IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 ムラテクノロジーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122236
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】チャック装置及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/167 20060101AFI20220815BHJP
   B23B 31/12 20060101ALI20220815BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B23B31/167
B23B31/12 C
B25F5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112890
(22)【出願日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021018897
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506000380
【氏名又は名称】株式会社 ムラテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 大治郎
【テーマコード(参考)】
3C032
3C064
【Fターム(参考)】
3C032BB03
3C032BB05
3C032BB08
3C032HH01
3C032HH12
3C032HH18
3C064AA02
3C064AA03
3C064AB02
3C064AC01
3C064BA35
3C064BB32
3C064CA03
3C064CA06
3C064CB17
3C064CB62
3C064CB71
3C064CB93
(57)【要約】
【課題】ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることのない締付けを実現できるチャック装置及び電動工具を提供することを目的とする。
【解決手段】チャック装置1のボディ11に対するナットリング22の反時計回り方向Lの回転を規制するL側ラチェット爪348Lと、時計回り方向Rの回転を規制するR側ラチェット爪348Rとがあり、L側ラチェット爪348Lの回転規制を解除するL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lと、R側ラチェット爪348Rの回転規制を解除するR側案内溝232R及びR側半円タブ347Rとがあり、L側案内溝232L及びL側半円タブ347Lが、スリーブ23,24の反時計回り方向Lの差動回転によりL側ラチェット爪348Lの回転規制を解除し、R側案内溝232L及びR側半円タブ347Rは時計回り方向Rの差動回転によりR側ラチェット爪348Rの回転規制を解除する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心上で回転可能な駆動軸を有する駆動装置に装着するチャック装置であって、
前記軸心上に配置され、先端側に回転治具の基軸の挿入を許容する軸孔を有する略円筒状のチャック本体と、
該チャック本体において、先端側で前記軸孔に連絡するとともに、後端側で前記チャック本体の側方に開口する傾斜孔に挿着され、前記チャック本体に対して移動可能に配置された複数のチャック爪と、
前記チャック本体に対して回転自在に装着するとともに、回転操作によって回転力を入力する回転入力体と、
前記チャック本体に回動可能に保持されるとともに、前記チャック本体及び前記チャック爪に対する螺合によって前記複数のチャック爪を同期して前記傾斜孔内を傾斜方向に移動させるナットリングと、
前記回転入力体の前記回転力を前記ナットリングに伝達する回転伝達部と、
前記チャック本体に対する前記ナットリングの回転を規制するロック手段と、
前記ロック手段による前記ナットリングの回転規制を解除するロック解除手段とが備えられ、
前記ロック手段は、締付け方向の回転を規制する締付け方向ロック手段と、緩み方向の回転を規制する緩み方向ロック手段とがあり、
前記ロック解除手段は、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除する締付け方向ロック解除手段と、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する緩み方向ロック解除手段とがあり、
前記ロック手段は、
前記チャック本体に設けられたギア状の係止溝と、
前記ナットリングに取付けられ、前記係止溝に係止する係止爪とを有し、
前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除し、
前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する
チャック装置。
【請求項2】
前記係止溝を、前記チャック本体に対して回転方向を固定する固定手段が設けられ、
前記固定手段は、
前記チャック本体に対して回転方向が固定された固定ギア溝と、
前記係止溝に設けられ、前記固定ギア溝と軸心方向に噛合する固定ギア歯とを有し、
通常状態において、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とは非噛合状態であり、
前記回転入力体の前記締付け方向の回転入力による、前記基軸を把持する前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動によって、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合して、前記固定ギア溝が前記チャック本体に対して固定される
請求項1に記載のチャック装置。
【請求項3】
軸心上で回転可能な駆動軸を有する駆動装置に装着するチャック装置であって、
前記軸心上に配置され、先端側に回転治具の基軸の挿入を許容する軸孔を有する略円筒状のチャック本体と、
該チャック本体において、先端側で前記軸孔に連絡するとともに、後端側で前記チャック本体の側方に開口する傾斜孔に挿着され、前記チャック本体に対して移動可能に配置された複数のチャック爪と、
前記チャック本体に対して回転自在に装着するとともに、回転操作によって回転力を入力する回転入力体と、
前記チャック本体に回動可能に保持されるとともに、前記チャック本体及び前記チャック爪に対する螺合によって前記複数のチャック爪を同期して前記傾斜孔内を傾斜方向に移動させるナットリングと、
前記回転入力体の前記回転力を前記ナットリングに伝達する回転伝達部と、
前記チャック本体に対する前記ナットリングの回転を規制するロック手段と、
前記ロック手段による前記ナットリングの回転規制を解除するロック解除手段とが備えられ、
前記ロック手段は、締付け方向の回転を規制する締付け方向ロック手段と、緩み方向の回転を規制する緩み方向ロック手段とがあり、
前記ロック解除手段は、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除する締付け方向ロック解除手段と、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する緩み方向ロック解除手段とがあり、
前記ロック手段は、
前記チャック本体に設けられたギア状の係止溝と、
前記ナットリングに取付けられ、前記係止溝に係止する係止爪とを有し、
前記係止溝を、前記チャック本体に対して回転方向を固定する固定手段が設けられ、
前記固定手段は、
前記チャック本体に対して回転方向が固定された固定ギア溝と、
前記係止溝に設けられ、前記固定ギア溝と軸心方向に噛合する固定ギア歯とを有し、
前記回転入力体の前記締付け方向の回転入力による、前記基軸を把持する前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動によって、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合して、前記固定ギア溝が前記チャック本体に対して固定されるとともに、
前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除し、
前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する
チャック装置。
【請求項4】
前記固定ギア溝は、周方向且つ前記軸心方向に対して傾斜する帯状のリング体であり、
前記周方向且つ前記軸心方向に対して傾斜する前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とは非噛合状態であり、
前記ナットリングの基端側への前記移動により、傾斜する前記固定ギア溝が捩れ変形して前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合状態となる
請求項2又は請求項3に記載のチャック装置。
【請求項5】
前記固定ギア歯のギア歯における内径側にフラット部が形成された
請求項4に記載のチャック装置。
【請求項6】
前記固定ギア歯と前記固定ギア溝とを前記軸心方向に離間する方向に付勢する離間方向付勢手段が設けられた
請求項2乃至請求項5のうちいずれかに記載のチャック装置。
【請求項7】
軸心方向の先端側から基点側に向かって、前記ナットリング、前記固定ギア溝及び前記固定ギア歯の順で配置され、
前記ナットリングと前記固定ギア溝との間に複数の転動体が設けられ、
前記ナットリング、前記転動体、前記固定ギア溝及び前記固定ギア歯でベアリングが構成された
請求項2乃至請求項4のうちいずれかに記載のチャック装置。
【請求項8】
前記ロック解除手段は、
前記回転入力体に設けられた案内溝と、
前記ナットリングに取付けられ、前記案内溝に案内される被案内部を前記案内溝に押付ける付勢部とを有し、
前記係止爪は、前記被案内部とともに案内される構成である
請求項1乃至請求項7のうちいずれかに記載のチャック装置。
【請求項9】
前記案内溝は、溝深さが深い深溝部と、溝深さが浅い浅溝部とを有し、
前記被案内部が前記深溝部に案内されると、前記係止爪が前記係止溝に係止してロック状態となり、
前記被案内部が前記浅溝部に案内されると、前記係止溝への前記係止爪の係止が解除してロック解除状態となる
請求項8に記載のチャック装置。
【請求項10】
前記被案内部は、前記案内溝に向かって凸状となる円弧形状であるとともに、前記深溝部と前記浅溝部とが周方向に所定間隔を隔てて配置され、
前記被案内部が前記深溝部と前記浅溝部との間に当接する状態において、前記付勢部の付勢力によって、前記被案内部が前記深溝部か前記浅溝部のいずれかに案内される
請求項9に記載のチャック装置。
【請求項11】
前記案内溝を第1案内溝、前記被案内部を第1被案内部、前記付勢部を第1付勢部とし、
前記回転入力体に第2案内溝が設けられるとともに、
前記第2案内溝に案内される第2被案内部と、前記第2被案内部を前記第2案内溝に押付ける第2付勢部とが前記ナットリングに取付けられ、
前記第2案内溝による前記第2被案内部の案内に伴って前記回転入力体が前記ナットリングに対して差動回転する
請求項8乃至請求項10のうちいずれかに記載のチャック装置。
【請求項12】
前記第2案内溝は、溝深さが深い深溝部と、溝深さが浅い浅溝部とを有するとともに、
前記第2被案内部は、前記案内溝に向かって凸状となる円弧形状に形成され、
前記第2案内溝における前記浅溝部にある前記第2被案内部は、第2付勢部の付勢力によって前記深溝部に案内され、
前記第2案内溝にける前記浅溝部から前記深溝部への案内に伴って前記回転入力体が前記ナットリングに対して差動回転する
請求項11に記載のチャック装置。
【請求項13】
前記第2付勢部は、ねじりバネで構成された
請求項11又は請求項12に記載のチャック装置。
【請求項14】
前記ナットリングに、
前記ねじりバネで構成された前記第2付勢部が変形できる変形空間が設けられた
請求項13に記載のチャック装置。
【請求項15】
駆動装置と、該駆動装置の回転力を軸心上に伝達する回転伝達手段とが備えられるとともに、
請求項1乃至請求項14のうちいずれかに記載のチャック装置が前記回転伝達手段によって回転可能に備えられた
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、インパクトドライバーや振動ドリルのような電動工具において、ドライバ治具やドリル治具等の回転治具の基軸を挿入し、締め付けて固定するチャック装置及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動ドライバ等の先端に配置するチャック装置として、挿入された回転治具の基軸を爪(ジョー)で三方向から締付けて固定し、締付け状態をロックするロック機構を備えたチャック装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このチャック装置は、チャック本体に対して軸方向が拘束された係止リングと、ラチェット本体に対して軸方向に移動可能な保持リングとを備えている。そして、前記係止リング及び前記保持リングのそれぞれの対向面に、緩み方向に対して噛合するラチェットギアが形成されている。
【0004】
したがって、保持リングを軸方向に移動させ、係止リング及び保持リングのラチェットギアが噛合することによって、締付け固定状態において、締付け解除方向の回転を規制し、締付け状態をロックすることができるとされている。
【0005】
しかしながら、回転治具の基軸をジョーで三方向から固定する締付け状態をロック機構でロックして回転駆動させ、回転治具で削孔等を行う際の振動による共振や慣性力によって、回転入力体が締付け解除方向に回転して、ロック状態が不用意に解除されたり、回転入力体がさらに締付け方向に回転して、ロック状態が解除できなくなったりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-277913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることのない締付けを実現できるチャック装置及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、軸心上で回転可能な駆動軸を有する駆動装置に装着するチャック装置であって、前記軸心上に配置され、先端側に回転治具の基軸の挿入を許容する軸孔を有する略円筒状のチャック本体と、該チャック本体において、先端側で前記軸孔に連絡するとともに、後端側で前記チャック本体の側方に開口する傾斜孔に挿着され、前記チャック本体に対して移動可能に配置された複数のチャック爪と、前記チャック本体に対して回転自在に装着するとともに、回転操作によって回転力を入力する回転入力体と、前記チャック本体に回動可能に保持されるとともに、前記チャック本体及び前記チャック爪に対する螺合によって前記複数のチャック爪を同期して前記傾斜孔内を傾斜方向に移動させるナットリングと、前記回転入力体の前記回転力を前記ナットリングに伝達する回転伝達部と、前記チャック本体に対する前記ナットリングの回転を規制するロック手段と、前記ロック手段による前記ナットリングの回転規制を解除するロック解除手段とが備えられ、前記ロック手段は、締付け方向の回転を規制する締付け方向ロック手段と、緩み方向の回転を規制する緩み方向ロック手段とがあり、前記ロック解除手段は、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除する締付け方向ロック解除手段と、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する緩み方向ロック解除手段とがあり、前記ロック手段は、前記チャック本体に設けられたギア状の係止溝と、前記ナットリングに取付けられ、前記係止溝に係止する係止爪とを有し、前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除し、前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除することを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、駆動装置と、該駆動装置の駆動回転を軸心上に伝達する駆動伝達手段とが備えられるとともに、上述のチャック装置が前記回転伝達手段によって回転可能に備えられた電動工具であることを特徴とする。
【0010】
上記回転可能な駆動軸を有する駆動装置は、インパクトドライバー、振動ドリルや電動ドライバ等の回転電動工具とすることができる。
上記回転治具とは、回転するドリル治具や、プラスやマイナスのドライバ治具などとすることができる。
上記回転治具の基軸は工具シャンクともいい、上記チャック爪はジョーともいう。
