(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122070
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220815BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019142
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 宗孝
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC11
2C056EC23
2C056EC35
2C056EC39
2C056FA10
2C056JB04
2C056JB07
2C056JB08
2C056JB10
(57)【要約】
【課題】記録媒体に記録される画像品位を向上させる。
【解決手段】位置決め機構500は、記録ヘッド21の吐出面212がワイパー55に接触し得る、Z方向におけるワイパー55の位置を決める。キャリッジ22は、ワイパー55に対しX1方向の側の領域R2においてX1方向からX2方向へ移動方向が切り替わる際に、互いに異なる複数の停止位置S1,S2のいずれかに選択的に一旦停止可能である。位置決め機構500は、複数の停止位置S1,S2のうちキャリッジ22が一旦停止した位置に応じて、Z方向におけるワイパー55の位置を決める。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが吐出される吐出部を含む記録ヘッドが装着され、第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジとともに移動する前記記録ヘッドの前記吐出部が接触することで前記吐出部を清掃する清掃部材と、
前記記録ヘッドの前記吐出部が前記清掃部材に接触し得る、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向における前記清掃部材の位置を決める位置決め機構と、を備え、
前記キャリッジは、前記清掃部材に対し前記第1方向の側の領域において前記第1方向から前記第2方向へ移動方向が切り替わる際に、互いに異なる複数の停止位置のいずれかに選択的に一旦停止可能であり、
前記位置決め機構は、前記複数の停止位置のうち前記キャリッジが一旦停止した位置に応じて、前記第3方向における前記清掃部材の位置を決める、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、
ベース部材と、
前記ベース部材に姿勢変更可能に支持され、前記清掃部材を保持する保持部材と、を有し、
前記清掃部材は、前記保持部材の姿勢に応じて前記第3方向における前記清掃部材の位置が決まるよう、前記保持部材に保持され、
前記保持部材は、前記キャリッジに操作されることで前記キャリッジが一旦停止した位置に応じた姿勢となる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記位置決め機構は、
前記保持部材に支持され、前記キャリッジが一旦停止した位置に応じた前記保持部材の姿勢を維持するよう、前記ベース部材に係止するアーム部材を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記アーム部材は、前記保持部材に姿勢変更可能に支持され、
前記ベース部材は、前記アーム部材が前記保持部材の姿勢に応じた姿勢で係止する被係止部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記位置決め機構は、
前記アーム部材が前記被係止部に係止するように前記アーム部材を付勢する付勢部材を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記被係止部は、段差形状に形成されており、
前記アーム部材は、複数の姿勢のそれぞれにおいて前記被係止部と係止可能な形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記キャリッジを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記録ヘッドによって記録媒体に画像を記録する記録モードと、
前記記録ヘッドの前記吐出部を清掃する清掃モードと、を実行可能であり、
前記記録モードにおいて、前記記録ヘッドの走査回数をカウントし、
前記清掃モードにおいて、前記走査回数に応じて、前記複数の停止位置の中から前記キャリッジを一旦停止させる位置を決める、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記複数の停止位置には、第1停止位置及び第2停止位置が含まれており、
