(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122309
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20220816BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220816BHJP
【FI】
G06Q10/00
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019430
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】芳村 友起
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA02
5L049AA20
5L049CC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検体書データが実際に検査された検体について得られた検査書データであることを保証できる検査システムを提供する。
【解決手段】検査システムSは、検体を検査して検査書データK1を生成する検査装置Iと、検体が検査を行える状態で取り付けられた検査装置Iと検体と検体を識別するために検体に表示される識別情報とを撮影して画像データK2と画像データK3を生成する撮影装置Cと、検査書データK1と画像データK2、K3とが同一の検体を対象としていることを証明する証明情報を検査書データK1と画像データK2、K3とに付与する処理装置Pと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を検査して検査書データを生成する検査装置と、
前記検体が検査を行える状態で取り付けられた前記検査装置と、前記検査装置に取り付けられた前記検体と、前記検体を識別するために前記検体に表示される識別情報とを撮影して、画像データを生成する撮影装置と、
前記検査書データと前記画像データとが同一の検体を対象としていることを証明する証明情報として時刻を前記検査書データと前記画像データとに付与する処理装置とを備えた
ことを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記撮影装置は、
前記検査装置を前記検体とともに撮影する第1カメラと、
前記検体に表示された前記識別情報を撮影する第2カメラとを有し、
前記画像データは、
前記第1カメラが撮影した第1画像データと、
前記第2カメラが撮影した第2画像データとで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記処理装置は、
自己がカウントする時刻を前記検査書データに前記証明情報として付与する第1処理部と、
自己がカウントする時刻を前記第1画像データに前記証明情報として付与する第2処理部と、
自己がカウントする時刻を前記第2画像データに前記証明情報として付与する第3処理部と、
所定周期で前記第1処理部、前記第2処理部および前記第3処理部における時刻の同期を行う時刻同期サーバとを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記証明情報の付与後の前記検査書データと前記画像データとを記憶し、記憶された前記検査書データと前記画像データの変更を受け付けないサーバを備え、
前記処理装置は、前記証明情報の付与後の前記検査書データと前記画像データとを前記サーバへ送信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記識別情報は、前記検体に刻印された製造番号である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記検体は、減衰力を切り換えるレバーを備えたダンパであって、
前記撮影装置は、前記レバーの撮影が可能である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
免震ゴムや免震ゴムと一緒に利用されて構造物の免震に利用される油圧ダンパや、構造物の制振に利用される油圧ダンパ、粘弾性ダンパ、鋼材ダンパや摩擦ダンパの製造者は、製品性能が国土交通省大臣の認定基準や顧客要求仕様(以下、「認定基準等」という)を満たしているかを検査して、検査を通過した製品を需要者へ出荷する。また、製造者は、需要者に対する製品の出荷とともに、製品の性能が認定基準等を満たしていることを証明するための検査書を需要者に発行する。
【0003】
従来、製造者による検査書の発行業務において、検査書の改竄を難しくして製品の信頼性を高める試みとして、検査結果を記録しているデータベースから検査書に示すべき検査結果を抽出し、発行者が予め準備した署名画像情報と抽出した検査結果を含む検査書を表示させる検査書画像情報を生成し、検査書画像情報に製造品に関する索引情報を付加して得た検査書画像情報を発行する検査書発行システムの提案がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記提案の検査書発行システムは、検査書を画像情報として需要者へ発行するので、検査書の改竄が難しくなり、検査書の信頼性が向上する点で有用である。
【0006】
ところが、製品とともに発行される検査書が実際に検査を受けた製品の検査書ではなく他の製品の検査書であった場合には検査書の改竄が行われてはいないものの、そもそも実際に検査を受けた製品の性能を正しく示していないため、その製品が認定基準等を満足しているのか疑義が生じてしまう結果となる。
【0007】
従来の検査書発行システムでは、製品とその製品について得られた検査書とがデータベース上では紐づけされているが、製品の検査を行った際にその製品の検査で得られた検査書であることを証明するすべはなく、人為的なミスその他によって製品とその製品に紐づけされるべき検査書とが入れ違ってしまう可能性を否定できない。
【0008】
そこで、本発明は、検体書データが実際に検査された検体について得られた検査書データであることを保証できる検査システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の検査システムは、検体を検査して検査書データを生成する検査装置と、検体が検査を行える状態で取り付けられた検査装置、検査装置に取り付けられた検体および検体を識別するために検体に表示される識別情報を撮影して画像データを生成する撮影装置と、検査書データと画像データとが同一の検体を対象としていることを証明する証明情報を検査書データと画像データとに付与する処理装置とを備えている。
【0010】
このように構成された検査システムでは、同じ検体の検査によって生成される検査書データと同じ検体が検査装置に取り付けられていたことを証明するための画像データとに証明情報が付与されることで関連付けられるので、検査書データが得られた検体と、画像データに撮影されている検体とが同一の検体であることを証明できる。
【0011】
また、検査システムにおける撮影装置は、検査装置を検体とともに撮影する第1カメラと、検体に表示された識別情報を撮影する第2カメラとを備え、画像データは、第1カメラが撮影した第1画像データと、第2カメラが撮影した第2画像データとで構成されてもよい。このように構成された検査システムによれば、検査装置が大型で第1画像データを見ても検体に表示された識別情報を読み取れない場合や、検査装置への取付姿勢によって検体の識別情報を第1カメラで撮影できない場合であっても、検体の識別情報の撮影が可能となって検体書データが実際に検査された検体について得られた検査書データであることを保証できる。
【0012】
さらに、検査システムにおける処理装置は、自己がカウントする時刻を検査書データに証明情報として付与する第1処理部と、自己がカウントする時刻を第1画像データに証明情報として付与する第2処理部と、自己がカウントする時刻を第2画像データに証明情報として付与する第3処理部と、所定周期で第1処理部、第2処理部および第3処理部における時刻の同期を行う時刻同期サーバとを備えてもよい。よって、このように構成された検査システムによれば、検査書データが得られた検体と、第1画像データおよび第2画像データに撮影されている検体とが同一の検体であるということの確実性を向上できる。
【0013】
また、検査システムは、証明情報の付与後の検査書データおよび画像データを記憶し、記憶された検査書データおよび画像データの変更を受け付けないサーバを備え、処理装置が証明情報の付与後の検査書データおよび画像データをサーバへ送信してもよい。このように構成された検査システムによれば、検査書データおよび画像データが人為的なミスによって変更されることなくサーバに記録され、サーバがデータの変更を受け付けないので、検査書データおよび画像データの改竄を防止して検査書データの信頼性を効果的に向上できる。
【0014】
また、検査システムでは、検体の識別情報が検体に刻印された製造番号とされてもよい。このように構成された検査システムによれば、製品を一つずつ識別可能であるとともに改竄に対する強度が高い刻印を撮影装置が撮影することになるので、検査書データおよび画像データの信頼性を効果的に向上できる。
【0015】
そして、検査システムでは、検体が減衰力を切り換えるレバーを備えたダンパである場合、撮影装置がレバーの撮影が可能であってもよい。このように構成された検査システムによれば、検査書データが得られたダンパのレバーの位置も確認できるので、検査書データの信頼性も向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の検査システムによれば、検体書データが実際に検査された検体について得られた検査書データであることを保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施の形態における検査システムの構成の一例を示した図である。
【
図2】一実施の形態の検査システムにおける検査装置の構成の一例を示した図である。
【
図3】一実施の形態の検査システムにおける検査装置本体の一例を示した図である。
【
図4】一実施の形態の検査システムにおける検査装置の制御盤の構成の一例を示した図である。
【