【0011】
この発明により、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることのない締付けを実現することができる。
詳述すると、前記ロック解除手段は、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除する締付け方向ロック解除手段と、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する緩み方向ロック解除手段とがあり、前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除し、前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する。そのため、前記回転入力体と前記ナットリングとを差動回転させなければ、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることを防止することができる。
【0012】
なお、上述の前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除するとは、前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により前記締付け方向ロック解除手段が締付け方向ロック手段の回転規制を解除するとともに、前記緩み方向ロック解除手段が前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除してもよいし、前記締付け方向ロック解除手段だけが締付け方向ロック手段の回転規制を解除してもよい。
【0013】
また、同様に、上述の前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除するとは、前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック解除手段が前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除するとともに、前記締付け方向ロック解除手段が締付け方向ロック手段の回転規制を解除してもよいし、前記緩み方向ロック解除手段だけが前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除してもよい。
【0014】
この発明の態様として、前記係止溝を、前記チャック本体に対して回転方向を固定する固定手段が設けられ、前記固定手段は、前記チャック本体に対して回転方向が固定された固定ギア溝と、前記係止溝に設けられ、前記固定ギア溝と軸心方向に噛合する固定ギア歯とを有し、通常状態において、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とは非噛合状態であり、前記回転入力体の前記締付け方向の回転入力による、前記基軸を把持する前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動によって、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合して、前記固定ギア溝が前記チャック本体に対して固定されてもよい。
【0015】
またこの発明は、軸心上で回転可能な駆動軸を有する駆動装置に装着するチャック装置であって、前記軸心上に配置され、先端側に回転治具の基軸の挿入を許容する軸孔を有する略円筒状のチャック本体と、該チャック本体において、先端側で前記軸孔に連絡するとともに、後端側で前記チャック本体の側方に開口する傾斜孔に挿着され、前記チャック本体に対して移動可能に配置された複数のチャック爪と、前記チャック本体に対して回転自在に装着するとともに、回転操作によって回転力を入力する回転入力体と、前記チャック本体に回動可能に保持されるとともに、前記チャック本体及び前記チャック爪に対する螺合によって前記複数のチャック爪を同期して前記傾斜孔内を傾斜方向に移動させるナットリングと、前記回転入力体の前記回転力を前記ナットリングに伝達する回転伝達部と、前記チャック本体に対する前記ナットリングの回転を規制するロック手段と、前記ロック手段による前記ナットリングの回転規制を解除するロック解除手段とが備えられ、前記ロック手段は、締付け方向の回転を規制する締付け方向ロック手段と、緩み方向の回転を規制する緩み方向ロック手段とがあり、前記ロック解除手段は、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除する締付け方向ロック解除手段と、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する緩み方向ロック解除手段とがあり、前記ロック手段は、前記チャック本体に設けられたギア状の係止溝と、前記ナットリングに取付けられ、前記係止溝に係止する係止爪とを有し、前記係止溝を、前記チャック本体に対して回転方向を固定する固定手段が設けられ、前記固定手段は、前記チャック本体に対して回転方向が固定された固定ギア溝と、前記係止溝に設けられ、前記固定ギア溝と軸心方向に噛合する固定ギア歯とを有し、前記回転入力体の前記締付け方向の回転入力による、前記基軸を把持する前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動によって、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合して、前記固定ギア溝が前記チャック本体に対して固定されるとともに、前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除し、前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除することを特徴とする。
【0016】
この発明により、前記係止溝を、前記チャック本体に対して回転方向を固定する固定手段が設けられ、前記固定手段は、前記チャック本体に対して回転方向が固定された固定ギア溝と、前記係止溝に設けられ、前記固定ギア溝と軸心方向に噛合する固定ギア歯とを有し、前記回転入力体の前記締付け方向の回転入力による、前記基軸を把持する前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動によって、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合して、前記固定ギア溝が前記チャック本体に対して固定される。また、前記締付け方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記締付け方向の差動回転により、前記締付け方向ロック手段の回転規制を解除し、前記緩み方向ロック解除手段は、少なくとも前記回転入力体と前記ナットリングとの前記緩み方向の差動回転により、前記緩み方向ロック手段の回転規制を解除する。そのため、上述のように、前記回転入力体と前記ナットリングとを差動回転させなければ、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることを防止することができる。さらに、軸孔に挿入され、複数のチャック爪で把持された回転治具の基軸がロック状態のまま不用意に抜けた場合、いわゆるセルフロック状態となっても、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とは非噛合状態となるため、ロック状態が解除できなくなるという不具合を解消することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記固定ギア溝は、周方向且つ前記軸心方向に対して傾斜する帯状のリング体であり、前記周方向且つ前記軸心方向に対して傾斜する前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とは非噛合状態であり、前記ナットリングの基端側への前記移動により、傾斜する前記固定ギア溝が捩れ変形して前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが噛合状態となってもよい。
この発明により、傾斜する前記固定ギア歯の捩れ変形によって、つまりギア溝は皿ばねとして機能し、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯との噛合と非噛合とを切り替えることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記固定ギア歯のギア歯における内径側にフラット部が形成されてもよい。
この発明により、前記固定ギア溝と前記固定ギア歯との非噛合な近接状態において、前記固定ギア溝のギア溝と前記固定ギア歯のギア歯とが干渉して干渉音が発生することを防止できる。
【0019】
またこの発明として、前記固定ギア歯と前記固定ギア溝とを前記軸心方向に離間する方向に付勢する離間方向付勢手段が設けられてもよい。
この発明により、前記回転入力体の前記締付け方向の回転入力による、前記基軸を把持する前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動によって噛合する前記固定ギア溝と前記固定ギア歯とが、前記チャック爪を反力とした前記ナットリングの基端側への移動が解消されると、離間方向付勢手段の付勢力によって前記固定ギア歯と前記固定ギア溝とは前記軸心方向に離間する。したがって、前記チャック本体に対する前記係止溝の回転方向の固定を確実に解消することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、軸心方向の先端側から基点側に向かって、前記ナットリング、前記固定ギア溝及び前記固定ギア歯の順で配置され、前記ナットリングと前記固定ギア溝との間に複数の転動体が設けられ、前記ナットリング、前記転動体、前記固定ギア溝及び前記固定ギア歯でベアリングが構成されてもよい。
【0021】
この発明により、チャック本体に固定された前記固定ギア溝に対してナットリングをスムーズに回転させることができる。
なお、転動体は、鋼製や樹脂製である球体や円柱体で構成されてもよい。
【0022】
またこの発明の態様として、前記ロック解除手段は、前記回転入力体に設けられた案内溝と、前記ナットリングに取付けられ、前記案内溝に案内される被案内部を前記案内溝に押付ける付勢部とを有し、前記係止爪は、前記被案内部とともに案内される構成であってもよい。
【0023】
この発明により、前記回転入力体と前記ナットリングの差動回転により、少なくとも回転入力体に設けられた案内溝に対して付勢部によって押付けられる被案内部は、案内溝で案内されることで、係止溝に対する係止爪の係止と係止解除とを案内することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記案内溝は、溝深さが深い深溝部と、溝深さが浅い浅溝部とを有し、前記被案内部が前記深溝部に案内されると、前記係止爪が前記係止溝に係止してロック状態となり、前記被案内部が前記浅溝部に案内されると、前記係止溝への前記係止爪の係止が解除してロック解除状態となってもよい。
【0025】
この発明により、前記回転入力体と前記ナットリングの差動回転により、少なくとも回転入力体に設けられた案内溝に対して付勢部によって押付けられる被案内部が、溝深さが深い深溝部に案内されることで前記係止爪が前記係止溝に係止してロック状態となり、溝深さが浅い浅溝部に前記被案内部に案内されると、前記係止溝への前記係止爪の係止が解除してロック解除状態となることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記被案内部は、前記案内溝に向かって凸状となる円弧形状であるとともに、前記深溝部と前記浅溝部とが周方向に所定間隔を隔てて配置され、前記被案内部が前記深溝部と前記浅溝部との間に当接する状態において、前記付勢部の付勢力によって、前記被案内部が前記深溝部か前記浅溝部のいずれかに案内されてもよい。
【0027】
この発明により、前記被案内部が前記深溝部と前記浅溝部との間に当接する状態から、前記付勢部の付勢力によって、自動的に、前記被案内部が前記深溝部か前記浅溝部のいずれかに案内されることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記案内溝を第1案内溝、前記被案内部を第1被案内部、前記付勢部を第1付勢部とし、前記回転入力体に第2案内溝が設けられるとともに、前記第2案内溝に案内される第2被案内部と、前記第2被案内部を前記第2案内溝に押付ける第2付勢部とが前記ナットリングに取付けられ、前記第2案内溝による前記第2被案内部の案内に伴って前記回転入力体が前記ナットリングに対して差動回転してもよい。
【0029】
この発明により、ナットリングと前記回転入力体とがいずれの相対回転位置であっても、前記第2案内溝に前記第2被案内部が案内され、前記回転入力体が前記ナットリングに対して差動回転して、確実に、ロック状態とすることができる。
【0030】
詳述すると、回転入力体を締付け方向に回転入力し、軸孔に挿入された回転治具の基軸をチャック爪で把持した状態において、前記第1被案内部が前記第1案内溝に案内されて、前記係止爪が前記係止溝に係止してロック状態となるが、締付け状態における前記ナットリングと前記回転入力体との相対回転位置によっては前記第1被案内部が前記第1案内溝に案内されきらず、ロック状態にならず、スリーブに不自然なガタツキが生じる場合であっても、前記第2案内溝に前記第2被案内部が案内されることで、前記回転入力体が前記ナットリングに対して差動回転して、確実に、不自然なガタツキを防止することができる。
【0031】
つまり、前記回転入力体に設けられた前記第2案内溝に、前記ナットリングに取付けられた前記第2被案内溝が案内されることで、前記ナットリングに対する前記回転入力体の相対回転位置を位置決めして、確実に、不自然なガタツキを防止することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記第2案内溝は、溝深さが深い深溝部と、溝深さが浅い浅溝部とを有するとともに、前記第2被案内部は、前記案内溝に向かって凸状となる円弧形状に形成され、前記第2案内溝における前記浅溝部にある前記第2被案内部は、第2付勢部の付勢力によって前記深溝部に案内され、前記第2案内溝にける前記浅溝部から前記深溝部への案内に伴って前記回転入力体が前記ナットリングに対して差動回転してもよい。
【0033】
この発明により、前記第1被案内部が前記第1案内溝に案内されきらない前記ナットリングと前記回転入力体との相対回転位置において円弧形状に形成された前記第2被案内部を前記第2案内溝の前記浅溝部から前記深溝部に案内して、前記回転入力体を前記ナットリングに対して差動回転させて、確実に、不自然なガタツキを防止することができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記第2付勢部は、ねじりバネで構成されてもよい。
上記ねじりバネとはトーションばねともいう。
【0035】
この発明により、コンパクトな前記第2付勢部であっても強い付勢力を発揮することができる。したがって、前記第2案内溝に対して前記第2被案内部を強い付勢力で付勢して、前記第2被案内部を前記第2案内溝で確実に案内することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記ナットリングに、前記ねじりバネで構成された前記第2付勢部が変形できる変形空間が設けられてもよい。
この発明により、前記第2付勢部が強い付勢力を発揮するためのねじり変形ができる。したがって、前記第2案内溝に対して前記第2被案内部を強い付勢力で付勢して、前記第2被案内部を前記第2案内溝で確実に案内することができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることのない締付けを実現できるチャック装置及び電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】チャック装置を備えた電動工具の正面図。
図2】チャック装置の各構成要素の基端側からの分解斜視図。
図3】チャック装置の各構成要素の先端側からの分解斜視図。
図4】チャック装置の縦断面図。
図5】インナースリーブの説明図。
図6】ナットリングとスプリングリングの説明図。
図7】ロックリングとアウターリングの説明図。
図8】ロックベアリングの説明図。
図9】ロック・解除機構の説明図。
図10】両方向ロック状態のロック・解除機構の説明図。
図11】両方向ロック状態のロック・解除機構の説明図。
図12】両方向ロック状態のロック・解除機構の説明図。
図13】締付け状態のロック・解除機構の説明図。
