(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122078
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】多層配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019153
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】土谷 信之介
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA43
5E316BB20
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD22
5E316EE31
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】破損が起こりにくい多層配線基板を提供する。
【解決手段】多層配線基板10は、コア基板1と、コア基板1の少なくとも一方の面に設けられたビルドアップ層2と、金属で形成された端面導体層3と、を備える。ビルドアップ層2は、1以上の絶縁層21と、1以上の主面導体層22とが積層されて構成される。平面視において、ビルドアップ層2は、コア基板1に包含される。端面導体層3は、コア基板1の端面1bとビルドアップ層2の端面2bのうちビルドアップ層2の端面2bのみに設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板と、
前記コア基板の少なくとも一方の面に設けられたビルドアップ層と、
金属で形成された端面導体層と、を備え、
前記ビルドアップ層は、1以上の絶縁層と、1以上の主面導体層とが積層されて構成され、
平面視において、前記ビルドアップ層は前記コア基板に包含され、
前記端面導体層は、前記コア基板の端面と前記ビルドアップ層の端面のうち前記ビルドアップ層の端面のみに設けられている、多層配線基板。
【請求項2】
前記端面導体層は、1以上の前記主面導体層に接して形成されている、請求項1記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記ビルドアップ層は、平面視において矩形状とされ、
前記端面導体層は、前記ビルドアップ層の側面のうち、平面視において角部を包含する領域に形成されている、請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記ビルドアップ層は、前記絶縁層を複数有し、
厚さ方向に隣り合う2つの前記絶縁層において、前記コア基板からの距離が小さい前記絶縁層は、前記コア基板からの距離が大きい前記絶縁層を平面視において包含している、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記絶縁層に、前記絶縁層の一方の面から他方の面にかけて1以上の貫通配線が形成され、
前記貫通配線の少なくとも1つは、前記端面導体層に近接し、かつ前記端面導体層から離れて設けられている、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記ビルドアップ層は、前記絶縁層を複数有し、
厚さ方向に隣り合う2つの前記絶縁層に、それぞれ前記絶縁層の一方の面から他方の面にかけて1以上の貫通配線が形成され、
2つの前記絶縁層のおのおのの少なくとも1つの前記貫通配線は、前記端面導体層に近接し、かつ前記端面導体層から離れて設けられた近接貫通配線であり、
2つの前記絶縁層のうち一方の前記絶縁層の前記近接貫通配線は、平面視における位置が、2つの前記絶縁層のうち他方の前記絶縁層の前記近接貫通配線と異なる、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルドアップ構造を有する多層配線基板が用いられている。ビルドアップ構造を有する多層配線基板は、例えば、コア層と、ビルドアップ層とを備える。ビルドアップ層は、絶縁層と導体層とを多層に積層した構造を有する。コア層とビルドアップ層の端面には、エポキシ樹脂等からなる端面層が設けられることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の積層基板では、温度変化によって導体層の剥離などの破損が起きる可能性があった。
