(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122257
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】状態管理方法、プログラム、および透析システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220815BHJP
A61M 1/14 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/16 115
A61M1/14 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008601
(22)【出願日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021019115
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 崇裕
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH10
4C077HH13
4C077HH18
4C077HH21
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】透析治療中の患者の状態を、患者の負担を抑えた態様で管理するための技術を提供すること。
【解決手段】透析システムは、透析装置と情報処理装置とを含む。情報処理装置は、透析治療中の患者の身体情報を非接触で取得するセンサから検出出力を取得し、当該検出出力を用いて、患者の状態に関する指標を導出する。そして、情報処理装置は、導出された指標に基づいて、ディスプレイに表示指示を出力し、また、血圧計に測定指示を出力する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行される、透析治療中の患者の状態管理方法であって、
透析治療中の患者の身体情報を非接触で取得するセンサから検出出力を取得するステップと、
前記検出出力を用いて、患者の状態に関する指標を導出するステップと、を備え、
前記指標は、前記患者の皮膚温、前記患者の顔色の色情報、および、前記患者の呼吸数を含み、
前記指標に基づく情報を出力するステップをさらに備える、状態管理方法。
【請求項2】
出力される前記情報は、患者に接触して身体情報を測定する機器への測定の指示を含む、請求項1に記載の状態管理方法。
【請求項3】
前記機器は、血圧計を含み、
前記患者に接触して測定される身体情報は、血圧値を含む、請求項2に記載の状態管理方法。
【請求項4】
前記指標に基づく情報を出力するステップでは、
前記皮膚温が所与の閾値より低い場合、前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化したとき、または、前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化していなくても前記呼吸数が頻呼吸または無呼吸に対応する値であるときに、前記測定の指示の出力が実施され、
前記皮膚温が所与の閾値より低い場合、前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化しておらず、かつ、前記呼吸数が正常値であるときに、前記測定の指示の出力が実施されない、請求項2または請求項3に記載の状態管理方法。
【請求項5】
前記指標に基づく情報を出力するステップは、
前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化し、かつ、前記呼吸数が無呼吸に対応する値であるときに、前記測定の指示の出力を実施することを含む、請求項2または請求項3に記載の状態管理方法。
【請求項6】
前記指標に基づく情報を出力するステップは、
前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化していないとき、または、前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化しても前記呼吸数が正常値または頻呼吸に対応する値であるときに、第1の情報を出力することと、
前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化し、かつ、前記呼吸数が無呼吸に対応する値であるときに、前記第1の情報が表す事象よりも重大な事象が発生したことを表す第2の情報を出力することと、を含む、請求項5に記載の状態管理方法。
【請求項7】
前記指標に基づく情報を出力するステップは、
前記皮膚温が所与の閾値より低く、かつ、前記色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化した場合、前記呼吸数が正常値または頻呼吸に対応する値であるときに、第1の情報を出力することと、前記呼吸数が無呼吸に対応する値であるときに、前記第1の情報が表す事象よりも重大な事象が発生したことを表す第2の情報を出力することと、を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の状態管理方法。
【請求項8】
前記指標に基づく情報を出力するステップは、前記皮膚温が予め定められた範囲より高いまたは低い場合に、前記測定の指示を出力することを含む、請求項2または請求項3に記載の状態管理方法。
【請求項9】
コンピュータのプロセッサによって実行されることにより、前記コンピュータに、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の方法を実施させる、プログラム。
【請求項10】
透析装置と、
前記透析装置による透析治療中の患者の状態を管理するための情報処理装置と、を備えた透析システムであって、
前記情報処理装置は、
請求項9に記載のプログラムを格納するメモリと、
前記メモリに格納されたプログラムを実行する1以上のプロセッサと、を含む、透析システム。
【請求項11】
前記患者に接触して身体情報を測定する機器をさらに備え、
前記機器は、透析治療が行われる場所から離れた場合に、アラームを出力するように構成されている、請求項10に記載の透析システム。
【請求項12】
前記機器は、前記患者に装着されている状態であることを条件として、前記アラームを出力するように構成されている、請求項11に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透析治療中の患者の状態の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析治療中の患者の状態の検出について種々の技術が提案されている。たとえば、特開2000-000217号公報(特許文献1)は、透析治療の期間を複数に分割し、該分割された複数の期間毎に患者の血圧を測定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透析治療中の患者の状態は急変することもあり得るため、当該状態は継続的に管理されることが好ましい。近年増加している在宅透析やオーバーナイト透析など新しい透析法では、継続的な管理が困難な状況である。一方で、特許文献1に開示されたような血圧測定では、患者の腕を圧迫する等、患者の状態の検出は患者の負担を伴うことが多い。
