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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122339
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】駐輪機
(51)【国際特許分類】
   B62H 3/08 20060101AFI20220816BHJP
   E04H 6/06 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B62H3/08
E04H6/06 X
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019495
(22)【出願日】2021-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】519317114
【氏名又は名称】株式会社CPM
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 敬子
(57)【要約】
【課題】実車昇降駆動用アクチュエータであるガススプリングの導入に伴うコスト削減効果、並びに実車昇降駆動部としてのガススプリング及び巻き掛け伝動機構の支柱内部配置に伴う安全性向上効果を損なうことなく、実車昇降駆動用ガススプリングにおけるピストンストロークの短縮化を図り、巻き掛け伝動機構ひいては駐輪機全体の小型化及び耐久性の向上に寄与する駐輪機を提供する。
【解決手段】 空車状態のラック13を昇降する第一駆動部10と実車状態のラック13を昇降するための第二駆動部20を備える駐輪機であって、第二駆動部20は、ガススプリング21GSのシリンダ21Sから下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッド21Rの先端部に接続され、回転軸線R28が共通する2個の動滑車28A、28Cと、ガススプリング21GSよりも高位置の2個の定滑車24B、24Dと、それらに交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープ25とが組み込まれた巻き掛け伝動機構26を有する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車を搭載しない空車状態のラックを上下方向に筒状形態で立設された支柱に沿って水平姿勢で昇降するための第一駆動部と、自転車を搭載した実車状態のラックを前記支柱に沿って水平姿勢で昇降するための第二駆動部と、を備える駐輪機であって、
前記第二駆動部は、前記支柱の上方内部において基端部が取り付けられた実車昇降駆動用ガススプリングのシリンダから下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッドの先端部に接続され、回転軸線が共通する2個の動滑車と、前記シリンダよりも高位置において前記支柱の内部に位置固定された2個の定滑車と、各々の前記動滑車及び各々の前記定滑車に交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープとが組み込まれた巻き掛け伝動機構を有することを特徴とする駐輪機。
【請求項2】
自転車を搭載しない空車状態のラックを上下方向に筒状形態で立設された支柱の下部における水平姿勢と前記支柱に沿う倒立姿勢との間で揺動するための第一駆動部と、自転車を搭載した実車状態のラックを前記支柱に沿って水平姿勢で昇降するための第二駆動部と、を備える駐輪機であって、
前記第二駆動部は、前記支柱の上方内部において基端部が取り付けられた実車昇降駆動用ガススプリングのシリンダから下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッドの先端部に接続され、回転軸線が共通する2個の動滑車と、前記シリンダよりも高位置において前記支柱の内部に位置固定された2個の定滑車と、各々の前記動滑車及び各々の前記定滑車に交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープとが組み込まれた巻き掛け伝動機構を有することを特徴とする駐輪機。
【請求項3】
各々の前記動滑車と、2個の前記定滑車のうち前記ワイヤロープが巻回されるとき2個の前記動滑車の間に位置する中間定滑車とがほぼ同一のプーリ径である請求項1又は請求項2に記載の駐輪機。
【請求項4】
2個の前記動滑車は共通の動滑車中心軸に支持されるとともに、前記中間定滑車は前記動滑車中心軸と平行に配置された中間定滑車中心軸に支持される請求項3に記載の駐輪機。
【請求項5】
2個の前記定滑車のうち前記中間定滑車を除いた末端定滑車を支持する末端定滑車中心軸は前記中間定滑車中心軸と同軸状に配置され、
前記末端定滑車は前記中間定滑車よりも大なるプーリ径を有する請求項4に記載の駐輪機。
【請求項6】
前記ワイヤロープは、始端が前記支柱の上方内部に固定されるとともに、終端が前記ラックに連結され、
前記ワイヤロープの中間部が巻き掛けられる2個の前記動滑車を前記ピストンロッドの先端部に保持しつつ前記支柱の内部を上下移動する昇降台車が設けられ、
前記昇降台車には前記回転軸線の周りに回転しつつ前記支柱の内壁に沿って走行するガイド輪が設けられる請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の駐輪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐輪機に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直上下昇降式のラックを有する駐輪機では、支柱の下部位置においてラックに自転車が搬入され、実車状態とされたラックが上部位置にて保管・管理される。特許文献1において実車状態のラックを昇降駆動するための実車昇降駆動部は、実車昇降駆動用アクチュエータとしての複動型エアシリンダと、切換弁、蓄圧タンク及び増圧機を含むエア供給装置と、動滑車、定滑車及び昇降ロープを含む巻き掛け伝動機構とを有し、少なくともエアシリンダ及び巻き掛け伝動機構は支柱の外部に配置されている。具体的には、エアシリンダのピストンロッドの先端部に動滑車が接続されるとともに、昇降ロープはその一端が支柱に固定され、中途部が動滑車及び定滑車に巻回された後、他端がラックを支持する昇降架台に固定されている。これによって、駆動側におけるエアシリンダのピストンストローク(例えば、0.6m)は作動側におけるラックストローク(例えば、1.2m)の1/2相当に短縮される。
【0003】
一方、特許文献2,特許文献3では、複動型エアシリンダに代わる実車昇降駆動用アクチュエータとして、シリンダ内に封入されたガスがピストンを通りロッド側からヘッド側に移動する際のピストンの押出力を駆動源とする突出型ガススプリングが用いられ、周辺構成の大幅な簡素化によりコストダウンが図られている。また、実車昇降駆動部全体(すなわち、ガススプリング及び巻き掛け伝動機構)を支柱の内部に配置することにより作業者及び実車昇降駆動部の安全性の向上が図られている。
【0004】
ところで、一般的にガススプリングの主たる用途は軽荷重の支持(例えば、自動車のハッチバックドアの開閉支持)であり、比較的短いピストンストローク(例えば、0.3m以内)で使用される。これに対して、特許文献2,特許文献3のように、ガススプリングが駐輪機の実車昇降駆動用アクチュエータとして、実車状態のラックの重負荷(例えば、20~40kg重)の下、比較的長いピストンストローク(例えば、0.6m以上)で頻繁にかつ長期間にわたり使用される場合には、更なる耐久性の向上、特にピストンの高気密性・高油密性を維持するためにOリング、オイルシール等の密封部材の長寿命化が要請される。
【0005】
その際、高品質の密封部材を複数(多重構造)用いることにより密封部材の長寿命化ひいてはガススプリングの耐久性向上に寄与できるが、エアシリンダに代わるガススプリングの導入効果(コスト削減)が失われて(相殺されて)しまうおそれがある。また、ガススプリングの設計変更(例えば、シリンダの大径化、長大化)によりガススプリングの耐久性を向上できるが、実車昇降駆動部の全部又は一部が支柱の内部に配置できなくなって安全性が阻害されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-138680号公報
【特許文献2】特開2018-039493号公報
【特許文献3】特許第6598340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、実車昇降駆動用アクチュエータであるガススプリングの導入に伴うコスト削減効果、並びに実車昇降駆動部としてのガススプリング及び巻き掛け伝動機構の支柱内部配置に伴う安全性向上効果を損なうことなく、実車昇降駆動用ガススプリングにおけるピストンストロークの短縮化を図り、巻き掛け伝動機構ひいては駐輪機全体の小型化及び耐久性の向上に寄与する駐輪機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の駐輪機は、
自転車を搭載しない空車状態のラックを上下方向に筒状形態で立設された支柱に沿って水平姿勢で昇降するための第一駆動部(例えば、空車昇降駆動部)と、自転車を搭載した実車状態のラックを前記支柱に沿って水平姿勢で昇降するための第二駆動部(例えば、実車昇降駆動部)と、を備える駐輪機であって、
前記第二駆動部は、前記支柱の上方内部において基端部が取り付けられた実車昇降駆動用ガススプリングのシリンダ(すなわち、実車用シリンダ)から下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッド(すなわち、実車用ピストンロッド)の先端部に接続され、回転軸線(すなわち、実車用回転軸線)が共通する2個の動滑車(すなわち、実車用動滑車)と、前記シリンダよりも高位置において前記支柱の内部に位置固定された2個の定滑車(すなわち、実車用定滑車)と、各々の前記動滑車及び各々の前記定滑車に交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープ(すなわち、実車用ワイヤロープ)とが組み込まれた巻き掛け伝動機構(すなわち、実車用巻き掛け伝動機構)を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の駐輪機は、