【0005】
本発明の一態様は、破損が起こりにくい多層配線基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、コア基板と、前記コア基板の少なくとも一方の面に設けられたビルドアップ層と、金属で形成された端面導体層と、を備え、前記ビルドアップ層は、1以上の絶縁層と、1以上の主面導体層とが積層されて構成され、平面視において、前記ビルドアップ層は前記コア基板に包含され、前記端面導体層は、前記コア基板の端面と前記ビルドアップ層の端面のうち前記ビルドアップ層の端面のみに設けられている、多層配線基板を提供する。
【0007】
前記構成によれば、端面導体層は金属で形成されているため、樹脂に比べて線膨張係数が小さい。そのため、絶縁層の端部などにおいて、温度変化による樹脂の膨張または収縮に起因する絶縁層の変位を抑制できる。したがって、主面導体層の剥離などの破損は起こりにくくなる。よって、多層配線基板の信頼性を高めることができる。
【0008】
前記端面導体層は、1以上の前記主面導体層に接して形成されていることが好ましい。
【0009】
前記ビルドアップ層は、平面視において矩形状とされ、前記端面導体層は、前記ビルドアップ層の側面のうち、平面視において角部を包含する領域に形成されていることが好ましい。
【0010】
前記ビルドアップ層は、前記絶縁層を複数有し、厚さ方向に隣り合う2つの前記絶縁層において、前記コア基板からの距離が小さい前記絶縁層は、前記コア基板からの距離が大きい前記絶縁層を平面視において包含していてもよい。
【0011】
前記多層配線基板は、前記絶縁層に、前記絶縁層の一方の面から他方の面にかけて1以上の貫通配線が形成され、前記貫通配線の少なくとも1つは、前記端面導体層に近接し、かつ前記端面導体層から離れて設けられていてもよい。
【0012】
前記ビルドアップ層は、前記絶縁層を複数有し、厚さ方向に隣り合う2つの前記絶縁層に、それぞれ前記絶縁層の一方の面から他方の面にかけて1以上の貫通配線が形成され、2つの前記絶縁層のおのおのの少なくとも1つの前記貫通配線は、前記端面導体層に近接し、かつ前記端面導体層から離れて設けられた近接貫通配線であり、2つの前記絶縁層のうち一方の前記絶縁層の前記近接貫通配線は、平面視における位置が、2つの前記絶縁層のうち他方の前記絶縁層の前記近接貫通配線と異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、破損が起こりにくい多層配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の多層配線基板の模式的な断面図である。
【
図2】第1実施形態の多層配線基板の第1の例の平面図である。
【
図3】第1実施形態の多層配線基板の第2の例の平面図である。
【
図4】第1実施形態の多層配線基板を製造する方法を説明する工程図である。
【
図7】第2実施形態の多層配線基板の模式的な断面図である。
【
図8】第3実施形態の多層配線基板の模式的な断面図である。
【
図9】第4実施形態の多層配線基板の模式的な断面図である。
【
図10】第5実施形態の多層配線基板の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[多層配線基板](第1実施形態)
図1は、第1実施形態の多層配線基板10の模式的な断面図である。
図2は、多層配線基板10の第1の例の平面図である。以下、
図1に即して各構成の位置関係を規定する。
図1では、ビルドアップ層2はコア基板1の上に位置する。ここで定めた位置関係は、多層配線基板10の使用時の姿勢を限定しない。コア基板1の主面1aと垂直な方向から見ることを平面視という。
【0016】
図1に示すように、多層配線基板10は、コア基板1と、ビルドアップ層2と、端面導体層3とを備える。
コア基板1は、絶縁性の基板である。コア基板1は、例えば、Si、ガラス、カーボン系材料などで形成されている。コア基板1は、絶縁樹脂層21および主面導体層22に比べて線膨張係数(線膨張率)が小さい材料で構成されていることが好ましい。なお、線膨張係数(線膨張率)は、例えば、JIS K7197、JIS Z2285などに記載の試験方法に準拠して測定することができる。
