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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122116
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】電極体、及び蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220815BHJP
   H01M 50/40 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220815BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20220815BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220815BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220815BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20220815BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M2/14
H01M2/02 A
H01G11/14
H01G11/52
H01G11/78
H01M10/0587
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019214
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大杉 勇太
(72)【発明者】
【氏名】加古 智典
(72)【発明者】
【氏名】川副 雄大
(72)【発明者】
【氏名】関口 大聖
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AA10
5E078AB13
5E078CA11
5E078HA05
5E078HA23
5H011AA03
5H011CC06
5H021AA02
5H021BB11
5H021EE02
5H021HH10
5H028AA07
5H028AA08
5H028BB05
5H028BB07
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC12
5H028CC26
5H029AJ00
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ05
5H029CJ07
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029HJ12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電極が巻回されている巻回体において電極間の隙間の発生を抑えることができる電極体、及びこの電極体を備える蓄電素子を提供する。
【解決手段】巻回された電極を有する巻回体20と、電極より硬い少なくとも一つのシート状部材250を有し且つ巻回体の形状を保つ保形部25と、を備え、少なくとも一つのシート状部材は、第一の面S1と該第一の面の裏面である第二の面S2とを有し、第一の面を巻回体に向けた状態で該巻回体の外周面に沿って配置されると共に電極の巻回方向における端部を互いに接合させることで巻回体を巻回方向に囲み、接合された一対の端部25Bは、第一の面を互いに対向させている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された電極を有する巻回体と、
前記電極より硬い少なくとも一つのシート状部材を有し且つ前記巻回体の形状を保つ保形部と、を備え、
前記少なくとも一つのシート状部材は、第一の面と該第一の面の裏面である第二の面とを有し、前記第一の面を前記巻回体に向けた状態で該巻回体の外周面に沿って配置されると共に前記電極の巻回方向における端部を互いに接合させることで前記巻回体を前記巻回方向に囲み、
前記接合された一対の端部は、前記第一の面を互いに対向させている、電極体。
【請求項2】
前記巻回体は、前記電極と重なった状態で巻回されたセパレータを有し、
前記一対の端部は、前記セパレータの一部を外部に露出させた状態で該セパレータを挟み込む、請求項1に記載の電極体。
【請求項3】
前記一対の端部のうちの少なくとも一方の端部は、厚さ方向に貫通する孔を有し、
前記セパレータの一部は、前記孔を通じて外部に露出している、請求項2に記載の電極体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電極体と、
電解液と共に前記電極体を収容するケースと、を備える、蓄電素子。
【請求項5】
前記ケースは、前記電極体に応じた大きさの直方体形状又は立方体形状であり、該直方体形状又は該立方体形状において対向する一対の壁部の対向方向に前記電極体の巻回軸が沿うように該電極体を収容し、
