(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122255
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】積層造形のための金属前駆体を含むポリマーフィラメント及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20220815BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20220815BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220815BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220815BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220815BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20220815BHJP
B22F 10/18 20210101ALI20220815BHJP
B22F 10/34 20210101ALI20220815BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20220815BHJP
B22F 10/40 20210101ALN20220815BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y70/10
B33Y80/00
B33Y10/00
B29C64/268
B22F1/10
B22F10/18
B22F10/34
B29C64/188
B22F10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005779
(22)【出願日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】17/171,500
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ナンシン・フー
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA04
4F213AA11
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4K018AA02
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4K018BB04
4K018BB05
4K018BD04
4K018CA09
4K018CA33
4K018FA23
4K018KA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】積層造形のための金属前駆体を含むポリマーフィラメントを提供する。
【解決手段】溶融フィラメント製造などの積層造形プロセスを用いて、印刷物を形成することができる。印刷物の表面上に導電性トレースを形成することが望ましい場合がある。導電性トレース及び類似の特徴は、熱可塑性ポリマーを含むフィラメント本体を有するポリマーフィラメント中に金属前駆体を組み込み、一層ずつの堆積を通じてポリマーフィラメントから印刷物を形成することによって、溶融フィラメント製造プロセスと併せて導入され得、金属前駆体は、印刷物を形成する間、金属に実質的に変換されないままである。溶融フィラメント製造と適合性のある好適なポリマーフィラメントは、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体と、を含み得、金属前駆体は、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融フィラメント製造と適合性のあるポリマーフィラメントであって、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、前記フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含む、ポリマーフィラメント。
【請求項2】
前記金属前駆体が、赤外線又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項3】
前記金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項4】
前記金属前駆体が、前記熱可塑性ポリマーとブレンドされるか、前記フィラメント本体の外部表面上に局所化されるか、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項5】
前記金属前駆体が、前記ポリマーフィラメントの内部コアに局所化され、前記フィラメント本体が、外部殻として前記内部コアを取り囲む、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項6】
前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項7】
前記金属前駆体が、前記ポリマーフィラメントの約1重量%~約30重量%を構成する、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項8】
前記フィラメント本体と接触する赤外線吸収剤を更に含む、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項9】
前記赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む、請求項8に記載のポリマーフィラメント。
【請求項10】
前記金属前駆体が、複数の粒体を含む、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項11】
前記金属前駆体が、前記熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の温度に対して熱的に安定している、請求項1に記載のポリマーフィラメント。
【請求項12】
少なくとも一部内に金属前駆体を含む溶融フィラメント製造ポリマーマトリックスを含み、前記金属前駆体が、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、印刷物。
【請求項13】
前記金属前駆体が、赤外線又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、請求項12に記載の印刷物。
【請求項14】
前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項12に記載の印刷物。
【請求項15】
前記溶融フィラメント製造ポリマーマトリックス内に赤外線吸収剤を更に含む、請求項12に記載の印刷物。
【請求項16】
前記金属前駆体が、前記印刷物の約1重量%~約30重量%を構成する、請求項12に記載の印刷物。
【請求項17】
フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、前記フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含む、ポリマーフィラメントを提供することと、
一層ずつの堆積を通じて前記ポリマーフィラメントから印刷物を形成することと、を含み、
前記金属前駆体が、前記印刷物を形成する間、金属に実質的に変換されないままである、方法。
【請求項18】
前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
パルスレーザーを使用して前記印刷物内の前記金属前駆体の一部を活性化して、前記印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
