(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122324
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】端子台への接続器具
(51)【国際特許分類】
H01R 11/22 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
H01R11/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019462
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸二
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でありながら、試験等のときに、端子台に圧着端子を固定する端子ネジに対しその径方向から取り付けつつ端子ネジの頭部に的確に係合させて端子ネジの頭部を効率良く押さえ付けることができる端子台への接続器具を提供する。
【解決手段】端子台への接続器具1は、一方端にリード線100が接続され、他方端側に押さえ付け部材4が取り付けられる基体2と、基体2のリード線100の接続側部位を覆うカバー3と、圧着端子220等を保持する保持部52,53が設けられると共にカバー3に設けられた軸部33a、34aを中心に基体2のリード線100接続側端に遠近する方向に揺動自可能な揺動部材5とを有し、揺動部材5は、コイルスプリング6により基体2のリード線100の接続側端から離れる方向に付勢され、押さえ付け部材4は、棒状部41が回転して端子ネジ210の頭部212の溝部212aがどの向きでも係合部42が係合可能とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の素材で形成され、長手方向の一端にリード線が接続される柱状の基体と、絶縁体の素材で形成され、前記基体の前記リード線の接続側の部位を覆うカバーと、導体の素材で形成され、前記基体の長手方向の他端側の前記カバーで覆われてない部位に取り付けられる押さえ付け部材と、絶縁体の素材で形成され、前記カバーに軸部を介して装着される揺動部材と、を有して構成され、
前記押さえ付け部材は、前記基体に形成された通孔に回転自在に挿通される棒状部と、前記棒状部の長手方向の一方端に設けられた係合部と、前記棒状部に設けられて、前記棒状部の前記通孔からの抜けを防止するストッパとを備え、前記係合部は前記通孔の内径よりも大きく、端子台に取り付けられた端子ネジの頭部に形成された溝部に係合することが可能な突出部位を有し、
前記揺動部材は、前記軸部を中心として前記基体の前記リード線の接続側端に遠近する方向に揺動自在となっていると共に、前記基体とは反対側に前記端子台に取り付けられた既設の線状の通電用器具を保持する環状部位を有する保持部が設けられ、
前記揺動部材は、弾性機構により前記基体の前記リード線の接続側端から離れる方向に付勢されていることを特徴とする端子台への接続器具。
【請求項2】
前記基体の長手方向の他端側を覆うカバーは、外形が直方体状を成す筒状体であると共に、前記カバーの両側の側面から前記軸部が突出し、
前記揺動部材は、前記保持部が設けられた揺動本体部と、前記揺動本体部の前記保持部側とは反対側から延出して前記カバーの両側の側面の外側に並設され、それぞれに前記軸部が挿通する通孔が形成された一対の立板部とを有することを特徴とする請求項1に記載の端子台への接続器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば試験装置による試験や別の端子への接続のときに、端子台に取り付けられた端子ネジの頭部を押さえ付ける部材を有する端子台への接続器具に関する。
【背景技術】
【0002】
試験の目的で、例えば端子台の圧着端子を固定した状態の端子ネジに試験装置を電気的に接続する場合、一般的には、端子ネジの頭部をいわゆるワニ口クリップの歯で挟み込むことで、ワニ口クリップを端子ネジに接続していた。
【0003】
