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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122196
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】物体検出装置及び移動体制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20220815BHJP
【FI】
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019365
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 幸典
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC27
5J083AD04
5J083AD09
5J083AE01
5J083AE06
5J083AE08
5J083AF09
5J083BE11
5J083BE21
5J083BE38
5J083CA01
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】超音波の非指向性成分を利用して異常の検出が可能な物体検出装置及び移動体制御装置を提供する。
【解決手段】物体検出装置は、移動体の進行方向に対して平行又は略平行な方向に指向性を有する超音波を含む送信波を送信し、物体からの反射波を受信する送受信部と、送信波のうち送受信部から鉛直方向下方へ進行する超音波の反射波に基づいて算出される、送受信部と送受信部の鉛直方向下方に存在する物体との間の下方距離と、予め定められた基準距離とに基づいて、異常の有無を判定する判定部と、異常に関する情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の進行方向に対して平行又は略平行な方向に指向性を有する超音波を含む送信波を送信し、物体からの反射波を受信する送受信部と、
前記送信波のうち前記送受信部から鉛直方向下方へ進行する超音波の反射波に基づいて算出される前記送受信部と前記送受信部の鉛直方向下方に存在する物体との間の下方距離と、予め定められた基準距離とに基づいて、異常の有無を判定する判定部と、
前記異常に関する情報を出力する出力部と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、停止している前記移動体が発進する前に前記異常の有無を判定する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記基準距離は、前記送受信部の路面からの高さに対応する距離である、
請求項1又は2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記基準距離は、前記移動体の停止時に算出された前記下方距離である、
請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記下方距離が前記基準距離より短い場合に異常があると判定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記基準距離以下に対応する前記反射波の強度が予め定められた基準強度に達していない場合に異常があると判定する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記送信波は、前記移動体の進行方向に対して平行又は略平行な方向に進行する超音波をメインローブとして含み、前記送受信部から鉛直方向下方へ進行する超音波をサイドローブとして含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記指向性を変化させる指向性変更部、
を更に備える請求項1~7のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の物体検出装置と、
前記物体検出装置から出力された異常に関する情報に基づいて移動体を制御するための処理を行う制御装置と、
を備える移動体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置及び移動体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体を制御するシステム等において、送信した超音波が物体に反射されて戻ってくるまでの時間(TOF:Time Of Flight)に基づいて移動体の周辺に存在する物体を検出する物体検出装置が利用されている。このような物体検出装置において、超音波に指向性を持たせる技術が利用されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-1180号公報
【特許文献2】特開平9-331742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指向性を有する超音波には、指向性に対応する方向以外の方向へ進行する成分(非指向性成分)が含まれている。従来技術においては、このような非指向性成分が有効に利用されていないため、改善の余地がある。
【0005】