無電解めっきを実行して、前記複数の不連続な金属アイランドを相互接続する1つ以上の導電性トレースを形成することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、積層造形、より具体的には、レーザー照射によって活性化可能な金属前駆体が印刷プロセス中に組み込まれる、溶融フィラメント製造によって行われる積層造形プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(three-dimensional、3-D)印刷としても知られる積層造形は、急速に成長している技術分野である。積層造形は、伝統的にラピッドプロトタイピング活動に使用されてきたが、この技術は、任意の数の複雑な形状の商業部品及び工業部品を生産するためにますます用いられている。積層造形プロセスは、1)連続フィラメントから得られた溶融印刷材料の流れ、又は2)印刷材料の粉粒体のいずれかを一層ずつ堆積させることによって行われる。一層ずつの堆積は、通常、コンピュータの制御下で行われて、製作される部品のデジタル三次元「設計図」(コンピュータ支援設計モデル)に基づいて、正確な位置に印刷材料を堆積させ、堆積と併せて行われる印刷材料の圧密化によって、印刷部品を形成する。印刷部品の本体を形成する印刷材料は、本明細書において「ビルド材料」と呼ぶことがある。
【0003】
部品形成に溶融印刷材料の流れを用いる積層造形プロセスは、典型的には、溶融印刷材料の供給源として熱可塑性ポリマーフィラメントを利用する。かかる積層造形プロセスは、「溶融積層法」又は「溶融フィラメント製造」プロセスと呼ばれることがある。本明細書では、後者の用語を使用する。
【0004】
印刷材料の粉粒体を用いる積層造形プロセスは、しばしば、印刷材料の堆積後に粒体床の選択した位置で直接加熱を実行して、圧密化された部品への粉粒体の局所癒合を促進する。粉粒体の圧密化を促進して圧密化された部品を形成するのに好適な技術としては、例えば、粉体床溶融(Powder Bed Fusion、PBF)、選択的レーザー焼結(selective laser sintering、SLS)、電子ビーム溶解(Electron Beam Melting、EBM)、バインダージェッティング、及びマルチジェット溶融(Multi-Jet Fusion、MJF)が挙げられる。
【0005】
様々な形状を有する幅広い部品は、両タイプの積層造形プロセスを使用して製造され得る。両タイプの積層造形プロセスの1つの特徴は、部品が「付加的に」造形されるためには、当該部品の一層ずつの蓄積を行うために印刷材料が堆積する基底構造の存在が必要なことである。印刷される部品の初期層は、三次元プリンタの印刷床(ステージ)上に堆積されてよく、次いで、以降の層は、最初に堆積された層上に堆積されてよい。粉体堆積プロセスの場合、以降の層は、圧密化されて部品の一部を形成するか、又は圧密化されないままであるのいずれかであり得る、粉体床の下位層によって支持されてよい。対照的に、溶融印刷材料の堆積、例えば、溶融フィラメント製造によって製作された部品は、圧密化されていない印刷材料から形成された対応する支持体構造を欠いている。溶融フィラメント製造プロセスにおいて、印刷床から印刷部品が成長するにつれて、印刷床と、又は圧密化された印刷材料の以前に堆積された層と直接接触しなくなった部品の形状によって、張り出し部及び類似の構造が存在し得る。張り出し部及び類似の構造を有する部品は、その結果として、溶融フィラメント製造によって直接印刷されないことがある。これは、下に支持体が存在しない自由空間に、印刷材料を堆積させることができないためである。溶融フィラメント製造プロセスにおける張り出し部及び類似の構造の問題の解決策として、一般的な戦略は、ビルド材料及び犠牲印刷材料を同時に堆積させることであり(例えば、デュアル押出機プリントヘッドから)、この犠牲印刷材料は、ビルド材料を上に堆積及び圧密化するための選択された位置において取り外し可能な支持体として形成され得る。印刷が完了すると、取り外し可能な支持体は、分解又は溶解などの好適な技術によって排除され、支持されていない(自由)部分を得ることができる。
【0006】
溶融フィラメント製造によって及び粒体圧密化を通じて製作された部品は、マクロスケールで互いに類似しているように見え得るが、それらは、マイクロスケールでは区別可能であり得る。粒体圧密化を通じて作製された印刷部品は、部品の実質的に全体を通して粒界の証拠を示し得る。起こる粒体圧密化の程度に応じて、粒界は、場合によっては他の場合よりも観察可能であり得る。対照的に、溶融フィラメント製造によって作製された印刷部品は、均一に分布した粒界を有しない。溶融フィラメント製造中の溶融ポリマーから形成された印刷ラインに沿って、粒界は実質的にはないが、隣接する印刷ライン又は層間で不完全な圧密化の証拠が存在し得る。したがって、溶融フィラメント製造ポリマーマトリックスでは、不完全な印刷ライン圧密化を示す境界は、粒体圧密化プロセスの特徴的な特徴であり得る残留粒体構造の証拠を示さない。
【0007】
場合によっては、追加の機能的特性が積層造形部品の表面上に存在することが望ましい場合がある。特定の例では、導電性トレースは、別個のインクジェット印刷、エアロゾルジェット、又は直接書き込みプロセスを通じて積層造形部品の表面上に導入されて、部品の表面上にグラファイト又は金属などの導電性材料とともに注がれるインクが堆積され、続いて、導電性経路(導電性トレース)の形成を促進するために硬化又は焼結する。このような導電性インクの堆積は、積層造形プロセスで生じるものとは完全に異なる条件下で生じるため、生産ライン間で印刷された部品の移動を必要とする。多くの場合、このプロセスは、特に、導電性トレースの配置に極限精度が必要とされる場合、煩雑かつ時間がかかる場合がある。印刷部品の非平面表面上に導電性トレースを正確に配置することは、この様式で導電性トレースを形成するときに特に問題となり得る。インクジェット及びエアロゾルジェット印刷プロセスと併せて使用される特定の熱可塑性ポリマーと導電性インクとの間の接着が不十分であることに起因する、更なる困難が生じる場合がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、溶融フィラメント製造と適合性のあるポリマーフィラメントを提供する。ポリマーフィラメントは、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含む。
【0009】
本開示はまた、少なくとも一部内に金属前駆体を含む溶融フィラメント製造ポリマーマトリックスを含む印刷物を提供し、金属前駆体は、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である。
【0010】
本開示はまた、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含むポリマーフィラメントを提供することと、一層ずつの堆積を通じてポリマーフィラメントから印刷物を形成することと、を含む印刷物を形成するための方法を提供し、金属前駆体は、印刷物を形成する間、金属に実質的に変換されないままである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題には、その形態及び機能において、当業者が想到し、しかも本開示の利益を有するような、相当な修正、変更、組み合わせ、及び等価物を考えることができる。
【0012】
【
図1】ビルド材料及び取り外し可能な支持体材料を使用して印刷物を生産するための例示的な溶融フィラメント製造プロセスの図である。
【0013】
【
図2】張り出し部を有する例示的な印刷物の図である。
【0014】
【
図3】フィラメント本体内の熱可塑性ポリマー中に均一にブレンドされた金属前駆体粒体を有する例示的なポリマーフィラメントの図である。
【0015】
【
図4】熱可塑性ポリマーを含むフィラメント本体の外部表面上に配置された金属前駆体粒体を有する例示的なポリマーフィラメントの図である。
【0016】
【
図5】熱可塑性ポリマーを含むフィラメント本体の外部殻によって取り囲まれた内部コア内に布置された金属前駆体粒体を有する例示的なポリマーフィラメントの図である。
【0017】
【
図6】溶融フィラメント製造、続いて、導電性トレースを形成するための金属前駆体の活性化及び無電解めっきによる印刷物の形成を実証する例示的なプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、概して、積層造形、より具体的には、レーザー照射によって活性化可能な金属前駆体が印刷プロセス中に組み込まれる、溶融フィラメント製造によって行われる積層造形プロセスに関する。金属前駆体は、本明細書の開示による印刷材料の堆積中に不活性化されたままであり得る。その後、金属前駆体が活性化されて、金属アイランドが形成され、次いで、相互接続されて、所望のパターンで導電性トレースを形成し得る。
