(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122270
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】通話中の音声のノイズを低減するバイノーラル聴覚装置
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20220815BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20220815BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20220815BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H04R25/00 H
H04M1/00 H
H04R25/00 K
H04R25/00 G
H04R1/10 104E
H04R3/00 320
H04R1/10 104Z
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016525
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】PA202170058
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】21156020
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム スペツラー ベルテルセン
(72)【発明者】
【氏名】ジョニー フレッドスガード
(72)【発明者】
【氏名】ニールス オッデアシェデ
【テーマコード(参考)】
5D005
5D220
5K127
【Fターム(参考)】
5D005BA09
5D005BA13
5D005BB08
5D220AA02
5D220AB08
5D220BA02
5D220BA06
5D220BB04
5D220BC05
5D220DD03
5K127AA03
5K127BA03
5K127BB02
5K127MA05
5K127MA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通話中の音質を改善する聴覚装置システム及び方法を提供する。
【解決手段】聴覚装置システム2は、第1の聴覚装置4及び第2の聴覚装置6を備える。第1の聴覚装置4及び第2の聴覚装置6は、それぞれ、マイクロフォン8a、8bと、聴覚装置間に第1の双方向無線リンク14を確立するための一次アンテナ10a、10bと、スピーカ12a、12bと、を備える。第1の聴覚装置4は、ユーザと遠端通話者との間の通話のための電子装置と第2の双方向無線リンク18を確立するための2次アンテナ16を備える。聴覚装置システム2は、通話モード中、マイクロフォン8aで受信された音の第1のノイズレベルN
1と、マイクロフォン8bで受信された音の第2のノイズレベルN
2とを決定し、N
1<N
2の場合、通話用にユーザの声をキャプチャするためにマイクロフォン8aを選択し、N
1>N
2である場合、マイクロフォン8bを選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの第1の耳及び第2の耳にそれぞれ装着されるように構成されている第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置を備える聴覚装置システムであって、
前記第1の聴覚装置及び前記第2の聴覚装置は、それぞれ、少なくとも1つのマイクロフォンと、他方の聴覚装置との第1の双方向無線リンクを確立するように構成される一次アンテナと、スピーカと、を備え、
前記第1の聴覚装置は、前記ユーザと遠端通話者との間の通話を確立するように適合される電子装置との第2の双方向無線リンクを確立するように構成される二次アンテナを備え、
前記聴覚装置システムは、前記第1の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンによって受信される音の第1のノイズレベルN1と、前記第2の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンによって受信される音の第2のノイズレベルN2と、を決定するように構成され、
前記聴覚装置システムは、通話モードで動作するようにさらに構成され、
N1<N2である場合、前記第1の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンは、前記通話のために前記ユーザの声をキャプチャするために選択され、前記ユーザのキャプチャされた声信号は、前記第2の双方向無線リンクを介して前記電子装置に送信され、
N1>N2である場合、前記第2の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンは、前記通話のために前記ユーザの声をキャプチャするために選択され、前記ユーザのキャプチャされた声信号は、前記第1の聴覚装置への前記第1の双方向無線リンクを介して電子装置に送信され、次に、前記第2の双方向無線リンクを介して送信される、聴覚装置システム。
【請求項2】
前記第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置の各々は、ノイズ検知ユニットを備え、前記ノイズ検知ユニットは、前記N1及びN2の決定を実行するように構成される、請求項1に記載の聴覚装置システム。
【請求項3】
前記ノイズ検知ユニットは、非相関ノイズ検出器を備える、請求項2に記載の聴覚装置システム。
【請求項4】
前記第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、前記ユーザの聴覚損失を補償するように構成される補聴器である、請求項1から3のいずれか一項に記載の聴覚装置システム。
【請求項5】
前記第2の双方向無線リンクを確立する前記第1の聴力デバイスの前記少なくとも1つのマイクロフォンは、前記通話の開始時に前記ユーザの音声をキャプチャするように構成される、請求項1から4のいずれかに記載の聴覚装置システム。
【請求項6】
前記第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、それぞれ、少なくとも2つのマイクロフォンとビームフォーマとを備え、
前記聴覚装置システムは、通話モードにある場合に、さらに、
N1<N2である場合、前記第1の聴覚装置の前記少なくとも2つのマイクロフォンからの連桁信号をビームフォーミングし、