自転車を搭載しない空車状態のラックを上下方向に筒状形態で立設された支柱の下部における水平姿勢と前記支柱に沿う倒立姿勢との間で揺動するための第一駆動部(例えば、空車揺動駆動部)と、自転車を搭載した実車状態のラックを前記支柱に沿って水平姿勢で昇降するための第二駆動部(例えば、実車昇降駆動部)と、を備える駐輪機であって、
前記第二駆動部は、前記支柱の上方内部において基端部が取り付けられた実車昇降駆動用ガススプリングのシリンダから下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッドの先端部に接続され、回転軸線が共通する2個の動滑車と、前記シリンダよりも高位置において前記支柱の内部に位置固定された2個の定滑車と、各々の前記動滑車及び各々の前記定滑車に交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープとが組み込まれた巻き掛け伝動機構を有することを特徴とする。
【0010】
このように、空車状態のラックを水平収納するタイプと倒立収納するタイプのいずれの駐輪機であっても、実車昇降駆動用ガススプリングのピストンロッドの先端部に接続され、回転軸線が共通する2個の動滑車と、支柱の内部に位置固定された2個の定滑車と、を第二駆動部の巻き掛け伝動機構に組み込むことによって、ラックストロークの1/4を限度とする実車駆動ストローク(ピストンストローク)の短縮化が可能となる。つまり、密封部材(例えば、Oリング)のシリンダ内での移動距離は、ラックストローク(例えば、約1.2m)の1/4相当(約0.3m)に達するまで短縮可能となるので、その短縮分が繰り返し往復移動により累積されて密封部材の長寿命化が達成され、実車昇降駆動用ガススプリングひいては駐輪機全体の耐久性が向上する。また、2個の動滑車の各々と定滑車との離間距離は互いに等しく設定され、かつ2個の動滑車は共通の回転軸線周りで回転するから、巻き掛け伝動機構ひいては駐輪機全体(特に支柱内部構造)の小型化に寄与することができる。
【0011】
しかも、このとき密封部材を高品質なものと交換したり複数個用いたりしなくて済むので、ガススプリングの導入によるコスト削減効果を阻害しない。また、実車昇降駆動用ガススプリングを大型品に交換したり配置位置を変更したりしなくて済むので、実車昇降駆動用ガススプリング及び巻き掛け伝動機構の支柱内部配置による安全性向上効果を阻害することもない。
【0012】
なお、上記した通り「実車駆動ストローク」は「実車昇降駆動用ガススプリングのピストンストローク」に等しく、「密封部材(例えば、Oリング)のシリンダ内での移動距離」とも同義である。
【0013】
ところで、垂直上下昇降式のラックを有する駐輪機において、空車状態のラックを水平収納するタイプでは第一駆動部は空車昇降駆動部として機能し、空車昇降駆動用アクチュエータとして昇降駆動用定荷重ばね、空車昇降駆動用ガススプリング等が用いられる。一方、空車状態のラックを倒立収納するタイプでは第一駆動部は空車揺動駆動部として機能し、空車揺動駆動用アクチュエータとして揺動駆動用定荷重ばね、空車揺動駆動用ガススプリング等が用いられる。
【0014】
例えば、水平収納タイプにおいて空車昇降駆動用ガススプリングにも動滑車を設ける場合、次のように表すことができる。
上記第一駆動部は、実車昇降駆動用ガススプリングとは別に支柱の上方内部において基端部が取り付けられた空車昇降駆動用ガススプリングの空車用シリンダから下向きに突出して牽引力を発揮する空車用ピストンロッドの先端部に接続され、空車用回転軸線が共通する2個の空車用動滑車と、空車用シリンダよりも高位置において支柱の内部に位置固定された2個の空車用定滑車と、各々の空車用動滑車及び各々の空車用定滑車に交互に1回ずつ巻回された単一の空車用ワイヤロープとが組み込まれた空車用巻き掛け伝動機構を有する。
【0015】
ところで、水平収納タイプ及び倒立収納タイプのいずれであっても、各々の動滑車と、2個の定滑車のうちワイヤロープが巻回されるとき2個の動滑車の間に位置する中間定滑車とがほぼ同一のプーリ径であることが望ましい。
【0016】
このように、共通の回転軸線周りで回転する2個の動滑車と、中間定滑車とがほぼ同一のプーリ径に形成されることによって、ピストンストロークはラックストロークの1/4近くまで縮小され、実車昇降駆動用ガススプリングひいては駐輪機全体の耐久性向上が容易に達成できる。また、ワイヤロープが掛け渡された2個の動滑車及び中間定滑車の間の周速差が小さくなり、振動・騒音を発生しにくくなるとともに各々の滑車の偏摩耗が抑制され、巻き掛け伝動機構ひいては駐輪機全体の耐久性の向上に寄与する。
【0017】
そして、これらの効果を発揮するために、2個の動滑車及び中間定滑車のうち大きさが中位の滑車のプーリ径をDとしたとき、他の滑車のプーリ径が0.9D~1.1Dの範囲内[D±0.1D]に属すること(例えば、中位となる中間定滑車のプーリ径がD=50mmのとき各動滑車のプーリ径が45~55mmの範囲内)が望ましい。なお、滑車がワイヤロープを保持する溝を有するシーブsheaveの場合、「プーリ径」は呼び径、有効径のいずれにも該当する。
【0018】
より具体的な一例として、2個の動滑車及び中間定滑車を同一プーリ径に形成し、ワイヤロープの一端側でシリンダの基端部側に連結されるとともに、ピストンロッドの先端部側に取り付けられた一方の動滑車から始まり、シリンダの基端部側に配置された中間定滑車とピストンロッドの先端部側に配置された他方の動滑車とに交互に巻回される形で継続し、さらにシリンダの基端部側に取り付けられた残りの定滑車(後述する末端定滑車)に巻回され、ワイヤロープの他端側でラックに直接又は間接的に連結される場合には、
2個の動滑車に対するワイヤロープの吊り下げ本数が4となり、実車駆動ストローク(すなわち、ピストンストローク)はラックストロークの約1/4となる。
【0019】
また、2個の動滑車は共通の動滑車中心軸に支持されるとともに、中間定滑車は動滑車中心軸と平行に配置された中間定滑車中心軸に支持される。
【0020】
これによって、駐輪機の支柱内部の限られたスペース内に第二駆動部(実車昇降駆動用ガススプリング及び巻き掛け伝動機構)を小型コンパクトに収容できるので、作業者及び第二駆動部の安全性が維持できるとともに、第二駆動部が円滑に作動し、振動・騒音を発生しにくい。
【0021】
また、2個の定滑車のうち中間定滑車を除いた末端定滑車を支持する末端定滑車中心軸は中間定滑車中心軸と同軸状に配置され、
末端定滑車は中間定滑車よりも大なるプーリ径を有する場合がある。
【0022】
このように末端定滑車のプーリ径が中間定滑車よりも大であると、ワイヤロープ終端部の末端定滑車から支柱の外部への取り出しが容易となるので、主として支柱の内部に収容配置される巻き掛け伝動機構と、支柱から外部へ突出配置されるラック側との間のロープワークが簡素化される。
【0023】
更には、上記ワイヤロープは、始端が支柱の上方内部に固定されるとともに、終端がラックに連結され、
ワイヤロープの中間部が巻き掛けられる2個の動滑車をピストンロッドの先端部に保持しつつ支柱の内部を上下移動する昇降台車が設けられ、
昇降台車には回転軸線周りに回転しつつ支柱の内壁に沿って走行するガイド輪が設けられる場合もある。
【0024】
これによって昇降台車を支柱内にコンパクトに収容できるとともに、実車昇降駆動用ガススプリングにおけるピストンロッドの進出・退入(すなわち伸長・収縮)作動が昇降台車の下降・上昇移動(ひいてはラックの上昇・下降移動)として円滑にかつ安定して伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第一実施例である駐輪機において空車状態のラックが上段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図2】空車状態のラックが下段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図3】実車状態のラックが下段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図4】実車状態のラックが上段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図5】空車昇降駆動用ガススプリング及び実車昇降駆動用ガススプリングが伸長状態にあるときの空車用巻き掛け伝動機構及び実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図(a)と、背面図(b)と、左側面図(c)。
図6】空車昇降駆動用ガススプリング及び実車昇降駆動用ガススプリングが退入状態にあるときの空車用巻き掛け伝動機構及び実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図(a)と、背面図(b)と、左側面図(c)。
図7】空車昇降駆動用ガススプリングが伸長状態、実車昇降駆動用ガススプリングが退入状態にあるときの空車用巻き掛け伝動機構及び実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図(a)と、背面図(b)と、左側面図(c)。
図8図5(b)の上部拡大図。
図9図5(b)の下部拡大図。
図10】下部台車と昇降台車が見えるように支柱を水平切断したときの断面図。
図11】上部台車と中間定滑車が見えるように支柱を水平切断したときの断面図。
図12】末端定滑車が見えるように支柱を水平切断したときの断面図。
図13】第二実施例である駐輪機とその状態変化を簡略的に示した側面図。