【0017】
「1a」は、コア基板1の主面である。「1b」は、コア基板1の端面(側面)である。
図2に示すように、コア基板1は、例えば、平面視において矩形状である。
【0018】
図1に示すように、ビルドアップ層2は、1以上の絶縁樹脂層(絶縁層)21と、1以上の主面導体層22とが積層された構造を有する。本実施形態では、ビルドアップ層2は、複数(具体的には3つ)の絶縁樹脂層21と、複数(具体的には4つ)の主面導体層22とが多層に積層された構造を有する。
【0019】
絶縁樹脂層21と主面導体層22とは厚さ方向(
図1における上下方向)に交互に並ぶ。「2b」は、ビルドアップ層2の端面(側面)である。ビルドアップ層2の端面2bは、ビルドアップ層2の絶縁樹脂層21および主面導体層22の面内方向の端面である。
【0020】
複数の絶縁樹脂層21のうち、最もコア基板1に近い絶縁樹脂層21を「第1絶縁樹脂層21A」という。2番目にコア基板1に近い絶縁樹脂層21を「第2絶縁樹脂層21B」という。3番目にコア基板1に近い絶縁樹脂層21を「第3絶縁樹脂層21C」という。3つの絶縁樹脂層21は、下から上に、第1絶縁樹脂層21A、第2絶縁樹脂層21B、第3絶縁樹脂層21Cの順に並ぶ。
【0021】
絶縁樹脂層21は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂で形成することができる。絶縁樹脂層21の構成樹脂は、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化プラスチックでもよい。
【0022】
複数の主面導体層22のうち、最もコア基板1に近い主面導体層22を「第1主面導体層22A」という。2番目にコア基板1に近い主面導体層22を「第2主面導体層22B」という。3番目にコア基板1に近い主面導体層22を「第3主面導体層22C」という。4番目にコア基板1に近い主面導体層22を「第4主面導体層22D」という。
【0023】
主面導体層22は、導電性材料、例えば、銅、銀、金などの金属を含む材料で構成される。主面導体層22は、金属めっき層、金属箔などで形成されていてもよい。
【0024】
3つの絶縁樹脂層21と、4つの主面導体層22とは、下から上に、第1主面導体層22A、第1絶縁樹脂層21A、第2主面導体層22B、第2絶縁樹脂層21B、第3主面導体層22C、第3絶縁樹脂層21C、第4主面導体層22Dの順に積層されている。
【0025】
第1主面導体層22Aは、コア基板1の主面1aに形成されている。
第1絶縁樹脂層21Aは、コア基板1の主面1aおよび第1主面導体層22Aの上に形成されている。第1絶縁樹脂層21Aは、平面視において第1主面導体層22Aの一部または全部を包含する。第1絶縁樹脂層21Aの平面視形状は、矩形状である(
図2参照)。第1絶縁樹脂層21Aは、主面1aのうち一部の領域に形成されている。
【0026】
第1絶縁樹脂層21Aには、1または複数の第1貫通孔23A(貫通孔23)が形成されている。第1貫通孔23Aは、第1絶縁樹脂層21Aを一方の面から他方の面にかけて貫通する。
第1貫通孔23Aには、第1貫通配線24A(貫通配線24)が形成されている。第1貫通配線24Aは、例えば、第1主面導体層22Aと、第2主面導体層22Bとを電気的に接続する。貫通配線24は、「主貫通配線」の一例である。
【0027】
貫通配線24と端面導体層3との間には、絶縁樹脂層21の一部である樹脂が介在していてもよい。貫通配線24と端面導体層3との離間距離(貫通配線24と端面導体層3との間に介在する樹脂の厚さ)は、特に限定されないが、貫通配線24の平均外径より大きくてもよい。
【0028】
第2主面導体層22Bは、第1絶縁樹脂層21Aの表面である主面21Aa(コア基板1に対向する面とは反対の面。
図1では上面)に形成されている。
【0029】
第2絶縁樹脂層21Bは、第1絶縁樹脂層21Aの主面21Aaおよび第2主面導体層22Bの上に形成されている。第2絶縁樹脂層21Bは、平面視において第2主面導体層22Bの一部または全部を包含する。第2絶縁樹脂層21Bの平面視形状は、矩形状である(
