1壁部32aよりも強度の高い第2壁部32bの部分を支持壁24に支持させることができる。これにより、水栓用ハンドル17の傾動操作の繰り返しに対するブッシュ30の耐久性が向上する。
【0047】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・爪部材40の爪部42とブッシュ本体31の鍔部36との軸線方向における位置関係を変更してもよい。例えば、爪部材40の爪部42を、ブッシュ本体31の鍔部36と重なる位置よりも操作軸16の基端側に位置させてもよい。この場合にも、上記(2)の効果が得られる。また、爪部材40の爪部42を、ブッシュ本体31の鍔部36と重なる位置よりも操作軸16の先端側に位置させてもよい。この場合、可能な範囲で、爪部材40の爪部42をブッシュ本体31の鍔部36に近い位置に配置する。
【0048】
・ハンドル本体20に対するブッシュ本体31の固定方法は、ねじ止めに限定されない。例えば、ハンドル本体20とブッシュ本体31との間に凹凸の関係などによる係合構成を設けて、ハンドル本体20にブッシュ本体31を固定してもよいし、接着剤を用いてハンドル本体20にブッシュ本体31を固定してもよい。また、ハンドル本体20及びブッシュ本体31に係合する第3の部材を設けて、この第3の部材を介してハンドル本体20にブッシュ本体31を固定してもよい。なお、いずれの固定方法を採用する場合であっても、操作軸16に対する水栓用ハンドル17のぐらつきを抑制するために、ブッシュ本体31は、保持突部25の先端面25aに鍔部36を当接させた状態でハンドル本体20に固定される。
【0049】
・爪部材40を位置決めするための構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、爪部材40とブッシュ本体31との間に凹凸の関係などによる係合構成を設けて、ブッシュ本体31に爪部材40を固定することにより爪部材40を位置決めしてもよい。また、連結部43などの爪部材40の一部をブッシュ本体31に接着することにより爪部材40を位置決めしてもよい。
【0050】
・爪部材40に設けられる爪部42の数は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、ブッシュ30が備える爪部材40の数は、2個以上であってもよい。
・爪部材40を構成する材料は特に限定されるものではない。例えば、樹脂により構成される爪部材40であってもよいし、ゴム材により構成される爪部材40であってもよい。
【0051】
・爪部材40の爪部42の位置と鍔部36の位置とをそれぞれ独立して設計することが可能な構成であれば、ブッシュ本体31及び爪部材40の具体的な分割方法及び組付け方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、任意に変更してもよい。同様に、ブッシュ本体31及び爪部材40の形状を任意に変更してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、水栓用ハンドル17は、操作軸16と一体に傾動操作及び回動操作されることとしたが、傾動操作又は回動操作の何れかの態様で用いられる構成に適用してもよい。
【0053】
・水栓本体11は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、傾動操作及び回動操作の少なくとも一方の操作がなされる操作軸16を備える公知の水栓本体11を適用することができる。例えば、水栓本体11は、胴部12の周面から側方に突出する操作軸16を有し、胴部12の側部に水栓用ハンドル17が取り付けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…水栓、16…操作軸、17…水栓用ハンドル、20…ハンドル本体、23…収容凹部、25…保持突部、30…ブッシュ、31…ブッシュ本体、36…鍔部、40…爪部材、42…爪部、50…ねじ部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7