前記電極体の前記保形部における前記一対の端部は、前記巻回体における前記外周面が湾曲している湾曲部位と、前記湾曲部位と対向する前記ケースの角部と、の間に位置している、請求項4に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極が巻回されている電極体、及びこの電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、正極シートと負極シートとがセパレータを介して巻回されている巻回電極体を備えたリチウムイオン二次電池が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このリチウムイオン二次電池では、正極シートと負極シートとセパレータとが密着した状態で、巻回電極体が電池ケースに収納される必要がある。このため、巻回電極体を製造する際には、正極シートと負極シートとセパレータとが円柱形状に巻回された後、プレスして偏平にすることで、正極シートと負極シートとセパレータとを密着させている。
【0004】
しかし、電気自動車等に用いられるリチウムイオン二次電池では、高目付で高密度な電極シート(正極シート及び負極シート)が数十ターン巻かれているため、プレスによって偏平した巻回電極体が元の円柱形状に戻ろうとして変形し、巻回されている正極シート、負極シート、及びセパレータの間に隙間が生じる場合があった。
【0005】
巻回電極体においてこのような隙間が生じると、巻回電極体の内部でのリチウムイオンの拡散距離が大きくなって抵抗が大きくなる。このため、前記隙間が生じた巻回電極体が用いられたリチウムイオン二次電池では、電池性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-198987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本実施形態は、電極が巻回されている巻回体において電極間の隙間の発生を抑えることができる電極体、及びこの電極体を備える蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の電極体は、
巻回された電極を有する巻回体と、
前記電極より硬い少なくとも一つのシート状部材を有し且つ前記巻回体の形状を保つ保形部と、を備え、
前記少なくとも一つのシート状部材は、第一の面と該第一の面の裏面である第二の面とを有し、前記第一の面を前記巻回体に向けた状態で該巻回体の外周面に沿って配置されると共に前記電極の巻回方向における端部を互いに接合させることで前記巻回体を前記巻回方向に囲み、
前記接合された一対の端部は、前記第一の面を互いに対向させている。
【0009】
かかる構成によれば、電極体がケースに入れる前の状態においても、保形部によって巻回体の変形が抑えられ、これにより、巻回体の変形に起因する電極間の隙間の発生が抑えられる。
【0010】
前記電極体では、
前記巻回体は、前記電極と重なった状態で巻回されたセパレータを有し、
前記一対の端部は、前記セパレータの一部を外部に露出させた状態で該セパレータを挟み込んでもよい。
【0011】
かかる構成によれば、電極体が電解液と共にケースに収容されることで、セパレータの前記露出させた部位を通じて電解液が巻回体の内部(巻回中心部側)に供給される。
【0012】
また、前記電極体では、
前記一対の端部のうちの少なくとも一方の端部は、厚さ方向に貫通する孔を有し、
前記セパレータの一部は、前記孔を通じて外部に露出してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、電極体が電解液と共にケースに収容されることで、前記孔から外部に露出するセパレータ(セパレータの部位)を通じて電解液が巻回体の内部(巻回中心部側)に供給される。
【0014】
また、本実施形態の蓄電素子は、
上記のいずれかの電極体と、
電解液と共に前記電極体を収容するケースと、を備える。
【0015】
かかる構成によれば、保形部によって巻回体(電極体)の形が保たれているため、蓄電素子の製造時等において、巻回体の変形に起因する電極間の隙間の発生が抑えられ、これにより、電極体において電極間に隙間が生じることに起因する抵抗上昇等が抑えられ、その結果、該電極体を備える蓄電素子での性能低下が抑えられる。
【0016】
前記蓄電素子では、
前記ケースは、前記電極体に応じた大きさの直方体形状又は立方体形状であり、該直方体形状又は該立方体形状において対向する一対の壁部の対向方向に前記電極体の巻回軸が沿うように該電極体を収容し、
前記電極体の前記保形部における前記一対の端部は、前記巻回体における前記外周面が湾曲している湾曲部位と、前記湾曲部位と対向する前記ケースの角部と、の間に位置してもよい。
【0017】
このように、ケース内において湾曲部位とケースの角部との間に生じる隙間(空間)を利用して一対の端部が配置されることで、ケース内でのエネルギー密度の低下が抑えられる。即ち、一対の端部の配置の有無に関わらず隙間の形成される湾曲部位とケースの角部との間に一対の端部が配置されることで、他の位置に配置されたときのような一対の端部がケース内で占める領域(体積)分のエネルギー密度の低下の発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本実施形態によれば、電極が巻回されている巻回体において電極間の隙間の発生を抑えることができる電極体、及びこの電極体を備える蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図3図3は、前記蓄電素子の縦断面図である。
図4図4は、巻回体の構成を説明するための図である。
図5図5は、図2のV-V位置における電極体の断面図である。
図6図6は、前記電極体の製造方法を説明するための模式図であって、ヒートプレス前の模式図である。
図7図7は、前記電極体の製造方法を説明するための模式図であって、ヒートプレス中の模式図である。
図8図8は、他実施形態に係る蓄電素子の縦断面図である。
