IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大姫神創の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122092
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】介護用浴槽及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20220815BHJP
   A47K 3/062 20060101ALI20220815BHJP
   A47K 3/06 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
A61H33/00 310E
A61H33/00 310H
A47K3/062
A47K3/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019176
(22)【出願日】2021-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】519452161
【氏名又は名称】株式会社大姫神創
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】近嶌 久夫
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132CA01
4C094AA01
4C094BB08
4C094BB09
4C094BB12
4C094BB16
4C094BC05
(57)【要約】
【課題】使用後の湯を速やかに流して排水して要介護者を簡単かつ清潔にシャワー浴可能にする。
【解決手段】介護用浴槽1は、要介護者の身体全体を傾斜させて支持し、空気の注入により膨張して形成される中空の傾斜ベッド部2と、傾斜ベッド部2の外周に沿って設けられて、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部3と、傾斜ベッド部2の上側傾斜面から周壁部3の内周面を経て該周壁部3の上側周縁までの範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシート4と、傾斜ベッド部2の上側傾斜面の下方の部位で、シート4の孔4aから周壁部3を通じて外側へと導かれる排水管5とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の身体全体を、傾斜する上面部で支持し、空気の注入により膨張して形成される中空で矩形状の傾斜ベッド部と、
前記傾斜ベッド部の外縁部全域に設けられて前記傾斜ベッド部の厚さ方向に延びて前記傾斜ベッド部を囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、
前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記周壁部の内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、
前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の位置にある前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備える、介護用浴槽。
【請求項2】
前記周壁部は、前記傾斜ベッド部の外縁部の少なくとも一部と結合されている請求項1に記載の介護用浴槽。
【請求項3】
前記周壁部は、前記傾斜ベッド部の外縁部とは結合されておらず、分離可能な別体とされている請求項1に記載の介護用浴槽。
【請求項4】
前記排水管は、前記シートの前記孔に配された流入管と、前記流入管に着脱自在に接続されて、前記周壁部を通じて外側へと導かれる導出管とを有する、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の介護用浴槽。
【請求項5】
前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の下端部と、当該下端部に対向する前記周壁部の内周面との間に溝が設けられ、前記シートにより前記流水槽を形成したときに前記シートの前記孔が前記溝の位置に配置される、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の介護用浴槽。
【請求項6】
前記傾斜ベッド部は、前記傾斜ベッド部の長さ方向に延びて当該長さ方向と直交する幅方向に並設されて空気の注入による膨張で前記上面部を形成する複数の中空の縦長筒体と、前記各縦長筒体を傾斜させた状態で支持して空気の注入により膨張して形成される中空の傾斜支持部と、を備え、
前記各縦長筒体は、複数のグループに区分けされ、グループ毎に個別に膨張又は収縮する、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の介護用浴槽。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の介護用浴槽の使用方法であって、
前記介護用浴槽の前記周壁部及び前記傾斜ベッド部の空気を抜いて収縮させた状態で、前記シートを前記周壁部及び前記傾斜ベッド部に重ねて配置して、前記介護用浴槽を、寝た状態の要介護者の隣に配置するステップと、
前記要介護者を、前記シートが重ねて配置された前記傾斜ベッド部の上に移動させるステップと、
前記周壁部及び前記傾斜ベッド部に空気を注入して、前記周壁部及び前記傾斜ベッド部を膨張させて形成させ、膨張した前記周壁部及び前記傾斜ベッド部を前記シートで覆った前記流水槽を、前記要介護者を内部に入れた状態で形成するステップと、を有する介護用浴槽の使用方法。
【請求項8】
前記周壁部及び前記傾斜ベッド部の空気を抜いて収縮させ、前記シートが重ねて配置されて収縮した状態の前記傾斜ベッド部の上に前記要介護者を位置させるステップと、
前記シートが重ねて配置されて収縮した状態の前記傾斜ベッド部の上に位置する前記要介護者を、前記介護用浴槽の外側に移動させるステップと、
前記シートを前記周壁部及び前記傾斜ベッド部から取り外して除去するステップと、を有する請求項7に記載の介護用浴槽の使用方法。
【請求項9】
請求項3に記載の介護用浴槽の使用方法であって、
前記傾斜ベッド部を既設ベッドの上に配置し、前記傾斜ベッド部に空気を注入して、前記傾斜ベッド部を膨張させて形成させるステップと、
前記シートにより、前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記既設ベッドのフレームの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って、流水槽を形成するステップと、を有する介護用浴槽の使用方法。
【請求項10】
要介護者の身体全体を傾斜させて支持する上側傾斜面を有する発泡合成樹脂製で矩形状の傾斜発泡マットと、
前記傾斜発泡マットの外縁部に設けられて、前記傾斜発泡マットの厚さ方向に延びて前記傾斜発泡マットを囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、
前記傾斜発泡マットの底面から前記周壁部の内周面を経て該周壁部の上側周縁までの範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、
前記傾斜発泡マットの前記上側傾斜面が傾斜する下側の位置となる前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備える介護用浴槽。
【請求項11】
前記傾斜発泡マットは、前記傾斜発泡マットの長さ方向と直交する幅方向に並設された2つの傾斜上層部を、前記傾斜発泡マットの一部として備える請求項10に記載の介護用浴槽。
【請求項12】
前記傾斜発泡マットは、前記各傾斜上層部のうちの一方と交換される交換用の上層部を更に備え、