図5】(a)は、証明情報が付与された検査書データを画像として表示した図である。(b)は、証明情報が付与された第1画像データを画像として表示した図である。(c)は、証明情報が付与された第2画像データを画像として表示した図である。
【
図6】一実施の形態の検査システムにおける撮影装置の構成の一例を示した図である。
【
図7】一実施の形態の検査システムにおける処理装置の一部である制御装置の構成の一例を示した図である。
【
図8】一実施の形態の検査システムにおけるサーバの構成の一例を示した図である。
【
図9】製造者端末、顧客端末および監査機関端末の構成の一例を示した図である。
【
図10】一実施の形態の検査システムにおける動作を説明するフローチャートである。
【
図11】一実施の形態の検査システムにおけるサーバの動作を説明するフローチャートである。
【
図12】一実施の形態の検査システムにおける検体としてのダンパの構成の一例を示した図である。
【
図13】証明情報が付与された第3画像データを画像として表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態の検査システムSは、検体を検査して検査書データK1を生成する検査装置Iと、検体が検査を行える状態で取り付けられた検査装置Iと検査装置Iに取り付けられた検体と検体を識別するために前記検体に表示される識別情報とを撮影して画像データK2,K3を生成する撮影装置Cと、検査書データK1と画像データK2,K3とが同一の検体を対象としていることを証明する証明情報を検査書データK1と画像データとしての第1画像データK2および第2画像データK3とに付与する処理装置Pとを備えて構成されている。本実施の形態の検査システムSは、構造物の免震或いは制振に利用されるダンパDを検体として検査する。
【0019】
以下、検査システムSの各部について詳細に説明する。検査装置Iは、
図2に示すように、検体としてのダンパDを保持してダンパDに振動を与える検査装置本体1と、ダンパDのストローク変位を検知するストロークセンサ2aと、ダンパDが発揮する荷重を検知するロードセル2bと、加振器1cを制御する制御盤4と、ダンパDに貼付された二次元コードを読み取る読取装置3とを備えて構成されている。
【0020】
検査装置本体1は、
図3に示すように、架台1aと、架台1aに設けられて
図2中左右方向へ移動可能であってダンパDの一端を保持する保持部1bと、架台1aに設けられてダンパDの他端に接続されてダンパDに振動を与える加振器1cとを備えている。
【0021】
加振器1cは、制御盤4によって制御される。制御盤4は、所定の検査条件に従って加振器1cを駆動して、ダンパDに検査条件通りの振動を与えるようになっている。本実施の形態における検体であるダンパDは、シリンダ5と、シリンダ5内に出入りするロッド6とを備えたテレスコピック型のダンパとされており、シリンダ5に対してロッド6が軸方向に変位する伸縮時に減衰力を発揮する。また、ダンパDにおけるシリンダ5には、識別情報として製造番号が刻印される他、二次元コードが記載された紙片9が貼付されている。なお、二次元コードは、ダンパDの製造番号、型式、品番等といったダンパDを識別するための識別情報を含んだ情報をコード化したものであり、前記紙片9がダンパDに貼付されることでダンパD上に表示される。識別情報は、製造される個々のダンパDを区別できる情報であって、本実施の形態の場合、製造番号とされている。なお、識別情報は、個々のダンパDを区別可能な態様で製造番号の他に付与される識別記号や識別番号であってもよい。
【0022】
なお、識別情報は、検体であるダンパDから簡単には取り外しできない態様でダンパDに付してあればよく、ダンパDのシリンダ5に貼付される紙片9に加えてシリンダ5に刻印によって付されてもよい。紙片9に加えて刻印によって識別情報がダンパDに付される場合、複数個所に識別情報が表示されるので、紙片9と刻印の一方が視認しにくくなっても他方で識別情報を読み取ることができ、好適である。
【0023】
検査装置Iは、検体であるテレスコピック型のダンパDが加振器1cによって加振された際に発生する減衰力の特性を検査するため、ダンパDのストローク変位を検知するストロークセンサ2aと、減衰力を検知するロードセル2bとを備える他、検査装置Iの設置個所の気温を検知する温度センサ2cおよびダンパDの温度を検知する温度センサ2dを備えている。
【0024】
ストロークセンサ2aは、ダンパDのシリンダ5に対するロッド6の変位であるストローク変位を検知して制御盤4へ入力する。ロードセル2bは、ダンパDと保持部1bとの間に介装されており、ダンパDから受ける荷重を検知して制御盤4へ入力する。ロードセル2bが検知した荷重は、ダンパDが伸縮した際に発揮する減衰力である。温度センサ2cは、検知した検査装置Iの設置個所における気温を制御盤4へ入力する他、図示しない表示部を備えていて検知した温度を表示部に表示する。また、温度センサ2dは、検知したダンパDの温度を制御盤4へ入力する他、図示しない表示部を備えていて検知した温度を表示部に表示する。なお、ダンパDのストローク速度を検知したい場合には、制御盤4でストローク変位を微分してもよい。また、ダンパDのストローク変位、減衰力以外に検知したい検査データに含めたい情報がある場合、その情報の検知に対応するセンサを設ければよく、当該情報を検査データに含めればよい。
【0025】
制御盤4は、検査装置本体1の加振器1cを制御するための制御部4aと、インターフェース4bと、検査作業者による操作を受け付けるための操作盤4cとを備えている。制御部4aは、
図4に示すように、加振器1cを制御するとともに検査データの生成と、処理装置Pの一部である第1処理部としての処理を行うためのプログラムを記憶する記憶装置4a1と、前記プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置4a2と、時刻をカウントするクロック4a3と、演算処理装置4a2からの指示によって加振器1cを駆動する駆動回路4a4とを備えている。そして、制御部4aは、ダンパDの検査時にダンパDに与える振動を決定するパラメータにしたがって加振器1cを駆動する。インターフェース4bは、制御盤4に通信可能に接続されるストロークセンサ2a、ロードセル2b、温度センサ2c,2d、読取装置3および時刻同期サーバ8と制御部4aとの間で信号のやり取りを行うとともに、
図2に示すように、外部に設置されているサーバ7とインターネット回線Nを介して制御部4aとの間で情報を交換できるようにプロトコルに従って通信される情報を変換する。このように検査装置Iにおける制御盤4は、インターネット回線Nを介してサーバ7と通信可能に接続されている。なお、制御盤4は、LAN(Local Area Network)等のネットワークLを通じて時刻同期サーバ8および後述する制御装置12と接続されて情報をやり取りできる。
【0026】
制御部4aは、検査装置IによるダンパDの検査中は継続して、ストロークセンサ2aが検知したストローク変位の値とロードセル2bが検知したダンパDの減衰力の値を所定のサンプリング周期で読み込んで順次記憶し、それまでに記憶した値をフィールドに記述したCSVファイルを生成する。より詳細には、制御部4aは、たとえば、フィールドを検査年月日、検査時刻、気温、検査対象であるダンパDの製造番号、型式、品番といった情報、検査中に取得されたストローク変位および減衰力とするレコードを記述したCSVファイルを生成する。なお、検査データは、一回の加振検査毎に生成され、CSVファイルには検査中に得られた前記値がすべて記録される。よって、たとえば、ダンパDに5回の正弦波振動を与える振動パターンで3回加振検査が行われる場合、3つのCSVファイルが生成される。なお、検査結果である検査データは、CSVファイル以外の形式のファイルとして生成されてもよい。
【0027】
検査装置Iは、ダンパDの検査を開始するにあたって、制御部4aが予め記憶装置4a1に記憶されたデータベースDBにアクセスし、データベースDBに登録されたダンパDに関連付けされた検査条件を読み込んで検査条件通りに加振器1cを駆動制御することによって、ダンパDを検査する。
【0028】
具体的には、制御盤4は、読取装置3で読み取ったダンパDの情報からデータベースDBにアクセスして、データベースDBを参照してダンパDに関連付けされた検査条件を読み込む。検査条件は、ダンパDに与える振動の周波数、振幅、振動波形等、検査装置本体1がダンパDを検査するのに指定が必要なパラメータで構成される。制御盤4は、パラメータの設定を完了すると検査作業者による操作盤4cに設けられた検査開始釦の押下をトリガとして加振器1cを駆動してダンパDに振動を与える。制御盤4は、ダンパDの検査に当たり、加振器1cを制御しダンパDに検査条件通りの振動を与える。
【0029】
読取装置3は、本実施の形態では、二次元コードを撮影した画像を画像処理してダンパDの識別情報を含むテキストデータに変換するデコードを行う装置であって、読み取ったダンパDの識別情報を制御盤4に入力する。制御盤4は、識別情報を受け取ると、データベースDBにアクセスし、データベースDBを参照して読取装置3から受け取ったダンパDの情報に関連付けされている検査条件を抽出し、検査条件を読み込む。
【0030】
また、制御盤4は、検査装置Iで検体であるダンパDを検査する場合の検査モードと、検査装置Iを試験装置としてダンパDの研究、開発向けの試験に利用する場合の試験モードとを備えている。なお、本実施の形態では、検査装置Iにおける検査モードと試験モードとの切り替えは、検査作業者による操作盤4cの操作によって行われる。本実施の形態の検査システムSにおける検査装置Iでは、制御盤4は、検査モードでは検査作業者の操作盤4cの操作によるダンパDの検査条件の入力を受け付けず、試験モードでは検査作業者の操作盤4cの操作によるダンパDに与える振動条件の入力を許容する。よって、検査装置Iが試験モードとなっている場合、検査装置Iの検査作業者が所望する振動条件での供試体の試験を行える。他方、制御盤4は、検査モードでは、制御部4aで読取装置3からダンパDの識別情報の入力を検知すると、データベースDBにアクセスしてダンパDへ与える振動のパラメータを検査条件が指定するパラメータに設定し、検査が終了するまで操作盤4cからの検査条件の入力を受け付けない。なお、データベースDBに予め検査対象であるダンパDの情報と検査条件が登録されていない場合、制御盤4が検査条件を読み込めないので検査を行わない。
