(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122284
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】調整可能な光学移相器アレイ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/295 20060101AFI20220815BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G02F1/295
G01S7/481 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022018016
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】110104908
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】503416331
【氏名又は名称】國立臺灣科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】李三良
(72)【発明者】
【氏名】李宗翰
(72)【発明者】
【氏名】楊家亘
【テーマコード(参考)】
2K102
5J084
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102AA28
2K102BA07
2K102BB04
2K102BB08
2K102BC04
2K102BC10
2K102BD09
2K102DC07
2K102DC08
2K102DD03
2K102EA21
2K102EB01
5J084BA48
5J084CA41
5J084EA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高速ビーム走査を行うことができるとともに、制御アレイの配線を簡単化できる調整可能な光学移相器アレイを提供する。
【解決手段】本発明が提供する調整可能な光学移相器アレイは、入力端、第1出力端及び第2出力端を有し、第1分光素子の前記入力端が入力光を受け取り、均等に分配された光信号を次段の分光素子に出力し、nは1以上の正の整数である第1~第n分光素子と、次段の奇数列の分光素子の入力端及び前段の分光素子の第1出力端にそれぞれ結合される複数の第1光導波路と、次段の偶数列の分光素子の入力端及び前段の分光素子の第2出力端にそれぞれ結合される複数の第2光導波路と、加熱方式又は電気光学的方式によって光導波路を通過する光信号に位相シフトを発生させ、kは正の整数である第1~k段の移相器とを備え、各段の分光素子の数は、2倍ずつ増加し、且つ次段の移相器の加熱器の長さは、前1段の移相器の加熱器の長さよりも短い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分光素子及び複数の移相器が直列に接続されてなり、入力光を複数の位相を制御可能な光導波路に均等に分配し、
それぞれが入力端、第1出力端及び第2出力端を有し、前記第1分光素子の前記入力端が、前記入力光を受け取り、均等に分配された光信号を次段の分光素子に出力し、nは、1以上の正の整数である第1~第n分光素子と、
次段の奇数列の分光素子の前記入力端及び前段の分光素子の前記第1出力端にそれぞれ結合されて前記光信号を受信する複数の第1光導波路と、
次段の偶数列の分光素子の前記入力端及び前段の分光素子の前記第2出力端にそれぞれ結合されて前記光信号を受信する複数の第2光導波路と、
各前記第1光導波路をそれぞれ覆い、第1組の移相器を形成し、加熱方式又は電気光学効果によって各前記第1光導波路を通過する前記光信号に位相シフトを発生させ、kは、正の整数である第1~k段の移相器と、
を備え、
前記第1組の移相器は、
第1電極と、
前記第1電極に結合された第1金属導線と、
各前記第1光導波路を覆い、一端が前記第1金属導線に結合される第1加熱器と、
第2電極と、
前記第2電極及び前記加熱器の他端にそれぞれ結合される第2金属導線と、
を含み、
各段の分光素子の間に第1段の移相器が設けられ、前記第1分光素子の後の各段の分光素子の数は、2倍ずつ増加し、且つ次段の移相器の加熱器の長さは、前1段の移相器の加熱器の長さよりも短い調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項2】
前記奇数列の分光素子の前記入力端の前の各前記第1光導波路を覆う移相器は、前記第2金属導線を介して前記第2電極に電気的に結合される請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項3】
各段の移相器の全長は、実質的に等しい請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項4】
前記第1~k段の移相器は、更に、各前記第2光導波路をそれぞれ覆い、第2組の移相器を形成し、前記加熱方式又は電気光学効果によって各前記第2光導波路を通過する前記光信号に位相シフトを発生させ、前記第2組の移相器は、
第3電極と、
前記第3電極に結合される第3金属導線と、
各前記第2光導波路を覆い、一端が前記第3金属導線に結合される第2加熱器と、
第4電極と、
前記第4電極及び前記第2加熱器の他端にそれぞれ結合される第4金属導線と、
を含む請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項5】
前記第2組の移相器によって発生される位相シフト及び前記第1組移相器によって発生される位相シフトは、互いに異なるか、又は反対である請求項4に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項6】
前記第1組の移相器の前記複数の金属導線と前記2組の移相器の前記複数の金属導線とは、異なる金属導線層に配置される請求項4に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項7】