【0005】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、透析治療中の患者の状態を、患者の負担を抑えた態様で管理するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、コンピュータによって実行される、透析治療中の患者の状態管理方法であって、透析治療中の患者の身体情報を非接触で取得するセンサから検出出力を取得するステップと、検出出力を用いて、患者の状態に関する指標を導出するステップと、を備え、指標は、患者の皮膚温、患者の顔色の色情報、および、患者の呼吸数を含み、指標に基づく情報を出力するステップをさらに備える、状態管理方法が提供される。
【0007】
出力される情報は、患者に接触して身体情報を測定する機器への測定の指示を含んでいてもよい。
【0008】
機器は、血圧計を含んでいてもよい。患者に接触して測定される身体情報は、血圧値を含んでいてもよい。
【0009】
指標に基づく情報を出力するステップでは、皮膚温が所与の閾値より低い場合、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化したとき、または、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化していなくても呼吸数が頻呼吸または無呼吸に対応する値であるときに、測定の指示の出力が実施されてもよく、皮膚温が所与の閾値より低い場合、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化しておらず、かつ、呼吸数が正常値であるときに、測定の指示の出力が実施されなくてもよい。
【0010】
指標に基づく情報を出力するステップは、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化し、かつ、呼吸数が無呼吸に対応する値であるときに、測定の指示の出力を実施することを含んでいてもよい。
【0011】
指標に基づく情報を出力するステップは、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化していないとき、または、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化しても呼吸数が正常値または頻呼吸に対応する値であるときに、第1の情報を出力することと、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化し、かつ、呼吸数が無呼吸に対応する値であるときに、第1の情報が表す事象よりも重大な事象が発生したことを表す第2の情報を出力することと、を含んでいてもよい。
【0012】
指標に基づく情報を出力するステップは、皮膚温が所与の閾値より低く、かつ、色情報が透析治療開始から所与の基準を超えて変化した場合、呼吸数が正常値または頻呼吸に対応する値であるときに、第1の情報を出力することと、呼吸数が無呼吸に対応する値であるときに、第1の情報が表す事象よりも重大な事象が発生したことを表す第2の情報を出力することと、を含んでいてもよい。
【0013】
指標に基づく情報を出力するステップは、皮膚温が予め定められた範囲より高いまたは低い場合に、測定の指示を出力することを含んでいてもよい。
【0014】
本開示の他の局面に従うと、コンピュータのプロセッサによって実行されることにより、コンピュータに、上記方法を実施させる、プログラムが提供される。
【0015】
本開示のさらに他の局面に従うと、透析装置と、透析装置による透析治療中の患者の状態を管理するための情報処理装置と、を備えた透析システムが提供される。情報処理装置は、上記プログラムを格納するメモリと、メモリに格納されたプログラムを実行する1以上のプロセッサと、を含む。
【0016】
上記システムは、患者に接触して身体情報を測定する機器をさらに備えていてもよい。機器は、透析治療が行われる場所から離れた場合に、アラームを出力するように構成されていてもよい。
【0017】
上記システムでは、機器は、患者に装着されている状態であることを条件として、アラームを出力するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、患者にセンサを接触させることなく、患者の身体情報に基づく指標が導出され、当該指標に基づく情報が出力される。これにより、患者の負担が抑えられた態様で患者の状態が管理される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】透析システムが適用される状況の一例を模式的に示す図である。
【
図2】透析システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】非接触で検出された透析患者1の状態に基づいた情報を出力するための処理の一例のフローチャートである。
【
図4】ディスプレイ150の表示画面の一例を示す図である。
【
図5】3種類の指標の組合せと情報処理装置の動作との対応関係の一例を示す図である。
【
図6】ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
【
図7】ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
【
図8】ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
【
図9】ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
【
図10】非接触で検出された透析患者1の状態に基づいた情報を出力するための処理の他の例のフローチャートである。
【
図11】非接触で検出された透析患者1の状態に基づいた情報を出力するための処理のさらに他の例のフローチャートである。
【
図12】ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
【
図14】血圧計20のハードウェア構成を示す図である。
【
図15】アラームを出力するための処理の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る透析システムについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
[透析システムの構成]
図1は、透析システムが適用される状況の一例を模式的に示す図である。透析システムは、透析装置10と、情報処理装置100と、血圧計20と、CCD(Charge Coupled Device)カメラ30と、赤外線カメラ40とを含む。CCDカメラ30は、透析治療中の患者の身体情報を非接触で取得するセンサの一例であり、赤外線カメラ40は、他の例である。CCDカメラ30と赤外線カメラ40のそれぞれは、透析患者1を撮影できるように配置されている。
