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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122197
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】物体検出装置及び移動体制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20220815BHJP
【FI】
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019366
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
(72)【発明者】
【氏名】脇田 幸典
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC27
5J083AD04
5J083AD09
5J083AE01
5J083AE06
5J083AE08
5J083AF09
5J083BE11
5J083BE23
5J083BE38
5J083CA01
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】超音波を利用して路面の状態を検出することが可能な物体検出装置及び移動体制御装置を提供する。
【解決手段】物体検出装置は、路面を移動する移動体から送信波を送信し物体からの反射波を受信する送受信部と、送受信部により受信された反射波の強度の経時的変化を示すエコー情報と、予め定められた路面からの反射波の強度の経時的変化を示す基準エコー情報との差に基づいて、路面の変化に関する路面情報を生成する生成部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を移動する移動体から送信波を送信し物体からの反射波を受信する送受信部と、
前記送受信部により受信された反射波の強度の経時的変化を示すエコー情報と、予め定められた前記路面からの反射波の強度の経時的変化を示す基準エコー情報との差に基づいて、前記路面の変化に関する路面情報を生成する生成部と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記基準エコー情報において前記強度が所定の路面閾値以上となる基準路面検出期間と、前記エコー情報において前記強度が前記路面閾値以上となる路面検出期間との差に基づいて前記路面情報を生成する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記基準路面検出期間において、前記エコー情報における前記強度が前記路面閾値以上の状態から前記路面閾値より低くなる時点が検出された場合に、前記路面の摩擦抵抗が低くなることを示す前記路面情報を生成する、
請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記基準路面検出期間において、前記エコー情報の前記強度が前記路面閾値より低い状態から前記路面閾値以上となる時点が検出された場合に、前記路面の摩擦抵抗が高くなることを示す前記路面情報を生成する、
請求項2又は3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記エコー情報は、複数の前記送受信部により取得された前記強度の平均値に基づいて生成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の物体検出装置と、
前記物体検出装置から出力された路面の変化に関する路面情報に基づいて、前記路面を移動する移動体を制御するための処理を行う制御装置と、
を備える移動体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置及び移動体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両制御システム等において、超音波の送受により車両の周辺に存在する物体を検出する装置が利用されている。また、車両が走行する路面の状況を推定する装置が利用されている。例えば、路面にレーザ光又は電波を照射し、その反射光の強度に基づいて路面状態を推定する装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-66246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示が解決しようとする課題の一つは、超音波を利用して路面の状態を検出することが可能な物体検出装置及び移動体制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一例としての物体検出装置は、路面を移動する移動体から送信波を送信し物体からの反射波を受信する送受信部と、送受信部により受信された反射波の強度の経時的変化を示すエコー情報と、予め定められた路面からの反射波の強度の経時的変化を示す基準エコー情報との差に基づいて、路面の変化に関する路面情報を生成する生成部と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、路面の変化に伴う超音波の反射特性の変化を利用して路面の状態を検出できる。