図14】開放状態のロック・解除機構の説明図。
図15】別の実施形態のチャック装置の各構成要素の基端側からの分解斜視図。
図16】別の実施形態のチャック装置の各構成要素の先端側からの分解斜視図。
図17】さらに別の実施形態のチャック装置のインナースリーブの説明図。
図18】さらに別の実施形態のチャック装置の両方向ロック状態のロック・解除機構の説明図。
図19】さらに別の実施形態のチャック装置の締付け状態のロック・解除機構の説明図。
図20】さらに別の実施形態のチャック装置の開放状態のロック・解除機構の説明図。
図21】さらまた別の実施形態のアウターリング及びロックリングの説明図。
図22】チャック装置を備えた電動工具の正面図。
図23】チャック装置の各構成要素の基端側からの分解斜視図。
図24】チャック装置の各構成要素の先端側からの分解斜視図。
図25】チャック装置の縦断面図。
図26】ナットリング及びスプリングリングの説明図。
図27】組付け状態のナットリング及びスプリングリングの説明図。
図28】アウタースリーブと組付け状態のナットリング及びスプリングリングの説明図。
図29】緩み状態のチャック装置の断面図による説明図。
図30】締付け途中状態のチャック装置の断面図による説明図。
図31】締付け状態のチャック装置の断面図による説明図。
図32】チャック装置の各構成要素の基端側からの分解斜視図。
図33】チャック装置の各構成要素の先端側からの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1はチャック装置1を備えた電動工具の正面図を示し、図2はチャック装置1の各構成要素の基端側Bからの分解斜視図を示し、図3はチャック装置1の各構成要素の先端側Fからの分解斜視図を示し、図4はチャック装置1の縦断面図を示している。
【0040】
図5はインナースリーブ23の説明図を示し、図6はナットリング22とスプリングリング34の説明図を示し、図7はロックリング32とアウターリング31の説明図を示し、図8はロックベアリング30の説明図を示している。
【0041】
詳述すると、図5(a)は基端側Bからのインナースリーブ23の斜視図を示し、図5(b)はインナースリーブ23の背面図を示している。なお、図5(a)において、インナースリーブ23の基端側Bの一部を透過状態で図示している。
図6(a)は先端側Fからのナットリング22及びスプリングリング34の斜視図を示し、図6(b)はナットリング22の正面図を示し、図6(c)はスプリングリング34の正面図を示している。
【0042】
図7(a)は基端側Bからのロックリング32及びアウターリング31の斜視図を示し、図7(b)は先端側Fからのロックリング32及びアウターリング31の斜視図を示し、図7(c)はアウターリング31の正面図を示し、図7(d)はロックリング32の背面図を示している。
図8(a)は非噛合状態のロックベアリング30の断面図を示し、図8(b)は噛合状態のロックベアリング30の断面図を示している。
【0043】
また、図9はロック・解除機構20の説明図を示し、図10乃至図12は両方向ロック状態のロック・解除機構20の説明図を示し、図13は締付け状態のロック・解除機構20の説明図を示し、図14はロック解除状態のロック・解除機構20の説明図を示している。
【0044】
詳しくは、図9(a),(b)は先端側Fからのロック・解除機構20の一部断面斜視図を示しているが、図9(b)はロック・解除機構20のうちインナースリーブ23のみを断面斜視図とし、その他は斜視図を示している。
【0045】
図10(a)はロック・解除機構20の側面図を示し、図10(b)は両方向ロック状態のロック・解除機構20の図10(a)におけるA-A矢視断面図を示している。
図11(a)はロック・解除機構20の側面図を示し、図11(b)は両方向ロック状態のロック・解除機構20の図11(a)におけるB-B矢視断面図を示している。
図12(a)はロック・解除機構20の側面図を示し、図12(b)は両方向ロック状態のロック・解除機構20の図12(a)におけるC-C矢視断面図を示している。
【0046】
図13(a)は締付け状態のロック・解除機構20の図11(a)におけるB-B矢視断面図を示し、図13(b)は締付け状態のロック・解除機構20の図10(a)におけるA-A矢視断面図を示し、図13(c)は締付け状態のロック・解除機構20の図12(a)におけるC-C矢視断面図を示している。
【0047】
図14(a)はロック解除状態のロック・解除機構20の図11(a)におけるB-B矢視断面図を示し、図14(b)はロック解除状態のロック・解除機構20の図10(a)におけるA-A矢視断面図を示し、図14(c)はロック解除状態のロック・解除機構20の図12(a)におけるC-C矢視断面図を示している。
【0048】
本発明のチャック装置1は、電動工具Kの先端に装備されるものである。例えば、この電動工具Kは、利用者が使用時に握るハンドル部2aを備えたハウジング2、及び該ハウジング2の先端側Fに設けたスピンドル4を備えている。
【0049】
そして、チャック装置1はスピンドル4の先端に装着され、チャック装置1で回転治具5の基軸5aを締付け固定するものである。なお、スピンドル4は、ハンドル部2aに配置したトリガ6を操作することで、ハウジング内部に設置された、正逆転回転可能なモータMの回転駆動力によって回転する構成である。
【0050】
上述の電動工具Kに装備されるチャック装置1は、図2乃至図4に示すように、主要部品であるチャック機構10に、ロックベアリング30が組み付けられたロック・解除機構20を組み付けて構成している。
【0051】
チャック機構10は、ボディ11と、ジョー12とで構成している。
ボディ11は、基端側Bから、後胴部111、中胴部112、前胴部113とで構成し、中心に軸心方向Xの挿入孔114を有する略円筒形状に形成している。
【0052】
そして、ボディ11における周方向の三ケ所に、フランジ部を有する中胴部112から前胴部113を介し、外周側から内周側に向かい、軸心方向Xに対して交叉する方向で挿入孔114に連通するジョー装着孔115を配置している。なお、3つのジョー装着孔115の径内側方向の延長線上の交点は軸心方向X上となるように形成している。
【0053】
ジョー12は、後述するナットリング22の嵌合ネジ溝225と螺合するネジ溝121を基端側Bの外側面に有する略円柱状に形成している。さらに、ジョー12の前側内側面は、略円柱状の軸心方向に対して交叉する方向で、軸心方向Xに対して略平行な押圧面122を形成し、該押圧面122の幅方向中央には、カーバイド製のチップ123を装備している。このような構成のジョー12は、上述したように、軸心方向Xに対して周方向における三方向において、押圧面122が軸心方向Xに平行となる姿勢で配置される。
【0054】
上述のように構成したボディ11のジョー装着孔115にジョー12を挿入してチャック機構10を構成する。このとき、ジョー12は、ネジ溝121が径外側向きとなるように、ジョー装着孔115に挿入される。
ロックベアリング30は、図2乃至5及び図8に示すように、軸心方向Xの基端側Bから順に、アウターリング31、ロックリング32、ボール33、及びスプリングリング34で構成している。
【0055】
アウターリング31は、正面視中央に、中胴部112の挿通を許容する中央開口311を有し、ロックベアリング30における基端側B(軸心方向Xにおける基端側B)の後方面を構成する後方リング面312と、後方リング面312の外周縁から先端側Fに突出する外周側面313とで構成している。なお、後方リング面312と外周側面313とで構成する角部は、ボール33に対応する曲面で構成している。
また、外周側面313の内周面の先端側Fには、後述するスプリングリング34のスプリングアーム346のラチェット爪348と噛合するラチェットギア314を周方向に配置している。
【0056】
ラチェット爪348が係止するラチェットギア314は、図7(c)の拡大図に示すように、周方向における締付け方向(先端側Fから視て時計回り方向、以下において時計回り方向Rという)と緩み方向(先端側Fから視て反時計回り方向、以下において反時計回り方向Lという)との両方向から係止可能な形状で形成している。
さらに、後方リング面312の先端側Fには、後述するロックリング32の噛合ギア324と軸心方向Xに噛合する噛合溝315を有している。
【0057】
ロックリング32は、正面視中央に、中胴部112の挿通を許容する中央開口321を有するリング本体322で構成され、中央開口311を形成するリング本体322の内周縁には、中央開口321に向かって正面視半円状に突出し、ボディ11の中胴部112に装着された際に、ボディ11の中胴部112におけるフランジ部の先端側Fに形成された固定凹部112aに嵌合して、ボディ11に対して回転固定するための回転固定タブ323を周方向に等間隔を隔てて三ケ所に配置している。
【0058】
リング本体322の基端側Bの面には、上述のアウターリング31における後方リング面312の噛合溝315と噛合する噛合ギア324が設けられている。
リング本体322は、先端側Fよりも径方向に長い略矩形断面であるが、図8(a)に示すように、径外側が径内側より先端側Fとなるように断面が傾斜している。本実施形態では、ロックリング32は、軸心方向Xに直交する方向に対して、先端側Fに7°程度傾斜させている。
【0059】
なお、ロックリング32は、基端側Bに向かう押圧力によって、径外側が径内側より先端側Fとなる断面が、図8(b)に示すように、軸心方向Xに対して直交する方向にフラットとなり、先端側Fに向かう付勢力が発生する皿ばねを構成している。
【0060】
ボール33は、鋼製の球体であり、軸心方向Xを中心として、周方向に複数配置している。
なお、ボール33は、所定の強度や耐摩耗性等の所要性状を満足すれば、鋼球でなくとも、樹脂製であってもよいし、周方向に転動できれば、円柱状で形成されてもよい。
【0061】
スプリングリング34は、正面視中央に、中胴部112の挿通を許容する中央開口341を有し、前方リング面342と、前方リング面342の内周縁から内方に向かって湾曲するとともに基端側Bに突出する内周面343とで構成している。
【0062】
また、前方リング面342には、外周縁から先端側Fに向かって突出する前方突出部344が、周方向において等間隔を隔てて三箇所設けられている。
なお、内方に向かって湾曲するとともに基端側Bに突出する内周面343は、後述するボール33に対応する曲面で構成している。
【0063】
前方突出部344は、後述するナットリング22と嵌合するとともに、ラチェットギア314と噛合してラチェット機構を構成するためのものであり、前方リング面342の外周縁から先端側Fに向かって突出する連結片345と、連結片345から周方向の両側に延びるスプリングアーム346とを備えている。
【0064】
スプリングアーム346の周方向の先端には、後述するインナースリーブ23の案内溝232に嵌り込む半円タブ347と、アウターリング31のラチェットギア314に係止するラチェット爪348が設けられている。
半円タブ347はスプリングアーム346の先端を板厚方向に湾曲させ、先端側Fから視て、径外側が凸となる略半円状に形成している。
【0065】
ラチェット爪348は、半円タブ347の連結片345の根本付近に配置され、半円タブ347はラチェット爪348より先端側Fに配置されている。そのため、ラチェット爪348は、半円タブ347と前方リング面342との間に配置されることとなる。
【0066】
上述のように、先端に半円タブ347及びラチェット爪348を有するスプリングアーム346は、連結片345の周方向の両側にそれぞれ設けられ、先端側Fから視て時計回り方向RをR側スプリングアーム346Rとし、反時計回り方向LをL側スプリングアーム346Lとしている。
【0067】
そして、R側スプリングアーム346Rの半円タブ347をR側半円タブ347Rとし、ラチェット爪348をR側ラチェット爪348Rとしている。
また、L側スプリングアーム346Lの半円タブ347をL側半円タブ347Lとし、ラチェット爪348をL側ラチェット爪348Lとしている。
【0068】
上述のように構成したアウターリング31、ロックリング32、ボール33及びスプリングリング34とを組み付けてロックベアリング30を構成している。
具体的には、アウターリング31の後方リング面312の先端側Fの面に形成した噛合溝315と、ロックリング32のリング本体322の基端側Bの面に形成した噛合ギア324とが対向するように、外周側面313の径内側にロックリング32を配置する。
【0069】
そして、ロックリング32の先端側Fに複数のボール33を配置し、その先端側Fからスプリングリング34を組み付ける。
詳しくは、ロックリング32の先端側Fに配置された複数のボール33の径内側及び先端側Fを内周面343が跨ぐようにスプリングリング34を配置する。このとき、連結片345のスプリングアーム346の先端に設けたラチェット爪348が、アウターリング31の外周側面313の内面に形成したラチェットギア314とが係止するように組み付けてロックベアリング30の組み付けは完了する。
【0070】
なお、このように組み付けられたロックベアリング30は、ラチェット爪348がともにラチェットギア314に係止すると、アウターリング31に対してスプリングリング34は時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにも相対回転できず、ラチェットギア314へのラチェット爪348の係止が解消すると、ボール33によってアウターリング31に対してスプリングリング34は時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにもスムーズに相対回転することができる。
【0071】
そして、ロックベアリング30は、L側ラチェット爪348Lはラチェットギア314に係止しないが、R側ラチェット爪348Rがラチェットギア314に係止すると、アウターリング31に対してスプリングリング34は時計回り方向Rには相対回転できず、反時計回り方向Lにはスムーズに相対回転することができる。
【0072】
逆に、ロックベアリング30は、R側ラチェット爪348Rはラチェットギア314に係止しないが、L側ラチェット爪348Lがラチェットギア314に係止すると、アウターリング31に対してスプリングリング34は反時計回り方向Lには相対回転できず、時計回り方向Rにはスムーズに相対回転することができる。
【0073】
ロック・解除機構20は、バックスリーブ21、ナットリング22、インナースリーブ23、アウタースリーブ24、ノーズピース25、及び上述のロックベアリング30で構成されている。
さらに詳しくは、ロック・解除機構20は、図2乃至図4において、上述のロックベアリング30と、ロックベアリング30より軸心方向Xの基端側Bに図示するバックスリーブ21と、ロックベアリング30より軸心方向Xの先端側Fに図示するナットリング22、インナースリーブ23、アウタースリーブ24、及びノーズピース25とで構成している。
【0074】
バックスリーブ21は、チャック装置1の背面を構成し、ボディ11の後胴部111の挿入を許容する円形開口211を有するリング本体212と、円形開口211を形成するリング本体212の内周縁において軸心方向Xの先端側Fに突出する内側円筒部213と、リング本体212の外周縁において軸心方向Xの先端側Fに突出する外側円筒部214とで構成している。
【0075】
内側円筒部213は、ボディ11の後胴部111に圧入可能な内径で形成するとともに、外側円筒部214より倍程度の高さで形成している。
内側円筒部213より半分程度の高さで形成した外側円筒部214の軸心方向Xの先端側Fの端部は、外径側が階段状となるように縮径された縮径端部214aを構成している。
【0076】
ナットリング22は、断面視、先端側Fに向かって縮径された円錐台状の円錐台状開口221を有するリング状であるリング本体222で構成し、リング本体222の先端側Fの面には、後述するインナースリーブ23の差動凸部231が周方向に遊嵌できる凹状の差動凹部223を周方向に所定間隔を隔てて三ケ所形成している。
リング本体222の外周面には、上述のスプリングリング34の前方突出部344の連結片345の嵌合を許容する連結凹部224を、前方突出部344に対応する箇所に三ケ所形成している。
【0077】
また、円錐台状開口221を形成するリング本体222の内面には、ジョー12のネジ溝121が噛合する螺旋状の嵌合ネジ溝225を形成している。なお、嵌合ネジ溝225は、上述したジョー12のネジ溝121に対応した螺旋角度で形成するとともに、複数周分の螺旋長さで形成している。
【0078】
上述のように構成されたナットリング22は、図6(a)に示すように、上述のロックベアリング30と組み付けられる。
