(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122077
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】高周波回路基板、及び、高周波回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220815BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20220815BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H01P3/08 100
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019152
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】徐 磊
(72)【発明者】
【氏名】額賀 理
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
5J014
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA17
5E316AA25
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB11
5E316CC02
5E316CC08
5E316CC10
5E316CC16
5E316CC18
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC37
5E316CC39
5E316DD02
5E316DD32
5E316DD48
5E316EE33
5E316GG15
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH11
5E338AA01
5E338AA02
5E338AA03
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5E338BB13
5E338BB25
5E338CD01
5E338EE11
5E338EE21
5J014CA07
5J014CA53
(57)【要約】
【課題】配線層の縁部において基板にクラックが発生することを防止し、基板から配線層が剥離することを防止し、信頼性の向上に寄与する高周波回路基板と、この高周波回路基板を製造する製造方法とを提供する。
【解決手段】高周波回路基板1Aは、誘電体又は半導体を含む材料で構成され、第1線膨張率を有する基板2と、縁部3Eを有するとともに基板2の第1面2F上に形成された第1配線層3と、第1配線層3の縁部3Eを跨がない領域3Rに位置し、前記第1線膨張率よりも大きい第2線膨張率を有する第1スペーサ4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路基板であって、
第1面を有し、誘電体又は半導体を含む材料で構成され、第1線膨張率を有する基板と、
縁部を有し、前記第1面上に形成された第1配線層と、
前記第1配線層の前記縁部を跨がない領域に位置し、前記第1線膨張率よりも大きい第2線膨張率を有する第1スペーサと、
を備える、
高周波回路基板。
【請求項2】
前記基板の前記第1線膨張率と前記第1スペーサの前記第2線膨張率との差は、10以上である、
請求項1に記載の高周波回路基板。
【請求項3】
前記基板は、前記第1面とは反対の第2面を有し、
前記高周波回路基板は、
縁部を有し、前記第2面上に形成された第2配線層と、
前記第2配線層の前記縁部を跨がない領域に位置する第2スペーサと、
を備える、
請求項1又は請求項2に記載の高周波回路基板。
【請求項4】
前記基板は、前記第1面から前記第2面に向けて前記基板を貫通する基板貫通孔を有し、
前記高周波回路基板は、
前記基板貫通孔の内部に形成され、前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する貫通導体を備える、
請求項3に記載の高周波回路基板。
【請求項5】
前記第1スペーサは、前記第1スペーサを貫通するスペーサ貫通孔を有し、
前記高周波回路基板は、
前記第1スペーサ上に形成され、前記第1配線層及び前記基板から離間し、前記基板の垂直方向から見て前記スペーサ貫通孔の位置と同じ位置に形成された第1樹脂貫通孔を有し、上面を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層の前記上面の一部を被覆し、前記スペーサ貫通孔及び前記第1樹脂貫通孔の内部に形成され、前記第1配線層と電気的に接続された第3配線層と、
を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波回路基板。
【請求項6】
前記第1樹脂層の前記上面に形成され、前記基板の垂直方向から見て、前記第3配線層の一部に対応する位置に形成された第2樹脂貫通孔を有する第2樹脂層と、
前記第2樹脂層の一部を被覆し、前記第2樹脂貫通孔の内部に形成され、前記第3配線層と電気的に接続された第4配線層と、
を備える、
請求項5に記載の高周波回路基板。
【請求項7】
前記基板は、前記第1面とは反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に向けて前記基板を貫通する基板貫通孔とを有し、
前記基板の垂直方向から見て、前記第1樹脂貫通孔の位置は、前記基板貫通孔の位置と同じである、
請求項5又は請求項6に記載の高周波回路基板。
【請求項8】
前記第1スペーサとは異なる位置に配置され、前記基板と前記第1樹脂層とによって挟まれた第3スペーサを備える、
請求項5又は請求項6に記載の高周波回路基板。
【請求項9】
高周波回路基板の製造方法であって、
第1面を有するとともに誘電体又は半導体を含む材料で構成された基板を準備し、
前記基板の前記第1面上に、縁部を有する第1配線層を形成し、
前記第1配線層の前記縁部を跨がない領域に位置するように第1スペーサを形成する、