前記制御部は、前記清掃モードにおいて、前記走査回数が閾値以下の場合は前記キャリッジを前記第1停止位置に停止させ、前記走査回数が前記閾値よりも多い場合は前記キャリッジを前記第2停止位置に停止させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクを吐出可能な記録ヘッドを装着可能なキャリッジを有する。記録ヘッドは、複数のノズルを有し、ノズルから記録媒体にインクを吐出することで記録媒体に画像を記録する。記録ヘッドを小型化し、複数のノズルを高密度に配置することで、記録媒体に高精細な画像を記録することができる。また、複数の記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置においては、互いに異なる複数色のインクのそれぞれを対応する記録ヘッドに供給することで、比較的安価かつ小型な構成にてカラー化を実現できるなど、多くの利点がある。このため、インクジェット記録装置は、業務用及び家庭用を問わず、プリンタ、ファクシミリ及び複写機などの様々な画像記録装置に用いられている。
【0003】
また、インクジェット記録装置では、記録媒体を搬送する方向に対して直交する主走査方向に記録ヘッドを往復運動させるシリアル記録方式の記録装置が広く知られている。シリアル記録方式の場合、記録ヘッドを小型化できる、様々なサイズの記録媒体に対応可能である、記録ヘッドが複数のノズル列を持つことで多色化が容易である、重ね印字の回数により記録速度と記録画質の調整が容易である等の利点がある。
【0004】
インクジェット記録装置において、記録ヘッドの吐出面には、インク滴が付着することがある。特許文献1には、記録ヘッドの吐出面を清掃するためのワイパーを備えるインクジェット記録装置が記載されている。ワイパーは、例えば弾性変形可能な部材であり、弾性変形した状態で記録ヘッドの吐出面をワイピングすることにより、記録ヘッドの吐出面を清掃することができる。また、特許文献1には、記録ヘッドの両側にインク吸収体を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、記録ヘッドを搭載したキャリッジは、記録媒体に画像を記録する際に往復動作を行うため、キャリッジとキャリッジをガイドするガイド部材とが摺接する構成となる。この摺接部分は、コストおよび本体サイズを考慮し、樹脂モールドと板金、又は樹脂モールドと樹脂モールドのような簡易的な組み合わせとなるのが一般的である。そのため、グリース等を摺接部分に設けて摺接部分に摺動性を上げる対策を行っても、経時的に樹脂モールド部分が削れてくることになる。キャリッジは、ガイド部材と接触して高さが決まる構成であるため、摺接部分が削れると、重力によって下がることになる。これにより記録ヘッドも下方向に移動するため、ワイピング動作を実施した際に、記録ヘッドに対するワイパーのオーバーラップ量が増えることになる。記録ヘッドに対するワイパーのオーバーラップ量は、所定量の変化を許容するように設計されており、所定量を超えない標準的な使用では問題とならない。オーバーラップ量が所定量を超えない場合、ワイパーによって拭き取られたインクは、弾性変形していたワイパーが復元する際に所定方向に飛散するか、或いはワイパーを伝ってワイパーの下方に移動する。ワイパーに対する所定方向には、ワイパーから飛散したインクを吸収するための吸収体が配置されている。
【0007】
しかし、記録量が増加しキャリッジの移動回数が増加すると、摺接部分の摩耗が進行し、オーバーラップ量が所定量を超えてしまうことがある。オーバーラップ量が所定量を超えた場合、記録ヘッドからワイパーが離間する際に、ワイパーに拭き取られたインクが所定方向には飛散せずにキャリッジと記録ヘッドとの間に堆積することがある。キャリッジは、記録領域を走査するため、キャリッジと記録ヘッドとの間にインクが堆積すると、記録動作中に記録媒体上にインクが落下する現象、即ち画像不良が発生するおそれがある。そこで、特許文献1のように記録ヘッドの両側に、別途、インク吸収体を配置しておいてもよいが、このインク吸収体が吸収できるインクの容量にも限界がある。
【0008】
本発明は、記録媒体に記録される画像品位の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録装置は、インクが吐出される吐出部を含む記録ヘッドが装着され、第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジとともに移動する前記記録ヘッドの前記吐出部が接触することで前記吐出部を清掃する清掃部材と、前記記録ヘッドの前記吐出部が前記清掃部材に接触し得る、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向における前記清掃部材の位置を決める位置決め機構と、を備え、前記キャリッジは、前記清掃部材に対し前記第1方向の側の領域において前記第1方向から前記第2方向へ移動方向が切り替わる際に、互いに異なる複数の停止位置のいずれかに選択的に一旦停止可能であり、前記位置決め機構は、前記複数の停止位置のうち前記キャリッジが一旦停止した位置に応じて、前記第3方向における前記清掃部材の位置を決める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、記録媒体に記録される画像の品位が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるプリンタ1の説明図である。