詳しくは、ロックベアリング30に組み付けられたスプリングリング34の前方突出部344の連結片345が、先端側Fに配置されたナットリング22の連結凹部224に挿入されて、スプリングリング34とナットリング22とが連結される。
このようにしてロックベアリング30と組み付けられたナットリング22は、スプリングリング34と回転方向が固定される。
【0079】
インナースリーブ23は、後述するアウタースリーブ24に軸心方向Xの基端側Bより嵌め込んで内包される、アウタースリーブ24よりひとまわり小さな側面視略釣鐘型の筒状である。
インナースリーブ23は、図5に示すように、軸心方向Xの中央より先端側Fの内周側に、基端側Bに向かって突出し、ナットリング22の先端側Fの面に形成した差動凹部223に遊嵌する差動凸部231を周方向に所定間隔を隔てて三ケ所形成している。
【0080】
また、差動凸部231より基端側Bの内周面には、上述の前方突出部344の半円タブ347が係止する案内溝232(232R,232L)を設けている。
案内溝232は、図5(b)に示すように、R側スプリングアーム346RのR側半円タブ347Rが嵌合し、案内する時計回り方向Rに配置されたR側案内溝232Rと、L側スプリングアーム346LのL側半円タブ347Lが嵌合し、案内する反時計回り方向Lに配置されたL側案内溝232Lとを設けている。
【0081】
R側半円タブ347Rを案内する時計回り方向RのR側案内溝232Rは、R側案内溝232Rのうち反時計回り方向Lに配置され、係止したR側半円タブ347Rが径外側となる深溝部232Raと、R側案内溝232Rのうち時計回り方向Rに配置され、係止するR側半円タブ347Rが径内側に付勢される浅溝部232Rbと、深溝部232Raにおける反時計回り方向Lに形成された面取溝部232Rcと、深溝部232Raと浅溝部232Rbとの間において径内側に凸となる円弧状の凸溝部232Rdとがある。
そして、R側案内溝232Rは、深溝部232Ra,浅溝部232Rb、面取溝部232Rc及び凸溝部232Rdで略フタコブ状に連続して一体化された溝形状で形成している。
【0082】
L側半円タブ347Lを案内する反時計回り方向LのL側案内溝232Lは、L側案内溝232Lのうち時計回り方向Rに配置され、係止したL側半円タブ347Lが径内側に付勢される浅溝部232Lbと、L側案内溝232Lのうち反時計回り方向Lに配置され、係止するL側半円タブ347Lが径外側となる深溝部232Laとが略ヒトコブ状に連続して一体化された溝形状で形成している。
【0083】
なお、係止した半円タブ347が径内側に付勢される浅溝部232Rb,232Lb及び面取溝部232Rcは、組み付け状態において、係止した半円タブ347が径内側に付勢されることで、半円タブ347と並設されたラチェット爪348が、アウターリング31のラチェットギア314から径内側に離間し、ラチェットギア314との噛合が解消される位置まで移動する深さで形成している。
【0084】
また、深溝部232Laと浅溝部232Lbとの周方向の間隔、及び浅溝部232Rbと面取溝部232Rcとの周方向の間隔は、ナットリング22の差動凹部223にインナースリーブ23の差動凸部231が遊嵌する際の遊嵌量、つまり、ナットリング22に対してインナースリーブ23が周方向に差動回転する回転量に対応している。
【0085】
また、面取溝部232Rcと深溝部232Laとの周方向の間隔、及び浅溝部232Rbと浅溝部232Lbとの周方向の間隔は、前方突出部344に備えた時計回り方向RのR側半円タブ347Rと反時計回り方向LのR側半円タブ347Rとの周方向間隔に対応して形成している。
【0086】
したがって、時計回り方向RのR側半円タブ347RがR側案内溝232Rの浅溝部232Rbに係止した状態では、反時計回り方向LのL側半円タブ347LはL側案内溝232Lの浅溝部232Lbに係止することとなる。逆に、時計回り方向RのR側半円タブ347RがR側案内溝232Rの面取溝部232Rcに係止した状態では、反時計回り方向LのL側半円タブ347LはL側案内溝232Lの深溝部232Laに係止することとなる。
【0087】
なお、時計回り方向RのR側半円タブ347RがR側案内溝232Rの深溝部232Raに係止した状態では、反時計回り方向LのL側半円タブ347LはL側案内溝232Lの深溝部232Laと浅溝部232Lbとの間に案内されることとなる。
【0088】
アウタースリーブ24は、内部に軸心方向Xの基端側Bからのインナースリーブ23の嵌め込みを許容する、インナースリーブ23よりひとまわり大きく、後端側がバックスリーブ21の外周側の外側円筒部214と同径であり、先端側に後述するノーズピース25の挿着を許容する先端開口部241を有する先端側が絞られた側面視略釣鐘型の筒状に形成している。
【0089】
以下の説明において、アウタースリーブ24の内部にインナースリーブ23が挿入されたものをスリーブ23,24として説明する。
なお、インナースリーブ23とアウタースリーブ24とは、上述のように別体構成したものを組み付けてもよいが、一体的に形成されていてもよい。
【0090】
ノーズピース25は、正面視中央にジョー12の挿通を許容する挿通孔251を有するとともに、先端側Fに向けて寝かせた略円錐台状のキャップ本体250と、キャップ本体250の背面側において基端側Bに突出する挿着部252とで構成している。挿着部252は、上述のアウタースリーブ24の先端開口部241に挿着する中空の略円筒状である。
【0091】
各要素をこのように構成したチャック装置1は、まずボディ11の後胴部111を円形開口211に挿入するようにして、バックスリーブ21を軸心方向Xの基端側Bからボディ11に装着する。なお、内面を後胴部111の外面と略同径に形成した内側円筒部213を後胴部111に圧入して装着するため、バックスリーブ21は、ボディ11に対して軸心方向X及び回転方向ともに固定された状態で装着される。
【0092】
ジョー装着孔115にジョー12を挿入したボディ11の先端側Fから、ナットリング22を組み付けたロックベアリング30を装着し、全部のジョー12のネジ溝121と、上述のようにロックベアリング30に組み付けたナットリング22の嵌合ネジ溝225とを螺合させながら、ボディ11に対してロックベアリング30を装着する。このとき、ロックベアリング30を構成するロックリング32の回転固定タブ323は、中胴部112に形成した固定凹部112aに係止するため、ロックリング32は、ボディ11に対して回転固定されている。
【0093】
さらに、インナースリーブ23を内部に圧入して一体化したアウタースリーブ24を、上述したようにナットリング22を組み付けたロックベアリング30を装着したボディ11の先端側Fから挿入する。
【0094】
このとき、インナースリーブ23の案内溝232にロックベアリング30のスプリングリング34の半円タブ347が係止するとともに、ナットリング22の差動凹部223にインナースリーブ23の差動凸部231が遊嵌するように挿着する。
さらに、アウターリング31のラチェットギア314と、スプリングリング34のラチェット爪348とが係止していてもよい。
【0095】
さらにまた、ノーズピース25の挿着部252をアウタースリーブ24の先端開口部241から挿入して、チャック装置1の組み付けを完了する。
このとき、ノーズピース25はボディ11に対して軸心方向X及び回転方向に固定された状態で装着される。
【0096】
なお、このとき、図8(a)におけるa部拡大図に示すようにロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31の噛合溝315とは噛合していない。つまり、ボディ11に対して回転固定されたロックリング32とアウターリング31は噛合していないため、アウターリング31はボディ11に対する回転が規制されていない状態(非噛合状態)となる。この状態はいわゆる通常状態となる。
【0097】
このように、構成するとともに組み付けたチャック装置1は、ボディ11の挿入孔114に、先端側Fから回転治具5の基軸5aを挿入するとともに、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転する。これにより、スプリングアーム346の付勢力で半円タブ347が案内溝232に係止しているため、ナットリング22が時計回り方向Rに回転する。
【0098】
ナットリング22が時計回り方向Rに回転すると、ナットリング22の嵌合ネジ溝225にネジ溝121が螺合する3本のジョー12は、同期しながら、ジョー装着孔115を傾斜方向に進行し、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを周方向における三方向から把持して固定することができる。
【0099】
なお、このとき、ロック・解除機構20は、前回の使用状態によって、図10乃至図12で図示する両方向ロック状態であるか、図14に示すロック解除状態である。
詳述すると、図10及び図12で図示する両方向ロック状態であるロック・解除機構20は、R側案内溝232Rに係止するR側半円タブ347Rは深溝部232Raに位置し、L側案内溝232Lに係止するL側半円タブ347Lは深溝部232Laに位置している。
【0100】
なお、R側半円タブ347Rが深溝部232Raに位置すると(図10のa部拡大図)、R側半円タブ347Rと並設されたR側ラチェット爪348Rが、アウターリング31のラチェットギア314に噛合する(図12のa部拡大図)。R側ラチェット爪348Rがラチェットギア314に噛合すると、スプリングリング34及びナットリング22に対してアウターリング31及びスリーブ23,24はラチェット音を発しながら時計回り方向Rに回転できるものの、反時計回り方向Lの回転は規制されている。
【0101】
また、L側半円タブ347Lが深溝部232Laに位置すると(図10のa部拡大図)、L側半円タブ347Lと並設されたL側ラチェット爪348Lが、アウターリング31のラチェットギア314に噛合する(図12のb部拡大図)。
【0102】
L側ラチェット爪348Lがラチェットギア314に噛合すると、スプリングリング34及びナットリング22に対してアウターリング31及びスリーブ23,24はラチェット音を発しながら反時計回り方向Lに回転できるものの、時計回り方向Rの回転は規制されている。
【0103】
つまり、R側半円タブ347Rが深溝部232Raに位置するとともに、L側半円タブ347Lが深溝部232Laに位置すると、ラチェット爪348がともにラチェットギア314に噛合するため、スプリングリング34及びナットリング22に対してアウターリング31及びスリーブ23,24は反時計回り方向Lにも時計回り方向Rにも回転は規制されている。つまり、ナットリング22、スリーブ23,24、アウターリング31及びスプリングリング34は回転方向において一体化した状態となる。
【0104】
なお、このとき、図11(b)のa部拡大図に示すように、リング本体222と、遊嵌する差動凸部231とは、リング本体222における時計回り方向Rの位置に配置されるものの、差動凸部231は、端面222aとは当接していない状態となる。
【0105】
しかしながら、上述したように、図8(a)におけるa部拡大図に示すようにロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31のラチェットギア314とは噛合していない。つまり、ボディ11に対して回転固定されたロックリング32とアウターリング31は噛合していないため、アウターリング31はボディ11に対する回転が規制されていない状態である。スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転することで、3本のジョー12を、同期させながらジョー装着孔115を傾斜方向に進行させて、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを周方向における三方向から把持して固定することができる。
【0106】
また、図14で図示するロック解除状態であるロック・解除機構20は、R側案内溝232Rに係止するR側半円タブ347Rは浅溝部232Rbに位置し、L側案内溝232Lに係止するL側半円タブ347Lも浅溝部232Lbに位置している。
【0107】
なお、R側半円タブ347Rが浅溝部232Rbに位置すると(図14(b)のa部拡大図)、R側半円タブ347Rと並設されたR側ラチェット爪348Rは、アウターリング31のラチェットギア314から離間して噛合が解消される(図14(c)のa部拡大図)。
【0108】
R側ラチェット爪348Rがラチェットギア314から離間して噛合が解消されると、アウターリング31及びスリーブ23,24に対してスプリングリング34及びナットリング22は時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにも回転できる。
【0109】
また、L側半円タブ347Lが浅溝部232Lbに位置すると(図14(b)のb部拡大図)、L側半円タブ347Lと並設されたL側ラチェット爪348Lは、アウターリング31のラチェットギア314から離間して噛合が解消される(図14(c)のb部拡大図)。
【0110】
L側ラチェット爪348Lがラチェットギア314から離間して噛合が解消されると、アウターリング31及びスリーブ23,24に対してスプリングリング34及びナットリング22は時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにも回転できる。
【0111】
つまり、R側半円タブ347Rが浅溝部232Rbに位置するとともに、L側半円タブ347Lが浅溝部232Lbに位置すると、ラチェット爪348がともにラチェットギア314から離間して噛合が解消されるため、アウターリング31及びスリーブ23,24に対してスプリングリング34及びナットリング22は反時計回り方向Lにも時計回り方向Rにも回転できる。つまり、アウターリング31及びスリーブ23,24とスプリングリング34及びナットリング22とは相対回転自在な状態となる。
なお、この状態は、図14に示すロック解除状態となる。
【0112】
このロック解除状態において、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転すると、ナットリング22及びスプリングリング34に対してスリーブ23,24が時計回り方向Rに相対回転する。
ナットリング22及びスプリングリング34に対してスリーブ23,24が時計回り方向Rに相対回転すると、リング本体222に遊嵌する差動凸部231は、図14(a)のc部拡大図に示すような差動凸部231における反時計回り方向Lの側から時計回り方向Rに移動し、差動凸部231がリング本体222の時計回り方向Rの端面222aに当接する。
【0113】
さらなるスリーブ23,24の時計回り方向Rの回転によって、ナットリング22及びスプリングリング34は、スリーブ23,24とともに回転し、3本のジョー12を、同期させながらジョー装着孔115を傾斜方向に進行させて、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを周方向における三方向から把持して固定することができる。
【0114】
上述したように、ロック・解除機構20が図10乃至図12で図示する両方向ロック状態、あるいは図14に示すロック解除状態において、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転させ、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを、ナットリング22によって同期させた3本のジョー12で把持して固定してから、さらに、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転させても、回転治具5の基軸5aを把持したジョー12はジョー装着孔115をそれ以上進行することはできない。
【0115】
そのため、さらなるスリーブ23,24の時計回り方向Rの回転によって、基軸5aを把持したジョー12を反力として、ジョー12のネジ溝121に螺合するナットリング22に、基端側Bに移動しようとする力が作用する。
【0116】
ナットリング22に基端側Bに向かって移動しようとする力が作用すると、ナットリング22と組み付けられたスプリングリング34及びボール33を介してロックリング32に基端側Bに向かう方向の押圧力が作用する。
【0117】
ロックリング32に基端側Bに向かう方向の押圧力が作用すると、径外側が径内側より先端側Fとなるように断面が傾斜していたロックリング32は、ロックリング32の付勢力に抗して径外側が基端側Bに押されて、軸心方向Xに対して直交する方向にフラットな状態となる。
【0118】