図14】空車昇降駆動用定荷重ばねが引き戻し状態、実車昇降駆動用ガススプリングが伸長状態にあるときの実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図(a)と、背面図(b)。
図15】空車昇降駆動用定荷重ばねが伸長状態、実車昇降駆動用ガススプリングが退入状態にあるときの実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図(a)と、背面図(b)。
図16】空車昇降駆動用定荷重ばねが引き戻し状態、実車昇降駆動用ガススプリングが退入状態にあるときの実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図(a)と、背面図(b)。
図17図14(b)の上部拡大図。
図18図14(b)の下部拡大図。
図19】下部台車と昇降台車が見えるように支柱を水平切断したときの断面図。
図20】上部台車と中間定滑車が見えるように支柱を水平切断したときの断面図。
図21】空車昇降駆動用定荷重ばねが見えるように支柱を水平切断したときの断面図。
図22】第三実施例である駐輪機において空車状態のラックの倒立収納状態を簡略的に示した側面図。
図23】空車状態のラックが下段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図24】実車状態のラックが下段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図25】実車状態のラックが上段位置にある状態を簡略的に示した側面図。
図26】実車用巻き掛け伝動機構を示した右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。
【0027】
なお、図1図4に示す駐輪機100においては、各図の左右方向を駐輪機100の前後方向(右が前、左が後ろ)、各図の奥行き方向を駐輪機100の幅方向、各図の上下方向を駐輪機100の上下方向と定めるものとする。
【0028】
第一実施例の駐輪機100は、ダブルガススプリングタイプの駐輪機であり、図1図4に示すように、自転車BCL(図3及び図4参照)を搭載するための垂直上下昇降式のラック13を備える。ラック13は、自転車BCLを搭載及び降車させる際の前後進方向(前後方向)に樋形状で片持ち状に延びる長手状をなし、先端(後端)に自転車BCLを搬出入するための出入口13Eが形成される。ラック13には、搭載された自転車BCLの横転を防ぐためのブレース14(サイドガード)が幅方向両側に一対配置されている。また、ラック13には、搭載された自転車BCLの先行搬入車輪(図3及び図4では前輪FW)を保持するタイヤガード13Gが前方側に設けられている。
【0029】
また、第一実施例の駐輪機100は、図1図4に示すように、自転車BCL(図3及び図4参照)を搭載しない空車状態のラック13を上下方向に筒状形態で立設された支柱1に沿って水平姿勢で昇降するための空車昇降駆動部10(第一駆動部)と、自転車BCLを搭載した実車状態のラック13を支柱1に沿って水平姿勢で昇降するための実車昇降駆動部20(第二駆動部)と、を備える。
【0030】
空車昇降駆動部10(第一駆動部)は、図5図7に示すように、空車昇降駆動用アクチュエータとしての空車昇降駆動用ガススプリング11GSによって上部台車12(第一昇降部)を昇降させる。ここでの空車昇降駆動部10は、自転車BCLを搭載可能なラック13を支柱1に沿って昇降可能な上部台車12と、自転車BCLを搭載しない空車状態のラック13(ブレース14等のラック付属物を含む)と、の合計荷重を牽引する機能を有する空車昇降駆動用ガススプリング11GS(以下、ガススプリング11GSと略す)を用いている。
【0031】
上部台車12は、ラック13及びブレース14が一体に組み付けられ、図11に示すガイドレール34に沿って上下に昇降する。ここでの上部台車12は、支柱1の後方側側面に設けられた上下方向に延びるガイドレール34上を転がるローラ4が組み付けられる。
【0032】
ガススプリング11GSは、上部台車12を常時上方に引き上げるように付勢する付勢手段である。ここでのガススプリング11GSは、図5図7の(a)及び(b)に示すように、支柱1の上方内部において基端部が取り付けられた空車用シリンダ11S(以下、シリンダ11Sと略する)と、シリンダ11Sから下向きに突出して牽引力を発揮する空車用ピストンロッド11R(以下、ピストンロッド11Rと略す)と、を有する。
【0033】
また、空車昇降駆動部10は、空車用巻き掛け伝動機構16(以下、巻き掛け伝動機構16と略す)を有する。巻き掛け伝動機構16は、上部台車12にガススプリング11GSの付勢力を作用させるための機構であり、図5図7の(a)、(b)に示すように、動滑車18A、18Cと、定滑車14B、14D(以下、定滑車14B、14Dと略する)と、ワイヤロープ15と、を有する。
【0034】
空車用動滑車18A、18C(以下、動滑車18A、18Cと略す)は、図9及び図10に示すように、ここでは空車用回転軸線R18(以下、回転軸線R18と略す)が共通する2個の動滑車であり、ピストンロッド11Rの先端部に接続される。他方、空車用定滑車14B、14D(以下、定滑車14B、14Dと略する)は、ここでは2個の定滑車であり、シリンダ11Sよりも高位置(図5図7の(a)、(b)参照)において支柱1の内部に位置固定される。空車用ワイヤロープ15は、各々の動滑車18A、18C及び各々の定滑車14B、14Dに交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープである。
【0035】
空車用ワイヤロープ15(以下、ワイヤロープ15と略す)は、図5図7の(a)、(b)に示すように、一端15A(始端)側でシリンダ11Sの基端部側に連結されるとともに、ピストンロッド11Rの先端部側に取り付けられた一方の動滑車18Aに巻回される形で当該動滑車18Aから始まり、シリンダ11Sの基端部側に配置された定滑車14B(中間定滑車)とピストンロッド11Rの先端部側に配置された他方の動滑車18Cとに交互に巻回される形で継続し、さらにシリンダ11Sの基端部側に取り付けられた残りの定滑車14D(末端定滑車)に巻回される。
【0036】
そして、ワイヤロープ15の他端15B(終端)側がラック13に直接又は間接的に連結される。これにより、上部台車12は、ピストンロッド11Rの退入(収縮)により下降し、突出(伸長)により上昇する。ワイヤロープ15の他端15Bについては、ここでは上部台車12に対し直接的に接続されている。ここでの上部台車12にはラック13が一体に組み付けられているため、ワイヤロープ15の他端15Bはラック13に対し直接的に接続されているといってもよい。
【0037】
なお、2個の定滑車14B、14Dのうちワイヤロープ15が巻回されるとき2個の動滑車18A、18Cの間に位置する定滑車14Bが中間定滑車であり、2個の定滑車14B、14Dのうち中間定滑車14Bを除いた定滑車14Dが末端定滑車である。
【0038】
実車昇降駆動部20(第二駆動部)は、図5図7の(b)、(c)に示すように、実車昇降駆動用アクチュエータとしてのガススプリング21GSによって下部台車22(第二昇降部)を昇降させる。ここでの実車昇降駆動部20は、支柱1に沿って上部台車12と一体的に昇降可能な下部台車22と、ラック13に実車状態で搭載された自転車BCLと、の合計荷重を牽引する機能を有する実車昇降駆動用ガススプリング21GS(以下、ガススプリング21GSと略す)を用いている。
【0039】
下部台車22は、上部台車12の下方に配置され、上部台車12と同様、図10に示すガイドレール34に沿って上下に昇降する。ここでの下部台車22は、ガイドレール34上を転がるローラ5が組み付けられる。
【0040】
ガススプリング21GSは、下部台車22を常時上方に引き上げるように付勢する付勢手段である。ここでのガススプリング21GSは、ガススプリング11GSとは別に支柱1の上方内部において基端部が取り付けられたガススプリング21GSの実車用シリンダ21S(以下、シリンダ21Sと略す)と、から下向きに突出して牽引力を発揮する実車用ピストンロッド21R(以下、ピストンロッド21Rと略す)と、を有する。
【0041】
また、実車昇降駆動部20は、実車用巻き掛け伝動機構26(以下、巻き掛け伝動機構26と略す)を有する。巻き掛け伝動機構26は、下部台車22にガススプリング21GSの付勢力を作用させるための機構であり、図5図7の(b)、(c)に示すように、実車用動滑車28A、28Cと、実車用定滑車24B、24Dと、ワイヤロープ25と、を有する。
【0042】
実車用動滑車28A、28C(以下、動滑車28A、28Cと略す)は、ここでは実車用回転軸線R28(以下、回転軸線R28と略す)が共通する2個の動滑車であり、ピストンロッド21Rの先端部に接続される。他方、実車用定滑車24B、24D(以下、定滑車24B、24Dと略す)は、ここでは2個の定滑車であり、シリンダ21Sよりも高位置において支柱1の内部に位置固定される。ワイヤロープ25は、各々の動滑車28A、28C及び各々の定滑車24B、24Dに交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープである。
【0043】
実車用ワイヤロープ25(以下、ワイヤロープ25と略す)は、一端25A(始端)側でシリンダ21Sの基端部側に連結されるとともに、ピストンロッド21Rの先端部側に取り付けられた一方の動滑車28Aに巻回される形で当該動滑車28Aから始まり、シリンダ21Sの基端部側に配置された定滑車24B(中間定滑車)とピストンロッド21Rの先端部側に配置された他方の動滑車28Cとに交互に巻回される形で継続し、さらにシリンダ21Sの基端部側に取り付けられた残りの定滑車24D(末端定滑車)に巻回される。
【0044】
そして、ワイヤロープ25の他端25B(終端)側がラック13に直接又は間接的に連結される。これにより、下部台車22は、ピストンロッド21Rの退入(収縮)により下降し、突出(伸長)により上昇する。ワイヤロープ25の他端25Bについては、ここでは下部台車22に対し直接的に接続されており、その下部台車22と、当該下部台車22にロックされた上部台車12と、を介してラック13に対し連結できる。