N2>N1である場合、前記第2の聴覚装置の前記少なくとも2つのマイクロフォンからの信号をビームフォーミングする、請求項1から5のいずれか一項に記載の聴覚装置システム。
【請求項7】
前記聴覚装置システムは、通話モードにある場合、さらに、
N1<N2である場合、前記第2の聴覚装置の前記スピーカの音量設定を、前記第1の聴覚装置の前記スピーカの音量設定より高く設定し、
N1>N2である場合、前記第2の聴覚装置の前記スピーカの音量設定を、前記第1の聴覚装置の前記スピーカの音量設定より低く設定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の聴覚装置システム。
【請求項8】
各聴覚装置は、アクティブ音響ベントを備え、 聴覚装置システムは、通話モードにある場合、さらに、
N1<N2である場合、前記第1の聴覚装置の前記音響ベントを、前記第2の聴覚装置の前記音響ベントよりも開き、
N1>N2である場合、前記第2の聴覚装置の前記音響ベントを、前記第1の聴覚装置の前記音響ベントよりも開く、請求項1から7のいずれか一項に記載の聴覚装置システム。
【請求項9】
前記聴覚装置システムは、前記第1の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンによって受信される音及び前記第2の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンによって受信される音のノイズの周波数を分析するように構成され、
前記聴覚装置システムは、前記第1の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンのノイズが、前記第2の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンのノイズと異なる周波数帯域を備える場合、前記第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のマイクロフォンからのユーザの音声を組み合わせるように構成される、請求項2~9のいずれか一項に記載の聴覚装置システム。
【請求項10】
聴覚装置システムにおける方法であって、
聴覚装置システムは、ユーザの第1の耳及び第2の耳にそれぞれ装着されるように構成される第1の聴覚装置と第2の聴覚装置とを備え、前記第1の聴覚装置及び前記第2の聴覚装置は、それぞれ、少なくとも1つのマイクロフォンと、他方の聴覚装置との第1の双方向無線リンクを確立するための一次アンテナと、スピーカと、を備え、前記第1の聴覚装置は、前記ユーザと遠端通話者との間の通話を確立するように適合される電子装置との第2の双方向無線リンクを確立するための二次アンテナを備え、
前記方法は、
ユーザと遠端通話者との間の通話を開始するステップと、
前記第1の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンによって受信される音の第1のノイズレベルN1、及び前記第2の聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンによって受信される音の第2のノイズレベルN2を決定するステップと、
N1<N2である場合、前記通話のために前記ユーザの音声をキャプチャし、前記ユーザのキャプチャした音声信号を前記第2の双方向無線リンクを介して前記電子装置に送信するために、前記第1聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンを選択し、
N1>N2である場合、前記通話のために前記ユーザの音声をキャプチャし、前記ユーザのキャプチャした音声信号を前記第1の双方向無線リンクを介して前記第1の聴覚装置に送信し、次に第2の双方向無線リンクを介して電子装置に送信するために、前記第2聴覚装置の前記少なくとも1つのマイクロフォンを選択するステップと、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通話モードで動作するように構成される聴覚装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通話を行う聴覚システムのユーザは、様々な環境に位置し、時には、ユーザが環境を変えることが難しい場合がある。例えば、ユーザが車内にいる場合、当然ながら、外部からのノイズは、ユーザの近くに位置する窓側でより強くなるであろう。このノイズは、ユーザの音声と共に、遠端の通話者に通信され得、遠端の通話者は、ノイズからユーザの音声を聞き分けることが難しいかもしれない。また、ユーザは、存在するノイズのために、遠端の通話者を適切に聞くことができないかもしれない。聴覚装置システムは、このようなシナリオを認識し、現在の音環境に応じて通話を実行することができることが望ましい。
【0003】
通話中の音質を改善することができる聴覚装置システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、通話中の音質が改善される聴覚装置システムを提供することである。
【0005】
本発明の実施形態のさらなる目的は、システムのユーザに最良の音質を提供する聴覚装置システムを提供することである。
【0006】
また、本発明の実施形態の目的は、遠端の通話者に改善された音質を提供する聴覚装置システムを提供することである。
【0007】
第1の態様では、第1の聴覚装置と第2の聴覚装置とを備える聴覚装置システムが開示される。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、ユーザの第1の耳及び第2の耳にそれぞれ装着されるように構成される。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、それぞれ、少なくとも1つのマイクロフォンと、他方の聴覚装置と第1の双方向無線リンクを確立するように構成される一次アンテナと、スピーカと、を備える。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のうちの少なくとも1つは、電子装置との第2の双方向無線リンクを確立するように構成される二次アンテナを備える。電子装置は、聴覚装置システムのユーザと遠端の通話者との間に通話を確立するように構成される。聴覚装置システムは、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受け取られる音の第1のノイズレベルN1を決定するように構成される。また、聴覚装置システムは、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受け取られる音の第2のノイズレベルN2を決定するように構成される。さらに、聴覚装置システムは、通話モードで動作するように構成される。通話中に、第1のノイズレベルが第2のノイズレベルより小さい(N1<N2)場合、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンは、通話のためのユーザの音声をキャプチャするように選択される。通話中に、第2のノイズレベルが第1のノイズレベルより小さい(N1>N2)場合、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンは、通話のためのユーザの音声をキャプチャするように選択される。