前記交換用の上層部は、前記傾斜発泡マットの前記幅方向における中央付近で前記長さ方向に延びて当該中央付近から前記幅方向に離れるに従って低くなる傾斜を有する幅方向傾斜面を有する請求項11に記載の介護用浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者、介護が必要な要介護者を寝たままで沐浴させるのに適した介護用浴槽及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者、病人などの要介護者を、沐浴のために浴室の浴槽まで運んで移動させることがある。この場合、複数の人手を必要とし、その労力が甚大である。このため、特許文献1には、エア式浴槽を収縮させた状態で、当該エア式浴槽を浴槽シーツで覆い、要介護者を浴槽シーツの上に移動させて乗せ、この後にエア式浴槽を膨張させて使用する介護用入浴ユニットが開示されている。このエア式浴槽には、浴槽シーツの底面から浴槽の外側まで配置された排水管が設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、防水のベッドカバーをベッドに被せ、病人をその上に寝かし、病人を沐浴させるときに、ベッドの四隅を引き上げて、ベッドカバーを浴槽形状に形成し、更にベッドの端部に入水管を設置した簡易沐浴装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、乳児の頭部から少なくとも臀部までを支持する凹弧状の第1の支持面と、第1の支持面の頭部側の末端から延びた第2の支持面とを備え、第1の支持面により乳児の頭部から少なくとも臀部までを支持する第1の姿勢と、第2の支持面により乳児の頭部を支持しかつ第1の支持面により乳児の上半身及び臀部を支持する第2の姿勢とを選択的に実行する沐浴補助具が記載されている。
【0005】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載された技術はいずれも、介助者の負担を軽減させることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-231892号公報
【特許文献2】実用新案登録3129817号公報
【特許文献3】実用新案登録3210873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、要介護者の沐浴を簡単かつ清潔に行うには、シャワーの利用が有効である。このため、シャワー浴に適した浴槽が望まれる。
【0008】
しかしながら、特許文献1のエア式浴槽は、お湯を溜めるのに適した構造であるが、シャワー浴に適する、使用後の湯を速やかに流して排水させる構造が備えられていない。
【0009】
また、特許文献2に記載されたベッドも、お湯を溜めるのに適した構造は採用されているが、使用後の湯を速やかに流して排水させる構造を備えていない。また、衛生上、沐浴の後でベッドカバーを交換するのが望ましいが、この交換が容易ではない。
【0010】
また、特許文献3の沐浴補助具の場合は、シャワー浴が可能であると考えられるが、乳児用であり、大人の要介護者を運んで移動させるときに使い勝手が良くなる構造を提案するものではない。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、使用後の湯を速やかに流して排水して要介護者を簡単かつ清潔にシャワー浴可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係る介護用浴槽は、要介護者の身体全体を、傾斜する上面部で支持し、空気の注入により膨張して形成される中空で矩形状の傾斜ベッド部と、前記傾斜ベッド部の外縁部全域に設けられて前記傾斜ベッド部の厚さ方向に延びて前記傾斜ベッド部を囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記周壁部の内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の位置にある前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備える。
【0013】
次に、本発明の一局面に係る上記介護用浴槽の使用方法は、前記介護用浴槽の周壁部及び傾斜ベッド部の空気を抜いて収縮させた状態で、前記シートを前記周壁部及び前記傾斜ベッド部に重ねて配置して、前記介護用浴槽を、寝た状態の要介護者の隣に配置するステップと、前記要介護者を、前記シートが重ねて配置された前記傾斜ベッド部の上に移動させるステップと、前記周壁部及び前記傾斜ベッド部に空気を注入して、前記周壁部及び前記傾斜ベッド部を膨張させて形成させ、膨張した前記周壁部及び前記傾斜ベッド部を前記シートで覆った前記流水槽を、前記要介護者を内部に入れた状態で形成するステップと、を有する。
【0014】
次に、本発明の一局面に係る上記介護用浴槽の更なる使用方法は、前記周壁部が前記傾斜ベッド部の外縁部とは結合されておらず分離可能な別体とされている上記介護用浴槽の使用方法であって、前記傾斜ベッド部を既設ベッドの上に配置し、前記傾斜ベッド部に空気を注入して、前記傾斜ベッド部を膨張させて形成させるステップと、前記シートにより、前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記既設ベッドのフレームの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って、流水槽を形成するステップと、を有する。
【0015】
次に、本発明の更なる一局面に係る介護用浴槽は、要介護者の身体全体を傾斜させて支持する上側傾斜面を有する発泡合成樹脂製で矩形状の傾斜発泡マットと、前記傾斜発泡マットの外縁部に設けられて、前記傾斜発泡マットの厚さ方向に延びて前記傾斜発泡マットを囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、前記傾斜発泡マットの底面から前記周壁部の内周面を経て該周壁部の上側周縁までの範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、前記傾斜発泡マットの前記上側傾斜面が傾斜する下側の位置となる前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の介護用浴槽は、介護用浴槽をどこでも速やかに設置して、要介護者を簡単かつ清潔にシャワー浴させることができ、またシャワー浴に用いられた使用後の湯を、傾斜ベッド部の上面部に沿って流し、排水管を通じて介護用浴槽の外側に排水させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる介護用浴槽を示す斜視図である。
図2図1の介護用浴槽を、該介護用浴槽を覆うシートを省略して示す斜視図である。
図3図1の介護用浴槽を示す側面図である。
図4図1の介護用浴槽を側面から見て示す断面図である。
図5図1の介護用浴槽を示す背面図である。
図6図1の介護用浴槽を背面から見て示す断面図である。
図7】(A)(B)は、排水管を分解して示す斜視図及び側面図である。
図8】(A)(B)は、排水管を組み立てて示す斜視図及び側面図である。
図9図1の介護用浴槽の各部を空気の注入により膨張させて形成するための構成を示す図である。
図10】(A)(B)は、図1の介護用浴槽を収縮させて平坦にした状態を示す側面図及び平面図である。
図11】(A)(B)は、平坦な介護用浴槽をベッド上で要介護者の横に並べて配置した状態を示す背面図及び平面図である。
図12】(A)(B)は、要介護者を平坦な介護用浴槽に移動させた状態を示す背面図及び平面図である。
図13】(A)(B)は、図1の介護用浴槽を膨張させて形成し、要介護者を介護用浴槽に入れた状態を示す背面図及び平面図である。
図14】介護用浴槽、ベッド、及び該ベッドに並設された補助台を示す背面図である。
図15図1の介護用浴槽の内側で要介護者に対してシャワー浴を実施している様子を側方から見て示す図である。
図16】(A)(B)(C)は、図1の介護用浴槽の内側要介護者に対してシャワー浴を実施している様子を背面から見て示す図である。