【0031】
よって、読取装置3によるダンパDの識別情報の読み取りが行われた後は自動的にデータベースDBに登録された検査条件に基づいたパラメータの設定が制御盤4によって行われ、検査が終わるまでは検査装置Iの検査作業者による検査条件の変更が行えない状態となる。
【0032】
なお、データベースDBは、記憶装置4a1ではなく外部の図示しないサーバ或いはサーバ7に格納されてもよく、制御盤4が都度図示しない前記サーバ或いはサーバ7へアクセスして検査条件をダウンロードして検査を実行してもよい。また、本実施の形態の検査装置Iでは、二次元コードを読取装置3で読み取って検査を実行するようにしているが、このような態様に代えて、検査条件を検査作業者の制御盤4の操作によってインプットできるようにしておき、ダンパDの検査を行う度に検査条件を検査作業者が設定してダンパDの検査を行ってもよい。
【0033】
本実施の形態では、検査装置Iにおける検査モードと試験モードの切り替えについては、検査作業者の操作盤4cの操作によって行うようにしているが、制御部4aへのダンパDの識別情報の入力をトリガとして検査モード移行し、検査装置本体1によるダンパDの検査の終了をトリガとして試験モードに移行するようにしてもよい。このようにすれば、読取装置3でダンパDの識別情報を読み取ると検査装置Iが自動的に試験モードから検査モードに移行し、検査が終了すると検査装置Iが自動的に試験モードに復帰できる。この場合、試験モードへ切り替える際のトリガを、制御部4aが生成した検査データのサーバ7への送信の完了とすればよく、制御部4aでは検査データの送信が完了したら検査終了と判断して試験モードに復帰すればよい。
【0034】
検査作業者は、検査装置IによるダンパDの検査が終了すると、操作盤4cに設けられた図外の検査書作成釦を押下して、制御盤4に検査書データK1の生成と証明情報の付与を行う処理を実行するよう指令を与える。制御部4aは、操作盤4cに設けられた図外の検査書作成釦の押下をトリガとして、検査年月日、検査時刻といった諸情報と、検体であるダンパDの製造番号、型式、品番といったダンパDの属性を示す情報と、ダンパDを検査して得られる検査データを解析処理して検査結果のグラフ、減衰力の最大値および最小値、検査の合否判定等を所定のフォーマットで表示して検査結果情報とを表示する検査書を画像ファイルとした検査書データK1を生成する。さらに、制御部4aは、処理装置Pにおける第1処理部としての処理を行って、
図5(a)に示すように、生成された検査書データK1の画像中に当該検査書データK1を処理する際の時刻を証明情報として表示されるように時刻を検査書データK1に付与する。具体的には、制御部4aは、前記検査書作成釦の押下をトリガとして、クロック4a3が出力する時刻を読み込んで、この時刻を証明情報として検査書データK1へ付与する。このように、制御盤4は、制御部4aによるソフトウェアの実行によって検査書データK1へ証明情報を付与する処理装置Pにおける第1処理部として機能しており、ハードウェアとして処理装置Pの一部である第1処理部を構成している。
【0035】
なお、制御部4aは、検査書データK1への証明情報の付与にあたっては、画像中への時刻の表示に代えて、或いは、加えて、検査書データK1のファイル名の一部を時刻とするようにしてもよい。制御部4aは、検査データから検査書データK1を生成する処理の過程に証明情報を付与する処理を行って、検査書データK1の生成処理の終了と同時、或いは、終了前に証明情報を付与する処理を終了してもよい。
【0036】
なお、制御部4aは、所定の周期毎に外部に設けられて時刻をカウントする時刻同期サーバ8から時刻情報を得て、クロック4a3の時刻を時刻同期サーバ8から得た時刻に修正して時刻同期サーバ8の時刻に同期させる。所定の周期は、本実施の形態では、1時間とされているが、任意の周期に変更できる。
【0037】
そして、制御盤4は、サーバ7とインターネット回線Nを介して通信可能に接続されており、証明情報が付与された検査書データK1をサーバ7に送信する。なお、制御盤4は、検査書データK1に加えて検査データであるCSVファイルをサーバ7へ送信してもよい。また、前述したように、制御盤4は、検査作業者の操作盤4cにおける検査書作成釦の押下をトリガとして検査書データK1の生成と証明情報の付与処理を行うが、これに替えてダンパDの検査が終了すると自動的に検査書データK1の生成と証明情報の付与処理を行ってもよい。
【0038】
撮影装置Cは、
図6に示すように、ダンパDが保持部1bと加振器1cとに取り付けられた状態における検査装置Iと検体であるダンパDとを撮影可能な第1カメラ10と、ダンパDのシリンダ5に刻印された識別情報である製造番号を撮影可能な第2カメラ11とを備えている。また、検査システムSは、第1カメラ10と第2カメラ11を制御し、第1カメラ10と第2カメラ11とが撮影した画像データを処理するとともに処理装置Pの一部である第2処理部および第3処理部として機能する制御装置12を備えている。
【0039】
第1カメラ10は、ダンパDとダンパDを保持した状態の検査装置Iとを撮影範囲に収める位置に設置されており、制御装置12によって動作が制御されている。第2カメラ11は、ダンパDにおけるシリンダ5に刻印された製造番号を撮影範囲に収める位置に設置されており、制御装置12によって動作が制御されている。なお、第2カメラ11が撮影した画像の解像度と、第2カメラ11とダンパDとの距離とは、撮影した画像を見た作業者がダンパDの製造番号を視認できるように設定されている。
【0040】
制御装置12は、
図7に示すように、第1カメラ10および第2カメラ11を制御するとともに画像データの生成と、処理装置Pの第2処理部および第3処理部の処理を行うためのプログラムを記憶する記憶装置12aと、前記プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置12bと、時刻をカウントするクロック12cと、第1カメラ10および第2カメラ11と検査装置Iにおける制御盤4およびサーバ7とのデータのやり取りを行うためのインターフェース12dとを備えている。制御装置12は、ネットワークLを通じて制御盤4および時刻同期サーバ8と通信可能に接続されている。
【0041】
演算処理装置12bは、検査装置Iにおける制御盤4の操作盤4cの前記検査書作成釦が検査作業者によって押下されると、これをトリガとして第1カメラ10と第2カメラ11とを制御するプログラムを実行し、第1カメラ10および第2カメラ11へ撮影を指示する撮影指令を生成して出力する。第1カメラ10と第2カメラ11は、制御装置12からの指令を受けてダンパDおよび検査装置Iと、ダンパDの識別情報である製造番号を撮影する。つまり、制御装置12は、演算処理装置12bによるソフトウェアの実行によって第1画像データK2および第2画像データK3へ証明情報を付与する処理装置Pにおける第2処理部および第3処理部として機能しており、ハードウェアとして処理装置Pの一部である第2処理部および第3処理部を構成している。
【0042】
インターフェース12dは、第1カメラ10、第2カメラ11、制御盤4および時刻同期サーバ8と制御装置12との間で信号のやり取りを行うとともに、
図1に示すように、外部に設置されているサーバ7とインターネット回線Nを介して制御装置12との間で情報を交換できるようにプロトコルに従って通信される情報を変換する。このように撮影装置Cにおける制御装置12は、インターネット回線Nを介してサーバ7と通信可能に接続されている。
【0043】
前述したように、検査作業者は、検査装置IによるダンパDの検査が終了すると、操作盤4cに設けられた図外の検査書作成釦を押下して、制御盤4に検査書データK1の生成と証明情報の付与を行う処理を実行するよう指令を与える。検査作業者による操作盤4cの検査書作成釦の押下があると、制御盤4は、制御装置12に撮影を指示する制御指令を送信する。制御装置12は、前記制御指令を受け取ると、第1カメラ10と第2カメラ11とにそれぞれ撮影を指示する撮影指令を与える。第1カメラ10と第2カメラ11は、前記撮影指令の入力を受け付けるとそれぞれの撮影を行って、ダンパDと検査装置Iとを撮影した画像を第1画像データK2とし、製造番号を撮影した画像を第2画像データK3として生成して制御装置12へ送信する。
【0044】
制御装置12が第1カメラ10からの第1画像データK2を受け取ると、演算処理装置12bは、処理装置Pにおける第2処理部としての処理を行うプログラムを実行し、
図5(b)に示すように、生成された第1画像データK2の画像中に処理装置Pとしての処理を行う際の時刻を証明情報として表示されるように第1画像データK2に付与する。また、制御装置12が第2カメラ11からの第2画像データK3を受け取ると、演算処理装置12bは、処理装置Pにおける第3処理部としての処理を行うプログラムを実行し、
図5(c)に示すように、生成された第2画像データK3の画像中に処理装置Pとしての処理を行う際の時刻を証明情報として表示されるように第2画像データK3に付与する。具体的には、演算処理装置12bは、前記検査書作成釦の押下をトリガとして、クロック12cが出力する時刻を読み込んで、この時刻を証明情報として第1画像データK2と第2画像データK3へ付与する処理を実行する。なお、制御装置12は、第1画像データK2と第2画像データK3への証明情報の付与にあたっては、画像中への時刻の表示に代えて、或いは、加えて、第1画像データK2と第2画像データK3のファイル名の一部を時刻とするようにしてもよい。
【0045】
なお、第1カメラ10と第2カメラ11が画像データを処理する処理部を備えている場合、制御装置12の第1画像データK2に証明情報を付与する処理を第1カメラ10の処理部に肩代わりさせるとともに、制御装置12の第2画像データK3に証明情報を付与する処理を第2カメラ11の処理部に肩代わりさせてもよい。このように、処理装置Pにおける第2処理部および第3処理部をハードウェアとして第1カメラ10と第2カメラ11に統合する場合、第1画像データK2および第2画像データK3を生成する過程に証明情報を付与する処理を行って、第1画像データK2および第2画像データK3の生成処理の終了と同時、或いは、終了前に証明情報を付与する処理を終了してもよい。なお、第1カメラ10と第2カメラ11に処理装置Pの処理を行わせる場合、第1カメラ10と第2カメラ11とにクロックを設けて証明情報としての付与する時刻をカウントさせればよい。