図9図9は、他実施形態に係る電極体の一部拡大図である。
図10図10は、他実施形態に係る電極体の一部拡大図である。
図11図11は、前記蓄電素子を備える蓄電装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図1図7を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0021】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0022】
蓄電素子は、図1図3に示すように、電極体2と、電極体2を収容するケース3と、を備える。また、蓄電素子1は、少なくとも一部が外部に露出した状態でケース3に取り付けられる外部端子4又はケース3の一部によって構成される外部端子と、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体5と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6等も、備える。本実施形態の外部端子4は、ケース3に取り付けられている。
【0023】
電極体2は、図4及び図5にも示すように、巻回された電極(正極21及び負極22)を有する巻回体20と、巻回体20の形状を保つ保形部25と、を有する。
【0024】
巻回体20は、巻回された状態の電極(正極21及び負極22)とセパレータ23とによって構成され、該巻回体20では、正極21と負極22とがセパレータ23を介して交互に積層されている。この巻回体20では、正極21と負極22とがセパレータ23によって互いに絶縁された状態で積層されており、リチウムイオンが正極21と負極22との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0025】
正極21は、帯状の金属箔211と、金属箔211に重ねられる正極活物質層212と、を有する。この正極活物質層212は、金属箔211における幅方向の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔211に重ねられている。本実施形態の金属箔211は、例えば、アルミニウム箔である。
【0026】
負極22は、帯状の金属箔221と、金属箔221に重ねられる負極活物質層222と、を有する。この負極活物質層222は、金属箔221における幅方向の他方(正極21の金属箔211の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔221に重ねられている。本実施形態の金属箔221は、例えば、銅箔である。
【0027】
セパレータ23は、絶縁性を有する部材であり、正極21と負極22との間に配置される。これにより、巻回体20において、正極21と負極22とが互いに絶縁される。また、セパレータ23は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ23を挟んで交互に積層される正極21と負極22との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0028】
このセパレータ23は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ23は、SiO粒子、Al粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態のセパレータ23の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0029】
セパレータ23の幅方向(X軸方向)の寸法は、負極活物質層222の幅より大きい。セパレータ23は、正極活物質層212と負極活物質層222とが厚さ方向(積層方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極21と負極22との間に配置される。このとき、正極21の非被覆部と、負極22の非被覆部とは重なっていない。即ち、正極21の非被覆部が、正極21と負極22との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極22の非被覆部が、正極21と負極22との重なる領域から幅方向(正極21の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出する。巻回体20では、正極21、負極22、及びセパレータ23が上記のような位置関係(相対位置)となるように積層されている。また、本実施形態の巻回体20では、正極21の非被覆部又は負極22の非被覆部のみが積層された部位によって、巻回体20(電極体2)における非被覆積層部24が構成される。
【0030】
非被覆積層部24は、電極体2(巻回体20)の各極に設けられる。即ち、正極21の非被覆部のみが積層された非被覆積層部24が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極22の非被覆部のみが積層された非被覆積層部24が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
【0031】
保形部25は、電極(正極21及び負極22)より硬い少なくとも一つのシート状部材250を有する。本実施形態の保形部25は、二つのシート状部材250を有している。この保形部25は、巻回体20の周囲を囲む保形部本体25Aと、二つのシート状部材250を互いに接合させている接合部25Bと、を有する。この保形部本体25Aは、シート状部材250のみによって構成され、巻回体20の外周面に沿った形状であり、接合部25Bは、シート状部材250の端部251と接着層252とによって構成され、保形部本体25Aから突出し且つ保形部本体25Aの湾曲している部位に沿って延びる帯状片である。
