(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122071
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】紙製容器成型用潤滑剤及び紙製容器
(51)【国際特許分類】
C10M 107/08 20060101AFI20220815BHJP
B65D 3/06 20060101ALI20220815BHJP
B65D 3/28 20060101ALI20220815BHJP
B65D 3/14 20060101ALI20220815BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220815BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220815BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
C10M107/08
B65D3/06 B
B65D3/28 A
B65D3/14 Z
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019143
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000152930
【氏名又は名称】株式会社日本デキシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊夫
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104CA04A
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA50
(57)【要約】
【課題】成型性がよく、表面に残留しにくい紙製容器成型用潤滑剤及びこれを用いた紙製容器の提供。
【解決手段】胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する紙製容器の製造に用いられる潤滑剤であって、水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる紙製容器成型用潤滑剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する紙製容器の製造に用いられる潤滑剤であって、
水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる紙製容器成型用潤滑剤。
【請求項2】
水添ポリブテンからなる、請求項1に記載の紙製容器成型用潤滑剤。
【請求項3】
胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する紙製容器であって、
前記胴部の外面側の少なくとも一部又は前記胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着してなり、前記潤滑剤が水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる、紙製容器。
【請求項4】
前記潤滑剤が水添ポリブテンからなる、請求項3に記載の紙製容器。
【請求項5】
前記潤滑剤の塗布量が、紙製容器1個あたり0.1mg以上0.6mg以下である、請求項3又は4に記載の紙製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器成型用潤滑剤及び紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製容器は食品を入れるための容器として用いられる。紙製容器は、胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する。
一般的な紙製容器の製造においては、胴部と底板部を接合する際に、胴部の下部外周面に潤滑剤が塗工されることがある。具体的には、胴部下端縁を内側に折り曲げて、円盤状の周縁が折り曲げられた底板部の周縁を包むように固着するボトムカールが形成される際に潤滑剤が塗工される。また、紙製容器の胴部の上端縁を外側に向けて折り曲げて、開口部にトップカールを形成させる際に、胴部の上部内周面に潤滑剤が塗工されることも行われている。
【0003】
このような潤滑剤には、例えば特許文献1に記載のように流動パラフィン、シリコーンオイル又はシリコーンエマルジョン等の潤滑剤が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流動パラフィン、シリコーンエマルジョン等の潤滑剤は、潤滑性が不十分であり、成型時にシワが発生するという問題があった。また、紙製容器の外面にポリエチレンが有る場合には、外面のポリエチレンが剥がれ易いという問題があった。また、シリコーンオイルは潤滑性が高いが、紙製容器の表面に残留し、残留部分にテカリが目立つために外観を損なうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、成型性がよく、表面に残留しにくい紙製容器成型用潤滑剤及びこれを用いた紙製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[5]を包含する。
[1]胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する紙製容器の製造に用いられる潤滑剤であって、水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる紙製容器成型用潤滑剤。
[2]水添ポリブテンからなる、[1]に記載の紙製容器成型用潤滑剤。
