(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122291
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20220815BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220815BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220815BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/01 305
B41J2/01 109
B05C11/10
B05C9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019021
(22)【出願日】2022-02-09
(62)【分割の表示】P 2021019401の分割
【原出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一義
【テーマコード(参考)】
2C056
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC34
2C056FA09
2C056HA29
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA34
4F042AA03
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042DB41
4F042DB52
4F042DF01
4F042DF32
(57)【要約】
【課題】柱状部材の外周面に対して高速かつ高画質に画像を記録することができる、画像記録装置を提供する。
【解決手段】所定方向に間隔Sで配列されたN(≧3)個の記録素子を備えるインクジェット記録ヘッドと、柱状部材を回転させる回転部材と、柱状部材の外周面にQ個の記録素子を用いて所定方向の記録密度がS/P(P≧3)の画像を記録する記録手段と、複数の異なるPから一つのPを設定する設定手段とを有し、Q個の記録素子をP個の記録部に区分し柱状部材1回転ごとに記録部を順番に用い記録動作を行い、隣接する記録素子による一方のドットと他方のドットとの間の領域に(P-1)個のドットを形成し、Pの値のいずれでも(P-1)個のドットは1回転ごとに且つ一方のドットに近い順番に形成され、P、Q及びLは、PがQの因数とはならず、L=(S/P)×Q かつm<Q/P≦(m+1/2)の関係を有することを特徴とする画像記録装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に間隔Sで連続して配列されたN(N≧3)個の記録素子を備えるインクジェット記録ヘッドと、
前記所定方向に延びる回転軸を中心にして柱状部材を回転させる回転部材と、
前記回転部材により回転する前記柱状部材に対して前記記録ヘッドを前記所定方向に相対的に移動させながら、前記柱状部材の外周面に前記記録ヘッドのN個の記録素子のうちの連続するQ個の記録素子を用いて前記所定方向の記録密度がS/P(P≧3)の画像を記録する記録手段と、
複数の異なるPの値の中の一つのPの値を設定する設定手段と、
を有し、
前記記録手段は前記柱状部材が1回転する間に前記記録ヘッドを前記柱状部材に対して相対的に距離L移動させるものであり、
更に、前記記録手段は複数の異なる記録密度S/P(P≧3)で画像を記録することが可能であって、前記Q個の記録素子を、前記設定手段により設定されたPの値に応じてP個の記録部に区分し、前記柱状部材の外周面の所定領域に対して、前記柱状部材の1回転ごとに前記P個の記録部の各々を順番に用いて記録動作を行って、前記記録ヘッドに配列された隣接する前記記録素子の各々により形成される一方のドットと他方のドットとの間の領域に(P-1)個のドットを形成することにより、前記所定領域に前記所定方向の記録密度がS/P(P≧3)の画像を記録し、前記設定手段により前記複数の異なるPの値のいずれが設定された場合であっても、前記(P-1)個のドットは、前記柱状部材の1回転ごとに且つ前記一方のドットに近い順番に形成されるものであり、
前記P、前記Q及び前記Lは、
前記Pが前記Qの因数とはならない関係であり、
L=(S/P)×Q かつ
m<Q/P≦(m+1/2)
の関係を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記自然数mは、
Q=P×m+1≦Nかつ
m×S<L≦(m+1/2)×S
を充足する最大の値であることを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記回転部材の回転速度を変更することにより、前記記録手段によって前記柱状部材の外周面に記録される前記画像の回転方向の記録密度を変更することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドの駆動周波数を変更することにより、前記記録手段によって前記柱状部材の外周面に記録される前記画像の回転方向の記録密度を変更することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドが、N個の前記記録素子の集合である記録素子群を複数有し、複数の前記記録素子群の各々が異なるインクを吐出することができる多色記録ヘッドであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドが、前記所定の方向へ所定の間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドが、前記所定の方向と略直交する方向へ所定の間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記Pを変更する手段を有することを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は、前記回転部材により回転する前記柱状部材に対して前記記録ヘッドを前記所定方向の上流から下流に相対的に移動させながら、前記柱状部材の外周面に画像を記録する動作と、前記回転部材により回転する前記柱状部材に対して前記記録ヘッドを前記所定方向の下流から上流に相対的に移動させながら、前記柱状部材の外周面に画像を記録する動作とを、各々交互に繰り返すことを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記画像記録装置に入力された画像データを、前記記録手段による、各回転で実施される前記画像の記録に適用されるよう変形する手段を有することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記記録ヘッドと前記柱状部材に対向する位置にさらに活性光線を照射する活性光線照射部材を有し、前記柱状部材の外周面に前記記録素子を用いて記録された画像が前記回転部材による前記柱状部材の回転により前記活性光線照射部材に対向する位置に到達したときに前記活性光線を照射することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に曲面を有する缶、瓶、ボトル等の円筒物や、杖、竿、スティック、バー、ロッド、ポール、パイプ等の軸方向の長さが長い棒状部材を含む、柱状部材の外周面に対して画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱状部材の一つである円筒物に対して印刷を行うインクジェット印刷装置が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-527387号公報
【特許文献2】特開2019-123960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された柱状部材に印刷するインクジェット画像記録装置の場合、インクジェットヘッドと柱状部材との、柱状部材の回転中心となる回転軸方向に関して、位置を相対的に固定させた状態で、柱状部材をその回転軸を中心に回転させながらインクジェットヘッドからインクを吐出し、柱状部材の外周面にインクを着弾させてインクドットを形成し、画像記録を行う方式をとる。この方式では、柱状部材の外周面の前記回転軸方向全体の印刷領域にわたっての印刷が完了していない場合、インクジェットヘッドと柱状部材との前記回転軸方向の位置を相対的に移動させる動作を行ったうえで、印刷の完了していない領域に対してさらに前記の印刷動作と、前記の移動動作を繰り返すことになる(例えば、特許文献1段落[0010]等参照)。
