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  • 特開-寒天を接着剤とした木製積層板 図1
  • 特開-寒天を接着剤とした木製積層板 図2
  • 特開-寒天を接着剤とした木製積層板 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122219
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】寒天を接着剤とした木製積層板
(51)【国際特許分類】
   B27M 1/08 20060101AFI20220815BHJP
   B27D 1/04 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B27M1/08 B
B27D1/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021061879
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】519356951
【氏名又は名称】株式会社やまとわ
(72)【発明者】
【氏名】中村 博
(72)【発明者】
【氏名】中島 一雄
【テーマコード(参考)】
2B200
2B250
【Fターム(参考)】
2B200AA01
2B200BA01
2B200BB15
2B200BB20
2B200CA12
2B200DA05
2B200DA11
2B200FA24
2B200HA01
2B200HA08
2B250AA17
2B250BA05
2B250CA11
2B250DA04
2B250EA02
2B250EA13
2B250FA21
2B250FA23
2B250FA31
(57)【要約】
【課題】 環境汚染の問題を起こすことはない木製積層板を製造できる技術を確立する。
【解決手段】 繊維方向が互いに交差するように積層した少なくとも2~4枚の木材スライス単板を含む複数の木材スライス単板を、寒天からなる接着剤で張り合わせて、0.2~4mmの厚さに成型する。木材スライス単板としては、松、杉、檜、サクラ等の木材等の軟質木材からなり、厚さ100ミクロン~2000ミクロンとしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向が互いに交差するように、積層した少なくとも2~4枚の松、杉、檜、ポプラの軟質木材からなり、厚さ100ミクロン~2000ミクロンである木材スライス単板を含む複数の木材スライス単板の接合面に、寒天を塗布し、積層板の加圧成形として、2~100kg/cm2で処理して、張り合わせて、0.2~4mmの厚さに成型していることを特徴とする木製積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天を接着材とした木製積層板に関し、天然木を利用した好適な木製積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
松、杉、檜等の軟質木材などの天然木を適正に維持管理するためには間引きを行うことが必要であり、それに伴い間伐材が産出されるが、その用途は限られている。また、日本国内におけるスギ材を中心とした針葉樹林の備蓄量は年々増加しているにもかかわらず、需要は低迷しているのが現状である。
【0003】
一方、環境問題が叫ばれている昨今、産業廃棄物など不燃物の処理に対する将来への不安が募りつつあり、スチロール製食品用トレー等の石油化学製品を原料とした容器の使い捨てによる不燃ゴミの増加が問題になっている。
【0004】
そこで、松、杉、檜等の軟質木材などの木材を容器として新規に製品開発することができれば、焼却可能なゴミとして各家庭でも処理でき、有害ガスの発生も起こさず、併せて上記の天然木の有効利用の問題も解決するものとして期待される。
【0005】
松、杉、檜等の軟質木材から成るトレー状等の容器は従来からも幾つか見受けられるが、一体的に成型されたものは少なく、薄板状の本体に側壁部を別途止着したり、あるいは、薄板本体の一部に設けた切り込み部を折り曲げて側壁部を形成する等の手段により、容器の形状にしたものが多い。最近、木質単板を成型し容器として加工する方法も提案されている(特許文献3,4参照)が、成型工程が複雑である。
【0006】
また、これらの従来の木製容器は、いずれも、木材の繊維に平行な方向に裂けやすく、横方向においても折り曲げにより容易に割れる欠点を有し、さらに、時間の経過とともに割れがひどくなることがあり、その用途は限られている。
【0007】
一体成型するタイプの容器においては、特に湾曲部に当初から割れやささくれが見られることが多く外観上も好ましくない。さらに、これらの従来技術による木製容器は、防水性の点でも充分でなく、水分を多量に含む食品用トレー等の用途には適していない。
【0008】
木質素材の性状改良のためには成型前または成型後に合成樹脂を含浸させたりおよび/または合成樹脂層を接合させることが行われており、このような手段を採れば、強度や防水性が向上した木製容器を得ることも可能であろうが、製造工程が複雑となり、また、コストがかかるものが多く経済的とは言えず、さらに合成樹脂の使用により環境上の問題も引き起こすおそれがある。
【0009】
さらに、最近、天然素材として竹を用いたトレーなどの容器も見受けられるようになったが、竹に比べて強度や加工性の低い木材を用いて実用に供し得るようなトレー等を一体的に製造できる技術はあまり知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-114906号公報
【特許文献2】特開2002-326204号公報
【特許文献3】特開平09-99412号公報
【特許文献4】特開平08-25301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、環境汚染の問題を起こすことはない木製積層板を製造できる技術を確立することにある。
【0012】