図17】シャワーに湯を導くホース及びコードヒーターが通されたパイプを示す断面図である。
図18】本発明の更なる実施形態にかかる介護用浴槽を示す斜視図である。
図19図18に示す介護用浴槽を側面から見て示す断面図である。
図20】(A)(B)は、図18に示す介護用浴槽における傾斜発泡マットを分解して示す斜視図及び組み立てて示す斜視図である。
図21図18に示す介護用浴槽の内側でシャワー浴が実施されている要介護者を側方から見て示す図である。
図22図18に示す介護用浴槽の内側でシャワー浴が実施されている要介護者を背面から見て示す図である。
図23】は、傾斜発泡マットにおける2枚の交換用の上層部を分解して示す斜視図である。
図24】(A)(B)は、交換用の上層部が適用された介護用浴槽の内側でシャワー浴が実施されている要介護者を背面から見て示す図である。
図25図1の介護用浴槽の傾斜ベッド部及びシートなどが適用される既設のベッドを例示する斜視図である。
図26図25の傾斜ベッド部を既設のベッドの上に配した状態を示す斜視図である。
図27】シートにより傾斜ベッド部及び既設のベッドを覆って、流水槽を形成した状態を示す斜視図である。
図28図27の流水槽の内側で要介護者に対してシャワー浴を実施している様子を側方から見て示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<本発明の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る介護用浴槽を示す斜視図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る介護用浴槽を、当該介護用浴槽を覆うシートを省略して示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る介護用浴槽を示す側面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る介護用浴槽を側面から見て示す断面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る介護用浴槽を示す背面図である。図6は、本発明の一実施形態に係る介護用浴槽を背面から見て示す断面図である。
【0019】
図1乃至図6は、空気の注入により膨張して既に浴槽の形状となった状態の介護用浴槽1を示している。図1乃至図6に示すように、介護用浴槽1は、要介護者が寝る傾斜ベッド部2と、傾斜ベッド部2の外縁部の全域に設けられて傾斜ベッド部2を囲む周壁部3と、傾斜ベッド部2の上面部と周壁部3の内周面及び上側周縁とに亘る範囲を覆うシート4と、傾斜ベッド部2の上面部210が傾斜する下方の位置となる周壁部3に設けられ、シート4に設けられた孔に接続して周壁部3を通じて外側へと導かれた排水管5と、を備えている。図1において、シート4は破線により示す。傾斜ベッド部2の上面部210は傾斜を有している。排水管5は、傾斜している上面部210の最下部付近に設けられる。
【0020】
周壁部3は、介護用浴槽1の周壁を形成する。周壁部3は、複数の枠状筒体3aを上下方向に重ねて互いに連結されている。各枠状筒体3aは、上方からの平面視で、図2に示すように、矩形の枠状の形態を有する。周壁部3は、傾斜ベッド部2の厚さ方向(図3において上下方向)に延びて傾斜ベッド部2を囲う。各枠状筒体3aは、図6に示すようにその断面は、内部に空気の注入がされる円筒状の中空である。各枠状筒体3aは、合成樹脂などの可撓性のシート状の材料から形成される。各枠状筒体3aは、互いに空気循環可能に繋がっている。周壁部3は、後で述べるようにエアーポンプにより空気が、空気注入口が設けられた枠状筒体3a(周壁部3をなす複数の枠状筒体3aのうちの1つ)の内部に注入されると、注入された空気が各枠状筒体3aに行き亘って全ての枠状筒体3aが膨張して、周壁部3の外形を壁状に形成する。この空気注入により各枠状筒体3aは高さ方向への大きさが特に増加する。また、周壁部3をなす複数の枠状筒体3aのうちの1つには、空気を抜くための排気栓(図示せず)が設けられている。この排気栓の開放により、全ての枠状筒体3aの内部の空気が抜かれると萎み、全ての枠状筒体3a(周壁部3)が平坦になる。
【0021】
傾斜ベッド部2の外縁部は、その四方全域において、周壁部3の内周部分に接している。ここで、傾斜ベッド部2及び周壁部3の構成は、(1)周壁部3は、傾斜ベッド部2の外縁部の全域又は少なくとも一部と結合されている、(2)周壁部3は、傾斜ベッド部2の外縁部とは結合されておらず、傾斜ベッド部2及び周壁部3は互いに分離可能な別体とされている、のいずれかを採り得る。本実施形態では、傾斜ベッド部2及び周壁部3は互いに分離可能な別体とされているものとする。
【0022】
傾斜ベッド部2は、ベースマット部11、傾斜支持部12、傾斜マット部13、及び上層マット部14を順次積み重ねて構成される。
【0023】
ベースマット部11は、傾斜ベッド部2の長さ方向(以下、縦方向ともいう)に延びる複数の縦長筒体11aが、当該縦方向と直交する幅方向(以下、横方向ともいう)に並設され、互いに接着されてなる。各縦長筒体11aは、図6に示すようにそれらの断面は円筒状の中空状である。各縦長筒体11aは、合成樹脂などの可撓性のシート材料からなる。複数の縦長筒体11aは、空気循環可能に繋がっている。各縦長筒体11aは、後で述べるようにエアーポンプにより空気が縦長筒体11aの1つの内部に注入されると、全ての縦長筒体11aが膨張して、ベースマット部11の外形を板状に形成する。また、複数の縦長筒体11aの1つには、空気を抜くための排気栓(図示せず)が設けられている。この排気栓の開放により、全ての縦長筒体11aの内部の空気が抜かれて萎むと、各縦長筒体11aが平坦になる。
【0024】
また、ベースマット部11の1つの端部であって、上面部210が傾斜する下方の位置となる端部であって、周壁部3に対向する端部には、幅方向の隅部に切り欠き部11bが形成されている。すなわち、この切り欠き部11bには、縦長筒体11aが存在しない。切り欠き部11bに対向する周壁部3の枠状筒体3a部分に排水管5が設けられている。
【0025】
傾斜マット部13は、傾斜支持部12の上に設けられている。傾斜マット部13は、縦方向の一端側を上にして傾斜している。傾斜マット部13は、傾斜方向上側となる上端縁部と、両側端の縁部は周壁部3の内周に密着している。一方、傾斜マット部13の傾斜方向下側となる下端と周壁部3との間は離間している。この離間部分には、図3に示すように、傾斜ベッド部2ではベースマット部11のみが設けられている。傾斜マット部13は、傾斜ベッド部2の縦方向に延びる複数の縦長筒体13aが、当該縦方向と直交する幅方向(以下、横方向という)に並設され、互いに接着されてなる。各縦長筒体13aは、図6に示すようにそれらの断面は円筒状の中空状である。各縦長筒体13aは、合成樹脂などの可撓性のシート材料からなる。これら複数の縦長筒体13aは、空気循環可能に繋がっている。各縦長筒体13aは、後で述べるようにエアーポンプにより空気が縦長筒体13aの1つの内部に注入されると、全ての縦長筒体13aが膨張して、傾斜マット部13の外形を板状に形成する。また、複数の縦長筒体13aの1つには、空気を抜くための排気栓(図示せず)が設けられている。この排気栓の開放により、各縦長筒体13aの内部の空気が抜かれて萎むと、全ての縦長筒体13aが平坦になる。
【0026】
上層マット部14は、その傾斜方向上側の上端と両側端とが周壁部3の内周側部分に密接している。また、上層マット部14は、その傾斜方向下側の下端が周壁部3から離間し、上層マット部14の下側に重なる傾斜マット部13と同一の幅及び長さを有している。上層マット部14は、傾斜ベッド部2の縦方向に延びる例えば5本の縦長筒体14aを該縦方向と直交する横方向に並設して互いに結合されてなる。各縦長筒体14aは、それらの断面が円筒状の中空とされている。各縦長筒体14aは、合成樹脂などの可撓性のシート材料からなる。
【0027】