【0019】
上で考察されるように、溶融フィラメント製造などの積層造形プロセスは、広範囲の複雑な形状の印刷部品(物)を生み出すための強力なツールである。現在のところ、印刷部品の表面上に、積層造形プロセスの一体部分として導電性トレースを導入することは不可能である。代わりに、別個のエアロゾル、インクジェット、又は直接印刷技術を用いて、導電性インクを印刷部品の表面上に堆積し、その後硬化又は焼結を行って、導電性を促進する。導電性インクを堆積させるための別個の印刷技術は、処理スループットを制限し、場合によっては導電性トレースの不正確な配置をもたらし得る。場合によっては、印刷物を含む熱可塑性ポリマーと導電性トレースを堆積させるために使用される導電性インクとの間には不十分な接着が存在し得る。
【0020】
有利には、本開示は、部品の製作後に部品を別個の印刷生産ラインに必ずしも移送することなく、溶融フィラメント製造を通じて積層造形プロセスが行われている間に金属アイランドを導入することができる経路を提供する。特に、本開示は、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触し、レーザー照射、特にパルスレーザーによって活性化可能である金属前駆体と、を含むポリマーフィラメントを用いて、積層造形、具体的には、溶融フィラメント製造によって形成された印刷物の表面上に不連続な金属アイランドの形成を促進する。好適な金属前駆体は、活性化前に非導電性であり、配位状態及び/又は塩形態の金属を含む。活性化後、金属前駆体は、不連続な金属アイランドの形態で金属導体に変換され得、これは、レーザーの慎重な場所決めを通じて正確に配置され得る。次いで、不連続な金属アイランドが相互接続されて、印刷物の表面上に1つ以上の導電性トレースが形成され得る。導電性トレースのパターン化は、そこから形成された導電性トレースの形状を決定し得る。有利には、金属アイランドの形成を促進するためのレーザーは、溶融フィラメント製造によって行われる印刷プロセス中に組み込まれ得、それによって、印刷物が形成されるとき、及び/又は印刷物が形成された後に、金属アイランドを正確に導入することを可能にする。代替的に、印刷プロセスとは別個のレーザーを使用して、金属前駆体を活性化して、印刷プロセスが完了すると金属アイランドを形成することができる。いずれの場合も、金属アイランドは、指向されたレーザー照射によって好適に活性化される印刷物の特定の位置に形成される。
【0021】
広範囲の金属前駆体が本明細書の開示において使用されてもよく、以下で更に詳細に考察される。有利には、そのような金属前駆体は、溶融フィラメント製造及び類似の積層造形プロセスでの使用に好適であるポリマーフィラメント内に容易に組み込まれ得る。そのようなポリマーフィラメントは、例えば、融解ブレンドの押出によって生産されるように、金属前駆体とブレンドされた熱可塑性ポリマーから形成され得る。金属前駆体は、行われるフィラメント押出プロセスも、圧密化プロセスも、その後の印刷物の形成も妨げない。代替的に、金属前駆体は、本明細書の開示における使用に好適なポリマーフィラメントの外部表面上及び/又はポリマーフィラメントの内部コア内に局所化され得る。
【0022】
更なる利点として、金属前駆体はまた、印刷物の張り出し部及び類似の構造を形成することと併せて使用される犠牲印刷材料と組み合わせて使用するのに適合性がある。犠牲印刷材料から形成された支持体構造を取り外すための条件は、金属前駆体の活性化を実質的にもたらさず、金属を形成することができる。位置に応じて、金属前駆体の活性化は、犠牲印刷材料から形成された支持体構造を取り外す前及び/又は後に行われ得る。
【0023】
本明細書の説明及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下の段落によって修正される場合を除き、明白かつ通常の意味を有する。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「熱可塑性ポリマー」は、加熱及び冷却により、可逆的に軟化及び硬化するポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性エラストマーを包含する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「酸化物」という用語は、金属酸化物及び非金属酸化物の両方を指す。本開示の目的では、ケイ素は、金属であるとみなされる。
【0026】
熱可塑性ポリマーの融点は、特に指定がない限り、10℃/分の昇温速度及び冷却速度で、ASTM E794-06(2018)によって決定される。
【0027】
熱可塑性ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特に指定がない限り、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムの試料を使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定することができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「近赤外」領域は、約700nm~約1400nmの波長範囲を指し、これは、IR-A領域(国際照明委員会によって指定されている)を指すこともある。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「ブレンドされた」は、実質的に均一に混合されている状態を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「局所化された」は、混合されていないか、又は不均一に混合されている状態を指す。
【0031】
本開示の様々な態様を更に詳細に論じる前に、本開示の特定の特徴がより良好に理解され得るように、積層造形プロセス、特に印刷物(部品)の製造のための溶融フィラメント製造プロセスの簡単な考察が最初に提供される。
図1は、ド材料及び取り外し可能な支持体材料を使用して印刷物を生産するための例示的な溶融フィラメント製造プロセスの概略図である。
図1に示すように、印刷ヘッド100は、第1の押出機102aと、第2の押出機102bとを含み、これらは各々、繊維状印刷材料を受容するように構成されている。具体的には、第1の押出機102aは、第1の払出リール106aから第1のフィラメント104aを受容し、第1の印刷材料の溶融流108aを提供するように構成されており、第2の押出機102bは、第2の払出リール106bから第2のフィラメント104bを受容し、第2の印刷材料の溶融流108bを提供するように構成されている。両方の溶融流も、印刷床(
図1において非表示)上に最初に堆積され、支持物体120の一層ずつの成長を促進する。第1の押出機102aによって供給される第1の印刷材料(ビルド材料)は、印刷物110を製造するために使用される熱可塑性ポリマーを含み、また金属前駆体を含有し得、第2の押出機102bによって供給される第2の印刷材料(取り外し可能な支持体材料)は、張り出し部114の下で取り外し可能な支持体112を製造するために使用される溶解性又は分解性ポリマーであり得る。張り出し部114は、印刷床又はビルド材料から形成された下部印刷層と直接接触していない。
図1に示す印刷物構成では、取り外し可能な支持体112は、張り出し部114と印刷床(非表示)との間に介在するが、代替的に構成された印刷物では、取り外し可能な支持体114は、印刷物110の2つ以上の部分の間に介在し得ることを理解されたい。
図2は、例えば、例示的な印刷物200の図を示しており、取り外し可能な支持体202が、印刷物200と印刷床204との間に画定された張り出し部の間に介在し、取り外し可能な支持体206は、印刷物200の2つの部分の間に介在する。
【0032】
再び
図1を参照すると、印刷物110及び取り外し可能な支持体112の印刷が完了すると、支持物体120は、取り外し可能な支持体112の排除(例えば、溶解又は崩壊条件など)をもたらし、張り出し部114を有する印刷物110をその上で支持されていない状態で残す、支持体取り外し条件125にかけられ得る。支持体取り外し条件125は、例えば、溶媒又は他の液体媒体と支持物体120との接触を含み得、取り外し可能な支持体112は溶解性又は分解性であり、印刷物110はそうではない。取り外し可能な支持体112は、選択的溶解又は分解を支持するために、印刷物110とは異なる熱可塑性ポリマーを含み得る。