【
図2】(a)~(d)は第1実施形態における清掃動作を説明するための模式図である。
【
図3】第1実施形態に係るキャリッジ及びキャリッジレールガイド部を示す側面図である。
【
図4】(a)~(d)は比較例のワイピング動作の説明図である。
【
図5】(a)及び(b)は第1実施形態に係る位置決め機構の説明図である。
【
図6】(a)~(c)は第1実施形態に係る位置決め機構の動作の説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る制御装置の制御動作のフローチャートである。
【
図8】(a)~(c)は、第2実施形態に係る位置決め機構の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下、「記録」とは、文字、図形、模様、パターン等の画像を記録媒体に形成することをいい、画像形成ともいう。また、「記録媒体」とは、紙、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なシートをいう。また、「インク」とは、記録媒体上に付与されることによって、記録媒体に画像を形成するのに用いられる液体を表す。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるプリンタ1の説明図である。プリンタ1は、記録ヘッド21を移動させて記録媒体Pに画像を記録するシリアル記録方式のインクジェット記録装置である。
【0014】
記録ヘッド21は、インクを吐出するためのエネルギーとして、発熱素子から発生される熱エネルギーを用いた、いわゆるバブルジェット(登録商標)記録方式を採用した記録ヘッドである。なお、記録ヘッド21は、バブルジェット(登録商標)記録方式に限定するものではなく、他の方式、例えば、圧電素子を用いた方式等の記録ヘッドであってもよい。
【0015】
プリンタ1は、ホストコンピュータ12に接続される。ホストコンピュータ12は、プリンタ1に画像情報を送ることができるコンピュータであり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)である。プリンタ1は、筐体1Aと、記録ヘッド21が装着されるキャリッジ22と、キャリッジ22を筐体1Aに対して主走査方向であるX方向に移動するようキャリッジ22を駆動する駆動部30と、キャリッジ22をX方向に案内するキャリッジレールガイド部40と、回復ユニット50と、制御部の一例である制御装置60を備える。キャリッジ22、駆動部30、キャリッジレールガイド部40、回復ユニット50、及び制御装置60は、筐体1Aの内部に配置されている。
【0016】
制御装置60は、不図示のCPU、ROM、RAM、I/Oを有し、駆動部30等、プリンタ1全体を統括的に制御する。ROMには、制御手順を示すプログラムが格納されている。また、RAMは、作業用データや入力データが一時的に格納される作業領域であり、CPUは、ROMに格納されたプログラムに従い、RAMに格納されたデータを参照して各部を制御する。
【0017】
ここで、X方向は水平方向でもある。キャリッジ22は、X方向に移動可能である。キャリッジ22は、駆動部30によって駆動されることにより、X方向に移動する。X方向には、第1方向であるX1方向と、第1方向とは反対の第2方向であるX2方向とが含まれる。X方向と直交する水平方向をY方向とする。X方向及びY方向と直交(交差)する方向であり、上下方向、即ち垂直方向を第3方向であるZ方向とする。Z方向のうち、上方向をZ1方向、下方向をZ2方向とする。
【0018】
まず、給送機構について説明する。
図1において、プリンタ1は、筐体1Aの内部に配置された、プラテン部材10と、プラテン部材10の下方に配置された不図示のリフタ部及び用紙載置部と、を有する。用紙載置部は、リフタ部に駆動されることにより、セット位置と記録位置との間で記録ヘッド21の吐出部である吐出面212に接離するZ方向に移動可能である。吐出面212には、インクを吐出する複数のノズル211が含まれている。
【0019】
Y方向のうち挿入方向であるY1方向にユーザが記録媒体Pをプリンタ1に挿入することで、セット位置に位置する用紙載置部上に記録媒体Pがセットされる。用紙載置部に記録媒体Pがセットされたことが検知されると、リフタ部が用紙載置部をセット位置から記録位置までリフトアップする。用紙載置部が記録位置にリフトアップされることで、記録媒体Pがプラテン部材10に押し付けられて固定される。プラテン部材10は、記録媒体Pが押し付けられた際に、記録媒体Pにおける記録領域R1に相当する部分が露出されるように、開口部10Aが設けられている。この開口部10Aを介して記録媒体Pに画像が形成される。
【0020】