【0008】
本文脈では、聴覚装置システムは、ヘッドセット、バイノーラル聴覚システム、又はバイノーラル補聴器を対象とすることができる。
【0009】
第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、いくつかの同じ構成要素を有していてもよく、それらの機能は、一般に、同一であってもよく、すなわち、ユーザにオーディオ信号を提供し、及び、ユーザの音声を別の装置に伝達してもよい。第1の聴覚装置は、1つのユーザの耳、例えば右に装着されるように構成され、第2の聴覚装置は、別のユーザの耳、例えば左に装着されるように構成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1の装置及び第2の装置は、両耳に互換的に使用できるように、対称であってもよい。
【0010】
第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置はそれぞれ、少なくとも1つのマイクロフォンを備える。マイクロフォンは、ユーザの音声を含む環境からの音を受信するように構成される。第1の装置及び第2の装置上のマイクロフォンの数は、聴覚装置内又は聴覚装置上のマイクロフォンの位置と同じであってもよい。各聴覚装置はまた、ユーザにオーディオ信号を提供するように構成されるスピーカを備える。オーディオ信号は、環境からの音に応答して生成されてもよく、音楽、進行中の通話からの音声等のように、外部装置から受信される信号を表していてもよい。あるいは、スピーカの代わりに、一方又は両方の聴覚装置は、人工内耳を備えていてもよい。
【0011】
さらに、各聴覚装置は、第1の聴覚装置と第2の聴覚装置との間の通信を確立するための一次アンテナを備える。一次アンテナは、磁気アンテナであってもよい。その場合、装置間に確立される双方向通信リンクは、磁気誘導(MI)リンクである。第1の双方向リンクは、典型的には、2つの聴覚装置間で様々な情報及び設定を交換するように機能する。第1の双方向リンクは、1つの聴覚装置から別の聴覚装置にオーディオ信号を送信するように機能し得る。例えば、第1の聴覚装置は、システム設定に従って、環境から及び/又は外部装置から音を受け入れる唯一の聴覚装置であってもよい。次に、第1の一次アンテナは、ユーザが両方の聴覚装置で信号を聞くために、対応するオーディオ信号を、第2の装置の第2の一次アンテナに通信してもよい。
【0012】
第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置の少なくとも一方は、電子装置との第2の双方向リンクを確立するための二次アンテナを備える。二次アンテナは、電気アンテナ、ブルートゥース(登録商標)アンテナ、又は磁気アンテナとすることができる。二次アンテナを備える聴覚装置は、また、典型的には、無線通信のために構成され、二次アンテナと相互接続される無線通信ユニットを備える。一次アンテナは、無線通信ユニットに接続されてもよい。二次アンテナは、また、複数の外部電子装置に対して信号を受信し、送信してもよい。二次アンテナは、第1の聴覚装置上/中にのみ配置されていてもよい。
【0013】
電子装置は、スマートフォン、コンピュータ、ラップトップ、タブレット、スマートウォッチ、又は他のウェアラブル端末等とすることができ、一般に、例えば、電話ネットワーク、IPネットワーク、又は他のものを介して通話を実行することができるデバイスとすることができる。電子装置は、聴覚装置システムと通話を実行するさらなるデバイスとの間の中間デバイスとして機能するデバイスであるブリッジデバイス、例えば、ブルートゥース(登録商標)ブリッジであってもよい。二次アンテナは、聴覚装置システムと電子装置との間のペアリングを確保してもよい。第2の双方向無線リンクは、聴覚装置と電子装置との間で様々な情報及び設定を交換する機能を有していてもよい。電子装置は、聴覚装置システムのユーザと遠端の通話者との間に通話を確立するように構成される。電子装置は、通話の開始時に聴覚装置との接続を確立してもよく、接続は、通話の間、維持されてもよい。あるいは、電子装置は、通話に関係なく、聴覚装置と常時接続されていてもよい。通話は、音声通話(例:音声のみ)であってもよいし、ビデオ通話(例:音声とビデオの両方)であってもよい。
【0014】
聴覚装置システムのユーザは、通話を開始してもよく、電子装置を介して、又は聴覚装置のうちの1つを介して、通話に応答することもできる。電子装置が通話を受信する場合、通話は、通話モードで動作するように構成されているので、聴覚装置システムに自動的に通信され得る。また、聴覚装置システムのユーザは、通話を行いたい場合、電子装置の代わりに、通話を実行するための聴覚システムを選択してもよい。
【0015】
聴覚装置システムは、ユーザの環境からノイズを決定するように構成される。ノイズは、処理ユニットによって決定されてもよい。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、ともに、処理ユニットを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、聴覚装置のうちの少なくとも1つは、処理ユニットを備えていてもよい。処理ユニットは、マイクロフォンによって検出される信号を受信するために、マイクロフォンに接続されてもよい。次いで、処理ユニットは、第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルを決定してもよい。いくつかの実施形態では、聴覚装置システムは、少なくとも電子装置がユーザと遠端の通話者との間で通話を実行している場合、ノイズレベルを測定し、決定するように構成されていてもよい。さらに、聴覚装置システムは、使用中は常にノイズを測定し、通話が開始される前に得られた測定値を使用して、最適な設定で通話を開始するように構成されてもよい。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のマイクロフォンによって受信される音は、ユーザの環境内の様々な音源、例えば、話している人々、交通ノイズ、部屋内の音楽等からの音を含むことができる。聴覚装置システムは、マイクロフォンによって受信される全体の音の信号対ノイズ比を測定してもよい。第1の聴覚装置のマイクロフォンによって受信される音は、単純に、ユーザの頭部が、ユーザの頭部の1つの特定の側から来るいくつかの音に対するシールドとなり得るため、第2の聴覚装置のマイクロフォンによって受信される音とは異なるかもしれない。処理ユニットは、第1のノイズレベル及び第2のノイズレベル、即ちN1及びN2を比較し、比較に基づいて、それに応じて聴覚システムを動作させるように構成されてもよい。