もっとも、このような端子ネジへのワニ口クリップの接続では、端子ネジの頭部に対し、端子ネジの軸方向の上方からワニ口クリップの歯で挟み込んで装着するので、ワニ口クリップは端子ネジからその軸方向に更に突出した状態になる。しかも、ワニ口クリップは、端子ネジの頭部に装着された状態では、端子ネジの頭部を挟む力で自重を支えた状態となる。このため、作業中にワニ口クリップに触れると、ワニ口クリップが外れるおそれがあった。ワニ口クリップが外れて金属部分に当たると短絡や地絡が生ずる危険性がある。また、例えば端子台が収容された箱体の扉の外面にあるスイッチを入れるために、扉を閉めようとする場合に、端子台から開口部の外側に向けて立設した状態にあるワニ口クリップに扉が当たって、箱体の扉を閉めることができないおそれもあった。
【0004】
このため、特許文献1に示されるように、端子ネジの径方向から取り付けつつ端子ネジの頭部に接続することが可能な接続機器が発明されている。特許文献1に示される端子台への接続器具は、端子台に固定された圧着端子から延びる電線を挟むために電線の上下に配置された一対のクリップからなる挟み機構を有する。挟み部材の上側クリップと下側クリップとは、上側クリップから側方、乃至、後方に突出した押さえ部材、下側クリップから側方、乃至、後方に突出した押さえ部材とに軸部材を貫通させ、軸部材にスプリングを装着し、スプリングの両端を各クリップに取り付けることで、上側クリップの先端と下側クリップの先端とが遠近可能に連結されている。また、特許文献1に示される端子台への接続器具は、圧着端子を端子台に固定する端子ネジの頭部に対し上側から端子ネジの軸方向に押すための押圧機構を有する。押圧機構は、上側クリップと下側クリップとの間に配置された台座と、この台座から延び、先端部が軸部材(先程の軸部材と別の部材である態様と同じ部材である態様とがある。)を中心として端子ネジの頭部に対し遠近する方向に揺動可能な棒状部材とを有する。棒状部材は、スプリングにより先端部が端子ネジの頭部に近接する方向に付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される端子台への接続器具は、上記の圧着端子から延びる電線をクリップで挟む挟み機構と、上記の棒状部材の先端を端子ネジの頭部に押圧する押圧機構とを有し、それぞれ弾性機構としてスプリングを備えているため、構造が複雑化、大型化するので、端子台に装着した際に、端子台への荷重が掛かり、端子台への装着時に端子台の周囲で大きな領域を占めることとなる。このため、特許文献1に示される端子台への接続器具は、製造コストが高くなり、荷重により端子台が破損、変形する可能性があるという不具合を有する。また、端子台への接続器具が作業の支障となり、端子台の周囲での他の作業の煩雑化を招くおそれもある。
【0007】
更に、特許文献1に示される端子台への接続器具は、押機機構の棒状部材の先端から下方に当該棒状部材と一体のかたちで延びる係合部を有するのみなので、端子台に取り付けられた端子ネジの溝部の向きによっては、係合部を端子ネジの溝部に的確に係合することができないとの不具合も有する。
【0008】
そこで、本発明は、簡易な構造でありながら、試験装置による試験のときや他の端子と電気的に接続するときに、端子台に圧着端子を固定する端子ネジに対し当該端子ネジの径方向から取り付けつつ端子ネジの頭部に的確に係合させて端子ネジの頭部を効率良く押さえ付けることができる端子台への接続器具を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る端子台への接続器具は、導体の素材で形成され、長手方向の一端にリード線が接続される柱状の基体と、絶縁体の素材で形成され、前記基体の前記リード線の接続側の部位を覆うカバーと、導体の素材で形成され、前記基体の長手方向の他端側の前記カバーで覆われてない部位に取り付けられる押さえ付け部材と、絶縁体の素材で形成され、前記カバーに軸部を介して装着される揺動部材と、を有して構成され、前記押さえ付け部材は、前記基体に形成された通孔に回転自在に挿通される棒状部と、前記棒状部の長手方向の一方端に設けられた係合部と、前記棒状部に設けられて、前記棒状部の前記通孔からの抜けを防止するストッパとを備え、前記係合部は前記通孔の内径よりも大きく、端子台に取り付けられた端子ネジの頭部に形成された溝部に係合することが可能な突出部位を有し、前記揺動部材は、前記軸部を中心として前記基体の前記リード線の接続側端に遠近する方向に揺動自在となっていると共に、前記基体とは反対側に前記端子台に取り付けられた既設の線状の通電用器具を保持する環状部位を有する保持部が設けられ、前記揺動部材は、弾性機構により前記基体の前記リード線の接続側端から離れる方向に付勢されていることを特徴としている(請求項1)。導体の素材とは、例えば金属である。端子ネジの頭部の溝部が十字状の場合には、押し付け部材の係合部の突出部位もこれに対応して十字状となる。線状の通電用器具とは、例えば端子台に固定された状態にある圧着端子や、圧着端子に外装された絶縁スリーブや、圧着端子から延びる電線である。保持部は、1つでも複数でも良い。弾性機構とは、例えばコイルスプリングである。