高周波回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路基板、及び、高周波回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、積層構造を有する小型の高周波回路基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミリ波帯等の高周波領域における高周波特性が優れる高周波回路基板の製造においては、微細な配線を形成することが可能なLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)や石英ガラス等を用いて、高周波回路基板の部品を製造することが好ましい。
【0005】
しかしながら、石英ガラス等の基板を用いて高周波回路基板を製造する場合には、基板と配線層との線膨張率の差が大きいため、配線層の上に樹脂層を積層する際に配線層の縁部において配線層が基板から剥離し易くなる。また、石英ガラスは脆弱な材料であり、石英ガラスからなる基板にクラック等が発生し易く、高周波回路基板の信頼性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、配線層の縁部において基板にクラックが発生することを防止し、基板から配線層が剥離することを防止し、信頼性の向上に寄与する高周波回路基板と、この高周波回路基板を製造する製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る高周波回路基板は、第1面を有し、誘電体又は半導体を含む材料で構成され、第1線膨張率を有する基板と、縁部を有し、前記第1面上に形成された第1配線層と、前記第1配線層の前記縁部を跨がない領域に位置し、前記第1線膨張率よりも大きい第2線膨張率を有する第1スペーサと、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る高周波回路基板によれば、前記第1スペーサが前記基板に接触しない状態(非接触状態)が維持される。高周波回路基板の周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因する前記第1スペーサと前記基板との間の応力集中が緩和され、第1配線層の縁部において前記基板にクラックが発生することを防止することができる。さらに、前記基板から前記第1配線層が剥離することを防止することができ、高周波回路基板の信頼性を向上させることができる。
【0009】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記基板の前記第1線膨張率と前記第1スペーサの前記第2線膨張率との差は、10以上であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記基板は、前記第1面とは反対の第2面を有し、前記高周波回路基板は、縁部を有し、前記第2面上に形成された第2配線層と、前記第2配線層の前記縁部を跨がない領域に位置する第2スペーサと、を備えてもよい。前記第2配線層は、前記第2面の一部が露出するように前記第2面上に部分的に形成されてもよいし、前記第2面の全面を覆うように形成されてもよい。前記第2配線層は、前記基板の最外周縁部に配置されてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記基板は、前記第1面から前記第2面に向けて前記基板を貫通する基板貫通孔を有し、前記高周波回路基板は、前記基板貫通孔の内部に形成され、前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する貫通導体を備えてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記第1スペーサは、前記第1スペーサを貫通するスペーサ貫通孔を有し、前記高周波回路基板は、前記第1スペーサ上に形成され、前記第1配線層及び前記基板から離間し、前記基板の垂直方向から見て前記スペーサ貫通孔の位置と同じ位置に形成された第1樹脂貫通孔を有し、上面を有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層の前記上面の一部を被覆し、前記スペーサ貫通孔及び前記第1樹脂貫通孔の内部に形成され、前記第1配線層と電気的に接続された第3配線層と、を備えてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記第1樹脂層の前記上面に形成され、前記基板の垂直方向から見て、前記第3配線層の一部に対応する位置に形成された第2樹脂貫通孔を有する第2樹脂層と、前記第2樹脂層の一部を被覆し、前記第2樹脂貫通孔の内部に形成され、前記第3配線層と電気的に接続された第4配線層と、を備えてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記基板は、前記第1面とは反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に向けて前記基板を貫通する基板貫通孔とを有し、前記基板の垂直方向から見て、前記第1樹脂貫通孔の位置は、前記基板貫通孔の位置と同じであってもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る高周波回路基板においては、前記第1スペーサとは異なる位置に配置され、前記基板と前記第1樹脂層とによって挟まれた第3スペーサを備えてもよい。第3スペーサは、前記基板の最外周縁部に配置されてもよいし、互いに隣り合う2つの前記第1スペーサの間に配置されてもよい。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る高周波回路基板の製造方法は、第1面を有するとともに誘電体又は半導体を含む材料で構成された基板を準備し、前記基板の前記第1面上に、縁部を有する第1配線層を形成し、前記第1配線層の前記縁部を跨がない領域に位置するように第1スペーサを形成する。