【0032】
二つのシート状部材250のそれぞれは、第一の面S1と、第一の面S1の裏面(反対側の面)である第二の面S2とを有する。本実施形態の各シート状部材250は、巻回体20の周方向が長手方向となる矩形状のシートであり、該シート状部材250の幅方向の寸法は、セパレータ23の幅方向の寸法と同じ若しくは僅かに大きい。本実施形態のシート状部材250は、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の電解液に耐性を有する熱硬化性樹脂によって形成されており、該シート状部材250の厚さ寸法は、0.1~10mmである。
【0033】
二つのシート状部材250のそれぞれが第一の面S1を巻回体20に向けた状態で該巻回体20の外周面に沿って配置され、巻回体20の周方向(即ち、巻回体20における電極21、22の巻回方向)に隣り合うシート状部材250の対応する端部251同士が互いに接合されることで、保形部25が構成される。このとき、接合された一対の端部251は、第一の面S1を互いに対向させている。
【0034】
本実施形態の保形部25では、一対の端部251は、例えば、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリエステル等の電解液に耐性を有する熱可塑性樹脂によって形成される接着層252を介して接合(接着等)されている。一方、シート状部材250における前記周方向の両端部251を除いた部位(保形部本体25Aを構成する部位、即ち、巻回体20に第一の面S1を向けた状態で該巻回体20の周面に沿って配置されている部位)253は、巻回体20の周面と接しているが、該周面に対して接合(接着、粘着等)はされていない。
【0035】
この一対の端部251と接着層252とによって構成される接合部25Bは、巻回体20において各電極21、22及びセパレータ23が湾曲した状態で積層されている部位(湾曲部位)20Rの頂部、即ち、巻回体20の巻回軸C方向から見て湾曲部位20Rの最も外側に位置する部位から延びている。
【0036】
図1図3に戻り、ケース3は、電極体2に応じた大きさの直方体形状又は立方体形状であり、直方体又は立法体形状において対向する一対の壁部(短壁部)314の対向方向に電極体2(巻回体20)の巻回軸Cが沿うように該電極体2を収容している。具体的に、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2と共に電解液を内部空間に収容する。このため、ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成されている。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0037】
ここで、電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶解させたものである。
【0038】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0039】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0040】
以下では、閉塞部311の長辺方向を直交座標系のX軸とし、閉塞部311の短辺方向を直交座標系のY軸とし、閉塞部311の法線方向を直交座標系のZ軸とする。
【0041】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状である。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0042】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、巻回軸C方向をX軸方向(一対の短壁部314が対向する方向)に向けた状態で電極体2が収容される(図2参照)。
【0043】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32は、Z軸方向から見て、ケース本体31の開口周縁部34に対応した輪郭形状を有する板状の部材である。即ち、蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。
【0044】
この蓋板32が該蓋板32の周縁部をケース本体31の開口周縁部34に重ね合わされた状態でケース本体31に接合されることによって、ケース3が形成される。本実施形態のケース3では、ケース本体31の開口周縁部34と蓋板32の周縁部とが溶接によって接合されている。
【0045】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0046】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2(巻回体20)と導通可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と導通可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを導通可能に接続するクリップ部材50を備える。