前記第1加熱器及び/又は第2加熱器は、抵抗値が比較的高い金属導線又は線形半導体である請求項4に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項8】
前記偶数列の分光素子の前記入力端の前の各前記第2光導波路を覆う移相器は、前記第4金属導線を介して前記第4電極に電気的に結合される請求項4に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項9】
同じ段の奇数列の分光素子の前記第1出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、前記第1電極及び前記第2電極にそれぞれ結合され、同じ段の奇数列の分光素子の前記第2出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第3電極及び第4電極にそれぞれ結合され、同じ段の偶数列の分光素子の前記第1出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第5電極及び第6電極にそれぞれ結合され、同じ段の偶数列の分光素子の第2出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第7電極及び第8電極にそれぞれ結合される請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項10】
前記第k段の移相器の各出力端は、前記第k段の移相器の各出力端の位相を微調整する微調移相器を有する光導波路にそれぞれ結合される請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項11】
中段段を更に含み、前記中間段は、互いに接続されて微調移動器組を形成する複数の微調移相器を含み、前記微調移相器組の後の前記複数段の前記複数の移相器は、前記微調移相器組に接続し、前記第k段の前記複数の移相器の出力端に1つの位相シフトを追加する請求項10に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項12】
中間段を更に含み、前記中間段は、複数の微調移相器を含み、前記複数の微調移相器は、前記中間段の後の前記複数の移相器の出力端の移相を微調整することに用いられる請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項13】
中間段を更に含み、前記複数の第1~k段の前記複数の移相器は、前記中間段の前の第1クラスタ及び前記中間段の後の第2クラスタに分けられ、前記第1クラスタは、前記複数の第1~k段における1つ又は複数の段を含み、且つ前記第2クラスタは、前記複数の第1~k段における他の段を含み、前記第1クラスタは、前記中間段の前の前記第1クラスタにおける1つ又は複数の段の位相シフトを提供し、且つ前記第2クラスタは、前記中間段の後の前記第2クラスタにおける1つ又は複数の段の位相シフトを提供し、前記中間段は、別途の複数の微調移相器を有する請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項14】
前記移相器は、移相を変化させることができる電気光学効果を有する光導波路ブロックである請求項1に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【請求項15】
前記移相器は、位相を変化させることができる電気光学効果を有する光導波路ブロックである請求項4に記載の調整可能な光学移相器アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学移相器アレイ、特に、多段構造の調整可能な光学移相器アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、ライダー(LiDAR)のビームステアリングの実現は、主に機械光学ステアリングをソリューションとしている。しかし、機械ビームステアリングに必要なハードウェアシステムは、体積が大きく、且つ機械システムは多くのエネルギーを消費する。また、機械光学式のステアリングシステムは、物理的な摩耗や振動の影響を受け易く、ビームフォーミングを制御する能力にも欠き、レンズ又はプリズム等の装置を追加して初めてビームフォーミングを制御する機能を達成することができるようになり、メカニズムの複雑性が大幅に増加し、システムの安定性が低下する。モバイルネットワーク及び車両用ネットワークで用いられるアンテナアレイもビームフォーミング及びビームステアリングを必要とする。フェーズドビームアンテナのビームステアリングは、通常、マイクロ波遅延ラインが用いられるが、1つのアレイに数十又は数百のアンテナが使用される場合、これらのアレイは非常に大きくなり得る。
【0003】
光学アンテナで構成された光学移相器アレイは、位相差を調整することにより、複数の輻射波を干渉させてビームパターンにする。光電統合されたライダー光フェーズドアレイに比較し、機械ステアリングメカニズムを全く使用していないため、システムが相対して大幅に安定する。光フェーズドアレイで構成されたアンテナは、位相差を適切に調整することにより、アンテナの複数の輻射波を干渉させて任意のパターンにし、ビーム角度の調整及び走査を行うことができる。光電統合された光学位相シフトアレイは、機械ステアリングメカニズムなしでライダーにビームフォーミングおよびステアリング機能を提供できるため、フェーズドアレイはより安定してコンパクトにすることができる。光学アンテナで構成された光学移相器アレイは、アンテナからの放射波に対する干渉を通じてランダムなビーム方向パターンを生成し、それによって光学アンテナに到達する光の位相差を適切に調整及び制御してビームの角度を調整し、ビームステアリングを行うことができる。光学位相シフトアレイは、マイクロ波フェーズアレイアンテナの光電変換及び当該光電変換に必要な位相シフトを提供することもできる。
【0004】