【0017】
本発明の一態様に係る高周波回路基板の製造方法によれば、前記第1スペーサが前記基板に接触しない状態(非接触状態)が維持される。高周波回路基板の周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因する前記第1スペーサと前記基板との間の応力集中が緩和され、第1配線層の縁部において前記基板にクラックが発生することを防止することができる。さらに、前記基板から前記第1配線層が剥離することを防止することができ、高周波回路基板の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記態様によれば、配線層の縁部において基板にクラックが発生することを防止し、基板から配線層が剥離することを防止し、信頼性の向上に寄与する高周波回路基板と、この高周波回路基板を製造する製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の第5実施形態に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図6A】本発明の第5実施形態に係る高周波回路基板を製造する製造方法を説明するための拡大断面図である。
【
図6B】本発明の第5実施形態に係る高周波回路基板を製造する製造方法を説明するための拡大断面図である。
【
図6C】本発明の第5実施形態に係る高周波回路基板を製造する製造方法を説明するための拡大断面図である。
【
図6D】本発明の第5実施形態に係る高周波回路基板を製造する製造方法を説明するための拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例1に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例2に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の変形例3に係る高周波回路基板を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る高周波回路基板について、図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明で用いる図面は、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0021】
本発明の実施形態に係る高周波回路基板は、例えば、高周波部品等のデバイスに用いられる。
【0022】
(第1実施形態に係る高周波回路基板)
図1に示すように、第1実施形態に係る高周波回路基板1Aは、基板2と、第1配線層3と、スペーサ4(第1スペーサ)とを有する。
【0023】
(基板2)
基板2は、第1面2Fと、第1面2Fとは反対の第2面2Sを有する。第1面2Fは、第1配線層3が形成される配線形成領域2FW(第1配線形成領域)と、第1配線層3が形成されない配線非形成領域2FN(第1配線非形成領域)とを有する。
基板2は、誘電体又は半導体を含む材料で構成されている。基板2が誘電体で構成されている場合、基板2を構成する材料としては、ガラス、セラミックス等が採用される。特に、ガラス材料の中でも、石英ガラスを基板2の材料として採用することが好ましい。
【0024】
基板2が半導体で構成されている場合には、公知のシリコン基板が採用される。
なお、基板2は、2種類以上の材料によって構成されてもよい。例えば、ガラス基板(誘電体)上にシリコン膜(半導体)が成膜された構造が採用されてもよいし、2以上の基板が貼り合わされた基板であってもよい。
【0025】
(第1配線層3)
第1配線層3は、金属材料により構成されており、フィルタや共振器を構成する。共振器は、電磁結合を利用した高周波電力や高周波信号の受信を行う。
第1配線層3は、第1面2F上に形成されている。第1配線層3は、縁部3Eと、スペーサ4が形成される領域3R(第1スペーサ形成領域)と、スペーサ4が形成されない非形成領域3N(第1スペーサ非形成領域)とを有する。
【0026】
縁部3Eの位置は、基板2の第1面2Fに対して垂直な方向である垂直方向(以下、基板2の垂直方向と称する)から見て、配線形成領域2FWと配線非形成領域2FNとの間の境界位置に一致する。領域3Rにはスペーサ4が形成されているが、スペーサ4は、縁部3Eを覆うように形成されていない。
【0027】
(スペーサ4)
スペーサ4は、本発明の第1スペーサに相当する。
スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成されており、つまり、スペーサ4は、第1配線層3の縁部3Eを跨がない領域3Rに形成されており、第1配線層3の縁部3Eを跨がって基板2の第1面2Fに接触するように形成されていない。換言すると、スペーサ4は、非形成領域3N及び縁部3Eを覆うように形成されておらず、基板2の第1面2F上に形成されていない。
【0028】
スペーサ4の構成材料及びスペーサ4の構造は、基板2の第1面2Fから第1配線層3が剥離しない効果が得られれば、適宜選択される。
例えば、スペーサ4を構成する材料は、金属、誘電体、又は半導体である。このような材料としては、公知の材料が用いられる。金属材料としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Sn等が挙げられ、また、この材料を含む合金が採用されてもよい。
【0029】
本実施形態においては、スペーサ4は、樹脂誘電体層である。樹脂誘電体層を構成する具体的な材料として、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機材料が挙げられる。また、このような材料は、複数種類の樹脂材料が混合された材料であってもよいし、シロキサンを含有する樹脂の一つ以上を含む材料であってもよい。本実施形態では、スペーサ4を構成する材料として、ポリイミド樹脂が採用されている。
【0030】
スペーサ4の形状は、球体(粒状)であってもよいし、
図1に示すような薄膜形状(層膜)であってもよい。