【0005】
このように、インクジェットヘッドと柱状部材との回転軸方向の位置を固定させた状態で柱状部材を回転させて印刷する方法をとる場合、インクジェットヘッドを回転軸方向に移動させ次の印刷領域上にインクジェットヘッドが到達したときに停止させるという動作を複数回繰り返す必要があり、印刷時間の増大を招くという問題があった。これは柱状部材の回転軸方向の長さが長く、印刷すべき領域が多い場合にはより顕著に発生することになる。
【0006】
そこで、インクジェットヘッドの回転軸方向への移動動作と、柱状部材をその回転軸を中心として回転させる動作と、インクジェットヘッドからインクを吐出させる印刷動作とを一度に行い、もって柱状部材の外周面にらせん状に画像記録を行い、所定の画像を形成させる方式(以下、「ヘリカル方式」と称する。)が提案されている(特許文献2参照)。この方式をとることで、インクジェットヘッドを回転軸方向に移動させ次の印刷領域上にインクジェットヘッドが到達したときに停止させるという動作をすることなく、柱状部材の外周面に対して、回転軸方向の一方端部から他方端部まで画像を記録することができるため、印刷時間を大幅に短縮することができる。
【0007】
ところで、一般的なインクジェットヘッドには、インクを吐出するためのノズルの配置間隔に制約があることから、一回のインクドット形成により実現できる画像の記録密度(印刷解像度)に制限がある。近年、インクジェット印刷においては印刷解像度の向上による印刷画像の高画質化が望まれており、ヘリカル印刷においても、印刷解像度の向上による印刷画像の高画質化が重要となる。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決し、柱状部材の外周面に対して高速かつ高画質に画像を記録することができる、画像記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の発明者は、鋭意工夫の結果、以下の構成を見出した。
【0010】
すなわち、本発明における画像記録装置では、所定方向に間隔Sで連続して配列されたN(N≧3)個の記録素子を備えるインクジェット記録ヘッドと、
前記所定方向に延びる回転軸を中心にして柱状部材を回転させる回転部材と、
前記回転部材により回転する前記柱状部材に対して前記記録ヘッドを前記所定方向に相対的に移動させながら、前記柱状部材の外周面に前記記録ヘッドのN個の記録素子のうちの連続するQ個の記録素子を用いて前記所定方向の記録密度がS/P(P≧3)の画像を記録する記録手段と、
複数の異なるPの値の中の一つのPの値を設定する設定手段と、
を有し、
前記記録手段は前記柱状部材が1回転する間に前記記録ヘッドを前記柱状部材に対して相対的に距離L移動させるものであり、
更に、前記記録手段は複数の異なる記録密度S/P(P≧3)で画像を記録することが可能であって、前記Q個の記録素子を、前記設定手段により設定されたPの値に応じてP個の記録部に区分し、前記柱状部材の外周面の所定領域に対して、前記柱状部材の1回転ごとに前記P個の記録部の各々を順番に用いて記録動作を行って、前記記録ヘッドに配列された隣接する前記記録素子の各々により形成される一方のドットと他方のドットとの間の領域に(P-1)個のドットを形成することにより、前記所定領域に前記所定方向の記録密度がS/P(P≧3)の画像を記録し、前記設定手段により前記複数の異なるPの値のいずれが設定された場合であっても、前記(P-1)個のドットは、前記柱状部材の1回転ごとに且つ前記一方のドットに近い順番に形成されるものであり、
前記P、前記Q及び前記Lは、
前記Pが前記Qの因数とはならない関係であり、
L=(S/P)×Q かつ
m<Q/P≦(m+1/2)
の関係を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明における画像記録装置では、
前記自然数mは、
Q=P×m+1≦Nかつ
m×S<L≦(m+1/2)×S
を充足する最大の値であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明における画像記録装置では、
前記回転部材の回転速度を変更することにより、前記記録手段によって前記柱状部材の外周面に記録される前記画像の回転方向の記録密度を変更することを特徴とする。
【0013】
また、本発明における画像記録装置では、
前記記録手段の駆動周波数を変更することにより、前記記録手段によって前記柱状部材の外周面に記録される前記画像の回転方向の記録密度を変更することを特徴とする。
【0014】
また、本発明における画像記録装置では、
前記記録ヘッドが、N個の前記記録素子の集合である記録素子群を複数有し、複数の前記記録素子群の各々が異なるインクを吐出することができる多色記録ヘッドであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明における画像記録装置では、
前記記録ヘッドが、前記所定の方向へ所定の間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明における画像記録装置では、
前記記録ヘッドが、前記所定の方向と略直交する方向へ所定の間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明における画像記録装置では、
前記Pを変更する手段を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明における画像記録装置では、
前記記録手段は、前記回転部材により回転する前記柱状部材に対して前記記録ヘッドを前記所定方向の上流から下流に相対的に移動させながら、前記柱状部材の外周面に画像を記録する動作と、前記回転部材により回転する前記柱状部材に対して前記記録ヘッドを前記所定方向の下流から上流に相対的に移動させながら、前記柱状部材の外周面に画像を記録する動作とを、各々交互に繰り返すことを特徴とする。
【0019】
また、本発明における画像記録装置では、
前記画像記録装置に入力された画像データを、前記記録手段による、各回転で実施される前記画像の記録に適用されるよう変形する手段を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明における画像記録装置では、前記記録ヘッドと前記柱状部材に対向する位置にさらに活性光線を照射する活性光線照射部材を有し、前記柱状部材の外周面に前記記録素子を用いて記録された画像が前記回転部材による前記柱状部材の回転により前記活性光線照射部材に対向する位置に到達したときに前記活性光線を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記の構成とすることで、上記課題を解決し、柱状部材の外周面に対して、複数の記録素子の配列間隔に基づく記録解像度よりも高い記録密度の画像記録を高速で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の概略斜視図である。
【
図2】本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の概略正面図である。
【
図3】シングルパス方式によるヘリカル印刷回転とインクジェットヘッドの相対移動と、画像形成状況の関係を、円筒物の展開図を用いて説明した合成図である。
【
図4】シングルパス方式によるヘリカル印刷動作を実施する場合適用される画像データの模式図である。
【
図5】シングルパス方式によるヘリカル印刷動作における、円筒物の1回転あたりのインクジェットヘッドの相対移動量について説明する模式図である。
【
図6】円筒物の回転ごとの直線移動とインクジェットヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図7】ノズル数N=6のインクジェットヘッドを用いて、シングルパス方式による印刷を行った場合の、インクドットの配置関係と、当該インクドット各々を形成するノズルとの対応関係を示す模式図である。
【
図8】本実施形態に係るシングルパス方式(1パス)からマルチパス方式(5パスまで)の円筒物の軸方向におけるインクドットの形成状況と形成されたインクドット各々の配置間隔をまとめた模式図である。
【
図9】インクジェットヘッドのノズルのうち4ノズルを使い2パス印刷にて同じラスターを2回繰り返して印刷した例を示す模式図である。
【