ロックリング32がフラットになると、図8(b)のb部拡大図に示すように、リング本体322の基端側Bの面に形成した噛合ギア324と、アウターリング31の後方リング面312の先端側Fの面に形成した噛合溝315とが軸心方向Xに噛合することとなる。
【0119】
リング本体322の基端側Bの面に形成した噛合ギア324と、アウターリング31の後方リング面312の先端側Fの面に形成した噛合溝315とが軸心方向Xに噛合すると、回転固定タブ323がボディ11の固定凹部112aに嵌め込まれてボディ11に対して回転が規制されたロックリング32と、アウターリング31とは回転が固定される。つまり、アウターリング31は、ロックリング32を介して、ボディ11に対して回転が固定された状態となる(噛合状態)。
【0120】
上述のように、アウターリング31がボディ11に対して回転が固定された状態となってから、さらにアウタースリーブ24を時計回り方向Rに回転すると、アウターリング31に対してスリーブ23,24が時計回り方向Rに相対回転し、図13(b)のa部拡大図に示すように、R側半円タブ347RがR側案内溝232Rの時計回り方向Rの基端側Bとなる面取溝部232Rcに位置し、図13(b)のb部拡大図に示すように、L側半円タブ347Lが浅溝部232Lbに位置することとなる。
【0121】
R側半円タブ347Rが面取溝部232Rcに位置すると(図13(b)のa部拡大図)、R側半円タブ347Rと並設されたR側ラチェット爪348Rは、アウターリング31のラチェットギア314から離間して噛合が解消される(図13(c)のc部拡大図)。R側ラチェット爪348Rがラチェットギア314から離間して噛合が解消されると、アウターリング31及びスリーブ23,24に対してスプリングリング34及びナットリング22は時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにも回転できる。
【0122】
また、L側半円タブ347Lが浅溝部232Lbに位置すると(図13(b)のb部拡大図)、L側半円タブ347Lと並設されたL側ラチェット爪348Lは、アウターリング31のラチェットギア314から離間して噛合が解消される(図13(c)のc部拡大図)。L側ラチェット爪348Lがラチェットギア314から離間して噛合が解消されると、アウターリング31及びスリーブ23,24に対してスプリングリング34及びナットリング22は時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにも回転できる。
【0123】
そのため、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転すると、ナットリング22及びスプリングリング34に対してスリーブ23,24が時計回り方向Rに相対回転し、リング本体222に遊嵌する差動凸部231は、図13(a)のe部拡大図に示すような差動凸部231における反時計回り方向L側から時計回り方向Rに移動し、差動凸部231がリング本体222の時計回り方向Rの端面222aに当接し、さらなるスリーブ23,24の時計回り方向Rの回転によって、ナットリング22及びスプリングリング34は、スリーブ23,24とともに回転する。
ナットリング22がさらに時計回り方向Rに回転すると、嵌合ネジ溝225とネジ溝121とが螺合するジョー12の固定をより堅固に固定することができる。
【0124】
なお、この状態で、アウタースリーブ24を時計回り方向Rに回転する力を解放すると、R側半円タブ347Rは面取溝部232Rcに案内されているため、R側スプリングアーム346Rの付勢力によって、R側半円タブ347Rが深溝部232Raに案内される。つまり、R側半円タブ347RをR側案内溝232Rに押付けるR側スプリングアーム346Rの付勢力によって、スリーブ23,24は、ナットリング22及びスプリングリング34に対して、反時計回り方向Lに自動的に回転し、R側半円タブ347Rが深溝部232Raに案内される。
【0125】
R側半円タブ347Rが深溝部232Raに案内されると、図10乃至図12に示すロック状態となる。このとき、上述の図10乃至図12の両方向ロック状態の説明の状況と異なり、ロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31の噛合溝315とが噛合してアウターリング31がボディ11に回転固定されている。そのため、ジョー12を堅固に固定した固定ロック状態はボディ11に対して回転固定された状態となり、不用意に両方向ロック状態が解消されることが防止できる。
【0126】
なお、この両方向ロック状態では、両スプリングアーム346の付勢力が作用した状態で半円タブ347がともに、案内溝232に係合しているため、確実に両方向ロック状態を確実に維持することができる。したがって、不用意に、ロック・解除機構20の両方向ロック状態が解消されることが防止できる。
【0127】
なお、上述固定ロック状態を解消して、チャック装置1から基軸5aを取り外す際には、図10乃至図12に示すロック状態からアウタースリーブ24を反時計回り方向Lに回転させることで、半円タブ347は共に、案内溝232の反時計回り方向Lの基端側Bによって径内側に案内されて、ロック・解除機構20を上述の図14に図示するロック解除状態とすることで、ラチェット爪348とラチェットギア314との噛合が解消され、差動凸部231をナットリング22の反時計回り方向Lの端面222aに当接させて、ナットリング22を反時計回り方向Lに回転させて、ジョー12を、ジョー装着孔115を後退させてジョー12よる基軸5aの把持を解消する。
【0128】
あるいは、アウタースリーブ24を反時計回り方向Lに回転させると、基軸5aを把持するジョー12を反力としてナットリング22に作用する基端側Bの力が軽減する。ナットリング22に作用する基端側Bの力が軽減すると、ボール33を介してロックリング32に作用していた基端側Bの押圧力も軽減し、ロックリング32は皿ばねとして機能して付勢力によって当初の断面傾斜状態となる。
【0129】
そうすると、図8(a)に示すように、ロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31の噛合溝315との軸心方向Xの噛合が解消され、アウターリング31がボディ11に対する回転方向の規制がなくなる。
【0130】
そのため、アウターリング31、スプリングリング34、ナットリング22及びスリーブ23,24はボディ11に対して回転自在となり、アウタースリーブ24を反時計回り方向Lに回転させて、ジョー12による基軸5aの把持を解消することができる。
【0131】
なお、上述の固定ロック状態において、作業時の振動等によって、ジョー12によって把持された回転治具5の基軸5aが抜け出すと、ロック・解除機構20がロック状態のままとなる、いわゆる“セルフロック状態”となる。
【0132】
しかしながら、ロック・解除機構20がロック状態であっても、ジョー12で把持する基軸5aが抜け出すことで、基軸5aを把持するジョー12を反力としたナットリング22に作用する基端側Bの力がなくなり、上述したように、ロックリング32が皿ばねとして機能して付勢力によって当初の断面傾斜状態となり、図8(a)に示すように、ロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31の噛合溝315との軸心方向Xの噛合が解消される。
そのため、ロック状態のままのロック・解除機構20を反時計回り方向Lに回転させて、ジョー12を、ジョー装着孔115を後退させることができる。
【0133】
上述したように、軸心方向X上で回転可能な駆動軸を有する駆動装置に装着するチャック装置1は、軸心方向X上に配置され、先端側Fに回転治具5の基軸5aの挿入を許容する挿入孔114を有する略円筒状のボディ11と、ボディ11において、先端側Fで挿入孔114に連絡するとともに、基端側Bでボディ11の側方に開口するジョー装着孔115に挿着され、ボディ11に対して移動可能に配置された複数のジョー12と、ボディ11に対して回転自在に装着するとともに、回転操作によって回転力を入力するスリーブ23,24と、ボディ11に回動可能に保持されるとともに、ボディ11及びジョー12に対する螺合によって複数のジョー12を同期してジョー装着孔115内を傾斜方向に移動させるナットリング22と、スリーブ23,24の回転力をナットリング22に伝達する差動凸部231と、ボディ11に対するナットリング22の回転を規制するラチェットギア314及びラチェット爪348と、ラチェットギア314及びラチェット爪348によるナットリング22の回転規制を解除する案内溝232及び半円タブ347とが備えられている。
【0134】
チャック装置1のラチェットギア314及びラチェット爪348は、反時計回り方向Lの回転を規制するラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lと、時計回り方向Rの回転を規制するラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rとがある。
【0135】
チャック装置1の案内溝232及び半円タブ347は、ラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lの回転規制を解除するL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lと、ラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rの回転規制を解除するR側案内溝232R及びR側半円タブ347Rとがある。
【0136】
チャック装置1のL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lは、少なくともスリーブ23,24とナットリング22との反時計回り方向Lの差動回転により、ラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lの回転規制を解除する。
【0137】
チャック装置1のL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lは、少なくとも、スリーブ23,24とナットリング22との時計回り方向Rの差動回転により、ラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rの回転規制を解除する。そのため、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることのない締付けを実現することができる。
【0138】
詳述すると、ボディ11に設けられたギア状のラチェットギア314と、ナットリング22に取付けられ、ラチェットギア314に係止するラチェット爪348とを有する案内溝232及び半円タブ347は、ラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lの回転規制を解除するL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lと、ラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rの回転規制を解除するR側案内溝232R及びR側半円タブ347Rとがある。
【0139】
スリーブ23,24とナットリング22との反時計回り方向Lの差動回転により、少なくともL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lがラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lの回転規制を解除する。
【0140】
また、スリーブ23,24とナットリング22との時計回り方向Rの差動回転により、少なくともR側案内溝232R及びR側半円タブ347Rがラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rの回転規制を解除する。そのため、スリーブ23,24とナットリング22とを差動回転させなければ、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることを防止することができる。
【0141】
また、ラチェットギア314を、ボディ11に対して回転方向を固定するアウターリング31及びロックリング32が設けられ、アウターリング31及びロックリング32は、ボディ11に対して回転方向が固定された噛合ギア324と、ラチェットギア314に設けられ、噛合ギア324と軸心方向Xに噛合する噛合溝315とを有し、スリーブ23,24の反時計回り方向Lの回転入力による、基軸5aを把持するジョー12を反力としたナットリング22の基端側への移動によって、噛合ギア324と噛合溝315とが噛合して、噛合ギア324がボディ11に対して固定されるとともに、スリーブ23,24とナットリング22との反時計回り方向Lの差動回転により、少なくともL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lがラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lの回転規制を解除し、スリーブ23,24とナットリング22との時計回り方向Rの差動回転により、R側案内溝232R及びR側半円タブ347Rがラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rの回転規制を解除する。
【0142】
そのため、上述のように、スリーブ23,24とナットリング22とを差動回転させなければ、ロック状態が不用意に解除されたり、ロック状態が解除できなくなったりすることを防止することができる。さらに、挿入孔114に挿入され、複数のジョー12で把持された回転治具5の基軸5aがロック状態のまま不用意に抜けた場合、いわゆるセルフロック状態となっても、噛合ギア324と噛合溝315とは非噛合状態となるため、ロック状態が解除できなくなるという不具合を解消することができる。
【0143】
また、噛合ギア324は、周方向且つ軸心方向Xに対して傾斜する帯状のリング体であり、周方向且つ軸心方向Xに対して傾斜する噛合ギア324と噛合溝315とは非噛合状態であり、ナットリング22の基端側への移動により、傾斜する噛合ギア324が捩れ変形して噛合ギア324と噛合溝315とが噛合状態となる。
【0144】
そのため、傾斜するロックリング32(噛合ギア324)の捩れ変形によって、つまりロックリング32(噛合ギア324)は皿ばねとして機能し、噛合ギア324と噛合溝315との噛合と非噛合とを切り替えることができる。
【0145】
また、軸心方向Xの先端側FからBに向かって、ナットリング22、噛合ギア324及び噛合溝315の順で配置され、ナットリング22と噛合ギア324との間に複数のボール33が設けられてロックベアリング30が構成されている。そのため、ボディ11に固定された噛合ギア324に対してナットリング22をスムーズに回転させることができる。
【0146】
また、スリーブ23,24に設けられた案内溝232に案内される半円タブ347を案内溝232に押付けるスプリングアーム346を有し、ラチェット爪348は、半円タブ347とともに案内される構成である。
【0147】
そのため、スリーブ23,24とナットリング22の差動回転により、少なくともスリーブ23,24に設けられた案内溝232に対してスプリングアーム346によって押付けられる半円タブ347は、案内溝232で案内されることで、ラチェット爪348の係止と係止解除とを案内することができる。
【0148】
また、案内溝232は、溝深さが深い深溝部232Ra,232Laと、溝深さが浅い浅溝部232Rb,232Lbとを有している。そして、半円タブ347が深溝部232Ra,232Laに案内されると、ラチェット爪348がラチェットギア314に係止してロック状態となる。
【0149】
逆に、半円タブ347が浅溝部232Rb,232Lbに案内されると、ラチェットギア314へのラチェット爪348の係止が解除してロック解除状態となる。
したがって、スリーブ23,24とナットリング22の差動回転により、少なくともスリーブ23,24に設けられた案内溝232に対してスプリングアーム346によって押付けられる半円タブ347が、溝深さが深い深溝部232Ra,232Laに案内されることでラチェット爪348がラチェットギア314に係止してロック状態となり、溝深さが浅い浅溝部232Rb,232Lbに半円タブ347に案内されると、ラチェットギア314へのラチェット爪348の係止が解除してロック解除状態となることができる。
【0150】
また、半円タブ347は、案内溝232に向かって凸状となる円弧形状であるとともに、深溝部232Raと浅溝部232Rbとが周方向に所定間隔を隔てて配置され、半円タブ347が深溝部232Raと浅溝部232Rbとの間の凸溝部232Rdに当接する状態において、スプリングアーム346の付勢力によって、半円タブ347が深溝部232Raか浅溝部232Rbのいずれかに、自動的に案内される。