【0047】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、外部端子4とクリップ部材50とを導通可能に接続する。具体的に、集電体5は、外部端子4と導通可能に接続される第一接続部51と、電極体2と導通可能に接続される第二接続部52と、第一接続部51と第二接続部52とを接続する屈曲部53と、を有する。集電体5では、屈曲部53がケース3内の蓋板32と短壁部314との境界近傍に配置され、第一接続部51が屈曲部53から蓋板32に沿って延びると共に、第二接続部52が屈曲部53から短壁部314に沿って延びる。本実施形態の第二接続部52は、例えば、超音波溶接によってクリップ部材50と接合される。
【0048】
以上のように構成される集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、巻回体20の正極の非被覆積層部24と、負極の非被覆積層部24とにそれぞれ配置される。正極の集電体5と負極の集電体5とは、異なる素材によって形成される。具体的に、正極の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
【0049】
クリップ部材50は、巻回体20の非被覆積層部24において積層された正極21又は負極22を束ねるように挟む。これにより、クリップ部材50は、非被覆積層部24において積層される正極21同士、又は負極22同士を確実に導通させる。本実施形態のクリップ部材50は、板状の金属材料を断面がU字状となるように曲げ加工することによって形成される。
【0050】
絶縁部材6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。この絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成されている。
【0051】
次に、電極体2の製造方法について図6及び図7も参照しつつ説明する。
【0052】
先ず、正極21と負極22との間にセパレータ23が位置するように、正極21、負極22、及びセパレータ23が巻回されることにより、巻回体20が形成される。このとき、巻回体20は、巻回軸C方向から見て、中空部20aが形成された状態である(図6参照)。
【0053】
次に、巻回体20の周囲に保形部25が形成される。具体的には、熱硬化させる前の状態(柔軟な状態)の二つのシート状部材250が巻回体20の周囲に配置され、巻回体20を偏平にするためのプレスと、各シート状部材250の硬化及びシート状部材250同士の接合(接着等)のためのヒートプレスとが同時に行われる。詳しくは、以下の通りである。
【0054】
図6に示すように、両端部251の第一の面S1側に熱可塑性樹脂の層(接着層)252を有する二つのシート状部材250が、第一の面S1が互いに対向し且つその間に巻回体20が位置するように配置される。
【0055】
続いて、図7に示すように、一対の第一プレス板P1が、二つのシート状部材250における巻回体20を覆う部位253を挟み込んでヒートプレスする。本実施形態では、温度が220℃であり、圧力が2MPaのヒートプレスが5秒間行われる。これにより、巻回体20が十分に偏平して中空部20aが十分に潰れるまでプレスされた状態で、二つのシート状部材250における第一プレス板P1によって熱を加えられた部位が硬化(熱硬化)し、保形部本体25Aが形成される。尚、図7においては、巻回体20が偏平して平らになった部位のみに第一プレス板P1が接しているが、シート状部材250における保形部本体25Aと対応する部位全体に(即ち、湾曲している部位にも)第一プレス板P1が接する構成でもよい。また、第一プレス板P1によって、中空部20aが無くなるまでプレスされてもよく、僅かに残る程度にプレスされてもよい。
【0056】
また、この一対の第一プレス板P1によるヒートプレスと同時に、一対の第二プレス板P2が、二つのシート状部材250において接着層252を互いに対向させている一方の端部251同士を挟み込んでヒートプレスすると共に、一対の第三プレス板P3が、二つのシート状部材250において接着層252を互いに対向させている他方の端部251同士を挟み込んでヒートプレスする。これにより、対向する一方の端部251同士が硬化(熱硬化)すると共に接着層252が互いに接着する。また、対向する他方の端部251同士が硬化(熱硬化)すると共に接着層252が互いに接着する(図7参照)。このとき、対向する端部251のそれぞれに配置されていた接着層252は、ヒートプレスによって接着されて一体となる、即ち、一つの接着層252を構成するようになる。
【0057】
これら各プレス板P1、P2、P3によるヒートプレス後に保形部25が十分に冷えることで、巻回体20の周囲に保形部25を備えた電極体2が完成する。
【0058】
以上の電極体2によれば、電極体2がケース3に入れる前の状態においても、保形部25によって巻回体20の変形(本実施形態の場合、例えば、偏平な巻回体がプレス前の状態に戻るような、即ち、中空部20aがY軸方向に広がるような変形)が抑えられ、これにより、巻回体20の変形に起因する電極21、22間の隙間の発生が抑えられる。
【0059】
また、保形部25によって巻回体20(電極体2)の形が保たれているため、蓄電素子1の製造時等において、巻回体20の変形に起因する電極21、22間の隙間の発生が抑えられ、これにより、電極体2において電極21、22間に隙間が生じることに起因する抵抗上昇等が抑えられる。その結果、該電極体2を備える蓄電素子1での性能低下が抑えられる。
【0060】