【0045】
なお、2個の定滑車24B、24Dのうちワイヤロープ25が巻回されるとき2個の動滑車28A、28Cの間に位置する定滑車24Bが中間定滑車であり、2個の定滑車24B、24Dのうち中間定滑車24Bを除いた定滑車24Dが末端定滑車である。
【0046】
ところで、各々の動滑車18A、18Cと中間定滑車14Bとが同一のプーリ径である。同様に、各々の動滑車28A、28Cと中間定滑車24Bとが同一のプーリ径である。このように、共通の回転軸線R18の周りで回転する2個の動滑車18A、18Cと、中間定滑車14Bとが同一のプーリ径に形成され、さらには共通の回転軸線R28の周りで回転する2個の動滑車28A、28Cと、中間定滑車24Bとが同一のプーリ径に形成されることによって、それぞれに対応するガススプリング11GS、21GSのピストンストロークはラックストロークの約1/4に縮小され、ガススプリング11GS、21GSひいては駐輪機100全体の耐久性向上が容易に達成できる。また、ワイヤロープ(15)、(25)が掛け渡された2個の動滑車(18A、18C)、(28A、28C)及び中間定滑車(14B)、(24B)の間の周速差が小さくなり、振動・騒音を発生しにくくなるとともに各々の滑車の偏摩耗が抑制され、巻き掛け伝動機構(16)、(26)ひいては駐輪機100全体の耐久性の向上に寄与する。
【0047】
以下、支柱1内における空車昇降駆動部10及び実車昇降駆動部20、巻き掛け伝動機構16、26の配置及び組み付けについて説明する。
【0048】
支柱1は、図8に示すように、その内部においてガススプリング11GS、21GSの双方を組付けるためのガススプリング固定部材として、固定部材110を有する。固定部材110は、支柱1に固定される対向板部111(ガススプリング固定用対向板部)と、それらの対向間を延びるガススプリング組付け軸112と、を有する。他方、それら両ガススプリング11GS、21GSは、それぞれシリンダ11S、21Sのピストンロッド11R、21Rとは逆側の端部に組付け用挿通部11T、21Tを有する。また、両ガススプリング11GS、21GSは、対向板部111の対向間において、組付け軸112に対し組付け用挿通部11T、21Tの双方を挿通させることにより、支柱1に対し取り付けられる。このとき、組付け軸112の軸線R112は支柱1の幅方向に延びており、両ガススプリング11GS、21GSは、その幅方向において所定間隔を隔てて並ぶ形で支柱1内に配置されるとともに、支柱1内において上記軸線R112(揺動軸線)の周りを揺動可能とされる。
【0049】
また、ガススプリング11GS、21GSは、図9に示すように、それぞれピストンロッド11R、21Rの先端部に動滑車固定部材120、150が固定される。動滑車固定部材120、150は、それぞれ動滑車固定用対向板部121、151と、それら対向板部121、151の対向間を延びる動滑車中心軸122、152と、を有する。2個の動滑車18A、18Cは共通の動滑車中心軸122に挿通される形で支持され、その軸線である回転軸線R18の周りを回転可能とされる。他方、2個の動滑車28A、28Cも共通の動滑車中心軸152に挿通される形で支持され、その軸線である回転軸線R28の周りを回転可能とされる。
【0050】
なお、ここでの2個の動滑車18A、18Cは、共通の動滑車中心軸122(回転軸線R18)の周りを互いに独立して回転可能である。同様に、2個の動滑車28A、28Cも、共通の動滑車中心軸152(回転軸線R28)の周りを互いに独立して回転可能である。
【0051】
また、動滑車固定部材120、150には、図9に示すようにガイド輪2、3が組付けられており、これにより空車用昇降台車17及び実車用昇降台車27が形成されている。ガイド輪2、3は、対向板部121、151に挿通固定されたガイド輪回転軸123、153に回転可能に固定されており、回転軸123、153の軸線R2、R3(ガイド輪回転軸線)の周りに回転しつつ支柱1の内壁(32、35)、(33、35)に沿って走行することができる。
【0052】
空車用昇降台車17(以下、昇降台車17と略す)は、ワイヤロープ15の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車18A、18Cをピストンロッド11Rの先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する。また、実車用昇降台車27(以下、昇降台車27と略す)は、ワイヤロープ25の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車28A、28Cをピストンロッド21Rの先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する。支柱1の内部には、図10に示すように、幅方向(図10の左右方向)の第一側とその逆の第二側に振り分けられる形で、ガイド輪2、3によって昇降台車17、27をそれぞれ上下方向にガイド移動するガイド部32、33、35(内壁)が設けられる。ガイド部32、33は、それぞれが昇降台車17、27に対応するよう支柱1の内部で幅方向の第一側とその逆の第二側に形成される。また、ガイド部35は、支柱1の幅方向の中央で第一側と第二側とを隔てる昇降台車用区画壁部35として設けられる。ここでの支柱1は、上部台車12及び下部台車22が上下方向に移動する後方側と、昇降台車17、27が上下に移動する内部前方側とを区画する前後区画壁部30が設けられており、昇降台車用区画壁部35は、前後区画壁部30の幅方向の中央から前方に突出する形で形成されている。
【0053】
また、支柱1は、図8及び図11に示すように、その内部において中間定滑車14B、24Bを組付けるための中間定滑車固定部材として、ガススプリング固定部材としても機能している上述の固定部材110を有する。なお、中間定滑車固定部材とガススプリング固定部材と別に設けられていてもよい。
【0054】
固定部材110は、対向板部111(中間定滑車固定用対向板部)の対向間を延びる中間定滑車中心軸113を有する。なお、中間定滑車中心軸113は、上述した動滑車中心軸122、152と平行に配置される。ここでの中間定滑車14B、24Bは共通の中間定滑車中心軸113に挿通される形で支持され、その軸線R113の周りを回転可能とされる。中間定滑車14B、24B及び中間定滑車中心軸113は、支柱1の内部においてガススプリング組付け軸112よりも上方に配置される。
【0055】
また、支柱1は、図8及び図12に示すように、その内部において末端定滑車14D、24Dを組付けるための末端定滑車固定部材130、140を有する。末端定滑車固定部材130、140は、支柱1に固定される末端定滑車固定用対向板部131、141と、それらの対向間を延びる末端定滑車中心軸132、142(図12参照)と、をそれぞれ有する。末端定滑車14D、24Dはそれぞれの末端定滑車中心軸132、142に挿通される形で支持され、それぞれの軸線R14、R24(図12参照)の周りを回転可能とされる。ここでの末端定滑車固定部材130、140は、図8に示すように、支柱1の内部において固定部材110よりも上方に配置される。また、ここでの末端定滑車固定部材130、140は、支柱1の上端から突出し、支柱1の上端部に組み付けられる上部カバー101(図1図4参照)内に収容される。
【0056】
末端定滑車中心軸132、142は、動滑車中心軸122、152とは非平行に配置され、末端定滑車14D、24Dは、平面視において「八」の字状に並ぶ。具体的にいえば、末端定滑車14D、24Dは、図12に示すように、平面視において、一方(ここでは14D)が他方(ここでは24D)よりも後方(図12上側)に位置し、かつ幅方向中心線Yの第一側(図12左側)とその逆の第二側(図12右側)とに振り分けて配置されるとともに、それぞれの巻き掛け中心線Y1、Y2が幅方向中心線Yと交差するように傾斜して配置される。ワイヤロープ15は、支柱1内の前方側(図12下側)で、かつ幅方向の第一側(図12左側)から上方に延びるとともに、その先で末端定滑車14Dに巻き掛けられると、巻き掛け中心線Y1の幅方向中心線Yとの交点から下方に延び、ワイヤロープ25よりも後方側(図12上側)を通って上部台車12に至り、終端15Bが上部台車12に固定される(図11参照)。他方、ワイヤロープ25は、支柱1内の前方側(図12上側)で、かつ幅方向の第二側(図12右側)から上方に延びるとともに、その先で末端定滑車24Dに巻き掛けられると、巻き掛け中心線Y2の幅方向中心線Yとの交点から下方に延び、ワイヤロープ15よりも前方側(図12下側)を通って下部台車22に至り、終端25Bが下部台車22に固定される(図10参照)。
【0057】
本実施例の巻き掛け伝動機構16、26は、図5図7の(b)に示すように、支柱1内において幅方向に横並びする形で配置される。そして、ワイヤロープ15、25が動滑車18C、28Cにて折り返してから、定滑車14D、24D、台車12、22にかけてを除けば、基本的には幅方向の第一側とその逆の第二側とにおいて対称的に配置される。
【0058】
具体的にいえば、ワイヤロープ15は、支柱1内の上方位置に設けられた空車用ワイヤロープ固定部102(図11参照)に掛け止め固定される。その掛け止め位置は、支柱1内の幅方向の第一側のうち幅方向の中央側に偏った位置である。そして、その掛け止め位置から幅方向の第一側に向かう外向き方向において、動滑車18A及び動滑車18Cが順に並んで配置される。中間定滑車14Bは、当該外向き方向において、動滑車18A又は動滑車18Cと同位置、又はそれらの間の位置に配置される。これにより、ワイヤロープ15は、支柱1内において幅方向の中央側から幅方向の第一側外方向に向かう形で、各滑車18A、14B、18Cに対し順に巻き掛けられる。そして、末端定滑車14Dは、上述のように幅方向中心線Yに対し傾斜して配置されているため、ワイヤロープ15は、定滑車14Dに対し幅方向の第一側から巻き掛けられ、幅方向の中心位置で下方に延びる。