【0031】
基板2とスペーサ4との線膨張率の差は、10以上であり、基板2の線膨張率(第1線膨張率)よりも、スペーサ4の線膨張率(第2線膨張率)が大きい。
例えば、基板2が石英ガラス(線膨張率:0.5ppm/℃)であり、スペーサ4がポリイミド樹脂(線膨張率:15ppm/℃)であるので、10以上の線膨張率の差が得られている。
【0032】
次に、以上のように構成された第1実施形態に係る高周波回路基板1Aの作用及び効果について説明する。
高周波回路基板1Aによれば、スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成されており、第1配線層3の縁部3Eを跨がっていないので、スペーサ4が基板2に接触しない状態(非接触状態)が維持される。
【0033】
したがって、高周波回路基板1Aの周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因するスペーサ4と基板2との間の応力集中が緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Aの信頼性を向上させることができる。
【0034】
(第2実施形態に係る高周波回路基板)
図2に示すように、第2実施形態に係る高周波回路基板1Bは、上述した第1実施形態に係る高周波回路基板1Aを構成する基板2、第1配線層3、及びスペーサ4を備える。さらに、高周波回路基板1Bは、第2配線層5及びスペーサ6(第2スペーサ)を有する。
図2において、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0035】
(基板2)
基板2は、第2面2S上に、配線形成領域2SW(第2配線形成領域)と配線非形成領域2SN(第2配線非形成領域)とを有する。
【0036】
(第2配線層5)
第2配線層5は、第1配線層3と同様に、金属材料により構成されている。第2配線層5は、接地導体層として機能する。第2配線層5は、基板2の第2面2S上に形成されている。第2配線層5は、縁部5Eと、スペーサ6が形成される領域5R(第2スペーサ形成領域)と、スペーサ6が形成されない非形成領域5N(第2スペーサ非形成領域)とを有する。
【0037】
図2に示す例では、第2面2S上に1つの第2配線層5が形成されているが、複数の第2配線層5が第2面2S上に形成されてもよい。この場合、少なくとも1つの第2配線層5が接地導体層として機能する。
【0038】
第2配線層5は、第2面2Sの一部が露出するように第2面2S上に部分的に形成されてもよいし、第2面2Sの全面を覆うように形成されてもよい。第2配線層5は、基板2の第2面2Sにおける最外周縁部2Eに配置されてもよい。ここで、基板2の延在方向における端部である。
【0039】
基板2の第2面2Sは、第2配線層5が形成される配線形成領域2SWと、第2配線層5が形成されない配線非形成領域5SNとを有する。縁部5Eの位置は、基板2の垂直方向から見て、配線形成領域2SWと配線非形成領域2SNとの間の境界位置に一致する。領域5Rにはスペーサ6が形成されているが、スペーサ6は、縁部5Eを覆うように形成されていない。
【0040】
(スペーサ6)
スペーサ6は、本発明の第2スペーサに相当する。
スペーサ6は、第2配線層5の領域5Rのみに形成されており、つまり、スペーサ6は、第2配線層5の縁部5Eを跨がない領域5Rに形成されており、第2配線層5の縁部5Eを跨がって基板2の第2面2Sに接触するように形成されていない。換言すると、スペーサ6は、非形成領域5N及び縁部5Eを覆うように形成されておらず、基板2の第2面2S上に形成されていない。
【0041】
また、第1実施形態において説明した基板2とスペーサ4との線膨張率の差と同様に、基板2とスペーサ6との線膨張率の差は、10以上であり、基板2の線膨張率(第1線膨張率)よりも、スペーサ6の線膨張率(第2線膨張率)が大きい。
【0042】
スペーサ6は、スペーサ4と同様の構成を有し、スペーサ4と同様の材料で構成されている。なお、スペーサ6は、スペーサ4とは異なる材料で構成されてもよい。スペーサ6の形状は、球体(粒状)であってもよいし、
図2に示すような薄膜形状(層膜)であってもよい。
【0043】
次に、以上のように構成された第2実施形態に係る高周波回路基板1Bの作用及び効果について説明する。
高周波回路基板1Bによれば、スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成されており、第1配線層3の縁部3Eを跨がっていない。さらに、スペーサ6は、第2配線層5の領域5Rのみに形成されており、第2配線層5の縁部5Eを跨がっていない。このため、スペーサ4、6が基板2に接触しない状態(非接触状態)が維持される。
【0044】
したがって、高周波回路基板1Bの周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因するスペーサ4と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因するスペーサ6と基板2との間の応力集中とが緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3E及び第2配線層5の縁部5Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3及び第2配線層5が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Bの信頼性を向上させることができる。
【0045】
(第3実施形態に係る高周波回路基板)
図3に示すように、第3実施形態に係る高周波回路基板1Cは、上述した第2実施形態に係る高周波回路基板1Bを構成する基板2、第1配線層3、スペーサ4、第2配線層5、及びスペーサ6を有する。さらに、高周波回路基板1Cは、貫通導体7を有する。
図3において、第2実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0046】
