(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122321
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20220816BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019455
(22)【出願日】2021-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】城間 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK03
3C022KK12
3C022KK14
3C022LL02
(57)【要約】
【課題】壊れにくく安定して拘束できる切削インサートを提供する。
【解決手段】縦置きインサートとして構成された切削インサート2は、第1主切れ刃11に隣接する第1すくい面11Rと、第2主切れ刃14に隣接する第2すくい面14Rと、第1及び第2すくい面11R,14Rよりも更に内側に位置し、第2端面20を使用するとき工具本体3に当接する拘束面19と、拘束面19から突出した補強部40と、を有している。補強部40は、第1すくい面11Rと第2すくい面14Rとの間に架設され且つ拘束面19を二分する第3凸条43と、第3凸条43の一端431に連結され且つ第1すくい面11Rと拘束面19との境界B41の少なくとも一部を覆うように延在する第1凸条41と、第3凸条43の他端432に連結され且つ第2すくい面14Rと拘束面19との境界B42の少なくとも一部を覆うように延在する第2凸条42と、を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体に固定されて刃先交換式の転削工具を構成する切削インサートであって、
第1端面と、該第1端面とは反対側の第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面を繋ぐ周側面と、を有し、該周側面を貫通する取付け孔が形成された縦置きインサートとして構成され、
前記第2端面は、
前記第2端面の外周に形成された第3主切れ刃を有し、
前記第1端面は、
前記第1端面の外周に形成された第1主切れ刃と、
前記第1主切れ刃よりも前記第1端面の内側に位置し且つ前記第1主切れ刃に隣接する第1すくい面と、
前記第1端面の外周に形成され且つ前記第1主切れ刃に対向する第2主切れ刃と、
前記第2主切れ刃よりも前記第1端面の内側に位置し且つ前記第2主切れ刃に隣接する第2すくい面と、
前記第1すくい面及び前記第2すくい面よりも更に内側に位置し、前記第3主切れ刃を使用するとき前記工具本体に当接する拘束面と、
前記第2端面から前記第1端面への向きに前記拘束面から突出した補強部と、を有し、
前記補強部は、
前記第1すくい面と前記第2すくい面との間に架設され且つ前記拘束面を二分する第3凸条と、
前記第3凸条の一端に連結され且つ前記第1すくい面と前記拘束面との境界の少なくとも一部を覆うように延在する第1凸条と、
前記第3凸条の他端に連結され且つ前記第2すくい面と前記拘束面との境界の少なくとも一部を覆うように延在する第2凸条と、を有している、
切削インサート。
【請求項2】
前記第1端面の外周は、第1乃至第4コーナを有する略矩形に形成され、
前記第1主切れ刃は、コーナ切れ刃が形成された第1コーナと、コーナ切れ刃が形成されていない第4コーナとの間の長辺に位置し、
前記第1凸条は、前記第3凸条の一端と前記第1コーナとの間に配置される一方、前記第3凸条の一端と前記第4コーナとの間に配置されない、
請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記補強部は、前記第1端面の中心に位置し且つ前記第2端面から前記第1端面への向きに前記第3凸条から突出した突起部を更に有している、
請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記第1端面から前記第2端面への向きに前記第1端面を見たとき、前記第3凸条は、前記取付け孔の軸線に重畳している、
請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