【0059】
他方、ワイヤロープ25も、支柱1内の上方位置に設けられた空車用ワイヤロープ固定部102(図11参照)に掛け止め固定される。その掛け止め位置は、支柱1内の幅方向の第二側のうち幅方向の中央側に偏った位置である。そして、その掛け止め位置から幅方向の第二側に向かう外向き方向において、動滑車28A及び動滑車28Cが順に並んで配置される。中間定滑車24Bは、当該外向き方向において、動滑車28A又は動滑車28Cと同位置、又はそれらの間の位置に配置される。このため、ワイヤロープ25も、支柱1内の幅方向の中央側から幅方向の第二側外方向に向かう形で、各滑車28A、24B、28Cに対し順に巻き掛けられる。そして、末端定滑車24Dは、上述のように幅方向中心線Yに対し傾斜して配置されているため、ワイヤロープ25は、定滑車24Dに対し幅方向の第二側から巻き掛けられ、幅方向の中心位置で下方に延びる。ただし、ワイヤロープ25の中心位置は、同じく幅方向の中心位置で下方に延びるワイヤロープ15よりも前後方向にずれており、ここではワイヤロープ15よりも前方側に位置する。
【0060】
また、第一実施例の駐輪機100は、図1図4に示すように、台車ロック機構40(下段ストップ機構)と、ラックロック機構50(移動ストップ機構)と、を備える。なお、台車ロック機構40及びラックロック機構50については、特開2018-039493号に同様の機構が記載されているため、詳細な説明は省略する。
【0061】
台車ロック機構40は、図2のようにラック13に自転車BCLが搬入されていない空車状態のときに両台車12、22を非連結状態とし、かつ下部台車22を昇降不能な台車ロック作動状態とする一方、図3に示すようにラック13に自転車BCLが搬入された実車状態のときに両台車12、22を連結状態とし、かつ下部台車22を昇降可能な台車ロック解除状態とする。
【0062】
具体的にいえば、台車ロック機構40は、下部台車22が所定の下段位置にあり、かつラック13が空車状態にあるときには、支柱1に対し下部台車22を係合(ここでは係止)させて、下部台車22の昇降が不能となるようにロック作動する(図2参照)。そして、この台車ロック作動状態において下部台車22に対し上部台車12が降下すると上下に近接して並んだ連結可能状態となり、このときラック13の実車状態が検知されると、台車ロック機構40は、その検知動作に連動して両台車12、22を一体化した状態での昇降が可能な連結状態とする。さらに台車ロック機構40は、その連結動作に連動して支柱1に対する下部台車22の係合を解き、下部台車22の昇降が可能となるようにロック解除する(図3参照)。このように台車ロック機構40は、下部台車ロック機構(第二昇降台車ロック機構)及び台車連結機構として作用する。
【0063】
ラック13の空車状態と実車状態の検知手段は、ラック13上で前後揺動可能、かつばね部材等の車輪受け付勢部材(図示無し)によって後傾状態に付勢された車輪受け44である(第一検知手段)。車輪受け44が後傾状態(実車非検知状態)にあるときを空車状態として検知し、自転車BCLの先行搬入車輪(例えば前輪FW)を受け止めて前傾状態(実車検知状態)にあるときを実車状態として検知する。この車輪受け44の動作に連動して、台車ロック機構40は、台車ロック作動状態と台車ロック解除状態とを切換える。
【0064】
ラックロック機構50は、ラック13が所定の下段位置(図2及び図3参照)又は所定の上段位置(図1及び図4参照)にあるときに支柱1に対し昇降不能なラックロック作動状態とする一方で、作動部材54(第二検知手段)の作動に基づいてそのラックロック作動状態を解除し、所定の下段位置(図2及び図3参照)又は所定の上段位置(図1及び図4参照)におけるラック13の支柱1に対する昇降を可能にする。
【0065】
具体的にいえば、ラックロック機構50は、ラック13が所定の下段位置(図2及び図3参照)又は所定の上段位置(図1及び図4参照)にあり、かつ作動部材54が非作動状態にあるときには、支柱1に対し上部台車12を係合(ここでは係止)させて、上部台車12の昇降が不能となるようにロック作動する。そして、このラックロック作動状態において作動部材54の作動状態が検知されると、ラックロック機構50は、その検知動作に連動して支柱1に対する上部台車12の係合を解き、上部台車12の昇降が可能となるようにロック解除する(ラックロック解除状態)。このようにラックロック機構50は、上部台車ロック機構(第一昇降台車ロック機構)として作用する。
【0066】
作動部材54は、ラック13の後端の搬入自転車BCLの出入口13Eに設けられており、先端側(後端側)が上方位置にあるようばね部材等の作動部材付勢部材(図示無し)によって付勢される。作動部材54の先端側(後端側)が上方位置にあるときが非作動状態(作動非検知状態)であり、先端側(後端側)が自転車BCLの車輪(前輪FW又は後輪RW)が載る、あるいは人為的な操作がなされることによって下方位置に押し下げられたときが作動状態(作動検知状態)である。
【0067】
このように、台車ロック機構40は、下部台車22を所定の下段位置にロック保持してラック13の上昇を禁止する機構であり、車輪受け44が車輪を受けて下部台車22が上部台車12と連結したときにそのロックを解除できる。他方、ラックロック機構50は、上部台車12を所定の下段位置及び上段位置にロック保持してラック13の上下昇降を禁止する機構であり、作動部材54の作動によりそのロックを解除できる。
【0068】
以上で述べた第一実施例の駐輪機100の作動について説明する。
【0069】
<空車待機状態=空車状態のラックが上段位置にある:図1
・ラック13及び上部台車12は上段位置にある(動滑車18A、18Cは下位置、ピストンロッド11Rは突出:図7
・上部台車12はラックロック機構50によって下降不能(作動部材54に操作なし)
・下部台車22は下段位置にある(動滑車28A、28Cは上位置、ピストンロッド21Rは退入:図7
・下部台車22は台車ロック機構40によって上昇不能(車輪受け44は後傾状態)
・両台車12、22は上下に離れた連結解除状態にある(連結不可)
【0070】
<空車ラック降下=空車状態のラックが降下する:図1図2
図1の状態において作動部材54が人為的な操作によって作動状態とされることにより、ラックロック機構50が上部台車12を下降可能に切換える。そして、ラック13及び上部台車12を、ガススプリング11GSの付勢力に抗して図2の位置まで降下させる(図7図6)。ガススプリング11GSの付勢力が、ラック13及び上部台車12の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック13を押し下げることができる。
【0071】
<自転車搬入可能状態=空車状態のラックが下段位置にある:図2
・ラック13及び上部台車12は下段位置にある(動滑車18A、18Cは上位置、ピストンロッド11Rは退入:図6
・上部台車12はラックロック機構50によって上昇不能(作動部材54に操作なし)
・下部台車22は下段位置にある(動滑車28A、28Cは上位置、ピストンロッド21Rは退入:図6
・下部台車22は台車ロック機構40によって上昇不能を維持(車輪受け44は後傾状態のまま)
・両台車12、22は上下に近接した連結可能状態にある(ただし連結はしていない)
【0072】
<自転車搬入=空車状態のラックに自転車が搬入される:図3
・ラック13及び上部台車12は下段位置にある(動滑車18A、18Cは上位置、ピストンロッド11Rは退入:図6
・上部台車12はラックロック機構50によって上昇不能(作動部材54に操作なし)
・下部台車22は下段位置にある(動滑車28A、28Cは上位置、ピストンロッド21Rは退入:図6
・下部台車22は台車ロック機構40によって上昇可能(車輪受け44が前傾状態に切換わる)
・両台車12、22は連結状態になった
【0073】
<実車ラック上昇=実車状態のラックが上昇する:図3図4
図3の状態において作動部材54が人為的な操作(例えば作動部材54を踏む)によって作動状態とされることにより、ラックロック機構50が上部台車12を上昇可能に切換える。そして、ラック13及び両台車12、22を、ガススプリング11GS、21GSの付勢力を利用して図4の位置まで引き上げる。このとき、ガススプリング11GS、21GSのピストンロッド11R、21Rが突出し、動滑車18A、18C、28A、28Cは上から下に位置を変える(図6図5)。ガススプリング11GS、21GSの付勢力が、自転車BCL、ラック13、両台車12、22の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック13を引き上げることができる。
【0074】
<実車待機状態=実車状態のラックが上段位置にある:図4
・ラック13及び上部台車12は上段位置にある(動滑車18A、18Cは下位置、ピストンロッド11Rは突出:図5
・上部台車12はラックロック機構50によって下降不能(作動部材54に操作なし)
・下部台車22は上段位置にある(動滑車28A、28Cは下位置、ピストンロッド21Rは突出:図5
・下部台車22は台車ロック機構40によって下降可能(車輪受け44は前傾状態を維持)
・両台車12、22は連結状態を維持
【0075】
<実車ラック降下=実車状態のラックが降下する:図4図3
図4の状態において作動部材54が人為的な操作によって作動状態とされることにより、ラックロック機構50が上部台車12を下降可能に切換える。そして、ラック13及び両台車12、22を、ガススプリング11GS、21GSの付勢力に抗して図3の位置まで降下させる。このとき、ガススプリング11GS、21GSのピストンロッド11R、21Rが退入し、動滑車18A、18C、28A、28Cは下から上に位置を変える(図5図6)。ガススプリング11GS、21GSの付勢力が、自転車BCL、ラック13、両台車12、22の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック13を押し下げることができる。