【0033】
積層造形、具体的には、溶融フィラメント製造に好適である本開示のポリマーフィラメントは、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体とを含み得、金属前駆体は、レーザー照射時、特にパルスレーザーによって金属アイランドを形成するように活性化可能である。
【0034】
溶融フィラメント製造において利用され得るポリマーフィラメントの非限定的な構成は、以下及び
図3~
図5を参照して考察される。これらのポリマーフィラメントのいずれも、以下でより詳細に考察されるように、印刷物内の金属アイランドを形成するのに好適であり得る。ポリマーフィラメントの例示的な形態は、フィラメント本体内での金属前駆体と熱可塑性ポリマーとのブレンド、フィラメント本体の外部表面上への金属前駆体の局所化、並びに/又はポリマーフィラメントの内部コア及び外部殻として内部コアを取り囲むフィラメント本体内の金属前駆体の局所化を含み得る。任意のポリマーフィラメント構成では、金属前駆体は、フィラメント本体と接触する複数の粒体として存在し得る。
図3は、フィラメント本体304内の熱可塑性ポリマーと均一にブレンドされた金属前駆体粒体302を有する例示的なポリマーフィラメント300の図である。
図4は、熱可塑性ポリマーを含むフィラメント本体404の外部表面上に配置された金属前駆体粒体402を有する例示的なポリマーフィラメント400の図である。
図5は、熱可塑性ポリマーを含むフィラメント本体の外部殻504によって取り囲まれた内部コア503内に布置された金属前駆体粒体502を有する例示的なポリマーフィラメント500の図である。複数の位置に金属前駆体粒体を有するポリマーフィラメントも可能であり、本明細書の開示において使用され得る。非限定的な例では、金属前駆体粒体は、熱可塑性ポリマーとブレンドされ、フィラメント本体の外部表面上に配置され得るか、又はそれらの両方が内部コア内に存在し、フィラメント本体の外部表面上に配置され得る。フィラメント本体の外部表面上に配置されると、金属前駆体粒体は、熱可塑性ポリマーに少なくとも部分的に埋め込まれ得るか、接着剤若しくはサイジングを有する熱可塑性ポリマーに結合し得るか、熱可塑性ポリマーに共有結合し得るか、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。各タイプのポリマーフィラメントを生産するのに好適な製作技術は、以下で更に考察される。
【0035】
本開示のポリマーフィラメントは、約0.5mm~約5mmの直径、特に約1.5mm~約3.5mmの直径の範囲であり得る。溶融フィラメント製造技術を用いる多くの三次元プリンタの標準的なフィラメント直径は、約1.75mm又は3.0mmである。ポリマーフィラメントがユーザの特定の印刷システムと適合性があるという条件で、本明細書の開示に従って任意の好適なポリマーフィラメント直径を使用することができることを認識されたい。同様に、本明細書の開示において、ポリマーフィラメントの長さ及び/又は色が特に制限されるとは考えられない。同様に、取り外し可能な支持体材料を含むポリマーフィラメントが特に制限されるとは考えられない。好ましくは、本明細書に開示されるポリマーフィラメントは、連続的かつスプール可能な長さ、例えば、少なくとも約1フィート、又は少なくとも約5フィート、又は少なくとも約10フィート、又は少なくとも約25フィート、又は少なくとも約50フィート、又は少なくとも約100フィート、又は少なくとも約250フィート、又は少なくとも約500フィート、又は少なくとも約1000フィートである。
【0036】
金属前駆体は、本明細書に開示されるポリマーフィラメントの製作中にフィラメント本体内又はフィラメント本体上に組み込まれ得る。金属前駆体と熱可塑性ポリマーとの均質混合は、ポリマー繊維のフィラメント本体全体への金属前駆体の実質的に均一な分布を提供するために、融解ブレンド/押出プロセスにおいて実現され得る。改質された融解ブレンド/押出プロセスを利用して、金属前駆体の内部コア及びフィラメント本体によって画定される外側殻を有するポリマーフィラメントを形成することができる。任意選択的に、金属前駆体は、内部コアを形成するときに熱可塑性ポリマーとブレンドされ得、内部コア内の熱可塑性ポリマーは、ポリマーフィラメントの外部殻を形成するフィラメント本体内に存在する熱可塑性ポリマーと同じであっても異なっていてもよい。金属前駆体は、例えば、熱可塑性ポリマーが完全に固化する前に、押出後のポリマー繊維上に金属前駆体粒体のエアロゾル又は金属前駆体を含有する溶液を噴霧することによって、ポリマー繊維のフィラメント本体の外部表面上に堆積され得、金属前駆体は、ポリマー繊維の外部表面に接着する。代替的に、ポリマーフィラメントは、溶媒中の金属前駆体の分散液を通過して、外部表面上に金属前駆体の浸漬コーティングベースの堆積を得ることができる。したがって、少なくともいくつかの例では、融解ブレンド/押出又は類似のプロセスと適合するために、好適な金属前駆体は、フィラメント本体を含む熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の温度に対して熱的に安定し得る。好適な金属前駆体の他の特徴としては、例えば、電気非導電性(金属への変換前)、良好な耐候性、金属前駆体粒体と熱可塑性ポリマーとの容易な混合、及び/又は熱可塑性ポリマー中の金属前駆体の溶解度、並びに低毒性が挙げられ得る。
【0037】
粒体として熱可塑性ポリマーと組み合わせた場合、金属前駆体は、約10nm~約100μmのサイズ、又は約50nm~約10μmのサイズ、又は約100nm~約1μmのサイズの範囲であり得る。本明細書の開示において粒径は、D50値を表し、これは、直径を指し、この場合、サンプルの50%(別段の指定がない限り体積基準で)が、当該直径未満の直径を有する粒子から構成される。D50はまた、「平均粒径」と称されてもよい。そのような平均粒径測定は、光学画像の分析、又は粒径測定のための光散乱技術を使用するMalvern Mastersizer 3000 Aero S機器の搭載ソフトウェアを使用することによって行われ得る。任意選択的に、金属前駆体の粒体は、有機カップリング剤(例えば、シランカップリング剤など)で更に処理されて、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーとの適合性、分散、及び又は結合が促進され得る。以下で更に考察される赤外線吸収剤の粒体は、類似のプロセスによってポリマーフィラメント上又はポリマーフィラメント内に組み込まれ得、類似の範囲のサイズ内で存在し得、これは、金属前駆体の粒体と同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
特に好適な金属前駆体は、電磁スペクトルの赤外領域(近赤外領域を含む)、可視領域、又は紫外領域内で動作するレーザーによって活性化可能であり得る。したがって、好適なレーザー照射波長は、約200nm~約14,000nmの範囲内に存在するもの、特に約1020nm~約1070nmの範囲の照射波長から選択することができる。好適なレーザー、特にそのパルスレーザー変異型としては、電磁スペクトルの紫外領域で動作するエキシマレーザー、固体レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー(レーザーダイオード)、及びCO2レーザー(10,600nmでの放出波長)を挙げられ得る。金属活性化を促進するために使用されるとき、CO2レーザーは、熱可塑性ポリマーの融解又は軟化によるポリマー圧密化の促進のために使用されるよりも高いレーザー強度(単位面積当たりのレーザー電力)で動作することができる。レーザー強度が高い結果、金属前駆体を活性化する際にレーザーのパルス波動作が望ましい場合がある。
【0039】
本明細書の開示において、周波数ダブル又は周波数トリプルNd:YAGレーザー又は同様の固体レーザーにより、可視放射線(532nm)又は紫外線(355nm)を提供してもよく、その一方で、非逓倍の変異型により、1064nmでの近赤外放射を提供し得る。他の周波数逓倍レーザーもまた、本明細書の開示において使用され得る。