【0016】
通話中、第1のノイズレベルが第2のノイズレベルより小さい(N1<N2)場合、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンが、通話に対するユーザの声をキャプチャするために選択される。この場合、第2の聴覚装置のマイクロフォンは、無効にされてもよく、又はマイクロフォンによってキャプチャされる音は、送信/使用されなくてもよく、第1の聴覚装置マイクロフォンのみが、音の受信のために機能し得る。次いで、ユーザのキャプチャされた音声から生じる信号は、第2の双方向無線リンクを介して第1の聴覚装置を介して電子装置に送信される。
【0017】
通話中、第2のノイズレベルが第1のノイズレベルより小さい(N2<N1)場合、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンが、通話に対するユーザの声をキャプチャするために選択される。この場合、第1の聴覚装置のマイクロフォンは、無効にされてもよく、又はマイクロフォンによってキャプチャされた音は、送信/使用されなくてもよい。即ち、通話中のユーザの音声は、より低いノイズレベルにさらされた聴覚装置のマイクロフォンによってキャプチャされる。処理ユニットは、最低のノイズレベルでマイクロフォンの起動及び通話中の使用を制御するものであってもよい。ユーザのキャプチャされた音声から生じる信号は、まず、第2の聴取装置から第1の双方向無線リンクを介して第1の聴取装置に送信され、次に、第1の聴取装置から第2の双方向無線リンクを介して電子装置に送信される。
【0018】
電子装置は、ただ1つの聴覚装置に接続されてもよい。電子装置がより高いノイズにさらされる聴覚装置に接続されている場合、他の聴覚装置で通話が続行され、即ち、通話はノイズの少ない装置に転送される。電子装置がノイズの少ない聴覚装置に接続されている場合、通話は、同じ聴覚装置で継続される。いくつかのシナリオでは、処理ユニットは、通話が開始される前に測定されたノイズに基づいて、通話が開始されるとノイズの少ない装置に接続してもよい。即ち、遠端の通話者からのオーディオ信号は、より低いノイズにさらされる聴覚装置で受信されてもよい。あるいは、遠端の通話者からのオーディオ信号は、両方の聴覚装置で受信されてもよい。いくつかの実施形態では、聴覚装置システムは、動的音量制御を有していてもよい。即ち、処理ユニットは、第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルのうち、最もノイズレベルの低い第1又は第2の聴覚装置のスピーカの音量を上げるようにさらに構成されていてもよい。
【0019】
電子装置が1つの聴覚装置、例えば第1の聴覚装置のみに接続されている場合、この聴覚装置は、第1の双方向無線リンクを介してストリーミングされた第2の聴覚装置からの信号を解析する。第1の聴覚装置は、また、ノイズレベルの決定及び比較を実行する。
【0020】
いくつかの実施形態では、聴覚装置システムは、聴覚装置のそれぞれにおけるノイズの周波数を決定することができる。2つの聴覚装置におけるノイズの周波数又は周波数帯域が互いに著しく異なる場合、聴覚装置システムは、両方の聴覚装置のマイクロフォンからの音を組み合わせて、遠端の通話者に提供するために、その組み合わせを使用してもよい。
【0021】
本発明の聴覚装置システムは、遠端の通話者が常に最良の音質を得ることを保証する。本発明の聴覚装置システムは、遠端の通話者が最小の外部ノイズでユーザの音声を受信するように、ユーザの環境からの音の管理を可能にする。
【0022】
第1の聴覚装置及び/又は第2の聴覚装置は、ヘッドセット、補聴器、ヒアラブル端末等であってもよい。聴覚装置は、耳の内部(in-the-ear)(ITE)型聴覚装置、耳内レシーバ(receiver-in-ear)(RIE)型聴覚装置、外耳道内レシーバ(receiver-in-canal)(RIC)型聴覚装置、耳内マイクロフォンおよびレシーバ(microphone-and-receiver-in-ear)(MaRIE)型聴覚装置、耳の後ろ(behind-the-ear)(BTE)型聴覚装置、店頭取引(Over-The-Counter:OTC)型聴覚装置等や、フリーサイズ(one-size-fits-all)聴覚装置等であってもよい。
【0023】
聴覚装置は、ユーザによって装着されるように構成される。聴覚装置は、ユーザの耳、ユーザの耳の上、ユーザの耳の中、ユーザの外耳道、ユーザの耳の後ろ等に配置されてもよい。ユーザは、2つの聴覚装置を装着し、各耳に1つの聴覚装置を装着してもよい。2つの聴覚装置は、無線による接続等によって接続されてもよい。
【0024】
聴覚装置は、例えば、ユーザが音楽やラジオのようなメディアを聴くこと、及び/又はユーザが通話を実行することができるように、オーディオ通信のために構成されてもよい。聴覚装置は、ユーザに対して聴覚補償を実行するように構成されていてもよい。聴覚装置は、ノイズキャンセル等を実行するように構成されていてもよい。
【0025】
聴覚装置は、任意の聴覚装置、例えば、聴覚装置の装着者の聴覚損失を補償する任意の聴覚装置、又は、装着者に音を提供する任意の聴覚装置、又は、ノイズキャンセルを提供する聴覚装置、又は耳鳴り低減/マスキングを提供する聴覚装置であってもよい。当業者は、異なる種類の聴覚装置と、聴覚装置の装着者の耳内及び/又は耳に聴覚装置を配置するための異なる選択肢と、をよく知っている。
【0026】