【0007】
また、生成部は、基準エコー情報において強度が所定の路面閾値以上となる基準路面検出期間と、エコー情報において強度が路面閾値以上となる路面検出期間との差に基づいて路面情報を生成してもよい。
【0008】
これにより、路面の変化を正確に検出できる。
【0009】
また、生成部は、基準路面検出期間において、エコー情報における強度が路面閾値以上の状態から路面閾値より低くなる時点が検出された場合に、路面の摩擦抵抗が低くなることを示す路面情報を生成してもよい。
【0010】
これにより、路面の摩擦抵抗の低下に伴い反射波の強度が低下する現象を利用して、路面の摩擦抵抗の低下を検出できる。
【0011】
また、基準路面検出期間において、エコー情報の強度が路面閾値より低い状態から路面閾値以上となる時点が検出された場合に、路面の摩擦抵抗が高くなることを示す路面情報を生成してもよい。
【0012】
これにより、路面の摩擦抵抗の増加に伴い反射波の強度が増加する現象を利用して、路面の摩擦抵抗の増加を検出できる。
【0013】
また、エコー情報は、複数の送受信部により取得された強度の平均値に基づいて生成されてもよい。
【0014】
これにより、エコー情報の精度を向上させることができる。
【0015】
また、本開示の一例としての移動体制御装置は、上記物体検出装置と、物体検出装置から出力された路面の変化に関する路面情報に基づいて、路面を移動する移動体を制御するための処理を行う制御装置と、を備える。
【0016】
上記構成によれば、物体検出装置により生成された路面情報に基づいて移動体を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る車両の構成の一例を示す上面図である。
図2図2は、実施形態に係る車両制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る物体検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態においてTOFを利用して物体を検出する際のエコー情報の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態において路面の摩擦抵抗が低くなるように変化する場合における包絡線と基準包絡線との差の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態において路面の摩擦抵抗が増加するように変化する場合におけるエコー情報と基準エコー情報との差の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る物体情報を生成する際の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は一例であって、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0019】
図1は、実施形態に係る車両1の構成の一例を示す上面図である。車両1は、本実施形態に係る物体検出装置が搭載される移動体の一例である。本実施形態に係る物体検出装置は、車両1から超音波を送信し物体からの反射波を受信することにより取得されるTOF、ドップラーシフト情報等に基づき、車両1の周辺に存在する物体(他車両、構造物、歩行者、路面等)を検出する装置である。
【0020】
本実施形態に係る物体検出装置は、複数の送受信部21A~21H(以下、複数の送受信部21A~21Hを区別する必要がない場合には送受信部21と略記する。)を有する。各送受信部21は、車両1の外装としての車体2に設置され、車体2の外側へ向けて超音波(送信波)を送信し、車体2の外側に存在する物体からの反射波を受信する。図1に示す例では、車体2の前端部に4つの送受信部21A~21Dが配置され、後端部に4つの送受信部21E~21Hが配置されている。なお、送受信部21の数及び設置位置は上記例に限定されるものではない。
【0021】
図2は、実施形態に係る車両制御装置10の構成の一例を示すブロック図である。車両制御装置10(移動体制御装置の一例)は、物体検出装置11及びECU12を含む。車両制御装置10は、物体検出装置11から出力される情報に基づいて車両1を制御するための処理を行う。
【0022】
物体検出装置11は、複数の送受信部21及び制御部22を含む。各送受信部21は、圧電素子等を利用して構成される振動子31、増幅器等を含み、振動子31の振動により超音波の送受信を実現するものである。具体的には、各送受信部21は、振動子31の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波が物体により反射された反射波によりもたらされる振動子31の振動を検出する。当該物体には、車両1が接触を避けるべき対象物Oと、車両1が走行する路面Gとが含まれる。振動子31の振動は、電気信号に変換され、当該電気信号に基づいて、物体からの反射波の強度(振幅)の経時的変化を示すエコー情報を取得できる。当該エコー情報に基づいて、送受信部21(車体2)から物体までの距離に対応するTOF等を取得できる。
【0023】