使用する切れ刃とそのすくい面とが形成されている面を切削インサートの上面とすると、上面と反対側にある切削インサートの下面には工具本体に当接する拘束面が形成されている。上下を反転させて再使用できる切削インサートでは、上面及び下面の各々にすくい面及び拘束面の両方が形成されている。平置きインサートでは、締付けねじを挿通する取付け孔が上面及び下面を貫通するように形成されている。一方、縦置きインサートでは、上面及び下面ではなく、それらを繋ぐ側面を貫通するように取付け孔が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦置きインサートでは、取付け孔に挿通された締付けねじに対して軸方向ではなく径方向に切削抵抗が作用する。締付けねじが細いと径方向に曲がってしまうおそれがあるため、縦置きインサートでは、同じようなサイズの平置きインサートと比べて取付け孔の内径が大きくなる。取付け孔の内径が大きくなると、上面と取付け孔と間に肉厚が薄い部分が生じて切削インサートが割れやすくなる。
【0005】
また、縦置きインサートでは、上面及び下面に取付け孔がないため、同じようなサイズの平置きインサートと比べて上面及び下面が小さくなる。拘束面と切れ刃との高低差が大きく且つ上面及び下面が小さいため、縦置きインサートは、刃先角が鋭利なものが多い。刃先角が小さいと刃先強度が低くなり、切れ刃の欠けが生じやすくなる。
【0006】
そこで、本発明は、壊れにくく安定して拘束できる切削インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る切削インサートは、工具本体に固定されて刃先交換式の転削工具を構成する。切削インサートは、第1端面と、該第1端面とは反対側の第2端面と、第1端面及び第2端面を繋ぐ周側面と、を有し、該周側面を貫通する取付け孔が形成された縦置きインサートとして構成されている。第2端面は、第2端面の外周に形成された第3主切れ刃を有し、第1端面は、第1端面の外周に形成された第1主切れ刃と、第1主切れ刃よりも第1端面の内側に位置し且つ第1主切れ刃に隣接する第1すくい面と、第1端面の外周に形成され且つ第1主切れ刃に対向する第2主切れ刃と、第2主切れ刃よりも第1端面の内側に位置し且つ第2主切れ刃に隣接する第2すくい面と、第1すくい面及び第2すくい面よりも更に内側に位置し、第3主切れ刃を使用するとき工具本体に当接する拘束面と、第2端面から第1端面への向きに拘束面から突出した補強部と、を有している。補強部は、第1すくい面と第2すくい面との間に架設され且つ拘束面を二分する第3凸条と、第3凸条の一端に連結され且つ第1すくい面と拘束面との境界の少なくとも一部を覆うように延在する第1凸条と、第3凸条の他端に連結され且つ第2すくい面と拘束面との境界の少なくとも一部を覆うように延在する第2凸条と、を有している。
【0008】
この態様によれば、第1乃至第3凸条を一体化した補強部が第1すくい面から第2すくい面まで連続して形成されている。この補強部により第1端面の剛性が向上するため、刃先角が鋭利な縦置きインサートであっても壊れにくい。さらに、この態様によれば、第1主切れ刃を補強する第1凸条が第1すくい面と拘束面との間を分断するため、第1主切れ刃を使用する際に、第1すくい面を擦過した切りくずが拘束面まで到達しにくい。第2主切れ刃を使用する際も同様に拘束面が保護される。拘束面の表面が荒れにくいため、切削インサートの拘束状態が安定する。仮に、流出した切りくずによって拘束面の表面が荒れていると、上下を反転させて未使用の切れ刃を使用するとき、切削インサートの拘束状態が不安定になるおそれがあった。
【0009】
上記態様において、第1端面の外周は、第1乃至第4コーナを有する略矩形に形成され、第1主切れ刃は、コーナ切れ刃が形成された第1コーナと、コーナ切れ刃が形成されていない第4コーナとの間の長辺に位置し、第1凸条は、第3凸条の一端と第1コーナとの間に配置される一方、第3凸条の一端と第4コーナとの間に配置されなくてもよい。
【0010】
この態様によれば、補強部の配置を最適化して第1端面の保護しつつ拘束面の面積を大きく確保できる。コーナ切れ刃が形成されている第3凸条の一端よりも第1コーナ側の領域は、切込みの変化によらず常に応力を受ける使用頻度が高い部分であり、切れ刃から拘束面までの高低差が大きい部分でもある。そのような切削力による応力が集中しやすい領域では、第1すくい面に沿って設けられた第1凸条により剛性を確保できる。さらに、第1すくい面と拘束面とを第1凸条が分断しているため、切りくずが拘束面に到達しにくい。コーナ切れ刃が形成されておらず使用頻度が低い第3凸条の一端よりも第4コーナ側の領域では、第1凸条が省略されており、インサート取付座との接触面積を大きくできる。