例えば、聴覚装置は、レシーバが、例えば耳内ユニットの一部として使用中に着用者の耳管内などの耳内に配置され、プロセッサ、無線通信ユニット、バッテリなどの他の聴覚デバイス構成要素がアセンブリとして提供され、耳の後ろ(Behind-The-Ear)(BTE)ユニットのハウジング内に取り付けられる、外耳道内レシーバ(Receiver-In-Canal)(RIC)又は耳内レシーバ(Receiver-In-the-Ear)(RIE又はRITE)又は耳内マイクロフォンおよびレシーバ(Microphone-and-Receiver-In-the-Ear)(MaRIE)型聴覚装置であってもよい。プラグとソケットコネクタは、BTEユニットとイヤピース(RIEユニットやMaRIEユニット等)を接続してもよい。
【0027】
聴覚装置は、受信したオーディオ信号に基づいて1つ又は複数のマイクロフォン出力信号を生成するために、第1の入力トランスデューサ、例えばマイクロフォンを備える。音声信号は、アナログ信号であってもよい。マイク出力信号は、デジタル信号であってもよい。従って、第1の入力トランスデューサ、例えばマイクロフォン、又はアナログ-デジタル変換器は、アナログオーディオ信号をデジタルマイクロフォン出力信号に変換してもよい。全ての信号は、音信号又は、音に関する情報を備得る信号であってもよい。聴覚装置は、信号プロセッサを備えていてもよい。1つ又は複数のマイクロフォン出力信号は、1つ又は複数のマイクロフォン出力信号を処理するために信号プロセッサに提供されてもよい。信号は、ユーザの聴覚損失又は聴覚障害を補償するように処理されてもよい。信号プロセッサは、修正された信号を提供してもよい。これらの構成要素は全て、BTEユニットのハウジング内に備えていてもよい。聴覚装置は、レシーバ又は出力トランスデューサ、又はスピーカ又は拡声器を備えていてもよい。レシーバは、信号プロセッサの出力に接続されてもよい。レシーバは、修正された信号をユーザの耳に出力してもよい。レシーバ、又はデジタル/アナログ変換器は、プロセッサからのデジタル信号である修正された信号をアナログ信号に変換すてもよい。レシーバは、イヤピース、例えばRIEユニット又はMaRIEユニットに備えられていてもよい。聴覚装置は、2つ以上のマイクロフォンを備えていてもよく、BTEユニットは、少なくとも1つのマイクロフォンを備えていてもよく、RIEユニットは、少なくとも1つのマイクロフォンを備えていてもよい。
【0028】
聴覚装置信号プロセッサは、増幅器、コンプレッサ、及び/又はノイズ低減システムなどの要素を備えていてもよい。信号プロセッサは、信号処理チップ又はプリント回路基板(PCB)に実装されてもよい。聴覚装置は、さらに、出力信号を最適化するための補償フィルタのようなフィルタ機能を有してもよい。
【0029】
聴覚装置は、さらに、無線周波数(RF)アンテナ又は磁気誘導アンテナ等のアンテナと相互接続された、電磁場の放射及び受信のための無線データ通信のための、無線通信回路又は磁気誘導チップなどの無線通信ユニット又はチップを備えていてもよい。無線又はトランシーバを含む無線通信ユニットは、少なくとも1つのスマートフォン、少なくとも1つのタブレット、少なくとも1つのスパウスマイクロフォン、リモートコントロール、オーディオ試験デバイスなどを含む少なくとも1つの聴覚アクセサリデバイスを含む1つ又は複数の外部電子装置などの1つ又は複数の外部デバイスと、又はいくつかの実施形態では、別の耳に位置する別の聴覚装置などの別の聴覚装置と、典型的にはバイノーラル聴覚装置システムで通信するために、聴覚装置信号プロセッサ及びアンテナに接続してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のそれぞれは、ノイズ検知ユニットを備えていてもよい。ノイズ検知ユニットは、ノイズレベルN1及びN2の判定を実行するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、処理ユニットは、ノイズ検知ユニットを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサユニットは、ノイズ検知ユニットに接続されてもよい。ノイズ検知ユニットは、決定されたノイズレベルを処理ユニットに送信してもよい。処理ユニットを有していないかもしれない聴覚装置のノイズ検知ユニットは、MIリンクを介して処理ユニットと聴覚装置との間でノイズレベルを通信してもよい。別体のノイズ検知ユニットにより、ノイズレベルを迅速かつ正確に決定することができる。また、各聴覚装置がそれ自体のノイズ検知ユニットを備える場合、ノイズ測定は、ユーザが環境をどのように体験するか、及び通話の間に音の管理がない場合、環境からの音が遠端の通話者にどのように通信されるかに応じて行われる。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のうちの少なくとも1つは、音声検出器を備えていてもよい。音声検出器は、ユーザに近接して話している他の人々を識別するように構成されていてもよい。音声検出器は、処理ユニットに接続されていてもよく、その入力は、ノイズレベルN1及びN2の決定に寄与していてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ノイズ検知ユニットは、非相関ノイズ検出器を備えていてもよい。無相関のノイズは、風や動きの乱れによって発生するマイクロフォンの近くで発生するため、聴覚装置の各マイクロフォンに対して個別である。無相関ノイズ検出器は、ユーザが走ったり、自転車に乗ったり、歩いたりするときの、ユーザの動作に起因するユーザの耳の周りの乱流、又は風によって引き起こされる乱流を決定され得る。非相関ノイズ検出器は、風検出器を備えていてもよい。風検出器は、通常低周波数を備える風によって引き起こされるユーザの耳の周りの乱流を決定してもよい。22Hz~5kHzの周波数帯では風によるノイズが支配的である。従って、風ノイズ検出器は、風ノイズ検出器にとって関心のない他の周波数を遮断しながら、低周波風ノイズのみの検出を可能にするために、ローパスフィルタを備えていてもよい。交通ノイズのような相関ノイズに対しては、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置の各々に別の検出器が配置されていてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、ユーザの左耳及び右耳にそれぞれ配置されるように構成されていてもよい。したがって、聴覚装置はイヤホンであってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、ユーザの聴覚損失を補償するように構成された補聴器であってもよい。この実施形態では、聴覚装置システムは、バイノーラル補聴器である。処理ユニットは、ユーザの聴覚障害を補償するように構成されていてもよい。