図2参照)。第2絶縁樹脂層21Bは、平面視において第1絶縁樹脂層21Aと同形である。
【0030】
第2絶縁樹脂層21Bには、1または複数の第2貫通孔23B(貫通孔23)が形成されている。第2貫通孔23Bは、第2絶縁樹脂層21Bを一方の面から他方の面にかけて貫通する。
第2貫通孔23Bには、第2貫通配線24B(貫通配線24)が形成されている。第2貫通配線24Bは、例えば、第2主面導体層22Bと、第3主面導体層22Cとを電気的に接続する。
【0031】
第3主面導体層22Cは、第2絶縁樹脂層21Bの表面である主面21Ba(第1絶縁樹脂層21Aに対向する面とは反対の面。
図1では上面)に形成されている。
【0032】
第3絶縁樹脂層21Cは、第2絶縁樹脂層21Bの主面21Baおよび第3主面導体層22Cの上に形成されている。第3絶縁樹脂層21Cは、平面視において第2主面導体層22Bの一部または全部を包含する。第3絶縁樹脂層21Cの平面視形状は、矩形状である(
図2参照)。第3絶縁樹脂層21Cは、平面視において第2絶縁樹脂層21Bと同形である。
【0033】
第3絶縁樹脂層21Cには、1または複数の第3貫通孔23C(貫通孔23)が形成されている。第3貫通孔23Cは、第3絶縁樹脂層21Cを一方の面から他方の面にかけて貫通する。
第3貫通孔23Cには、第3貫通配線24C(貫通配線24)が形成されている。第3貫通配線24Cは、例えば、第3主面導体層22Cと、第4主面導体層22Dとを電気的に接続する。
【0034】
第4主面導体層22Dは、第3絶縁樹脂層21Cの表面である主面21Ca(第2絶縁樹脂層21Bに対向する面とは反対の面。
図1では上面)に形成されている。
【0035】
第1貫通配線24A、第2貫通配線24Bおよび第3貫通配線24Cは、導電性材料、例えば、銅、銀、金などの金属を含む材料で構成される。第1貫通配線24A、第2貫通配線24Bおよび第3貫通配線24Cは、金属めっきなどで形成することができる。
【0036】
ビルドアップ層2は、平面視においてコア基板1に包含されている(
図2参照)。
【0037】
端面導体層3は、コア基板1の端面1bとビルドアップ層2の端面2bのうち、ビルドアップ層2の端面2bのみに設けられている。「端面1bと端面2bのうち端面2bのみに設けられている」とは、端面導体層3がコア基板1の端面1bには形成されておらず、ビルドアップ層2の端面2bのみに形成されていることを意味する。端面導体層3は、端面2bの全域に設けられていてもよいし、端面2bの一部領域に設けられていてもよい。すなわち、端面導体層3は、端面2bの少なくとも一部に設けられている。
【0038】
端面導体層3は、導電性材料、例えば、銅、銀、金などの金属で構成される。端面導体層3は、例えば、スパッタ法およびめっき法などによって形成することができる。
【0039】
端面導体層3は、主面導体層22(22A~22D)のうち1以上に接していることが望ましい。端面導体層3は、主面導体層22(22A~22D)のうち、少なくとも上下に隣り合う2つに接していることが望ましい。
【0040】
本実施形態では、端面導体層3は、ビルドアップ層2の端面2bの全高さ範囲にわたって形成されている。端面導体層3は、主面導体層22(22A~22D)の端面に接している。なお、端面導体層3は、ビルドアップ層2の端面2bの一部の高さ範囲にのみ形成されていてもよい。
【0041】
図2に示すように、端面導体層3は、平面視において、ビルドアップ層2の端面2bに、全周にわたって形成されていることが望ましい。
【0042】
端面導体層3は、端面2bの全周ではなく一部のみに形成されていてもよい。
図3は、多層配線基板10の第2の例である多層配線基板510の平面図である。
図3に示すように、多層配線基板510は、端面導体層3に代えて、端面導体層503を備える。端面導体層503は、平面視において、ビルドアップ層2の端面2bの全周ではなく、角部2cを包含する4か所にのみ形成されている。端面導体層503は、端面2bのうち隣り合う2つの面にわたって、平面視でL字状となるように形成されている。4つの端面導体層503は、互いに離間している。
【0043】
[多層配線基板の製造方法](第1実施形態)
多層配線基板10を製造する方法を、
図4~
図6を参照して説明する。