【0040】
近赤外領域は、電磁スペクトルのこの領域に電磁放射を提供する固体レーザー又は繊維レーザーの可用性が準備されているため、本明細書の開示を実施するのに特に好適であり得る。例えば、電磁スペクトルの近赤外領域内で動作する好適なレーザーとしては、例えば、約1064nmの放出波長を有するNd(ネオジム)ドープ固体レーザー、例えばNd:YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)、Nd:YVO4(イットリウムオルトバナジン酸イットリウム)及びNd:YLF(イットリウムフッ化リチウム)レーザー、約1020nm~約1050nmの動作波長を有する他の金属でドープされた固体レーザー、並びに約1030nm~約1070nmの放出を有するYbでドープされた繊維レーザーなどの繊維レーザーが挙げられる。金属前駆体を活性化するための本明細書の開示における使用に好適なレーザーは、金属前駆体を金属アイランドに効果的に変換し、並びにポリマー表面アブレーション及び粗面化を提供して、金属前駆体の活性化後に強力な金属接着を促進するための高いパルスレーザー強度を提供するパルス波モードで動作可能であり得る。好適な金属前駆体の具体例としては、電磁スペクトルの近赤外領域内に存在する、約1020nm~約1070nmの範囲の放出波長を有するパルスレーザービームによって活性化可能なものを挙げられ得る。このようなレーザーは、約1W~約10Wのパワー、約10kHz~約120kHzのパルス周波数、及び約0.1m/s~約10m/sの走査速度で動作させ得る。用いられる特定の金属前駆体は、以下のいくつかの特定の実施例について考察されるように、金属アイランドを形成するために使用されるパルスレーザーのタイプ及びその放出波長を規定し得る。
【0041】
前述の様式で活性化を受けることができる本明細書の開示における使用に好適な金属前駆体の特定の例は、以下の材料のうちの1つ以上を含み得る。
-酸化銅、又は銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムから選択される金属との混合酸化物。銅の混合酸化物の具体例としては、例えば、銅クロム酸化物スピネル(クロム酸銅)、銅アルミニウム酸化物、銅鉄酸化物等が挙げられる。クロム酸銅は、例えば、Nd:YAGレーザーを用いるなどして、1060nmのパルスレーザー放出波長で好適に活性化され得る。
-水酸化銅、水酸化銅、リン酸銅、硫酸銅、銅チオシアネート、又はこれらの任意の組み合わせ。別途記載のない限り、これらの銅塩は、+2酸化状態(銅塩)中に銅を含有する。銅チオシアネートは、+1又は+2酸化状態のいずれかで存在し得る。
-銅、銀、パラジウム、又はこれらの任意の組み合わせから選択される金属を含む金属-有機錯体(金属-配位子錯体)。好適な金属有機錯体としては、例えば、金属モノカルボキシレート錯体、金属ジカルボキシレート錯体、金属アセチルアセトネート錯体、金属サリチルアルジミナート錯体などが挙げられ得る。好適な金属-有機錯体の具体例としては、シュウ酸銅及びオレイン酸銅などのカルボン酸銅及びジカルボキシレート;アセチルアセトナート;銅サレン(サレン=N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン);銀ネオデカン酸塩などの銀カルボン酸塩、並びに酢酸パラジウム及びネオデカン酸パラジウムなどのカルボン酸パラジウム、が挙げられ得るが、これらに限定されない。パラジウム含有金属-有機錯体は、エキシマレーザーなどの電磁スペクトルの紫外領域内で放出されるパルスレーザーを用いて金属に変換され得る。対照的に、いくつかの銀含有金属有機錯体は、電磁スペクトルの可視領域内で放射されるパルスレーザーを使用して、金属に好適に変換され得る。
【0042】
本明細書の開示における使用に好適な金属前駆体の更により具体的な例としては、例えば、PK3095黒色顔料(Ferro Corporation)及びBlack1G顔料ブラック28(The Shepherd Color Company)が挙げられ得、これらの両方は、銅クロメートスピネルを含む。
【0043】
金属前駆体に加えて、本開示のポリマーフィラメントは、赤外線吸収剤を更に含み得る。金属前駆体からの金属の形成を促進するために赤外線を吸収することができる例示的な材料について、以下で更に考察する。存在する場合、赤外線吸収剤は、金属前駆体と同じ位置及び/又は金属前駆体とは異なる位置に存在し得る。金属前駆体のように、赤外線吸収剤はまた、本明細書に開示されるポリマーフィラメント中の複数の粒体として存在し得る。
【0044】
特に電磁スペクトルの近赤外領域における赤外線放射の吸収強度は、パルスレーザーによる照射が対応する金属への金属前駆体の十分な変換をもたらすかどうかを決定し得る。十分に強い吸収の場合、金属前駆体は、適切な単独のものであり得る。赤外線吸収の強度がより弱い場合、赤外線吸収剤を熱可塑性ポリマーと組み合わせて、金属前駆体の金属へのより効率的な変換を促進することもできる。好適な赤外線吸収剤としては、例えば、アンチモン、ビスマス、ホウ素、銅、インジウム、チタン、スズ、セシウム、ジルコニウム、モリブデン、バナジウム、鉄、又はこれらの任意の組み合わせなどの金属を含有する非化学量論的金属酸化物を挙げられ得るが、これらに限定されない。好適な赤外線吸収剤の具体例としては、例えば、アンチモンドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化インジウムスズ、還元型酸化インジウムスズ、酸素欠損酸化ビスマス、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。カーボンブラックはまた、場合によっては、好適な赤外線吸収剤を構成し得る。存在する場合、赤外線吸収剤は、熱可塑性ポリマーに対して、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.5重量%~約5重量%の充填量でポリマーフィラメントに含まれ得る。
【0045】
赤外線吸収強度及び赤外線吸収剤が存在するかどうかに応じて、金属前駆体は、総質量に基づいて、本明細書に開示されるポリマーフィラメントの約1重量%~約30重量%、又は総質量に基づいて、ポリマーフィラメントの約2重量%~約25重量%、又は総質量に基づいて、ポリマーフィラメントの約5重量%~約15重量%を構成し得る。
【0046】
本明細書の開示によるフィラメント本体の形成に使用するのに好適な熱可塑性ポリマーの例としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(acrylonitrile-butadiene-styrene、ABS)、高衝撃ポリスチレン(high-impact polystyrene、HIPS)、ポリスチレン、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリウレタン(polyurethane、PU)、ポリビニルピロリドン-コ-ポリビニルアセテート(polyvinylpyrrolidone-co-polyvinyl acetate、PVP-コ-PVA)、これらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。これらは、積層造形にビルド材料として用いられる最も一般的な熱可塑性ポリマーである。本明細書の開示におけるポリマーフィラメントを形成するための他の好適なビルド材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、及びこれらの様々なコポリマーが挙げられる。場合によっては、ポリマー複合材が、好適なビルド材料として使用されてよい。本明細書の開示におけるビルド材料として使用するのに好適な熱可塑性ポリマーは、上で言及したASTM法によって決定される場合、約150℃~約300℃、又は約175℃~約275℃、又は約180℃~約250℃の範囲の温度での押出成形を可能にするのに十分な軟化温度又は融点を呈し得る。PLAは、例えば、約150℃~約160℃の範囲の融点を有する。
【0047】