図10】2パスのヘリカル印刷における円筒物の回転とインクジェットヘッドの相対移動と画像記録状況の関係を、円筒物の展開図を用いて説明した模式図である。
【
図11】2パスによるマルチパス方式によるヘリカル印刷動作を実施する場合に、インクジェット印刷装置に適用される画像データの模式図である。
【
図12】2パスでのマルチパス方式によるヘリカル印刷動作における、円筒物の1回転つきインクジェットヘッドが円筒物の軸方向の方向へどの程度相対的に移動するかについて説明する模式図である。
【
図13】ノズル数N=5となるノズル番号1から5までのノズルを有するインクジェットヘッドを用い2パスでのマルチパス方式によるヘリカル印刷を実施した際の円筒物外周面におけるインクドットの形成状況を説明する模式図である。
【
図14】ノズル数N=7のインクジェットヘッド4を使い3パスでのマルチパス方式によってヘリカル印刷した場合の円筒物外周面におけるインクドットの形成状況を説明する模式図である。
【
図15】一つのインクジェットヘッドに4色のインクを搭載して吐出できる4色仕様の多色インクジェットヘッドのノズル面の模式図である。
【
図16】回転方向の印刷解像度を2倍に上げてシングルパス(1パス)印刷を実施した場合のインクドット構成を示す模式図である。
【
図17】本実施形態におけるマルチパス方式による回転軸の方向への印刷解像度と、上記の方向による回転方向への印刷解像度とを2倍にした場合のインクドット構成を示す模式図である。
【
図18】本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の構成例を示す概要図である。
【
図19】本実施形態におけるヘリカル印刷動作の概要フローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図1及び
図2は本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の基本構成を示す概略図である。
【0025】
図1は本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の概略斜視図である。本実施形態におけるインクジェット印刷装置においては、被記録媒体となる柱状部材である円筒物1の上部に、インクを吐出するための複数のノズルが配列されているノズル面を有するインクジェットヘッド4が、後述のノズル列方向と円筒物1の回転軸2を通過する方向である軸方向3の方向とが沿うように、かつノズル面と円筒物1の外周面とを対向させて所定の距離をあけて配置されている。
【0026】
本実施形態において適用される柱状部材としては、例えば、缶、瓶、ボトル等の円筒物や、杖、竿、スティック、バー、ロッド、ポール、パイプ等の軸方向の長さが長い棒状部材、テーパーを有するカップ、食器等の円錐形の部材、その他外周面に曲面を有したこれらに類する部材を広く含む。以下、柱状部材に関しては説明の便宜のために円筒物1を用いて説明を行うが、本発明に適用可能な柱状部材は円筒物に限られないことを確認する。
【0027】
インクジェットヘッド4のノズル面と円筒物1の外周面との距離は、最も近接する部分の距離が短いほど、吐出されたインクが円筒物1の外周面に着弾するまでの間に受ける空気抵抗などの影響による着弾位置のずれが少なくなるため、画質が良好になる傾向があり、着弾位置の円筒物1の外周面の形状にもよるが、一般的には1mmから3mm程度とすることが好ましい。また、円筒物1は、回転軸2を中心として、矢印で示す回転方向6の方向に回転させることができるように、図示しない回転モーター等の回転機構を有する保持ユニットにより保持されている。
【0028】
インクジェットヘッド4は、インクを吐出するための複数(N個)のノズル各々が所定のノズル間隔Sをあけて所定のノズル列方向に配列されたノズル面を有する。本実施形態においては、所定のノズル列方向は円筒物1の軸方向3と略平行である。インクジェットヘッド4のノズル配列設計によって実現されるノズル列方向の記録密度(印刷解像度)は、ノズル間隔Sにより決定される。本実施形態においては、このようなインクジェットヘッド4のノズル配列設計による解像度を、ノズル解像度と称する。また、ノズル面のN個のノズルが配置された領域のノズル列方向に関する幅をノズル幅と称する。
【0029】
カラー画像を記録するインクジェット印刷装置には、通常は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色分のインクを吐出するためのインクジェットヘッド4が搭載される。また、必要に応じて、要求される画像形成に必要とされるホワイト(W)、クリア(CL)等の特色インクを吐出するためのインクジェットヘッド4をさらに搭載することもできるし、複数色を必要としない場合は省略することもできる。さらに、インクジェットヘッド4としては、1個のインクジェットヘッド4で1色のインクを吐出できるものを用いてもよく、後述する1個のインクジェットヘッド4で2色以上の異なる種類のインクを吐出できるもの(多色インク対応ヘッド)を用いることも可能である。
【0030】
複数のインクジェットヘッド4を搭載する場合には、装置構成に応じて、ノズル列方向に複数配置してもよく、ノズル列方向と略直交する方向に複数配置してもよく、ノズル列方向とノズル列方向と直交する方向とに複数配置してもよい。なお、
図1では、説明の便宜のため、インクジェットヘッド4が1つ配置されている例を示している。
【0031】
インクジェットヘッド4から吐出されるインクには、活性光線硬化型インク、ソルベントインク、水性インク、油性インク等、被記録媒体の性質などに対応した適宜のものを選択できる。本実施形態においては、活性光線硬化型インクの中でも紫外線硬化型インクを用いている。
【0032】
また、本実施形態のように活性光線硬化型インクを用いる場合には、円筒物1の外周面に着弾したインクを硬化させるための活性光線照射装置を、インクジェット印刷装置に搭載する必要がある。活性光線照射装置としては、紫外線照射装置、電子線装置など、用いる活性光線硬化型インクの性質に応じて適宜のものを選択できる。本実施形態では、活性光線照射装置として、円筒物1の下部に、紫外線を照射する照射面105を有するUV照射ユニット5が、照射面105と円筒物1の外周面とを対向させて、所定の距離をあけて配置されている。UV照射ユニット5に用いるランプは、水銀、メタルハライド、LED等、適宜の形式のものを選択できる。本実施形態では小型化と取扱い容易性のため、LEDを採用している。
【0033】
UV照射ユニット5の配置位置は上記に限られるものではなく、装置構成に応じて適宜選択しうるが、本実施形態のように配置することで、インクジェットヘッド4から吐出されて円筒物1の外周面に着弾したインクが、円筒物1の回転軸2を中心とした回転により、UV照射ユニット5の照射面と対向する位置に到達した時点で、照射面から照射される紫外線の照射を受けて、インクの着弾後即座に硬化させることができる。
【0034】
なお、
図2は本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の概略正面図である。インクジェットヘッド4のノズル面及びUV照射ユニット5の照射面各々と円筒物1の外周面との距離は、円筒物1の回転、円筒物1の軸方向3の方向への相対移動があっても基本的に一定である。
図2から分かるようにインクジェットヘッド4のノズル列方向と略直交する方向に関しては、インクジェットヘッド4のノズル面の中央部と端部とでは、円筒物1の外周面とノズル面との距離が異なるので、複数のノズル列がこの直交方向に配置されている場合は、インクジェットヘッド4のノズル面のノズル配列と円筒物1の直径等を考慮してインクジェット印刷装置を設計することが好適となる。
【0035】
また、インクジェットヘッド4のノズル面と、UV照射装置5の照射面105とが対向し、かつ、円筒物1の外周面にノズル面及び照射面105の各々が対向するように配置されている。このような配置によりUV照射装置5の照射面から照射された紫外線が、インクジェットヘッド4のノズル面に付着したインクに対して照射されることを防ぎ、ノズル面に付着したインクが硬化してインクジェットヘッド4を破損することを防止することができる。
【0036】
そして、本実施形態におけるインクジェット印刷装置の印刷動作としては、インクジェットヘッド4の軸方向3の方向への相対移動動作と、円筒物1をその回転軸を中心として回転方向6の方向へ回転させる動作と、インクジェットヘッド4からインクを吐出させる印刷動作とを同時に行い、円筒物1の外周面にらせん状に画像記録を行うことで、所定の画像を形成するヘリカル方式による印刷動作が実施される。