【0151】
なお、上述のチャック装置1では、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転させ、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを、ナットリング22によって同期させた3本のジョー12で把持して固定してから、さらに、スリーブ23,24を時計回り方向Rに回転させ、基軸5aを把持したジョー12を反力として、ロックリング32に基端側Bに向かう方向の力を作用させて、軸心方向Xに対して直交する方向にロックリング32をフラットな状態とし、リング本体322の基端側Bの面に形成した噛合ギア324と、アウターリング31の後方リング面312の先端側Fの面に形成した噛合溝315とが軸心方向Xに噛合させることで、アウターリング31をボディ11に対して回転固定した。
【0152】
つまり、チャック装置1は、ジョー12で基軸5aを把持していない状態ではアウターリング31はボディ11に対して回転自在な状態であり、ジョー12で基軸5aを把持してからの時計回り方向Rの回転操作によってロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31の噛合溝315とを噛合させて、ボディ11に対してアウターリング31を回転規制したが、アウターリング31とロックリング32とを一体で構成してもよい。
【0153】
具体的には、図15及び図16に示すように、別の実施形態のチャック装置1Xでは、ロックリング32を備えず、アウターリング31Xを備えて構成している。
なお、以下のチャック装置1Xの説明において、チャック装置1と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0154】
アウターリング31Xは、上述のチャック装置1のアウターリング31とロックリング32との機能を備えている。
詳しくは、アウターリング31Xは、アウターリング31と同様に、中央開口311を有するリング体であり、後方リング面312と外周側面313とを備え、中央開口311の内面にラチェットギア314を備えている。
また、後方リング面312の内周縁に、上述のロックリング32の回転固定タブ323に対応する回転固定タブ316を備えている。
【0155】
これにより、チャック装置1Xは、アウターリング31Xが常時ボディ11に対して回転が規制された状態となる。
このため、チャック装置1Xは、上述のチャック装置1のように、基軸5aを把持したジョー12を反力として、ロックリング32に基端側Bに向かう方向の力を作用させて、リング本体322の基端側Bの面に形成した噛合ギア324と、アウターリング31の後方リング面312の先端側Fの面に形成した噛合溝315とを軸心方向Xに噛合させることで、アウターリング31をボディ11に対して回転固定するという機能は有さないものの、チャック装置1で奏するその他効果を同様に奏することができる。
【0156】
続いて、さらに別の実施形態のチャック装置1Yについて、図17乃至図20とともに説明する
なお、以下のチャック装置1Yの説明において、チャック装置1と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0157】
図17乃至図20で図示するチャック装置1Yは、チャック装置1における案内溝232の形状を単純化している。
具体的には、上述のチャック装置1では、R側半円タブ347Rが係止して案内されるR側案内溝232Rを略フタコブ状に形成し、L側半円タブ347Lが係止して案内されるL側案内溝232Lを略ヒトコブ状に形成する、つまり前方突出部344において時計回り方向RのR側半円タブ347Rが係止するR側案内溝232RとL側半円タブ347Lが係止するL側案内溝232Lとで異なる溝形状で形成した。
【0158】
これに対して、チャック装置1Yは、図17(b)及び図18に示すように、単なる凹状に形成された案内溝232Yであり、時計回り方向RのR側案内溝232YRと反時計回り方向LのL側案内溝232YLとを同じ溝形状で形成している。また、案内溝232Y自体も時計回り方向Rと反時計回り方向Lとで同じ対称形状で形成している。
【0159】
このように形成したチャック装置1Yのロック・解除機構20Yは、ナットリング22に対してアウタースリーブ24を少し相対回転することで、ラチェットギア314に対するラチェット爪348の噛合を解消することができる。
【0160】
具体的には、図19(b)に示すように、スリーブ23Y,24をナットリング22に対して時計回り方向Rに回転させると、半円タブ347は共に時計回り方向Rの基端側Bの案内溝232Yによって径内側に案内され、図19(c)に示すように、ラチェットギア314に対するラチェット爪348の噛合を解消することができる。
【0161】
逆に、図20(b)に示すように、スリーブ23Y,24をナットリング22に対して反時計回り方向Lに回転させると、半円タブ347は共に反時計回り方向Lの基端側Bの案内溝232Yによって径内側に案内され、図20(c)に示すように、ラチェットギア314に対するラチェット爪348の噛合を解消することができる。
【0162】
このように構成されたチャック装置1Yは、上述のチャック装置1と同様の効果を奏することができる。
また、チャック装置1Yは、案内溝232Y自体の周方向長さが、チャック装置1の案内溝232より短いため、差動凸部231と差動凹部223との遊嵌量を小さくでき、ロック・解除機構20Yのロック状態とロック解除状態の切り替えを、スリーブ23,24とナットリング22及びスプリングリング34との小さな差動量で実現することができる。
【0163】
さらに、上述のチャック装置1では、アウターリング31の先端側Fにロックリング32を配置し、基軸5aを把持するジョー12を反力として、基端側Bの力を、ボール33を介してロックリング32に作用させ、ロックリング32の噛合ギア324とアウターリング31の噛合溝315とを軸心方向Xに噛合させたが、図21に示すように、アウターリング31Zの基端側Bにロックリング32Zを配置してもよい。
なお、以下の説明において、チャック装置1と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0164】
この場合、図21(a)に示すように、スプリングリング34及びボール33が組付けられるアウターリング31Zの後方リング面312Zの基端側Bの面に噛合溝315Zを形成している。なお、本実施形態では、アウターリング31Z、スプリングリング34及びボール33が組付けられるロックベアリング30Zを構成している。
【0165】
また、図21(b)に示すように、ロックリング32Zを構成するリング本体322の先端側Fの面に噛合ギア324Zを設け、ロックベアリング30Z(アウターリング31Z)の基端側Bに配置する。
【0166】
ロックベアリング30Z(アウターリング31Z)の基端側Bに配置されたロックリング32Zは、ボディ11の中胴部112におけるフランジ部とアウターリング31Zとの間に挟まれるような態様となり、ロックリング32Zの回転固定タブ323が、フランジ部の先端側Fに形成された固定凹部112aと嵌合することとなる。
【0167】
このように構成したロックベアリング30Z(アウターリング31Z)及びロックリング32Zを組み付けた状態で、基軸5aを把持するジョー12を反力とした基端側Bの力を、アウターリング31Zを介してロックリング32Zに作用させることで、アウターリング31Zとロックリング32Zとが噛合することとなり、上述のチャック装置1と同様の効果を奏することができる。
【0168】
続いて、別の形態のチャック装置1Wについて以下図22乃至図31に基づいて詳述する。
図22はチャック装置1Wを備えた電動工具の正面図を示し、図23はチャック装置1Wの各構成要素の基端側Bからの分解斜視図を示し、図24はチャック装置1Wの各構成要素の先端側Fからの分解斜視図を示し、図25はチャック装置1Wの縦断面図を示している。
【0169】
図26はナットリング22Wとスプリングリング34Wの説明図を示し、図27は組付け状態のナットリング22W及びスプリングリング34Wの説明図を示し、図28はアウタースリーブ24Wと組付け状態のナットリング22W及びスプリングリング34Wの説明図を示している。
【0170】
詳述すると、図26(a)は基端側Bからのナットリング22W及びスプリングリング34Wの斜視図を示し、図26(b)は先端側Fからのナットリング22W及びスプリングリング34Wの斜視図を示している。
【0171】
また、図27(a)は基端側Bからの組付け状態のナットリング22W及びスプリングリング34Wの斜視図を示し、図27(b)は先端側Fからの組付け状態のナットリング22W及びスプリングリング34Wの斜視図を示している。
図28(a)はアウタースリーブ24Wを基端側Bから視た図を示し、図28(b)は組付け状態のナットリング22W及びスプリングリング34Wを先端側Fから視た図を示している。
【0172】
図29乃至図31は各状態のチャック装置1Wの断面図による説明図を示している。
詳述すると、図29(a)は緩み状態のチャック装置1Wの図25におけるD-D矢視断面図を示し、図29(b)は同状態の図25におけるE-E矢視断面図を示している。
【0173】
図30(a)は締付け途中状態のチャック装置1Wの図25におけるD-D矢視断面図を示し、図30(b)は同状態の図25におけるE-E矢視断面図を示し、図31(a)は締付け状態のチャック装置1Wの図25におけるD-D矢視断面図を示し、図31(b)は同状態の図25におけるE-E矢視断面図を示している。
【0174】
なお、以下における、チャック装置1Wの説明において、上述のチャック装置1,1X,1Y等における構成と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
具体的には、チャック装置1Wにおけるジョー12及びボール33は、上述の説明におけるジョー12及びボール33と同じ構成であり、チャック装置1Wにおけるアウターリング31Zとロックリング32Zは上述の説明におけるチャック装置1Yにおけるアウターリング31Zとロックリング32Zと同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0175】
チャック装置1Wは、上述のチャック装置1と同様に、図22に示すように、電動工具Kの先端に装備されるものであり、図22乃至図24に示すように、主要部品であるチャック機構10Wに、ロックベアリング30Wが組み付けられたロック・解除機構20Wを組み付けて構成している。
チャック機構10Wは、ボディ11Wと、ジョー12とで構成している。
【0176】
ボディ11Wは、上述のボディ11と同様に、基端側Bから、後胴部111、中胴部112、前胴部113とで構成し、中心に軸心方向Xの挿入孔114を有する略円筒形状に形成し、ボディ11Wにおける周方向の三ケ所に、フランジ部を有する中胴部112から前胴部113を介し、外周側から内周側に向かい、軸心方向Xに対して交叉する方向で挿入孔114に連通するジョー装着孔115を配置している。なお、3つのジョー装着孔115の径内側方向の延長線上の交点は軸心方向X上となるように形成している。
上述のボディ11と異なり、ボディ11Wは、後述するバックスリーブ21Wの内側円筒部213Wと嵌合する軸方向に延びるスプラインが後胴部111の外周面に形成されている。
【0177】
上述のように構成したボディ11Wのジョー装着孔115にジョー12を挿入してチャック機構10Wを構成する。このとき、ジョー12は、ネジ溝121が径外側向きとなるように、ジョー装着孔115に挿入される。
【0178】
ロックベアリング30Wは、図23乃至図28に示すように、上述のチャック装置1のロックベアリング30と異なり軸心方向Xの基端側Bから先端側Fに向かって順に、ロックリング32Z、弾性リング35、アウターリング31Z、ボール33、及びスプリングリング34Wで構成している。
【0179】
つまり、ロックベアリング30Wは、上述のチャック装置1のロックベアリング30と異なり、アウターリング31Zの基端側Bにロックリング32Zが配置されるとともに、ロックリング32Zとアウターリング31Zとの間に弾性リング35が備えられている。
【0180】
ロックリング32Zは、上述の説明通りの構成であり、アウターリング31Zの大まかな構成は、上述の説明通りの構成であるため、その説明を省略する。ただ、ロックベアリング30Wに用いるアウターリング31Zにおいて、噛合溝315Zギア歯は径外側が先端側Fに向かって傾斜するとともに、噛合溝315Zのギア歯の頂部における径内側を、図23のa部拡大図に示すように、後方リング面312の面に略並行なフラット面317を設けている。
【0181】
スプリングリング34Wは、上述のチャック装置1におけるスプリングリング34と同様に、中央開口341を有する前方リング面342、先端に半円タブ347(347R,347L)及びラチェット爪348(348R,348L)を有するスプリングアーム346が反時計回り方向L及び時計回り方向Rに設けられた連結バネ片345Wを有する前方突出部344を備えているが、連結バネ片345Wの先端側Fに第2半円タブ349を備えている。
【0182】
詳述すると、連結バネ片345Wの先端側Fにおいて、反時計回り方向Lから時計回り方向Rに延びるとともに、径外側に突な半円状の第2半円タブ349を備えている。第2半円タブ349はR側半円タブ347Rと同じ向きで配置されている。
【0183】
また、先端側Fに第2半円タブ349を設けた連結バネ片345Wは、上述のチャック装置1のスプリングリング34における連結バネ片345Wと同様に、後述するナットリング22Wと嵌合するとともに、第2半円タブ349を支持するねじりバネとして機能することとなる。
【0184】
弾性リング35は、弾性樹脂で構成された断面円形のリング体であり、ロックリング32Zとアウターリング31Zの外径と略同径の外径で形成され、ロックリング32Zとアウターリング31Zと間に配置される。
【0185】
そのため、回転固定タブ323によってボディ11Wに回転方向が規制されたロックリング32Zとアウターリング31Zとが弾性リング35の弾性力に抗して反時計回り方向Lに近接し、ロックリング32Zの先端側Fに形成された噛合ギア324Zと、アウターリング31Zの基端側Bに形成された噛合溝315Zとが噛合して、ロックリング32Zを介してボディ11Wに対してアウターリング31Zの回転方向が規制されるロックベアリング30Wにおいて、弾性リング35の弾性力によってロックリング32Zに対してアウターリング31Zを離間させて、噛合ギア324Zと噛合溝315Zとの噛合を解消することができる。
【0186】
上述のように構成したロックリング32Z、弾性リング35、アウターリング31Z、ボール33、及びスプリングリング34Wを組み付けてロックベアリング30Wを構成している。
具体的には、ロックリング32Zのリング本体322の先端側Fの面に形成した噛合ギア324Zと、アウターリング31Zの後方リング面312Zの基端側Bの面に形成した噛合溝315Zとが対向するように、ロックリング32Zとアウターリング31Zとを配置する。このとき、ロックリング32Zとアウターリング31Zとの間に弾性リング35を配置する。
【0187】
そして、アウターリング31Zの先端側Fに複数のボール33を配置し、その先端側Fからスプリングリング34Wを組み付ける。
詳しくは、アウターリング31Zの先端側Fに配置された複数のボール33の径内側及び先端側Fを内周面343が跨ぐようにスプリングリング34Wを配置する。このとき、連結バネ片345Wのスプリングアーム346の先端に設けたラチェット爪348が、アウターリング31Zの外周側面313の内面に形成したラチェットギア314とが係止するように組み付けてロックベアリング30Wの組み付けは完了する。
【0188】
なお、このように組み付けられたロックベアリング30Wは、ラチェット爪348がともにラチェットギア314に係止すると、アウターリング31Zに対してスプリングリング34Wは時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにも相対回転できず、ラチェットギア314へのラチェット爪348の係止が解消すると、ボール33によってアウターリング31Zに対してスプリングリング34Wは時計回り方向Rにも反時計回り方向Lにもスムーズに相対回転することができる。
【0189】
そして、ロックベアリング30Wは、L側ラチェット爪348Lはラチェットギア314に係止しないが、R側ラチェット爪348Rがラチェットギア314に係止すると、アウターリング31Zに対してスプリングリング34Wは時計回り方向Rには相対回転できず、反時計回り方向Lにはスムーズに相対回転することができる。