【0046】
なお、制御装置12は、所定の周期毎に外部に設けられて時刻をカウントする時刻同期サーバ8から時刻情報を得て、クロック12cの時刻を時刻同期サーバ8から得た時刻に修正する。制御装置12は、本実施の形態では、検査装置Iにおける制御盤4がクロック4a3の時刻を時刻同期サーバ8の時刻と同期させるタイミングと同じタイミングでクロック12cの時刻を同期させる。この場合、たとえば、制御盤4と制御装置12の一方が時刻同期サーバ8の時刻を読み込むタイミングで制御盤4と制御装置12の他方へ時刻同期サーバ8の時刻を読み込むように指令を送るようにすればよい。なお、制御盤4と制御装置12とは、異なるタイミングでクロック4a3,12cの時刻を時刻同期サーバ8の時刻と同期させてもよい。また、所定の周期は、前述のように、1時間とされているが、任意の周期に変更できる。前述したところでは、制御盤4および制御装置12は、時刻同期サーバ8から時刻情報を得て時刻の同期を行っているが、時刻同期サーバ8に代えて標準周波数報時電波を受信して時刻を正確に保つ電波時計から時刻情報を得て時刻の同期を行ってもよい。
【0047】
そして、制御装置12は、サーバ7とインターネット回線Nを介して通信可能に接続されており、証明情報が付与された第1画像データK2と第2画像データK3とをサーバ7に送信する。なお、撮影装置Cは、第1カメラ10のみでダンパDと検査装置IとともにダンパDの識別情報を視認可能な状態で撮影可能である場合、第2カメラ11を省略できる。よって、この場合は、画像データは、第1カメラ10が生成した画像データのみで構成されることになる。また、前述したように、制御盤4は、検査作業者による検査書作成釦の押下によって検査書データの生成と証明情報の付与処理を行うが、これに替えてダンパDの検査が終了すると自動的に検査書データの生成と証明情報の付与処理を行う場合、ダンパDの検査が終了すると自動的に制御装置12へ制御指令を入力して、撮影装置Cに画像データの生成と制御装置12に証明情報の付与処理を行わせてもよい。
【0048】
本実施の形態の検査システムSでは、処理装置Pは、検査装置Iの制御盤4と制御装置12とで構成されているが、制御装置12のみが処理装置Pを構成して、制御装置12で検査装置Iの制御盤4で生成した検査書データの処理と撮影装置Cが撮影した画像データの処理とを行うようにしてもよい。その場合、時刻同期サーバ8を利用した時刻の同期は制御装置12のみが行えばよい。このように処理装置Pは、検査装置Iと撮影装置Cと物理的に独立した装置として構成されてもよいし、検査装置Iにおける制御盤4と撮影装置Cに処理装置Pとしての処理を実行させてハードウェアとしては検査装置Iと撮影装置Cと統合されてもよい。
【0049】
時刻同期サーバ8は、時刻をカウントして、制御盤4および制御装置12からの時刻情報の送信要求があった場合に時刻情報を制御盤4および制御装置12へ送信するものである。時刻同期サーバ8は、インターネット回線Nを介して制御盤4および制御装置12とデータのやり取りを行ってもよい。
【0050】
つづいて、サーバ7は、
図8に示すように、コンピュータシステムであり、演算処理装置7aと、サーバ7の制御に必要なプログラムを記憶するとともに演算処理装置7aにおける処理に必要な記憶領域を提供する記憶装置7bと、制御盤4および制御装置12との通信を可能とするインターフェース7cと、キーボードやマウスといった入力装置7dと、表示装置7eと、これら装置を互いに通信可能に接続するバス7fとを備えている。演算処理装置7aのプログラムの実行によってサーバ7の各部が制御され、サーバ7は、検査装置Iにおける制御盤4、制御装置12および後述する端末13,14,15と情報のやり取りを行う。
【0051】
演算処理装置7aは、演算処理を行うCPU等であって、オペレーティングシステムおよび他のプログラムの実行によってサーバ7の各部の制御を行う。記憶装置7bは、ROMおよびRAMを備える他、ハードディスクを備えている。また、記憶装置7bは、制御盤4から送信される検査書データK1、制御装置12から送信される第1画像データK2および第2画像データK3とを記憶する。なお、サーバ7は、磁気ディスク、光学ディスク等の記憶媒体と記憶媒体のデータを読み書き可能なドライブとでなる補助記憶装置や、半導体メモリを備えていてもよい。インターフェース7cは、制御盤4および制御装置12との間で情報を交換できるように、プロトコルに従って通信される情報を変換する。表示装置7eは、演算処理装置7aが処理したデータ等を表示する画面を備えており、たとえば、液晶ディスプレイ等である。また、サーバ7は、サーバとして機能するために必要なオペレーションシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶装置7bに記憶している。
【0052】
サーバ7は、制御盤4および制御装置12とデータのやり取りを行う。サーバ7は、制御盤4から送信される検査書データK1と制御装置12から送信される第1画像データK2と第2画像データK3とで構成される画像データを受け取ると、これら検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を記憶装置7bに記憶させる。その際にサーバ7は、ダンパDの検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を1つのフォルダに格納する。検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3は、操作盤4cにおける検査書作成釦の押下をトリガとして生成されサーバ7に時間的に然程間隔を開けずに送信されるため、サーバ7は、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3の3つのデータを受信するとフォルダを作成して検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を作成したフォルダに格納すればよい。サーバ7は、制御盤4からは検査書データK1以外にもダンパDの製造番号の情報を受信し、フォルダの作成に当たってはフォルダ名にダンパDの製造番号を付与する。
【0053】
なお、処理装置Pが検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3のファイル名に必ず製造番号を付与するなど、同一のダンパDを対象としたファイルであることを認識可能な情報をファイル名に付す場合、サーバ7はファイル名を参照して同一のダンパDの検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を抽出して1つのフォルダに格納すればよい。この場合、処理装置Pで検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3のファイル名に同一のダンパDを対象としたファイルであることを認識可能な情報を付せるように、制御盤4で読み取った製造番号の情報を撮影装置C或いは制御装置12へ送信して撮影装置C或いは制御装置12でも製造番号を認識させるとよい。
【0054】
なお、サーバ7は、製造番号と納品先の顧客とが関連付けされたデータベースを保有している場合、或いは、制御盤4から製造番号ともに顧客の情報も入手できる場合、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を格納したフォルダを顧客専用のフォルダ内に作成するようにしてもよい。
【0055】
また、サーバ7は、製造番号とダンパDの監査機関とが関連付けされたデータベースを保有している場合、或いは、制御盤4から製造番号ともに監査機関の情報も入手できる場合、顧客毎にフォルダを作成することに加え、或いは、これに替えて、検査書データK1を監査する監査機関毎にフォルダを作成して、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を格納したフォルダを監査機関毎のフォルダに振り分けて保存してもよい。このように、サーバ7は、検査書データK1の振り分けルールに応じて、当該ルールに適するフォルダを作成して、検査書データK1を格納したフォルダを上位のフォルダに振り分けて保存してもよい。なお、検査書データK1の振り分けルールを設定しない場合、サーバ7は、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を単に記憶装置7bに記憶させるだけでもよい。
【0056】
サーバ7は、インターネット回線Nを通じて製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15からアクセス要求を受け取ると、IDとパスワードの入力を要求する。サーバ7は、前記端末からIDとパスワードの入力を受け付けると、IDとパスワードとが関連付けされたデータベースを参照し、IDとパスワードとの組み合わせが正しい場合、データベースに登録された権限の範囲でサーバ7に格納されている検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3へのアクセスと操作を受け付ける。
【0057】
ダンパDを製造した製造者の従業員に与えられるIDには、サーバ7に格納されている検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3の編集、変更、削除といったデータの改変を可能とするいかなる権限も与えられていない。よって、このような権限が与えられていないIDが与えられた従業員は、製造者端末13からインターネット回線Nを通じてサーバ7にアクセスしても、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3への閲覧およびダウンロードすることはできるがデータの登録・データの書換・削除といった操作を行えない。なお、前記製造者の従業員のうち、ごく限られた管理者には、不要となったデータの削除のため、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3の削除の権限のあるIDが与えられてもよいが、変更権限のあるIDを与えない。よって、前記製造者の従業員は、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3の変更を一切行えない。サーバ7は、前記製造者が保有・管理するものでもよいが、インターネット経由でユーザーにサービスを提供する事業者が保有・管理する所謂クラウドサーバであってもよい。つまり、製造者の従業員は、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3のダウンロードは行えるが変更できない。