【0037】
より詳細には、円筒物1をその回転軸2を中心として、回転方向6の方向に回転させるとともに、円筒物1を、回転軸2の軸方向3の方向へ移動させてインクジェットヘッド4と円筒物1とを軸方向3の方向に相対移動させながら、インクジェットヘッド4からインクを吐出し円筒物1の外周面に着弾させて、印刷を実施する。装置構成によっては、インクジェットヘッド4を軸方向3の方向に移動させることでインクジェットヘッド4と円筒物1とを軸方向3の方向に相対移動させてもよい。
【0038】
さらに、インクジェットヘッド4とUV照射ユニット5との、軸方向3の方向における相対的な位置関係は、上記のようにインクが円筒物1の外周面に着弾した後即座に硬化させるために、軸方向3の方向における紫外線の照射領域が、インクジェットヘッド4によるインクの軸方向3の方向におけるインク着弾可能領域を含む位置関係であることが必要である。そこで、インクジェットヘッド4を軸方向3の方向に移動させる方式をとる場合は、UV照射ユニット5も同様に、インクジェットヘッド4との軸方向3の方向における相対的な位置関係を一定に保つよう移動させることが好適となる。
【0039】
次に、本実施形態において実施されるヘリカル印刷の基本的動作の概要について説明する。ヘリカル印刷は、シングルパス方式またはマルチパス方式のいずれの方式によっても実施しうる。本実施形態のインクジェット印刷装置は、シングルパス方式及びマルチパス方式の両方でヘリカル印刷を行うことが可能である。まず、前提となるシングルパス方式による印刷の例を用いて説明する。
【0040】
まず、シングルパス方式とは、インクジェットヘッド4の印刷解像度に基づく円筒物1の外周面の単位印刷領域に対して、円筒物1の1回の回転動作中においてインクジェットヘッド4のノズルからインクを吐出して1回のインクドット形成動作を行う記録方式をいう。
【0041】
本実施形態のインクジェット印刷装置によってシングルパス方式を実施する場合の印刷動作においては、円筒物1が回転軸2を中心に回転方向6の方向に1回転する間にインクジェットヘッド4のノズル幅分だけ軸方向3の方向に移動させながら、インクジェットヘッド4のノズルからインクを吐出し円筒物1の外周面に印刷を行う。シングルパス方式では前述の通り、その軸方向3の方向に関して、1回のインクドット形成で単位印刷領域の印刷を完了させるため、円筒物1の外周面の軸方向3の方向の印刷解像度は、1回のインクドット形成で実現可能な印刷解像度であるインクジェットヘッド4のノズル解像度と等しくなる。
【0042】
図3及び
図4は上記のようなシングルパス印刷でのヘリカル印刷動作による印刷状況及び適用される画像データを模式的に示す図である。
【0043】
図3は、シングルパス方式によるヘリカル印刷回転とインクジェットヘッドの相対移動と、画像形成状況の関係を、円筒物1の展開図を用いて説明した合成図である。
図3において、円筒物1外周を平面図に展開した展開図に対して、円筒物1の回転ごとに、どのように印刷が実施されるかを示している。なお、
図3以降の説明では、印刷中は円筒物1を軸方向3の方向に移動させてインクジェットヘッド4と円筒物1を相対移動させる例をもって説明するが、インクジェットヘッド4を軸方向3の上流方向に移動させてインクジェットヘッド4と円筒物1を相対移動させてもよいことは前述の通りとなり、以下同様である。
【0044】
また、二点鎖線にて示す印刷開始位置8はインクジェットヘッド4と円筒物1との印刷開始時点の相対的位置を模式的に示すものである。また、円筒物1の外周面上に示された一点鎖線の斜線で囲まれた斜めの帯状の領域である領域301から領域305は、回転ごとに印刷される印刷領域を示す。また、#1はインクジェットヘッド4のノズル幅の長さを示す。
【0045】
図3の例では、円筒物1を軸方向3の方向に移動させながら、円筒物1を回転方向6の方向に回転させ、1回転目で領域301に対し、2回転目で領域302に対し、順次印刷が実施され、5回転目で領域305に対し印刷し、円筒物1の軸方向3の方向の一方端部から他方端部までの印刷が完了する事が分かる。
【0046】
また、
図4は、
図3で説明したシングルパス方式によるヘリカル印刷動作を実施する場合適用される画像データの模式図である。
図4に示される画像データ400はデータ領域401からデータ領域405を含んでおり、外部点線が全サイズとなる。
図3で説明したように円筒物1の回転方向6の方向への回転と軸方向3の方向への移動とを、印刷動作と同時に行うため、円筒物1の外周面に記録される印刷画像は、軸方向3の方向の下流から上流に、かつ、円筒物1が軸方向3の方向の上流からみて左から右へ形成される。円筒物1の展開図では斜線状に、円筒物1を展開しない状態であればらせん状に画像形成されることになる。
【0047】
そこで、このように画像形成するためには、
図4で示すように、印刷画像を軸方向3の方向と直交する方向へ反転させた画像データを作成すれば、円筒物1の外周面上に形成される印刷画像は意図した通りとなる。当然ながら、画像データは領域301から領域305に対応する5回転分必要となり、ここでは、データ領域401からデータ領域405までが領域301から領域305までに順次対応する。また、
図3と同様に#1はインクジェットヘッド4が使用するノズル幅分の長さに対応する。画像データのサイズは、
図4の画像データ400の外部点線に示すように円筒物1の軸方向3の方向における長さより若干縦長のサイズになる。
【0048】
図5は、シングルパス方式によるヘリカル印刷動作における、円筒物の1回転あたりのインクジェットヘッドの相対移動量について説明する模式図である。
図5においては、インクジェットヘッド4のノズル数をNとしてノズル間隔をSとする。また、
図5においては説明の便宜のため、インクジェットヘッド4は、ノズルがaからfまで6個あるN=6の例を用いている。さらに、1、2、3、4と続く連番は印刷開始位置から数えた円筒物上に形成されるインクドットの順番を示している。
図5の例では、上記の通り、インクジェットヘッド4のノズル面は、ノズル数N=6ノズルを有しており、シングルパス方式においては、インクジェットヘッド4は、上記の通り、1回転でN=6のすべてのノズルを使い、ノズル幅の(N-1)×S分の幅に対してインクドット形成を行い、印刷を実施し、軸方向3の方向の上流方向へ移動して隣接する次の単位領域の印刷を実施するので、1回転で距離L=N×Sだけ軸方向3の方向の下流から上流に直線移動することになる。よってノズルaは円筒物1の1回転目開始時にはインクドット1の位置にありインクドット1を形成し、1回転目終了後にはノズルaはインクドット7の位置に移動し、2回転目でインクドット7を形成し、2回転終了後にはノズル番号aはインクドット13の位置に移動し、3回転目ではインクドット13を形成する事になる。同様に、ノズルbは円筒物1の1回転目開始時にはインクドット2の位置にありインクドット2を形成し、1回転目終了後にはノズルbはインクドット8の位置に移動し、2回転目でインクドット8を形成し、2回転終了後にはノズルbはインクドット14の位置に移動し、3回転目ではインクドット14を形成する事になる。ノズルcからノズルfも同様に移動することになる。
【0049】
図6は円筒物1の回転ごとの直線移動とインクジェットヘッドとの位置関係を示す模式図である。なお、
図6は、円筒物1の外周面を平面図に展開した状態で表している。1回転目開始時のインクジェットヘッド4の円筒物1に対する配置位置は相対位置11にあり、1回転目が終了し2回転目開始時にはインクジェットヘッド4は軸方向3の下流から上流の方向に相対移動した相対位置12にある。同様に3、4、5回転目開始時の相対位置13、14、15が図示されている。
図6に示す通り、円筒物1の軸方向3の方向に対するインクジェットヘッド4の相対位置は、1回転するごとに移動量L=N×Sだけ軸方向3の下流から上流の方向に相対移動することで、相対位置12は相対位置11と、相対位置13は相対位置12と、相対位置14は相対位置13と、相対位置15は相対位置14と、各々隣接するように、軸方向3の下流から上流の方向に直線移動していることがわかる。
【0050】