この場合、処理ユニットは、複数の機能を有し、ノイズレベルの比較を実行すること、通話に使用するためにマイクロフォンを制御すること、及び聴覚障害を補償することのように、それらを同時に実行してもよい。通話を実行し、同時に、ユーザ側及び遠端の通話者側の両方で通話の良好な音質を保証するように構成されるバイノーラル補聴器を有することが有利である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2の双方向無線リンクを確立する聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンは、通話の開始時にユーザの音声をキャプチャするように構成されていてもよい。次いで、処理ユニットは、決定されたノイズレベルに基づいて、音質がユーザの聴覚の反対側でより良好である場合、他の聴覚装置のマイクロフォンに切り替えてもよい。システムにおいて1つの二次アンテナのみを有することにより、聴覚装置システムは単純化される。両方の聴覚装置が二次アンテナを備える実施形態では、電子装置は、第1の装置又は第2の装置にランダムに接続してもよい。代替的に、聴覚装置の処理ユニットは、通話の開始に影響してもよい。いくつかの実施形態では、電子装置との無線通信を最初に確立する聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンは、通話の開始時にユーザの音声を拾うように構成されてもよい。
【0036】
任意の時点で、決定されたノイズレベルが変化し、別の装置への切り替えが実行される必要があり得る場合、切り替えは、他の聴覚装置と電子装置との間で確立された双方向無線リンクに切り替えることによって実行され得る。他方の聴覚装置が、電子装置とのリンクを確立するための二次アンテナを備えていない場合、切り替えは、2つの聴覚装置の間で確立されたMIリンクを通じて発生し得る。このシナリオでは、ノイズの少ないマイクロフォンによってピックアップされたオーディオ信号は、MIリンクを介して、電子装置に接続される他のデバイスに通信される。
【0037】
いくつかの実施形態では、切り替えは、所定の時間の後に実行されてもよい。即ち、現在使用されていない他の装置のマイクロフォンが、より低いレベルのノイズにさらされていないと判定されても、切り替えが実行されないアイドル時間があってもよい。所定時間後にのみ切り替えを行うことにより、環境が頻繁に変化する場合や、ユーザが動いている、走っている、サイクリングしている場合などに、シナリオの切り替えが頻繁に行われることを回避することができる。あるいは、低速スイッチング、すなわち、一方の聴覚装置のマイクロフォンから他方の聴覚装置のマイクロフォンへの音声のフェーディングを実行することが可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置はそれぞれ、少なくとも2つのマイクロフォン及びビームフォーマを備えていてもよい。通話モードにおいて、N1がN2よりも低いN1<N2の場合、聴覚装置システムは、さらに、第1聴覚装置の少なくとも2つのマイクロフォンからの信号をビームフォーミングするように構成されてもよい。また、N2がN1より低いN1>N2の場合、聴覚装置システムは、第2聴覚装置の少なくとも2つのマイクロフォンからの信号をビームフォーミングするように構成してもよい。ビームフォーミングは、遠端通話者に送信されるべき信号からノイズを除去する役割を果たすために、音の指向性を改善してもよい。高周波サイレンのような環境から高周波音をさらに除去するために、ビーフォーマの後にローパスフィルタが配置されていてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、通話モードにおいて、N1<N2の場合に、聴覚装置システムは、第2の聴覚装置のスピーカの音量設定を、第1の聴覚装置のスピーカの音量設定よりも高く設定し、N1>N2の場合に、第2の聴覚装置のスピーカの音量設定を、第1の聴覚装置のスピーカの音量設定よりも低く設定するように、さらに構成されていてもよい。処理ユニットは、ノイズレベルの決定及び比較の際に、そのような設定を自動的に設定してもよい。このようにして、ユーザは、反対側に比べて高いノイズレベルに曝される頭部の側の聴覚装置において、より高い音量を有することになる。これにより、遠端通話者だけでなく、音響体験が改善されるシステムのユーザも、最良の音質を体験する。音量設定は、聴覚装置間の最初の無線双方向リンクを介してストリーミングされてもよい。処理ユニットが、より低いノイズレベルを有する聴覚装置にのみ配置される場合、処理ユニットは、第1の双方向リンクを介して、他方の聴覚装置の音量を制御してもよい。
【0040】
ある実施形態では、第1及び第2の聴覚装置は、ともに、ノイズキャンセルユニットを備えていてもよい。ノイズキャンセルユニットは、システムが通話モードであるときに、より高いノイズレベルに曝される聴覚装置でノイズがキャンセルされることを保証し得る。検出されたノイズレベルN1、N2に応じてノイズをキャンセルするシステムを有することは有効である。これはまた、通話中のユーザの体験を改善する。
【0041】
いくつかの実施形態では、各聴覚装置は、アクティブ音響ベントを備えてもよい。通話モードにあり、N1<N2である場合、聴覚装置システムは、第2の聴覚装置の音響ベントよりも第1の聴覚装置の音響ベントを開き、N1>N2である場合、第1の聴覚装置の音響ベントよりも第2の聴覚装置の音響ベントを開くようにさらに構成されていてもよい。アクティブ音響ベントは、通常、耳の内側、すなわち聴覚装置の後方と外部環境との間の通路と、この通路を通る流体接続を調整するための弁と、を備える。閉設定では、周囲のノイズが減少され、音圧が高くなる。開設定は、流体接続を可能にし、したがって、ユーザに良好な周囲認識を与える。
【0042】