しかし、光学アンテナ又はマイクロ波アンテナに到達する光の位相誤差により、ビームの品質を大幅に減少させる可能性があり、これらの位相誤差は、プロセスの均一性又は環境の変化に起因する可能性がある。従って、全てのアンテナでの微小な位相誤差の累積を修正することは、複雑で時間のかかるプロセスである。特に、現在の光フェーズドアレイをサポートする光学アンテナ又はマイクロ波アンテナの数は、多くが数百に達し、出力ビームの発散角を低減している。この場合、全てのアンテナの微小な位相誤差を修正することは、非常に重要であるが、非常に複雑な作業でもある。従って、高濃度のビームを達成するには、適切に設計された高精度の移相器及び効果的に位相を制御する方法が必要である。
【0005】
高精度移相器の一般的な形式には、電気光学移相器(Electro-optic phase shifter)と熱移相器(thermal phase shifter)の2種がある。電気光学移相器は、電場を印加することによって光導波路の自由キャリア濃度を変更し、それによって光導波路の実効屈折率を変更して、光波の位相を変更する目的を達成する。但し、シリコンの電気光学効果が比較的弱いため、光導波路を長くする必要があり、これにより光伝播損失の増加及びウェーハ面積の増大の問題を招く。熱移相器の場合、熱移相器は、光導波路の加熱を利用し、熱光学効果の温度によって光導波路の実効屈折率を変更する。一般的に、光導波路の上部被覆層によって加熱線を製造し、この加熱線は、半導体の製造プロセスによって金属又は半導体で製造され、光導波路から適切な距離をとり、加熱効果を達成すると同時に光損失を回避することができる。高効率と低損失がその利点であるが、精確な温度制御と熱クロストークの問題が存在する。さらに、熱エネルギーによる加熱効果の応答時間を考慮する必要がある。
【0006】
移相器は、通常、入力光の分割段と光学アンテナ段との間の単一段に配置される。位相制御方式は、各移相器の位相を調整し、製造工程で発生する位相誤差を補正することによって出力ビームを制御する。ドライバー回路のデジタル-アナログコンバーター(DAC)のアレイは、各移相器に必要な位相シフトを提供するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高速ビーム走査を行うことができるとともに、制御アレイの配線を簡単化できるという利点を有する調整可能な光学移相器アレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の分光素子及び複数の移相器が直列に接続されてなり、入力光を複数の位相を制御可能な光導波路に均等に分配し、それぞれが入力端、第1出力端及び第2出力端を有し、前記第1分光素子の入力端が、入力光を受け取り、均等に分配された光信号を次段の分光素子に出力し、nは、1以上の正の整数である第1~第n分光素子と、次段の奇数列の分光素子の入力端及び前段の分光素子の第1出力端にそれぞれ結合されて光信号を受信する複数の第1光導波路と、次段の偶数列の分光素子の入力端及び前段の分光素子の第2出力端にそれぞれ結合されて光信号を受信する複数の第2光導波路と、各第1光導波路をそれぞれ覆うか、前記複数の第1光導波路に接続し、第1組の移相器を形成し、電流又は電圧を印加することによって各第1光導波路を通過する光信号に位相シフトを発生させ、kは、正の整数である第1~k段の移相器と、を備え、第1組の移相器は、第1電極、第1金属導線、移相器、第2電極及び第2金属導線を含む。第1金属導線は、第1電極に接続する。第1移相器は、第1光導波路付近に加熱線配置するか電気光学移相器を第1光導波路に埋め込むことによって第1光導波路を覆い、且つ第1移相器の一端は、第1金属導線に接続される。第2金属導線は、第2電極及び移相器の他端にそれぞれ接続される。各段の分光素子の数は、2倍ずつ増加し、且つ次段の移相器の移相器長さは、前段移相器の移相器長さよりも短い。光学移相器アレイの大きさに応じて分光素子、光導波路及び移相器の数を増加することができる。例えば、10段の分光素子を互いに接続する必要がある場合、入力光は、1024個の出力光導波路に均一に分布することができる。
【0009】
各段の第1移相器組は、同一段の各分光素子の出力する第1光導波路に2倍の移相シフト値を提供する。移送シフトは、段に応じて変化することができる。末段又は中間段の各出力導波路箇所に微調移相器を加えて位相を補正することができる。各段の移相を調整することによって、得られる位相は、マイクロ波又はビームのステアリングに用いることができる。本発明の光移相器アレイは、光学移相器アレイの前に光電気変換器を追加し、その後に光電気変換器を追加することによってマイクロ波信号のビームステアリングを実現することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、第1移相器組が第i段(i=1~k)において第1光導波路に提供する位相シフトは、2k-1φであるため、第k段の出力導波路は、0、φ、2φ……2k-1φである。出力導波路での位相の線形変化は、出力発射機が発射する波の干渉パターンを直接に特定の方向に指向させ、φを変化させることによって方向を制御することができる。出力発射機は、光学回折素子、導波路ファセット又は光導波路出力に接続される光電気‐電子変換素子を有するマイクロ波アンテナであってよい。この設置により、k個の駆動回路を用いて干渉パターンの方向を制御することができる。
【0011】
幾つかの実施形態において、奇数列の分光素子の入力端の前の各第1光導波路を覆う移相器は、第2金属導線を介して第2電極に電気的に結合される。
【0012】
幾つかの実施形態において、各段の移相器の全長は、実質的に等しい。
【0013】