[3]胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する紙製容器であって、前記胴部の外面側の少なくとも一部又は前記胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着してなり、前記潤滑剤が水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる、紙製容器。
[4]前記潤滑剤が水添ポリブテンからなる、[3]に記載の紙製容器。
[5]前記潤滑剤の塗布量が、紙製容器1個あたり0.1mg以上0.6mg以下である、[3]又は[4]に記載の紙製容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成型性がよく、表面に残留しにくい紙製容器成型用潤滑剤及びこれを用いた紙製容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「成型性がよい」とは、シワが発生することなく紙製容器を製造できること、及び紙製容器の表面の存在するポリエチレン等の樹脂成分の剥がれが発生せずに紙製容器を製造できることを意味する。
本明細書において、黒色の紙製容器を成型した後、室温で3週間保管した後に、紙製容器の表面にテカリが肉眼で観察されない場合には、「潤滑剤が表面に残留しにくい」と評価する。
【0010】
<紙製容器成型用潤滑剤>
本実施形態は、胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する紙製容器の製造に用いられる紙製容器成型用潤滑剤である。
本実施形態の紙製容器成型用潤滑剤は、水添ポリブテン(水素添加ポリブテン)、水添ポリイソブテン(又は水素添加ポリイソブテン)、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる。これらの材料は単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0011】
本実施形態の紙製容器成型用潤滑剤は水添ポリブテンからなることが好ましい。
水添ポリブテンとはイソブチレン単独重合体又はその共重合体を水素添加した分岐鎖を有する炭化水素化合物である。水添ポリブテンは、例えばイソブチレン単独やイソブチレンと他のオレフィンからなるガス混合物を塩化アルミニウムの酸触媒を用いて重合した後、さらに水素添加することにより製造される。
【0012】
水添ポリブテンにおいてイソブチレン量は30質量%以上、好ましくは40質量%以上である。
【0013】
水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンは潤滑性が高く、紙製容器の表面に残留しにくい。さらに、安全性が高いため、食品や飲料に接する紙製容器にも適用できる。
【0014】
<紙製容器>
本実施形態の紙製容器は、胴部接合部を有する胴部と、底板部とからなる容器本体を有する。
本実施形態の紙製容器において、胴部の外面側の少なくとも一部又は胴部の内面側の少なくとも一部に潤滑剤が付着してなる。
本実施形態の紙製容器に付着する潤滑剤は、水添ポリブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン及びポリイソブテンからなる群より選ばれる1種以上からなる。
【0015】
本実施形態の紙製容器に用いる潤滑剤は、水添ポリブテンからなることが好ましい。
【0016】
本実施形態の紙製容器は、潤滑剤の塗布量が、紙製容器1個あたり0.1mg以上0.6mg以下であることが好ましい。
潤滑剤の塗布量が、上記下限値以上であると、十分な潤滑性を有し、成型性を良好にすることができる。潤滑剤の塗布量が上記上限値以下であると、潤滑剤に由来する臭気を低減できる。
【0017】
≪紙製容器の製造方法≫
本実施形態の紙製容器の製造方法について説明する。
まず、胴部材用加工紙Aと、底部材用加工紙Bを製造する。
【0018】
・胴部材用加工紙Aの製造1
紙製容器が発泡カップである場合には、胴部材用加工紙Aを製造するにあたり、まず、紙基材の片面(容器内面側)に、熱可塑性樹脂として中密度(密度0.926~0.940g/cm3)または高密度(密度0.941g/cm3以上)ポリエチレンを溶融押出法により押出しラミネートする。
次に、紙基材の反対面側(容器外面側)に熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを、溶融押出法により押出しラミネートする。低密度ポリエチレンの厚みは、例えば20μm以上70μm以下である。
【0019】
・胴部材用加工紙Aの製造2
紙製容器が両面ラミネートカップである場合には、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンのいずれでもよいが、低密度(密度0.910~0.925g/cm3)ポリエチレンをラミネートすることが好ましい。
【0020】
内面にラミネートするポリエチレンの厚みは、例えば10μm以上40μm以下であり、好ましくは10μm以上30μ以下であり、より好ましくは10μm以上20μm以下である。
【0021】
両面ラミネートカップの場合は、外面にラミネートするポリエチレン樹脂は低密度樹脂、中密度樹脂、高密度樹脂の何れでもよい。ポリエチレン樹脂の厚みは、例えば10μm以上40μm以下であり、好ましくは10μm以上30μ以下であり、より好ましくは10μm以上20μm以下である。
【0022】
胴部材用加工紙Aの製造1又は2により、胴部材用加工紙Aを得る。任意の工程として、ラミネート後に油性グラビア印刷、水性フレキソ印刷、又はUVオフセット印刷を行い、胴部材用加工紙Aを得てもよい。
【0023】
本実施形態の紙製容器成型用潤滑剤を用いると、テカリの発生を経時的に抑制できる。このため、テカリが目立ちやすい色である、黒色、紺色、緑色等の濃色の紙製容器を好適に製造できる。
【0024】
打ち抜き用の金型を研磨してシャープな状態にした上で、胴部材用加工紙Aから容器胴部材ブランクを打ち抜く。
【0025】
・底部材用加工紙Bの製造