【0022】
透析装置10は、透析室内において、透析患者1が位置するベッドに隣接して配置されている。透析患者1の一方の腕には、シャントが形成されている。一般的には、透析患者1の利き腕とは反対側の腕にシャントが形成される。なお、必ずしも透析患者1にシャントが形成されていなくてもよい。
【0023】
透析装置10から、透析患者1に向けて、動脈側血液回路12および静脈側血液回路13が延びている。透析患者1のシャントに透析針が穿刺される。これにより、透析患者1と動脈側血液回路12および静脈側血液回路13とが連結される。動脈側血液回路12および静脈側血液回路13の各々は、透析装置10に設けられている血液ポンプと接続されている。血液ポンプは、穿刺針に接続されたチューブ内の液体を圧送する。
【0024】
情報処理装置100は、たとえば汎用のコンピュータやタブレット端末によって実現されるが、本明細書において説明された機能を実現する限り、いかなる種類の装置によって実現されていてもよい。
【0025】
血圧計20は、透析患者1に装着されている。CCDカメラ30および赤外線カメラ40のそれぞれは、透析治療中の透析患者1を撮影するように配置されている。
【0026】
情報処理装置100は、CCDカメラ30および/または赤外線カメラ40などによって非接触で取得される検出出力を用いて透析患者1の状態に関する指標を導出し、当該指標に基づく情報を出力する。情報の出力は、値の表示であってもよいし、値に対応するメッセージの表示および/または音声の出力であってもよいし、血圧計20などの測定装置への測定指示の出力であってもよいし、他のいかなる態様の情報の出力であってもよい。
【0027】
[情報処理装置のハードウェア構成]
図2は、透析システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示されるように、情報処理装置100は、プロセッサ110、インターフェース120、およびメモリ130を含む。プロセッサ110は、メモリ130または他の記憶装置に格納されたプログラムを実行することにより、情報処理装置100の動作を制御する。情報処理装置100は、プロセッサ110に代えて、または、プロセッサ110に加えて、情報処理装置100の動作を制御するための専用回路(ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)など)を含んでいてもよい。
【0028】
インターフェース120は、たとえばUSB(Universal Serial Bus)等の、他の機器と有線でデータ通信するためのインターフェースであってもよいし、ネットワークカード等の、他の機器と無線でデータ通信するためのインターフェースであってもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0029】
情報処理装置100は、インターフェース120を介して、血圧計20、CCDカメラ30、および赤外線カメラ40に接続されている。情報処理装置100は、さらに、インターフェース120を介して、入力装置140およびディスプレイ150と接続されている。入力装置140は、たとえば、キーボード、ハードウェアボタン、および/または、タッチパネルを構成するタッチセンサである。ディスプレイ150は、出力装置の一例である。情報処理装置100は、出力装置として、ディスプレイ150に代えて、またはディスプレイ150に加えて、LED(Light Emitting Diode)および/もしくはスピーカなどの他の種類の出力装置に接続されていてもよい。入力装置140および/または出力装置(ディスプレイ150)は、情報処理装置100に含まれていても良い。
【0030】
情報処理装置100は、インターフェース120を介して透析装置10に接続されていてもよい。これにより、情報処理装置100は、透析装置10による透析治療の経過を参照することができ、また、当該情報処理装置100の動作を透析装置10による透析治療に同期させることができる。
【0031】
[透析患者について導出される指標の具体例]
情報処理装置100は、透析患者1の状態を非接触で検出し、1種類以上の指標を導出する。導出される指標は、たとえば、皮膚温、顔色の色情報、および、呼吸数である。以下、それぞれについて、指標の導出の態様の具体例を説明する。ただし、以下の記載はあくまで例示であって、情報処理装置100が導出する指標の種類および態様は、以下のものに限定されない。
【0032】
(皮膚温)
一実現例では、情報処理装置100は、赤外線カメラ40からの検出出力(たとえば、画像データ)から透析患者1の顔領域の温度を特定し、特定された温度を皮膚温の指標として扱う。プロセッサ110は、画像認識用のアプリケーションを実行することにより、赤外線カメラ40の撮影範囲において透析患者1の顔領域を特定し、特定された領域の温度を顔領域の温度として特定してもよい。
【0033】
情報処理装置100は、皮膚温として、透析患者1の手首など、顔以外の他の領域の温度を特定してもよい。
【0034】
(顔色の色情報)
一実現例では、情報処理装置100は、CCDカメラ30からの検出出力(たとえば、画像データ)から透析患者1の顔領域の色情報(たとえば、RGB系の色情報)を特定し、その中のR成分の輝度値を、顔色の色情報の指標として扱う。
【0035】
顔色の色情報は、たとえば特開2004-8632号公報に記載されるように、透析患者1の両眼の「瞳」部分が2つの基点に重なる状態で撮影された画像におけるR成分の輝度値として特定されてもよいし、撮像画像から得られたR成分の輝度値が当該撮像画像の中の顔領域の面積および/または両眼の「瞳」の間の距離に応じて補正されることによって特定されてもよい。
【0036】
他の実現例では、情報処理装置100は、たとえば特許第6116375号公報に記載されるように、CCDカメラ30からの検出出力から顔領域の色情報(RGB系の色情報)を特定し、当該色情報をL*a*b*色空間の情報に変換し、変換後の情報の各軸方向の座標値の平均値を、顔色の色情報の指標として扱う。
【0037】
情報処理装置100は、CCDカメラ30からの検出出力を用いて顔領域の色情報の指標を算出するときに、たとえば特開2009-172181号公報に記載されるような技術を利用して、CCDカメラ30からの検出出力を補正してもよい。より具体的には、情報処理装置100は、検出出力に含まれる撮像画像から透析患者1の瞳の領域を特定し、当該瞳部分の色情報を基準にして、顔領域の他の部分の色情報を補正してもよい。
【0038】
(呼吸数)
一実現例では、情報処理装置100は、非特許文献(塙 大、外4名、"遠赤外線画像を用いた鼻呼吸検出の自動化に関する一検討"、[online]、2010年(平成22年)、情報処理学会、[2020年(令和2年)9月28日検索]、インターネット〈URL:https://www.ieice.org/publications/conference-FIT-DVDs/FIT2010/pdf/K/K_033.pdf〉)に記載されるように、赤外線カメラ40からの検出出力において透析患者1の鼻領域の温度の履歴を特定し、当該履歴を用いて、呼吸数の指標を導出する。