幾つかの実施形態において、第1~k段の移相器は、更に、各第2光導波路をそれぞれ覆い、第2組の移相器を形成し、電圧又は電流を移相器に印加することによって各第2光導波路を通過する前記光信号に位相シフトを発生させ、前記第2組の移相器は、第3電極と、前記第3電極に結合される第3金属導線と、各前記第2光導波路を覆い、一端が前記第3金属導線に結合される第2加熱器と、第4電極と、前記第4電極及び第2加熱器の他端にそれぞれ結合される第4金属導線と、を含む。第2組の移相器は、第3電極、第3金属導線、第2移相器、第4電極及び第4金属導線を含む。第3金属導線は、第3電極に接続する。第2移相器は、第2光導波路を覆い、且つ第2移相器の一端は、第3金属導線に接続する。第4金属導線は、第4電極及び第2移相器の他端にそれぞれ接続する。
【0014】
幾つかの実施形態において、第2組の移相器によって発生される位相シフト及び第1組移相器によって発生される位相シフトは、互いに異なるか、又は反対である。
【0015】
幾つかの実施形態において、第2移相器が発生する位相シフトは、出力干渉パターンを第1移相器組と相反する方向に誘導する。2つの移動器組を同時に操作して2つのビームを異なる方向に誘導することができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、第1移相器及び第2移相器は、比較的高い抵抗を有する金属導線又は半導体導線であり、熱効果によって位相シフトを提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、第1移相器及び第2移相器は、PN接合を有する半導体光導波路であり、電場を印加することによって光導波路における屈折率を変化させることによって位相シフトを提供する。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記分光素子の偶数列入力の各第2光導波路を覆う移相器は、第4金属導線を介して第4電極に電気的に結合される。
【0019】
幾つかの実施形態において、同じ段内の移相器は、2つ以上の移相器組に分けることができる。
【0020】
幾つかの実施形態において、同じ段の奇数列の分光素子の第1出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第1電極及び前記第2電極にそれぞれ結合され、同じ段内部及び第3段の後の移相器は、4つの移相器組に分けることができる。同じ段の奇数列の分光素子の第1出力端を覆う移相器は、互いに接続され、且つそれぞれ第1電極及び第2電極に接続する。同じ段の奇数列の分光素子の第2出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第3電極及び第4電極にそれぞれ結合され、同じ段の偶数列の分光素子の第1出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第5電極及び第6電極にそれぞれ結合され、同じ段の偶数列の分光素子の第2出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第7電極及び第8電極にそれぞれ結合される。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記第k段の移相器の各出力端は、前記第k段の移相器の各出力端の位相を微調整する微調移相器を有する光導波路にそれぞれ結合される。
【0022】
幾つかの実施形態において、第m段の移相器の各出力端は、微調移相器を有する光導波路にそれぞれ接続され、各第m段の移相器の出力端の位相を微調整する。mの値は、1~kの間の整数であってよい。例えば、m=k-2である場合、各微調移相器は、同じ位相を微調移相器の後の第k段の4つの出力端に加えることができる。
【0023】
一般に、半導体ウェーハプロセスのほとんどは、複数層の金属導線層を提供して金属導線をインターリーブさせることができるため、2組の移相器は、それぞれ2つの異なる金属導線層を用いて接続することができる。大部分の半導体ウェーハプロセスは、金属導線の配線に用いる複数の金属導線層を提供し、トランジスタを接続し、短絡を回避することができるため、異なる移相器組内の移相器は、異なる金属導線層によって接続することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記に基づき、本発明の調整可能な光学移相器アレイは、高速ビーム走査を行うことができるとともに、制御アレイの配線を簡単化できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の調整可能な光学移相器アレイの第1実施形態の構造説明図である。
【
図2】本発明の調整可能な光学移相器アレイの第1実施形態の詳細な構造説明図である。
【
図3】本発明の調整可能な光学移相器アレイの第1実施形態の3次元構造の説明図である。
【
図4】本発明の調整可能な光学移相器アレイの第2実施形態の構造説明図である。
【
図5】本発明の調整可能な光学移相器アレイの移相器調整時の波面ステアリングの説明図である。
【
図6A】本発明の調整可能な光学移相器アレイの第3実施形態の構造説明図である。
【
図6B】本発明の調整可能な光学移相器アレイの第4実施形態の構造説明図である。
【
図7】本発明の4段の調整可能な光学移相器アレイの後段に複数組の移相器を備えた実施形態を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態の調整可能な光学移相器アレイの構造説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態の調整可能な光学移相器アレイの構造説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態の調整可能な光学移相器アレイの構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照し、
図1は、本発明の調整可能な光学移相器アレイの第1実施形態の構造説明図である。