【0010】
上記端子台への接続器具の、より具体的な構成としては、前記基体の長手方向の他端側を覆うカバーは、外形が直方体状を成す筒状体であると共に、前記カバーの両側の側面から前記軸部が突出し、前記揺動部材は、前記保持部が設けられた揺動本体部と、前記揺動本体部の前記保持部側とは反対側から延出して前記カバーの両側の側面の外側に並設され、それぞれに前記軸部が挿通する通孔が形成された一対の立板部とを有することを特徴としている(請求項2)。
【0011】
このような構成の端子台への接続器具とすることで、揺動部材の保持部の環状部位で端子台に取り付けられた既設の線状の通電用器具を保持することにより、揺動部材を線状の通電用器具に対し並行な状態で固定すると共に、押さえ付け部材の棒状部を回転させ、棒状部の一方端に設けられた係合部を端子ネジの頭部の溝部に向きを合わせて、弾性機構の付勢力にて、押さえ付け部材の係合部を端子ネジの頭部側に変位させて、係合部の突出部位は頭部の溝部に係合される。すなわち、端子台への接続器具は、端子台に取り付けられた線状の通電用器具に、揺動部材を保持部により固定された状態とすることで、基体について、弾性機構の付勢力により、軸部を回転中心として、押さえ付け部材が取り付けられた側を端子ネジの頭部に向けて揺動させ、しかも、押さえ付け部材の係合部の突出部位について、棒状部を回転させることで端子ネジの頭部の溝部に合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に述べたように、本発明によれば、揺動部材の保持部の環状部位で端子台に取り付けられた既設の線状の通電用器具を保持することで、揺動部材を線状の通電用器具に対し並行な状態で固定した後は、基体が軸部を中心に揺動するものとなり、これに伴い、弾性機構の付勢力によって、基体は、押さえ付け部材が取り付けられた側が、端子ネジの頭部に向けて変位するので、押さえ付け部材の棒状体の一方端に設けられた係合部が端子ネジの頭部を押さえ付けることとなる。しかも、押さえ付け部材の棒状部を回転させ、棒状部の一方端に設けられた係合部を端子ネジの頭部の溝部に向きを合わせて、係合部の突出部位を端子ネジの頭部の溝部に的確に係合させることができるので、押さえ付け部材による端子ネジの頭部への押さ付けも効率良く行うことが可能である。
【0013】
そして、このように端子台への接続器具を、簡易な構造とすることにより、製造コストの低減、小型化を図ることができ、端子台に固定しても端子台の周囲に占める領域を小さくすることが可能となる。
【0014】
更には、端子台への接続器具は、端子台に取り付けられた状態で、その構成部材である基体や揺動部材が、端子台に取り付けられた端子ネジに対し径方向に配置されるので、端子ネジの頭部に対し端子ネジのネジ部の軸方向にワニ口クリップを取り付けることで生ずる不具合をなくすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は、本発明の一例である端子台への接続器具の平面図であり、(b)は、本発明の一例である端子台への接続器具の側面図である。
【
図2】(a)は、前記端子台への接続器具の正面図であり、(b)は、前記端子台への接続器具の背面図である。
【
図3】(a)は、前記端子台への接続器具の揺動部材を、保持部により端子台に固定された圧着端子の絶縁カバー及び圧着端子から延びる電線に固定した状態を示す説明図であり、(b)は、前記端子台への接続器具の押さえ付け部材で端子台に取り付けられた端子ネジの頭部を押さえ付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
この発明が適用された端子台への接続器具(以下、接続器具。)1が接続される端子台200は、一般的なものであってよい。一例として
図3に示される端子台200は、絶縁体の素材でなる台座201の平坦な上面に複数のネジ孔202aが形成された端子台本体202を配置した構成となっている。
図3に示される端子台200では、ネジ孔202aとネジ孔202aとの間に絶縁隔壁203が立設している。
【0018】
端子ネジ210は、導体の素材で形成された一般的なものであってよい。