図7はノズル数N=6のインクジェットヘッドを用いて、シングルパス方式による印刷を行った場合の、インクドットの配置関係と、当該インクドット各々を形成するノズルとの対応関係を示す模式図である。図示されるインクジェットヘッド4は軸方向3の下流方向から順にノズル間間隔Sをあけて、1番ノズル、2番ノズル、と続き、6番ノズルまでノズル幅分配置されている。また、左端の1-2は1回転目に2番ノズルで形成されるインクドットの列を示し、3-6は3回転目に6番ノズルで形成されるインクドットの列を示す。また上部のa、b、c、d、e、fは円筒物1の回転方向のドット印刷位置を示す。1番ノズルに着目すると1回転目では1-1&a、1-1&b、1-1&c、1-1&d、1-1&e、1-1&fとインクドットが形成され、2回転目では2-1&a、2-1&b・・・とインクドットが形成されていく。
図7から分かるように、また上記の通り、シングルパス方式の場合、円筒物1の外周面に形成される印刷画像の軸方向3の方向の解像度は、インクジェットヘッド4のノズル間隔Sによって固定される。たとえば、ノズル解像度360dpiのインクジェットヘッド4のであれば、ノズル間隔Sは、25.4/360=70.6μmとなる。よって、ノズル解像度360dpiのインクジェットヘッド4では、印刷画像の軸方向3の方向おいては、ノズル解像度以上(例えば720dpi(S=35.3μm))の高解像度の印刷解像度を実現することはできない。
【0051】
そこで、本実施形態においては、軸方向3の方向における印刷解像度(記録密度)を、インクジェットヘッド4のノズル解像度以上とするため、以下に詳述するマルチパス方式による印刷を実施する。以下、ヘリカル方式の印刷において、マルチパス方式の印刷を実施して、軸方向3の方向における印刷解像度を、ノズル解像度以上に上げて印刷を実施する方法について詳述する。
【0052】
まず、本実施形態のインクジェット印刷装置でのヘリカル方式印刷において実施されるマルチパス方式の印刷動作により回転軸3の方向の記録密度の向上を実現するための、印刷動作の基本的な設定方法について説明する。
【0053】
なお、以下の説明に使用される記号と意味は、インクジェットヘッド4の全ノズルの数をN、その内使用するノズルの数をQ、ノズル解像度を規定する記録素子(ノズル)間の距離をS、被記録印刷物(本実施形態においては円筒物1)とインクジェットヘッド4との1回転での回転軸2の方向への相対的な移動距離をL、軸方向3の方向の記録密度をS/P(Pはパス数)とする。
【0054】
前提として、マルチパス方式の概要を説明する。マルチパス方式とは、インクジェットヘッド4の印刷解像度に基づく円筒物1の外周面の単位印刷領域に対して、円筒物1の複数回の回転動作の各々でインクジェットヘッド4のノズルからインクを吐出して複数回のインクドット形成動作を行う記録方式をいう。インクドットの形成回数に応じて、2回であれば2パス、3回であれば3パス、4回であれば4パス、というように称する。
【0055】
マルチパス方式による印刷により回転軸3の方向の記録密度の向上を実施した場合のインクドットの配置状況は次の通りとなる。
図8は本実施形態に係るシングルパス方式(1パス)からマルチパス方式(5パスまで)の円筒物1の軸方向におけるインクドットの形成状況と形成されたインクドット各々の配置間隔をまとめた模式図である。シングルパス方式(1パス)においてはインクドットの間隔がノズル解像度と一致するためSとなり、マルチパス方式においては、2パスではS/2、3パスではS/3、4パスではS/4、5パスではS/5、以下同様になる。このように、1パスでは印刷解像度はノズル解像度の2倍、3パスではノズル解像度の3倍、4パスではノズル解像度の4倍、5パスではノズル解像度の5倍となっている。
【0056】
次に、マルチパス方式の印刷の説明の前提として、軸方向3の方向の解像度が同じで、同じラスターを繰り返して印刷して濃度を上げる印刷方式を考える。この場合に使用するノズル数は、Qと区別して、Tとする。
図9はインクジェットヘッドのノズルのうち4ノズルを使い2パス印刷にて同じラスターを2回繰り返して印刷した例を示す模式図であり、白丸ドットに影がついているものが2回重ねて印刷されたドットを示す。この時使用するノズル数Tは2の倍数の必要がありこの場合4ノズルとなっている。1回転時の直線移動方向の移動量は、4(ノズル数N)/2(パス数P)×S(ノズル間隔)となる。また、3パス印刷にて同じラスターを3回繰り返して印刷する時、使用するノズル数Tは3の倍数の必要があり、4パス印刷にて同じラスターを4回繰り返して印刷する時、使用するノズル数Tは4の倍数の必要であり、以下同様であることは明らかである。よって、この時の使用するノズル数T=P×m(mは自然数)の関係が成り立つ。またL=m×Sの関係が成り立つ。
【0057】
ここで回転軸2の方向の記録密度を上げる場合は、
図8に示したように、ノズル解像度に従いSの間隔で配置されるインクドットの間にさらにインクドットを配置して、印刷解像度を上げた印刷を行う必要がある。よって、このようなインクドットの配置を実現するために、2パス時はS/2、3パス時はS/3、4パス時はS/4、5パス時はS/5だけ、1回転時のインクジェットヘッド4の回転軸2の方向への相対的な移動距離を増やす必要がある。
【0058】
そこで、以上をまとめると、L=(T/P)×S+S/P=(S/P)×(T+1)=(S/P)×(P×m+1)=(S/P)×Qの関係が成り立つ。なお、S及びPは前述の定数、mは自然数である。そして、この関係は記録密度(S/P)の画像を記録する際に使用する記録素子数Q=(P×m+1)の場合におけるインクジェットヘッド4と円筒物1との相対的な移動量と置き換える事ができ、Q=P×m+1≦Nが成立する。また、以上の説明から、L=(S/P)×(P×m+1)=m×S+S/P=(m+1/P)×Sと式の変形ができる。
【0059】
そして、記録密度は、ノズル解像度を考えるとノズル間隔の自然数倍しかありえない。例えばノズル解像度が600dpiの場合はP=2で1200dpiとなり、P=3で1800dpi、P=4で2400dpiとなる。円筒物1の回転方向の解像度はその限りではないが、被記録円筒物1回転での軸方向3の方向への移動距離Lには関係しない。よってPは2以上の自然数という事になる。したがって、0<1/P<1が成り立ち、上記L=(m+1/P)×Sと合わせると、m×S<L≦(m+1/2)×Sが成立する。
【0060】
なお、自然数mは、上記Q=P×m+1≦N及びm×S<L≦(m+1/2)×Sの関係を充足する数値を適宜設定することができる。Qが最大値となるように設定することで、円筒物1の1回転当たりの軸方向3の方向の印刷幅を最大とできるため、このように設定する場合は、自然数mはQ=P×m+1≦N及びm×S<L≦(m+1/2)×Sの関係を充足する最大値に設定することになる。
【0061】
以上の関係式を満足するマルチパス方式の印刷動作により回転軸3の方向の記録密を向上させる実施形態として、ノズル数N=5のインクジェットヘッド4を用いて、P=2の2パス印刷を実施する例を
図10から
図13を用いて説明する。
【0062】
図10は、2パスのヘリカル印刷における円筒物1の回転とインクジェットヘッドの相対移動と画像記録状況の関係を、円筒物1の展開図を用いて説明した模式図である。
図10において、円筒物1外周を平面図に展開した円筒物1に対して、円筒物1の回転ごとに、どのように印刷が実施されるかを示している。印刷中は円筒物1を軸方向3の方向に移動させて、インクジェットヘッド4と円筒物1を相対移動させる。また、印刷開始位置8はインクジェットヘッド4の印刷開始直前の円筒物1との相対的位置を模式的に示すものである。また、斜線である一点鎖線で囲まれた斜めの領域である領域501~領域509が回転ごとに印刷される印刷領域を示す。また、#1はインクジェットヘッド4のノズル幅の長さを示す。
【0063】
この例では、円筒物1の展開図に示されるように、円筒物1が回転方向6の方向へ回転し、インクジェットヘッド4が印刷開始位置8から軸方向3の下流から上流の方向へ相対移動しつつ、各々がノズル幅♯1の1/2となっているインクジェットヘッド4の使用ノズルα及び使用ノズルβを用いて印刷動作を行い、円筒物1が10回転する事で印刷が完了する例となる。1回転目では使用ノズルαを用いて領域501を印刷する。2回転目では使用ノズルβを用いて領域501を印刷し、使用ノズルαを用いて領域502を印刷し、2回転目で領域501は印刷を完了する。3回転目では使用ノズルβを用いて領域502を印刷し、使用ノズルαを用いて領域503を印刷し、3回転目で領域502の印刷を完了する。4回転目では使用ノズルβを用いて領域503を印刷し、使用ノズルαを用いて領域504を印刷し、4回転目で領域503の印刷を完了する。以後同様に印刷を繰り返し、9回転目では使用ノズルβを用いて領域508を印刷し、使用ノズルαを用いて領域509を印刷し、9回転目で領域508は印刷を完了する。そして10回転目で使用ノズルβを用いて領域509を印刷し、領域509の印刷を完了し、もって、円筒物1の外周面全体への印刷を完了させる。