【0044】
(第1工程:準備工程)
図4に示すように、第1主面導体層22Aを形成したコア基板1を用意する。
【0045】
(第2工程:絶縁樹脂層の形成)
図5に示すように、コア基板1の主面1aに、第1貫通孔23Aを有する第1絶縁樹脂層21Aを形成する。第1貫通孔23Aは、レーザー加工、フォトリソグラフィなどによって形成することができる。
【0046】
(第3工程:主面導体層および端面導体層の形成)
図6に示すように、第1絶縁樹脂層21Aの主面21Aaに第2主面導体層22Bを形成するとともに、第1絶縁樹脂層21Aの端面に、第1端面導体層3Aを形成する。併せて、第1貫通孔23Aに第1貫通配線24Aを形成する。第2主面導体層22B、第1端面導体層3Aおよび第1貫通配線24Aは、例えば、スパッタ法およびめっき法によって同じ工程で形成することができる。
【0047】
次いで、第2工程および第3工程と同様にして、
図1に示す第2絶縁樹脂層21B、第3主面導体層22C、第2貫通配線24B、および第2端面導体層3Bを形成する。さらに、第2工程および第3工程と同様にして、
図1に示す第3絶縁樹脂層21C、第4主面導体層22D、第3貫通配線24C、および第3端面導体層3Cを形成する。第1端面導体層3A、第2端面導体層3Bおよび第3端面導体層3Cは、端面導体層3となる。
以上の工程を経て、
図1に示す多層配線基板10を得る。
【0048】
[第1実施形態の多層配線基板が奏する効果]
多層配線基板10では、ビルドアップ層2の端面2bに端面導体層3が設けられている。端面導体層3は金属で形成されているため、樹脂に比べて線膨張係数が小さい。そのため、絶縁樹脂層21の端部などにおいて、温度変化による樹脂の膨張または収縮に起因する絶縁樹脂層21の変位を抑制できる。したがって、主面導体層22の剥離などの破損は起こりにくくなる。よって、多層配線基板10の信頼性を高めることができる。
【0049】
端面導体層3は、コア基板1の端面1bには形成されない。よって、端面導体層3の形成時において、コア基板1の破損は起こりにくい。
【0050】
端面導体層3は、金属で形成されているため、例えば、スパッタ法およびめっき法によって、主面導体層22などと同じ工程で形成することができる。そのため、樹脂製の端面層を形成する場合に比べ、製造工程が簡略である。
【0051】
端面導体層3は、主面導体層22(22A~22D)のうち1以上に接していると、その主面導体層22の変位を規制することができる。よって、端面導体層3が主面導体層22に接していない場合に比べて、主面導体層22の剥離を起こりにくくすることができる。
【0052】
端面導体層3は、主面導体層22(22A~22D)のうち、少なくとも上下に隣り合う2つに接していると、2つの主面導体層22を連結することができる。これにより、2つの主面導体層22の相対変位を規制できるため、主面導体層22の剥離を起こりにくくすることができる。
【0053】
図2および
図3に示すように、端面導体層3,503は、矩形状のビルドアップ層2の端面2bのうち、平面視において角部2cを包含する領域に形成されている。よって、応力集中が起きやすい角部2cにおける主面導体層22の剥離を効果的に起こりにくくすることができる。
【0054】
[多層配線基板](第2実施形態)
図7は、第2実施形態の多層配線基板110の模式的な断面図である。なお、既出の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、多層配線基板110では、第1主面導体層122Aは、平面視においてビルドアップ層2を包含する領域にわたって形成されている。
多層配線基板110では、絶縁樹脂層21よりも線膨張率が低い第1主面導体層122Aがビルドアップ層2の全体を包含するため、主面導体層22(22B~22D)の剥離を抑制する効果を高めることができる。
【0056】
[多層配線基板](第3実施形態)
図8は、第3実施形態の多層配線基板210の模式的な断面図である。なお、既出の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
図8に示すように、多層配線基板210では、厚さ方向に隣り合う2つの絶縁樹脂層221において、コア基板1からの距離が小さい絶縁樹脂層221は、コア基板1からの距離が大きい絶縁樹脂層221を平面視において包含している。