駆動部30は、駆動モータ31と、駆動モータ31の駆動力をキャリッジ22に伝達する駆動ベルト32と、を有する。駆動モータ31の駆動により、キャリッジ22、即ちキャリッジ22に搭載された記録ヘッド21をX方向に移動させることができる。駆動モータ31は、例えばDCモータであるが、これに限定するものではない。駆動モータ31は、例えばステッピングモータなど駆動力をベルトに伝達できる動力源であればよい。駆動力を受けたキャリッジ22は、X方向に駆動される。記録ヘッド21が記録領域R1の上部を通過するタイミングで記録ヘッド21のノズル211からインクが吐出されることで、記録媒体Pに画像が形成される。
【0021】
キャリッジ22の往復動作や、記録ヘッド21による記録動作を実施するにあたり、キャリッジ22のX方向の位置を検知する位置検出手段が必要である。このため、駆動部30は、位置検出手段として、キャリッジ22のX方向の位置を検出可能なエンコーダ33を有する。エンコーダ33は、例えばリニアエンコーダであり、スケールと検出ヘッドとを有する。スケールは、X方向におけるキャリッジ22の動作可能領域に亘って配置されている。検出ヘッドは、キャリッジ22に設けられ、スケールの情報を検出可能である。検出ヘッドは、例えばスケールに光を照射する光源と、スケールの反射光又は透過光を検知する光センサとを有する。なお、駆動モータ31がステッピングモータである場合は、エンコーダ33は省略可能である。また、エンコーダ33は、ロータリーエンコーダであってもよい。
【0022】
次に、回復ユニット50について説明する。回復ユニット50は、X方向において、キャリッジ22の移動可能領域のうち、記録領域R1以外の領域に配置されている。例えば、回復ユニット50は、筐体1A内においてプラテン部材10の右側、即ちX1方向の側に配置されている。回復ユニット50は、記録ヘッド21の吐出性能を維持するために、任意のタイミングで記録ヘッド21の吐出面212をクリーニングする動作を実施する。回復ユニット50は、キャップ部材51、吸引ポンプ54、ワイパー55、及びメンテナンスカートリッジ58を有する。
【0023】
回復ユニット50を用いた清掃動作について説明する。
図2(a)~
図2(d)は、第1実施形態における清掃動作を説明するための模式図である。清掃動作は、記録ヘッド21による記録動作を行うタイミング以外のタイミングで実施される。清掃動作は、例えばユーザが画像不良を認識した際に、ユーザから所定の指示を受けたタイミングや、記録ヘッド21を新規に装着したタイミング、記録開始前のタイミングで実施される。
【0024】
キャップ部材51は、吸引チューブ53を介して吸引ポンプ54に接続され、吸引ポンプ54の先には廃液チューブ57を介してメンテナンスカートリッジ58が接続されている。吸引ポンプ54によるインク吸引動作で発生した廃液はメンテナンスカートリッジ58に送られる。また、キャップ部材51は、不図示のキャップアップダウンモータを含むキャップ保持部材52に保持され、Z方向に昇降動作可能となっている。ワイパー55は保持部材(ワイパー保持部材)56が昇降することで、退避位置と、退避位置よりもZ1方向(上方向)の接触位置とに移動可能である。詳細な動作および構成は別途説明する。
【0025】
清掃動作時には、まず
図2(a)のように、記録ヘッド21をキャップ部材51の真上に移動させた状態で、キャップ保持部材52をZ1方向に上昇させて、記録ヘッド21のノズル211を覆うように、記録ヘッド21の吐出面212をキャップ部材51で密閉する。この状態で吸引ポンプ54を稼働させ、キャップ部材51内を減圧することで、ノズル211からインクを吸引して排出させる。ノズル211内において乾燥によって増粘したインクや、吐出面212に付着したインク及び異物を、インク吸引動作によって排出させて、記録ヘッド21のインク吐出性能を回復させる。
【0026】
インク吸引動作を実施した後、
図2(b)に示すようにキャップ部材51をZ2方向に移動させて、キャップ部材51を記録ヘッド21から離間させると、記録ヘッド21の吐出面212には、排出したインクの一部としてインクIが残った状態となる。この状態で記録ヘッド21が装置内をX方向に走査すると記録領域R1や記録媒体PにインクIが垂れる虞があるため、ワイパー55によってインクIを除去するワイピング動作を実施する。ワイパー55は、清掃部材の一例であり、弾性変形可能(撓み変形)な部材である。ワイパー55は、キャリッジ22とともに移動する記録ヘッド21の吐出面212が接触することで吐出面212を清掃することができる。
【0027】
吐出面212のインクIをワイパー55で拭き取るために、
図2(c)に示すように、保持部材56をZ1方向に上昇させ、ワイパー55の先端が記録ヘッド21の吐出面212よりも高い位置となるように、Z方向においてワイパー55を位置決めする。ワイパー55を接触位置に位置決めした状態で、記録ヘッド21をX2方向に移動させると、ワイパー55の先端が吐出面212に接触する前に記録ヘッド21の側面に接触する。さらに記録ヘッド21をX2方向に移動させると、ワイパー55が弾性変形して記録ヘッド21の吐出面212に接触する。この状態で記録ヘッド21をX2方向に移動させることで、