【0011】
上記態様において、補強部は、第1端面の中心に位置し且つ第2端面から第1端面への向きに第3凸条から突出した突起部を更に有していてもよい。
【0012】
この態様によれば、拘束面から突出した第3凸条よりも更に突出した突起部があるため、第1端面の中心を越える切りくずの移動が阻害される。第1主切れ刃の中央部から流出した切りくずが、第3凸条の表面を擦過して第2すくい面に向かうおそれがある。突起部があれば、そのような切りくずから第2主切れ刃及び第2すくい面を保護できる。コーナチェンジして切削インサートを再利用するとき、傷が少ない第2主切れ刃及び第2すくい面を使用できる。
【0013】
上記態様において、第1端面から第2端面への向きに第1端面を見たとき、第3凸条は、取付け孔の軸線に重畳していてもよい。
【0014】
この態様によれば、第1端面が薄肉になりやすい取付け孔の直上の領域を重点的に補強できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、壊れにくく安定して拘束できる切削インサートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る転削工具の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の切削インサートの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図4は、
図2に示された切削インサートを第1側面から見た側面図である。
【
図4】
図5は、
図2に示された切削インサートを第2側面から見た側面図である。
【
図5】
図3は、
図2に示された切削インサートを第1端面から見た平面図である。
【
図7】
図7は、
図5中のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図8は、
図5中のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、その上半分が
図5中のIX-IX線に沿う断面図であり、下半分がX-X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。本発明の一実施形態の切削インサート2は、例えば、直角肩加工ができる転削工具1に適した縦置きインサートであり(
図1参照)、第1及び第3側面31,33を貫通するように取付け孔39が形成されている(
図2参照)。
【0018】
本実施形態の切削インサート2は、第1及び第2端面10,20に補強部40,50が形成されていることが特徴の一つである(
図5乃至
図9参照)。補強部40は、一体化された第1乃至第3凸条41,42,43を有している。第3凸条43は、第1及び第2凸条41,42を連結するように延在し、取付け孔39の直上を重点的に補強している(
図6及び
図9参照)。
【0019】
第1及び第2凸条41,42は、第1及び第2すくい面11R,14Rと拘束面19との境界B41,B42に沿って延在している。第1及び第2凸条41,42に補強されて第1及び第2主切れ刃11の剛性が高くなるため(
図7参照)、刃先角が鋭利であっても切削インサート2が壊れにくい。第1及び第2すくい面11R,14Rと拘束面19との間が第1及び第2凸条41,42によって分断されているため(
図5参照)、拘束面19に切りくずが到達しにくい。拘束面19の表面が荒れにくいため、切削インサート2の拘束状態が安定する。以下、
図1から
図9を参照して各構成について詳しく説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態の切削インサート2を備えた転削工具1の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、刃先交換式の転削工具1は、交換可能な切削インサート2と、切削インサート2を固定する工具本体3と、を備えている。工具本体3の基端及びその近傍を含む基端部は、工作機械に固定されて回転駆動される。工具本体3の先端及びその近傍を含む先端部には、複数のインサート取付座8が設けられている。図示した例では、インサート取付座8が二箇所設けられている。インサート取付座8の数は特に限定されず、一箇所であってもよいし、三箇所以上であってもよい。