本明細書の開示によるポリマーフィラメントの形成に使用するのに好適であり得る熱可塑性ポリマーのいくつか又は他の例としては、ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン-12等)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン(polyaryl ether ketone、PAEK)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを含むコポリマー(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)、グラフト化又は非グラフト化熱可塑性ポリオレフィン、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/アルキル(メタ)アクリレート、官能化又は非官能化(メタ)アクリル酸ポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマー/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/カルボニルターポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(methylmethacrylate-butadiene-styrene、MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、フェノール樹脂、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。前述のうちの1つ以上を含むコポリマーもまた、本開示において使用され得る。
【0048】
本明細書の開示において使用するための熱可塑性ポリマーの特に好適な例としては、ナイロン6又はナイロン12などのポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(アリーレンスルホン)、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0049】
好適なポリアミドのより具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6、ポリアミド6、又はPA6)、ポリ(ヘキサメチレンスクシンアミド)(ナイロン46、ポリアミド46、又はPA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66、ポリアミド66、又はPA66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56、ポリアミド56、又はPA56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610、ポリアミド610、又はPA610)、ポリウンデカアミド(ナイロン11、ポリアミド11、又はPA11)、ポリドデカアミド(ナイロン12、ポリアミド12、又はPA12)、及びポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、ポリアミド6T、又はPA6T)、ナイロン10.10(ポリアミド10.10又はPA10.10)、ナイロン10.12(ポリアミド10.12又はPA10.12)、ナイロン10.14(ポリアミド10.14又はPA10.14)、ナイロン10.18(ポリアミド10.18又はPA10.18)、ナイロン6.10(ポリアミド6.10又はPA6.10)、ナイロン6.18(ポリアミド6.18又はPA6.18)、ナイロン6.12(ポリアミド6.12又はPA6.12)、ナイロン6.14(ポリアミド6.14又はPA6.14)、及び半芳香族ポリアミド等、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コポリアミドも使用され得る。好適なコポリアミドの例としては、PA11/10.10、PA6/11、PA6.6/6、PA11/12、PA10.10/10.12、PA10.10/10.14、PA11/10.36、PA11/6.36、PA10.10/10.36等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エラストマー系となり得る、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリカーボネート-エステルアミド、及びポリエーテル-ブロック-アミドも使用され得る。
【0050】
好適なポリウレタンの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、混合ポリエーテル及びポリエステルポリウレタン等、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリウレタンの例としては、ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ELASTOLLAN(登録商標)1190A(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)、ELASTOLLAN(登録商標)1190A10(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好適な熱可塑性ポリマーは、エラストマー系又は非エラストマー系であり得る。前述の熱可塑性ポリマーの例のいくつかは、ポリマーの特定の組成に応じてエラストマー系又は非エラストマー系であり得る。例えば、エチレンとプロピレンとのコポリマーであるポリエチレンは、エラストマー系であってもよく、又はポリマー中に存在するプロピレンの量に依存しなくてもよい。
【0052】
エラストマー系熱可塑性ポリマーは、一般に、以下の6つのクラス(これらのいずれも本明細書の開示で使用され得る)のうちの1つに該当する:スチレン系ブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性加硫物(エラストマー合金とも呼ばれる)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、及び熱可塑性ポリアミド(典型的にはポリアミドを含むブロックコポリマー)。エラストマー系熱可塑性ポリマーの例は、Handbook of Thermoplastic Elastomers,2nd ed.,B.M.Walker and C.P.Rader,eds.,Van Nostrand Reinhold,New York,1988に見出すことができる。エラストマー系熱可塑性ポリマーの例としては、エラストマー系ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを含むコポリマー(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、及びポリアクリロニトリル)、シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。弾性スチレン系ブロックコポリマーとしては、イソプレン、イソブチレン、ブチレン、エチレン/ブチレン、エチレン-プロピレン、及びエチレン-エチレン/プロピレンからなる群から選択される少なくとも1つのブロックが挙げられ得る。より具体的な弾性スチレン系ブロックコポリマーの例としては、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン-プロピレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン)など、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