【0058】
つづいて、顧客は、インターネット回線Nを介して顧客端末14からサーバ7にアクセスし、サーバ7に格納された検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3をダウンロードすることができる。顧客に与えられるIDには、予め当該顧客に納品するダンパDのみの検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3(以下、単に「データ群」という)にアクセスするとともに、データ群をサーバ7からダウンロードする権限が付与されているが、データ群の削除、変更をする権限は与えられていない。また、顧客には当該IDと対になるパスワードが伝達される。
【0059】
サーバ7は、顧客が顧客端末14からインターネット回線Nを通じてサーバ7へのアクセス要求を受け取ると顧客端末14へIDとパスワードの入力を要求する。サーバ7は、顧客が操作する顧客端末14からIDとパスワードの入力を受け付けると、IDとパスワードとが関連付けされたデータベースを参照し、IDとパスワードとの組み合わせが正しい場合、IDに付与された権限の範囲で前記端末から操作を受け付ける。
【0060】
顧客に与えられるIDには、顧客向けのダンパDのデータ群の閲覧およびダウンロードのみの権限が付与されており、当該IDでアクセス可能なダンパDの製品番号が関連付けされてデータベースに登録されている。よって、サーバ7は、データベースを参照して顧客がアクセス可能なフォルダ内のデータ群の閲覧およびダウンロードの操作のみを許容するが、それ以外の操作を受け付けない。なお、サーバ7は、顧客のIDを利用したアクセスがある場合、顧客が閲覧不能なフォルダについては端末の画像に表示させず閲覧可能なフォルダのみを表示させる制御を行ってもよい。
【0061】
さらに、監査機関は、インターネット回線Nを介して監査機関端末15からサーバ7にアクセスし、サーバ7に格納された検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3をダウンロードすることができる。監査機関に与えられるIDには、予め当該監査機関が監査するダンパDのみの検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3(以下、単に「データ群」という)にアクセスするとともに、データ群をサーバ7からダウンロードする権限が付与されているが、データ群の削除、変更をする権限は与えられていない。また、監査機関には当該IDと対になるパスワードが伝達される。
【0062】
サーバ7は、監査機関の従業員が監査機関端末15からインターネット回線Nを通じてサーバ7へのアクセス要求を受け取ると監査機関端末15へIDとパスワードの入力を要求する。サーバ7は、監査機関の従業員が操作する監査機関端末15からIDとパスワードの入力を受け付けると、IDとパスワードとが関連付けされたデータベースを参照し、IDとパスワードとの組み合わせが正しい場合、IDに付与された権限の範囲で前記端末から操作を受け付ける。
【0063】
監査機関に与えられるIDには、監査機関の監査対象のダンパDのデータ群の閲覧およびダウンロードのみの権限が付与されており、当該IDでアクセス可能なダンパDの製品番号が関連付けされてデータベースに登録されている。よって、サーバ7は、データベースを参照して監査機関の従業員がアクセス可能なフォルダ内のデータ群の閲覧およびダウンロードの操作のみを許容するが、それ以外の操作を受け付けない。なお、サーバ7は、監査機関のIDを用いたアクセスがある場合、監査機関の従業員が閲覧不能なフォルダについては端末の画像に表示させず閲覧可能なフォルダのみを表示させる制御を行ってもよい。
【0064】
なお、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、
図9に示すように、それぞれ、演算処理装置100と、端末制御に必要なプログラムを記憶するとともに演算処理装置100における処理に必要な記憶領域を提供する記憶装置101と、サーバ7とインターネット回線Nを介しての通信を可能とするインターフェース102と、キーボードやマウスといった入力装置103と、表示装置104と、プリンター105と、補助記憶装置106と、これら装置を互いに通信可能に接続するバス107とを備えた周知のコンピュータ端末とされている。
【0065】
演算処理装置100は、演算処理を行うCPU等であって、オペレーティングシステムおよび他のプログラムの実行によって端末の各部の制御を行う。記憶装置101は、ROMおよびRAMを備える他、ハードディスクを備えている。インターフェース102は、サーバ7との間で情報を交換できるように、プロトコルに従って通信される情報を変換する。表示装置104は、演算処理装置100が処理したデータ等を表示する画面を備えており、たとえば、液晶ディスプレイ等である。補助記憶装置106は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体と記憶媒体のドライブ装置とで構成されており、記憶媒体は、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等である。また、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、サーバ7へのアクセスおよびサーバ7のフォルダの操作を行うためのアプリケーションプログラム、サーバ7からダウンロードした検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を表示装置104の画面上に表示して閲覧するためのアプリケーションプログラムを記憶装置101に記憶している。サーバ7へのアクセスおよびサーバ7のフォルダの操作を行うためのアプリケーションプログラムは、たとえば、ブラウザ等とされればよいが、他にもサーバ7への接続と操作を行うための専用プログラムとされてもよい。
【0066】
製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、インターネット回線Nを介してサーバ7と通信可能とされており、演算処理装置100のプログラムの実行によって端末各部が制御され、サーバ7と情報のやり取りを行う。
【0067】
製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15のオペレータがサーバ7にアクセスする操作を行った場合、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15オペレータのIDとパスワードの入力欄を表示装置104の画面に表示して、オペレータのIDとパスワードの入力を求める。
【0068】
オペレータの操作により製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15から送信されるIDとパスワードとをサーバ7が受け取ると、サーバ7は、前記IDとパスワードが正しい場合、IDに付与された閲覧可能なフォルダ内の検査データに限りアクセスを許可する。また、サーバ7は、アクセスが許可されたフォルダ内のデータ群の製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15へのダウンロードも許可される。
【0069】
具体的には、ID毎にアクセス可能なデータ群を閲覧できる閲覧範囲が設定されたデータベースを保有しており、サーバ7は、閲覧範囲を設定するデータベースを参照して、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15の閲覧要求に対して閲覧の可否を判断する。
【0070】
このように、アクセスが認証された場合のみ、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、サーバ7からアクセスが認証されたフォルダ内のデータ群のダウンロードが可能となる。製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、画像データである検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データを表示させるアプリケーションプログラムを実行することで表示装置104に表示させ得る。よって、閲覧が許可されたオペレータは、表示装置104上でデータ群を閲覧できる。また、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、オペレータの要求によって、データ群の画像をプリンター105で紙媒体に印刷できる。製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、オペレータの要求によって、補助記憶装置106における記憶媒体へ記憶させることも可能である。
【0071】
このように、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15のオペレータは、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15を操作してアクセスの認証が受けられるとアクセス可能となったデータ群の閲覧が可能であり、サーバ7から当該データ群の入手も可能である。
【0072】
なお、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15は、タブレット端末、スマートフォンやモバイルPCといった機器であってもよく、データ群の閲覧を行うためのアプリケーションプログラムについてはブラウザ上で動作するものでもよい。また、サーバ7は、特定の製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15からのアクセスのみを許容するものでもよいが、IDとパスワードの組み合わせが正しい場合にインターネット回線Nに接続された任意の端末からのアクセスを許容してもよい。