エコー情報は、1つの送受信部21により取得されるデータに基づいて生成されてもよいし、複数の送受信部21のそれぞれにより取得される複数のデータに基づいて生成されてもよい。例えば、車体2の前方の存在する物体についてのエコー情報は、車体2の前方に配置された4つの送受信部21A~21D(図1参照)のうちの2つ以上により取得された2以上のデータ(例えば平均値等)に基づいて生成されてもよい。同様に、車体2の後方の存在する物体についてのエコー情報は、車体2の後方に配置された4つの送受信部21E~21H(図1参照)のうちの2つ以上により取得された2以上のデータに基づいて生成されてもよい。
【0024】
なお、図2に示す例では、送信波の送信と反射波の受信との両方が単一の振動子31を利用して行われる構成が例示されているが、送受信部21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、送信波の送信用の振動子と反射波の受信用の振動子とが個別に設けられた構成のように、送信側と受信側とが分離された構成であってもよい。
【0025】
制御部22は、入出力装置41、記憶装置42、及びプロセッサ43を含む。入出力装置41は、制御部22と外部(送受信部21、ECU12等)との間で情報の送受信を実現するためのインターフェースデバイスである。記憶装置42は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置を含む。プロセッサ43は、制御部22の機能を実現するための各種処理を実行する集積回路であり、例えばプログラムに従い動作するCPU(Central Processing Unit)、特定用途向けに設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む。プロセッサ43は、記憶装置42に記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の演算処理及び制御処理を実行する。
【0026】
ECU12は、物体検出装置11等から取得される各種情報に基づき、車両1を制御するための各種処理を実行するユニットである。ECU12は、入出力装置51、記憶装置52、及びプロセッサ53を有する。入出力装置51は、ECU12と外部機構(物体検出装置11、駆動機構、制動機構、操舵機構、変速機構、車内ディスプレイ、スピーカ等)との間で情報の送受信を実現するためのインターフェースデバイスである。記憶装置52は、ROM、RAM等の主記憶装置、HDD、SSD等の補助記憶装置を含む。プロセッサ53は、ECU12の機能を実現するための各種処理を実行する集積回路であり、例えばCPU、ASIC等を含む。プロセッサ53は、記憶装置52に記憶されたプログラムを読み出して各種の演算処理及び制御処理を実行する。
【0027】
図3は、実施形態に係る物体検出装置11の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る物体検出装置11は、信号処理部101、物体情報生成部102、路面情報生成部103(生成部)、記憶部104、及び出力部105を含む。これらの機能的構成要素101~105は、図2に例示するような物体検出装置11のハードウェア構成要素、及びファームウェア、プログラム等のソフトウェア構成要素の協働により実現される。
【0028】
信号処理部101は、送受信部21により取得されたデータを処理し、各種情報を生成する。信号処理部101は、例えば、振動子31の振動に対応する電気信号に対する増幅処理、フィルタ処理、包絡線処理等を行い、送受信部21により送信され物体により反射された反射波の強度(振幅)の経時的変化を示すエコー情報を生成する。当該エコー情報に基づいて、車両1の周辺に存在する物体に対応するTOFを検出し、車体2から物体までの距離等を算出できる。
【0029】
物体情報生成部102は、信号処理部101により生成された情報に基づいて、車両1の周辺に存在する対象物(例えば他車両、構造物、歩行者等)に関する物体情報を生成する。物体情報には、例えば、車体2から対象物までの距離、対象物の相対速度、対象物の種類等が含まれ得る。
【0030】
路面情報生成部103は、信号処理部101により生成された、反射波の強度の経時的変化を示すエコー情報と、予め定められた路面Gからの反射波の強度の経時的変化を示す基準エコー情報との差に基づいて、路面Gの変化に関する路面情報を生成する。路面情報生成部103による処理については後に詳述する。
【0031】
記憶部104は、基準エコー情報を記憶する。
【0032】
出力部105は、物体情報生成部102により生成された物体情報及び路面情報生成部103により生成された路面情報を出力する。物体情報及び路面情報は、例えばECU12等に出力され、車両1の制御(例えば加減速制御、操舵制御、乗員への警告等)に利用される。
【0033】
図4は、実施形態においてTOFを利用して物体を検出する際のエコー情報の一例を示す図である。図4には、送受信部21が送受信する超音波の強度の経時的変化を示す包絡線L11(エコー情報の一例)が例示されている。図4に示すグラフにおいて、横軸は時間(TOF)に対応し、縦軸は送受信部21により送受信される超音波の強度に対応する。
【0034】