【0039】
より具体的には、情報処理装置100は、上記温度の履歴において、予め定められた基準値を跨ぐ温度上昇が発生してから、当該基準値を跨ぐ温度下降が発生した後、当該基準値を跨ぐ温度上昇が発生するまでの時間、すなわち、ある温度情報が発生してから次の温度情報が発生するまでの時間を、1回の呼吸に要する時間として特定する。そして、情報処理装置100は、1回の呼吸に要する時間から所定時間(たとえば、1分間)内に発生する呼吸の回数を求め、所定時間内に発生する呼吸の回数を、呼吸数の指標として扱う。
【0040】
情報処理装置100は、画像認識用のアプリケーションを実行することにより、CCDカメラ30および/または赤外線カメラ40による撮像画像から透析患者1の鼻領域を特定してもよい。
【0041】
他の実現例では、透析システムは、さらに赤外線レーザを備え、情報処理装置100は、非特許文献(佐藤 勲、外2名、"2カメラFG呼吸モニタリングシステムの開発"、[online]、2009年(平成21年)、画像電子学会、[2020年(令和2年)9月28日検索]、インターネット〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/iieej/38/4/38_4_385/_pdf〉)に記載された方法で求め呼吸回数を求め、当該呼吸回数を用いて呼吸数の指標を導出する。
【0042】
より具体的には、上記透析システムの赤外線レーザは、透析患者1の胸部および/または腹部に格子状に複数本のレーザ光を照射する。情報処理装置100は、CCDカメラ30からの検出出力から、複数の輝点の位置を特定し、特定された複数の輝点の位置から透析患者1の胸部および/または腹部の体積の履歴を特定し、当該履歴から特定された所定時間における呼吸回数を、呼吸数の指標として扱う。
【0043】
[処理の流れ(1)]
情報処理装置100が実行する処理の流れの1つ目の例を、
図3~
図4を参照して説明する。
図3は、非接触で検出された透析患者1の状態に基づいた情報を出力するための処理の一例のフローチャートである。情報処理装置100は、
図3に示された処理を、プロセッサ110に所与のプログラムを実行させることによって実施してもよい。
図3の処理は、入力装置140への指示の入力、および/または、透析装置10からの透析治療の開始の通知の受信に応じて開始されてもよい。
【0044】
この例では、非接触による検出に基づいて導出された透析患者1の状態についての指標が異常値を含む場合、情報処理装置100がその旨を表す情報を出力する。以下、
図3を参照して、処理の具体例を説明する。
【0045】
ステップS100にて、情報処理装置100は、前回のステップS106の実行から一定時間(たとえば、10秒間)が経過したか否かを判断し、経過したと判断するまでステップS100に制御を留め(ステップS100にてNO)、経過したと判断すると(ステップS100にてYES)、ステップS102へ制御を進める。情報処理装置100は、未だステップS106を実行していない場合にも、ステップS102へ制御を進める。
【0046】
ステップS102にて、情報処理装置100は、直近の一定時間(たとえば、10秒間)におけるCCDカメラ30からの検出出力を取得する。
【0047】
ステップS104にて、情報処理装置100は、直近の一定時間(たとえば、10秒間)における赤外線カメラ40からの検出出力を取得する。
【0048】
ステップS106にて、情報処理装置100は、ステップS102および/またはステップS104において取得した検出出力を利用して、透析患者1について、皮膚温、顔色の色情報、および呼吸数のそれぞれの指標を導出する。
【0049】
ステップS108にて、情報処理装置100は、ステップS106において導出された指標が異常値を含むか否かを判断する。情報処理装置100は、異常値を含むと判断すると(ステップS108にてYES)、ステップS110へ制御を進め、そうでなければ(ステップS108にてNO)、ステップS100へ制御を戻す。
【0050】
ステップS110にて、情報処理装置100は、ディスプレイ150に対して、異常値を含むと判断した指標に関する情報の表示指示を出力する。その後、情報処理装置100は、ステップS100へ制御を戻す。
【0051】
(ステップS106の指標の導出およびステップS108の判断)
ここで、ステップS106の指標の導出およびステップS108の判断は、具体的には、以下のように説明される。
【0052】
(皮膚温の指標について)
情報処理装置100は、上記一定時間における各フレームの画像(たとえば、赤外線カメラ40の撮像画像)から特定されたそれぞれの皮膚温の平均値を、皮膚温の指標として特定してもよい。
【0053】
情報処理装置100は、皮膚温が予め定められた温度範囲(たとえば、35.5℃~37.0℃)である場合に、皮膚温の指標が異常値を含まないと判断し、当該温度範囲より低いまたは高い場合に、皮膚温の指標が異常値を含むと判断してもよい。
【0054】
情報処理装置100は、皮膚温が、透析治療開始時から予め定められた温度以上変化していない場合、皮膚温の指標が異常値を含まないと判断し、予め定められた温度以上変化した場合には、皮膚温の指標が異常値を含むと判断してもよい。
【0055】
(顔色の色情報の指標について)
情報処理装置100は、上記一定時間における各フレームの画像(たとえば、CCDカメラ30の撮像画像)から特定されたR成分の色情報(輝度値)の平均値を、顔色の色情報の指標として特定してもよい。
【0056】
情報処理装置100のメモリ130には、顔色の色情報の指標に対する標準値が格納されていてもよい。標準値は、透析治療開始時の透析患者1の顔画像から特定されたR成分の色情報であってもよいし、予め定められた色情報であってもよい。
【0057】
情報処理装置100は、透析治療中に特定された顔色の色情報と上記標準値との差分を求め、差分が予め定められた値の範囲内である場合に、顔色の色情報の指標が異常値を含まないと判断し、差分が当該範囲外である場合に、異常値を含むと判断してもよい。この例では、透析治療中、標準値に対応する状態(たとえば、透析治療開始時)から顔色における赤みが高くなったときまたは低くなったときに、顔色の色情報の指標が異常値を含むと判断される。
【0058】
情報処理装置100は、透析治療中に特定された顔色の色情報が、上記標準値以上であるか、上記標準値との差分が予め定められた値以下場合に、顔色の色情報の指標が異常値を含まないと判断してもよい。情報処理装置100は、透析治療中に特定された顔色の色情報が、上記標準値に対して予め定められた値を超えて低下した場合に、異常値を含むと判断してもよい。この例では、透析治療中、標準値に対応する状態(たとえば、透析治療開始時)から顔色における赤みが低くなったときに、顔色の色情報の指標が異常値を含むと判断される。