【0073】
なお、サーバ7は、データ群に外部からアクセスされたり、データ群が操作されたりした場合、操作内容を特定可能なデータログを生成して記憶装置7bに記憶させる。なお、データログには、データ群に対する操作内容の他、IPアドレス、MACアドレス、オペレータのIDといった情報を含めておくと、操作先の端末の特定やオペレータの特定が可能となるので好ましい。
【0074】
以下、
図10に示したフローチャートを用いて検査システムSの動作を説明する。検査装置Iの検査作業者は、検査装置Iにて検体であるダンパDの検査に備え、検体であるダンパDを検査装置本体1の保持部1bと加振器1cとに介装しておく。
【0075】
検査装置IへのダンパDの取り付け作業の完了の後、ダンパDの検査を行うため検査装置Iを検査モードとして、検査作業者が読取装置3でダンパDに貼付された二次元コードを読み取ると、読取装置3で読み取ったダンパDの情報が制御盤4に入力される(ステップF1)。なお、検査装置Iの検査作業者は、読取装置3でダンパDの識別情報を読み取る作業を行った後で、検体であるダンパDを検査装置本体1の保持部1bと加振器1cとに介装してもよい。
【0076】
制御盤4は、ダンパDの識別情報が入力されると検査モードへ移行して、データベースDBへアクセスして、識別情報に関連付けされた検査条件を抽出する(ステップF2)。
【0077】
なお、検査条件が記録されるデータベースDBがサーバ7に格納されている場合、制御盤4は、識別情報の入力によってサーバ7へ識別情報を送信してサーバ7に検査条件を要求してもよい。この場合、サーバ7は、識別情報の入力によってデータベースDBを参照して入力された識別情報に基づいてこれに関連付けられた検査条件を抽出して制御盤4へ検査条件を送信すればよい。
【0078】
制御盤4は、識別情報に関連付けられた検査条件を入手できたか判断し(ステップF3)、検査条件を入手できた場合には、ダンパDの検査に必要なパラメータを得られた検査条件が指定するパラメータの値に設定する(ステップF4)。
【0079】
他方、制御盤4は、識別情報に関連付けられた検査条件がデータベースDBに登録されておらず検査条件を入手できない場合、ダンパDの検査を行うことなく処理を終了する。
【0080】
制御盤4は、入手した検査条件に基づいてダンパDの検査に必要なパラメータの設定が完了すると、制御盤4に設けた図外の表示装置に検査実行を促す表示をして、検査実行指示を待つ(ステップF5)。検査作業者の制御盤4に設けられた前記検査開始釦の押下による信号入力を検査実行指示としており、検査開始釦の押下による信号の入力によってダンパDの検査を開始する(ステップF6)。
【0081】
制御盤4は、ダンパDの検査条件にしたがってダンパDへ振動を与えて、ストロークセンサ2aとロードセル2bが検知したデータを順次取り込んで記憶し、検査が終了すると検査データの値がフィールドに記述されたCSVファイルを検査データとして生成する(ステップF7)。なお、制御盤4は、ダンパDの検査にあたって、温度センサ2c,2dが検知した温度についても取り込んで、CSVファイルのフィールドに記述する。また、検査条件が振動パターンを複数回に亘ってダンパDに与えることを指示している場合、検査装置Iは、ダンパDを指示する回数の加振を行って、ストロークセンサ2aとロードセル2bが検知した値をフィールドに記述したCSVファイルを検査データとして生成する。
【0082】
つづいて、制御盤4は、検査書データ作成指示を待つ(ステップF8)。検査システムSでは、検査作業者の制御盤4に設けられた前記検査書作成釦の押下による信号入力を検査書データ作成指示としており、制御盤4は、検査作業者の検査書作成釦の押下による信号の入力によって検査データを解析処理して検査書データK1を生成するとともに検査書データK1に証明情報を付与する処理を実行するとともに、制御装置12へ画像データの生成を指示する制御指令を出力する(ステップF9)。
【0083】
制御装置12は、前記制御指令を受け取ると、撮影装置Cにおける第1カメラ10および第2カメラ11に撮影指令を出力する(ステップF10)。第1カメラ10および第2カメラ11は、撮影指令の入力をトリガにして、それぞれの撮影の被写体であるダンパDおよび検査装置Iと、ダンパDの識別情報とを撮影し、画像データとしての第1画像データK2および第2画像データK3を生成する(ステップF11)。
【0084】
撮影装置Cが第1画像データK2および第2画像データK3を生成すると、制御装置12は、第1画像データK2および第2画像データK3にそれぞれ証明情報として時刻を付与する処理を実行する(ステップF12)。
【0085】
制御盤4は、時刻を付与した検査書データK1をサーバ7へ送信し(ステップF13)、制御装置12は、時刻を付与した第1画像データK2および第2画像データK3をサーバ7へ送信する(ステップF14)。そして、サーバ7は、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を受信すると、フォルダを作成して検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を当該フォルダに格納して記憶する(ステップF15)。なお、制御盤4と制御装置12の処理は、別々に行われるので、制御盤4と制御装置12は、互いに相手の時刻を付与する処理の完了を待たずにサーバ7へデータを送信してもよい。
【0086】
つづいて、
図11に示したフローチャートを用いて、製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15とサーバ7の動作について説明する。オペレータが製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15のいずれかの端末にてサーバ7にアクセスするためのアプリケーションプログラムを起動し、サーバ7へアクセスすると、サーバ7は、オペレータのIDとパスワードの入力欄を表示装置104の画面に表示させてオペレータのIDとパスワードの入力を求める(ステップF21)。
【0087】
オペレータによるIDとパスワードの入力がなされて入力装置103における実行キーが押下されると、端末は、入力されたIDとパスワードとをサーバ7へ送信する(ステップF22)。
【0088】
サーバ7は、IDとパスワードとが関連付けされて記憶されているファイルを参照し、IDとパスワードが正しいか否かを判断する(ステップF23)。ステップF23の判断の結果、IDとパスワードが正しい場合、サーバ7は、当該IDで閲覧可能なデータ群のフォルダの情報を端末へ送信する(ステップF24)。端末は、フォルダ情報を受け取るとフォルダ内に格納されているデータ群の一覧を表示装置104の画面に表示し(ステップF25)、オペレータのデータ群への閲覧やダウンロードの操作を受け付ける。端末からデータ群の閲覧やダウンロードが要求されると(ステップF26)、サーバ7は、要求に応じてデータ群を端末へ送信する(ステップF27)。端末は、データ群を受け取ると、オペレータの要求に応じてデータ群を表示装置104の画面に表示させたり、記憶装置101に記憶させる。
【0089】
なお、サーバ7は、IDとパスワードとが間違っている場合、端末からのフォルダへのアクセスを認めず、処理を終了する。また、サーバ7は、アクセスを許可しないフォルダについては端末に表示されないように制御してもよいし、検査データ毎にアクセス権限の有無を判断するようにしてもよい。
【0090】
また、サーバ7は、端末によるデータ群の操作が行われた際に、都度、少なくとも操作内容を含むデータログを作成して記憶する。サーバ7は、端末からの操作か否かを問わず、データ群への何らかの操作があると、必ずデータログを生成して記憶する。データログには、操作内容の他、日時、オペレータのID、パスといった情報が含まれてもよい。
【0091】
なお、本実施の形態では、サーバ7側でオペレータのIDとパスワードの正誤を判断して検査データのアクセスの可否を制御しているが、端末側でオペレータのIDとパスワードの正誤を判断して、端末側でオペレータのデータ群へのアクセスを制限してもよい。
【0092】
以上のように、検査システムSは、以上のように動作して、ダンパDの検査書データK1、ダンパDとともに検査装置Iを撮影した第1画像データK2およびダンパDの識別情報を撮影した第2画像データK3に証明情報を付与してサーバ7へ送信して、サーバ7に検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3を記憶させる。サーバ7に格納された検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3は、製造者端末13、顧客端末14、監査機関端末15および任意の端末から閲覧可能となる。
【0093】
前述したように、本実施の形態の検査システムSは、構造物の免震或いは制振に利用されるダンパ(検体)Dを検査して検査書データK1を生成する検査装置Iと、ダンパ(検体)Dとともにダンパ(検体)Dが検査を行える状態で取り付けられた検査装置Iとダンパ(検体)Dを識別するためにダンパ(検体)Dに表示される識別情報とを撮影して第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3を生成する撮影装置Cと、検査書データK1と第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3とが同一のダンパ(検体)Dを対象としていることを証明する時刻(証明情報)を検査書データK1と画像データK2,K3とに付与する処理装置Pとを備えて構成されている。
【0094】
また、本実施の形態の検査方法は、構造物の免震或いは制振に利用されるダンパ(検体)Dを検査して検査結果を検査書データK1として出力する検査行程と、ダンパ(検体)Dとともにダンパ(検体)Dが検査を行える状態で取り付けられた検査装置Iとダンパ(検体)Dに表示される識別情報とを撮影して第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3を出力する撮影行程と、検査書データK1と第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3とが同一のダンパ(検体)Dを対象としていることを証明する時刻(証明情報)を検査書データK1と第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3とに付与する処理行程とを含んで構成されている。