【0058】
詳しくいえば、第2絶縁樹脂層221Bは、第1絶縁樹脂層221Aに比べて平面視における面積が小さい。第1絶縁樹脂層221Aは、平面視において第2絶縁樹脂層221Bを包含している。第3絶縁樹脂層221Cは、第2絶縁樹脂層221Bに比べて平面視における面積が小さい。第2絶縁樹脂層221Bは、平面視において第3絶縁樹脂層221Cを包含している。
なお、多層配線基板210では、複数の絶縁樹脂層221のうち、少なくとも隣り合う2つの絶縁樹脂層221について上述の面積の大小関係があればよい。
【0059】
多層配線基板210は、コア基板1からの距離が大きい絶縁樹脂層221の面積が小さいため、隣り合う絶縁樹脂層221の位置がずれても主面導体層22どうしの接続不良などの問題は起こりにくい。よって、製造を容易とし、かつ、接続信頼性を高めることができる。
【0060】
[多層配線基板](第4実施形態)
図9は、第4実施形態の多層配線基板310の模式的な断面図である。なお、既出の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
図9に示すように、多層配線基板310では、絶縁樹脂層21に、貫通配線24だけでなく、1以上の貫通配線25が設けられている。貫通配線25は、絶縁樹脂層21の一方の面から他方の面にかけて絶縁樹脂層21を貫通して形成されている。
【0062】
貫通配線25は、絶縁樹脂層21の端面近傍に設けられている。そのため、貫通配線25は、端面導体層3に近接して設けられている。貫通配線25は、端面導体層3に接触していない。貫通配線25は、端面導体層3に対して絶縁樹脂層21の面内方向(絶縁樹脂層21に沿う方向。
図9における左右方向)に離れている。貫通配線25と端面導体層3との間には、絶縁樹脂層21の一部である樹脂が介在している。貫通配線25と端面導体層3との離間距離(貫通配線25と端面導体層3との間に介在する樹脂の厚さ)は、例えば、貫通配線25の平均外径以下であってよい。
なお、多層配線基板310は、貫通配線25の少なくとも1つが端面導体層3に近接して設けられていればよい。
【0063】
多層配線基板310は、端面導体層3に近接した貫通配線25が設けられているため、絶縁樹脂層21の端部近傍において絶縁樹脂層21の変位を抑制できる。また、導体(端面導体層3および貫通配線25)と絶縁樹脂層21との接触面積を大きくできるため、樹脂(絶縁樹脂層21)の膨張または収縮によって生じる応力を分散させることができる。そのため、絶縁樹脂層21に生じる応力を緩和できる。このように、多層配線基板310では、貫通配線25によって、絶縁樹脂層21の変位を抑制するとともに、応力を緩和することができる。よって、主面導体層22の剥離を起こりにくくすることができる。
【0064】
[多層配線基板](第5実施形態)
図10は、第5実施形態の多層配線基板410の模式的な断面図である。なお、既出の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0065】
図10に示すように、多層配線基板410は、貫通配線25に代えて近接貫通配線26,27,28が設けられている点で、
図9に示す多層配線基板310と異なる。多層配線基板410の、貫通配線26,27,28以外の構成は、
図9に示す多層配線基板310と同様としてよい。
【0066】
多層配線基板410では、厚さ方向に隣り合う2つの絶縁樹脂層21のおのおのの絶縁樹脂層21に、1以上の近接貫通配線が設けられている。一方の絶縁樹脂層21の近接貫通配線は、平面視における位置が他方の絶縁層21の近接貫通配線と異なる。
【0067】
詳しくは、絶縁樹脂層21A,21Bのうち一方の絶縁樹脂層21Aには、近接貫通配線26が設けられている。他方の絶縁樹脂層21Bには、近接貫通配線27が設けられている。近接貫通配線26は、平面視における位置が近接貫通配線27と異なる。
絶縁樹脂層21B,21Cのうち一方の絶縁樹脂層21Cには、近接貫通配線28が設けられている。他方の絶縁樹脂層21Bには、近接貫通配線27が設けられている。近接貫通配線27は、平面視における位置が近接貫通配線28と異なる。