【0190】
逆に、ロックベアリング30Wは、R側ラチェット爪348Rはラチェットギア314に係止しないが、L側ラチェット爪348Lがラチェットギア314に係止すると、アウターリング31Zに対してスプリングリング34Wは反時計回り方向Lには相対回転できず、時計回り方向Rにはスムーズに相対回転することができる。
【0191】
ロック・解除機構20Wは、バックスリーブ21W、ナットリング22W、インナースリーブ23W、アウタースリーブ24W、及び上述のロックベアリング30Wで構成され、上述のロック・解除機構20と異なり、ノーズピース25を備えていない。
さらに詳しくは、ロック・解除機構20Wは、図23乃至図25に示すように、上述のロックベアリング30Wと、ロックベアリング30Wより軸心方向Xの基端側Bに図示するバックスリーブ21Wと、ロックベアリング30Wより軸心方向Xの先端側Fに図示するナットリング22W、インナースリーブ23W、及びアウタースリーブ24Wで構成している。
【0192】
バックスリーブ21Wは、チャック装置1Wの背面を構成し、ボディ11Wの後胴部111の挿入を許容する円形開口211を有するリング本体212Wと、円形開口211を形成するリング本体212Wの内周縁において軸心方向Xの先端側Fに突出する内側円筒部213Wと、リング本体212Wの外周縁において軸心方向Xの先端側Fに突出する外側円筒部214Wとで構成している。
【0193】
内側円筒部213Wは、ボディ11Wの後胴部111に圧入可能な内径で形成するとともに、外側円筒部214Wより1/3倍程度の高さで形成している。
内側円筒部213Wより3倍程度の高さで形成した外側円筒部214Wの軸心方向Xの先端側Fの端部は、外径側が階段状となるように縮径された縮径端部214Waを構成している。
【0194】
ナットリング22Wは、上述のナットリング22と同様の構成であり、円錐台状の円錐台状開口221を有するリング状であるリング本体222で構成し、リング本体222の先端側Fの面には、後述するインナースリーブ23Wの差動凸部231が周方向に遊嵌できる凹状の差動凹部223を周方向に所定間隔を隔てて三ケ所形成している。
【0195】
リング本体222の外周面に、ナットリング22と同様に、連結凹部224Wが前方突出部344に対応する箇所に三ケ所形成している。
連結凹部224Wは、ナットリング22の連結凹部224と同様に、上述のスプリングリング34Wの前方突出部344の連結バネ片345Wの嵌合を許容する径方向内側に凹状となるが、周方向の中央に向かって徐々に凹み、底部が先端側Fから視てV字状となる凹状に形成している。
【0196】
また、円錐台状開口221を形成するリング本体222の内面には、ジョー12のネジ溝121が噛合する螺旋状の嵌合ネジ溝(図示省略)を形成している。なお、嵌合ネジ溝は、上述したジョー12のネジ溝121に対応した螺旋角度で形成するとともに、複数周分の螺旋長さで形成している。
【0197】
上述のように構成されたナットリング22Wは、図26及び図27に示すように、上述のロックベアリング30Wと組み付けられる。
詳しくは、ロックベアリング30Wに組み付けられたスプリングリング34Wの前方突出部344の連結バネ片345Wが、先端側Fに配置されたナットリング22Wの連結凹部224Wに挿入されて、スプリングリング34Wとナットリング22Wとが連結される。
【0198】
このようにしてロックベアリング30Wと組み付けられたナットリング22Wは、スプリングリング34Wと回転方向が固定される。
また、先端側Fから視て底部が略V字状となる連結凹部224Wに嵌合された連結バネ片345Wの先端側Fに設けた第2半円タブ349は、図27に示すように、ナットリング22Wより先端側Fに突出することとなる。
【0199】
そして、連結バネ片345Wが嵌合された連結凹部224Wの底部は先端側Fから視て略V字状に形成されているため、連結バネ片345Wの径内側に空間が形成される。そのため、第2半円タブ349に径内側向きの外力が作用すると、第2半円タブ349が先端側Fに設けられた連結バネ片345Wがねじり変形することができる。そのため、第2半円タブ349には、連結バネ片345Wのねじり変形が復元しようとする付勢力が作用することとなる。
【0200】
インナースリーブ23Wは、後述するアウタースリーブ24Wに軸心方向Xの基端側Bより嵌め込んで内包される、アウタースリーブ24Wよりひとまわり小さな側筒状であり、反時計回り方向Lの長さがアウタースリーブ24Wより半分程度の長さで形成されている。そして、ボディ11Wの中胴部112に外嵌するように装着される。
なお、上述のインナースリーブ23に設けた差動凸部231及び案内溝232(232R,232L)は後述するアウタースリーブ24Wに差動凸部243及び案内溝242(242R,242L)として、設けている。
【0201】
アウタースリーブ24Wは、内部に軸心方向Xの基端側Bからのインナースリーブ23Wの嵌め込みを許容する、インナースリーブ23Wよりひとまわり大きく、後端側がバックスリーブ21Wの外周側の外側円筒部214Wと同径であり、先端開口部241を有する先端側が絞られた側面視略釣鐘型の筒状に形成している。
【0202】
アウタースリーブ24Wには、上述したように、上述のインナースリーブ23に備えた差動凸部231に対応する差動凸部243を備えるとともに、インナースリーブ23に備えた案内溝232に対応する案内溝242を備え、さらには、第2半円タブ349を案内する第2案内溝244を設けている。
【0203】
詳しくは、アウタースリーブ24Wの基端側Bから視た図である図28(a)に示すように、軸心方向Xの中央より先端側Fの内周側に、基端側Bに向かって突出し、ナットリング22Wの先端側Fの面に形成した差動凹部223に遊嵌する差動凸部243を周方向に所定間隔を隔てて三ケ所形成している。
【0204】
また、差動凸部243より基端側Bの内周面には、上述の前方突出部344の半円タブ347が係止する案内溝242(242R,242L)を設けている。
案内溝242は、上述のインナースリーブ23の案内溝232と同様に、R側スプリングアーム346RのR側半円タブ347Rが嵌合し、案内する時計回り方向Rに配置されたR側案内溝242Rと、L側スプリングアーム346LのL側半円タブ347Lが嵌合し、案内する反時計回り方向Lに配置されたL側案内溝242Lとを設けている。
【0205】
R側案内溝242Rは、R側案内溝232Rと同様に、R側案内溝242Rのうち反時計回り方向Lに配置され、係止したR側半円タブ347Rが径外側となる深溝部242Raと、R側案内溝242Rのうち時計回り方向Rに配置され、係止するR側半円タブ347Rが径内側に付勢される浅溝部242Rbと、深溝部242Raにおける反時計回り方向Lに形成された面取溝部242Rcとがある。
【0206】
L側半円タブ347Lを案内する反時計回り方向LのL側案内溝242Lは、R側案内溝242Rと同様に、L側案内溝242Lのうち反時計回り方向Lに配置され、係止したL側半円タブ347Lが径外側となる深溝部242Laと、L側案内溝242Lのうち時計回り方向Rに配置され、係止するL側半円タブ347Lが径内側に付勢される浅溝部242Lbと、深溝部242Laにおける反時計回り方向Lに形成された面取溝部242Lcとがある。
【0207】
なお、係止した半円タブ347が径内側に付勢される浅溝部242Rb,242Lb及び面取溝部242Rcは、組み付け状態において、係止した半円タブ347が径内側に付勢されることで、半円タブ347と並設されたラチェット爪348が、アウターリング43Zのラチェットギア314から径内側に離間し、ラチェットギア314との噛合が解消される位置まで移動する深さで形成している。
【0208】
また、深溝部242Laと浅溝部242Lbとの周方向の間隔、及び浅溝部242Rbと面取溝部242Rcとの周方向の間隔は、ナットリング22Wの差動凹部223にインナースリーブ23Wの差動凸部243が遊嵌する際の遊嵌量、つまり、ナットリング22Wに対してインナースリーブ23Wが周方向に差動回転する回転量に対応している。
【0209】
また、面取溝部242Rcと深溝部242Laとの周方向の間隔、及び浅溝部242Rbと浅溝部242Lbとの周方向の間隔は、前方突出部344に備えた時計回り方向RのR側半円タブ347Rと反時計回り方向LのR側半円タブ347Rとの周方向間隔に対応して形成している。
【0210】
したがって、時計回り方向RのR側半円タブ347RがR側案内溝242Rの浅溝部242Rbに係止した状態では、反時計回り方向LのL側半円タブ347LはL側案内溝242Lの浅溝部242Lbに係止することとなる。逆に、時計回り方向RのR側半円タブ347RがR側案内溝242Rの面取溝部242Rcに係止した状態では、反時計回り方向LのL側半円タブ347LはL側案内溝242Lの深溝部242Laに係止することとなる。
【0211】
なお、時計回り方向RのR側半円タブ347RがR側案内溝242Rの深溝部242Raに係止した状態では、反時計回り方向LのL側半円タブ347LはL側案内溝242Lの深溝部242Laと浅溝部242Lbとの間に案内されることとなる。
【0212】
第2半円タブ349を案内する第2案内溝244は、周方向に間隔を隔てて配置され、係止した第2半円タブ349が径外側となる2つの深溝部244aと、反時計回り方向L側の深溝部244aにおける反時計回り方向Lに形成された面取溝部244bと、2つの深溝部244aの間において径内側に凸となる円弧状の凸溝部244cとがある。
そして、第2案内溝244は、2つの深溝部244a、面取溝部244b及び凸溝部244cとで略フタコブ状に連続して一体化された溝形状で形成している。
【0213】
以下の説明において、アウタースリーブ24Wの内部にインナースリーブ23Wが挿入されたものをスリーブ23W,24Wとして説明する。
なお、インナースリーブ23Wとアウタースリーブ24Wとは、上述のように別体構成したものを組み付けてもよいが、一体的に形成されていてもよい。
【0214】
各要素をこのように構成したチャック装置1Wは、まずボディ11Wの後胴部111を円形開口211に挿入するようにして、バックスリーブ21Wを軸心方向Xの基端側Bからボディ11Wに装着する。なお、内面を後胴部111の外面と略同径に形成した内側円筒部213Wを後胴部111に圧入して装着するため、バックスリーブ21Wは、ボディ11Wに対して軸心方向X及び回転方向ともに固定された状態で装着される。
【0215】
ジョー装着孔115にジョー12を挿入したボディ11Wの先端側Fから、ナットリング22Wを組み付けたロックベアリング30Wを装着し、全部のジョー12のネジ溝121と、上述のようにロックベアリング30Wに組み付けたナットリング22Wの嵌合ネジ溝とを螺合させながら、ボディ11Wに対してロックベアリング30Wを装着する。このとき、ロックベアリング30Wを構成するロックリング32Zの回転固定タブ323は、中胴部112に形成した固定凹部112aに係止するため、ロックリング32Zは、ボディ11Wに対して回転固定されている。
【0216】
さらに、インナースリーブ23Wを内部に圧入して一体化したアウタースリーブ24Wを、上述したようにナットリング22Wを組み付けたロックベアリング30Wを装着したボディ11Wの先端側Fから挿入する。
【0217】
このとき、インナースリーブ23Wの案内溝232にロックベアリング30Wのスプリングリング34Wの半円タブ347が係止するとともに、ナットリング22Wの差動凹部223にインナースリーブ23Wの差動凸部231が遊嵌するように挿着して、チャック装置1Wの組み付けを完了する。
なお、アウターリング31Zのラチェットギア314と、スプリングリング34Wのラチェット爪348とが係止していてもよい。
【0218】
このとき、図8(a)におけるa部拡大図に示すようにロックリング32Zの噛合ギア324とアウターリング31Zの噛合溝315とは噛合していない。つまり、ボディ11Wに対して回転固定されたロックリング32Zとアウターリング31Zは噛合していないため、アウターリング31Zはボディ11Wに対する回転が規制されていない状態(非噛合状態)となる。この状態はいわゆる通常状態となる。
【0219】
このように、構成するとともに組み付けたチャック装置1Wは、ボディ11Wの挿入孔114に、先端側Fから回転治具5の基軸5aを挿入するとともに、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転する。これにより、スプリングアーム346の付勢力で半円タブ347が案内溝232に係止しているため、ナットリング22Wが時計回り方向Rに回転する。
【0220】
ナットリング22Wが時計回り方向Rに回転すると、ナットリング22Wの嵌合ネジ溝にネジ溝121が螺合する3本のジョー12は、同期しながら、ジョー装着孔115を傾斜方向に進行し、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを周方向における三方向から把持して固定することができる。
【0221】
なお、このとき、ロック・解除機構20Wは、前回の使用状態によって、例えば、図29に示すロック解除状態である。
図29に示すロック解除状態では、図29(a)のa部拡大図及びb部拡大図に示すように、R側半円タブ347RもL側半円タブ347Lも浅溝部242Rb,242Lbに位置しており、ラチェット爪348がラチェットギア314に噛合していない状態である。
【0222】
このとき、第2案内溝244に係止している第2半円タブ349は、図29(c)のc部拡大図に示すように、時計回り方向Rの深溝部244aに位置している。
また、ナットリング22Wの差動凹部223に嵌め込まれた差動凸部243は、差動凹部223において反時計回り方向Lの位置に配置されている。
【0223】
この状態で、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転させると、第2半円タブ349が時計回り方向Rの深溝部244aに位置しているスプリングリング34Wを介して、ナットリング22Wが時計回り方向Rに回転する。
【0224】
ナットリング22Wが時計回り方向Rに回転すると、リング本体222の内面に形成された嵌合ネジ溝がジョー12のネジ溝121と噛合しているため、3本のジョー12を、同期させながらジョー装着孔115を傾斜方向に進行させる。
【0225】
スリーブ23W,24Wの時計回り方向Rの回転を続け、3本のジョー12が同期してジョー装着孔115を進行して挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aを周方向における三方向から把持することになる。
【0226】
挿入孔114に挿入された基軸5aを3本のジョー12で把持すると、ジョー12はジョー装着孔115で進行できなくなるため、さらなるスリーブ23W,24Wの時計回り方向Rの回転によって、ナットリング22W及びロックベアリング30Wは、基軸5aを把持するジョー12を反力として基端側Bに向かって移動する。
【0227】
ナットリング22W及びロックベアリング30Wが基端側Bに移動すると、弾性リング35によってロックリング32Zの噛合ギア324Zに対して反時計回り方向Lに離間していたアウターリング31Zの噛合溝315Zが、弾性リング35の弾性力に抗して近接して噛合する。
回転固定タブ323によってボディ11Wに回転方向が固定されているロックリング32Zの噛合ギア324Zとアウターリング31Zの噛合溝315Zとが噛合すると、ラチェットギア314を有するアウターリング31Zはボディ11に対して回転が固定されることとなる。
【0228】
また、挿入孔114に挿入された基軸5aを3本のジョー12で把持すると、ジョー12はジョー装着孔115で進行できなくなるため、さらにスリーブ23W,24Wが時計回り方向Rに回転しても、ナットリング22Wは回転できず、スリーブ23W,24Wは、図30に示すように、ナットリング22Wに対して時計回り方向Rに差動回転する。
【0229】
スリーブ23W,24Wが、回転できないナットリング22Wに対して時計回り方向Rに差動回転すると、半円タブ347は、図30(a)におけるa部拡大図及びb部拡大図に示すように、深溝部242Ra,242Laに位置することとなり、ラチェット爪348がラチェットギア314に係止して、ロック状態となる。
【0230】
このロック状態では、ボディ11Wに回転が固定されたラチェットギア314に対してラチェット爪348が係止しているため、ナットリング22W及びスプリングリング34Wは相対回転できない状態となる。
【0231】