尚、本発明の電極体及び該電極体を備える蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0061】
保形部25の具体的な構成は限定されない。例えば、上記実施形態の保形部25は、二つのシート状部材250を有しているが、一つのシート状部材250を有してもよく、三つ以上のシート状部材250を有してもよい。保形部25が一つのシート状部材250を有する場合は、該シート状部材250の両端部が第一の面S1を対向させた状態で互いに接合されて接合部25Bが構成され、三つ以上のシート状部材250を有する場合は、巻回体20の周方向(巻回方向)に隣り合うシート状部材250の端部251同士が第一の面S1を対向させた状態で互いに接合されて接合部25Bが構成される。
【0062】
また、上記実施形態の保形部25では、接合部25Bは、巻回体20の湾曲部位20Rの頂部から突出しているが、湾曲部位20Rの他の部位から突出してもよく、巻回体20の平坦部位(各電極21、22、セパレータ23が平坦な状態で積層されている部位:巻回体20における二つの湾曲部位20Rの間の部位)から突出してもよい。
【0063】
接合部25Bが湾曲部位20Rの他の部位(頂部以外の部位)から突出する場合、例えば、図8に示すように、巻回体20の湾曲部位(外周面が湾曲している部位)20Rと、湾曲部位20Rと対向するケース3の角部と、の間に位置していてもよい。このように、ケース3内において湾曲部位20Rとケース3の角部との間に生じる隙間(空間)を利用して接合部25B(一対の端部251)が配置されることで、ケース3内でのエネルギー密度の低下が抑えられる。即ち、接合部25Bの配置の有無に関わらず隙間の形成される湾曲部位20Rとケース3の角部との間に接合部25Bが配置されることで、他の位置に配置されたときのようなエネルギー密度の低下(詳しくは、接合部25Bがケース3内で占める領域(体積)分のエネルギー密度の低下)の発生が抑えられる。
【0064】
また、保形部25の接合部25Bは、巻回体20の外周面から外側(上記実施形態の例では、巻回軸C方向から見て湾曲部位20Rの径方向)に真っ直ぐ延びていなくてもよい。接合部25Bは、途中で湾曲、屈曲等していてもよく、巻回体20の外周面に沿って巻回方に延びていてもよい。
【0065】
また、保形部25の接合部25Bは、セパレータ23の一部を外部(電極体2の外部)に露出させた状態で該セパレータ23を挟み込んでいてもよい。具体的には、図9に示すように、セパレータ23の一部が接合部25Bの端縁から外側に突出(露出)するように、一対の端部251がセパレータ23を挟み込んでいてもよい。また、図10に示すように、接合部25Bを構成する一対の端部251のうちの少なくとも一方の端部251が該端部251の厚さ方向に貫通する孔(貫通孔)251aを有し、セパレータ23の一部(即ち、セパレータ23における一対の端部251に挟み込まれた部位の一部)が該貫通孔251aを通じて外部に露出する構成でもよい。
【0066】
上記実施形態の電極体2では、樹脂によって構成される保形部25が巻回体20の最外周のセパレータ23を覆っているため、該電極体2が電解液と共にケース3に収容されていても、セパレータ23における電解液との接触面積が小さい。しかし、上記のようなセパレータ23の一部が電極体2の外側に露出する構成であれば、電極体2が電解液と共にケース3に収容されることで、セパレータ23の前記露出させた部位を通じて電解液が巻回体20の内部(巻回中心部側)に十分に供給される。
【0067】
また、接合部25Bを構成する一対の端部251の接着層252は、熱可塑性樹脂によって構成されているが、この構成に限定されず、熱可塑性樹脂を含む接着剤によって構成されていてもよい。また、接着層252は、反応系接着剤、感圧系接着剤等によって構成されていてもよい。
【0068】
また、保形部25を構成するシート状部材250を構成する素材は、熱硬化性樹脂に限定されない。例えば、シート状部材250は、光硬化性樹脂によって構成されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態の保形部25では、保形部本体25Aは、巻回体20の外周面に接着等によって接合されていないが、この構成に限定されない。保形部本体25Aは、巻回体20の外周面に接着等によって接合されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0071】
蓄電素子(例えば電池)1は、図11に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0072】
1…蓄電素子、2…電極体、20…巻回体、20R…湾曲部位、20a…中空部、21…正極(電極)、211…金属箔、212…正極活物質層、22…負極(電極)、221…金属箔、222…負極活物質層、23…セパレータ、24…非被覆積層部、25…保形部、25A…保形部本体、25B…接合部(一対の端部)、250…シート状部材、251…端部、251a…貫通孔(孔)、252…接着層、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、5…集電体、50…クリップ部材、51…第一接続部、52…第二接続部、53…屈曲部、6…絶縁部材、11…蓄電装置、12…バスバ部材、C…巻回軸、P1…第一プレス板、P2…第二プレス板、P3…第三プレス板、S1…第一の面、S2…第二の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11