(基板貫通孔2H)
本実施形態に係る高周波回路基板1Cにおいて、基板2は、第1面2Fから第2面2Sに向けて基板2を貫通する基板貫通孔2Hを有する。基板貫通孔2Hは、例えば、基板2の外周領域2Gに位置している。
【0047】
(貫通導体7)
貫通導体7は、基板貫通孔2Hの内部に形成され、第1配線層3と第2配線層5とを電気的に接続する。
図3に示す例では、貫通導体7は、複数の第1配線層3のうち、基板の外周領域2Gに位置する第1配線層3と第2配線層5とを電気的に接続している。
貫通導体7は、第1配線層3及び第2配線層5と同様に、金属材料により構成されている。
【0048】
次に、以上のように構成された第3実施形態に係る高周波回路基板1Cの作用及び効果について説明する。
高周波回路基板1Cによれば、スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成されており、第1配線層3の縁部3Eを跨がっていない。さらに、スペーサ6は、第2配線層5の領域5Rのみに形成されており、第2配線層5の縁部5Eを跨がっていない。このため、スペーサ4、6が基板2に接触しない状態(非接触状態)が維持される。
【0049】
したがって、高周波回路基板1Cの周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因するスペーサ4と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因するスペーサ6と基板2との間の応力集中とが緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3E及び第2配線層5の縁部5Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3及び第2配線層5が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Cの信頼性を向上させることができる。
【0050】
さらに、上記の効果に加えて、第1配線層3と第2配線層5とを貫通導体7によって電気的に接続することができる。したがって、第1面2Fに形成される配線構造と第2面2Sに形成される配線構造との導通を得ることが可能となる。
【0051】
(第4実施形態に係る高周波回路基板)
図4に示すように、第4実施形態に係る高周波回路基板1Dは、上述した第1実施形態に係る高周波回路基板1Aを構成する基板2、第1配線層3、及びスペーサ4を備える。さらに、高周波回路基板1Dは、複数の樹脂層8、10と複数の配線層9、11とが交互に積層されて構成されたビルドアップ構造を有する。このビルドアップ構造は、スペーサ4とは異なるスペーサ12を備える。
なお、
図4に示す例では、2つの樹脂層と2つの配線層とが示されているが、樹脂層の数、及び、配線層の数は、3以上であってもよい。
図2において、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0052】
(スペーサ4)
スペーサ4は、スペーサ4を貫通するスペーサ貫通孔4Hと、樹脂層が積層される上面4Tを有する。なお、基板2の第1面2Fの上方に形成された複数のスペーサ4のうち、全てのスペーサ4にスペーサ貫通孔4Hを形成する必要はなく、複数のスペーサ4のうち一部のスペーサ4がスペーサ貫通孔4Hを有していればよい。
スペーサ4は、第1樹脂層8が基板2に接触しないように第1樹脂層8と基板2との距離を維持することができれば、スペーサ4の具体的な構造は限定されない。
【0053】
(スペーサ12)
スペーサ12は、本発明の第3スペーサに相当する。
スペーサ12は、スペーサ4(第1スペーサ)とは異なる位置に配置されており、基板2の最外周縁部2Eに位置し、基板2と第1樹脂層8とによって挟まれている。具体的に、第1配線層3の領域3R上に形成されているスペーサ4とは異なり、スペーサ12は、第1配線層3の領域3Rには形成されておらず、第1配線層3を跨ぐように形成されていない。
【0054】
スペーサ12の下端は、基板2の第1面2Fに接触している。スペーサ12の上端は、第1樹脂層8の下面8Bに接触している。スペーサ12は、基板2の最外周縁部2Eにおいて、第1樹脂層8と基板2とが接触することを防止する。さらに、スペーサ12は、第1樹脂層8が第1配線層3の縁部3Eに跨ることを防止する。
【0055】
スペーサ12の材料としては、例えば、スペーサ4と同様の材料が採用される。基板2とスペーサ12との線膨張率の差が大きくても、スペーサ12は、第1配線層3に接触していないため、第1配線層3の縁部3Eにおいて基板2にクラックが発生することはない。また、基板2から第1配線層3が剥離することもない。
なお、スペーサ12は、スペーサ4とは異なる材料で構成されてもよい。
【0056】
(第1樹脂層8)
第1樹脂層8は、スペーサ4上及びスペーサ12上に形成され、第1配線層3及び基板2から離間している。第1樹脂層8が基板2から離間する距離は、スペーサ4及び第1配線層3の合計の高さに等しく、スペーサ12の高さに等しい。つまり、スペーサ4及び第1配線層3の積層体、及び、スペーサ12は、ギャップ形成部材として機能する。
【0057】
第1樹脂層8は、第1樹脂貫通孔8Hを有している。この第1樹脂貫通孔8Hは、基板2の垂直方向から見て、スペーサ貫通孔4Hの位置と同じ位置に形成されている。また、第1樹脂層8は、上面8Tを有する。
【0058】
第1樹脂層8は、樹脂フィルムで構成されている。公知のラミネート処理を用いて、樹脂フィルムをスペーサ4の上面4Tに貼り付けることにより、第1樹脂層8が形成されている。第1樹脂層8と第1面2Fとの間において、スペーサ4及び第1配線層3が配置されていない部分に空間が形成される。さらに、スペーサ12が配置されていない部分にも空間が形成される。
【0059】
(第3配線層9)
第3配線層9は、第1樹脂層8の上面8Tの一部を被覆する接続層9Cと、スペーサ貫通孔4H及び第1樹脂貫通孔8Hの内部に形成された貫通導体層9Pとを有する。第3配線層9は、第1配線層3と電気的に接続されている。第3配線層9は、第1配線層3及びと同様の金属材料により構成されている。