【0076】
<自転車搬出=ラックから自転車が搬出されるときに空車状態のラックが自動上昇:図3図2図1
図3の状態において自転車BCLがラック13上を後進すると、前輪FW(先行搬入車輪)が車輪受け44から離れて前傾状態に復帰する。これにより、下部台車22は台車ロック機構40によって上昇不能に切換わる。
・さらに自転車BCLがラック13上を後進して前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材54に載ると、作動部材54が押し下げられて作動状態となる。これにより、上部台車12はラックロック機構50によって上昇可能に切換わる。ただし、前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材54に載っているため、その重さにより上部台車12は上昇できない。
・前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材54から離れると、ラック13及び上部台車12がガススプリング11GSの付勢力を利用して自動的に上昇する。ガススプリング11GSの付勢力が、ラック13及び上部台車12の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック13を図1の位置まで押し上げることができる。なお、下部台車22は下段位置に残される。
【0077】
<空車ラック上昇=空車状態のラックが上昇する:図2図1
図2の状態において、上部台車12はラックロック機構50によって上昇不能となっているが、作動部材54が人為的な操作によって作動状態とされることにより、ラックロック機構50が上部台車12を上昇可能に切換える。そして、下部台車22を下段位置に残したまま、ラック13及び上部台車12を、ガススプリング11GSの付勢力を利用して図1の位置まで上昇させる(図6図7)。ガススプリング11GSの付勢力が、ラック13及び上部台車12の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック13を押し上げることができる。
【0078】
以上、本発明の第一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0079】
第一実施例において、2個の定滑車24B、24D(実車用定滑車)のうち中間定滑車24Bを除いた末端定滑車24Dを支持する末端定滑車中心軸142(図12参照)が中間定滑車中心軸113(図11参照)と同軸状に配置され、末端定滑車24Dが中間定滑車24Bよりも大なるプーリ径を有するように構成することも可能である(後述する図19及び図20参照)。同様に、第一実施例において、2個の定滑車14B、14D(空車用定滑車)のうち中間定滑車14Bを除いた末端定滑車14Dを支持する末端定滑車中心軸132(図12参照)が中間定滑車中心軸113(図11参照)と同軸状に配置され、末端定滑車24Dが中間定滑車24Bよりも大なるプーリ径を有するように構成することも可能である。
【0080】
また、第一実施例において、ワイヤロープ25(実車用ワイヤロープ)の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車28A、28C(実車用動滑車)をピストンロッド21R(実車用ピストンロッド)の先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する昇降台車27(実車用昇降台車)が設けられ、昇降台車27には動滑車中心軸152(図9参照)の軸線R28(回転軸線)の周りに回転しつつ支柱1の内壁に沿って走行するガイド輪3が設けられてもよい。つまり、昇降台車27における2個の動滑車28A、28Cとガイド輪3が共通の軸線R28(回転軸線)の周りを回転するように構成してもよい(後述する図19参照)。同様に、第一実施例において、ワイヤロープ15(空車用ワイヤロープ)の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車18A、18C(空車用動滑車)をピストンロッド11R(空車用ピストンロッド)の先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する昇降台車17が設けられ、昇降台車17(空車用昇降台車)には動滑車中心軸122の軸線R18(回転軸線)の周りに回転しつつ支柱1の内壁に沿って走行するガイド輪2が設けられてもよい。つまり、昇降台車17における2個の動滑車18A、18Cとガイド輪2が共通の軸線R18(回転軸線)の周りを回転するように構成してもよい。
【0081】
本発明の第二実施例について図面を参照して説明する。
【0082】
第二実施例の駐輪機100は、図13に示すように、自転車BCLを搭載しない空車状態のラック13を上下方向に筒状形態で立設された支柱1に沿って水平姿勢で昇降するための空車昇降駆動部10(第一駆動部:図14図16参照)と、自転車BCLを搭載した実車状態のラック13を支柱1に沿って水平姿勢で昇降するための実車昇降駆動部20(第二駆動部:図14図16参照)と、を備える駐輪機であって、実車昇降駆動部20は、支柱1の上方内部において基端部が取り付けられた実車昇降駆動用ガススプリング21GSのシリンダ21S(実車用シリンダ)から下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッド21R(実車用ピストンロッド)の先端部に接続され、回転軸線R28(実車用回転軸線)が共通する2個の動滑車28A、28C(実車用動滑車)と、シリンダ21S(実車用シリンダ)よりも高位置において支柱1の内部に位置固定された2個の定滑車24B、24D(実車用定滑車)と、各々の動滑車28A、28C(実車用動滑車)及び各々の定滑車24B、24D(実車用定滑車)に交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープ25(実車用ワイヤロープ)とが組み込まれた巻き掛け伝動機構26(実車用巻き掛け伝動機構)を有する。
【0083】
具体的にいえば、第二実施例の駐輪機100は、2つのガススプリングを利用するダブルガススプリングタイプの第一実施例とは異なり、ガススプリングと定荷重ばねを利用するタイプの駐輪機であり、図13に示すように、空車昇降駆動部10(第一駆動部)においてガススプリング11GS(空車昇降駆動用ガススプリング)に代わって定荷重ばね11CS(空車昇降駆動用定荷重ばね)が用いられる。ただし、この点を除けば、基本的には第一実施例と同様に構成されている。なお、第二実施例では、空車昇降駆動用定荷重ばね11CS(以下、定荷重ばね11CSと略す)を用いるため、図14に示すように、第一実施例における巻き掛け伝動機構16(空車用巻き掛け伝動機構)が存在せず、巻き掛け伝動機構26(実車用巻き掛け伝動機構)のみが存在する。
【0084】
空車昇降駆動部10は、上部台車12を昇降させるための空車昇降駆動用アクチュエータとして定荷重ばね11CSを有する。定荷重ばね11CSは、第一実施例のガススプリング11GSと同様、上部台車12を常時上方に引き上げるように付勢する付勢手段であり、上部カバー101(図13参照)の内部にドラム11Dが配置される形で支柱1に対し固定される。ドラム11Dは、図17に示すように、支柱1に固定されるドラム固定部材の対向板部11Aに回転中心軸11Cを挿通する形で配置され、その軸線R11周りを回転可能とされる。ドラム11Dに巻き付く長尺の板ばね11Bの先端は、上部台車12の板ばね固定部12Bに対し固定される(図20参照)。
【0085】
実車昇降駆動部20については、第一実施例と同様に存在する。したがって、第二実施例においても、各々の動滑車28A、28Cと、2個の定滑車24B、24Dのうちワイヤロープ25が巻回されるとき2個の動滑車28A、28Cの間に位置する中間定滑車24Bと、が同一のプーリ径である(図19及び図20参照)。また、2個の動滑車28A、28Cは共通の動滑車中心軸222に支持されるとともに(図19参照)、中間定滑車24B、24Dは動滑車中心軸222と平行に配置された中間定滑車中心軸213に支持される(図20参照)。
【0086】
ただし、第二実施例においては、2個の定滑車24B、24Dのうち中間定滑車24Bを除いた末端定滑車24Dを支持する末端定滑車中心軸213は中間定滑車中心軸と同軸状に配置され、末端定滑車24Dは中間定滑車24Bよりも大なるプーリ径を有している。具体的にいえば、末端定滑車24Dを支持する末端定滑車中心軸と、中間定滑車24Bを支持する中間定滑車中心軸とが共通の中心軸213として設けられる。
【0087】
また、第二実施例においては、ワイヤロープ25の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車28A、28Cをピストンロッド21Rの先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する昇降台車27が設けられ、昇降台車27には、動滑車回転軸線R28の周りに回転しつつ支柱1の内壁に沿って走行するガイド輪3が設けられている。つまり、第二実施例では、動滑車回転軸線R28がガイド輪回転軸線としても機能している(図19参照)。
【0088】
第二実施例の支柱1内における実車昇降駆動部20及び巻き掛け伝動機構26の配置及び組み付けについて説明する。
【0089】
支柱1は、図17に示すように、その内部に21GSを組付けるためのガススプリング固定部材として、固定部材210を有する。固定部材210は、支柱1に固定される対向板部211(ガススプリング固定用対向板部)と、それらの対向間を延びるガススプリング組付け軸212と、を有する。他方、ガススプリング21GSは、シリンダ21Sの端部に組付け用挿通部21Tを有する。ガススプリング21GSは、対向板部211の対向間において、組付け軸212に対し組付け用挿通部21Tを挿通させることにより、支柱1に対し取り付けられる。このとき、組付け軸212の軸線R212は支柱1の幅方向に延びており、ガススプリング21GSは、支柱1内において上記軸線R212(揺動軸線)の周りを揺動可能とされる。