【0059】
情報処理装置100は、上記標準値を用いず、透析治療中に得られた顔色の色情報の指標が予め定められた値内である場合には異常値を含まず、予め定められた値より高いまたは低い場合に異常値を含むと判断してもよい。
【0060】
(呼吸数の指標について)
情報処理装置100は、呼吸数の指標として、上記一定時間において特定された1回の呼吸に要する時間を用いて、所定時間(たとえば、1分間)内に行われることが予測される呼吸の回数を特定してもよい。
【0061】
情報処理装置100は、呼吸数の指標が、予め定められた範囲内である場合には、呼吸数の指標が異常値を含まないと判断し、当該範囲外である場合には、呼吸数の指標が異常値を含むと判断してもよい。情報処理装置100は、さらに、呼吸数の指標が上記範囲を下回った場合には「無呼吸」状態であると判断し、呼吸数の指標が上記範囲を上回った場合には「頻呼吸」であると判断してもよい。一実現例では、1分間の呼吸回数が25回以上であれば「頻呼吸」の状態と判断され、1分間の呼吸回数が0回であれば「無呼吸」の状態と判断され、1分間の呼吸回数が9回以下は「徐呼吸」の状態と判断され、1分間の呼吸回数が10~24回であれば正常状態と判断されてもよい。
【0062】
(ステップS110)
ステップS110の制御によるディスプレイ150の表示について、
図4を参照して具体的に説明する。
図4は、ディスプレイ150の表示画面の一例を示す図である。
【0063】
図4の画面400は、要素401,402,403を含む。要素401は、メッセージ「皮膚温の変化が検出されました。」を含む。要素401は、ステップS108において、皮膚温の指標が異常値を含むと判断された場合に表示され、皮膚温の指標が異常値を含まないと判断された場合には要素401の表示は省略される。情報処理装置100は、皮膚温の指標の値に応じて、要素401として表示するメッセージを変更してもよく、皮膚温が予め定められた温度範囲より高い場合には、メッセージ「皮膚温が高くなっています。」を表示し、皮膚温が予め定められた温度範囲より低い場合には、メッセージ「皮膚温が低くなっています。」を表示してもよい。
【0064】
要素402は、メッセージ「顔色の変化が検出されました。」を含む。要素402は、ステップS108において、顔色の色情報の指標が異常値を含むと判断された場合に表示され、顔色の色情報の指標が異常値を含まないと判断された場合には要素402の表示は省略される。情報処理装置100は、顔色の色情報の値に応じて、要素402として表示するメッセージを変更してもよい。
【0065】
要素403は、メッセージ「呼吸数の異常が検出されました。」を含む。要素403は、ステップS108において、呼吸数の指標が異常値を含むと判断された場合に表示され、呼吸数の指標が異常値を含まないと判断された場合には要素403の表示は省略される。情報処理装置100は、呼吸数の指標の値に応じて、要素403として表示するメッセージを変更してもよく、呼吸数の指標の値が「頻呼吸」状態に対応する場合には、メッセージ「頻呼吸が検出されました。」を表示し、呼吸数の指標の値が「徐呼吸」状態に対応する場合には、メッセージ「徐呼吸が検出されました。」を表示し、呼吸数の指標の値が「無呼吸」状態に対応する場合には、メッセージ「無呼吸が検出されました。」を表示してもよい。
【0066】
本明細書において説明されるディスプレイ150を用いた視覚的な情報の表示は、情報の出力態様の一例である。情報は、視覚的な出力に代えて、または、視覚的な出力に加えて、音声などの他の態様で出力されてもよい。また、情報処理装置100は、透析システムにおいて通知される情報(ディスプレイ150の表示画面など)を、透析システムを管理する端末および/または医療従事者が所持する携帯端末に転送し、それらの装置で表示させるようにしてもよい。
【0067】
図3および
図4を参照して説明された処理では、情報処理装置100は、透析治療中の患者の身体情報を非接触で取得するセンサ(CCDカメラ30,赤外線カメラ40)から検出出力を取得し、当該検出出力を用いて、患者の状態に関する指標を導出する。そして、情報処理装置100は、導出された指標に基づいて、ディスプレイ150に表示指示を出力し、また、血圧計20に測定指示を出力する。非接触で検出される透析患者1の指標として3種類の指標が利用されたが、利用される指標の種類の数は「3」に限定されない。利用される指標は、1種類以上の種類を含むのであれば、例示された3種類すべてを含む必要はなく、また、例示された種類以外の種類の指標を含んでも良い。
【0068】
[処理の流れ(2)]
情報処理装置100が実行する処理の流れの2つ目の例を、
図5~
図10を参照して説明する。
【0069】
(前提)
この例では、情報処理装置100は、非接触による検出に基づいて導出された3種類の指標の組合せに基づいて、当該情報処理装置100の動作を決定する。
【0070】
図5は、3種類の指標の組合せと情報処理装置の動作との対応関係の一例を示す図である。
図5に示された関係を特定する情報は、メモリ130に格納されていてもよい。
図5に示されたテーブルは、4つの項目(「皮膚温」「顔色」「呼吸数」「情報処理装置の動作」)を含む。
【0071】
「皮膚温」は、皮膚温の指標を表す。
図5では、「皮膚温」について、3種類の特徴(「正常」「低下」「上昇」)が示される。「正常」は、皮膚温の指標が異常値を含まないことを表し、「低下」「上昇」は、異常値を含むことを表す。特に、「低下」は、皮膚温が予め定められた温度範囲より低いことを表し、「上昇」は、皮膚温が予め定められた温度範囲より高いことを表す。
【0072】
「顔色」は、顔色の色情報の指標を表す。
図5では、「顔色」について、2種類の特徴(「変化無し」「変化有り」)が示される。「変化無し」は、顔色の色情報の指標が異常値を含まないことを表し、「変化有り」は、顔色の色情報の指標が異常値を含むことを表す。
【0073】
「呼吸数」は、呼吸数の指標を表す。
図5では、「呼吸数」について、3種類の特徴(「正常」「無呼吸」「徐呼吸」「頻呼吸」)が示される。「正常」は、呼吸数の指標が異常値を含まないことを表し、「無呼吸」「徐呼吸」「頻呼吸」のそれぞれは、呼吸数の指標が異常値を含むことを表す。特に、「無呼吸」および「徐呼吸」は、呼吸数が所与の範囲より少ないことを表し、「頻呼吸」は、呼吸数が所与の範囲より多いことを表す。
【0074】
「情報処理装置の動作」は、情報処理装置100が実行する動作の内容を表す。動作の内容は、4種類の制御(「バイタル測定指示」「通知(A)」「通知(B)」「通知(C)」)の中から選択された1種類以上の制御の組合せである。
【0075】
「バイタル測定指示」は、血圧計20への血圧測定の指示の出力を表す。
【0076】
血圧計20への血圧測定の指示の出力は、機器への透析患者1の身体情報の測定(バイタル測定)の指示の出力の一例である。情報処理装置100は、血圧測定の指示の出力に代えて、または、血圧測定の指示の出力に加えて、透析患者1に装着された血糖値測定器に血糖値測定の指示を出力してもよいし、透析患者1に装着された心電図計に心電図の測定の指示を出力してもよい。血圧計20は、患者に接触して身体情報を測定する機器の一例である。血糖値測定器は他の例であり、心電図計はさらに他の例である。