【0068】
近接貫通配線26~28は、絶縁樹脂層21の端面近傍に設けられている。そのため、近接貫通配線26~28は、端面導体層3に近接して設けられている。近接貫通配線26~28は、端面導体層3に接触していない。近接貫通配線26~28は、端面導体層3に対して絶縁樹脂層21の面内方向(絶縁樹脂層21に沿う方向。
図10における左右方向)に離れている。近接貫通配線26~28と端面導体層3との間には、絶縁樹脂層21の一部である樹脂が介在している。近接貫通配線26~28と端面導体層3との離間距離(近接貫通配線26~28と端面導体層3との間に介在する樹脂の厚さ)は、例えば、貫通配線26~28の平均外径以下であってよい。
【0069】
多層配線基板410では、一方の絶縁樹脂層21の近接貫通配線(例えば、近接貫通配線26)と、他方の絶縁樹脂層21の近接貫通配線(例えば、近接貫通配線27)との位置が異なるため、近接貫通配線への応力集中が起こりにくい。そのため、主面導体層22の剥離を起こりにくくすることができる。
【0070】
以上、本発明の多層配線基板について説明してきたが、本発明は前記の例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図1に示す多層配線基板10では、ビルドアップ層2は、3つの絶縁樹脂層21と、4つの主面導体層22とを備えるが、ビルドアップ層2の層構成はこれに限定されない。ビルドアップ層は、1以上の絶縁樹脂層と、1以上の主面導体層とが積層された構造を有すればよい。例えば、ビルドアップ層は、コア基板1の主面1aに形成された第1主面導体層22Aと、第1絶縁樹脂層21Aとで構成されていてもよい(1つの主面導体層と1つの絶縁樹脂層とを有する構成)。ビルドアップ層は、コア基板1の主面1aに形成された第1主面導体層22Aと、第1絶縁樹脂層21Aと、第2主面導体層22Bとで構成されていてもよい(2つの主面導体層と1つの絶縁樹脂層とを有する構成)。ビルドアップ層は、コア基板1の主面1aに形成された第1主面導体層22Aと、第1絶縁樹脂層21Aと、第2主面導体層22Bと、第2絶縁樹脂層21Bと、第3主面導体層22Cとで構成されていてもよい(3つの主面導体層と2つの絶縁樹脂層とを有する構成)。主面導体層22の数は、1以上の任意の数であってよい。絶縁樹脂層21の数は、1以上の任意の数であってよい。
【0071】
図1に示す多層配線基板10では、ビルドアップ層2は、コア基板1の一方の面(主面1a)のみに設けられているが、ビルドアップ層2は、コア基板1の両面に設けてもよい。すなわち、ビルドアップ層2は、コア基板1の少なくとも一方の面に設けられていればよい。
【0072】
実施形態の多層配線基板は、電子部品が内蔵されていてもよい。実施形態の多層配線基板は、WLP(Wafer Level Package)のように、樹脂で封止する構造を採用してもよい。
【0073】
絶縁樹脂層に形成された貫通配線には、スタガードビア構造を採用してもよい。貫通配線には、コンフォーマルビア構造を採用してもよい。貫通配線は金属に限らず、非金属の導電性材料を用いて形成してもよい。
図1に示す多層配線基板10では、第3絶縁樹脂層21Cが最上層であるが、その上に第4絶縁樹脂層を設けてもよい。その場合、第4絶縁樹脂層の貫通孔には貫通配線を設けず、この貫通孔を実装パッドとして利用することができる。
【0074】
図8に示す多層配線基板210では、厚さ方向に隣り合う2つの絶縁樹脂層221のうちコア基板1からの距離が小さい絶縁樹脂層221は、コア基板1からの距離が大きい絶縁樹脂層221を平面視において包含しているが、多層配線基板の構成はこれに限定されない。例えば、コア基板から遠い絶縁樹脂層が、コア基板からの距離が小さい絶縁樹脂層を平面視において包含していてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…コア基板、1a…主面、2…ビルドアップ層、2b…端面、2c…角部、3,3A~3C,503…端面導体層、10,110,210,310,410,510…多層配線基板、21,21A~21C,221,221A~221C…絶縁樹脂層(絶縁層)、22,22A~22C…主面導体層、24,25…貫通配線、26,27,28…近接貫通配線。