【0095】
このように構成された検査システムSおよび検査方法では、ダンパ(検体)Dの検査書データK1と、ダンパ(検体)Dと検査装置Iとダンパ(検体)Dとが撮影された第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3とのそれぞれに証明情報を付与する処理を行う時刻を証明情報として付与する。
【0096】
前述のようにして検査システムSおよび検査方法の処理によって作成された検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3には、処理装置Pにおける処理の実行順序やクロック4a3,12cの誤差によって時間的なずれが生じたとしても、各データに付与されている証明情報としての時刻のずれは概ね1分以内程度となる。つまり、検査書データK1に付与されている時刻と、ダンパDと検査装置Iを撮影した第1画像データK2に付与されている時刻と、ダンパDの識別情報を撮影した第2画像データK3に付与されている時刻のうち、最も早い時刻から最も遅い時刻までのずれは1分以内程度となる。
【0097】
これに対して、検査装置IにダンパDを着脱する作業は、少なくとも数分以上を要するため、もし、或るダンパについて行った検査書データK1と、このダンパとは異なるダンパを撮影した第1画像データK2と第2画像データK3とが組みとされた場合、検査書データK1に付与された時刻と第1画像データK2および第2画像データK3に付与された時刻との差に数分以上の差が生じている筈である。換言すれば、検査書データK1に付与された時刻と、第1画像データK2および第2画像データK3に付与された時刻との差が1分以内であれば、検査書データK1が得られたダンパDと、第1画像データK2および第2画像データK3に撮影されているダンパDとが同一のダンパDであるということである。
【0098】
よって、顧客および監査機関のオペレータは、検査書データK1に付与された時刻と、第1画像データK2および第2画像データK3に付与された時刻を確認すれば、検査書データK1が得られたダンパDと、第1画像データK2および第2画像データK3に撮影されているダンパDとが同一のダンパDであることを容易に理解できる。
【0099】
そして、第1画像データK2の画像からダンパDが検査装置Iに取り付けられていることを、第2画像データK3の画像から第1画像データの画像に写っているダンパDの製品番号を確認できるので、顧客および監査機関のオペレータは、検査装置Iに取り付けられていたダンパDの製品番号を知ることができる。それゆえ、顧客および監査機関のオペレータは、検査書データK1の画像から読み取れる製品番号と第2画像データK3の画像で確認した製造番号の一致をもって、検査書データK1が確実に検査対象であったダンパDの検査によって得られたことの確証を得られる。
【0100】
このように、同じダンパDの検査によって生成される検査書データK1と同じダンパDが検査装置Iに取り付けられていたこと証明するための画像データK2,K3とに、証明情報が付与されることで関連付けられるので、検査書データK1が得られたダンパDと、第1画像データK2および第2画像データK3に撮影されているダンパDとが同一のダンパDであることを証明できる。つまり、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3とが同一のダンパDを対象として生成されたものであることが保証される。
【0101】
以上より、本実施の形態における検査システムSおよび検査方法によれば、検査書データK1、画像データである第1画像データK2および第2画像データK3とに証明情報を付与することで、検査書データK1が出力された際に、ダンパ(検体)Dが検査装置Iに取り付けられていたことを証明できるから、検査書データK1が実際に検査されたダンパ(検体)Dについて得られた検査書データK1であることを保証できる。
【0102】
なお、証明情報を時刻とする場合、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3が同一のダンパ(検体)Dに対して得られたデータであることを保証できるためには、前記時刻の差の最大値がダンパ(検体)Dの検査装置Iへの着脱時間より短ければよい。したがって、検査書データK1に付与された時刻と、第1画像データK2および第2画像データK3に付与された時刻の差の最大値が前述した1分以内であることを以て、検査書データK1が実際に検査されたダンパ(検体)Dについて得られたデータであることを保証しているが、着脱時間よりも短い任意の時間を基準として検査書データK1が実際に検査されたダンパ(検体)Dについて得られた検査書データK1であることを保証できる。
【0103】
また、証明情報は、前述したところでは、時刻とされているが、番号や文字列等とされてもよい。つまり、一回のダンパ(検体)Dの検査によって生成される検査書データK1および画像データとしての第1画像データK2および第2画像データK3をセットとして、処理装置Pは、同じセット内の検査書データK1および画像データとしての第1画像データK2および第2画像データK3には同一の番号或いは文字列を付与し、異なるセット同士では異なる番号或いは文字列となるように証明情報を付与してもよい。また、証明情報は、数字、記号および文字を任意に配列して組み合わせたものでもよい。たとえば、処理装置Pは、番号を付与する場合、順次、番号を繰り上げすることで異なるセット同士に同じ番号を付与しなければよい。このように証明情報を番号としても、同じダンパDの検査によって生成される検査書データK1と同じダンパDが検査装置Iに取り付けられていたことを証明するための画像データK2,K3に証明情報が付与されることで関連付けられるので、検査書データK1が得られたダンパDと、第1画像データK2および第2画像データK3に撮影されているダンパDとが同一のダンパDであることを証明できる。
【0104】
また、画像データは、第1カメラ10がダンパ(検体)Dと検査装置Iとを撮影すれば、ダンパ(検体)Dの識別情報をオペレータが視認可能な態様で撮影可能であれば、第1画像データK2のみであってもよい。
【0105】
さらに、本実施の形態の検査システムSでは、画像データである第1画像データK2および第2画像データK3の撮影はダンパ(検体)Dの検査終了後に行っているが、検査前に行ってもよい。このような場合、ダンパ(検体)Dの検査時間が長いことが想定されるので、証明情報をデータ生成時の時刻とすると、検査後にしか生成されない検査書データK1に付与される時刻と検査前に撮影されて生成される画像データである第1画像データK2および第2画像データK3に付与される時刻との差が検査に要する時間差以上となり、一般的に検査に要する時間はダンパDの着脱に要する時間以上となるから、証明情報を処理装置Pの処理時の時刻とするとよい。このようにすれば、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3に付与される各時刻の差が小さくなり、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3が同一のダンパ(検体)Dに対して得られたデータであることを保証しやすくなる。
【0106】
また、本実施の形態の検査システムSでは、検査書データK1が画像データとして生成される。このように構成された検査システムSによれば、検査書データK1の改竄が難しくなって、検査書データK1の信頼性が向上する。
【0107】
また、本実施の形態の検査システムSにおける撮影装置Cは、検査装置Iをダンパ(検体)Dとともに撮影する第1カメラ10と、ダンパ(検体)Dに表示された識別情報を撮影する第2カメラ11とを有し、画像データは、第1カメラ10が撮影した第1画像データK2と、第2カメラ11が撮影した第2画像データK3とで構成されている。このように構成された検査システムSによれば、検査装置Iが大型で第1画像データK2を見てもダンパ(検体)Dに表示された識別情報を読み取れない場合や、検査装置Iへの取付姿勢によってダンパ(検体)Dの識別情報を第1カメラ10で撮影できない場合であっても、ダンパ(検体)Dの識別情報の撮影が可能となって検査書データK1が実際に検査されたダンパ(検体)Dについて得られた検査書データK1であることを保証できる。
【0108】
そして、本実施の形態の検査システムSにおける処理装置Pは、証明情報を時刻として、検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2および第2画像データ(画像データ)K3とに時刻を画像として付与する。このように構成された検査システムSによれば、客観的な時刻を利用して検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2および第2画像データ(画像データ)K3と関連付けでき、かつ、時刻を画像として付与するためにデータ改竄が困難となるので、検査書データK1の信頼性を効果的に高め得る。
【0109】
また、本実施の形態の検査システムSにおける処理装置Pは、証明情報を時刻として、検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2および第2画像データ(画像データ)K3のファイル名に時刻を含ませるように処理してもい。このように構成された検査システムSによれば、客観的な時刻をファイル名に加入させるようにして検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2および第2画像データ(画像データ)K3と関連付けでき、検査書データK1の信頼性を向上させ得る。
【0110】