包絡線L11は、振動子31の振動の大きさを示す強度の経時的変化を示している。この包絡線L11からは、振動子31がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間、慣性による振動子31の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。従って、図4に示されるグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0035】
包絡線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子31の振動の大きさが所定の対象物閾値Th1以上となるピークを迎える。この対象物閾値Th1は、振動子31の振動が対象物O(他車両、構造物、歩行者等)からの反射波の受信によってもたらされたものか、又は、対象物O以外の物体(例えば路面G等)からの反射波の受信によってもたらされたものかを識別するために予め設定される値である。ここでは対象物閾値Th1が一定値として示されているが、対象物閾値Th1は時間経過、状況等に応じて変化する変動値であってもよい。従って、対象物閾値Th1以上のピークを有する振動は、対象物Oからの反射波の受信によってもたらされたものとみなすことができる。
【0036】
なお、包絡線L11においては、タイミングt4以降で、振動子31の振動が減衰している。従って、タイミングt4は、対象物Oからの反射波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミングに対応する。
【0037】
また、包絡線L11において、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、対象物Oからの反射波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミング、に対応する。従って、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTが、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0038】
上記を踏まえて、TOFを利用して対象物Oまでの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と反射波が受信され始めたタイミングt3との間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と反射波の強度が対象物閾値Th1を超えてピークを迎えるタイミングt4との差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0039】
送信波が送信され始めたタイミングt0は、物体検出装置11が動作を開始したタイミングとして容易に特定することができ、送信波の送信時間としての時間Taは、設定等によって予め定められている。従って、反射波の強度が対象物閾値Th1以上となるピークを迎えるタイミングt4を特定することにより、対象物Oまでの距離を求めることができる。物体情報生成部102は、例えば上記のような方法により対象物Oに関する物体情報を生成する。
【0040】
以下に、本実施形態に係る路面情報生成部103による処理について説明する。路面情報生成部103は、反射波の強度の経時的変化を示すエコー情報(例えば上記のような包絡線)と、予め定められた路面Gからの反射波の強度の経時的変化を示す基準エコー情報との差に基づいて、路面Gの変化に関する路面情報を生成する。
【0041】
図5は、実施形態において路面Gの摩擦抵抗が低くなるように変化する場合における包絡線Laと基準包絡線Lsとの差の一例を示す図である。包絡線Laはエコー情報の一例であり、基準包絡線Lsは基準エコー情報の一例である。
【0042】
基準包絡線Lsは、路面Gからの反射波の強度が所定の路面閾値Th2以上となる基準路面検出期間Rsを含む。基準路面検出期間Rsは、反射波の強度が路面閾値Th2より低い状態から路面閾値Th2以上となる第1基準時点ts1と、強度が路面閾値Th2以上の状態から路面閾値Th2より低くなる第2基準時点ts2との間の期間である。路面閾値Th2は、基準となる状態の路面(例えば乾燥状態のアスファルト等)からの反射波に基づいて予め設定された値である。路面閾値Th2は、例えば、送受信部21(振動子31等)の構造等に起因するノイズを除去可能な値等であり得る。路面閾値Th2は、通常、上述したような対象物Oを検出するための対象物閾値Th1より低い値となる。路面閾値Th2は、一定値であってもよいし、変動値であってもよい。
【0043】
図5に例示する包絡線Laは、反射波の強度が路面閾値Th2より低い状態から路面閾値Th2以上となる第1時点ta1と、強度が路面閾値Th2以上の状態から路面閾値Th2より低くなる第2時点ta2との間の路面検出期間Raを含む。路面検出期間Raは、基準路面検出期間Rsより短くなっている。このような路面検出期間Raと基準路面検出期間Rsとの差は、包絡線Laに対応する路面Gの状態が、基準包絡線Lsに対応する基準となる路面の状態と異なっていることにより生じる。
【0044】