本開示が解決しようとする課題の一つは、超音波の非指向性成分を利用して異常の検出が可能な物体検出装置及び移動体制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例としての物体検出装置は、移動体の進行方向に対して平行又は略平行な方向に指向性を有する超音波を含む送信波を送信し、物体からの反射波を受信する送受信部と、送信波のうち送受信部から鉛直方向下方へ進行する超音波の反射波に基づいて算出される送受信部と送受信部の鉛直方向下方に存在する物体との間の下方距離と、予め定められた基準距離とに基づいて、異常の有無を判定する判定部と、異常に関する情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、送受信部から鉛直方向下方へ進行する超音波(非指向性成分)を利用して異常を検出できる。
【0008】
また、判定部は、停止している移動体が発進する前に異常の有無を判定するものであってもよい。
【0009】
これにより、移動体の停止時に発生した異常(例えば車両の下への物体の侵入、送受信部の不具合等)を移動体の発進前に検出できる。
【0010】
また、基準距離は、送受信部の路面からの高さに対応する距離であってもよい。
【0011】
これにより、送受信部と路面との間への物体の侵入等を検出できる。
【0012】
また、基準距離は、移動体の停止時に算出された下方距離であってもよい。
【0013】
これにより、送受信部の下方の状態を停止時と発進時とで比較して異常を検出できる。
【0014】
また、判定部は、下方距離が基準距離より短い場合に異常があると判定するものであってもよい。
【0015】
これにより、移動体と路面等との間への物体の侵入等を検出できる。
【0016】
また、判定部は、基準距離以下に対応する反射波の強度が予め定められた基準強度に達していない場合に異常があると判定するものであってもよい。
【0017】
これにより、送受信部の不具合(例えば汚れの付着等により超音波が適切に送受できない状態等)を検出できる。
【0018】
また、送信波は、移動体の進行方向に対して平行又は略平行な方向に進行する超音波をメインローブとして含み、送受信部から鉛直方向下方へ進行する超音波をサイドローブとして含むものであってもよい。
【0019】
これにより、超音波のサイドローブ(非指向性成分の一例)を有効に利用して異常を検出できる。
【0020】
また、物体検出装置は、指向性を変化させる指向性変更部を更に備えてもよい。
【0021】
これにより、状況に応じて物体や異常の検出の精度を向上させることができる。
【0022】
また、本開示の一例としての移動体制御装置は、上記物体検出装置と、物体検出装置から出力された異常に関する情報に基づいて移動体を制御するための処理を行う制御装置と、を備えるものである。
【0023】
これにより、上記のような物体検出装置により検出された異常に基づいて移動体を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第1実施形態に係る車両の構成の一例を示す上面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る車両制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る物体検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態においてTOFを利用した物体検出法の概要を説明するための包絡線を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る送受信部により送受される超音波の特徴の一例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態において正常時に検出される包絡線の一例を示すグラフである。
図7図7は、第1実施形態において送受信部と路面との間に物体が侵入した場合に検出される包絡線の一例を示すグラフである。
図8図8は、第1実施形態において送受信部に不具合がある場合に検出される包絡線の一例を示すグラフである。
図9図9は、第1実施形態に係る物体検出装置における処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第1実施形態に係る基準距離の設定方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第2実施形態に係る物体検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は一例であって、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る車両1の構成の一例を示す上面図である。車両1は、本実施形態に係る物体検出装置が搭載される移動体の一例である。本実施形態に係る物体検出装置は、車両1から超音波を送信し物体からの反射波を受信することにより取得されるTOF、ドップラーシフト情報等に基づき、車両1の周辺に存在する物体(他車両、構造物、歩行者等)を検出する装置である。
【0027】