図1の調整可能な光学移相器アレイ1は、分光素子10、分光素子11、分光素子12、第1光導波路21、第2光導波路22、第1移相器31及び第2移相器32を含む。分光素子10は、入力端101、第1出力端102及び第2出力端103を有し、分光素子11は、入力端111、第1出力端112及び第2出力端113を有し、分光素子12は、入力端121、第1出力端122及び第2出力端123を有する。第1光導波路21は、第1出力端102と入力端111との間に結合され、第2光導波路22は、第2出力端103と入力端121との間に結合される。そのうち、第1移相器31は、第1光導波路21を覆う。第2移相器32は、第2光導波路22を覆う。説明の便宜上、
図1の第1移相器31及び第2移相器32には、電極、金属導線及び加熱器を図示していない。
【0027】
図2を参照し、
図2は、本発明の調整可能な光学移相器アレイの第1実施形態の詳細な構造説明図である。
図2に示すように、調整可能な光学移相器アレイ1は、インターリーブ接続される移相器を更に含み、金属導線によって隣接する又は下方の光導波路の移動を制御する。第1移相器31は、第1金属導線311、第1電極312、第2金属導線313、第2電極314及び第1加熱器315を含む。より具体的には、第1加熱器315は、第1光導波路21を覆う。第1加熱器315の一端は、第1金属導線311を介して第1電極312に電気的に接続され、第1加熱器315の他端は、第2金属導線313を介して第2電極314に電気的に接続される。第1電極312は、正の電力が適用され、第2電極314は、負の電力が適用される。又は、第1電極312は、負の電力が適用され、第2電極314は、正の電力が適用される。第1電極312及び第2電極314は、駆動回路又は制御回路の2つの出力端に接続することができる。
【0028】
第2移相器32は、第3金属導線323、第3電極322、第4金属導線321、第4電極324及び第2加熱器325を含む。より具体的には、第2加熱器325は、第2光導波路22を覆う。第2加熱器325の一端は、第3金属導線323を介して第3電極322に電気的に接続され、第2加熱器325の他端は、第4金属導線321を介して第4電極324に電気的に接続される。同様に、第3電極322は、正の電力が適用され、第4電極324は、負の電力が適用される。又は、第3電極322は、負の電力が適用され、第4電極324は、正の電力が適用される。第3電極322及び第4電極324は、駆動回路又は制御回路の2つの出力端に接続することができる。幾つかの実施形態において、第1移相器31及び第2移相器32は、同じ電力又は異なる電力を適用することができる。
【0029】
一般に、半導体ウェーハプロセスの多くは、多層金属導線層を提供し、金属導線をインターリーブさせることができるため、2組の移相器は、2つの異なる金属導線層をそれぞれ用いて接続することができる。
図3に示すように、
図3は、本発明の調整可能な光学移相器アレイの第1実施形態の3次元構造の説明図である。第1金属導線311及び第4金属導線321は、異なる金属導線層に配置され、第2金属導線313及び第3金属導線323は、異なる金属導線層に配置され、短絡が回避される。
【0030】
前述の分光素子は、分光器(optical splitter)であり、ビームを2路の実質上のそれぞれ50%の光強度に分ける素子である。また、前述の分光素子10の入力端101は、入力光信号を受信することに用いられる(図示せず)。
【0031】
第1加熱器315の温度が上昇する場合、第1光導波路21の熱光学効果により第1光導波路21の実効屈折率が変化する。これにより、第1光導波路21の進行光は、数式:phase=2*π*(Δneff)*L/lamdaの関係に従って対応する位相遅延を発生し、ここで、phaseは、位相遅延を表し、Δneffは、熱光学効果によって引き起こされる光導波路の実効屈折率の変化を表し、Lは、加熱器の長さであり、ラムダは、光の波長である。各段(ステージ)の移相器によって形成される位相遅延は、光学移相器アレイの最終段が出力する各光導波路間に等差数列的に増加する位相差を有するように制御することができ、これらの出力が光導波路に接続されている場合にビームをウェーハ表面に屈折照射できるアレイ式周期構造は、遠方場干渉によってビームを形成し、位相遅延によってビーム角度を回転させることができる。これらの出力光導波路を光電変換素子に接続し、次にマイクロ波アンテナアレイに接続する場合、マイクロ波ビームを遠方場に形成することができ、マイクロ波ビームの角度を位相遅延によって回転させることができる。
【0032】
本発明の調整可能な光学移相器アレイは、多段分光素子及び移相器と直列に接続することができる。例えば、直列接続の段数はkであり、kは正の整数である。調整可能な光学移相器アレイ1にはn個の分光素子があり、nは1より大きい正の整数である。第1~k段の分光素子は、各段が2の乗数(例えば、2
k)で分光素子の数を増加する。各分光素子の出力端は、2つの光導波路と2つの移相器にそれぞれ接続される。また、設計の必要に応じて、第1~k段の移相器において、各分光素子の間の光導波路に必要な移相器の数を設定する。直列接続の構造は、
図4に示すとおりである。
【0033】
図4は、本発明の調整可能な光学移相器アレイの第2実施形態の構造説明図である。
図4は、本発明の調整可能な光学移相器アレイが4段で直列に接続されていることを示しているが、説明の便宜上、本実施形態は3段のみで説明する。
【0034】
各分光素子の第1出力端は、第1光導波路を介して次段の分光素子の入力端に結合され、各第1光導波路は、第1移相器31の第1加熱器で覆われている。より具体的には、分光素子11の第1出力端は、第1光導波路を介して分光素子13の入力端に結合され、第1加熱器が設置される。分光素子12の第1出力端は、第1光導波路を介して分光素子15の入力端に結合され、第1加熱器が設置される。言い換えれば、第1加熱器は、奇数列の分光素子の入力端と前段の分光素子の第1出力端との間に配置され、各段の第1加熱器は、金属導線線を介して第1電極及び第2電極に互いに直列に接続される。これにより、前記直列に接続された第1加熱器、金属導線、第1電極及び第2電極は、第1組の移相器を形成する。また、第4段又は第4段より後の分光素子と移相器は、同じロジックで順に直列に接続される。
【0035】