【0060】
(第2樹脂層10)
第2樹脂層10は、第1樹脂層8の上面8Tに形成され、基板2の垂直方向から見て、第3配線層9の一部に対応する位置に形成された第2樹脂貫通孔10Hを有する。第2樹脂貫通孔10Hは、基板2の垂直方向から見て、第1樹脂貫通孔8Hの位置からずれた位置に形成されているが、第1樹脂貫通孔8Hの位置と同じ位置に形成されてもよい。また、第2樹脂層10は、上面10Tを有する。第2樹脂層10は、公知のコーティング方法を用いて形成された樹脂コーティングである。
【0061】
(第4配線層11)
第4配線層11は、第2樹脂層10の上面10Tの一部を被覆する接続層11Cと、第2樹脂貫通孔10Hの内部に形成された貫通導体層11Pとを有する。第4配線層11は、第3配線層9と電気的に接続されている。第4配線層11は、第1配線層3及び第3配線層9と同様の金属材料により構成されている。
【0062】
次に、以上のように構成された第4実施形態に係る高周波回路基板1Dの作用及び効果について説明する。
高周波回路基板1Dによれば、スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成されており、第1配線層3の縁部3Eを跨がっていない。さらに、基板2の最外周縁部2Eに形成されたスペーサ12は、第1樹脂層8を支持し、第1樹脂層8と基板2とを離間させる。
このため、スペーサ4が基板2に接触しない状態(非接触状態)が維持される。さらに、第1配線層3と第1樹脂層8との間にスペーサ4が配置されているので、第1樹脂層8が第1配線層3の縁部3Eを跨がっていない。
【0063】
さらに、基板2の最外周縁部2Eに配置されたスペーサ12によって、第1樹脂層8における撓みの発生を防止することができ、第1樹脂層8が基板2に接触することを防止することができ、かつ、第1樹脂層8が第1配線層3の縁部3Eに接触することを防止することができる。
【0064】
したがって、高周波回路基板1Dの周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因するスペーサ4と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因する第1樹脂層8と基板2との間の応力集中とが緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Dの信頼性を向上させることができる。
【0065】
さらに、上記の効果に加えて、第1樹脂層8、第3配線層9、第2樹脂層10、及び第4配線層11によって構成されたビルドアップ構造を実現することができる。
特に、高周波回路基板1Dの構造のように、複数の配線層と複数の樹脂層が交互に積層されたビルドアップ構造においては、スペーサ12を設けたことによって複数の樹脂層のうち基板2に最も近い第1樹脂層8の強度を向上することができ、つまり、ビルドアップ構造を有する高周波回路基板の強度向上に寄与する。
【0066】
(第5実施形態に係る高周波回路基板)
図5に示すように、第5実施形態に係る高周波回路基板1Eは、上述した第4実施形態に係る高周波回路基板1Dのビルドアップ構造を有する。さらに、高周波回路基板1Eは、上述した第3実施形態に係る高周波回路基板1Cを構成する、第2配線層5、スペーサ6、及び貫通導体7を有する。
図5において、第3実施形態及び第4実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0067】
次に、以上のように構成された第5実施形態に係る高周波回路基板1Eの作用及び効果について説明する。
高周波回路基板1Eによれば、スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成されており、第1配線層3の縁部3Eを跨がっていない。さらに、スペーサ6は、第2配線層5の領域5Rのみに形成されており、第2配線層5の縁部5Eを跨がっていない。また、基板2の最外周縁部2Eに形成されたスペーサ12は、第1樹脂層8を支持し、第1樹脂層8と基板2とを離間させる。
このため、スペーサ4、6が基板2に接触しない状態(非接触状態)が維持される。さらに、第1配線層3と第1樹脂層8との間にスペーサ4が配置されているので、第1樹脂層8が第1配線層3の縁部3Eを跨がっていない。
【0068】
したがって、高周波回路基板1Eの周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因するスペーサ4と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因するスペーサ6と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因する第1樹脂層8と基板2との間の応力集中とが緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3E及び第2配線層5の縁部5Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3及び第2配線層5が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Eの信頼性を向上させることができる。
【0069】
さらに、上記の効果に加えて、第1樹脂層8、第3配線層9、第2樹脂層10、及び第4配線層11によって構成されたビルドアップ構造を実現することができる。
特に、高周波回路基板1Eの構造のように、複数の配線層と複数の樹脂層が交互に積層されたビルドアップ構造においては、スペーサ12を設けたことによって複数の樹脂層のうち基板2に最も近い第1樹脂層8の強度を向上することができ、つまり、ビルドアップ構造を有する高周波回路基板の強度向上に寄与する。
【0070】
また、第1配線層3と第2配線層5とを貫通導体7によって電気的に接続することができる。したがって、第1面2Fに積層された積層配線構造と第2面2Sに形成される配線構造との導通を得ることが可能となる。