本実施形態に係る物体検出装置は、複数の送受信部21A~21H(以下、複数の送受信部21A~21Hを区別する必要がない場合には送受信部21と略記する。)を有する。各送受信部21は、車両1の外装としての車体2に設置され、車体2の外側へ向けて超音波(送信波)を送信し、車体2の外側に存在する物体からの反射波を受信する。図1に示す例では、車体2の前端部に4つの送受信部21A~21Dが配置され、後端部に4つの送受信部21E~21Hが配置されている。なお、送受信部21の数及び設置位置は上記例に限定されるものではない。
【0028】
図2は、第1実施形態に係る車両制御装置50の構成の一例を示すブロック図である。車両制御装置50(移動体制御装置の一例)は、物体検出装置200から出力される情報に基づいて車両1を制御するための処理を行う。本実施形態に係る車両制御装置50は、ECU100及び物体検出装置200を含む。
【0029】
物体検出装置200は、複数の送受信部21及び制御部22を含む。各送受信部21は、圧電素子等を利用して構成される振動子211、増幅器等を含み、振動子211の振動により超音波の送受信を実現するものである。具体的には、各送受信部21は、振動子211の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波が物体Oにより反射された反射波によりもたらされる振動子211の振動を検出する。振動子211の振動は、電気信号に変換され、当該電気信号に基づいて送受信部21から物体Oまでの距離に対応するTOF、物体Oの相対速度に対応するドップラーシフト情報等を取得できる。
【0030】
本実施形態に係る送受信部21は、車両1の進行方向に対して平行又は略平行な方向に指向性を有する超音波を含む送信波を送信する。当該送信波には、送受信部21から鉛直方向下方へ進行する超音波(非指向性成分)が含まれる。当該送信波については後述する。
【0031】
なお、図2に示す例では、送信波の送信と反射波の受信との両方が単一の振動子211を利用して行われる構成が例示されているが、送受信部21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、送信波の送信用の振動子と反射波の受信用の振動子とが個別に設けられた構成のように、送信側と受信側とが分離された構成であってもよい。
【0032】
制御部220は、入出力装置221、記憶装置222、及びプロセッサ223を含む。入出力装置221は、制御部220と外部(送受信部21、ECU100等)との間で情報の送受信を実現するためのインターフェースデバイスである。記憶装置222は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置を含む。プロセッサ223は、制御部220の機能を実現するための各種処理を実行する集積回路であり、例えばプログラムに従い動作するCPU(Central Processing Unit)、特定用途向けに設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む。プロセッサ223は、記憶装置222に記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の演算処理及び制御処理を実行する。
【0033】
ECU100は、物体検出装置200等から取得される各種情報に基づき、車両1を制御するための各種処理を実行するユニットである。ECU100は、入出力装置110、記憶装置120、及びプロセッサ130を有する。入出力装置110は、ECU100と外部機構(物体検出装置200、駆動機構、制動機構、操舵機構、変速機構、車内ディスプレイ、スピーカ等)との間で情報の送受信を実現するためのインターフェースデバイスである。記憶装置120は、ROM、RAM等の主記憶装置、HDD、SSD等の補助記憶装置を含む。プロセッサ130は、ECU100の機能を実現するための各種処理を実行する集積回路であり、例えばCPU、ASIC等を含む。プロセッサ130は、記憶装置120に記憶されたプログラムを読み出して各種の演算処理及び制御処理を実行する。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る物体検出装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る物体検出装置200は、信号処理部302、物体検出部303、異常判定部304(判定部)、基準情報保持部305、及び出力部306を含む。これらの機能的構成要素302~306は、図2に示すような物体検出装置200のハードウェア構成要素、及びファームウェア、プログラム等のソフトウェア構成要素の協働により実現される。
【0035】
信号処理部302は、送受信部21により取得された信号を処理し、各種データを生成する。信号処理部302は、例えば、振動子211の振動に対応する電気信号に対する増幅処理、フィルタ処理、包絡線処理等を行い、送受信部21により送受信される超音波の強度(振幅)の経時的変化を示す包絡線データ等を生成する。当該包絡線データに基づいて、車両1の周辺に存在する物体に対応するTOFを検出し、車両1(送受信部21)から物体までの距離を算出できる。
【0036】
物体検出部303は、信号処理部302により生成されたデータに基づいて、車両1の周辺に存在する物体(例えば他車両、構造物、歩行者等)を検出し、当該物体に関する物体情報を生成する。物体情報には、例えば、車両1(送受信部21)から物体までの距離、物体の相対速度、物体の種類等が含まれ得る。
【0037】