各縦長筒体14aは、予め定められた複数の縦長筒体14a毎に別のグループに分けられている。各縦長筒体14aは、例えば、横方向において図5で右端の1つ目から2つ目までのグループと、左端の1つ目から2つ目までのグループとに分けられている。なお、横方向において中央の縦長筒体14aはこれら2つのグループとは異なる更なるグループとされる。各グループを構成する複数の縦長筒体14aは、グループ内で空気循環可能に繋がっている。グループが異なる縦長筒体14a同士は、空気循環しない状態で繋がっている。各縦長筒体14aは、後で述べるようにエアーポンプにより空気が縦長筒体14a(グループを構成する縦長筒体14aのうちの1つ)の内部に注入されると、グループを構成する各縦長筒体14aが膨張して、上層マット部14の外形を板状に形成する。また、グループを構成する各縦長筒体14aの1つには、空気を抜くための排気バルブ(図9参照)が設けられている。この排気バルブのグループ別の開放により、各縦長筒体14aの内部の空気が抜かれて萎むと、各縦長筒体14aがグループ毎に平坦になる。
【0028】
傾斜支持部12は、高さ方向においてベースマット部11と傾斜マット部13の間に設けられて、傾斜マット部13及び上層マット部14を水平方向に対して傾斜させて支持する。傾斜支持部12は、傾斜ベッド部2の縦方向と直交する横方向に延びる複数の横長筒体12aが、該縦方向に並設されてなる。内部に空気が充填された各横長筒体12aの外径は異なり、傾斜マット部13の傾斜方向上側の上端に最も近い横長筒体12aの外径が最も大きく、その傾斜方向の下側になるほど横長筒体12aの外径が徐々に小さくされている。これらの外径が異なる各横長筒体12aにより傾斜マット部13及び上層マット部14が傾斜されて支持される。各横長筒体12aは、それらの断面が円筒状の中空である。各横長筒体12aは、合成樹脂などの可撓性のシート材料からなる。
【0029】
複数の横長筒体12aは、空気循環可能に繋がっている。エアーポンプにより空気が複数の横長筒体12aのうちの1つの内部に注入されると、全ての横長筒体12aが膨張して、傾斜支持部12の外形を板状に形成する。また、複数の傾斜支持部12aの1つには、空気を抜くための排気栓(図示せず)が設けられている。この排気栓の開放により、全ての傾斜支持部12の内部の空気が抜かれて萎むと、全ての傾斜支持部12が平坦になる。
【0030】
シート4は、例えば薄手の合成樹脂シートである。シート4は、傾斜ベッド部2の上側傾斜面及び周壁部3の内周面を覆い、更に、周壁部3の上側周縁まで及ぶ範囲を少なくとも覆う。このようにシート4が介護用浴槽1を覆うと、シート4によって介護用浴槽1の内側に流水槽が形成される。シート4は、傾斜ベッド部2及び周壁部3に対して着脱自在である。
【0031】
先に述べたように傾斜マット部13の下端及び上層マット部14の下端は、周壁部3から離間している(図3参照)。これにより、傾斜マット部13の下端、上層マット部14の下端、及び傾斜支持部12の下端と、周壁部3との間に溝15が形成されている。
【0032】
シート4には孔4a(後述の図7(B)及び図8(B)に示す)が形成されている。介護者は、シート4により傾斜ベッド部2の上側傾斜面及び周壁部3の内周面を覆って流水槽を形成するとき、シート4の孔4aが溝15に位置するベースマット部11の切り欠き部11bに重なるように、シート4の孔4aを位置させる。すなわち、シート4の孔4aは、シート4により介護用浴槽1の内側を覆って流水槽を形成したときに、切り欠き部11bの位置となるシート4部分に設けられている。
【0033】
図7(A)(B)及び図8(A)(B)に示すように排水管5は、流入管510及び導出管520を備えている。流入管510は、鍔部5cと管部5dを有している。導出管520は、縦管部5eと横管部5fがL字型に接続されてなる。排水管5は、流入管510の管部5dが導出管520の上側の孔521に挿入されて構成される。
【0034】
流入管510は、その管部5dがシート4の孔4aに嵌入されて、その鍔部5cがシート4に密着又は接着されることによりシート4の孔4aに水漏れなく予め設けられている。また、導出管520は、その横管部5fが、周壁部3の最下段の枠状筒体3aに設けられた孔3bに嵌入されて密着又は接着されることにより、枠状筒体3aの孔3bに水漏れなく予め設けられている。
【0035】
先に述べたようにシート4により介護用浴槽1の内側を覆って、流水槽を形成した状態では、シート4の孔4aは、溝15の底におけるベースマット部11の切り欠き部11bの位置となる。また、周壁部3の孔3bは、当該切り欠き部11bの位置に設けられている。このため、導出管520は、ベースマット部11の切り欠き部11bに位置することになる。ここで、孔521を上方に向けて導出管520は、周壁部3の孔3bに取り付けられる。これにより、介護者は、シート4の孔4aに設けられた流入管510の管部5dを導出管520の上側の孔521に差し込んで、排水管5を容易に組み立てることができる。
【0036】
図9は、周壁部3、傾斜ベッド部2のベースマット部11、傾斜支持部12、傾斜マット部13、及び上層マット部14を、空気の注入により膨張させて形成するための構成を示している。エアーポンプ21は、電動モーターを動力源とするポンプであって、空気を圧送する。エアーポンプ21から圧送された空気は、手動の注入バルブ22が開かれたときに、注入バルブ22及び合成樹脂製の導管23を通じて周壁部3の各枠状筒体3aに注入され、全ての枠状筒体3aを膨張させて、周壁部3を形成する。この後、注入バルブ22を閉じて、空気の注入を停止させ、周壁部3の外形を保持させる。
【0037】
また、エアーポンプ21から圧送された空気は、手動の注入バルブ24が開かれたときに、注入バルブ24及び合成樹脂製の導管25を通じてベースマット部11の各縦長筒体11a及び傾斜マット部13の各縦長筒体13aに注入され、全ての縦長筒体11a及び全ての縦長筒体13aを膨張させて、ベースマット部11及び傾斜マット部13を形成する。この後、注入バルブ24を閉じて、空気の注入を停止させ、ベースマット部11及び傾斜マット部13の外形を保持させる。
【0038】
また、エアーポンプ21から圧送された空気は、手動の注入バルブ26が開かれたときに、注入バルブ26及び合成樹脂製の導管27を通じて傾斜支持部12の各横長筒体12aに注入され、全ての横長筒体12aを膨張させて形成する。この後、注入バルブ26を閉じて、空気の注入を停止させ、各横長筒体12aの外形を保持させる。
【0039】
また、エアーポンプ21から圧送された空気は、手動の注入バルブ28が開かれたときに、注入バルブ28及び合成樹脂製の導管29を通じて、上層マット部14の上記横方向における中央の1本の縦長筒体14aからなるグループに注入され、中央の1本の縦長筒体14aを膨張させて形成する。この後、注入バルブ28を閉じて、空気の注入を停止させて、中央の1本の縦長筒体14aの外形を保持させる。
【0040】
また、エアーポンプ21から圧送された空気は、手動の注入バルブ31が開かれたときに、注入バルブ31及び合成樹脂製の導管32を通じて上層マット部14の上記横方向における左側2本の縦長筒体14aからなるグループに注入され、左側2本の縦長筒体14aを膨張させて形成する。この後、注入バルブ31を閉じて、空気の注入を停止させ、左側2本の縦長筒体14aの外形を保持させる。
【0041】
また、エアーポンプ21から圧送された空気は、手動の注入バルブ33が開かれたときに、注入バルブ33及び合成樹脂製の導管34を通じて上、上層マット部14の上記横方向における右側2本の縦長筒体14aからなるグループに注入され、右側2本の縦長筒体14aを膨張させて形成する。この後、注入バルブ33を閉じて、空気の注入を停止させ、右側2本の縦長筒体14aの外形を保持させる。
【0042】
更に、上層マット部14の左側2本の縦長筒体14aには、手動の排気バルブ35が接続されている。上層マット部14の右側2本の縦長筒体14aには、手動の排気バルブ36が接続されている。左側2本の縦長筒体14aを膨張させるときには、各排気バルブ35を閉じて、左側2本の縦長筒体14aの空気がそれぞれの排気バルブ35を通じて排出されないようにする。また、右側2本の縦長筒体14aを膨張させるときには、各排気バルブ36を閉じて、右側2本の縦長筒体14aの空気が排気バルブ36を通じて排出されないようにする。