図2(d)に示すように、記録ヘッド21の吐出面212に付着したインクIがワイパー55によって拭き取られる。
【0028】
このワイピング動作時の記録ヘッド21のX2方向への移動量は、吐出面212上をワイパー55が通り抜けるまでの移動量でよく、記録ヘッド21を
図1に示す筐体1Aの左端まで走査させる必要はない。インク吸引動作後、このワイピング動作を複数回実施するのが好ましい。ワイピング動作を複数回実施することにより、効果的に吐出面212からインクIを除去することができる。
【0029】
第1実施形態では、キャリッジ22は、樹脂で構成され、キャリッジレールガイド部40は、金属で構成されている。
図3は、キャリッジ22及びキャリッジレールガイド部40を示す側面図である。キャリッジ22の摺接部221は、キャリッジレールガイド部40と摺接する。摺接部221は、樹脂で構成されているため、経時的に削れてしまうことがある。摺接部221が削れると、キャリッジ22が重力によって矢印A方向に回転し、Z2方向に移動することになる。これにより記録ヘッド21もZ2方向に移動する。
【0030】
以下、比較例として、ワイピング動作において、キャリッジ22の摺接部221が摩耗しているかどうかに関係なく、ワイパー55をZ方向において同じ接触位置に位置決めする場合について説明する。なお、ワイパー55は、Z方向において、接触位置と退避位置との間で移動可能である。
図4(a)~
図4(d)は、比較例のワイピング動作の説明図である。
図4(a)及び
図4(b)は、キャリッジ22の摺接部221(
図3)が摩耗していない、又は摩耗量が所定量以下の場合、即ちワイパー55と記録ヘッド21とのZ方向の位置関係が基準状態の場合を示す。
図4(c)及び
図4(d)は、キャリッジ22の摺接部221の摩耗量が所定量を超える場合を示す。
【0031】
図4(a)に示すように、ワイパー55と記録ヘッド21とのZ方向の位置関係が基準状態の場合、記録ヘッド21とワイパー55との位置関係は基準状態にあり、Z方向における記録ヘッド21に対するワイパー55のオーバーラップ量が所定量以下である。記録ヘッド21がワイパー55に対してX2方向に移動することで、記録ヘッド21の吐出面212に付着しているインクIが弾性変形するワイパー55によって拭き取られる。そして、
図4(b)に示すように、ワイパー55を接触位置から退避位置までZ2方向に下降させることで弾性変形していたワイパー55が復元する。これによりインクIがワイパー55から飛散して、筐体1Aの内部に配置した吸収体59に吸収される。
【0032】
次に、
図4(c)においては、
図3のキャリッジ22の摺接部221が摩耗したことにより、キャリッジ22が
図4(a)に示す基準状態よりも下がっている。即ち、記録ヘッド21に対するワイパー55のオーバーラップ量が所定量を超えている。そのため、ワイピング動作中は、ワイパー55の弾性変形量(撓み量)も大きくなる。このため、記録ヘッド21とワイパー55との間の隙間も大きくなるため、記録ヘッド21に残るインクIの量も多くなっている。この状態で、
図4(d)に示すように、ワイパー55がZ2方向に下降し、ワイパー55が自由状態に復元すると、インクIの一部分は、吸収体59に向けて飛散するが、インクIの残りの部分は、ワイパー55がキャリッジ22に接触することで、キャリッジ22と記録ヘッド21との間に堆積することになる。
【0033】
キャリッジ22は、記録動作時に記録媒体P上を移動するため、記録ヘッド21とキャリッジ22との隙間に堆積したインクが記録媒体Pに付着すると、記録媒体Pに記録される画像の不良が発生する。更に、記録ヘッド21は消耗品となっており、所定タイミングで交換が必要となる。記録ヘッド21の側面にインクが付着していると、作業者が記録ヘッド21をキャリッジ22から取り外す際にインクで手が汚れる虞もある。記録ヘッド21とキャリッジ22との間には、記録ヘッド21を交換するための作業性を考慮して隙間を設ける必要がある。仮に隙間を可能な限り狭くした場合でも、液体であるインクは毛細管現象によって隙間に進入する。このため、記録ヘッド21とキャリッジ22との間にはインクが堆積してしまうため、上記の問題の解決にはならない。
【0034】
第1実施形態では、回復ユニット50は、Z方向においてワイパー55を位置決めする位置決め機構を有する。
図5(a)及び
図5(b)は、回復ユニット50の位置決め機構500、記録ヘッド21及びキャリッジ22の説明図である。
図5(a)は、Y1方向に視た位置決め機構500、記録ヘッド21及びキャリッジ22の正面図である。
図5(b)は、X1方向に視た位置決め機構500及びキャリッジ22の側面図である。位置決め機構500は、ワイピング動作を行う際に記録ヘッド21の吐出面212がワイパー55に接触し得る、Z方向におけるワイパー55の位置を決める機構である。
【0035】