いくつかの実施形態では、聴覚装置は、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置の1つ又は複数のマイクロフォンによってキャプチャされた信号を、第1の聴覚装置のためのいくつかの周波数帯域FB、すなわちFB1,1、FB1,2、FB1,3、...、FB1,Nと、第2の聴覚装置のためのFB2,1、FB2,2、FB2,3、...、FB2,Nと、に分割するように構成されていてもよい。聴覚装置システムは、各周波数帯域に対してノイズ検出を実行してもよい。聴覚装置システムは、より低いノイズを有するそれぞれの周波数帯を組み合わせることによって、通話のための信号を生成するように構成されていてもよい。従って、ユーザ側からの音響は、一方の補聴器が、ある周波数帯域、例えば、低い周波数帯域のノイズの影響を受け、他の聴覚装置が、他の周波数帯域、例えば、高い周波数帯域のノイズの影響を受ける状況において、より良好な品質を有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、聴覚装置システムは、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受信された音の周波数と、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受信された音の周波数と、を分析するように構成されてもよい。聴覚装置システムは、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンのノイズが、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォン上ノイズとは異なる周波数帯域を備える場合に、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のマイクロフォンからのユーザの音声を組み合わせるように構成されていてもよい。即ち、ユーザと環境に由来する音スペクトルを帯域に分割し、各帯域をノイズに対して解析することができる。ノイズの少ない種々の周波数帯域、特に人間の声を包含する帯域を組み合わせることができる。人間の声は、通常、300~3000Hzの周波数範囲である。
【0044】
第2の態様では、聴覚装置システムを動作させるための方法が開示される。聴覚装置システムは、ユーザの第1の耳及び第2の耳にそれぞれ装着されるように構成される第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置を備える。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置は、それぞれ、少なくとも1つのマイクロフォン、他方の聴覚装置との第1の双方向無線リンクを確立するための一次アンテナ、及びスピーカを備える。第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のうちの少なくとも1つは、ユーザと遠端通話者との間の通話を確立するように適合される電子装置との第2の双方向無線リンクを確立するための二次アンテナを備える。この方法は、ユーザと遠端通話者との間の通話を開始するステップを備える。この方法は、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受信された音の第1のノイズレベルN1と、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受信された音の第2のノイズレベルN2と、を決定するステップをさらに備える。さらに、N1<N2である場合に、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンが、通話に対するユーザの声をキャプチャするために選択される。N1>N2である場合、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンが、通話に対するユーザの声をキャプチャするために選択される。
【0045】
通話は、電子装置と、第2のアンテナを備え、典型的には無線通信ユニットをさらに備える第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のうちの少なくとも一方との間に無線接続を確立することによって開始される。電子装置は、どの聴覚装置に接続するかを制御するマスタ装置と見なし得る。
【0046】
ノイズレベルの決定は、通話が進行中であるか否かにかかわらず、常に実行されてもよい。ノイズレベルが測定され、通話が開始されると、聴覚装置システム、即ち少なくとも1つの聴覚装置のプロセッサユニットは、例えば、ノイズ検知ユニットによって決定される第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルを比較してもよく、比較に基づいて、どのように通話を進めるか、すなわち通話を継続するためにどの聴覚装置を使用するかについての決定を行ってもよい。
【0047】
本発明は、上記及び以下に記載されるシステムを含む異なる態様、及び、最初に記載された態様に関連して記載され、及び、最初に記載された態様に関連して記載され、及び/又は添付の特許請求の範囲に開示された実施形態に対応する1つ又は複数の実施形態をそれぞれ有する、1つ又は複数の利益及び利点をもたらす対応する方法に関する。
【0048】
上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した例示的な実施形態の以下の詳細な説明によって、当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置を備える聴覚装置システムの一例を概略的に示す。
【
図2】第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置を備える聴覚装置システムの別の例を概略的に示す。
【
図3】聴覚装置システムにおける方法の一例のフローチャートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
様々な実施形態が、図面を参照して以下に記載される。全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を示す。従って、同様の要素については、各図の説明に関して詳細には説明しない。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図していることにも留意されたい。それらは、特許請求の範囲に記載された発明の網羅的な説明として、又は特許請求の範囲に記載された発明の範囲に対する限定として意図されていない。さらに、図示された実施形態は、図示された態様又は利点のすべてを有する必要はない。特定の実施形態に関連して説明される態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように図示されていなくても、又はそのように明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施することができる。
【0051】
全体を通して、同じ参照番号は、同一又は対応する部分に使用される。
【0052】