紙基材の片面(容器内面側)に熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを押出ラミネートする。低密度ポリエチレンの厚みは、例えば20μm以上60μm以下である。これにより、底部材用加工紙Bを得る。
【0026】
底部材用加工紙Bから容器底部材ブランクを打ち抜く。
容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをカップ成型機で一体化させ、紙製容器を組み立てる。成型機は、例えばPaper Machinery Corporation製、PMC1001が使用できる。
具体的な方法を以下に示す。
【0027】
(1)胴部材ブランクの一方の端縁ともう一方の端縁を重ね合わせて接合させる。胴部材ブランクの一方の縁端ともう一方の縁端を重ね合わせて接合する際に、少なくとも内面側樹脂層の縁端にホットエアーを当てて加熱した後に縁端同士を重ね合わせて圧着することが好ましい。
【0028】
(2)下方に向けて先細る円錐台形状の筒体下部内面に、円形板状の周縁が折曲げられたトレー状底部材を添着する。
【0029】
(3)前記筒体の下端縁を内側に折り曲げて、該トレー状底部材の周縁を包むように固着するボトムカールを形成する。前記ボトムカールの形成時には筒体の下部外周面に本実施形態の紙製容器成型用潤滑剤を塗工する。塗工方法は特に限定されず、潤滑剤を含んだフェルトを用いて塗工する方法や、スプレーを用いて塗工する方法が適宜選択できる。また本実施形態においては、部材に塗工してもよく、機械側に塗工してもよい。塗工量は、紙製容器1個あたり0.1~0.6mgとすることが好ましい。
【0030】
(4)容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをエキスパンダーロール方式又はエキスパンションシール方式により、胴部材と底部材とを圧力をかけて加熱接着させる。
【0031】
(5)該筒体の状端縁を外側に折り曲げて、開口部にトップカールを形成し、紙製容器を完成させる。前記トップカールの形成時には筒体の上部内周面に本実施形態の紙製容器成型用潤滑剤を塗工する。塗工量は、紙製容器1か所あたり0.1mg以上0.6mg以下とすることが好ましい。紙製容器1か所当たりとは、ボトムカール部又はトップカール部のそれぞれにおける塗工量である。
【0032】
≪紙基材層≫
本実施形態の紙製容器に用いられる紙基材としては、例えば、木材より得られた化学パルプ、機械パルプを主成分とし、これにケナフ、竹等の非木材パルプを必要に応じて配合し、通常の抄紙工程により抄造して得られる紙基材が挙げられ、これに限定されない。
【0033】
中でも、本実施形態の紙製容器に用いられる紙基材としては、化学パルプを含有する紙基材が好ましい。化学パルプを含有する紙基材であることにより機械パルプを使用する場合と比較して、密度を高くしやすく、光を長時間浴びた場合又は高温で長時間保管された場合に黄変を抑制することができ、さらに容器に使用することを想定した場合の強度、剛性が高くなる。
【0034】
紙基材に用いられる全原料パルプに対する化学パルプの配合率は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましい。
また、発泡層を備える紙製容器の場合には、化学パルプは針葉樹由来の繊維を多く含む方が、発泡性が高くなるため好ましい。
紙基材に用いられる全原料パルプに対する針葉樹由来の化学パルプの配合率は、強度、剛度が実使用上問題無ければ0%であってもよい。用途によっては高い強度、剛度を求められる場合、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。
【0035】
本実施形態の一態様においては、樹脂ラミネート加工を行う前の紙基材(原紙)の坪量は350g/m2以下が好ましい。坪量を350g/m2以下とすることにより、容器の強度、剛度が過剰(オーバースペック)となりにくく、製造コストを削減しやすくなる。
【0036】
本実施形態の一態様においては、樹脂ラミネート加工を行う前の紙基材(原紙)の坪量は150g/m2以上が好ましい。坪量が150g/m2以上の場合、紙製容器の強度、剛度が増大し易くなる。このため、内容物が充填された状態での落下、積み重ね、輸送時の振動、加速度等の要因により破壊又は変形しにくくなる。また、内容物が充填された容器を手で保持したときに、紙製容器が変形しにくくなり、手で保持しやすくなる。
【0037】
紙基材に用いられるパルプの濾水度(“Canadian Standard”freeness;CSF)は、150mL以上600mL以下であることが好ましく、200mL以上500mL以下であることがより好ましい。
500mL以下の場合、紙基材の強度や破断伸びが過少になりにくいため好ましい。濾水度が200mL以上の場合、紙基材の密度が低くなり過ぎないため好ましい。
【0038】
紙基材の密度は、0.6g/cm3以上であることが好ましく、0.7g/cm3以上であることがより好ましく、0.8g/cm3以上であることがさらに好ましい。
紙基材の厚さは、例えば、150μm以上500μm以下であればよい。
【0039】
紙基材の製造方法としては、一般的に、上記のパルプ、水、及び必要に応じて填料やその他薬品等を添加して調成した紙料を抄紙機のワイヤー上に噴射し、ワイヤーパートで脱水、プレスパートで搾水、ドライヤーパートで乾燥した後、必要に応じて紙に強度や耐水性を付与するサイズプレスや、紙の表面の凹凸を整えるカレンダー処理を施して抄紙し、仕上がった紙を巻取り所定の巻取寸法に仕上げて完成される。また、紙に紙力や耐水性を付与するため、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、澱粉、表面サイズ剤等の薬品を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態における紙基材の製造はこれに限定されるものではない。
【0040】
≪熱可塑性樹脂≫
熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