図3に示される端子ネジ210は、ネジ孔202aにネジ込むことが可能に螺子切りされた柱状のネジ部211と、ネジ部211の長手方向の一方端に形成され、ネジ孔202aの内径よりも大きな外径の頭部212とで基本的に構成され、頭部212には溝部212aが形成されている。
図3に示される端子ネジ210は、溝部212aが十字状に形成されたプラスネジであるが、マイナスネジ等の溝部212aを有する他の種類の端子ネジ210を排除するものではない。
【0019】
図3では、線状の通電用器具の一例として、圧着端子220及びこの圧着端子220に接続された電線230が示されている。圧着端子220及び電線230は、一般的なものであってよい。
図3に示される圧着端子220は、端子ネジ210のネジ部211が挿通可能な通孔を有する環状部位を有する舌部221と、舌部221と電線230との接続部位を覆う筒状の絶縁スリーブ222とを有する。なお、舌部221は、環状部位の代わりにU字状部位を有するものであってもよい。更には、図示しないが圧着端子220を用いずに電線230を直接に端子ネジ210のネジ部211に巻き付ける態様も、線状の通電用器具の一例として含まれる。
【0020】
この発明に係る接続器具1は、
図1及び
図2に示されるように、長手方向の一端にリード線100が接続される柱状の基体2と、基体2のリード線100の接続側の部位を覆うカバー3と、基体2の長手方向の他端側のカバー3で覆われてない部位に取り付けられる押さえ付け部材4と、カバー3に軸部33a、34aを介して装着される揺動部材5とを有して構成されている。接続器具1の長手方向寸法は、基体2の長手方向の一方端の近傍部位が端子ネジ210の頭部212上に位置しているときに、カバー3が端子台200に装着された圧着端子220の絶縁スリーブ222や電線230の上方等に並行して配置されるように設定されている。
【0021】
基体2は、例えば銅やアルミニウム等の金属、その他の導体を素材にして形成されているもので、この実施形態では、断面が正方形等の四角形状をなすと共に前述の接続器具1の長手方向寸法に対応した長手方向寸法を有する柱状となっている。基体2に接続されるリード線100は、例えば図示しない試験装置と電気的に接続するためのものであり、基体2と一体化されたかたちで接続されていても、別体として脱着自在に接続されるようにしてもよい。基体2のリード線100が接続された側とは反対側の端部の近傍には、下記する押さえ付け部材4の棒状部41が挿通する通孔2aが形成されている。
【0022】
カバー3は、プラスチック、その他の絶縁体の素材で形成されているもので、この実施形態では、基体2の外形寸法より若干大きく基体2が圧入可能な四角形状の通孔3aを有すると共に、外形としては、
図1上において、上下で対峙する上面31、下面32及び左右方向で対峙する側面33、34を備えた直方体状を成す、筒状体となっている。カバー3の側面33、34の基体2が外に出た側の端部の近傍部位にそれぞれ軸部33a、34aが形成されている。軸部33a、34aは、円柱状のもので、この実施形態ではカバー3に一体形成されており、軸部33aと軸部34aとは対称となる方向に突出している。軸部33a及び軸部34aは、
図1(a)等に示されるように、下記する揺動部材5の立板部57、58に形成された孔57a、58aに回転自在に挿入されるものとなっている。
【0023】
押さえ付け部材4は、例えば銅やアルミニウム等の金属、その他の導体を素材にして形成されているもので、基体2に形成された通孔2aに回転自在に挿通される直線状に延びた棒状部41と、この棒状部41の長手方向の一方端に設けられた係合部42と、棒状部41の通孔2aからの抜けを防止するストッパ43とを有して構成されている。押さえ付け部材4は、係合部42が端子ネジ210の頭部212の溝部212aに係合したときに、端子ネジ210と基体2とが押さえ付け部材4を介在しつつ電気的に接続(通電)することが可能なように、例えば、係合部42、ストッパ43の一方又は双方、或いは棒状部41も、基体2に確実に当接した状態となるように設定されている。
【0024】