図5における第2時点ta2は、第2基準時点ts2より近距離に対応する時点で検出されている。すなわち、路面Gからの反射波の強度が、基準となる位置より近い位置で路面閾値Th2より低くなっている。このような現象は、路面Gの摩擦抵抗が低下するように変化する場合(摩擦抵抗が基準値以上の状態から基準値より低い値に変化する場合)に生じる。
【0045】
超音波の反射特性は、路面の材質、水分量、温度等に応じて変化し、超音波の反射効率は、多くの場合、反射対象(路面)の摩擦抵抗が小さくなるほど低くなる。そのため、上記のように、反射波の強度が路面閾値Th2以上の状態から路面閾値Th2より低くなる第2時点ta2が第2基準時点ts2より近距離に対応する時点で検出されるか否か、換言すれば、基準路面検出期間Rsにおいて第2時点ta2が検出されるか否かを監視することにより、車両1の進行方向における路面Gの摩擦抵抗の低下を未然に検出できる。これにより、路面Gの摩擦抵抗が低くなることを示す路面情報を生成し、当該路面情報を車両1の制御に利用することが可能となる。
【0046】
図6は、実施形態において路面Gの摩擦抵抗が増加するように変化する場合におけるエコー情報Laと基準エコー情報Lsとの差の一例を示す図である。図6における第1時点ta1は、第1基準時点ts1より遠距離に対応する時点で検出されている。すなわち、路面Gからの反射波の強度が、基準となる位置より遠い位置で路面閾値Th2以上となっている。このような現象は、路面Gの摩擦抵抗が増加するように変化する場合(摩擦抵抗が基準値より低い状態から基準値以上に変化する場合)に生じる。
【0047】
このように、反射波の強度が路面閾値Th2より低い状態から路面閾値Th2以上となる第1時点ta1が第1基準時点ts1より遠距離に対応する時点で検出されるか否か、換言すれば、基準路面検出期間Rsにおいて第1時点ta1が検出されるか否かを監視することにより、車両1の進行方向における路面Gの摩擦抵抗の増加を未然に検出できる。これにより、路面Gの摩擦抵抗が高くなることを示す路面情報を生成し、当該路面情報を車両1の制御に利用することが可能となる。
【0048】
図7は、実施形態に係る物体情報を生成する際の処理の一例を示すフローチャートである。複数の送受信部21が超音波を送受すると(S101)、信号処理部101は、複数の送受信部21のそれぞれにより取得される複数のデータ(反射波の強度値等)の平均値からエコー情報Laを取得する(S102)。
【0049】
路面情報生成部103は、記憶部104に記憶されている基準エコー情報Lsと信号処理部101により取得されたエコー情報Laとを比較し(S103)、基準路面検出期間Rs内で第2時点ta2が検出されたか否かを判定する(S104)。基準路面検出期間Rs内で第2時点ta2が検出された場合(S104:Yes)、路面情報生成部103は路面の摩擦抵抗の低下を示す路面情報を生成し、出力部105は当該路面情報をECU12等に出力し(S105)、本ルーチンは終了する。
【0050】
基準路面検出期間Rs内で第2時点ta2が検出されなかった場合(S104:No)、路面情報生成部103は、基準路面検出期間Rs内で第1時点ta1が検出されたか否かを判定する(S106)。基準路面検出期間Rs内で第1時点ta1が検出された場合(S106:Yes)、路面情報生成部103は路面の摩擦抵抗の増加を示す路面情報を生成し、出力部105は当該路面情報をECU12等に出力し(S107)、本ルーチンは終了する。基準路面検出期間Rs内で第1時点ta1が検出されなかった場合(S106:No)、本ルーチンは終了する。
【0051】
上記実施形態によれば、超音波を利用して路面の状態(摩擦抵抗の変化等)を検出することが可能となる。
【0052】
上記実施形態における各種機能を実現するための処理をコンピュータ(例えば制御部22のプロセッサ43、ECU12のプロセッサ53等)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されてもよい。
【0053】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した実施形態及びその変形例はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態及び変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、及び変更を行うことができる。上述した実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…車両、2…車体、10…車両制御装置(移動体制御装置)、11…物体検出装置、12…ECU(制御装置)、21,21A~21H…送受信部、22…制御部、31…振動子、41…入出力装置、42…記憶装置、43…プロセッサ、51…入出力装置、52…記憶装置、53…プロセッサ、101…信号処理部、102…物体情報生成部、103…路面情報生成部(生成部)、104…記憶部、105…出力部、G…路面、La…包絡線(エコー情報)、Ls…基準包絡線(基準エコー情報)、O…対象物、Rs…基準路面検出期間(路面検出期間)、Th1…対象物閾値、Th2…路面閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7