【0043】
また、左側2本の縦長筒体14aが膨張されて形成され、注入バルブ31が閉じられている状態で、排気バルブ35を開くと、左側2本の縦長筒体14aの空気が排気バルブ35を通じて排出され、左側2本の縦長筒体14aが収縮する。この後、排気バルブ35を閉じて、エアーポンプ21を作動させた状態で注入バルブ31を開くと、空気が注入バルブ31を通じて上層マット部14の左側2本の縦長筒体14aに注入され、左側2本の縦長筒体14aが再度膨張して形成される。従って、注入バルブ31と排気バルブ35の開閉操作により左側2本の縦長筒体14aを膨張させたり収縮させたりすることができる。
【0044】
同様に、右側2本の縦長筒体14aが膨張されて形成され、注入バルブ33が閉じられている状態で、排気バルブ36を開くと、右側2本の縦長筒体14aの空気が排気バルブ36を通じて排出され、右側2本の縦長筒体14aが収縮する。この後、排気バルブ36を閉じて、エアーポンプ21を作動させた状態で注入バルブ33を開くと、空気が注入バルブ33を通じて上層マット部14の右側2本の縦長筒体14aに注入され、右側2本の縦長筒体14aが再度膨張して形成される。従って、注入バルブ33と排気バルブ36の開閉操作により右側2本の縦長筒体14aを膨張させたり収縮させたりすることができる。
【0045】
次に、本実施形態の介護用浴槽1の使用方法を、図10乃至図15を参照して説明する。
【0046】
図10(A)(B)は、介護用浴槽1を収縮させて平坦にした状態を示す側面図及び平面図である。また、図11(A)(B)は、平坦な介護用浴槽1をベッド上で要介護者の横に並べて配置した状態を示す背面図及び平面図である。また、図12(A)(B)は、要介護者を平坦な介護用浴槽1上に移動させた状態を示す背面図及び平面図である。また、図13(A)(B)は、要介護者を乗せた介護用浴槽1を膨張させて形成し、要介護者が内側に位置する状態の介護用浴槽1を示す背面図及び平面図である。また、図14は、介護用浴槽1、ベッド、及び該ベッドに並設された補助台を示す背面図である。また、図15は、介護用浴槽1の内側でシャワー浴中の要介護者を側方から見て示す図である。図16(A)~(C)は、介護用浴槽1の内側でシャワー浴中の要介護者を背面から見て示す図である。
【0047】
まず、図10(A)(B)に示すように介護用浴槽1の周壁部3の各枠状筒体3a、ベースマット部11の各縦長筒体11a、傾斜支持部12の各横長筒体12a、傾斜マット部13の各縦長筒体13a、及び上層マット部14の各縦長筒体14aを、それぞれの排気栓及び排気バルブを通じて空気を抜くことにより平坦にし、この後に各排気栓及び排気バルブを閉めておく。そして、平坦な状態の介護用浴槽1を防水マット6の上に配置して、シート4を介護用浴槽1の上に重ねる。また、シート4に設けられた流入管510の管部5dを、周壁部3に設けられた導出管520の縦管部5eの孔に差し込んで、排水管5を組み立てる。
【0048】
続いて、図11(A)(B)に示すように、平坦な介護用浴槽1及び防水マット6を既存のベッド40上で、仰向けの要介護者41の横に並べて配置する。このとき、ベッド40からはみ出すシート4の部分は、ベッド40の周縁から垂れ下げておく。また、図11(A)(B)では図略であるが、図9に示した各導管23、25、27、29、32、34をエアーポンプ21に接続する。
【0049】
そして、図12(A)(B)に示すように、要介護者41を仰向けで、介護用浴槽1の上記横方向における中央、すなわち、周壁部3で囲まれた内部領域に移動させて、要介護者41をシート4の上に仰向けに寝かせる。
【0050】
次に最初にエアーポンプ21を作動させた状態で手動の注入バルブ22を開いて、周壁部3の各枠状筒体3aを膨張させて、周壁部3を形成し、エアーポンプ21を停止させて注入バルブ22を閉じ、周壁部3の外形を保持させる。
【0051】
続いて、エアーポンプ21を作動させた状態で手動の注入バルブ24を開いて、エアーポンプ21から供給される空気を流入させる。これにより、ベースマット部11の各縦長筒体11a及び傾斜マット部13の各縦長筒体13aを膨張させて、ベースマット部11及び傾斜マット部13を形成させる。この後、エアーポンプ21を停止させて注入バルブ24を閉じて、ベースマット部11及び傾斜マット部13の外形を保持させる。
【0052】
そして、エアーポンプ21を作動させた状態で手動の注入バルブ26を開いて、エアーポンプ21から供給される空気を傾斜支持部12の各横長筒体12aに流入させる。これにより、傾斜支持部12の各横長筒体12aを膨張させて形成する。この後、エアーポンプ21を停止させて注入バルブ26を閉じて、各横長筒体12aの外形を保持させる。この膨張した各横長筒体12aにより、傾斜マット部13及び上層マット部14が周壁部3の内側で傾斜する。
【0053】
更に、エアーポンプ21を作動させた状態で手動の各注入バルブ28、31、33を開いて、上層マット部14の5本の縦長筒体14aを膨張させて、上層マット部14を形成する。この後、各注入バルブ28、31、33を閉じて、上層マット部14の外形を保持させる。これにより、図13(A)(B)に示すように、空気の注入により介護用浴槽1が膨張により浴槽の形状に完成する。このとき、周壁部3で囲まれた内部領域に位置する要介護者41は介護用浴槽1の内側に入る。要介護者41は、シート4を介して、傾斜する上層マット部14の上に仰向けで寝ることとなる。
【0054】
この状態では、上層マット部14の上にシート4を介して要介護者41が寝ていることになる。各注入バルブ28、31、33の操作により、上層マット部14の各縦長筒体14aに注入される空気の量を調節して、上層マット部14を適宜の硬さに調整する。
【0055】
最後に、要介護者がその上に寝ている状態のシート4を、上層マット部14の傾斜面、溝15、及び周壁部3の周面を覆った状態としつつ、シート4の四辺の端部を周壁部3の上側周縁から垂れ下げるようにすることで、シート4により介護用浴槽1の内側を覆って、水漏れのない流水槽を完成させる。
【0056】
このように周壁部3、ベースマット部11及び傾斜マット部13、上層マット部14、傾斜支持部12を順次膨張させて形成すると、介護用浴槽1を安定的に形成することができ、要介護者41に不安を与えずに済む。なお、周壁部3、ベースマット部11及び傾斜マット部13、上層マット部14、傾斜支持部12に空気を注入して膨張させる順番は上記に限定されず、適宜変更が可能である。
【0057】
また、ホース42の一端を、周壁部3から突出している排水管5に接続し、このホース42の他端を排水用ポリタンク43の内側に導いておく。
【0058】
尚、ベッド40の幅が不足する場合は、図14に示すようにベッド40と同一の高さの補助台45を該ベッド40に並べて、介護用浴槽1、要介護者41などの配置スペースを確保する。
【0059】
次に、図15及び図16(A)に示すようにシャワー44を用いて、要介護者41をシャワー浴させる。このとき、要介護者の頭を、傾斜する傾斜ベッド部2の傾斜方向上部側にする。すなわち、先に説明した、平坦な介護用浴槽1及び防水マット6を既存のベッド40上で仰向けの要介護者41の横に並べて配置するときに、要介護者の頭側に、傾斜ベッド部2の傾斜方向上部側がくるように、平坦な介護用浴槽1及び防水マット6を配置しておく。そして、このように配置された平坦な介護用浴槽1及び防水マット6の上に要介護者を移動させる。
【0060】
シャワー浴に使用した湯は、シート4上で上層マット部14の傾斜面に沿って下方の溝15へと流れ、更に、シート4の孔4aに嵌められている排水管5から介護用浴槽1外に排水され、ホース42を通じて排水用ポリタンク43に導かれて溜められる。
【0061】