【0021】
工具本体3は、締付けねじ9を取付け孔(貫通孔)39に挿通して切削インサート2をインサート取付座8に固定するスクリューオン式に構成されている。各々のインサート取付座8は、工具本体3の径方向Drに面した着座面81と、工具本体3の軸方向Dzに面した着座面82と、工具本体3の周方向Dθに面した着座面83と、を有している。径方向Drの着座面81には、締付けねじ9と螺合するねじ穴が形成されている。
【0022】
各々の切削インサート2は、各々のインサート取付座8に固定される。後述する第1及び第2端面10,20の各々には、着座面83から周方向Dθにおいて支持される拘束面19,29が形成されている。拘束面19,29は、インサート取付座8に切削インサート2が固定された状態で、インサート取付座8の着座面83に当接する。
【0023】
同様に、後述する第1及び第3側面31,33は、着座面81から径方向Drにおいて支持される拘束面として構成されている。第1及び第3側面31,33は、インサート取付座8に切削インサート2が固定された状態で、インサート取付座8の着座面81に当接する。後述する第2及び第4側面32,34は、着座面82から軸方向Dzにおいて支持される拘束面として構成されている。第2及び第4側面32,34は、インサート取付座8に切削インサート2が固定された状態で、インサート取付座8の着座面82に当接する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態の切削インサート2の一例を示す斜視図である。切削インサート2の材料は、特に限定されず、超硬合金をはじめとした種々の切削インサート用の材料を適用できる。
図2に示すように、切削インサート2は、第1端面10と、第1端面10とは反対側の第2端面20と、第1及び第2端面10,20を繋ぐ周側面30と、を有している。
【0025】
図示した例では、第1端面10が、中心O1のまわりに180°対称に形成されている。同様に、第2端面20は、中心O2のまわりに180°対称に形成されている。以下の説明において、第1端面10の中心O1と第2端面20の中心O2とを結んだ直線を、すくい面の中心軸Oと呼ぶ。なお、第1及び第2端面10,20が点対称な形状ではない場合、それらの中心O1,O2は、例えば重心である。
【0026】
図2に示すように、切削インサート2は、中心軸Oに沿って延びる四角柱状に形成され、周側面30は、四つのコーナC1,C2,C3,C4を含んでいる。図示した例では、第1端面10の外周R1が略矩形に形成されている。第2端面20の外周R2は、第1端面10の外周R1と同様の略矩形に形成されている。図示した例では、第1及び第2端面10,20が略同一の形状及び機能を有しており、第1端面10が切れ刃11~16を使用する上面になり、第2端面20がインサート取付座8に固定される下面になってもよいし、第2端面20が上面になり、第1端面10が下面になってもよい。そのため、代表して第1端面10について詳しく説明し、第2端面20については重複する説明を省略することがある。ただし、第1及び第2端面10,20は、必ずしも同一の形状でなくてもよい。
【0027】
周側面30は、第1乃至第4側面31,32,33,34を含んでいる。第1及び第3側面31,33は、外周R1,R2の長辺に臨む部位に形成されている。第2及び第4側面32,34は、略矩形の外周R1,R2の短辺に臨む部位に形成されている。各々の側面31,32,33,34は、中心軸Oに平行に形成されている。第1及び第3側面31,33は、インサート取付座8に当接する拘束面の中で最大の面積を有し、締付けねじ9(
図1参照)を挿通する取付け孔39が形成されている。そのため、側面31,33を主たる拘束面と呼ぶことがある。
【0028】
第1端面10の外周R1の少なくとも一部には、切れ刃が形成されている。各々の切れ刃は、該切れ刃に臨む逃げ面が周側面30に対して負の逃げ角を有する逆ポジ形状に形成されている。図示した例では、第1端面10の外周R1の一方の長辺には、第1主切れ刃11が形成され、他方の長辺には、第2主切れ刃14が形成されている。第1及び第2主切れ刃11,14は、中心軸Oから遠ざかる方向へ円弧状に僅かに膨らんでいる。
【0029】