さらに、本実施の形態の検査システムSにおける処理装置Pは、自己がカウントする時刻を検査書データK1に証明情報として付与する第1処理部と、自己がカウントする時刻を第1画像データK2に証明情報として付与する第2処理部と、自己がカウントする時刻を第2画像データK3に証明情報として付与する第3処理部と、所定周期で第1処理部、第2処理部および第3処理部における時刻の同期を行う時刻同期サーバ8とを備えて構成されている。このように構成された検査システムSによれば、時刻同期サーバ8を備えているので、検査書データK1、第1画像データK2および第2画像データK3をそれぞれ処理する処理装置Pがハードウェアとして第1処理部、第2処理部および第3処理部とに分かれても証明情報として付与される時刻のずれを小さくできる。よって、このように構成された検査システムSによれば、検査書データK1が得られたダンパ(検体)Dと、第1画像データK2および第2画像データK3に撮影されているダンパ(検体)Dとが同一のダンパ(検体)Dであるということの確実性を向上できる。
【0111】
また、本実施の形態の検査システムSは、証明情報の付与後の検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3とを記憶し、記憶された検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3の変更を受け付けないサーバ7を備え、処理装置Pは、証明情報の付与後の検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3をサーバ7へ送信する。このように構成された検査システムSでは、検査装置Iがダンパ(検体)Dの検査を終了すると、証明情報が付与された検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3とが人を介さずに自動的にサーバ7へ送信されて記録される。よって、本実施の形態の検査システムSによれば、検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3が人為的なミスによって変更されることなくサーバ7に記録され、サーバ7がデータの変更を受け付けないので、検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3の改竄を防止して検査書データK1の信頼性を効果的に向上できる。
【0112】
なお、処理装置Pとサーバ7は、インターネット回線Nではなく、LANやWAN(Wide Area Network)等といったネットワークを介して検査書データK1を送受信することも可能である。また、サーバ7がインターネット回線Nのみを介して製造者端末13、顧客端末14および監査機関端末15との通信の相互の通信についても、インターネット回線N以外のネットワークを通じて行ってもよい。しかしながら、検査システムSにおける処理装置Pがインターネット回線Nを必ず介してサーバ7と送受信可能とされる場合、サーバ7をダンパDの製造者の管理が及ばない外部のクラウドサーバとすることができる。よって、このように処理装置Pがインターネット回線Nを必ず介してサーバ7と送受信可能とされる場合における検査システムSによれば、サーバ7に記録される検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3の信頼性を効果的に向上できる。
【0113】
また、本実施の形態の検査システムSでは、ダンパ(検体)Dの識別情報がダンパ(検体)Dに刻印された製造番号とされているので、製品を一つずつ識別可能であるとともに改竄に対する強度が高い刻印を撮影装置Cが撮影することになるので、検査書データK1、第1画像データ(画像データ)K2と第2画像データ(画像データ)K3の信頼性を効果的に向上できる。
【0114】
そして、前述したように、本実施の形態の検査システムSは、ダンパ(検体)Dを所定の検査条件で検査する検査装置Iと、ダンパ(検体)D上に表示されたダンパ(検体)Dを識別する識別情報を読み取る読取装置Rと、ダンパ(検体)Dの識別情報とダンパ(検体)Dの検査条件とを関連付けられて登録されたデータベースDBとを備え、検査装置Iが読取装置3で読み取られたダンパ(検体)Dの識別情報に関連付けされた検査条件をデータベースDBから読み込んで、読み込んだ検査条件に基づきダンパ(検体)Dの検査を行う。
【0115】
このように構成された検査システムSでは、ダンパ(検体)Dの識別情報が一度読み込まれると、人が介入せずに検査条件の設定が自動的に行われて、ダンパ(検体)Dの検査が実行されるので、人為的な検査条件の変更がなされる恐れがない状態でダンパ(検体)Dの検査を実行できる。
【0116】
よって、本実施の形態の検査システムSによれば、予めデータベースDBに正しい検査条件を入力しておけば、ダンパ(検体)Dの検査に当たり、都度、検査装置Iに検査条件を検査作業者が入力する必要がないので、免震或いは制振に供されるダンパ(検体)Dの検査において人為的ミスを防止して適正な検査を実行できる。なお、前述した通り、検査システムSは、検査作業者が検査条件を検査装置Iに対して設定してダンパ(検体)Dの検査を行ってもよい。
【0117】
なお、検査に供されるダンパDは、減衰力を切り換えるためのレバー210を備えている場合がある。このようなダンパDは、たとえば、
図12に示すように、シリンダ200と、シリンダ200内に移動可能に挿入されてシリンダ200内を伸側室201と圧側室202とに区画するピストン203と、シリンダ200内に移動可能に挿入されてピストン203に連結されるピストンロッド204と、低減衰力を発生するための低減衰バルブ205が設けられて伸側室201と圧側室202とを連通する低減衰流路206と、高減衰力を発生するための高減衰バルブ207が設けられて伸側室201と圧側室202とを連通する高減衰流路208と、低減衰流路206と高減衰流路208とのいずれか一方のみを選択的に有効とする切換弁209と、切換弁209を手動により切り替え可能なレバー210とを備えている。よって、このダンパDによれば、レバー210の切り換えによって低減衰流路206と高減衰流路208のいずれか一方を選択できる。よって、レバー210が低減衰流路206を選択している場合、ダンパDに検査装置Iから振動が与えられるとダンパDは低減衰バルブ205の特性に基づいて低減衰力を発生し、レバー210が高減衰流路208を選択している場合、ダンパDに検査装置Iから振動が与えられるとダンパDは高減衰バルブ207の特性に基づいて高減衰力を発生する。
【0118】
このようにダンパDが検体であって、ダンパDが減衰力を切り換えるためのレバー210を備えている場合、ダンパDを検査して検査書データK1が検査装置Iによって作成された際に、レバー210がダンパDに低減衰力を出力させる位置にあるのか高減衰力を出力させる位置にあるのかの確認ができれば、検査書データK1の信頼度が向上する。なぜなら、レバー210の位置の選択でダンパDの減衰力が切り換わるため、検査時のレバー210の位置の確認ができれば、検査書データK1から読み取れる検査結果が適正なものであるのかを直ちに判断できるからである。よって、このようにダンパDが減衰力を切り換えるためのレバー210を備えている場合には、撮影装置Cは、レバー210の撮影が可能であってもよい。
【0119】
このような場合、撮影装置Cは、レバー210がダンパDの減衰力をどのように設定しているのかを画像に表示できるようにダンパDを撮影できればよいので、第1カメラ10或いは第2カメラ11でレバー210を撮影できれば新たにレバー210を撮影するカメラを備えなくともよい。ただし、撮影装置Cにおける第1カメラ10および第2カメラ11がレバー210の位置を画像で認識できるように撮影できない場合には、
図3中の破線で示すように、レバー210のダンパDに対する位置を証明するためにレバー210を撮影する第3カメラ20を備えていてもよい。また、このように撮影装置Cが第3カメラ20を備える場合、制御装置12は、第3カメラ20で撮影した第3画像データに証明情報を付与する処理を行って、
図13に示すように、生成された第3画像データの画像中に時刻を証明情報として表示されるように第3画像データに付与する。そして、制御装置12は、証明情報の付与後の第3画像データをサーバ7へ送信すればよい。
【0120】
このようにダンパDがレバー210を備えている場合、検査システムSがレバー210の位置を撮影して生成した画像データである第3画像データに、検査書データK1および他の画像データである第1画像データK2および第2画像データK3とともに証明情報を付与すれば、検査書データK1の対象となっているダンパDのレバー210の位置も確認できるので、検査書データK1の信頼性も向上するのである。
【0121】
なお、前述した一実施の形態の検査システムSおよび検査方法の説明に当たっては、検体をダンパDとした例を用いて説明したが、検体はダンパDに限られず、器具、装置、部品であってもよい。また、検査装置Iについても検体に振動を与える振動検査を行うものに限られず、検体を外方から検査装置Iとともに撮影可能な検査装置Iであれば検査システムSに利用できる。さらに、前述したが、撮影装置Cが単一のカメラのみで検体、検査装置および検体の識別情報を視認可能な状態で撮影可能であれば単一のカメラのみを備えて構成されてもよく、その場合に証明情報を付与する対象となり検査書データとデータ群を成す画像データは一つとなることは当然である。また、撮影装置Cが備えるカメラの台数は任意に増やすことができる。冗長ではあるが、検体と検査装置Iとを複数のカメラで撮影して検体と検査装置Iとを撮影した画像データが複数生成され、さらに、検体の識別情報を複数のカメラで撮影して識別情報を撮影した画像データが複数生成される場合、検査書データと撮影によって生成された全部の画像データとに証明情報を付与する態様の検査システムSも採用可能である。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0123】
4・・・制御盤(第1処理部)、7・・・サーバ、8・・・時刻同期サーバ、10・・・第1カメラ、11・・・第2カメラ、12・・・制御装置(第2および第3処理部)、20・・・第3カメラ、210・・・レバー、監査機関端末、C・・・撮影装置、D・・・ダンパ(検体)、I・・・検査装置、K1・・・検査書データ、K2・・・第1画像データ(画像データ)、K3・・・第2画像データ(画像データ)、N・・・インターネット回線、P・・・処理装置、R・・・読取装置、S・・・検査システム