異常判定部304は、送信波のうち送受信部21から鉛直方向下方へ進行する超音波の反射波に基づいて算出される、送受信部21と送受信部21の鉛直方向下方に存在する物体との間の下方距離と、予め定められた基準距離とに基づいて、異常の有無を判定する。送受信部21から鉛直方向下方へ進行する超音波は、送受信部21から送信される送信波の成分のうち、指向性に対応する方向(車両1の進行方向に対して平行又は略平行な方向)以外の方向へ進行する非指向性成分に該当する。この場合における異常とは、送受信部21と路面との間への物体(例えば子供、動物等)の侵入等であり得る。
【0038】
また、異常判定部304は、基準距離以下の距離に対応する反射波の強度が予め定められた基準強度に達していない場合に異常があると判定する。この場合における異常とは、送受信部21の不具合(例えば汚れの付着等により超音波の送受が適切に行われない状態)等であり得る。また、異常判定部304は、停止(駐車)している車両1が発進する前に異常の有無を判定する。
【0039】
基準情報保持部305は、異常判定部304による異常判定に用いられる基準距離及び基準強度を保持する。基準情報保持部305は、送受信部21の路面からの高さに対応する距離を基準距離として保持する。また、基準情報設定部305は、車両1の停止(駐車)時に算出された下方距離を基準距離としてもよい。また、基準情報設定部305は、基準距離に対応する反射波の強度を基準強度として保持する。基準距離及び基準強度は、記憶装置に記憶され、異常判定部304による異常判定時(車両1が停止状態から発進状態に移行する際等)に読み出される。
【0040】
出力部306は、物体検出303により検出された物体に関する物体情報、異常判定部304により判定された異常に関する異常情報等を出力する。異常情報等は、例えばECU100等に出力され、車両1の制御(例えば乗員への警告、走行制限処理等)に利用される。
【0041】
図4は、第1実施形態においてTOFを利用した物体検出法の概要を説明するための包絡線を示す図である。図4には、送受信部21が送受信する超音波の強度の経時的変化を示す包絡線が例示されている。図4に示すブラフにおいて、横軸は時間(TOF)に対応し、縦軸は送受信部21により送受信される超音波の強度に対応する。
【0042】
実線L11は、振動子211の振動の大きさを示す強度の経時的変化を示す包絡線の一例を表している。この実線L11からは、振動子211がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間、慣性による振動子211の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。従って、図4に示されるグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0043】
実線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子211の振動の大きさが、一点鎖線L21で表される所定の閾値を超える(又は以上になる)ピークを迎える。この閾値は、振動子211の振動が、検出対象の物体からの反射波の受信によってもたらされたものか、又は、検出対象外の物体からの反射波の受信によってもたらされたものかを識別するために予め設定される値である。ここでは一点鎖線L21で示される閾値が一定値として示されているが、当該閾値は時間経過、状況等に応じて変化する変動値であってもよい。
【0044】
一点鎖線L21で示される閾値を超えた(又は以上の)ピークを有する振動は、検出対象の物体からの反射波の受信によってもたらされたものとみなすことができる。一方、閾値以下の(又は未満の)ピークを有する振動は、検出対象外の物体からの反射波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。従って、実線L11からは、タイミングt4における振動子211の振動が、検出対象の物体からの反射波の受信によってもたらされたものである、ということが読み取れる。
【0045】
なお、実線L11においては、タイミングt4以降で、振動子211の振動が減衰している。従って、タイミングt4は、検出対象の物体からの反射波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミングに対応する。
【0046】
また、実線L11において、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、検出対象の物体からの反射波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミング、に対応する。従って、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTが、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0047】
上記を踏まえて、TOFを利用して物体までの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と反射波が受信され始めたタイミングt3との間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と反射波の強度が閾値を超えてピークを迎えるタイミングt4との差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0048】