【0090】
また、ガススプリング21GSは、図18に示すように、ピストンロッド21Rの先端部に動滑車固定部材220が固定される。動滑車固定部材220は、動滑車固定用対向板部221と、それらの対向間を延びる動滑車中心軸222と、を有する。ここでは2個の動滑車28A、28Cも共通の動滑車中心軸222に挿通される形で支持されており、回転軸線R28の周りを回転可能とされる。
【0091】
なお、ここでの2個の動滑車28A、28Cは、別体に成形されており、それぞれが幅方向に所定間隔を隔てて配置され、それぞれが共通の動滑車中心軸222(回転軸線R28)の周りを独立して回転する。
【0092】
動滑車固定部材220には、図19に示すように、対向板部221に挿通固定された動滑車中心軸222がガイド輪回転軸としても機能しており、その軸線である回転軸線R28の周りに回転しつつ支柱1の内壁36に沿って走行するガイド輪3が設けられ、これにより昇降台車27が形成されている。即ち、ここでは2個の動滑車28A、28Cとガイド輪3が共通の回転軸線R28の周りを回転するよう構成されている。
【0093】
昇降台車27は、ワイヤロープ25の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車28A、28Cをピストンロッド21Rの先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する。図19に示すように、支柱1の内部には、その幅方向(図19の左右方向)の第一側とその逆の第二側に振り分けられる形で、ガイド輪3によって昇降台車27をそれぞれ上下方向にガイド移動するためのするガイド部36(内壁)が設けられる。
【0094】
また、支柱1は、図17に示すように、その内部において定滑車24B、24Dを組付けるための定滑車固定部材として、上述の固定部材210を有する。固定部材210は、対向板部211(定滑車固定用対向板部)の対向間を延びる定滑車中心軸213を有する。定滑車中心軸213は、上述した動滑車中心軸222と平行に配置される。定滑車24B、24Dは、共通の定滑車中心軸213に挿通される形で支持され、その軸線R213の周りを回転可能とされる。このように第二実施例では、末端定滑車24Dを支持する末端定滑車中心軸と、中間定滑車24Bを支持する中間定滑車中心軸とが、共通の定滑車中心軸213として設けられており、それら定滑車24B、24D及び定滑車中心軸213が、支柱1の内部においてガススプリング組付け軸212よりも上方に配置されている。
【0095】
なお、ここでの末端定滑車24Dは、図20に示すように、中間定滑車24Bよりも大なるプーリ径を有する。これにより、ワイヤロープ25の終端部の末端定滑車24Dから支柱1の外部への取り出しが容易となっている。前後区画壁部30には、大なるプーリ径を有する末端定滑車24Dがガイドレール34側に突出させることが可能な開口部30V(ここでは切欠き部)が形成されている。
【0096】
また、末端定滑車24Dは、図20に示すように、支柱1の幅方向の中心位置(幅方向中心線Y上)に設けられており、中間定滑車24Bは、支柱1の幅方向の中心位置(幅方向中心線Y上)ではなく、幅方向の一方側に偏った位置に設けられる。これにより、ワイヤロープ25の終端部は、支柱1の後端面側において幅方向の中心位置から垂れ下がり、下部台車22をバランスよく吊り下げることができる。
【0097】
同様に、動滑車28Cは、図19に示すように、支柱1の幅方向の中心位置(幅方向中心線Y上)に設けられており、動滑車28Aは、支柱1の幅方向の中心位置(幅方向中心線Y上)ではなく、幅方向の一方側に偏った位置、ここでは幅方向において中間定滑車24Bと同じ位置に設けられる。一方で、ワイヤロープ25は、図20に示すように、その始端25Aが定滑車中心軸213よりも前方側で、かつ中間定滑車24Bよりも幅方向の一方側にさらに偏った位置に設けられたワイヤロープ固定部202に対し、掛け止め固定されている。したがって、ワイヤロープ25は、幅方向の外側かつ前方側の位置に始端25Aが固定されるとともに、下方の動滑車28Aに対し前方側から後方側へ向けて巻き回されて上方に昇る。そして、その動滑車28Aと幅方向において同位置にある中間定滑車24Bに対し後方側から前方側へ向けて巻き回されて下方に降り、支柱1の幅方向における中心位置(幅方向中心線Y上)にある動滑車28Cに対し前方側から後方側へ向けて巻き回されて上方に昇る。最後に、動滑車28Cと幅方向において同位置にある末端定滑車24Dに対し後方側から前方側へ向けて巻き回されて下方に降り、下部台車22に固定される。このように、ワイヤロープ25は、始端25Aから終端25Bに向けて、幅方向の外側から徐々に中央へと位置を変えていくように巻き回されている。このため、各滑車28A、24B、28C、24Dの動作が安定するとともに、支柱1の後方側において末端定滑車24Dから垂れ下がるワイヤロープ25が、支柱1の幅方向の中心位置(幅方向中心線Y上)を安定して通ることができる。
【0098】
このように第二実施例の駐輪機100では、第一実施例においてラック13に作用するガススプリング11GSの付勢力に代わり、定荷重ばね11CSの付勢力が用いられているが、両者の機能に差異は無い。よって、第二実施例の作動は、第一実施例に準じるものとなるので、説明を割愛する。
【0099】
本発明の第三実施例について図面を参照して説明する。
【0100】
第三実施例の駐輪機100は、空車状態のラック62を倒立収納するタイプであり、図22図25に示すように、自転車BCLを搭載しない空車状態のラック62を上下方向に筒状形態で立設された支柱1の下部における水平姿勢(図23参照)と支柱1に沿う倒立姿勢(図22参照)との間で揺動するための空車揺動駆動部10’(第一駆動部)と、自転車BCLを搭載した実車状態(図24及び図25参照)のラック13を支柱1に沿って水平姿勢で昇降するための実車昇降駆動部20’(第二駆動部)と、を備える駐輪機であって、実車昇降駆動部20’は、支柱1の上方内部において基端部が取り付けられた実車昇降駆動用ガススプリング21GSのシリンダ21S(実車用シリンダ)から下向きに突出して牽引力を発揮するピストンロッド21R(実車用ピストンロッド)の先端部に接続され、回転軸線R28(実車用回転軸線)が共通する2個の動滑車28A、28C(実車用動滑車)と、シリンダ21S(実車用シリンダ)よりも高位置において支柱1の内部に位置固定された2個の定滑車24B、24D(実車用定滑車)と、各々の動滑車28A、28C(実車用動滑車)及び各々の定滑車24B、24D(実車用定滑車)に交互に1回ずつ巻回された単一のワイヤロープ25(実車用ワイヤロープ)とが組み込まれた巻き掛け伝動機構26(実車用巻き掛け伝動機構)を有する。
【0101】
先に実車昇降駆動部20’について説明する。実車昇降駆動部20’は、第二実施例で説明したガススプリング21GS(実車昇降駆動用ガススプリング)と定荷重ばね11CS(実車昇降駆動用定荷重ばね11CS)とによって台車61(昇降台車)を昇降させる台車昇降機構として作動する。なお、第三実施例における実車昇降駆動用定荷重ばねの符号は29CSとする。台車61は、実車昇降駆動用アクチュエータをなすガススプリング21GSと実車昇降駆動用定荷重ばね29CSとによって常時上方に引き上げるように付勢されている。ここでの実車昇降駆動部20’は、台車61、ラック62(ブレース63等の付属部品を備える)及びラック搭載自転車BCLの合計荷重に対応する牽引力で台車61を常時上方に引き上げるように作用する。
【0102】
また、実車昇降駆動部20’は、巻き掛け伝動機構26(実車用き掛け伝動機構)を有する。巻き掛け伝動機構26は、第二実施例と同様に存在する。したがって、第二実施例においても、各々の動滑車28A、28Cと、2個の定滑車24B、24Dのうちワイヤロープ25が巻回されるとき2個の動滑車28A、28Cの間に位置する中間定滑車24Bと、が同一のプーリ径である(図18及び図19参照)。
【0103】
また、2個の動滑車28A、28Cは共通の動滑車中心軸222(図19参照)に支持されるとともに、中間定滑車24Bは動滑車中心軸222と平行に配置された中間定滑車中心軸213(図20参照)に支持される。そして、2個の定滑車24B、24Dのうち中間定滑車24Bを除いた末端定滑車24Dを支持する末端定滑車中心軸は中間定滑車中心軸と同軸状に配置され(第二実施例と同様、末端定滑車中心軸と中間定滑車中心軸とが共通の定滑車中心軸213として配置される:図20参照)、末端定滑車24Dは中間定滑車24Bよりも大なるプーリ径を有している。
【0104】
さらに、ワイヤロープ25の中間部が巻き掛けられる2個の動滑車28A、28Cをピストンロッド21Rの先端部に保持しつつ支柱1の内部を上下移動する昇降台車27が設けられ、昇降台車27には、動滑車回転軸線R28の周りに回転しつつ支柱1の内壁に沿って走行するガイド輪3が設けられている。つまり、第三実施例においても、動滑車回転軸線R28がガイド輪回転軸線としても機能している。
【0105】
なお、第三実施例の巻き掛け伝動機構26の構成は、第二実施例の巻き掛け伝動機構26と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0106】
このように第三実施例の実車昇降駆動部20’は、実車昇降駆動用ガススプリング21GS及び巻き掛け伝動機構26を有した主駆動部と、c定荷重ばね29CSを有した補助駆動部と、を有しており、ガススプリング21GSが実車昇降駆動用定荷重ばね29CSと共に同一の台車61を常時上方に付勢している。
【0107】