次段の移相器の第1加熱器の長さは、前段の移相器の第1加熱器の長さよりも短いことに留意すべきである。具体的には、第3段の移相器の第1加熱器の長さW2は、第2段の移相器の第1加熱器の長さW1よりも短い。
【0036】
第1移相器31、第2移相器32及び後続の各段の移相器は、熱抵抗移相器であり、即ち、移相器導波路に隣接して熱抵抗加熱器が設けられ、この加熱器は、抵抗値が比較的高い金属導線又は線形半導体であってよい。移相器に接続された金属導線の抵抗値が低いため、第1段の電極間の抵抗は、主に加熱器に由来し、各段の第1移相器の加熱器の全長は、ほぼ同じであるため、各段の第1移相器の抵抗値は、ほぼ同じである。同様に、各段の第1移相器と第2移相器の抵抗値もほぼ同じである。より具体的には、第1段の移相器の総抵抗値は、第2段の移相器の総抵抗値とほぼ同じである。
【0037】
図4及び
図6Aを参照し、第1段の移相器の第1加熱器415の抵抗値は、8Rであり、第2段の移相器の2組の第1加熱器515の抵抗値は、それぞれ4Rであり、抵抗値の総和は、8Rである。このロジックにより類推して、第1段の移相器の総抵抗値は8Rであり、第2段の移相器の総抵抗値は、2つの同一の抵抗値の加算(4R+4R=8R)であり、第3段の移相器は、4つの同じ抵抗値(2R)の加算(2R+2R+2R+2R=8R)である。更に第4段の移相器に直列に接続する場合、8個の同じ抵抗値(1R)が加算される(1R+1R+1R+1R+1R+1R+1R+1R=8R)。言い換えれば、各段の移相器の総抵抗値は、実質的に同じである。また、各段の移相器の全長も実質的に同じである。
【0038】
各段の加熱器抵抗の合計は、何れも同じであるため、デジタルアナログコンバータ(Ditigal to Analog,DAC)を用いて加熱器に必要な電流を出力する場合、安定した負荷でより高い温度制御精度を達成することができる。同時に、直列接続の設計により、各段の移相器に2つだけの電極を使用させ、電極の数を大幅に減少し、半導体チップの面積を節約し、製造コストを大幅に削減する。これにより、本発明は、更にパッケージに便利であるという利点を有する。回路基板の回路配線がシンプルで、回路基板のサイズが小さくなり、DACチップの使用数量も節約され、モジュールの全体的な製造コストが大幅に削減される。
【0039】
各光導波路アンテナの位相制御は、前述の各段の2倍の抵抗の金属加熱式移相器が提供する温度によって、光導波路中のビームの位相を遅延させ、位相差を制御する。金属加熱式移相器の抵抗が大きいほど、対応して加熱する光導波路の長さが長くなり、位相遅延量は、加熱光導波路の長さと比例関係を形成するため、DACによって加熱量を制御し、位相差を精確に制御することができる。
【0040】
図4の調整可能な光学移相器アレイの移相器の構成の論理説明図を参照する。
図4において、移相器は、2xy(211、221、212、222、232、241、213、223、233、243、253、263、273、283、214、224、234、244、254、264、274、284、294、2A4、2B4、2C4、2D4、2F4、2G4を含む)として標示される。ここで、yは、この段がy番目であることを表し、xは、この移相器がx番目の移相器であることを表す。例えば、移相器232は、第2段の第3移相器である。
図4の位相遅延が13φ(PhaseΔ=13φ)である調整可能な光学移相器アレイを例とし、光信号が第1移相器を経た後、その位相は8φ遅延する。その後、光信号は、第1段上配線移相器に伝播し、位相が4φ遅延する。続いて、光信号は第2段下配線移相器に伝播し、位相遅延の増加はゼロである。最後に、光信号は、第3段上配線移相器に伝播し、位相はφだけ遅延するため、合計位相遅延は、8φ+4φ+0+φ=13φになる。また、各段の移相器の全長も実質的に同じである。
【0041】
図4の位相遅延が7φ(phaseΔ=7φ)である光導波路を例とし、光信号は、分光素子10の第2出力端を経て次段の分光素子に至るまでの間に移相器がないため、光信号の位相の遅延はゼロになる。次に、分光素子12の第1出力端から次段の分光素子まで伝播する上配線には、移相器が設けられているため、位相は4φ遅れる。光信号は、次の次の段の移相器に伝播し、位相は更に2φ遅れ、次の次の次の段の移相器に伝播し、位相は更にφだけ遅れるため、合計位相遅延は、0+4φ+2φ+φ=7φである。このようにして、隣接する光導波路のビームの位相差がφであるアレイビームを生成することができ、このアレイビームの波面は、φ位相差に対応する角度方向の遠方場において強度重ね合わせビームを形成することができ、ビームステアリングの目的を達成する。
【0042】
要約すると、本発明は、分光器と次段の分光器との間の接続光導波路空間を利用して移相器アレイを配置し、熱抵抗効果を用いて光導波路を加熱する。ここで、温度が上昇すると、光導波路の熱光学効果は、光導波路の実効屈折率を変化させるため、光導波路の進行光は、数式:phase=2*π*(Δneff)*L/lambdaの関係に従って対応する位相遅延を発生し、光導波路アレイ中の隣接する光導波路ビーム間の等差数列的に増加する位相差を用いて、遠方場に位相アレイを形成し、ビームステアリングを行う。
【0043】
図5を参照し、
図5は、本発明の調整可能な光学移相器アレイの位相調整時の波面ステアリングの説明図である。
図5に示すように、本発明の第3実施形態では、熱位相調整が行われる時、ビームの波面方向は、
図5の左側のアンテナで示されるように左向きにのみ伝播することができる。従って、片側ステアリングの問題を解決するため、1組のミラーの配置を加えた加熱器組(即ち、第2移相器)で、ビームの波面方向を
図5の右側アンテナで示されるように右向きに伝播させることができる。
【0044】
図6Aを参照し、
図6Aは、本発明の調整可能な光学移相器アレイの第3実施形態の構造説明図である。
図6Aに示すように、第1段の分光素子は、2つの分光素子を含み、第2段の分光素子は、4つの分光素子を含み、第3段の分光素子は、8つの分光素子を含み、2倍ずつ増加し、第n段の分光素子は、2