【0064】
また、
図11は、
図10で説明した2パスによるマルチパス方式によるヘリカル印刷動作を実施する場合に、インクジェット印刷装置に適用される画像データの模式図である。画像データ600はデータ領域601からデータ領域610を含んでおり、外部点線が全サイズとなる。
【0065】
図10で説明したように、円筒物1の回転と軸方向3の方向への直進とを印刷を同時に行うため、円筒物1の外周面に記録される印刷画像は、軸方向3の方向の下流から上流に、かつ、円筒物1が軸方向3の方向の上流からみて左から右へ形成される。円筒物1の展開図では斜線状に、円筒物1の展開前の円筒形状の状態であればらせん状に画像形成されることになる。
【0066】
そこで、このように画像形成するためには、
図11の画像データ600で示すように、印刷画像を軸方向3の方向と直交する方向へ反転させた画像データを作成すれば、円筒物1の外周面上に形成される印刷画像は意図した通りとなる。画像データは領域501から領域509に対応する10回転分必要となり、データ領域601は1回転目で領域501の印刷に、データ領域602は2回転目で領域501と領域502の印刷に、データ領域603は領域502と領域503の印刷に、と順次適用され、データ領域609は、領域508と領域509の印刷に適用され、最後にデータ領域610は、領域509の印刷に適用される。また、
図10と同様に#1はヘッドの使用するノズル分の長さに対応する。画像データのサイズは外部点線に示すようになり、回転方向の解像度を変えない場合、軸方向3の方向に約2倍のサイズになる。データ領域601からデータ領域610は使用ノズルαと使用ノズルβに対応する各々1/2♯ずつ、合計1♯の幅を有している。
【0067】
2パスでのマルチパス方式による印刷動作の際の各回転におけるノズル位置関係を
図12で説明する。
図12は、2パスでのマルチパス方式によるヘリカル印刷動作における、円筒物1の1回転つきインクジェットヘッド4が円筒物1の軸方向3の方向へどの程度相対的に移動するかについて説明する模式図である。
図12ではノズル数N=5であるインクジェットヘッド4で2パスのヘリカル印刷動作を実施した例により説明する。
【0068】
図12Aでは円筒物1とインクジェットヘッド4を上から見た図であり、円筒物1は、回転軸2を中心に回転方向6の方向に回転しながら、軸方向3の方向に上流から下流へ移動し、インクジェットヘッド4はヘッド移動線23で示されるように、軸方向3の方向に関して下流から上流へ、相対的に移動する。
【0069】
図12Bでは1回転目から5回転目までのインクジェットヘッド及びノズルの相対的な位置関係を、印刷スタート位置701から印刷スタート位置705としてインクジェットヘッドをノズル面から見た図により示している。1回転目開始時は、インクジェットヘッド4は、印刷スタート位置701の位置にあり、印刷を開始して円筒物1が1回転して1回転目が終了した後、2回転目の印刷スタート位置702から印刷を開始して円筒物1が1回転して2回転目が終了した後、3回転目の印刷スタート位置703から印刷を開始して円筒物1が1回転して3回転目が終了し、同様に4回転目、5回転目と続く。この時、
図12Bに示すように、インクジェットヘッド4と円筒物1との軸方向3に関する相対位置は、各々のノズルが2.5ノズル(2+1/2)Sの間隔分、軸方向3に関して下流から上流方向に移動し、次の回転の際に、は直前の回転の際にインクドット形成を行ったノズル間隔Sをあけて隣接するインクドットの間にインクドット形成を行う。このように奇数回転目と偶数回転目で互いのノズル間隔の間に交互に印刷する事で軸方向3の方向の印刷解像度がノズル解像度の2倍になった事が分かる。
【0070】
図13はノズル数N=5となるノズル番号1から5までのノズルを有するインクジェットヘッドを用い2パスでのマルチパス方式によるヘリカル印刷を実施した際の円筒物外周面におけるインクドットの形成状況を説明する模式図である。
図13の左端に示す数字は、1-1は1回転目でノズル番号1を用いて形成したインクドット列を示し、2-3であれば2回転目でノズル番号3を用いて形成したインクドット列を示しており、「何回転目」-「何番ノズルを用いて形成したインクドット」を示している。
【0071】
1回転目では、点線斜線の領域内にある印刷領域28の領域に配置されたインクドット列の内、白丸で示した1-1から1-5のインクドット列が印刷される。2回転目では、印刷領域29と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、黒丸で示した2-1から2-5のインクドット列が印刷される。3回転目では、印刷領域30と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、白丸で示した3-1から3-5のインクドット列が印刷される。4回転目では、印刷領域31と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、黒丸で示した4-1から4-5のインクドット列が印刷される。さらに複数回転連続して印刷を実施する場合は以下同様となる。
【0072】
図13に示す通り、2回転目以降の印刷によって配置されたインクドット列によって、回転軸2の方向の印刷解像度が2倍になっている事がわかる。以上のN=5のインクジェットヘッドを用いて2パスのマルチパス方式のヘリカル印刷を実施した場合における、上記の関係式の各記号の値は次のようになる。
【0073】
すなわち、N=Q=5となるところ、P=2、m=2であり、Q(5)=P(2)×m(2)+1≦N(5)が成立する。またL=2.5×Sであり、m(2)×S<L<(m+1)(3)×Sが成立している。なお、ここでヘッドの全ノズル数が6でN=6であってもQ=5,m=2は変わらない。
【0074】
さらに、以上の関係式を満足するマルチパス方式の印刷動作により回転軸3の方向の記録密を向上させる実施形態として、ノズル数N=7のインクジェットヘッド4を用いて、P=3の3パス印刷を実施する例により
図14を用いて説明する。
【0075】
図14はノズル数N=7のインクジェットヘッド4を使い3パスでのマルチパス方式によってヘリカル印刷した場合の円筒物外周面におけるインクドットの形成状況を説明する模式図である。
図14の左端の数字は、
図13同様に、1-1は1回転目でノズル番号1を用いて形成したインクドット列を示し、2-3であれば2回転目でノズル番号3を用いて形成したインクドット列を示しており、「何回転目」-「何番ノズルを用いて形成したインクドット」を示している。
【0076】
1回転目では、点線斜線の領域内にある印刷領域32の領域に配置されたインクドット列の内、白丸で示した1-1から1-7のインクドット列が印刷される。2回転目では、印刷領域33と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、斜線の丸で示した2-1から2-7のインクドット列が印刷される。3回転目では、印刷領域34と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、黒丸で示した3-1から3-7のインクドット列が印刷される。4回転目では、印刷領域35と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、白丸で示した4-1から4-7のインクドット列が印刷される。5回転目では、印刷領域36と示した点線斜線の領域内にあるインクドット列の内、斜線の丸で示した5-1から5-7のインクドット列が印刷される。さらに5回転目、6回転目と以下同様に印刷を継続することになる。
【0077】
図14に示す通り、3回転目以降の印刷によって配置されたインクドット列によって、回転軸2の方向の印刷解像度が3倍になっている事がわかる。以上のN=7のインクジェットヘッドを用いて3パスのマルチパス方式のヘリカル印刷を実施した場合における、上記の関係式の各記号の値は次のようになる。
【0078】
すなわち、N=Q=7となるところ、P=3、m=2であり、Q(7)=P(3)×m(2)+1≦N(7)が成立する。またL=(2+1/3)×Sであり、m(2)×S<L<(m+1)(3)×Sが成立している。なお、ここでヘッドの全ノズル数が9でN=9であってもQ=7,m=2は変わらない。
【0079】
さらに、実際に一般的に使用されうる仕様であるノズル数N=1024、S=42.3μm(600dpi)のインクジェットヘッドの例に基づき、上記の関係式にあてはめられる各記号の例について説明する。