係合部42は、端子ネジ210がプラスネジの場合には、頭部212の溝部212aに的確にガタツキなく係合可能なように十字状に突出した突出部位42aを有する。突出部位42aは、図示しないが、端子ネジ210がマイナスネジの場合には、一文字状に突出した形状となる。すなわち、押さえ付け部材4は、それ自体で独立した部材であるので、押さえ付け部材4を交換するのみで、端子ネジ210の種類に応じて、十字状に突出した突出部位42aを有するタイプと、一文字状に突出した突出部位42aを有するタイプとに変更することが可能である。また、ストッパ43は、この実施形態では、棒状部41の係合部42とは反対側端において当該棒状部41の径方向外側に延びたフランジとなっているが、棒状部41に設けられて、通孔2aからの脱落を防止することが可能であれば、他の形状、構造であってもよい。
【0025】
揺動部材5は、プラスチック、その他の絶縁体の素材で形成されているもので、この実施形態では、略平板状の揺動本体部51と、揺動本体部51のカバー3側とは反対側の面51aに設けられて、圧着端子220の絶縁スリーブ222や電線230が保持される保持部52、53を有する。
【0026】
保持部52は、この実施形態では、主に
図1(b)、
図2(a)に示されるように、その全体形状が円の側方に切り欠き52aを有する略Cの字状の環状部位である。圧着端子220の絶縁スリーブ222を、切り欠き52aを通るかたちで保持部52の枠内に形成された収容空間に収容することにより、絶縁スリーブ222が保持部52で保持される。なお、この実施形態では、保持部52は、収容空間の内径が絶縁スリーブ222の外径よりも大きくなっていると共に、切り欠き52aの両端から保持部52の枠内に向かって突出した突出部位を有する。これにより、保持部52の枠内に収容された絶縁スリーブ222が不用意に保持部52の枠外に外れることが防止される。
【0027】
保持部53は、この実施形態では、主に
図1(b)、
図2(a)に示されるように、揺動本体部51から延びる柱状部位54と、この柱状部位54の先端に設けられた、円の側方に切り欠き55aを有する略Cの字状の環状部位55とで形成されたものとなっている。環状部位55の中心は、揺動本体部51の長手方向から見て、保持部52の中心と同じ軸線上に位置している。圧着端子220に接続された電線230を、切り欠き55aを通るかたちで環状部位55の枠内に形成された収容空間に収容することにより、電線230が保持部53で保持される。なお、この実施形態では、保持部53は、環状部位55の収容空間の内径が電線230の外径よりも大きくなっていると共に、切り欠き55aの両端から環状部位55の枠内に向かって突出した突出部位を有する。これにより、保持部53の環状部位55の枠内に収容された電線230が不用意に環状部位55の枠外に外れることが防止される。
【0028】
保持部52と保持部53とは、例えば保持部53が揺動本体部51のリード線100側端近傍に配置される等とすることで、所定の間隔を有するものとしてもよい。これにより、図示しないが、圧着端子220に接続された電線230が接続器具1から離れる方向(例えば
図3の下方)に曲がっている場合には、保持部53は、電線230の保持を行わない一方で、電線230の曲がり部位とも干渉しないように対応することができる。
【0029】
また、揺動部材5は、基体2に揺動本体部51を揺動可能に取り付けるための構造として、揺動本体部51のカバー3側(保持部52、53側とは反対側)の面51bの両側の側方縁の部位から延出してカバー3の側面33、34の外側に並設され、それぞれに軸部33a、34aが回転自在に挿通する孔57a、58aが形成された立板部57、58を有する。なお、孔57a、58aは、図上では貫通孔となっているが、立板部57、58のカバー3側に開口した凹状の有底の窪みとして、軸部33a、34aが回転自在に挿入されるものとしても良い。
【0030】
これにより、接続器具1は、基体2のリード線100側端側の部位に装着されたカバー3の側面33、34を揺動部材5の立板部57、58で挟み、カバー3の軸部33a、34aに、立板部57、58の孔57a、58bに挿入することにより、揺動部材5を可動側として見た場合には、揺動部材5が、軸部33a、34aを中心として基体2のリード線100の接続側端に遠近する方向に揺動自在に取り付けられた状態となる。
【0031】
基体2及びカバー3と、揺動部材5の揺動本体部51とが平行になった状態では、
図3(b)に示されるように、カバー3と揺動本体部51との間に空間が形成されたものとなる。すなわち、揺動本体部51が軸部33a、34aを中心に揺動したときに、揺動本体部51が基体2のリード線100の接続側端及びそれを覆うカバー3に揺動本体部51に当接するまで揺動することが可能である。これにより、揺動本体部51の長手方向に延びる基準線を採った場合に、基体2は前記基準線に対し押さえ付け部材4を有する側が揺動本体部51から離れる方向に傾斜することができる。