特定の用途では、本明細書に開示されるポリマーフィラメントは、溶融フィラメント製造によって行われる積層造形プロセスにおいて利用され得る。積層造形プロセスから最初に得られた印刷物は、少なくとも一部内に金属前駆体を含む溶融フィラメント製造ポリマーマトリックスを特徴とし得(すなわち、熱可塑性ポリマーを含むポリマーフィラメントの一層ずつの圧密化を通じて形成される)、金属前駆体は、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である。ポリマーフィラメントの一層ずつの圧密化を通じて形成された印刷物は、不完全な粒体溶融に特徴的な粒界の欠如によって、(例えば、粉体床溶融プロセス中の)ポリマー粒体の圧密化によって調製されるものと区別され得る。つまり、粉体床溶融及び他の粒体圧密化プロセスを通じて形成された印刷物中の不完全に溶融したポリマー粒体間の残留粒界が存在し得るが、溶融フィラメント製造を通じて形成されたものは、隣接する印刷ラインと層との間の境界の証拠を特徴とし得る。しかしながら、適切に行われた場合、これら2つの技術を通じて形成された印刷物は、マクロスケールで互いにほとんど区別できない場合がある。溶融フィラメント製造は、一層ずつの堆積プロセス中によって無駄になる印刷材料がより少なくなり得るため、コストの観点から有利であり得る。本開示のポリマーフィラメントから形成された印刷物は、例えば、印刷物の約1重量%~約30重量%など、ポリマーマトリックス内に同様の量の金属前駆体を含み得る。
【0054】
続いて、印刷物内の金属前駆体は、パルスレーザーによって提供され、より詳細に上述したようなレーザー照射を使用して、所望のパターンの金属(例えば、複数の不連続な金属アイランド)に変換され得る。形成されると、金属アイランドは、次いで無電解めっきによって相互接続されて、印刷物の表面上に1つ以上の導電性トレースが形成され得る。
【0055】
したがって、本開示の積層造形プロセスは、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、パルスレーザーなどのレーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含むポリマーフィラメントを提供することと、金属前駆体が、印刷物を形成する間、金属に実質的に変換されないままであるように、一層ずつの堆積を通じてポリマーフィラメントから印刷物を形成することと、を含む。そのような印刷物は、金属前駆体が印刷物の少なくとも一部に存在するように、ポリマーフィラメントの一層ずつの圧密化を通じて形成されたポリマーマトリックスを含み得る。存在する場合、赤外線吸収剤も、印刷物の少なくとも一部内に存在し得る。金属前駆体及び赤外線吸収剤は、印刷物内の同じ位置又は異なる位置に存在し得る。
【0056】
溶融フィラメント製造による一層ずつの堆積及びポリマーフィラメントの圧密化を実行するための好適な条件は、特に制限されるとは考えられず、当業者によく知られている従来の堆積条件下で行われ得る。一般に、溶融フィラメント製造条件は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度よりも高く、コンピュータの制御下で生じる。
【0057】
本明細書の開示による金属前駆体を含有する印刷物の形成後、金属前駆体の一部は、金属アイランドに変換され得、その後、金属を含む1つ以上の導電性トレースに変換され得る。より具体的には、本開示の方法は、レーザー照射、特にパルスレーザーを使用して印刷物内の金属前駆体の一部を活性化し、印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを含み得る。好適なパルスレーザーとしては、Nd:YAGレーザー、バナジンレーザー、及びファイバーレーザーを挙げられ得るが、これらに限定されない。金属形成を促進するための他の好適なレーザー及び条件が上記に指定されている。
【0058】
不連続な金属アイランドを形成した後、金属アイランドは、無電解めっきを実行して1つ以上の導電性トレースを形成することによって相互接続され得る。1つ以上の導電性トレースは、導電性及び金属性であり、銅、銀、金、又はニッケルなどの様々な好適な金属から形成され得る。複数の導電性トレースは、本開示の非限定的な例では、互いに約150μm以下分離され得る。好適な無電解めっき条件は、当業者によく知られており、本明細書の開示で使用され得る。銅は、例えば、銅エチレンジアミン四酢酸錯体(copper ethylenediaminetetraacetic acid、Cu-EDTA)/ホルムアルデヒドを使用して無電解条件下でめっきされ得る。別の具体例では、銅-ニッケル合金は、ニッケルイオンの存在下で、介在物質として銅ハイポリン酸銅を用いて無電解条件下でめっきされ得る。ニッケルは、例えば、硫酸ニッケルなどのニッケル塩、及び低リン酸塩又は水素化ホウ素などの還元剤を使用して、無電解条件下でめっきされ得る。
【0059】
図6は、物の上部から見た場合の、溶融フィラメント製造、続いて、導電性トレースを形成するための金属前駆体の活性化及び無電解めっきによる印刷物の形成を実証する例示的なプロセス図である。プロセス600において、印刷物602は、特に
図1を参照してより詳細に上述したものと類似の様式で最初に形成される(
図6には示されていない印刷詳細)。金属前駆体が、印刷物602内のポリマーマトリックスの全体又は局所部分中に存在し得ることを理解されたい。
図6に示されるように、金属前駆体は、金属化可能な領域604に局所化される。金属化不可能な領域606は、金属前駆体を欠くポリマーフィラメントを同時に堆積(印刷)することによって、金属化可能な領域604と同時に堆積され得る。加えて及び/又は代替的に、印刷物602内の1つ以上の張り出し部は、別個のポリマーフィラメントから提供される分解性及び/又は溶解性材料から形成された取り外し可能な支持体を堆積させることによって形成され得る。したがって、本開示の溶融フィラメント製造プロセスは、金属前駆体を含むポリマーフィラメントを少なくとも利用することができ、任意選択的に、上に金属化能力を有する所望の形状の印刷物602を形成するための金属前駆体を欠く1つ以上の追加のポリマーフィラメントを利用することができる。
【0060】
金属変換610では、金属化領域604は、レーザー614からのパルスレーザービーム616で選択的に照射されて、印刷物602の表面上に所望のパターンの金属アイランド622を画定する。レーザー614は、特定のプロセス構成において近赤外パルスレーザーであり得る。
【0061】
金属アイランド622を形成した後、無電解めっき630を次いで実行して、印刷物602の表面上に所望のパターンの導電性トレース632を画定し得る。導電性トレース632は、金属アイランド622を互いに相互接続する。
図6に示される構成では、導電性トレース632は、金属化領域604内に閉じ込められたままであるが、代替構成では印刷物602の表面全体にわたって延在し得る。
【0062】
本明細書に開示されるポリマーフィラメントを使用する成形可能な印刷物の例は、特に限定されるとは考えられないが、例えば、容器(例えば、食品、飲料、化粧品、パーソナルケア組成物、医薬等用)、靴底、玩具、家具部品、装飾家庭用品、プラスチックギア、ネジ、ナット、ボルト、ケーブルタイ、医療用品、プロテーゼ、整形外科用インプラント、学習補助具、3D解剖学的モデル、ロボット部品、生物医学的装置(矯正器具)、家電、歯科用インプラント、自動車及び航空機/航空宇宙部品、電子機器、スポーツ用品等が挙げられ得る。これらの印刷物の多くは、本明細書で考察されるように、その上に1つ以上の導電性トレースを導入することから恩恵を受けることができる。
【0063】
本明細書に開示される実施形態は以下を含む。
【0064】
A.溶融フィラメント製造と適合性のあるポリマーフィラメント。ポリマーフィラメントは、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含む。
【0065】
B.印刷物。印刷物は、少なくとも一部内に金属前駆体を含む溶融フィラメント製造ポリマーマトリックスを含み、金属前駆体は、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である。
【0066】
C.溶融フィラメント製造によって印刷物を形成するための方法。本方法は、フィラメント本体を画定する熱可塑性ポリマーと、フィラメント本体と接触する金属前駆体であって、レーザー照射時に金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含むポリマーフィラメントを提供することと、一層ずつの堆積を通じてポリマーフィラメントから印刷物を形成することと、を含み、金属前駆体は、印刷物を形成する間、金属に実質的に変換されないままである。
【0067】
実施形態A~Cのそれぞれは、以下の追加要素のうちの1つ又は複数を任意の組み合わせで有してもよい。
【0068】
要素1:金属前駆体は、赤外線又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である。