【0080】
かかるインクジェットヘッドを用いてヘリカル印刷にて2パスから10パスまでのマルチパス方式の印刷を実施する場合、Q=P×m+1≦Nを適用すると下記のようになる。
【0081】
・P=2のとき、511×2+1≦1024、Q=1023、m=511
・P=3のとき、341×3+1≦1024、Q=1024、m=341
・P=4のとき、255×4+1≦1024、Q=1021、m=255
・P=5のとき、204×5+1≦1024、Q=1021、m=204
・P=6のとき、170×6+1≦1024、Q=1021、m=170
・P=7のとき、146×7+1≦1024、Q=1023、m=146
・P=8のとき、127×8+1≦1024、Q=1017、m=127
・P=9のとき、113×9+1≦1024、Q=1018、m=113
・P=10のとき、102×10+1≦1024、Q=1021、m=102
【0082】
また、この時の被記録印刷物(本実施形態においては円筒物1)とインクジェットヘッド4との1回転での回転軸2の方向への相対的な移動距離をLについて、L=(m+1/P)×S、及びm×S<L≦(m+1/2)×Sを適用すると下記のようになる。
【0083】
・P=2のとき、L=(511+1/2)×42.3μm=21.636mm、となり、
21.615mm(511(m)×42.3μm(S))≦21.636mm≦21.676mm((511(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=3のとき、L=(341+1/3)×42.3μm=14.438mm、となり、
14.424mm(341(m)×42.3μm(S))≦14.438mm≦14.466mm((341(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=4のとき、L=(255+1/4)×42.3μm=10.797mm、となり、
10.786mm(255(m)×42.3μm(S))≦10.797mm≦10.828mm((255(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=5のとき、L=(204+1/5)×42.3μm=8.637mm、となり、
86.29mm(204(m)×42.3μm(S))≦8.637mm≦86.71mm((204(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=6のとき、L=(170+1/6)×42.3μm=7.198mm、となり、
7.191mm(170(m)×42.3μm(S))≦7.198mm≦7.233mm((170(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=7のとき、L=(146+1/7)×42.3μm=6.182mm、となり、
6.175mm(146(m)×42.3μm(S))≦6.182mm≦6.218mm((146(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=8のとき、L=(127+1/8)×42.3μm=5.377mm、となり、
5.372mm(127(m)×42.3μm(S))≦5.377mm≦5.414mm((127(m)+1)×42.3μm(S))となる。
・P=9のとき、L=(113+1/9)×42.3μm=4.785mm、となり、
4.779mm(113(m)×42.3μm(S))≦4.785mm≦4.822mm((113(m)+1)×42.3μm(S))、となる。
・P=10のとき、L=(102+1/10)×42.3μm=4.319mm、となり、
4.314mm(102(m)×42.3μm(S))≦4.319mm≦4.356mm((102(m))+1)×42.3μm(S))となる。
【0084】
また、一つのインクジェットヘッドで複数種類のインクを搭載して吐出できるインクジェットヘッドを使用した場合の本実施形態におけるヘリカル方式の印刷を説明する。
【0085】
図15は、一つのインクジェットヘッドに4色のインクを搭載して吐出できる4色仕様の多色インク対応ヘッドのノズル面の模式図である。このように一つのインクジェットヘッドに複数種類のインクを搭載できるインクジェットヘッドを多色ヘッドと称する。
【0086】
図15に示す多色ヘッド41の例では、各々独自のインク供給経路を有して、各々異なるインクを吐出できるノズルの列を有し、左からブラックインクを吐出するノズル列37、シアンインクを吐出するノズル列38、マゼンタインクを吐出するノズル列39、イエローインクを吐出するノズル列40を有している。ノズル列37からノズル列40各々のノズル間隔Sは169μm(150dpi)であり、各々のノズル数Nは320であり、各々のノズル列は縦方向(ノズル列の方向)に42.3μm(600dpi)ずらして配置されている。換言すれば、150dpi320ノズルの4個のヘッドが高精度に狭い領域に配置されているともいえる。各色間の位置合わせが容易である事、P=2以上のマルチパス方式では一度の塗布するインク量が少なく、ノズル解像度が低くても高解像度化が可能な事などから、ヘリカル方式の印刷装置において多色ヘッドを使用することが有用となる。
【0087】
ここで多色ヘッド41の例に基づき、上記の関係式にあてはめられる各記号の例について説明する。
【0088】
多色ヘッド41が、N=320、S=169μm(150dpi)、である場合、多色ヘッド41を用いてヘリカル印刷にて2パスから10パスまでのマルチパス方式の印刷を実施する場合、Q=P×m+1≦Nを適用すると下記のようになる。
【0089】
・P=2のとき、159×2+1≦320、Q=319、m=159
・P=3のとき、106×3+1≦320、Q=319、m=106
・P=4のとき、79×4+1≦320、Q=305、m=79
・P=5のとき、63×5+1≦320、Q=316、m=63
・P=6のとき、53×6+1≦320、Q=319、m=53
・P=7のとき、45×7+1≦320、Q=316、m=45
・P=8のとき、39×8+1≦320、Q=313、m=39
・P=9のとき、35×9+1≦320、Q=316、m=35
・P=10のとき、31×10+1≦320、Q=311、m=31
【0090】
また、この時の被記録印刷物(本実施形態においては円筒物1)と多色ヘッド41との1回転での回転軸2の方向への相対的な移動距離をLについて、L=(m+1/P)×S、及びm×S<L≦(m+1/2)×Sを適用すると下記のようになる。
【0091】
・P=2のとき、(159+1/2)×169=26.956mm、となり、
26.871mm(159(m)×169μm(S))≦26.956mm≦27.040mm((159(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=3のとき、(106+1/3)×169=17.970mm、となり、
17.914mm(106(m)×169μm(S))≦17.970mm≦18.083mm((106(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=4のとき、(79+1/4)×169=13.393mm、となり、
mm( (m)×169μm(S))≦13.393mm≦ mm(( (m)+1)×169μm(S))となる。
・P=5のとき、(63+1/5)×169=10.680mm、となり、
10.647mm(63(m)×169μm(S))≦10.680mm≦10.816mm((63(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=6のとき、(53+1/6)×169=8.985mm、となり、
8.957mm(53(m)×169μm(S))8.985mm≦9.126mm((53(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=7のとき、(45+1/7)×169=7.629mm、となり、
7.605mm(45(m)×169μm(S))≦7.629mm≦7.774mm((45(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=8のとき、(39+1/8)×169=6.612mm、となり、