キャリッジ22は、ワイパー55に対しX1方向の側の領域R2においてX1方向からX2方向へ移動方向が切り替わる際に、互いに異なる複数の停止位置S1,S2のいずれかに選択的に一旦停止可能である。位置決め機構500は、複数の停止位置S1,S2のうちキャリッジ22が一旦停止した位置に応じて、Z方向におけるワイパー55の位置を決める。即ち、位置決め機構500は、キャリッジ22が複数の停止位置S1,S2のいずれの停止位置に停止したかに応じて、Z方向においてワイパー55を異なる位置に位置決めする。第1実施形態では、第1停止位置である停止位置S1にキャリッジ22が一旦停止した場合と第2停止位置である停止位置S2にキャリッジ22が一旦停止した場合とでZ方向におけるワイパー55の位置決め位置が異なる。
【0036】
以下、位置決め機構500の具体的な構成について説明する。位置決め機構500は、ベース部材71と、ベース部材71に姿勢変更可能に支持され、ワイパー55を保持する保持部材56と、保持部材56に支持され、キャリッジ22が一旦停止した位置に応じた保持部材56の姿勢を維持するよう、ベース部材71に係止するアーム部材70を有する。保持部材56は、Y方向に延びる仮想線である軸線CYを中心に反時計回りの回転方向RY1と、回転方向RY1とは反対の時計回りの回転方向RY2とに揺動可能にベース部材71に支持されている。
【0037】
ワイパー55は、保持部材56の姿勢に応じてZ方向におけるワイパー55の位置が決まるよう、保持部材56に保持されている。具体的には、ワイパー55は、軸線CYからX2方向に離れた位置において保持部材56に保持されている。保持部材56は、キャリッジ22に操作される被操作部561を有する。被操作部561は、軸線CYからZ1方向に延びるように形成されている。被操作部561は、X方向における保持部材56の一端部である。被操作部561は、Z方向においてキャリッジ22と接触する位置に位置している。被操作部561がキャリッジ22に操作されることで保持部材56が軸線CYまわりに揺動し、X方向におけるキャリッジ22の位置に応じた姿勢となる。
【0038】
アーム部材70は、保持部材56に姿勢変更可能に支持されている。アーム部材70は、X方向における保持部材56の他端部に支持されている。アーム部材70は、X方向に延びる仮想線である軸線CXを中心に反時計回りの回転方向RX1と、回転方向RX1とは反対の時計回りの回転方向RX2とに揺動可能に保持部材56に支持されている。
【0039】
アーム部材70は、保持部材56の姿勢に応じた姿勢にベース部材71に保持される。ベース部材71は、アーム部材70が保持部材56の姿勢に応じた姿勢で係止する被係止部710を含む。位置決め機構500は、アーム部材70が被係止部710に係止するようにアーム部材70を付勢する付勢部材の一例であるバネ72を有する。バネ72は、例えば圧縮コイルバネであり、アーム部材70を回転方向RX1に付勢するように、一端がアーム部材70に固定され、他端がベース部材71に固定されている。
【0040】
被係止部710は、段差形状に形成されている。アーム部材70は、複数の姿勢のそれぞれにおいて被係止部710と係止可能な形状に形成されている。
【0041】
図6(a)~
図6(c)は、キャリッジ22による位置決め機構500の動作の説明図である。各
図6(a)~
図6(c)には、位置決め機構500、記録ヘッド21及びキャリッジ22の正面図と、アーム部材70及びベース部材71の被係止部710の側面図を図示している。アーム部材70は、被係止部710に係止するときの複数の姿勢として3つの姿勢を取り得る。ベース部材71の被係止部710は、第1姿勢のアーム部材70が係止するエリアp1、第2姿勢のアーム部材70が係止するエリアp2、第3姿勢のアーム部材70が係止するエリアp3からなる。つまり、アーム部材70の所定の部位701が被係止部710において係止する場所によって、ワイパー55の高さが決定される構成となっている。部位701は、アーム部材70の下面である。アーム部材70の部位701が被係止部710のエリアp1に係止している状態においては、ワイパー55は、記録ヘッド21に接触しない退避位置に位置決めされる。アーム部材70の部位701が被係止部710のエリアp2又はエリアp3に係止している状態においては、ワイパー55は、記録ヘッド21に接触し得る接触位置に位置決めされる。アーム部材70が被係止部710のエリアp2に係止している状態におけるワイパー55のZ方向の位置は、アーム部材70が被係止部710のエリアp3に係止している状態におけるワイパー55のZ方向の位置に対しZ2方向にある。なお、以下の説明では、ワイパー55が3段階の高さに調整可能な例について説明するが、3段階に限定するものではなく、3段階以上であればよい。
【0042】
図6(a)には、プリンタ1が待機状態であって、記録ヘッド21にキャップ部材51をキャップ保持部材52によって押し当てた状態を図示している。
図6(a)に示すように、アーム部材70は、ベース部材71のエリアp1に接触している状態で、記録ヘッド21とワイパー55とがZ方向においてオーバーラップしていない状態である。アーム部材70は、バネ72(
図5(b))によって回転方向RX1に付勢されており、バネ72の付勢力によりエリアp1に係止している。
【0043】
ワイピング動作を行う場合、