【0071】
(第5実施形態に係る高周波回路基板の製造方法)
次に、
図5及び
図6A~
図6Dを参照し、第5実施形態に係る高周波回路基板1Eの製造方法を説明する。
図5及び
図6A~
図6Dにおいて、第1実施形態~第5実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
なお、第5実施形態に係る高周波回路基板1Eを構成する第1配線層3、スペーサ4、6、第2配線層5、貫通導体7、第1樹脂層8、第3配線層9、第2樹脂層10、及び第4配線層11の形成方法としては、成膜工程やマスクを介したエッチング工程等の公知のパターニング方法が採用される。このため、各層の説明において、各層を形成する形成方法は省略する。
【0072】
まず、
図6Aに示すように、第1面2F、第2面2S、及び、第1面2Fから第2面2Sに向けて基板2を貫通する基板貫通孔2Hを有する基板2を用意する。基板2は、誘電体又は半導体で構成されている。
【0073】
次に、
図6Bに示すように、第1面2Fの表面、第2面2Sの表面、及び基板貫通孔2Hの内部表面に、第1配線層3、第2配線層5、及び貫通導体7を各々形成する。
これにより、貫通導体7を介して、第1配線層3が第2配線層5に電気的に接続される。
第1配線層3は、縁部3Eを有する。第2配線層5は、縁部5Eを有する。
【0074】
次に、
図6Cに示すように、第1配線層3の縁部3Eを跨がない領域3Rに位置するように、第1配線層3上にスペーサ4を形成する。同様に、第2配線層5の縁部5Eを跨がない領域5Rに位置するように、第2配線層5上にスペーサ6を形成する。さらに、基板2の最外周縁部2Eにスペーサ12を形成する。このスペーサ12は、第1配線層3の縁部3Eを跨がないように形成される。
【0075】
これによって、スペーサ4は、第1配線層3の領域3Rのみに形成される。つまり、スペーサ4は、第1配線層3の縁部5Eを跨がない領域3Rに形成される。換言すると、スペーサ4は、非形成領域3N及び縁部3Eを覆うように形成されておらず、基板2の第1面2F上に形成されていない。
【0076】
また、スペーサ6は、第2配線層5の領域5Rのみに形成される。つまり、スペーサ6は、第2配線層5の縁部5Eを跨がない領域5Rに形成される。換言すると、スペーサ6は、非形成領域5N及び縁部5Eを覆うように形成されておらず、基板2の第2面2S上に形成されていない。
【0077】
次に、
図6Dに示すように、第1配線層3及び基板2から離間するように、フィルム状の第1樹脂層8をスペーサ4及びスペーサ12上に接着(形成)する。具体的には、ロール状の樹脂フィルムを基板2の第1面2Fに対向させた状態で、この樹脂フィルムを第1面2Fに対してラミネートすることによって、第1樹脂層8が形成される。第1樹脂層8と第1面2Fとの間において、スペーサ4及び第1配線層3が配置されていない部分、及び、スペーサ12が配置されていない部分に空間が形成される。このような第1樹脂層8の形成工程は、大気圧雰囲気で行われる。
【0078】
その後、開口パターンを有するマスクを用いた公知のエッチング方法により、第1樹脂層8に第1樹脂貫通孔8H(第1貫通孔13)を形成し、スペーサ4にスペーサ貫通孔4H(第1貫通孔13)を形成する。これにより、第1配線層3は、第1貫通孔13(4H、8H)の内部に露出する。
【0079】
第1樹脂貫通孔8H及びスペーサ貫通孔4Hは、一括的に形成してもよいし、別々の工程により形成してもよい。上記工程によって、第1樹脂貫通孔8Hは、基板2の垂直方向から見て、スペーサ貫通孔4Hの位置と同じ位置に形成される。
【0080】
その後、第1樹脂層8の上面8Tの一部を被覆するように第1貫通孔13(4H、8H)の内部に第3配線層9(接続層9C、貫通導体層9P)を形成することによって、第1配線層3と第3配線層9とを電気的に接続する。
【0081】
次に、
図5に示すように、第1樹脂層8の上面8Tに第2樹脂層10を形成する。
第2樹脂層10は、公知のコーティング方法を用いて形成された樹脂コーティングである。第2樹脂層10を形成することによって、第2樹脂層10よりも下層(第2樹脂層10と基板2との間に位置する層)の表面が凹凸形状を有していたとしても、第2樹脂層10の上面10Tを平坦にすることが可能となる。
【0082】
その後、開口パターンを有するマスクを用いた公知のエッチング方法により、第2樹脂層10に第2樹脂貫通孔10H(第2貫通孔)を形成する。この際、基板2の垂直方向から見て、第3配線層9の一部の位置に対応するように、第2樹脂層10に第2樹脂貫通孔10Hを形成する。これにより、第3配線層9は、第2樹脂貫通孔10Hの内部に露出する。
【0083】
その後、第2樹脂層10の上面10Tの一部を被覆するように第2樹脂貫通孔10Hの内部に第4配線層11(接続層11C、貫通導体層11P)を形成することによって、第3配線層9と第4配線層11とを電気的に接続する。
【0084】
上述した高周波回路基板1Eの製造方法によれば、第5実施形態に係る高周波回路基板1Eを実現することができる。したがって、高周波回路基板1Eの周囲の温度に変化が生じたとしても、線膨張率の差に起因するスペーサ4と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因するスペーサ6と基板2との間の応力集中と、線膨張率の差に起因する第1樹脂層8と基板2との間の応力集中とが緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3E及び第2配線層5の縁部5Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3及び第2配線層5が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Eの信頼性を向上させることができる。
【0085】
さらに、上記の効果に加えて、第1樹脂層8、第3配線層9、第2樹脂層10、及び第4配線層11によって構成されたビルドアップ構造を実現することができる。