さらに上記のように従来の薄板は、単に高価であるだけでなく、その製造に樹齢の高い希少な広葉大木が必要となるため、地球的資源保護や環境保護の観点からも問題されていた。杉や松、桧などの木材を使用して、波打ちしなく、破損し難い木製積層板を製造することを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による木製積層板は、繊維方向が互いに交差するように積層した、または繊維方向が直交するように積層した少なくとも2~4枚の木材スライス単板を含む複数の木材スライス単板を、寒天からなる接着剤で張り合わせて、0.2~4mmの厚さに成型する木製積層板である。前記木材スライス単板は、松、杉、檜、サクラ等の木材等の軟質木材からなり、厚さ100ミクロン~2000ミクロンである。
【0014】
接着剤として、寒天を、前記スライス単板に塗布して使用する。積層板の加圧成形は、2~4枚の木材スライス単板の表面に接着剤処理を施す。
【0015】
本発明は、上記の目的を達成するものとして、繊維方向が互いに交差するように積層した、または繊維方向が直交するように積層した少なくとも2~4枚の木材スライス単板を含む複数の木材スライス単板(薄板)を接着剤で張り合わせた積層板を作製する工程、該積層板を常温下または加熱して加圧する工程、および該積層板を型取りする工程(場合によっては型取りしない場合もある)を含む木製積層板を製造するものである。
【0016】
原材料的には、松、杉、檜等の軟質木材を使用することが望ましい。木材スライス単板の接着積層工程および成型工程から成る簡単な工程により木製食品容器を製造することができ、使用するスライス単板を構成する木材は、広葉樹および針葉樹のいずれでもよいが、好ましい例としては、スギ、ヒノキ、スプルス、ベイマツ、アカマツ、ブナ、キリ、ファルカータ等軟質木材が挙げられる。
【0017】
採伐した材をそのまま、あるいは、乾燥された材を0.1mm~2mmに加工したものを用いる。木目は柾目、板目を問わない。スライス単板の幅および長さは、製造する木製容器の大きさに応じて任意に選択し得る。
【0018】
本発明において積層板作製に用いる接着剤としては、接着養生後有害物質を発生せず、また、廃棄して燃焼させたときに不燃物や有害ガスを発生せず、且つ、生分解性100%で土に還る接着剤を用いる。
【0019】
この条件を満たす好ましい接着剤の例としては、寒天が挙げられる。
【0020】
本発明の方法においては、以上のようにして得られた積層板を常温下または加熱下に加圧する。この加圧処理は、積層板のスライス単板が互いに仮接着程度の強度を有するようになるまで行う。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果は、強度や柔軟性において従来のものより優れ、しかも環境汚染の問題を起こすことはなく、木製積層板を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】二枚薄板接着剤付積層体図 A : 斜視図 B : 表面板図 C : 裏面板図 D :断面細部図
図2】ハート型食器の分解図A : 蓋の外面板図 B : 蓋の内面板図 C : 底の外板面図 D : 底の内面板図E : 縁の外面板図 F : 縁の内面板図
図8】三枚薄板接着剤付積層体図 A : 斜視図 B : 表面板図 C : 中間板面図 D外面板図 E : 断面細部図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に従い使用される木製積層板を製造するには、木材を薄くスライスした単板を用い、先ず、複数の木材スライス単板を接着剤で直交に張り合わせた積層板を作製する。この際、少なくとも2~4枚の木材スライス単板を繊維方向(木目)が互いに交差するように、容器の一方の方向を縦方向、それと直交する方向を横方向とすれば、少なくとも1枚のスライス単板の繊維方向が縦方向に平行(またはほぼ平行)であり、別の少なくとも1枚のスライス単板の繊維方向が横方向に平行(またはほぼ平行)になるように配置して積層する。
【0024】
図1は、木材スライス単板を縦方向に2枚、横方向1枚張り合わせて積層板を作成する場合を例示するものである。積層数は特に限定されるものではない。
【実施例
【実施例0025】
寒天フィルムでの接着
松材の原木をスライスして厚さ0.1mm~0.5mm、幅100mm~200mm長さ300~600mmの薄板を製作する。この薄板に接着に必要な水分を含ませ、2枚以上木目が直交するように重ね合わせる。薄板の間には寒天を原材料にした接着用フィルムを挟む。これに成形に必要な圧力と乾燥に必要な熱を加える。この手法により、多重積層体を得る。なお、幅、長さや形状は必要に応じて切断したり、並べたりすることとする。また、木目は用途に応じて直交でなくても良い。
【実施例0026】
粉末寒天での接着
松材の原木をスライスして厚さ0.1mm~0.5mm、幅100mm~200mm長さ300~600mmの薄板を製作する。粉末状寒天を90℃以上のお湯に溶解させた3%(1~5%)寒天溶液を作る。この寒天溶液に薄板を浸す。この薄板を取出し、2枚以上木目が直交するように重ね合わせる。これに成形に必要な圧力と乾燥に必要な熱をヒーターで加える。この手法により、多重積層体を得る。なお、幅、長さや形状は必要に応じて切断したり、並べたりすることとする。また、木目は用途に応じて直交でなくても良い。寒天溶液には薄板のヒビ割れや裂けを防ぐ、成形後の柔軟性を得る、などの目的でグリセリン溶液0.1%~5%を混ぜても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 蓋板の表面
2 蓋板の裏面
3 縁板の表面
4 縁板の内面
5 底板の表面
6 底板の内面
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
図1】二枚薄板接着剤付積層体図 A : 斜視図 B : 表面板図 C : 裏面板図 D :断面細部図
図2】ハート型食器の分解図A : 蓋の外面板図 B : 蓋の内面板図 C : 底の外板面図 D : 底の内面板図E : 縁の外面板図 F : 縁の内面板図
図3】三枚薄板接着剤付積層体図 A : 斜視図 B : 表面板図 C : 中間板面図 D外面板図 E : 断面細部図