図6(a)に示す状態から、不図示の駆動装置によってキャップ保持部材52がZ2方向に駆動され、キャップ部材51が記録ヘッド21から退避する。キャップ部材51が記録ヘッド21から退避した状態において、キャリッジ22をX1方向に移動させると、キャリッジ22は、保持部材56の被操作部561に接触して、被操作部561をX1方向に操作する。これにより、保持部材56は、回転方向RY2に揺動する。保持部材56が回転方向RY2に揺動することで、アーム部材70は、Z1方向に持ち上げられてエリアp1に対し係止が解除され、バネ72(
図5(b))の付勢力によってRX1方向に揺動する。
【0044】
図6(b)に示すように、キャリッジ22が停止位置S1で一旦停止すると、保持部材56は、キャリッジ22が一旦停止した停止位置S1に応じた姿勢で一旦停止する。このとき、アーム部材70の部位701は、エリアp1からエリアp3に移動してエリアp3に係止する。そして、アーム部材70が被係止部710のエリアp3に係止しているので、キャリッジ22が保持部材56の被操作部561からX2方向に離間しても、保持部材56の姿勢、即ちワイパー55のZ方向の位置は保たれる。
【0045】
図6(c)に示すように、キャリッジ22が停止位置S2で一旦停止すると、保持部材56は、キャリッジ22が一旦停止した停止位置S2に応じた姿勢で一旦停止する。このとき、アーム部材70の部位701は、エリアp1からエリアp2に移動してエリアp2に係止する。そして、アーム部材70が被係止部710のエリアp2に係止しているので、キャリッジ22が保持部材56の被操作部561からX2方向に離間しても、保持部材56の姿勢、即ちワイパー55のZ方向の位置は保たれる。
【0046】
停止位置S2は、停止位置S1に対してX2方向の位置にある。よって、アーム部材70がエリアp2に係止している状態におけるワイパー55のZ方向の位置は、アーム部材70がエリアp3に係止している状態におけるワイパー55のZ方向の位置よりも下にある。このように、キャリッジ22が一旦停止した位置に応じて、Z方向におけるワイパー55の位置が決まる。
【0047】
以下、制御装置60の制御動作について説明する。制御装置60は、記録ヘッド21によって記録媒体Pに画像を記録する記録モードと、記録ヘッド21の吐出面212を清掃する清掃モードと、を実行可能である。制御装置60は、記録モードにおいて、記録ヘッド21の走査回数をカウントする。カウントした走査回数は、不図示のメモリに記憶させておく。
【0048】
制御装置60は、清掃モードにおいて、カウントした走査回数に応じて、複数の停止位置S1,S2の中からキャリッジ22を一旦停止させる位置を決める。即ち、キャリッジ22の摺接部221の摩耗量は、走査回数と関係があり、走査回数が増加するほど、摺接部221の摩耗量は増加する。摺接部221の摩耗量が増加するほど、キャリッジ22、即ち記録ヘッド21がZ2方向に下降する。
【0049】
図7は、清掃モードを実行する際の制御装置60による制御動作のフローチャートである。制御装置60は、記録モードにおいてカウントした走査回数が閾値以下であるか否かを判断する(S601)。走査回数が閾値以下である場合(S601:YES)、制御装置60は、キャリッジ22を
図6(b)に示す停止位置S1に停止させる(S602)。走査回数が閾値よりも多い場合(S601:NO)、制御装置60は、キャリッジ22を
図6(c)に示す停止位置S2に停止させる(S603)。以上の動作により、Z方向における記録ヘッド21とワイパー55とのオーバーラップ量を適正にすることができる。
【0050】
ワイパー55のZ方向の位置を決めた後、停止位置S1又はS2からX2方向にキャリッジ22を移動させることで、ワイパー55が記録ヘッド21の吐出面212のインクを除去する。インク除去後、キャリッジ22がアーム部材70に接触することで、不図示の駒がアーム部材70をバネ72の付勢力に抗して回転方向RX2に揺動させる。これにより、アーム部材70がエリアp3又はp2からエリアp1に移動し、ワイパー55がZ2方向に退避して、弾性変形していたワイパー55が復元することにより、ワイピング動作が終了する。このワイピング動作においては、記録ヘッド21とワイパー55とのオーバーラップ量が適正な量に設定されているため、記録ヘッド21から拭き取られたインクが、所定の位置に配置された吸収体59(
図4(b))に飛散するか、或いはワイパー55を伝って下に移動する。
【0051】
走査回数が閾値よりも多い場合、キャリッジ22、即ち記録ヘッド21は、走査回数が閾値以下の場合よりもZ2方向に下降する。このため、走査回数が閾値よりも多い場合、ワイパー55は、走査回数が閾値以下の場合よりも低い位置に位置決めされる。このようにワイパー55が位置決め機構500によって位置決めされるので、ワイパー55と記録ヘッド21とのオーバーラップ量を適正にすることができる。この状態でキャリッジ22がX2方向に移動することで、記録ヘッド21の吐出面212のインクが効果的に除去され、ワイパー55に拭き取られたインクの飛散方向も安定し、記録ヘッド21とキャリッジ22との間にインクが堆積するのも防止される。よって、記録媒体Pがインクで汚れるのが防止され、記録媒体Pに記録される画像の品位を向上させることができる。また、作業者が記録ヘッド21を交換する作業を行う際に、作業者の手がインクで汚れるのを防止することができ、これにより、サービス性が向上する。