n個の分光素子を含み、nは1以上の正の整数である。また、分光素子10は、第0段の分光素子と称することができる。各分光素子は、入力端と、第1出力端と、第2出力端とを有する。第1~k段の移相器は、それぞれ第1光導波路を覆い、第1組の移相器を形成し、加熱又は電気光学効果によって各第1光導波路を通過する光信号に位相シフトを発生させ、kは正の整数である。また、第1~k段までの移相器は、更に各第2光導波路をそれぞれ覆い、第2組の移相器を形成し、加熱又は電気光学効果によって各第2光導波路を通過する光信号に位相シフトを発生させる。また、第2組の移相器によって発生される位相シフトと第1組の移相器によって発生される位相シフトは、互いに異なるか、又は反対である。
【0045】
図6Bを参照し、
図6Bは、本発明の調整可能な光学移相器アレイの第4実施形態の構造説明図である。本発明の第4実施形態と第3実施形態の違いは、第k段の移相器の各出力端が微調移相器40を有する光導波路に結合され、各出力端の位相を微調整することに使用されることにある。第4実施形態では、調整可能な光学移相器アレイがビームステアリング走査を行う場合、先ず微調移相器40を用いてプロセスで生成された位相誤差を校正し、次に、第1~k段の移相器が発生する回転角度に対応した導波路間の位相差を用いてビームステアリングを行う。微調移相器40は、位相誤差を校正するだけでよいため、必要な調整位相シフト量は比較的少なく、エネルギー消費が比較的低い。
【0046】
ここで、多層金属相互接続を備えた半導体エレメントの設計を使用し、第1組の移相器を第1金属層に配置し、第2組の移相器の金属導線を第2層に配置し、電極は、パッド(pad)層に直接適用され、各層間は、ビア(via)によって相互接続されるため、2組のそれぞれ独立した加熱器を緊密に配置することができる。同時に、一方の組の加熱器が熱位相調整を行う時、他方の組の加熱器は、微調制御組とすることができ、互いに組み合わせて位相制御を最適化することができる。尚、次段の移相器の第1加熱器の長さは、前段の移相器の第1加熱器の長さよりも短い。次段の移相器の第2加熱器の長さは、前段の移相器の第2加熱器の長さよりも短い。同じ段の移相器の第1加熱器の長さと第2加熱器の長さは、ほぼ同じである。
【0047】
図7を参照し、
図7は、本発明の4段の調整可能な光学移相器アレイの後段に複数組の移相器を備えた実施形態であり、図に示す実施形態は、第3段及び第4段の移相器が4組に分けられて電極を制御するものである。第1組の移相器は、金属導線を介して第1電極及び第2電極にそれぞれ接続され、第2組の移相器は、金属導線を介して第3電極及び第4電極にそれぞれ接続され、第3組の移相器は、金属導線を介して第5電極及び第6電極にそれぞれ接続され、第4組の移相器は、金属導線を介して第7電極及び第8電極にそれぞれ接続される。より具体的には、奇数列の分光素子の第1出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第1電極及び第2電極にそれぞれ結合される。奇数列の分光素子の第2出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第3電極及び第4電極にそれぞれ結合される。偶数列の分光素子の第1出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第5電極及び第6電極にそれぞれ結合され、偶数列の分光素子の第2出力端を覆う移相器は、互いに直列に接続され、第7電極及び第8電極にそれぞれ結合される。
【0048】
同様に、第4段の移相器の各組の移相器は、それぞれ対応する電極組に接続される。これにより、各光導波路の位相は奇数列と偶数列で個別に制御され、プロセスの僅かな偏差の微調整を達成し、少ないエネルギー消費で高精度の調整可能な光学移相器アレイを実現する。
【0049】
これにより、加熱器の構成ロジックを再計画して簡単化することにより、電極の数と回路配線のチップ面積が大幅に削減され、DACの使用数も同時に節約され、チップの複雑性及びチップ面積が低減される。実際に製造されたオリジナルのチップは、この特許が完全に実現可能な設計であり、高度な実用的価値を有することを証明することができる。
【0050】
ここで、ライダー技術は、モバイルビームを使用して環境に対して照射を行い、ビームエコーを取得し、高解像度の3次元画像を迅速に収集し、統合されたシリコンフォトニックコンポーネントの開発により、Lidarがフェーズドアレイによりビームステアリングを行う技術は、シリコン半導体プロセスで実現することがより容易になっている。ビーム方向の制御の重要な要素は、調整可能な光学移相器アレイの移相器であり、ビーム走査の角度分解能、角度範囲及び速度を決定するものであり、Lidarシステムの性能において重要な役割を担うものである。
【0051】
移相器の設計の難しさは、各アンテナ光導波路の位相を個別に制御する必要があることであり、その制御の複雑さは、位相制御光導波路の数に比例し、カスケード配置により、素子の数を減らすことができるが、ダイレクトカプラを使用して分光し、各アンテナ光導波路の光路差を精確に平衡させる必要があり、このように、光路設計の難しさと半導体プロセス技術の要求を大幅に増加させる。本発明の調整可能な光学移相器アレイの設計は、2倍ずつ増加する加熱器を調整可能な光学移相器アレイ制御として用い、過度に密集した加熱器の互いの熱干渉が制御精度に影響を及ぼすことを回避し、2倍ずつ増加する抵抗の直列の組み合わせを使用し、各組の制御ユニットの抵抗をほぼ等しくさせ、DACが良好な制御精度を維持できるように確保する。
【0052】
また、ウェーハ製造工場が一定の範囲内でプロセス偏差を制御できる場合、プロセス偏差によって引き起こされる小さな位相差を補正するためには、微調整制御加熱器を追加することによって極めて低いエネルギー消費で光の位相を微調整することができる。粗調整と微調整の2つのメカニズムを組み合わせることで、設計の複雑さと精確な制御の良好なバランスを取得している。
【0053】