シャワー44に湯を導くホースとしては、図17に示すような断面構造のものが好ましい。図17に示すようにホース42を、パイプ47の内部に配置し、パイプ47内でホース42の外周をコードヒーター46により覆う。これにより、コードヒーター46による加温で、ホース42内を流れる湯を保温して、湯の温度低下を防止する。
【0062】
要介護者41にシャワー浴をさせる際における上層マット部14の形状を説明する。要介護者41にシャワー浴をさせる際には、上記左側2本の縦長筒体14a及び上記右側2本の縦長筒体14aの両方を膨張させて上層マット部14の上面に平面にした状態でシャワー浴を実施する。
【0063】
更に、エアーポンプ21を停止させて排気バルブ35を開き、左側2本の縦長筒体14aの空気を、排気バルブ35を通じて排出させ、左側2本の縦長筒体14aを収縮させる。これにより、図16(B)に示すように、要介護者41の身体の左片側が下がって、要介護者41の身体が回転し、要介護者41の右側の背中などが露呈する。このため、要介護者41の右側の背中などを洗うことが可能となる。
【0064】
この後、排気バルブ35を閉じて、エアーポンプ21を作動させた状態で注入バルブ31を開くと、空気が注入バルブ31を通じて上層マット部14の左側2本の縦長筒体14aに注入され、左側2本の縦長筒体14aが膨張して形成され、図16(A)に示す元の状態に戻る。
【0065】
また、排気バルブ36を開いて、右側2本の縦長筒体14aの空気を、排気バルブ36を通じて排出させ、右側2本の縦長筒体14aを収縮させる。これにより、図16(C)に示すように要介護者41の身体の右片側が下がって、要介護者41の身体が回転し、要介護者41の左側の背中などが露呈する。このため、要介護者41の左側の背中などを洗うことが可能となる。この後、排気バルブ36を閉じて、エアーポンプ21を作動させた状態で注入バルブ33を開くと、空気が注入バルブ33を通じて上層マット部14の右側2本の縦長筒体14aに注入され、右側2本の縦長筒体14aが膨張して形成され、図16(A)に示す元の状態に戻る。
【0066】
この後、要介護者41のシャワー浴が終了し、介護用浴槽1を片付ける場合には、シート4により形成された流水槽からシャワー浴に使用した湯が排水されて排水用ポリタンク43に収容されているのを確認した上で、排水管5からホース42を外して、排水用ポリタンク43を移動させる。
【0067】
そして、傾斜支持部12、上層マット部14、ベースマット部11及び傾斜マット部13、及び周壁部3をそれぞれの排気栓又は排気バルブを開くことにより順次収縮させる。例えば、傾斜支持部12、上層マット部14、ベースマット部11及び傾斜マット部13、及び周壁部3を膨張させて介護用浴槽1を設置したときとは逆の手順で、該各部を収縮させる。これにより、図12(A)、(B)に示すように要介護者41が介護用浴槽1の中央でシート4の上に仰向けに寝た状態に戻る。
【0068】
この後、要介護者41を移動させて、図11(A)(B)に示すように、ベッド40上で、平坦な介護用浴槽1から外れた位置に要介護者41を移動させる。
【0069】
そして、シート4の孔に設けられた流入管510を導出管520から外して、シート4を除去する。シャワー浴のときには、シート4が汚れても、シート4により覆われている周壁部3及び上層マット部14などが汚れることはない。このため、周壁部3及び上層マット部14などを清掃しなくても、シート4を新しいものに交換すれば、介護用浴槽1を次の別の要介護者のシャワー浴のために使用することができる。
【0070】
最後に、シート4を外した収縮した状態の平坦な介護用浴槽1をベッド40上から除去する。
【0071】
本実施形態の介護用浴槽1は、収縮させることができるので、既存のベッド40の上に簡単に設置することができ、更に、収縮して平坦な状態の介護用浴槽1上に要介護者41を容易に移動させることができる。更に、膨張による浴槽の完成は、要介護者41を介護用浴槽1上に移動させた後でよいので、完成された浴槽の中に要介護者41を入れるために要介護者41を持ち上げる作業が不要である。このように、本実施形態の介護用浴槽1は、ベッド40の上で浴槽の設置、シャワー浴、及び要介護者41の移動が全て完結するため、要介護者41を浴室の浴槽まで移動させる等の作業が必要ではない。従って、介護用浴槽1によれば、介護者を簡単かつ清潔にシャワー浴させることができる。
【0072】
また、シート4により水漏れのない流水槽を形成し、この流水槽の下側に傾斜ベッド部2が配置されるので、要介護者41を傾斜ベッド部2の上側傾斜面に寝かせてシャワー浴させているときに、シート4上で、シャワー浴に使用した後の湯が上側傾斜面を流れ落ちて、傾斜マット部13の下端及び上層マット部14の下端と周壁部3との間に溝15まで円滑に案内される。この溝15には排水管5を設けているので、シャワー浴に使用した後の湯が、シート4の孔4aに取り付けられた排水管5を通じて確実に排水される。更に、シャワー浴後はシート4を取り替えれば、シート4以外の介護用浴槽1の浴槽部分を洗浄しなくても、当該浴槽部分を清潔に保つことが可能である。
【0073】
なお、上記実施形態では、上層マット部14として5本の縦長筒体14aを横方向に並べたものを例示しているが、2本~4本又は6本以上の縦長筒体14aを横方向に並べたものであってもよい。左側又は右側の1乃至複数の縦長筒体14aを収縮させる構造を採ることにより、要介護者41の身体を回転させることが可能である。
【0074】
また、複数の縦長筒体14aをそれぞれ個別に収縮させるようにしてもよい。例えば、6本の縦長筒体14aを横方向に並べて、各縦長筒体14aをそれぞれ選択的にかつ個別に収縮させれば、上層マット部14の上で要介護者の姿勢を様々に変化させて、要介護者の身体を丁寧に洗うことができる。
【0075】
また、シート4を面ファスナー(マジックテープ(登録商標)など)などで介護用浴槽1の周壁部3に固定してもよい。また、介護用浴槽1とベッド40の間に滑り止めシートなどを挟み込んで、介護用浴槽1の位置ずれを防止しても構わない。
<本実施形態の介護用浴槽1の使用方法の応用例>
この応用例では、本実施形態の介護用浴槽1の傾斜ベッド部2及びシート4を既設のベッド(例えば病院又は介護施設のベッド)に適用して、この既設のベッドの上に流水槽を形成する。尚、傾斜ベッド部2は、上述したように、周壁部3の内周に接着されておらず、傾斜ベッド部2及び周壁部3は分離可能な別体とされている。傾斜ベッド部2は、マジックテープなどで周壁部3の内周に着脱自在に接続されていてもよい。ここでは、傾斜ベッド部2のみを周壁部3から取り外して利用する。
【0076】
既設のベッドとしては、図25に示すようなベッド71が望ましい。この図25に示すベッド71は、矩形状のベッド本体72、ベッド本体72の頭部側の一端に突設されたヘッドボード73、ベッド本体72の足部側の他端に突設されたフッドボード74、ベッド本体72の両側端に突設された各サイドレール75を備えている。
【0077】
介護用浴槽1は、例えば、防水マット6(図28に示す)を敷いたベッド71上に、要介護者が既に寝ている状態で使用する。この状態で、防水マット6(ベッド71)上において介護者の横に、空気を入れていない萎んだ状態の傾斜ベッド部2を配置する。更に、この平坦な状態の傾斜ベッド部2の全域を覆って傾斜ベッド部2上にシート4を重ねる。そして、シート4の端部側であって、要介護者が寝ている側とは反対側の端部側を、ベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及び要介護者が寝ている側とは反対側のサイドレール75のそれぞれの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を覆い、シート4の当該端部側をベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及びサイドレール75のそれぞれに繋ぎ止めておく。
【0078】