【0077】
「通知(A)」「通知(B)」「通知(C)」のそれぞれは、互いに重要度が異なる通知を表す。
図6~
図9のそれぞれは、ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
【0078】
図7の画面700は、「通知(A)」の画面の一例である。画面700は、タイトル「通知」と、メッセージ「皮膚温の低下が検出されました。」とを含む。このメッセージは、3種類の指標のうち「皮膚温」の指標のみが異常値を含むことを表す。
【0079】
図8の画面800は、「通知(B)」の画面の一例である。画面800は、タイトル「注意」と、メッセージ「皮膚温の低下と頻呼吸が検出されました。バイタルを確認してください。」を含む。このメッセージは、3種類の指標のうち「皮膚温」および「呼吸数」の指標が異常値を含むことを表し、また、ユーザに透析患者1のバイタルの確認を促すことを表す。呼吸数が「徐呼吸」に対応する状態で「通知(B)」のための制御が実行される場合に画面800中の文字列「頻呼吸」が文字列「徐呼吸」へと変更される等、画面に表示される内容は、発生して(検出されて)いる状態に応じて適宜変更され得る。
【0080】
「通知(B)」は、「通知(A)」よりも重大な事象が生じたことを通知するものであってもよい。この場合、画面800は、画面700よりもユーザの注意を引く態様で表示されてもよい。画面800は、画面700よりも濃い色で表示されてもよい。画面800は、画面700が音声を伴わないときに音声を伴っても良いし、画面700が伴うよりもより大きい音量の音声を伴ってもよい。
【0081】
図9の画面900は、「通知(C)」の画面の一例である。画面900は、タイトル「警告」と、メッセージ「緊急事態です!救急カートを準備してください!バイタルを確認してください!」を含む。このメッセージは、緊急事態の発生を表し、また、ユーザが実行するべき動作の内容を表す。
【0082】
「通知(C)」は、「通知(B)」よりも重大な事象が生じたことを通知するものであってもよい。すなわち、「通知(C)」は、3種類の通知の中で最も重体な事象が生じたことを通知するものであってもよい。この場合、画面900は、画面800よりもさらにユーザの注意を引く態様で表示されてもよい。画面900は、画面800よりも濃い色で表示されてもよい。画面900は、画面800が音声を伴わないときに音声を伴っても良いし、画面800が伴うよりもより大きい音量の音声を伴ってもよい。情報処理装置100は、ディスプレイ150に画面900を表示させるときに、さらに、透析患者1の担当医および/または担当看護師に関連付けられた連絡先(メールアドレス、電話番号、など)に向けて通知(たとえば、画面900に表示される内容)を送信してもよい。
【0083】
図5のテーブルでは、最も左の欄に示されるように、3種類の指標の特徴の各組合せに、1~16の番号が割り振られている。
【0084】
たとえば、番号「1」は、指標「皮膚温」についての特徴「低下」、指標「顔色」についての特徴「変化無し」、および、指標「呼吸数」についての特徴「正常」の組合せに対応する。番号「1」の組合せに対して、「情報処理装置の動作」として「通知(A)」が規定されている。これにより、情報処理装置100は、透析患者1について特定された指標の組合せが番号「1」に適合する場合には、ディスプレイ150に、「通知(A)」の画面(
図7の画面700)の表示指示を出力する。
【0085】
番号「15」は、指標「皮膚温」についての特徴「正常」、指標「顔色」についての特徴「変化有り」、および、指標「呼吸数」についての特徴「無呼吸」の組合せに対応する。番号「15」の組合せに対して、「情報処理装置の動作」として「バイタル測定指示」と「通知(C)」とが規定されている。これにより、情報処理装置100は、透析患者1について特定された指標の組合せが番号「15」に適合する場合には、血圧計20に、血圧測定の指示を出力し、また、ディスプレイ150に、「通知(C)」の画面(
図9の画面900)の表示指示を出力する。
【0086】
(処理の流れ)
図10は、非接触で検出された透析患者1の状態に基づいた情報を出力するための処理の他の例のフローチャートである。情報処理装置100は、
図10に示された処理を、プロセッサ110に所与のプログラムを実行させることによって実施してもよい。
図10の処理は、入力装置140への指示の入力、および/または、透析装置10からの透析治療の開始の通知の受信に応じて開始されてもよい。
【0087】
図10に示された処理は、
図3に示された処理と比較して、ステップS108,S110の代わりにステップS120~ステップS126を含む。
【0088】
より具体的には、情報処理装置100は、ステップS106において皮膚温、顔色の色情報、および、呼吸数のそれぞれの指標を導出した後、ステップS120へ制御を進める。
【0089】
ステップS120にて、情報処理装置100は、ステップS106において導出された指標の組合せが、
図5に示されたテーブルの中の1~16のいずれの番号に対応するかを特定する。そして、情報処理装置100は、特定された番号に対応する「情報処理装置の動作」に含まれる表示(画面600,700,800,900のいずれか)をディスプレイ150に指示する。
【0090】
ステップS122にて、情報処理装置100は、ステップS120において特定された番号に対応する「情報処理装置の動作」がバイタル測定指示を含むか否かを判断し、含むと判断すると(ステップS122にてYES)、ステップS124へ制御を進め、含まないと判断すると(ステップS122にてNO)、ステップS100へ制御を戻す。
【0091】
ステップS124にて、情報処理装置100は、血圧計20に血圧測定の指示を出力する。
【0092】
ステップS126にて、情報処理装置100は、血圧計20から測定結果を取得し、当該測定結果をメモリ130に格納し、ステップS100へ制御を戻す。
【0093】
以上、
図5~
図10を参照して説明された例では、非接触による透析患者1の状態検出の結果に基づいて、血圧計20への測定指示が出力される。これにより、透析患者1の情報が非接触で観察され、必要なときにのみ、血圧計20による血圧測定が実施される。
【0094】
血圧計20による血圧測定では、カフによって透析患者1の腕が圧迫される。したがって、特に透析治療中は、血圧測定が極力回避されることが好ましい。一方で、透析治療中に透析患者1の状態が変化した場合、変化の態様を確実に特定するために、血圧測定は必要とされる。すなわち、透析治療中において、血圧測定は、回避されることが好ましい一方で、必要とされる場合もある。
【0095】
図5~
図10を参照して説明された処理では、非接触による透析患者1の状態検出の結果によって必要と判断されたときにのみ、自動的に、透析患者1の血圧測定等のバイタル測定が実施される。すなわち、必要最小限の血圧測定が自動的に実施される。
【0096】