本発明のアーキテクチャは、標準のCMOS半導体プロセス設計を用いて光学移相器アレイを実現することができ、加熱器の材質は、プロセス内の任意の金属接続層を加熱素子として使用することができるが、全体的な抵抗を考慮する必要があり、導線及び加熱器の線幅を精確に調整し、抵抗の比値に明確な差異を持たせる必要がある。
【0054】
本発明の一目的は、粗調整と微調整を組み合わせた光学移相器アレイを提供し、粗調整光学移相器アレイ組が2倍の倍率で熱エネルギーを提供し、各チャネル導波路の光の位相遅延シーケンスを調整し、高速ビーム走査を行い、更に最終段に追加した微調移相器によってプロセスが引き起こした位相誤差を補正することにある。本発明の光学移相器アレイは、高速ビーム走査を行うことができるとともに、制御アレイの配線を簡単化できるという利点を有する。また、微調光学移相器アレイ組によって、プロセスの僅かな誤差の微調整を補助し、少ないエネルギー消費で高精度の光学移相器アレイを実現することができる。
【0055】
また、本発明の粗調整と微調整の2組の光学移相器アレイの組み合わせによれば、粗調整の光学移相器アレイ組が2倍の倍率で加熱器の熱エネルギーを提供し、熱光学効果を用いて各チャネル導波路内の光の位相遅延シーケンスを調整し、微調光学移相器アレイ組が導波路のプロセス誤差及び温度分布の不均一による軽微な位相偏移を補正する。これら2種の光学移相器アレイを組み合わせることで、本発明の調整可能な光学移相器アレイは、良好な調整性能を維持しながら、制御電極の数を大幅に減らし、優れたデジタルアナログ変換精度を維持することができる。精確な制御が必要な場合は、微調整制御加熱器を追加することで極めて少ないエネルギー消費で光位相を精確に制御することができる。
【0056】
図8は、本発明の一実施形態の調整可能な移相器アレイの構造説明図である。図に示すように、光学移相器アレイの最終段は、互いに接続された別途の微調移相器を有し、複数の微調移相器組を形成する。本実施形態では、これらの別途の微調移相器は、第1PEC電極、第2PEC電極、第3PEC電極、第4PEC電極、第5PEC電極、第6PEC電極、第7PEC電極及び第8PEC電極を含む。
【0057】
図9は、本発明の一実施形態の調製可能な移相器アレイの構造説明図である。図に示すように、光学移相器アレイの中間段には、別途の微調移相器f1(△φ1)、f2(△φ2)、f3(△φ3)、f4(△φ4)を有する。
【0058】
図10は、本発明の一実施形態の調製可能な移相器アレイの構造説明図である。図に示すように、調製可能な移相器アレイの第1~k段の移相器は、2つのクラスタ、第1クラスタS1及び第2クラスタS2に分けることができる。第1クラスタS1は、第1~k段における1つ又は複数の段を含むことができる。第1クラスタS1は、中間段の前の第1クラスタS1が含む段の位相シフトを提供する。本実施形態において、第1クラスタS1は、2段の分光素子及び1段の移相器を含む。別の実施形態では、第1クラスタS1は、2段よりも多い分光素子及び移相器を含むことができる。上記のように、光学移相器アレイの中間段は、複数の微調移相器f1、f2、f3、f4を含む。別の実施形態では、第1クラスタS1は、2つ以上の段を含むことができる。第2クラスタS2は、第1~k段の他の段を含むことができる。第2クラスタS2は、中間段の後の第2クラスタS2が含む段の位相シフトを提供する。本実施形態では、第2クラスタS2は、2段の分光素子及び1段の移相器を含む。別の実施形態では、第2クラスタS2は、2段よりも多い分光素子及び移相器を含むことができる。
【0059】
要約すると、本発明の調整可能な光学移相器アレイによれば、粗調整と微調整の2組の光学移相器アレイを組み合わせ、粗調整光学移相器アレイ組が2倍の倍率で熱エネルギーを提供し、各チャネル導波路内の光の位相遅延シーケンスを調整し、熱移相器の数量を低減し、熱集中クロストークを回避し、電極の占有面積を節約することができる。また、微調光学移相器アレイ組が、プロセスの微小な偏差の微調整を補助することができ、エネルギー消費が少ないため、緊密に配置しても熱が集中して、熱クロストークを発生することがなく、2つの補完的な設計を組み合わせ、光学移相器アレイの高精度な制御を実現する。
【0060】
本開示は、従来の技術を突破することにより、確かに望ましい増強効果を達成しており、当業者にとって容易に想到し得るものではなく、その進歩性及び実用性は、特許出願要件を満たすことが分かるため、法に従って特許出願を提出する。
【0061】
上記の説明は、単なる例示であり、これに限定するものではない。本開示の精神及び範囲から逸脱しない他の均等の修正又は変更は、何れも後述の特許出願の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 調整可能な光学移相器アレイ
10 分光素子
11 分光素子
12 分光素子
13 分光素子
15 分光素子
101 入力端
111 入力端
121 入力端
102 第1出力端
112 第1出力端
122 第1出力端
103 第2出力端
113 第2出力端
123 第2出力端
21 第1光導波路
22 第2光導波路
31 第1移相器
311 第1金属導線
312 第1電極
313 第2金属導線
314 第2電極
315 第1加熱器
415 第1加熱器
515 第1加熱器
32 第2移相器
321 第4金属導線
322 第3電極
323 第3金属導線
324 第4電極
325 第2加熱器
211 移相器
221 移相器
212 移相器
222 移相器
232 移相器
241 移相器
213 移相器
223 移相器
233 移相器
243 移相器
253 移相器
263 移相器
273 移相器
283 移相器
214 移相器
224 移相器
234 移相器
244 移相器
254 移相器
264 移相器
274 移相器
284 移相器
294 移相器
2A4 移相器
2B4 移相器
2C4 移相器
2D4 移相器
2F4 移相器
2G4 移相器
40 微調移相器
f1 微調移相器
f2 微調移相器
f3 微調移相器
f4 微調移相器
W1 加熱器の長さ
W2 加熱器の長さ
S1 第1クラスタ
S2 第2クラスタ
【外国語明細書】