コーナC1には、第1主切れ刃11に隣接する第1コーナ切れ刃12が形成され、その対角にあるコーナC3には、第2主切れ刃14に隣接する第2コーナ切れ刃15が形成されている。第2及び第4コーナC2,C4には、コーナ切れ刃が形成されていない。外周R1の一方の短辺の一部には、第1コーナ切れ刃12に隣接する第1副切れ刃13が形成されている。他方の短辺の一部には、第2コーナ切れ刃15に隣接する第2副切れ刃16が形成されている。
【0030】
切れ刃の構成は、図示した例に限定されない。例えば、第1端面10の外周R1の短辺は、工具本体3の径方向Drにおいて第1及び第2主切れ刃11,14よりも内側に位置し、第1及び第2主切れ刃11,14が削り残した被削材を切削するための内刃を更に含んでいてもよい。その場合、第1副切れ刃13と第2主切れ刃14との間に第1内刃を形成し、第2副切れ刃16と第1主切れ刃11との間に第2内刃を形成すればよい。
【0031】
例えば、第1及び第2副切れ刃13,16について、第1及び第2主切れ刃11,14によって工具本体3の径方向Drに切削された被削材の仕上げ面をさらうさらい刃として構成してもよい。その場合、さらい刃の逃げ面が、仕上げ面に対して略平行になるように形成すればよい。切れ刃11~16には、ホーニングが形成されていてもよいし、ランドが形成されていてもよい。ホーニングは丸ホーニングであってもよいし、チャンファホーニングであってもよい。
【0032】
図3は、
図2に示された切削インサート2を取付け孔39が形成された第1側面31から見た側面図である。
図3に示された第2端面20の外周R2は、第3主切れ刃21と、第3コーナ切れ刃22と、第3副切れ刃23と、第4主切れ刃24と、第4コーナ切れ刃25と、第4副切れ刃26と、を含んでいる。第2端面20の外周R2の切れ刃21~26は、第1端面10の外周R1の切れ刃11~16と同様の形状及び機能を有している。
【0033】
第1端面10と第2端面20との間を繋ぐ周側面30すなわち第1乃至第4側面31,32,33,34は、第1及び第2端面10,20の外周R1,R2に切れ刃11~16,21~26が形成されていない部位では、第1及び第2端面10,20の外周R1,R2まで延在している。一方、外周R1,R2に切れ刃11~16,21~26が形成されている部位では、外周R1,R2の近傍まで周側面30が延在している。そのような部位では、切れ刃の直下の逃げ面を介して、周側面30が第1端面10と第2端面20とを繋いでいる。
【0034】
図3に示すように、第1主切れ刃11に臨む逃げ面11Fは、第1主切れ刃11の両端から第1主切れ刃11の中央に向かうに従って幅狭に形成されている。換言すると、第1端面10と取付け孔39と間の肉厚が薄い部分において、逃げ面11Fは幅狭に形成されている。
【0035】
図4は、
図2に示された切削インサート2を第2側面32から見た側面図である。前述したように、第1及び第2主切れ刃11,14は、該切れ刃に臨む逃げ面11F,14Fが第1及び第3周側面31,33に対して負の逃げ角を有する逆ポジ形状に形成されている。つまり、
図4に示すように、第1及び第2主切れ刃11,14の逃げ面11F,14Fは、第2端面20から該第2端面20とは反対側の第1端面10へ向かうに従い、第1主切れ刃11から該第1主切れ刃11に対向する第2主切れ刃14へ向かう内向きに傾斜している。
【0036】
図4に示すように、縦置きインサートとして構成された切削インサート2は、第1端面10の底に形成された拘束面19と切れ刃11~16との高低差が大きい。第1及び第2端面10,20に取付け孔39がないため第1及び第2端面10,20が小さく第1主切れ刃11と第2主切れ刃14との間の幅が狭い。そのため、切れ刃11~16の刃先角が鋭利である。刃先角が小さいと刃先強度が低いため、切れ刃の欠けが生じやすくなる。
【0037】
図5は、
図2に示された切削インサート2を第1端面10から見た平面図である。
図5に示すように、第1端面10は、外周R1に形成された切れ刃11~16と、切れ刃11~16よりも第1端面10の内側すなわち第1端面10の中心O1寄りに位置したすくい面11R~16Rと、すくい面11R~16Rよりも第1端面10の更に内側に位置した拘束面19と、第2端面20から第1端面10への向きに拘束面19から突出して第1端面10を補強する補強部40と、を有している。
【0038】
すくい面11R~16Rは、対応する切れ刃11~16に隣接している。以下の説明において、第1主切れ刃11に隣接するすくい面11Rを第1すくい面11Rと呼び、第2主切れ刃14に隣接するすくい面14Rを第2すくい面14Rと呼ぶことがある。補強部40は、第1乃至第3凸条41,42,43と、突起部44と、を有している。