(処理の特徴の例示)
図5~
図9を参照して説明された処理では、導出された指標と
図5に示された関係とに従って、制御が実行される。
【0097】
ある局面として、「皮膚温」が「低下」である場合(番号「1」~「8」)に着目する。「顔色」が「変化有り」であるとき(番号「5」~「8」)、または、「顔色」が「変化無し」であっても「呼吸数」が「頻呼吸」または「徐呼吸」または「無呼吸」であるとき(番号「2」,「3」,「4」)、情報処理装置100は、バイタル測定指示を出力する。一方、「顔色」が「変化無し」であって「呼吸数」が「正常」であるとき(番号「1」)、情報処理装置100は、バイタル測定指示を出力しない。
【0098】
ある局面として、「顔色」が「変化有り」でありかつ「呼吸数」が「無呼吸」である場合(番号「8」「15」「22」)に着目する。これらの場合、情報処理装置100は、「皮膚温」の特徴に関係なく、バイタル測定指示を出力する。
【0099】
ある局面として、「顔色」が「変化有り」でありかつ「呼吸数」が「無呼吸」である場合(番号「8」「15」「22」)、および、それ以外の場合(番号「1」~「7」,「9」~「14」,「16」~「21」)に着目する。前者の場合、情報処理装置100は、「皮膚温」の特徴に関係なく「通知(C)」の表示の指示を出力し、後者の場合、情報処理装置100は、「通知(C)」以外の表示(「通知(A)」または「通知(B)」)の指示を出力する。
【0100】
ある局面として、「皮膚温」が「低下」でありかつ「色情報」が「変化有り」である場合(番号「5」~「8」)に着目する。この場合において、情報処理装置100は、「呼吸数」が「正常」または「頻呼吸」または「徐呼吸」であるときには(番号「5」,「6」,「7」)、「通知(B)」の表示指示を出力するのに対し、「呼吸数」が「無呼吸」であるときには(番号「8」)、「通知(C)」の表示指示を出力する。すなわち、後者は前者より重大な事象の発生の表示を指示する。
【0101】
透析治療中の患者の皮膚温が低下しかつ顔色が変化した場合、呼吸に異常が無いか頻呼吸であるときには、低血糖による軽いショック状態が発生していることが想定される一方で、無呼吸であるときには、致死的なショック状態が発生していることが想定される。上記局面で、情報処理装置100は、致死的なショック状態が想定されるときに、軽いショック状態が想定されるときよりもユーザの注意を引きやすい態様での表示をディスプレイ150に指示できる。さらに、情報処理装置100は、軽いショック状態が想定されるときには担当医および/または担当看護師の連絡先に向けた通知は行わないが、致死的なショック状態が想定されるときに当該連絡先に向けた通知を行う。
【0102】
[処理の流れ(3)]
情報処理装置100が実行する処理の流れの3つ目の例を、
図11および
図12を参照して説明する。3つ目の例において、情報処理装置100は、皮膚温の指標のみを利用して、透析患者1の状態の非接触での検出を実施する。
【0103】
図11は、非接触で検出された透析患者1の状態に基づいた情報を出力するための処理のさらに他の例のフローチャートである。情報処理装置100は、
図11に示された処理を、プロセッサ110に所与のプログラムを実行させることによって実施してもよい。
図11の処理は、入力装置140への指示の入力、および/または、透析装置10からの透析治療の開始の通知の受信に応じて開始されてもよい。
【0104】
図11の処理では、情報処理装置100は、
図3の情報処理装置と同様にステップS100での判断を実行する。
図11の処理では、情報処理装置100は、ステップS102へ制御を進める代わりに、ステップS104へ制御を進める。
【0105】
ステップS107には、情報処理装置100は、皮膚温についてのみ、指標を導出する。
【0106】
ステップS109にて、情報処理装置100は、ステップS107において導出された指標が異常値を含むか否かを判断する。情報処理装置100は、異常値を含むと判断すると(ステップS109にてYES)、ステップS111へ制御を進め、そうでなければ(ステップS109にてNO)、ステップS100へ制御を戻す。
【0107】
ステップS111にて、情報処理装置100は、ディスプレイ150に対して、皮膚温の異常に関する表示指示を出力する。表示される画面の一例が、
図12に示される。
【0108】
図12は、ディスプレイ150における通知画面の具体例を示す図である。
図12の画面1200は、タイトル「通知」およびメッセージ「皮膚温の上昇が検出されました。バイタルを確認してください。」を含む。表示されるメッセージは、導出された指標が示す皮膚温の値に応じて変更されてもよい。すなわち、皮膚温の値が低い場合には、メッセージの「皮膚温の上昇」の部分が「皮膚温の低下」に変更されてもよい。
【0109】
図11に戻って、ステップS111の後、情報処理装置100は、ステップS124にて、血圧計20に血圧測定の指示を出力する。そして、情報処理装置100は、ステップS126にて、血圧計20から取得した測定結果をメモリ130に格納して、ステップS100へ制御を戻す。
【0110】
図11および
図12を参照して説明された処理では、情報処理装置100は、皮膚温が高くなった場合でも低くなった場合でも、表示指示および血圧測定の指示を出力したが、皮膚温が低くなった場合にのみこれらの指示を出力し、皮膚温が高くなった場合にはこれらの指示を出力しなくてもよい。
【0111】
[機器のアラーム機能]
透析システムは、患者が患者に接触して身体情報を測定する機器を装着したまま透析治療が行われる場所(たとえば、透析室)を離れようとしたときに、アラームを出力するように構成されていてもよい。このようなアラームの出力の一例について、
図13~
図15を参照して説明する。
【0112】
図13は、血圧計20の一例の外観を表す図である。血圧計20は、患者に接触して身体情報を測定する機器の一例である。
【0113】
血圧計20は、患者の腕に巻かれるベルト20Aを含む。ベルト20Aには、ディスプレイ26を含む筐体と、圧力センサ22とが取り付けられている。圧力センサ22は、当該圧力センサ22に印加された圧力の値を検出する。これにより、圧力センサ22は、ベルト20Aが患者の身体(たとえば、手首)に装着されたときと装着されていないときとで、異なる信号を出力する。すなわち、圧力センサ22から出力される信号に基づいて、血圧計20が患者に装着されている状態が判断され得る。この意味において、血圧計20には、圧力センサ22の代わりに、血圧計20が患者に装着されている状態であるか否かの判断を可能とする信号を出力するいかなる種類のセンサが搭載されていてもよい。また、血圧計20が患者に装着されている状態であるか否かは、血圧計20以外の装置に搭載されたセンサが出力する信号または患者を撮影した映像に基づいて判断されてもよい。
【0114】
図14は、血圧計20のハードウェア構成を示す図である。
図14に示されるように、血圧計20は、コントローラ21を含む。コントローラ21は、圧力センサ22、加圧モータ23、圧力センサ24、脱気弁25、ディスプレイ26、スピーカ27、メモリ28、入力装置29、および通信インターフェース20Xに接続されている。