続いて、シート4を被せた傾斜ベッド部2の上に要介護者を移動させる。そして、シート4の端部側であって、要介護者が寝ている側の端部側を、ベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及び要介護者が寝ている側のサイドレール75のそれぞれの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を覆い、シート4の当該端部側をベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及びサイドレール75のそれぞれに繋ぎ止めておく。
【0079】
この状態で、傾斜ベッド部2のベースマット部11、傾斜支持部12、傾斜マット部13、及び上層マット部14を、空気の注入により膨張させて形成する。これにより、ベッド本体72の上に傾斜ベッド部2が設置され、傾斜ベッド部2の上に要介護者が横たわった状態となる。
【0080】
なお、図26に示すように、まず、防水マット6の上に、萎んだ状態の傾斜ベッド部2を配置して傾斜ベッド部2を空気の注入により膨張させておくようにしてもよい。そして、この状態の傾斜ベッド部2の上に、傾斜ベッド部2の全域と、ベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及び両側のサイドレール75のそれぞれの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を覆うようにしてシート4を被せ、シート4の四方の端部を、ベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及び両側のサイドレール75に繋ぎ止める。このようにして、ベッド本体72の上に傾斜ベッド部2を設置してもよい。この場合、傾斜ベッド部2及びシート4を当該状態とした後で、要介護者を傾斜ベッド部2及びシート4の上に移動させる。
【0081】
上述のようにして、図27に示すようにシート4により、傾斜ベッド部2の上側傾斜面と、ベッド71のヘッドボード73、フットボード4、及び両側のサイドレール75のそれぞれの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って、ベッド71の上に流水槽を形成する。また、シート4の孔4aに設けられた流入管510の管部5dにホース42の一端を接続し、このホース42の他端を排水用ポリタンク43の内側に導いておく。なお、図27には、要介護者が横たわっていない状態の傾斜ベッド部2及びシート4を示している。
【0082】
図28に示すように要介護者41が傾斜ベッド部2の上層マット部14の上に寝た状態で、シャワー44を用いて、要介護者41をシャワー浴させる。シャワー浴に使用した湯は、シート4上で上層マット部14の傾斜面に沿って下方の溝15へと流れ、更に、シート4の孔4aに嵌められている流入管510からホース42を介して排水用ポリタンク43に導かれて溜められる。
【0083】
このように応用例では、傾斜ベッド部2及びシート4などを既設のベッド71に適用して、このベッド71の上に流水槽を形成し、要介護者41をシャワー浴させることができる。
<本発明の更なる実施形態>
図18は、本発明の更なる実施形態にかかる介護用浴槽を示す斜視図である。また、図19は、更なる実施形態に係る介護用浴槽を側面から見て示す断面図である。また、図20(A)(B)は、更なる実施形態に係る介護用浴槽における傾斜発泡マットを分解して示す斜視図及び組み立てて示す斜視図である。
【0084】
更なる実施形態に係る介護用浴槽1Aでは、図1乃至図6に示す介護用浴槽1における傾斜支持部12、傾斜マット部13、及び上層マット部14の代わりに、傾斜発泡マット51を用いている。なお、図18乃至図20において、図1乃至図6と同様の作用を果たす部位には同じ符号を付す。
【0085】
介護用浴槽1Aにおいて、ベースマット部11は、その四辺が周壁部3の内周に接着されて接続されている。また、ベースマット部11の1つの角に切り欠き11bが形成され、この切り欠き11bの部位に排水管5が配置されている。すなわち、排水管5は、傾斜発泡マット51が傾斜している下側の位置となる周壁部3の部分に設けられている。
【0086】
シート4は、ベースマット部11の上面(傾斜発泡マット51の底面)と周壁部3の内周面とを覆って、更に周壁部3の上側周縁までの範囲を少なくとも覆って、介護用浴槽1Aの内側に流水槽を形成する。傾斜発泡マット51は、その流水槽の内側にかつシート4の上に配置される。
【0087】
傾斜発泡マット51は、発泡合成樹脂を成形したものであり、1枚の傾斜下層部52、及び横方向において左右に分割された2枚の傾斜上層部53、54からなる。傾斜下層部52の上側面に、各傾斜上層部53、54が横方向において左右に並べて載せられる。傾斜下層部52の上側面及び各傾斜上層部53、54の上側面が共に傾斜している。
【0088】
周壁部3は、傾斜発泡マット51の外縁部に設けられて、傾斜発泡マット51の厚さ方向(図3における上下方向)に延びて傾斜発泡マット51を四方から囲う。
【0089】
また、傾斜発泡マット51は、その傾斜方向下側の下端が周壁部3から離間している。傾斜発泡マット51の下端と周壁部3との間に溝15が形成されている。
【0090】
シート4の孔4aが溝15の底におけるベースマット部11の切り欠き部11bに配置され、シート4の孔4aに設置された流入管510が、ベースマット部11の切り欠き部11bの部位となる周壁部3の部分に配されている導出管520の孔521に差し込まれて、排水管5が組み立てられる。
【0091】
図21は、介護用浴槽1Aの内側でシャワー浴されている要介護者を側方から見て示す図である。図22は、介護用浴槽1Aの内側でシャワー浴されている要介護者を背面から見て示す図である。
【0092】
図21及び図22に示すようにシャワー44を用いて、介護用浴槽1Aの内側に位置する要介護者41をシャワー浴させる。このシャワー浴の湯は、傾斜発泡マット51の各傾斜上層部53、54の上側傾斜面に沿って下方の溝15へと流れる。また、各傾斜上層部53、54の隙間から下方に流れ落ちた湯は、傾斜発泡マット51の傾斜下層部52の上側傾斜面に沿って下方の溝15へと流れる。この溝15には排水管5を設けているので、シャワー浴に使用した後の湯が、シート4の孔4aに取り付けられた排水管5からホース42(図14に示す)を通じて排水用ポリタンク43(図14に示す)に導かれて溜められる。
【0093】
図23は、傾斜発泡マット51における2枚の交換用の上層部61、62を示す分解斜視図である。背面から見て左側の交換用の上層部61は、傾斜発泡マット51の中央付近で縦長に形成されて、該中央付近から横方向に離れるほど低くなるように傾斜する横方向傾斜面61aと、この横方向傾斜面61aに沿って縦長に形成されて縦方向に傾斜している縦方向傾斜面61bとを有している。同様に、背面から見て右側の交換用の上層部62は、傾斜発泡マット51の中央付近で縦長に形成されて、該中央付近から横方向に離れるほど低くなるように傾斜している横方向傾斜面62aと、この横方向傾斜面62aに沿って縦長に形成されて縦方向に傾斜している縦方向傾斜面62bとを有している。
【0094】
なお、横方向傾斜面61a及び62aは、その長さ方向において、傾斜の最下部に近付くほど幅方向の長さが小さくなるようにすることが好ましい。これにより、まず洗浄が必要な背中部分を大きく傾け、次に洗浄する下半身は比較的少ない量で傾く。このため、要介護者の身体を一度に大きく側方に回転させることなく、まずは上半身の背中を傾け、その後に、下半身を介護者の手で更に傾けることが可能になり、要介護者の身体にかかる負担を減らすことができる。
【0095】
例えば、図24(A)に示すように、左側の交換用の上層部61を、図22に示す左側の傾斜上層部53と交換して設置した場合は、要介護者41の身体の左片側が交換用の上層部61の横方向傾斜面61aで受けられ、要介護者41の身体が回転して、要介護者41の右側の背中などが露呈し、この状態に保つことができ、要介護者41の右側の背中などを洗うことが可能となる。
【0096】