【0069】
要素2:金属前駆体は、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である。
【0070】
要素3:金属前駆体は、熱可塑性ポリマーとブレンドされるか、フィラメント本体の外部表面上に局所化されるか、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0071】
要素4:金属前駆体は、ポリマーフィラメントの内部コアに局所化され、フィラメント本体が、外部殻として内部コアを取り囲む。
【0072】
要素5:金属前駆体は、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0073】
要素6:金属前駆体は、ポリマーフィラメントの約1重量%~約30重量%を構成する。
【0074】
要素6A:金属前駆体は、印刷物の約1重量%~約30重量%を構成する。
【0075】
要素7:ポリマーフィラメントは、フィラメント本体と接触する赤外線吸収剤を更に含む。
【0076】
要素7A:ポリマーフィラメントは、ポリマーマトリックス内に赤外線吸収剤を更に含む。
【0077】
要素8:赤外線吸収剤は、非化学量論的金属酸化物を含む。
【0078】
要素9:金属前駆体は、複数の粒体を含む。
【0079】
要素10:金属前駆体は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の温度に対して熱的に安定している。
【0080】
要素11:本方法は、パルスレーザーを使用して印刷物内の金属前駆体の一部を活性化して、印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを更に含む。
【0081】
要素12:本方法は、無電解めっきを実行して、複数の不連続な金属アイランドを相互接続する1つ以上の導電性トレースを形成することを更に含む。
【0082】
非限定的な例として、A、B、及びCに適用可能な例示的な組み合わせとしては、1と2;1と、3又は4;1と5;1と、6又は6A;1と、7又は7A;1と、7又は7Aと、8;1と9;1と10;2と、3又は4;2と5;2と、6又は6A;2と、7又は7A;2と、7又は7Aと、8;2と9;2と10;3又は4と、5;3又は4と、6又は6A;3又は4と、7又は7A;3又は4と、7又は7Aと、8;3又は4と、9;3又は4と、10;5と、6又は6A;5と、7又は7A;5と、7又は7Aと、8;5と9;5と10;6又は6Aと、7又は7A;6又は6Aと、7又は7Aと、8;6又は6Aと、9;6又は6Aと、10;7又は7Aと、8;7又は7Aと、9;7又は7Aと、10;及び9と10が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態Cは、前述のいずれかを特徴とし得、前述のいずれかと更に組み合わせて11及び/12を更に含む。
【0083】
本開示のより良好な理解を促進するために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、決して、本発明の範囲を制限するか、又は定義するように読解されるべきではない。
【実施例0084】
フィラメントを、Filabot EX6フィラメント押出機を使用して調製した。押出機は、押出機、空気経路、及びフィラメント巻取り機からなる。押出機は、加熱の4つのゾーン:i)供給ポートノズル、ii)後部ゾーン、iii)中間ゾーン、及びiv)前部ゾーンを有する。押出速度は、電圧を調整することによって制御される。ノズルは、異なる直径のノズルと交換することができる。空気経路は、気流に関して調整することができる。空気経路の場所をノズルからの距離に対して調整するか、又はジャッキ上の空気経路を上昇させて、一定のフィラメント直径を維持することができる。インライン厚ゲージを使用して、フィラメント直径を測定した。
【0085】
フィラメント調製に使用したポリマー複合材を、最初に、100重量部のポリマー樹脂を10重量部の銅クロム酸化物スピネルと600PのHaakeバッチ混合装置内で融解混合することによって調製した。次いで、得られたポリマーブレンドを小さな部分に粉砕し、フィラメント押出機に供給した。
【0086】
ポリアミド-12(PA-12)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(acrylonitrile-butadiene-styrene、ABS)、又はポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)を使用して、上のように複合フィラメントを調製した。これらの試料は、以下の表1において試料1~3として指定される。
【表1】
【0087】
ABS中で5重量%の銅(II)アセチルアセトネート及び1重量%のアンチモンスズ酸化物(平均粒径=15nm)を混合することによって、かつ類似の条件下で複合及び連続フィラメントを形成することによって類似の条件下で追加の試料を得た。
【0088】
本明細書に記載されるすべての文書は、そのような実施が許可されるすべての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。したがって、本開示はそれにより限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載される組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の構成成分、又は組成物を含まなくてもよい。任意の方法は、本明細書に列挙又は開示されていないいかなる工程を欠いてもよい。同様に、用語「備える、含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義であると考えられる。方法、組成物、要素又は要素の群が移行句「備える、含む(comprising)」で先行する場合はいつでも、本発明者らがまた、組成物、要素、又は複数の要素の列挙に先行する移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」で同じ組成物又は要素の群を企図すること、及びその逆もまた同様であることは理解される。
【0089】
別途記載のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分、分子量などの特性、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0090】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値のすべての範囲は、広範な値の範囲内に包含されるすべての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、請求項で使用するとき、不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ又は1つ超を意味するように定義される。
【0091】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装のすべての特徴が本出願に記載又は表示されているわけではない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンスなど、実装によって及び随時に変化する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
【0092】
したがって、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上述の具体的な実施形態は例示的なものに過ぎず、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかである、異なるが同等の様式で本開示が修正及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示された具体的な例示的実施形態が、変更され、組み合わされ、又は修正され得、すべてのそのような変形が、本開示の範囲及び趣旨内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択の要素の不在下で実施されてもよい。