【0115】
血圧計20は、カフを含む。加圧モータ23は、当該カフの空気袋に空気を送るために駆動する。圧力センサ24は、当該カフに印加された圧力を検出する。脱気弁25は、上記空気袋を開閉する電磁弁である。血圧計20において、コントローラ21は、加圧モータ23を駆動して上記空気袋に適量の空気を導入し、圧力センサ24の検出出力から患者の血圧の測定結果を導出する。なお、血圧計20における血圧の測定方法は、カフを利用したものに限定されず、光学センサを利用した脈波に基づくものであってもよい。コントローラ21は、測定結果を導出した後、脱気弁25に空気袋を開放させることにより、空気袋内の圧力を大気圧に戻しても良い。
【0116】
入力装置29は、コントローラ21に指示するために操作される、操作ボタンを含む。
【0117】
コントローラ21は、入力装置29が操作されたとき、予め定められたタイミングが到来したとき、および/または、情報処理装置100からの指示に応じて、上記の血圧測定を開始してもよい。コントローラ21は、血圧測定を開始すると、所与のインターバルで連続して複数回、血圧測定を実施してもよい。インターバルの長さは、適宜設定され得る。連続して血圧測定を実施する回数は、適宜設定され得る。一度血液測定が開始された後は、所与のイベント(たとえば、入力装置29に対する操作)が発生するまで、コントローラ21は、上記インターバルでの連続した血液測定を継続してもよい。
【0118】
コントローラ21は、プロセッサを含んでいてもよく、当該プロセッサ110は、メモリ28または他の記憶装置に格納されたプログラムを実行することにより、血圧計20の動作を制御する。コントローラ21は、上記プロセッサに代えて、または、上記プロセッサに加えて、血圧計20の動作を制御するための専用回路(ASIC、FPGA、など)を含んでいてもよい。
【0119】
通信インターフェース20Xは、他の機器(たとえば、情報処理装置100のインターフェース120)との間で無線でデータを送受信する。通信インターフェース20Xによるデータの送受信は、たとえばBluetooth(登録商標)の規格に従って実現されてもよいが、データの送受信のための方式はこれに限定されない。
【0120】
図15は、透析システムにおいてアラームを出力するための処理の一例のフローチャートである。一実現例では、血圧計20では、コントローラ21のプロセッサが所与のプログラムを実行することによって
図15の処理が実施される。
【0121】
図15を参照して、ステップS200にて、血圧計20は、当該血圧計20が患者に装着されている状態であるか否かを判断する。血圧計20は、当該血圧計20が患者に装着されている状態にあると判断するまでステップS200における判断を繰り返し(ステップS200にてNO)、患者に装着されている状態にあると判断すると(ステップS200にてYES)、ステップS202へ制御を進める。
【0122】
ステップS202にて、血圧計20は、情報処理装置100と通信中であるか否かを判断する。血圧計20は、情報処理装置100と通信中であると判断すると(ステップS202にてYES)、ステップS202へ制御を戻し、そうでなければ(ステップS202にてNO)、ステップS204へ制御を進める。
【0123】
一実現例では、血圧計20では、通信インターフェース20Xが情報処理装置100からの信号を受信しているときに、血圧計20が情報処理装置100と通信中であると判断する。通信インターフェース20Xは、Bluetoothにて通信する。この意味において、ステップS202では、血圧計20が情報処理装置100に対してBluetoothでの通信が可能な範囲に位置しているか否かが判断されている。
【0124】
ステップS204にて、血圧計20は、アラームを出力する。アラームの出力は、スピーカ27からの音声(たとえば、メッセージ「血圧計が装着されたままです。」の音声)の出力であってもよいし、ディスプレイ26におけるメッセージの表示であってもよいし、他の態様(振動の発生)であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。アラームの出力は、入力装置29に対する操作によって停止されてもよい。その後、血圧計20は、ステップS200へ制御を戻す。
【0125】
図15を参照して説明された処理において、ステップS202は、血圧計20が情報処理装置100と通信ができなくなったことを条件として、アラームを出力するために設けられている。情報処理装置100との通信が透析室内に限定されている場合、ステップS202により、血圧計20が透析室から持ち出されたときにアラームが出力される。
【0126】
なお、血圧計20が透析室から持ち出されたことを検出するための方法は、情報処理装置100との通信の可否の判断に限定されない。たとえば、血圧計20にGPS信号の受信器を含ませ、コントローラ21は、当該GPS信号から特定される位置情報が透析室の外を表す場合に、アラームを出力するように構成されていてもよい。
【0127】
また、アラームの出力は、血圧計20が実際に透析室から持ち出された後ではなく、血圧計20が透析室から持ち出されそうな状態(血圧計20の位置が透析室の出口に近づいた状態)が発生したときに、コントローラ21はアラームを出力するように構成されてもよい。
【0128】
さらに、アラームの出力は、コントローラ21の代わりに、またはコントローラ21に加えて、情報処理装置100から指示されてもよい。たとえば、情報処理装置100は、血圧計20の位置情報を一定時間ごとに取得し、当該位置情報が透析室から持ち出されたことを示すとき(または、出口に近づいたとき)に、血圧計20にアラームの出力を指示してもよい。血圧計20は、情報処理装置100からの指示に応じてアラームを出力するように構成されていてもよい。
【0129】
図15を参照して説明された処理において、ステップS200は、血圧計20が患者に装着されていることを条件として、アラームを出力するために設けられている。なお、アラームの出力は、血圧計20が透析室から持ち出されたことのみを条件として、実施されてもよい。すなわち、ステップS200は省略されてもよい。この場合、たとえば医療従事者が整備などのために血圧計20を持ち出したときなど、患者が装着していない状態で血圧計20が透析室から持ち出されたときにもアラームが出力され得る。血圧計20が医療従事者によって持ち出されたときにアラームが出力されたときには、医療従事者がアラームの出力を停止する操作をすればよい。
【0130】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
1 透析患者、10 透析装置、12 動脈側血液回路、13 静脈側血液回路、20 血圧計、20A ベルト、20X 通信インターフェース、21 コントローラ、22,24 圧力センサ、30 カメラ、40 赤外線カメラ、100 情報処理装置、110 プロセッサ、120 インターフェース、130 メモリ、140 入力装置、150 ディスプレイ。