坪量215g/m2(厚さ270μm、化学パルプ100%、含水率7.0%)の紙基材の片面(容器内面側)に、高密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンLW04-1、密度0.94g/cm3)を溶融押出法により厚さ18μmで押出しラミネートした。
【0043】
紙基材の反対面側(容器外面側)に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンP204、密度0.922g/cm3)を溶融押出法により厚さ35μmで押出しラミネートした。ラミネート後に油性グラビア印刷を行い黒ベタ印刷し、胴部材用加工紙Aを得た。
【0044】
打ち抜き用の金型を研磨してシャープな状態にした上で、胴部材用加工紙Aから容器胴部材ブランクを打ち抜いた。
【0045】
次いで、胴部材に使用したのと同じ紙質の坪量200g/m2の紙基材の片面(容器内面側)に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:ペトロセンP204、密度0.922g/cm3)を厚さ35μmで押出ラミネートし底部材用加工紙Bを得た。
【0046】
底部材用加工紙Bから容器底部材ブランクを打ち抜いた。
容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをカップ成型機で一体化させ、紙製容器を組み立てた。成型機は、Paper Machinery Corporation製、PMC1001を用いた。具体的な方法を以下に示す。
【0047】
(1)胴部材ブランクの一方の端縁ともう一方の端縁を重ね合わせて接合させた。胴部材ブランクの一方の縁端ともう一方の縁端を重ね合わせて接合する際に、少なくとも内面側樹脂層の縁端にホットエアーを当てて加熱した後に縁端同士を重ね合わせて圧着した。
【0048】
(2)下方に向けて先細る円錐台形状の筒体下部内面に、円形板状の周縁が折曲げられたトレー状底部材を添着した。
【0049】
(3)前記筒体の下端縁を内側に折り曲げて、該トレー状底部材の周縁を包むように固着するボトムカールを形成した。前記ボトムカールの形成時には筒体の下部外周面に潤滑剤として水添ポリブテン(日油株式会社製、製品名:06SH、98.9℃での測定時の動粘度10.2mm2/s)を0.35mg/個塗工した。
【0050】
(4)容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクをエキスパンダーロール方式により、胴部材と底部材を加熱接着させた。
【0051】
(5)該筒体の状端縁を外側に折り曲げて、開口部にトップカールを形成し、紙製容器を完成させた。前記トップカールの形成時には筒体の上部内周面に潤滑剤として水添ポリブテン(日油株式会社製、製品名:06SH、98.9℃での測定時の動粘度10.2mm2/s)を0.24mg/個塗工した。
【0052】
実施例1で得られた紙製容器の寸法はブリム外径77mm、カップ高さ96mm、満杯容量270mlであった。
【0053】
<実施例2>
水添ポリブテン(日油株式会社製、製品名:06SH、98.9℃での測定時の動粘度10.2mm2/s)を0.73mg/個塗工した以外は、実施例1と同様の方法により紙製容器を製造した。
【0054】
<比較例1>
水添ポリブテンの代わりに、流動パラフィン(カネダ株式会社製、ハイコールK-350)をトップカール部とボトムカール部にそれぞれ0.45mg塗工した以外は、実施例1と同様の方法により紙製容器を製造した。
【0055】
<比較例2>
水添ポリブテンの代わりに、シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン Element14,PDMS 100-J)をトップカール部とボトムカール部にそれぞれ0.18mg塗工した以外は、実施例1と同様の方法により紙製容器を製造した。
【0056】
<比較例3>
水添ポリブテンの代わりに、シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン Element14,PDMS 100-J)をトップカール部とボトムカール部にそれぞれ0.06mg塗工した以外は、実施例1と同様の方法により紙製容器を製造した。
【0057】
<比較例4>
水添ポリブテンの代わりに、プロピレングリコール(日本化学研究所、ルブリカントPG)をトップカール部とボトムカール部にそれぞれ0.54mg塗工した以外は、実施例1と同様の方法により紙製容器を製造した。
【0058】
≪成型性評価1≫
製造した紙製容器について、ボトムカール時のシワの発生について評価した。具体的には、成型した紙製容器1000個について、シワが発生したカップが1個以上ある場合には「×」とし、シワが発生したカップが0個の場合には「〇」とした。その結果を表1に記載する。
【0059】
≪成型性評価2≫
製造した紙製容器について、ポリエチレンカス(ポリカス)の発生について評価した。具体的には、成型した紙製容器1000個について、成型機に1mm2以上の大きさのポリエチレンカスの付着がある場合には「×」とし、付着がない場合には「〇」とした。その結果を表1に記載する。
【0060】
≪残留評価≫
紙製容器を成型した後、室温で3週間保管した後に、紙製容器の表面のテカリの有無について確認し、潤滑剤の表面の残留評価をした。テカリがある場合を「×」、テカリがない場合を「〇」とした。その結果を表1に記載する。
【0061】
≪臭気評価≫
紙製容器に90℃の熱湯を注ぎ、紙製容器からの臭気を人間の嗅覚により確認した。臭気が確認された場合を「×」、臭気が確認されなかった場合を「〇」とした。その結果を表1に記載する。
【0062】
【0063】
表1に示す結果の通り、実施例1~2の紙製容器は、成型性がよく、潤滑剤が表面に残留しにくいことが確認できた。これに対し、比較例1~4の紙製容器は、ポリカスの発生や、テカリがみられた。