送信波が送信され始めたタイミングt0は、物体検出装置200が動作を開始したタイミングとして容易に特定することができ、送信波の送信時間としての時間Taは、設定等によって予め定められている。従って、反射波の強度が閾値を超えてピークを迎えるタイミングt4を特定することにより、検出対象の物体までの距離を求めることができる。
【0049】
図5は、本実施形態に係る送受信部21により送受される超音波の特徴の一例を示す図である。本実施形態に係る送受信部21から送信される送信波には、車両1の進行方向に対して平行又は略平行な方向に指向性を有する送信波Wt1と、送受信部21から鉛直方向下方へ進行する送信波Wt2とが含まれる。送信波Wt2は、上記非指向性成分に該当する。
【0050】
車両1の進行方向に対して平行又は略平行な方向には、前進方向、後退方向、車幅方向等が含まれる。送受信部21から送信される送信波は、例えば、送信波Wt1をメインローブとして含み、送信波Wt2をサイドローブとして含む超音波であり得る。送受信部21は、送信波Wt1が車両1の進行方向に対して平行又は略平行な方向に存在する物体(例えば他車両、構造物、歩行者等)に反射された反射波Wr1を受信する。また、送受信部21は、送信波Wt2が送受信部21の鉛直方向下方に存在する物体(例えば路面G、送受信部21と路面Gとの間に侵入した物体等)に反射された反射波Wr2を受信する。送受信部21と路面Gとの間に物体が存在しなければ、送受信部21と路面Gとの間の距離Dに対応するTOFが検出される。当該距離Dは、上述した基準距離の一例となる。
【0051】
図6は、第1実施形態において正常時に検出される包絡線の一例を示すグラフである。図6において、横軸は送信波Wt1,Wt2が送信されてからの経過時間に対応し、縦軸は送受信部21により送受信される超音波の強度に対応している。また、図6において、閾値A1及び閾値A2が示されている。閾値A1は、送受信部21の構造等に起因するノイズを除去するために設定された閾値である。閾値A2は、送受信部21から鉛直方向下方に進行する送信波Wt2の反射波Wr2により基準距離(本例では距離D)に対応するピークを検出するために閾値である。閾値A2は、通常の検出対象となる物体(他車両、構造物、歩行者等)を検出するための閾値(例えば図4中一点鎖線L21で示すような閾値)より低い値であることが好ましい。
【0052】
図6に示すように、正常時(車両1の下への物体の侵入、送受信部21の不具合等の異常が無い場合)には、距離Dに対応するタイミングts(TOF:ts-t0)でピークが検出される。当該タイミングts(TOF:ts-t0)は、既知の値として予め記憶装置に記憶されてもよいし、所定のタイミング(例えば車両1の駐車完了時、発進前等)に測定されてもよい。すなわち、基準距離としての距離Dに対応するタイミングtsにおいて閾値A2を超える強度を有するピークが検出されれば、正常な状態であると判定できる。
【0053】
図7は、第1実施形態において送受信部21と路面Gとの間に物体が侵入した場合に検出される包絡線の一例を示すグラフである。図7に示すように、送受信部21と路面Gとの間に物体が存在する場合には、距離Dに対応するタイミングtsより早いタイミングtuでピークが検出される。このとき、時間差Δt=ts-tuは、当該物体の路面Gからの高さに対応する。このように、基準距離としての距離Dに対応するタイミングtsより早いタイミングtuにおいて閾値A2を超える強度を有するピークが検出されれば、異常が有る状態(車両1の下へ物体が侵入している状態等)であると判定できる。
【0054】
図8は、第1実施形態において送受信部21に不具合がある場合に検出される包絡線の一例を示すグラフである。図8に示すように、送受信部21の不具合(汚れ付着等)がある場合には、距離Dに対応するタイミングts以前の時間(t0~ts)において閾値A2(基準強度の一例)に達する強度のピークが検出されない。すなわち、基準距離としての距離D以下に対応する時間t0~tsにおいて閾値A2に達する強度を有するピークが検出されなければ、異常が有る(送受信部21に不具合がある状態等)であると判定できる。
【0055】
図9は、第1実施形態に係る物体検出装置200における処理の一例を示すフローチャートである。車両1のイグニッション電源がONになると(S101)、送受信部21は超音波(送信波Wt1,Wt2及び反射波Wr1,Wr2)の送受を1回以上実行し(S102)、信号処理部302は当該超音波の送受の結果に基づく包絡線データ等から反射波Wr2に基づく下方距離及び反射波Wr2の強度を測定する(S103)。
【0056】
判定部304は、上記測定結果に基づいてタイミングtsより前に閾値A2を超えるピークが検出されたか否かを判定する(S104)。タイミングtsより前に閾値A2を超えるピークが検出された場合(S104:Yes)、判定部304は車両1の下への物体の侵入等の異常が有ると判定し、出力部306は当該異常を示す異常情報をECU100等へ出力する(S105)。その後、判定部304は、上記測定結果に基づいて時間t0~tsに閾値A2を超える強度を有するピークが検出されたか否かを判定する(S106)。タイミングtsより前に閾値A2を超えるピークが検出されなかった場合(S104:No)、ステップS105が実行されることなくステップS106が実行される。時間t0~tsに閾値A2を超える強度を有するピークが検出されなかった場合(S106:No)、判定部204は送受信部21の不具合等の異常(汚れ付着等)が有ると判定し、出力部306は当該異常を示す異常情報をECU100等に出力する(S107)。時間t0~tsに閾値A2を超える強度を有するピークが検出された場合(S106:Yes)、ステップS107が実行されることなく本ルーチンが終了する。