【0039】
第3凸条43は、第1すくい面11Rと第2すくい面14Rとの間に架設されて拘束面19を第1拘束面191と第2拘束面192とに二分している。
図5に示すように、第1端面10から第2端面20への向きに第1端面10を見たとき、第3凸条43は、取付け孔39の軸線Xに重畳している。突起部44は、第1端面10の中心O1に位置し、第2端面20から第1端面10への向きに第3凸条43から更に突出している。
【0040】
第1凸条41は、第3凸条43の一端431に連結され、第1すくい面11Rと拘束面19との境界B41の少なくとも一部を覆うように延在している。図示した例では、第1凸条41が、第3凸条43の一端431と第1コーナC1との間に配置される一方、第3凸条の一端431と第4コーナC4との間に配置されていない。
【0041】
詳しく述べると、第1凸条41は、第3凸条43の一端431から第1コーナ切れ刃12のすくい面12Rの直前まで延在している。第1凸条41の基端41Pは、第3凸条43の一端431の近傍に位置し、基端41Pとは反対側の第1凸条41の先端41Dは、第1コーナ切れ刃12のすくい面12Rと拘束面19との境界近傍に位置している。
【0042】
第2凸条42の基端は、第3凸条43の他端432に連結され、第2すくい面14Rと拘束面19との境界B42の少なくとも一部を覆うように延在している。前述したように、第1端面10は、中心O1のまわりに180°対称に形成されていてもよい。図示した例では、第2凸条42が、第1凸条41と180°対称に形成され、第3凸条43の他端432から第2コーナ切れ刃15のすくい面15Rの直前まで延在している。
【0043】
図6は、
図5中のVI-VI線に沿う断面図であり、
図7は、
図5中のVII-VII線に沿う断面図であり、
図8は、
図5中のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図7及び
図8に示すように、第1端面10の拘束面19は、第1端面10の底に位置し、第1及び第2端面10,20の中心軸O(
図6に示す)に直交する方向に広がっている。同様に、第2端面20の拘束面29は、第2端面20の底に位置し、第1及び第2端面10,20の中心軸Oに直交する方向に広がっている。
【0044】
図6乃至8に示すように、拘束面19から突出した第2凸条42の突出量は、第3凸条43の他端432から第3コーナC3に向かうに従い徐々に小さく形成されている。同様に、拘束面19から突出した第1凸条41の突出量は、第3凸条43の一端431から第1コーナC1に向かうに従い徐々に小さく形成されている。
図6に示すように、拘束面19から第3凸条43が突出した突出量は、第1すくい面11Rから第2すくい面14Rに亘って略一定に形成されている。突起部44は、第3凸条43の中心から更に突出している。
【0045】
図9は、その上半分が
図5中のIX-IX線に沿う断面図であり、下半分がX-X線に沿う断面図である。
図9に示すように、拘束面19から突起部44の頂部までの突出量は、拘束面19から第3凸条43の頂部までの突出量よりも更に大きい。
図6乃至
図9に示すように、第1端面10の補強部40と第2端面20の補強部50とは、第1及び第2端面10,20の中心軸Oと取付け孔の軸線Xとに交差する軸まわりに180°対称に形成されている。
【0046】
以上のように構成された本実施形態の切削インサート2によれば、第1乃至第3凸条41,42,43を一体化した補強部40によって第1端面10を第1すくい面11Rから第2すくい面14Rまで連続して保護することができる。補強部40,50により第1及び第2端面10,20の剛性が向上するため、刃先角が鋭利な縦置きインサートであっても壊れにくい。
【0047】
第1主切れ刃11を補強する第1凸条41は、第1主切れ刃11の法線上に形成され、第1コーナ切れ刃12のすくい面12Rの直前まで延在している。同様に、第2主切れ刃14を補強する第2凸条42は、第2主切れ刃14の法線上に形成され、第2コーナ切れ刃15のすくい面15Rの直前まで延在している。切削中に生じる切りくずは、切れ刃の法線方向に流出する。第1主切れ刃11から流出した切りくずと第1コーナ切れ刃12から流出した切りくずとが連続しているため、実際の切りくずの流出方向は、それぞれの切れ刃の使用比率に応じて合成された方向になる。