【0052】
なお、
図7に示す制御装置60の制御動作のフローについては、ワイピング動作開始時に、ワイピング動作を行う度に実施するが、これに限定するものではない。例えば、ステップS601で走査回数が閾値よりも多いと判断した場合には、不図示のメモリに停止位置S2に決定したことを示す情報を記憶させておいてもよい。次回以降のワイピング動作時には、
図7に示すシーケンスフローを実施せずに、一律に停止位置S2に停止させるようにしてもよい。
【0053】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る回復ユニットの位置決め機構について説明する。以下、第2実施形態において第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0054】
図8(a)~
図8(c)は、第2実施形態に係る位置決め機構500Aの動作の説明図である。位置決め機構500Aは、複数の停止位置S1,S2のうちキャリッジ22が一旦停止した位置に応じて、Z方向におけるワイパー55の位置を決める。第2実施形態では、位置決め機構500Aの構成が第1実施形態の位置決め機構500の構成と異なる。位置決め機構500Aは、第1実施形態と異なる構成のベース部材71A及びアーム部材70Aを有する。また、位置決め機構500Aは、第1実施形態と同様の構成の保持部材56及びバネ72(
図5(b))を有する。各
図8(a)~
図8(c)には、位置決め機構500A、記録ヘッド21及びキャリッジ22の正面図と、アーム部材70A及びベース部材71Aの被係止部710Aの側面図を図示している。
【0055】
第2実施形態のアーム部材70Aは、ベース部材71Aの被係止部710Aに係止可能な複数の部位701A,702Aを有する。アーム部材70Aの姿勢に応じて、複数の部位701A,702Aのうちのいずれかが被係止部710Aに係止することにより、ワイパー55のZ方向の位置が決定される。部位701Aは、アーム部材70Aの本体の下面である。部位702Aは、アーム部材70Aの本体から突出する突起である。
【0056】
走査回数が閾値以下の場合、制御装置60は、
図8(b)に示すようにキャリッジ22を停止位置S1で停止させる。これにより、アーム部材70Aの部位701Aがベース部材71Aの被係止部710Aに係止して、ワイパー55の高さが決定される。
【0057】
走査回数が閾値よりも多い場合、制御装置60は、
図8(c)に示すようにキャリッジ22を停止位置S2で停止させる。これにより、アーム部材70Aの部位702Aがベース部材71Aの被係止部710Aに係止して、ワイパー55の高さが決定される。
【0058】
ワイパー55のZ方向の位置を決めた後、停止位置S1又はS2からX2方向にキャリッジ22を移動させることで、ワイパー55が記録ヘッド21の吐出面212のインクを除去する。インク除去後、キャリッジ22がアーム部材70Aに接触することで、不図示の駒がアーム部材70Aをバネ72(
図5(b))の付勢力に抗して回転方向RX1とは反対の回転方向に揺動させる。これにより、ワイパー55がZ2方向に退避して、弾性変形していたワイパー55が復元することにより、ワイピング動作が終了する。このワイピング動作においては、記録ヘッド21とワイパー55とのオーバーラップ量が適正な量に設定されているため、記録ヘッド21から拭き取られたインクが、所定の位置に配置された吸収体59(
図4(b))に飛散するか、或いはワイパー55を伝って下に移動する。
【0059】
走査回数が閾値よりも多い場合、キャリッジ22、即ち記録ヘッド21は、走査回数が閾値以下の場合よりもZ2方向に下降する。このため、走査回数が閾値よりも多い場合、ワイパー55は、走査回数が閾値以下の場合よりも低い位置に位置決めされる。このようにワイパー55が位置決め機構500によって位置決めされるので、ワイパー55と記録ヘッド21とのオーバーラップ量を適正にすることができる。この状態でキャリッジ22がX2方向に移動することで、記録ヘッド21の吐出面212のインクが効果的に除去され、ワイパー55に拭き取られたインクの飛散方向も安定し、記録ヘッド21とキャリッジ22との間にインクが堆積するのも防止される。よって、記録媒体Pがインクで汚れるのが防止され、記録媒体Pに記録される画像の品位を向上させることができる。また、作業者が記録ヘッド21を交換する作業を行う際に、作業者の手がインクで汚れるのを防止することができ、これにより、サービス性が向上する。
【0060】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1…プリンタ(インクジェット記録装置)、21…記録ヘッド、22…キャリッジ、55…ワイパー(清掃部材)、56…保持部材、212…吐出面、500…位置決め機構