【0057】
なお、上記においては、基準距離が送受信部21と路面Gとの間の距離Dである場合を例示したが、基準距離はこれに限定されるものではない。
【0058】
図10は、第1実施形態に係る基準距離の設定方法の一例を示すフローチャートである。車両1の駐車完了前に、送受信部21は超音波の送受を複数回実行する(S201)。信号処理部302は、当該超音波の送受の結果に基づいて、複数の下方距離の平均値である平均下方距離と、当該複数の下方距離のそれぞれに対応する反射波Wr2の強度の平均値である平均強度とを算出し、基準情報保持部305は、平均下方距離及び平均強度を記憶装置に記憶させる(S202)。駐車が完了すると、イグニッション電源がOFFになる(S203)。
【0059】
その後、車両1の発進時にイグニッション電源がONになると、基準情報保持部305は、記憶装置に記憶されている平均下方距離及び平均強度を読み出し(S204)、平均下方距離を基準距離に設定し(S205)、平均強度に基づいて閾値A1及び閾値A2を設定する(S206)。このとき、閾値A1は、送受信部21の構造等に起因する低強度のノイズを除去するように設定される。閾値A2は、平均下方距離に対応する物体(送受信部21の鉛直方向下方に存在する物体)からの反射波Wr2を検出できるように設定される。当該平均下方距離に対応する物体は、多くの場合路面Gであるが、縁石、パーキングブロック等である場合もある。上記のように基準距離及び基準強度を設定することにより、駐車前の状態に基づいて異常を検知できる。なお、上記においては、超音波の送受を複数回行うことにより得られる平均値を利用する場合を例示したが、1回の超音波の送受で得られる下方距離及び強度を基準下方距離及び基準強度としてもよい。
【0060】
上記実施形態における各種機能を実現するための処理をコンピュータ(例えば制御部220のプロセッサ223、ECU100のプロセッサ130等)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されてもよい。
【0061】
上記実施形態によれば、車両1の周辺に存在する物体を検出するために送信され、指向性を有する超音波に含まれる非指向性成分(送信波Wt2及び反射波Wr2)を利用して、車両1の下部への物体の侵入、送受信部21の不具合等の異常を検出できる。これにより、別途のセンサを追加することなく異常を検出できる。
【0062】
以下に、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の作用効果を奏する箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0063】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る物体検出装置500の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る物体検出装置500は、指向性変更部511を有する点で第1実施形態に係る物体検出装置200と相違する。
【0064】
本実施形態に係る指向性変更部511は、送受信部21から送信される送信波(図5に示す送信波Wt1及び送信波Wt2の両方又はいずれか一方)の指向性を変化させる。送信波の指向性を変化させる方法は特に限定されるべきものではないが、例えば、所望する指向性に応じて振動子211を構成する圧電素子に対する電気印加特性を調整する方法等が採用され得る。
【0065】
上記構成によれば、状況に応じて物体の検出精度や異常の検出精度を向上させることができる。
【0066】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した実施形態及びその変形例はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態及び変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、及び変更を行うことができる。上述した実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、2…車体、21,21A~21H…送受信部、50…車両制御装置(移動体制御装置)、100…ECU(制御装置)、110…入出力装置、120…記憶装置、130…プロセッサ、200,500…物体検出装置、211…振動子、220…制御部、221…入出力装置、222…記憶装置、223…プロセッサ、302…信号処理部、303…物体検出部、304…異常判定部、305…基準情報保持部、306…出力部、511…指向性変更部、D…距離(基準距離)、G…路面、O…物体、Wr1,Wr2…反射波、Wt1,Wt2…送信波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-1180号公報
【特許文献2】特開平6-331742号公報