6.591mm(39(m)×169μm(S))≦6.612mm≦6.760mm((39(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=9のとき、(35+1/9)×169=5.933mm、となり、
5.915mm(35(m)×169μm(S))≦5.933mm≦6.084mm((35(m)+1)×169μm(S))となる。
・P=10のとき、(31+1/10)×169=5.255mm、となり、
5.239mm(31(m)×169μm(S))≦5.255mm≦5.408mm((31(m)+1)×169μm(S))となる。
【0092】
以上の通り、ヘリカル方式印刷においてマルチパス方式による印刷を実施する場合、常に「Q=P×m+1≦N」及び「m×S<L≦(m+1/2)×S」の関係が成り立つ。そして、ヘリカル方式の印刷においてマルチパス方式の印刷を実施する際に、上記の通り使用するノズル数Q及び移動距離Lを設定することで、ヘリカル方式の印刷においてマルチパス方式の印刷を実施することができる。
【0093】
以上、ヘリカル印刷において回転軸2の軸方向3の方向における印刷解像度の向上方法について説明したが、ヘリカル印刷においてさらに回転方向における印刷解像度を向上させることも可能である。
【0094】
図16は、回転方向の印刷解像度を2倍に上げてシングルパス(1パス)印刷を実施した場合のインクドット構成を示す模式図である。白丸で示したインクドットは回転軸2の方向及び回転方向の印刷解像度を向上させる措置をしていないインクドットの配置状態を示している。回転方向の印刷解像度を2倍にするためには、白丸で示したインクドットの回転方向の間に、黒丸で示したインクドットの配置例で示されるように、さらにインクドットを配置することで、印刷解像度を2倍に上げることができる。このための方法として、駆動周波数の制御等により単位時間当たりのインクの吐出回数である記録速度を上げる方法や、円筒物1の回転方向への回転の速度を落とす方法などにより、白丸で示したインクドットの回転方向の間にさらにインクドットを形成する方法が想定される。また、同様の方法を用いることで、3倍、4倍など、2倍以上に印刷解像度を向上させることができる。
【0095】
このように回転方向への印刷解像度は、シングルパス方式であってもマルチパス方式であっても、向上させる事が可能である。
【0096】
図17は、本実施形態におけるマルチパス方式による回転軸2の方向への印刷解像度と、上記の方向による回転方向への印刷解像度とを2倍にした場合のインクドット構成を示す模式図である。白丸で示したインクドットは回転軸2の方向及び回転方向の印刷解像度を向上させる措置をしていないインクドットの配置状態を示している。
ここで、上記の、本実施形態におけるマルチパス方式による回転軸2の方向への印刷解像度の向上方法と、上記の方向による回転方向への印刷解像度の向上方法とを組み合わせて、黒丸で示したインクドットの配置例で示されるように、白丸で示したインクドット各々の間にさらに黒丸で示したインクドットを配置することで、回転軸2の方向への印刷解像度と、回転方向への印刷解像度とを2倍にしている。このようにすることで、回転軸2の方向と回転方向両方の印刷解像度を上げる事が出来る。
【0097】
図18は本実施形態において使用されるインクジェット印刷装置の構成例を示す概要図である。制御ボックス43内には印刷制御のために用いられる制御パソコン44、インクボトル45、制御ボード46などが搭載されている。モニター47はタッチパネルであり、ここでマルチパス方式の記録動作を行う際のパス数の設定を含む印刷の所設定を行う。プリンター本体48には回転可能に保持された円筒物1、インクジェットヘッド4を含むキャリッジ49、仮硬化用のUV照射ユニット5、円筒物1の外周面に付与されたインクを完全に硬化させるための本硬化用のUVランプ50、などが搭載されている。キャリッジ49には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色分のインクを吐出するための4個のインクジェットヘッド4が搭載されており、一色の記録動作が行われるごとに、キャリッジ49の移動により、使用するインクジェットヘッド4を切り替えることで、吐出するインクを切り替えて記録動作を行う。
【0098】
また、本実施形態におけるインクジェット印刷装置では、さらに印字速度を向上させるため、搭載されるインクジェットヘッド4のうちの1つで、円筒物1の軸方向3の方向の一方端部から他方端部(軸方向3の方向の上流から下流まで)まで、インクジェットヘッド4と円筒物1とを相対移動させてヘリカル印刷動作を実施したのち、さらに他の1つのインクジェットヘッド4に切り替え、円筒物1の他方端部から一方端部まで(軸方向3の方向の下流から上流まで)、インクジェットヘッド4と円筒物1とを相対移動させてヘリカル印刷動作を実施し、これらを各々繰り返すことで、複数のインクジェットヘッド4によるヘリカル印刷動作を、円筒物1の一方端部から他方端部を往復しながら実施することもできる。ヘリカル印刷動作をこのように実施することで、ヘリカル印刷動作の1つが終了したあと、次のヘリカル印刷動作を実施するために、インクジェットヘッド4と円筒物1を軸方向3の方向に相対移動させて、印刷開始位置に戻す動作を省略できるため、印刷速度を向上させることができる。
【0099】
本実施形態におけるヘリカル印刷動作のフローを説明する。
【0100】
図19は本実施形態におけるヘリカル印刷動作の概要フローチャートの例である。フロー51で任意の印刷画像データを選択し、次にフロー52にて各種印刷条件の設定を行う。印刷条件としては本実施形態に係るパス数の設定や印刷解像度の設定を含む。次にフロー53にて印刷開始を指示すると、フロー54にて制御パソコン44に格納された印刷画像データを読込み、フロー55にて色変換処理、フロー56にて濃度変換処理を行う。次に、フロー57にて、フロー52で設定したパス数や印刷解像度に適合するように印刷画像データの変換処理を行い、フロー58にてヘリカル印刷に合わせた印刷画像の変形処理を行う。フロー58では、
図4や
図11にて説明したようなヘリカル印刷に適用されうる形状の印刷画像データを作成する。
【0101】
その後、フロー59にてインクジェットヘッド配列にあわせた画像データに変換する。インクジェットヘッドのノズルは単純なラインではなく、数列構成でかつ解像度方向にシフトして配置されているため、フロー58にてノズルの物理的配置に合わせて画像データを変換する。
【0102】
以上までのフローが終了した後、フロー60にて印刷動作を実施する。フロー60では
図18のインクジェット印刷装置の構成例では、円筒物1を回転させつつ円筒物1とインクジェットヘッド4とを回転軸2の方向に相対移動させながら、上記の通りのヘリカル印刷動作を実施する。キャリッジには複数色のインクジェットヘッド4が搭載されている。1色ずつ被記録円筒物の上部に移動して印刷し、同時に下側に配置されたLEDUVでUV硬化を行う。1色目が終了したら2色目を行い例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の場合は4回繰り返す事になる。例えば白インクと透明インキを搭載している場合は、6回繰り返す事になる。例えば上記の
図15で説明した4色のインクを搭載できる多色ヘッドを使用した場合、4色印刷なら1回の動作で印刷動作を終了させることができる。インクによってはLEDUVのUV硬化だけでは不十分な場合があるので、印刷終了後にキャリッジ横に搭載されているUVランプで最終硬化を行う。
【0103】
全印刷処理が完了したらすべてのフローが終了となる。
【0104】
図19で説明したフローにおける処理は、
図18のインクジェット印刷装置の構成例であれば、制御パソコン44に格納された制御ソフトウエアを用いて行うことができる。リアルタイム性の高い高速処理を必要とする場合は、処理の一部を制御基板46に搭載されるLSIが担当することもできる。また制御基板46はキャリッジ49に搭載されてインクジェットヘッド4に近い位置で、インクジェットヘッド4を制御することもできる。また、ヘッドを制御するデータ処理量が多い作業は制御パソコン44が行い、キャリッジ49の移動、円筒物1の回転、UVランプ50やUV照射ユニット5の制御などは図示していないPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)が行うこともできる。
【符号の説明】
【0105】
1 円筒物
2 回転軸
3 軸方向
4 インクジェットヘッド
5 UV照射ユニット
6 回転方向
41 多色ヘッド
105 照射面
400 画像データ
600 画像データ