【0032】
そして、接続器具1は、
図1(b)、
図2(b)及び
図3に示されるように、立板部57、58の間で且つカバー3と揺動本体部51との間の空間となる位置に、揺動部材5を可動側として見た場合に、揺動部材5を基体2のリード線100の接続側端から離れる方向(
図1(b)の矢印方向)に付勢する弾性機構として、コイルスプリング6が配置されている。コイルスプリング6は、例えば線状のバネ用金属(銅等)線をコイル状に巻いたものであり、この実施形態では、
図2(b)に示されるように、コイル部分から延びた一方端側部位が基体2の下面32に固定され、コイル部分から延びた他方端側部位が揺動部材5の揺動本体部51の面51bに固定されている。
【0033】
これにより、接続器具1は、通常時において、
図1(b)に示されるように、コイルスプリング6は、リード線100側が開いた略V字状となり、これに伴い、基体2及び基体2に装着されたカバー3に対し、揺動部材5の揺動本体部51は、基体2の長手方向に沿った基準線よりも所定の角度にて傾斜した状態となっている。
【0034】
圧着端子220が端子ネジ210により固定された状態にある端子台200に、上記の構成の接続器具1を接続する手順について、
図3を用いて説明する。
【0035】
まず、
図3(a)に示されるように、基体2のリード線100接続側端と揺動部材5の揺動本体部51とを、
図3(a)の太線の矢印として示されるように、コイルスプリング6の付勢力に抗するかたちで近接した状態として、揺動部材5の保持部52で圧着端子220の絶縁スリーブ222を保持し、可能であれば、揺動部材5の保持部53でも電線230を保持する。これにより、
図3(a)に示されるように、基体2の長手方向端に装着された押さえ付け部材4の係合部42について、端子ネジ210の頭部212の上方にありつつ突出部位42aが頭部212の溝部212aに係合しないかたちで、揺動部材5が圧着端子220又は、圧着端子220及び電線230に固定された状態とすることができる。
【0036】
次に、押さえ付け部材4の棒状部41を、
図3(a)の矢印に示されるように回転させ、係合部42の突出部位42aが端子ネジ210の頭部212に形成された溝部212aと係合可能な向きとする。すなわち、端子ネジ210がプラスネジの場合には、十字状の溝部212aの向きに係合部42の十字状の突出部位42aの向きが合うようにする。
【0037】
そして、コイルスプリング6の付勢力に抗した方向(
図3(a)の太線の矢印の方向)への力の作用を停止する。これにより、揺動部材5は、少なくとも保持部52により圧着端子220の絶縁スリーブ222に固定された状態にあるので、コイルスプリング6の付勢力は、
図3(b)の白抜き矢印として示されるように、基体2に対して、軸部33a、34bを軸心として押さえ付け部材5の係合部42が端子ネジ210の頭部212に近接する方向に揺動させる力となる。
【0038】
これにより、押さえ付け部材5の係合部42の突出部位42aが端子ネジ210の頭部212の溝部212aに係合したかたちで、係合部42は、
図3(b)の白抜き矢印のように、端子ネジ210の頭部212を押すので、押さえ付け部材5は端子ネジ210の頭部212を効率良く押さえ付けることができる。
【0039】
よって、押さえ付け部材4の係合部42が端子ネジ210の頭部212から安易に外れてしまうことを抑制することが可能である。しかも、接続器具1は、端子台200に取り付けられた状態で、基体2や揺動部材5が、端子台200に取り付けられた端子ネジ210に対し径方向に配置されるので、端子ネジ210に対し軸方向にワニ口クリップを取り付けることで生ずる不具合をなくすという所期の目的も達成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 端子台への接続器具
2 基体
2a 通孔
3 カバー
33、34 側面
33a、34a軸部
4 押さえ付け部材
41 棒状部
42 係合部
42a 突出部位
43 ストッパ
5 揺動部材
52 保持部
53 保持部
55 環状部位
57 立板部
58 立板部
6 コイルスプリング(弾性機構)
100 リード線
200 端子台
210 端子ネジ
212 頭部
212a 溝部
220 圧着端子(線状の通電用器具)
230 電線(線状の通電用器具)