図1は、聴覚装置システム2の一例を概略的に示す。このシステムは、第1の聴覚装置4及び第2の聴覚装置6を備える。第1の聴覚装置4及び第2の聴覚装置6は、ユーザの第1の耳及び第2の耳にそれぞれ装着されるように構成される。第1の聴覚装置4は、少なくとも1つのマイクロフォン8aと、一次アンテナ10aと、スピーカ12aと、を備える。同様に、第2の聴覚装置6は、少なくとも1つのマイクロフォン8bと、一次アンテナ10bと、スピーカ12bと、を備える。一次アンテナ10a、10bは、第1の聴覚装置4と第2の聴覚装置6との間に第1の双方向無線リンク14を確立するように構成される。
【0053】
第1の聴覚装置4は、電子装置(図示せず)との第2の双方向無線リンク18を確立するように構成された二次アンテナ16をさらに備える。あるいは、第2の聴覚装置は、二次アンテナ16を備えていてもよい。
【0054】
電子装置は、ユーザと遠端通話者との間の通話を確立するために適合される。聴覚装置システム2は、第1の聴覚装置4の少なくとも1つのマイクロフォン8aによって受信された音の第1のノイズレベルN1と、第2の聴覚装置6の少なくとも1つのマイクロフォン8bによって受信された音の第2のノイズレベルN2と、を決定するように構成される。
【0055】
聴覚装置システム2はさらに、通話モードで動作するように構成される。第1のノイズレベルが第2のノイズレベルより低い、N1<N2の場合、第1の聴覚装置4の少なくとも1つのマイクロフォン8aが、通話に対するユーザの音声をキャプチャするために選択される。第2のノイズレベルが第1のノイズレベルより低い、N1>N2の場合、第2の聴覚装置6の少なくとも1つのマイクロフォン8bは、通話に対するユーザの音声をキャプチャするために選択される。
【0056】
ノイズの少ないマイクロフォンを選択することによって、ユーザのノイズの少ない側が選択され、それによって、聴覚装置システム2は、遠端の通話者が常に最良の音質を得ることを保証する。聴覚装置システム2は、遠端の通話者が最小の外部ノイズでユーザの音声を受信するように、ユーザの環境からの音の管理を可能にする。
【0057】
聴覚装置は、第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置の1つ又は複数のマイクロフォンによってキャプチャされた信号を、第1の聴覚装置のためのいくつかの周波数帯域FB、すなわちFB11,1、FB1,2、FB1,3、...FB1,Nと、第2の聴覚装置のためのFB2,1、FB2,2、FB2,3、...FB2,Nと、に分割するように構成されてもよい。従って、FB1,1、FB2,1においてN1>N2である場合、聴覚装置はFB2,1を使用する。同様に、FB1,2、FB2,2がN1<N2である場合、残りの周波数帯にはFB1,2等が使用される。
【0058】
図2は、
図1に関連して説明した全ての要素を備える聴覚装置システム2の別の例を概略的に示す。
図2のシステムは、第1の聴覚装置4及び第2の聴覚装置6のそれぞれに備えられるノイズ検知ユニット20a、20bをさらに備える。ノイズ検知ユニット20a、20bは、ユーザの周囲からのノイズを判定するとともに、N
1及びN
2の判定を十呼応するように構成されていてもよい。聴覚装置4、6は、それぞれ、無線通信のために構成され、一次アンテナ10a、10bと相互接続されている少なくとも1つの無線通信ユニット22a、22bを備えていてもよい。二次アンテナ16はまた、無線通信ユニット(図示せず)と相互接続されていてもよい。二次アンテナ16は、1つ以上の外部電子装置に対して信号を送受信するように構成されていてもよい。
【0059】
図3は、聴覚装置システムにおける方法100の一例のフローチャートを概略的に示す。この方法を実行する聴覚装置システムは、
図1及び
図2に関連して説明した例によるものであってもよい。方法100の最初のステップは、ユーザと遠端通話者との間の通話を開始するステップ102である。この方法は、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受信された音の第1のノイズレベルN
1と、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンによって受信された音の第2のノイズレベルN
2と、を決定するステップ104をさらに備える。次いで、ステップ106において、決定されたノイズレベルが比較される。N
1<N
2である場合、通話のためのユーザの声をキャプチャするために、第1の聴覚装置の少なくとも1つのマイクロフォンが選択される。N
1>N
2である場合、通話のためのユーザの声をキャプチャするために、第2の聴覚装置の少なくとも1つのマイクが選択される。
【0060】
通話は、電子装置と、二次アンテナを備え、典型的には無線通信ユニットをさらに備える第1の聴覚装置及び第2の聴覚装置のうちの少なくとも一方との間で無線接続を確立することによって開始される。電子装置は、どの聴覚装置に接続するかを制御するマスタ装置と見なしてもよい。
【0061】
ノイズレベルの決定は、通話が進行中であるか否かに関わらず、常に実行されてもよい。ノイズレベルが測定され、通話が開始されると、聴覚装置システム、すなわち少なくとも1つの聴覚装置のプロセッサユニットは、例えば、ノイズ検知ユニットによって決定される第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルを比較してもよく、比較に基づいて、通話をどのように進行するのか、即ち通話を継続するために、どの聴覚装置を使用するかについての決定を実行してもよい。
【0062】
特定の特徴が示され、説明されてきたが、それらは、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図しておらず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正がなされ得ることが、当業者にとって明らかであることが理解されるであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、全ての代替物、修正物、及び均等物を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0063】
2:聴覚装置システム、4:第1の聴覚装置、6:第2の聴覚装置、8a、8b:マイク、10a、10b:一次アンテナ、12a、12b:スピーカ、14:第1の双方向無線リンク、16:二次アンテナ、18:第2の双方向リンク、20a、20b:ノイズ検知ユニット、22a、22b:無線通信ユニット、100:聴覚装置システムにおける方法、102:通話を開始、104:騒音レベルを決定、106:ノイズレベルを比較
【外国語明細書】