【0086】
また、第1配線層3と第2配線層5とを貫通導体7によって電気的に接続することができる。したがって、第1面2Fに積層された積層配線構造と第2面2Sに形成される配線構造との導通を得ることが可能となる。
【0087】
(第1実施形態~第5実施形態に係る高周波回路基板の変形例)
次に、上述した実施形態に係る高周波回路基板の変形例1~3について説明する。
図7~
図9において、第1実施形態~第5実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0088】
(変形例1に係る高周波回路基板)
変形例1に係る高周波回路基板1Fは、スペーサ6の構造の点で、第3実施形態に係る高周波回路基板1Cとは異なる。
【0089】
図7に示すように、基板2の最外周領域2GEに基板貫通孔2Hが形成されている場合、基板2の垂直方向から見て、スペーサ6は、基板貫通孔2Hの内側における内側領域2Iに形成されてもよい。この場合においても、スペーサ6は、第2配線層5の縁部5Eを跨がない領域5Rに形成されており、第2配線層5の縁部5Eを跨がって基板2の第2面2Sに接触するように形成されていない。換言すると、スペーサ6は、非形成領域5N及び縁部5Eを覆うように形成されておらず、基板2の第2面2S上に形成されていない。
【0090】
(変形例2に係る高周波回路基板)
変形例2に係る高周波回路基板1Gは、スペーサ12の配置の点で、第4実施形態に係る高周波回路基板1Dとは異なる。
【0091】
図8に示すように、高周波回路基板1Gは、基板2の最外周縁部2Eに位置するスペーサ12(第3スペーサ)だけでなく、互いに隣り合う2つのスペーサ4の間に配置されているスペーサ12(第3スペーサ)を有する。このスペーサ12(第3スペーサ)は、スペーサ4(第1スペーサ)とは異なる位置に配置されており、基板2と第1樹脂層8とによって挟まれている。第1配線層3の領域3R上に形成されているスペーサ4とは異なり、スペーサ12は、第1配線層3の領域3Rには形成されておらず、第1配線層3を跨ぐように形成されていない。スペーサ12の下端は、基板2の第1面2Fに接触している。スペーサ12の上端は、第1樹脂層8の下面8Bに接触している。
【0092】
基板2の最外周縁部2E及び基板2の第1面2F上に配置されるスペーサ12の個数は、特に限定されない。互いに隣接する2つの第1配線層3の間に少なくとも1つのスペーサ12が配置されていればよい。第1面2F上において、スペーサ12が配置される配置パターンは、適宜選択される。
【0093】
このような構成によれば、スペーサ12によって第1樹脂層8が支持されるので、第1樹脂層8における撓みの発生を防止することができる。特に、高周波回路基板が複数の配線層と複数の樹脂層が交互に積層されたビルドアップ構造を有する場合には、複数の樹脂層のうち基板2に最も近い第1樹脂層8の強度を向上することができ、つまり、ビルドアップ構造を有する高周波回路基板の強度向上に寄与する。
【0094】
(変形例3に係る高周波回路基板)
変形例3に係る高周波回路基板1Hは、貫通孔の配置の点で、第5実施形態に係る高周波回路基板1Eとは異なる。
【0095】
図9に示すように、高周波回路基板1Hにおいて、基板2の垂直方向から見て、基板貫通孔2Hの位置、スペーサ貫通孔4Hの位置、第1樹脂貫通孔8Hの位置、及び第2樹脂貫通孔10Hの位置は、同じである。
ここで、「位置が同じ」とは、基板2の垂直方向から見て、複数の貫通孔が重なっていることを意味し、貫通孔の径の大きさが互いに異なってもよい。「複数の貫通孔が重なる」とは、複数の貫通孔が部分的に重なっていることを意味する。
【0096】
貫通孔2H、4H、8H、10Hの位置が同じであるため、この貫通孔の内部に形成される貫通導体7、貫通導体層9P、及び貫通導体層11Pの位置が同じになる。このため、接続層11Cと第2配線層5とを最短距離で接続することができるので、寄生容量の発生を最小限にすることができる。
なお、変形例3では、4つの貫通孔2H、4H、8H、10Hの位置が同じである場合を説明したが、少なくとも、第1樹脂貫通孔8Hの位置と、基板貫通孔2Hの位置とが同じであればよい。この場合であっても、寄生容量の発生を抑制する効果が得られる。
【0097】
上述した変形例1~3に示す構造は、第3実施形態又は第5実施形態に係る高周波回路基板に適用することができる。
したがって、高周波回路基板1Eの周囲の温度に変化が生じたとしても、スペーサ4と基板2との間、或いは、スペーサ6と基板2との間、或いは、第1樹脂層8と基板2との間にて応力集中が緩和される。これにより、第1配線層3の縁部3E及び第2配線層5の縁部5Eにおいて基板2にクラックが発生することを防止することができる。さらに、基板2から第1配線層3及び第2配線層5が剥離することを防止することができ、高周波回路基板1Eの信頼性を向上させることができる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0099】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H…高周波回路基板、2…基板、2F…第1面、2FN…配線非形成領域、2FW…配線形成領域、2G…外周領域、2GE…最外周領域、2H…基板貫通孔(貫通孔)、2I…内側領域、2S…第2面、2SN…配線非形成領域、2SW…配線形成領域、3…第1配線層、3E…縁部、3N…非形成領域、3R…領域、4…スペーサ(第1スペーサ)、4H…スペーサ貫通孔(貫通孔、第1貫通孔)、4T…上面、5…第2配線層、5E…縁部、5N…非形成領域、5R…領域、5SN…配線非形成領域、6…スペーサ(第2スペーサ)、7…貫通導体、8…第1樹脂層(樹脂層)、8B…下面、8H…第1樹脂貫通孔(貫通孔、第1貫通孔)、8T…上面、9…第3配線層(配線層)、9C…接続層、9P…貫通導体層、10…第2樹脂層(樹脂層)、10H…第2樹脂貫通孔(貫通孔)、10T…上面、11…第4配線層(配線層)、11C…接続層、11P…貫通導体層、12…スペーサ(第3スペーサ)、13…第1貫通孔。