【0048】
本実施形態によれば、第1及び第2凸条41,42が第1及び第2すくい面11R,14Rと拘束面19との間を分断するため、切削中に生じた切りくずが拘束面19まで到達しにくい。拘束面19の表面が荒れにくいため、上下反転して第2端面20の外周R2に形成された切れ刃21~26を使用するとき、切削インサート2の拘束状態が安定する。
【0049】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…転削工具、2…切削インサート、3…工具本体、8…インサート取付座、9…締付けねじ、10…第1端面、11…第1主切れ刃、11F…第1主切れ刃の逃げ面、11R…第1すくい面(第1主切れ刃のすくい面)、12…第1コーナ切れ刃、12R…第1コーナ切れ刃のすくい面、13…第1副切れ刃、13R…第1副切れ刃のすくい面、14…第2主切れ刃、14F…第2主切れ刃の逃げ面、14R…第2すくい面(第2主切れ刃のすくい面)、15…第2コーナ切れ刃、15R…第2コーナ切れ刃のすくい面、16…第2副切れ刃、16R…第2副切れ刃のすくい面、19…拘束面、20…第2端面、21…第3主切れ刃、22…第3コーナ切れ刃、23…第3副切れ刃、24…第4主切れ刃、25…第4コーナ切れ刃、26…第4副切れ刃、30…周側面、31…第1側面、32…第2側面、33…第3側面、34…第4側面、39…取付け孔、40…補強部、41…第1凸条、41D…第1凸条の先端、41P…第1凸条の基端、42…第2凸条、43…第3凸条、44…突起部、50…第2端面の補強部、191…第1拘束面、192…第2拘束面、431…第3凸条の一端、432…第3凸条の他端、B41,B42…境界、C1…第1コーナ、C2…第2コーナ、C3…第3コーナ、C4…第4コーナ、Dr…工具本体の径方向、Dz…工具本体の軸方向、Dθ…工具本体の周方向、X…取付け孔の軸線、O…第1及び第2端面の中心軸、O1…第1端面の中心、O2…第2端面の中心、R1…第1端面の外周、R2…第2端面の外周。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体に固定されて刃先交換式の転削工具を構成する切削インサートであって、
第1端面と、該第1端面とは反対側の第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面を繋ぐ周側面と、を有し、該周側面を貫通する取付け孔が形成された縦置きインサートとして構成され、
前記第2端面は、
前記第2端面の外周に形成された第3主切れ刃を有し、
前記第1端面は、
前記第1端面の外周に形成された第1主切れ刃と、
前記第1主切れ刃よりも前記第1端面の内側に位置し且つ前記第1主切れ刃に隣接する第1すくい面と、
前記第1端面の外周に形成され且つ前記第1主切れ刃に対向する第2主切れ刃と、
前記第2主切れ刃よりも前記第1端面の内側に位置し且つ前記第2主切れ刃に隣接する第2すくい面と、
前記第1すくい面及び前記第2すくい面よりも更に内側に位置し、前記第3主切れ刃を使用するとき前記工具本体に当接する拘束面と、
前記第2端面から前記第1端面への向きに前記拘束面から突出した補強部と、を有し、
前記補強部は、
前記第1すくい面と前記第2すくい面との間に架設され且つ前記拘束面を二分する第3凸条と、
前記第3凸条の一端に連結され且つ前記第1すくい面と前記拘束面との境界の少なくとも一部を覆うように延在する第1凸条と、
前記第3凸条の他端に連結され且つ前記第2すくい面と前記拘束面との境界の少なくとも一部を覆うように延在する第2凸条と、を有し、
前記第1端面の外周は、第1乃至第4コーナを有する略矩形に形成され、
前記第1主切れ刃は、コーナ切れ刃が形成された第1コーナと、コーナ切れ刃が形成されていない第4コーナとの間の長辺に位置し、
前記第1凸条は、前記第3凸条の一端と前記第1コーナとの間に配置される一方、前記第3凸条の一端と前記第4コーナとの間に配置されない、
切削インサート。
【請求項2】
前記補強部は、前記第1端面の中心に位置し且つ前記第2端面から前記第1端面への向きに前記第3凸条から突出した突起部を更に有している、
請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記第1端面から前記第2端面への向きに前記第1端面を見たとき、前記第3凸条は、前記取付け孔の軸線に重畳している、
請求項1又は2に記載の切削インサート。