また、スリーブ23W,24Wが、回転できないナットリング22Wに対して時計回り方向Rに差動回転することで、図30(b)に示すように、差動凹部223に遊嵌された差動凸部243は時計回り方向Rに移動するものの、リング本体222の端面222aとは当接していない状態となる。
【0232】
さらに、上記スリーブ23W,24Wの差動回転によって、第2半円タブ349は、図30(b)のc部拡大図に示すように、第2案内溝244において、凸溝部244cを乗り越え、反時計回り方向Lの深溝部244aに位置することとなる。
【0233】
さらに、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転すると、図31に示すように、ロック状態のナットリング22Wに対して、スリーブ23W,24Wが時計回り方向Rに差動回転する。
スリーブ23W,24Wが時計回り方向Rに差動回転すると、案内溝242において半円タブ347は面取溝部242Rc,242Lcに位置することとなる。
【0234】
半円タブ347は面取溝部242Rc,242Lcに位置すると、半円タブ347R.347Lは径内側に移動するため、図31(a)のa部拡大図及びb部拡大図に示すように、ラチェット爪348も径内側に移動してラチェットギア314との係止が解消され、ロック解除状態となる。
【0235】
そして、スリーブ23W,24Wが、回転できないナットリング22Wに対して時計回り方向Rに差動回転することで、図31(b)に示すように、差動凹部223に遊嵌された差動凸部243は時計回り方向Rに移動して、リング本体222の端面222aと当接するため、ナットリング22Wはスリーブ23W,24Wとともに時計回り方向Rに回転し、基軸5aを把持するジョー12をさらにジョー装着孔115を進行させて、より堅固に把持することができる。
【0236】
なお、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転させる力を解消すると、半円タブ347を介してスプリングアーム346(346R,346L)の付勢力が面取溝部242Rc,242Lcに作用して、スリーブ23W,24Wはナットリング22Wに対して反時計回り方向Lに差動回転し、半円タブ347が深溝部242Ra,242Laに位置するロック状態(図30に示す状態)となり、ジョー12で基軸5aを把持する状態が不用意に開放されることを防止できる。
【0237】
なお、図31に示すロック解除状態において、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転されてより堅固にジョー12で基軸5aを把持し、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転する力を解消した状態で、ラチェット爪348の少なくとも一方がラチェットギア314のギア頂部に位置すると、半円タブ347は径外側に移動できず、ロック解除状態が維持されるおそれがある。
【0238】
このように、ラチェット爪348の少なくとも一方がラチェットギア314のギア頂部に位置し、半円タブ347は径外側に移動できずに、ロック解除状態が維持されると、ジョー12が基軸5aを把持した状態でありながら、半円タブ347R.347Lが案内溝242に遊嵌された状態となり、スリーブ23W,24Wは時計回り方向R及びLにガタツクこととなる。
【0239】
しかしながら、図31(b)のc部拡大図に示すように、第2半円タブ349は、第2案内溝244において反時計回り方向Lの深溝部244aより反時計回り方向Lの面取溝部244bに位置している。つまり、第2半円タブ349は、面取溝部244bによって、連結バネ片345Wを捩って径内側に規制されている。
【0240】
このように、連結バネ片345Wを捩って径内側に規制された第2半円タブ349を介して、連結バネ片345Wが捩れを復元する方向の付勢力が凸溝部244cに作用し、第2半円タブ349が反時計回り方向Lの深溝部244aに位置するまで、スリーブ23W,24Wが反時計回り方向Lに差動回転して、スリーブ23W,24Wが不自然にガタツクことを防止できる。
【0241】
なお、ラチェットギア314のギア頂部に位置したラチェット爪348R,348Lは、チャック装置1Wの使用などの際に生じる振動等の外力によってギア頂部からずれて、スプリングアーム346の付勢力により、堅固な把持状態が緩むことなく、直ちにラチェットギア314に係止して、図30に示すロック状態となる。
【0242】
なお、上述したようにジョー12で基軸5aを堅固に把持したロック状態から、ジョー12による基軸5aの把持を解消するためには、スリーブ23W,24Wを反時計回り方向Lに回転すると、ボディ11Wに回転が固定されたラチェットギア314にラチェット爪348が係止しているため、ナットリング22Wは回転せず、スリーブ23W,24Wがナットリング22Wに対して差動回転することとなり、図29に示すロック解除状態となる。
【0243】
そうすると、基軸5aを把持するジョー12を反力としたナットリング22W及びロックベアリング30Wの基端側Bの移動も解消され、弾性リング35の弾性力によって、ロックリング32Zに対してアウターリング31Zは先端側Fに離間し、アウターリング31Zのボディ11Wに対する回転固定も解消され、ナットリング22Wを反時計回り方向Lに回転して、ジョー12による基軸5aの把持を解消することができる。
【0244】
このように、チャック装置1Wは、上述のチャック装置1と同様の効果を奏するとともに、ナットリング22Wとスリーブ23W,24Wとがいずれの相対回転位置であっても、第2案内溝244に第2半円タブ349が案内され、スリーブ23W,24Wがナットリング22Wに対して差動回転して、確実に、ロック状態とすることができる。
【0245】
詳述すると、スリーブ23W,24Wに第2案内溝244が設けられるとともに、第2案内溝244に案内される第2半円タブ349と、第2半円タブ349を第2案内溝244に押付ける連結バネ片345Wとがナットリング22Wに取付けられ、第2案内溝244による第2半円タブ349の案内に伴ってスリーブ23W,24Wがナットリング22Wに対して差動回転する。
【0246】
したがって、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転入力し、挿入孔114に挿入された回転治具5の基軸5aをジョー12で把持した状態において、半円タブ347(347R,347L)が案内溝242(242R,242L)に案内されて、係止爪がラチェットギア314に係止してロック状態となるが、締付け状態におけるナットリング22Wとスリーブ23W,24Wとの相対回転位置によっては半円タブ347(347R,347L)が案内溝242(242R,242L)に案内されきらず、ロック状態にならず、スリーブ23W,24Wスリーブに不自然なガタツキが生じる場合であっても、第2案内溝244に第2半円タブ349が案内されることで、スリーブ23W,24Wがナットリング22Wに対して差動回転して、確実に、不自然なガタツキを防止することができる。
【0247】
つまり、スリーブ23W,24Wに設けられた第2案内溝244に、ナットリング22Wに取付けられた第2半円タブ349が案内されることで、ナットリング22Wに対するスリーブ23W,24Wの相対回転位置を位置決めして、確実に、不自然なガタツキを防止することができる。
【0248】
また、第2案内溝244は、溝深さが深い深溝部244aと、溝深さが浅い面取溝部244bとを有するとともに、第2半円タブ349は、案内溝に向かって凸状となる円弧形状に形成され、第2案内溝244における面取溝部244bにある第2半円タブ349は、連結バネ片345Wの付勢力によって深溝部244aに案内され、第2案内溝244にける面取溝部244bから深溝部244aへの案内に伴ってスリーブ23W,24Wがナットリング22Wに対して差動回転する。
【0249】
そのため、半円タブ347(347R,347L)が案内溝242(242R,242L)に案内されきらないナットリング22Wとスリーブ23W,24Wとの相対回転位置において円弧形状に形成された第2半円タブ349を第2案内溝244の面取溝部244bから深溝部244aに案内して、スリーブ23W,24Wをナットリング22Wに対して差動回転させて、確実に、不自然なガタツキを防止することができる。
【0250】
また、連結バネ片345Wは、ねじりバネで構成されているため、コンパクトな連結バネ片345Wであっても強い付勢力を発揮することができる。したがって、第2案内溝244に対して第2半円タブ349を強い付勢力で付勢して、第2半円タブ349を第2案内溝244で確実に案内することができる。
【0251】
また、ナットリング22Wに、ねじりバネで構成された連結バネ片345Wが変形できる連結凹部224Wが設けられているため、連結バネ片345Wが強い付勢力を発揮するためのねじり変形ができる。したがって、第2案内溝244に対して第2半円タブ349を強い付勢力で付勢して、第2半円タブ349を第2案内溝244で確実に案内することができる。
【0252】
また、噛合溝315Zと噛合ギア324Zとを軸心方向Xに離間する方向に付勢する弾性リング35が設けられているため、スリーブ23W,24Wの時計回り方向Rの回転入力による、基軸5aを把持するジョー12を反力としたナットリング22Wの基端側Bへの移動によって噛合する噛合ギア324Zと噛合溝315Zとが、ジョー12を反力としたナットリング22Wの基端側Bへの移動が解消されると、噛合溝315Zと噛合ギア324Zとは軸心方向Xに離間するが、弾性リング35の付勢力によってより確実に噛合溝315Zと噛合ギア324Zとを軸心方向Xに離間させることができる。したがって、ボディ11Wに対するラチェットギア314の回転方向の固定を確実に解消することができる。
【0253】
また、アウターリング31Zの噛合溝315Zのギア歯における内径側にフラット面317が形成されているため、ロックリング32Zの噛合ギア324Zと噛合溝315Zとの非噛合な近接状態において、噛合ギア324Zのギア溝と噛合溝315Zのギア歯とが干渉して干渉音が発生することを防止できる。
【0254】
詳述すると、スリーブ23W,24Wを時計回り方向Rに回転させ、挿入孔114に挿入された基軸5aを把持したジョー12を反力としたナットリング22W及びロックベアリング30Wの基端側Bへの移動によって、ボディ11Wに回転固定されたロックリング32Zの噛合ギア324Zのギア溝と、アウターリング31Zの噛合溝315Zのギア歯とを噛合させ、半円タブ347が係止するラチェットギア314を有するアウターリング31Zをボディ11Wに対して回転固定する。
【0255】
噛合溝315Zのギア歯が径外側に向かって先端側Fに向かって傾斜するため、上述の噛合ギア324Zのギア溝と噛合溝315Zのギア歯とが噛合するまでのアウターリング31Zとロックリング32Zとが近接した状態において、噛合溝315Zのギア歯の径内側が噛合ギア324Zのギア溝と干渉して干渉音が発生するが、噛合溝315Zの径内側にフラット面317に設けているため、干渉音の発生を防止することができる。
【0256】
なお、上述のチャック装置1Wの説明では、回転固定タブ323によってボディ11Wに回転固定されたロックリング32Zの噛合ギア324Zと、アウターリング31Zの噛合溝315Zとを、基軸5aを把持するジョー12を反力として軸心方向Xに移動させて噛合させ、半円タブ347が係止するラチェットギア314を有するアウターリング31Zをボディ11Wに対して回転固定したが、図32及び図33に示すチャック装置1Vのように、ロックリング32Zを備えず、アウターリング31Zの代わりに回転固定タブ316によってボディ11Wに対して回転を固定できるアウターリング31Xを用いてもよい。
【0257】
チャック装置1Vは、ロックリング32Zを備えないとともに、アウターリング31Zの代わりにアウターリング31Xを用いている以外はチャック装置1Wと同じ構成であり、チャック装置1W及びチャック装置1Xと同じ効果を奏することができる。
【0258】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の軸心は軸心方向Xに対応し、
以下同様に、
チャック装置はチャック装置1に対応し、
回転治具は回転治具5に対応し、
基軸は基軸5aに対応し、
軸孔は挿入孔114に対応し、
チャック本体はボディ11,11Wに対応し、
傾斜孔はジョー装着孔115に対応し、
チャック爪はジョー12に対応し、
回転入力体はスリーブ23,24,23W,24Wに対応し、
ナットリングはナットリング22,22Wに対応し、
回転伝達部は差動凸部231に対応し、
ロック手段はラチェットギア314及びラチェット爪348に対応し、
ロック解除手段は案内溝232及び半円タブ347に対応し、
締付け方向ロック手段はラチェットギア314及びL側ラチェット爪348Lに対応し、
緩み方向ロック手段はラチェットギア314及びR側ラチェット爪348Rに対応し、
締付け方向ロック解除手段はL側案内溝232L及びL側半円タブ347Lに対応し、
緩み方向ロック解除手段はR側案内溝232R及びR側半円タブ347Rに対応し、
係止溝はラチェットギア314に対応し、
係止爪はラチェット爪348に対応し、
固定手段はアウターリング31及びロックリング32に対応し、
固定ギア溝は噛合ギア324,324Zに対応し、
固定ギア歯は噛合溝315,315Zに対応し、
転動体はボール33に対応し、
ベアリングはロックベアリング30に対応し、
被案内部は半円タブ347に対応し、
案内溝は案内溝232に対応し、
フラット部はフラット面317に対応し、
付勢部はスプリングアーム346に対応し、
深溝部は深溝部232Ra,232La,242Ra,242La,244aに対応し、
浅溝部は浅溝部232Rb,232Lb,242Rb,242Lb,面取溝部244bに対応し、
駆動装置はモータMに対応し、
回転伝達手段はスピンドル4に対応し、
離間方向付勢手段は弾性リング35に対応し、
第2案内溝は案内溝242に対応し、
第2被案内部は第2半円タブ349に対応し、
第2付勢部は連結バネ片345Wに対応し、
変形空間は連結凹部224Wに対応し、
電動工具は電動工具Kに対応応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0259】
例えば、上述のチャック装置1は、回転可能なスピンドル4を有する電動工具Kのみならず、振動ドリルや電動ドライバ等の回転電動工具に装着してもよい。
また、上述のチャック装置1では、ナットリング22に対するスリーブ23,24の反時計回り方向Lの差動回転により、L側ラチェット爪348L及びR側ラチェット爪348Rの両方がラチェットギア314との噛合を解消するように構成したが、ナットリング22に対するスリーブ23,24の反時計回り方向Lの差動回転により、L側ラチェット爪348Lだけがラチェットギア314との噛合を解消するように構成してもよい。
【0260】
また、上述のチャック装置1,1X,1Y,1W,1Vの説明では、スリーブ23,24のナットリング22に対する時計回り方向R及び反時計回り方向Lの差動回転によって、R側ラチェット爪348R及びL側ラチェット爪348Lの両方のラチェットギア314への係止が解消されるように構成したが、スリーブ23,24のナットリング22に対する時計回り方向Rの差動回転によって、R側ラチェット爪348Rのラチェットギア314への係止が解消され、反時計回り方向Lの差動回転によってL側ラチェット爪348Lのラチェットギア314への係止が解消されるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0261】
1,1X,1Y…チャック装置
4…スピンドル
5…回転治具
5a…基軸
11…ボディ
12…ジョー
22,22W…ナットリング
23…インナースリーブ
30,30Z…ロックベアリング
31,31X,31Z…アウターリング
32,32Z…ロックリング
33…ボール
35…弾性リング
114…挿入孔
115…ジョー装着孔
224W…連結凹部
231…差動凸部
232,232Y,242…案内溝
232R,232YR,242R…R側案内溝
232Ra,232La,242Ra,242La,244a…深溝部
232Rb,232Lb,242Rb,242Lb,244b…浅溝部
232L,232YL,242L…L側案内溝
314…ラチェットギア
315,315Z…噛合溝
317…フラット面
324,324Z…噛合ギア
345W…連結バネ片
346…スプリングアーム
347…半円タブ
347R…R側半円タブ
347L…L側半円タブ
348…ラチェット爪
348R…R側ラチェット爪
348L…L側ラチェット爪
349…第2半円タブ
K…電動工具
M…モータ
X…軸心方向
R…時計回り方向
L…反時計回り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33