また、図24(B)に示すように右側の上層部62を図22に示す右側の傾斜上層部54と交換して設置した場合は、要介護者41の身体の右片側が交換用の上層部62の横方向傾斜面62aで受けられ、要介護者41の身体が回転して、要介護者41の左側の背中などが露呈し、この状態に保つことができ、要介護者41の左側の背中などを洗うことが可能となる。
【0097】
本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、図1乃至図28を用いて説明した上記実施形態の構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明を当該構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0098】
1 介護用浴槽
2 傾斜ベッド部
3 周壁部
4 シート
5 排水管
6 防水マット
11 ベースマット部
12 傾斜支持部
13 傾斜マット部
14 上層マット部
15 溝
1A 介護用浴槽
51 傾斜発泡マット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2021-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の身体全体を、傾斜する上面部で支持し、空気の注入により膨張して形成される中空で矩形状の傾斜ベッド部と、
前記傾斜ベッド部の外縁部全域に設けられて前記傾斜ベッド部の厚さ方向に延びて前記傾斜ベッド部を囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、
前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記周壁部の内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、
前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の位置にある前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備え
前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の下端部と、当該下端部に対向する前記周壁部の内周面との間に溝が設けられ、前記シートにより前記流水槽を形成したときに前記シートの前記孔が前記溝の位置に配置される、介護用浴槽。
【請求項2】
前記周壁部は、前記傾斜ベッド部の外縁部の少なくとも一部と結合されている請求項1に記載の介護用浴槽。
【請求項3】
前記周壁部は、前記傾斜ベッド部の外縁部とは結合されておらず、分離可能な別体とされている請求項1に記載の介護用浴槽。
【請求項4】
前記排水管は、前記シートの前記孔に配された流入管と、前記流入管に着脱自在に接続されて、前記周壁部を通じて外側へと導かれる導出管とを有する、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の介護用浴槽。
【請求項5】
要介護者の身体全体を、傾斜する上面部で支持し、空気の注入により膨張して形成される中空で矩形状の傾斜ベッド部と、
前記傾斜ベッド部の外縁部全域に設けられて前記傾斜ベッド部の厚さ方向に延びて前記傾斜ベッド部を囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、
前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記周壁部の内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、
前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の位置にある前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備え、
前記傾斜ベッド部は、前記傾斜ベッド部の長さ方向に延びて当該長さ方向と直交する幅方向に並設されて空気の注入による膨張で前記上面部を形成する複数の中空の縦長筒体と、前記各縦長筒体を傾斜させた状態で支持して空気の注入により膨張して形成される中空の傾斜支持部と、を備え、
前記各縦長筒体は、複数のグループに区分けされ、グループ毎に個別に膨張又は収縮する介護用浴槽。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の介護用浴槽の使用方法であって、
前記介護用浴槽の前記周壁部及び前記傾斜ベッド部の空気を抜いて収縮させた状態で、前記シートを前記周壁部及び前記傾斜ベッド部に重ねて配置して、前記介護用浴槽を、寝た状態の要介護者の隣に配置するステップと、
前記要介護者を、前記シートが重ねて配置された前記傾斜ベッド部の上に移動させるステップと、
前記周壁部及び前記傾斜ベッド部に空気を注入して、前記周壁部及び前記傾斜ベッド部を膨張させて形成させ、膨張した前記周壁部及び前記傾斜ベッド部を前記シートで覆った前記流水槽を、前記要介護者を内部に入れた状態で形成するステップと、を有する介護用浴槽の使用方法。
【請求項7】
前記周壁部及び前記傾斜ベッド部の空気を抜いて収縮させ、前記シートが重ねて配置されて収縮した状態の前記傾斜ベッド部の上に前記要介護者を位置させるステップと、
前記シートが重ねて配置されて収縮した状態の前記傾斜ベッド部の上に位置する前記要介護者を、前記介護用浴槽の外側に移動させるステップと、
前記シートを前記周壁部及び前記傾斜ベッド部から取り外して除去するステップと、を
有する請求項に記載の介護用浴槽の使用方法。
【請求項8】
要介護者の身体全体を、傾斜する上面部で支持し、空気の注入により膨張して形成される中空で矩形状の傾斜ベッド部と、
前記傾斜ベッド部の外縁部全域に設けられて前記傾斜ベッド部の厚さ方向に延びて前記傾斜ベッド部を囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、
前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記周壁部の内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、
前記傾斜ベッド部の前記上面部が傾斜する下側の位置にある前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備え、
前記周壁部は、前記傾斜ベッド部の外縁部とは結合されておらず、分離可能な別体とされている介護用浴槽の使用方法であって、
前記傾斜ベッド部を既設ベッドの上に配置し、前記傾斜ベッド部に空気を注入して、前記傾斜ベッド部を膨張させて形成させるステップと、
前記シートにより、前記傾斜ベッド部の前記上面部と、前記既設ベッドのフレームの内周面及び上側周縁とに亘る範囲を少なくとも覆って、流水槽を形成するステップと、を有する介護用浴槽の使用方法。
【請求項9】
要介護者の身体全体を傾斜させて支持する上側傾斜面を有する発泡合成樹脂製で矩形状の傾斜発泡マットと、
前記傾斜発泡マットの外縁部に設けられて、前記傾斜発泡マットの厚さ方向に延びて前記傾斜発泡マットを囲い、空気の注入により膨張して形成される中空の周壁部と、
前記傾斜発泡マットの底面から前記周壁部の内周面を経て該周壁部の上側周縁までの範囲を少なくとも覆って流水槽を形成するシートと、
前記傾斜発泡マットの前記上側傾斜面が傾斜する下側の位置となる前記周壁部の部分に設けられ、前記シートに設けられた孔に接続して、前記周壁部を通じて外側へと導かれる排水管と、を備える介護用浴槽。
【請求項10】
前記傾斜発泡マットは、前記傾斜発泡マットの長さ方向と直交する幅方向に並設された2つの傾斜上層部を、前記傾斜発泡マットの一部として備える請求項に記載の介護用浴槽。
【請求項11】
前記傾斜発泡マットは、前記各傾斜上層部のうちの一方と交換される交換用の上層部を更に備え、
前記交換用の上層部は、前記傾斜発泡マットの前記幅方向における中央付近で前記長さ方向に延びて当該中央付近から前記幅方向に離れるに従って低くなる傾斜を有する幅方向傾斜面を有する請求項10に記載の介護用浴槽。