第三実施例の台車61は、ラック62に対し一体に昇降可能に組み付けられる一方、実車昇降駆動部20’により牽引力を付与されて、支柱1に対し所定の下段位置(図23及び図24参照)と所定の上段位置(図25参照)との間でローラ6により昇降可能に配置される。ここでの台車61も、第一及び第二実施例の上部台車12や下部台車22と同様、図10及び図11に示すような支柱1の後方側側面に設けられたガイドレール34に沿って上下に昇降する。台車61は、ガススプリング21GSのピストンロッド21Rの退入(収縮)時にラック62と共に下段位置(図23参照)にあり、自転車BCLの搬入により実車状態となる一方(図24参照)、ピストンロッド21Rの突出(伸長)によりラック62と共に上段位置に上昇して自転車BCLを保管する(図25参照)。
【0108】
空車揺動駆動部10’は、ラック62の倒立収納、すなわち自転車BCLが搭載されない空車状態のラック62を倒立状態(図22参照)で収納する空車揺動駆動部としての機能を実現するための基本構成である回転スライダクランク機構60及びラック回動機構70(モーメント付与機構)を備える。なお、これらに関連する機構については特許第6598341号にも記載がある。
【0109】
回転スライダクランク機構60は、図22図25に示すように、固定リンクとして機能する台車61と、回転駆動リンクとして機能するラック62と、回転従動リンクとして機能するブレース63(サイドガード)と、を有した、剛体構造の三角形状に形成される。なお、台車61は、回転スライダクランク機構60においては固定リンクとして機能する。
【0110】
ラック62は、図23に示すように、台車61の下部に対し前端部(基端部)が幅方向に延びる回転軸620(回転軸線C62)を中心に回転可能に支持される形で前後方向に樋形状で片持ち状に延び、先端(後端)に自転車BCLを搬出入するための出入口65が形成される。ラック回動機構70により空車状態において前端部に回転軸620を中心とするモーメントを付与されて、下段位置にある台車61に対して水平状態から支柱1に沿う倒立状態へ回転可能に配置され(詳しくは後述する)、回転スライダクランク機構60においては回転駆動リンクとして機能する。
【0111】
ブレース63は、ラック62の幅方向両側に一対配置され、それぞれの一端部(図22図24では上端部)が台車61の上部に対し、幅方向の揺動軸630(揺動軸線C63)を中心に揺動可能に支持される。一方、対をなすブレース63の他端部(図22図24では下端部)は、ラック62の中途部であって後端部(先端部)寄りに形成された長孔621(ガイド部)に対し、下段位置の空車状態(図22参照)においてスライド移動可能に係合支持されるスライドピン631(スライダ)を形成し、回転スライダクランク機構60においては回転従動リンクとして機能する。
【0112】
このように、回転スライダクランク機構60は、ラック62とブレース63とがスライドピン631(スライダ中心C61)を介してクランク運動するよう構成されている。具体的にいえば、図23に示す空車状態のラック62、ブレース63及び台車61は、支柱1の下段位置でラック62が略水平をなす形で直角三角形状に展開される一方で、スライドピン631が長孔621内でラック長手方向に沿ってスライド移動することにより、ラック62及びブレース63が台車61に対し上向きに回動し、支柱1に沿う倒立状態で収納される。そして、この倒立状態においてラック62は台車61及びブレース63と重なり合って収納されている(図22参照)。
【0113】
なお、ブレース63には、下段位置において水平状態のラック62に自転車BCLが搭載されるとき、その前輪FW(先行搬入車輪)を保持するタイヤガード64が設けられる。このタイヤガード64は、空車状態のラック62及びブレース63が上向きに回動して倒立状態に至る過程において、その上端部が支柱1と接触し、図示しない起立付勢ばねの付勢力に抗して支柱1に沿うように徐々に姿勢変更する。そして、ラック62の倒立収納時に、タイヤガード64はラック62や支柱1と重なり合って収納される(図22参照)。
【0114】
ラック回動機構70は、図22図25に示すように、主として空車揺動駆動用アクチュエータをなす空車揺動駆動用ガススプリング71(以下、回動用ガススプリング71という)で構成され、その基端部が台車61の上端部に取り付けられる一方、ピストンロッド71Rの先端部がラック62の前端部に取り付けられる。ピストンロッド71Rの押出力は、ピストンロッド71Rの先端部取付位置と回転軸線C62との水平方向離間距離を腕の長さとするモーメントを生じる。ピストンロッド71Rの退入(縮小)時にはラック62が水平状態に維持される(図22図24参照)。一方、ピストンロッド71Rの突出(伸長)時にはラック62及びブレース63が台車61に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立状態で収納される(図22参照)。ラック回動機構70の回動用ガススプリング71は、ラック62(ブレース63等のラック付属物を含む)の合計荷重に対応するモーメントでラック62の前端部を常時倒立状態に収納するように作用する。
【0115】
ところで、第三実施例の駐輪機100は、台車ロック機構80と、スライダロック機構66と、ラックロック機構90と、を有する。なお、以下にてこれらの機構について説明するが、これらについては特許文献3に同様の機構が記載されているため、詳細な説明は省略する。
【0116】
台車ロック機構80は、台車61が所定の下段位置にあるとき、ラック13の空車状態においては支柱1に対しガススプリング21GS及び実車昇降駆動用定荷重ばね29CSの牽引力に基づく台車61の昇降が不能となるようにロック作動し(図23参照)、実車状態においては昇降が可能となるようにロック解除する(図24参照)ように作用する。
【0117】
ここでの台車ロック機構80は、図23に示すように、ラック62上で前後揺動可能、かつ後傾状態に付勢されている車輪受け84(第一検知手段)が後傾状態(実車非検知状態)にあるときに、台車61が所定の下段位置にあればこれを昇降不能な台車ロック作動状態に維持する。この台車ロック作動状態において、図24に示すように、ラック62に自転車BCLが搬入され、車輪受け84(第一検知手段)がその先行搬入車輪(例えば自転車BCLの前輪FW)を受け止めて前傾状態(実車検知状態)になると、その動きに連動して、台車ロック機構80は所定の下段位置にある台車61を昇降可能な台車ロック解除状態に切換える。
【0118】
ただし、図22に示すように、台車ロック機構80は、ラック62が倒立状態に収納されるときには、車輪受け84と非連動状態に切換わって、上記台車ロック作動状態を維持した状態に移行する。
【0119】
スライダロック機構66は、図23に示すように、台車61が所定の下段位置にあり、かつラック62が水平状態であるとき、長孔621に対するスライドピン631のスライド移動を禁止することによって、台車61に対し回動用ガススプリング71によるモーメントに基づくラック62及びブレース63の上向き回動が不能となるようにロック作動する一方、スライドピン631のスライド移動を許可することによって、ラック62及びブレース14の上向き回動が可能となるようにロック解除する。
【0120】
スライドピン631のスライド移動の禁止と許可の切換えは、ラック62の出入口65に配置された、ラック62の空車状態の検知手段と人為的な操作手段とを兼用する作動部材94(第二検知手段)の作動に基づいて行われる。ここでの作動部材94は、第一実施例の作動部材54と同様、自転車BCLが通過する際に自転車BCLの車輪が載る、あるいは人為的な操作がなされることによって、先端側が下方に押し下がることにより作動状態(作動検知状態)となる。
【0121】
ただし、図22に示すように、ラック62が倒立収納状態にあるとき、スライダロック機構66は、スライドピン631(スライダ中心C61)の位置がラック62の水平状態の時の位置とは別位置へとスライドしているためにロックできず、スライドピン631のスライド移動が許可状態となる。
【0122】
ラックロック機構90は、ラック62が所定の下段位置(図22及び図23参照)又は上段位置(図24参照)にあるときに支柱1に対し昇降不能なラックロック作動状態とする一方で、作動部材94(第二検知手段)の作動に基づいてそのラックロック作動状態を解除し、所定の下段位置(図22及び図23参照)又は上段位置(図24参照)において支柱1に対する昇降を可能にする。
【0123】
具体的にいえば、ラックロック機構90は、ラック62が所定の下段位置(図22及び図23参照)又は所定の上段位置(図24参照)にあり、かつ作動部材94が非作動状態にあるときには、支柱1に対し台車61を係合(ここでは係止)させて、台車61の昇降が不能となるようにロック作動する(図2参照)。そして、このラックロック作動状態において作動部材94の作動状態が検知されると、ラックロック機構90は、その検知動作に連動して支柱1に対する台車61の係合を解き、台車61の昇降が可能となるようにロック解除する(ラックロック解除状態)。
【0124】
なお、ラックロック機構90は、ラック62が倒立状態に収納されるとき、ラック62の支柱1に対する係合を解いてロック解除(ラックロック解除状態)を維持する。
【0125】
このように、台車ロック機構80は、台車61を所定の下段位置にロック保持してラック62の上昇を禁止する機構であり、車輪受け84が車輪を受けることでそのロックを解除できる。また、スライダロック機構66は、ラック62を水平状態にロック保持して倒立状態への移行を禁止する機構であり、作動部材94の作動によりそのロックを解除できる。他方、ラックロック機構90は、台車61を所定の下段位置及び上段位置においてロック保持してラック62の上下昇降を禁止する機構であり、作動部材94の作動によりそのロックを解除できる。
【0126】
以上で述べた第三実施例の駐輪機100の作動について説明する。
【0127】
<倒立収納状態=空車状態のラックが倒立状態にある:図22
・ラック62は回動用ガススプリング71によって倒立状態に付勢保持されている
・ラック62は倒立状態にあるためスライダロック機構66にロックされておらず、水平状態へ移行可能
・台車61は下段位置にある(動滑車28A、28Cは上位置、ピストンロッド21Rは退入)
・台車61は台車ロック機構80によって上昇不能(車輪受け84と台車ロック機構80が非連動状態)
・台車61はラックロック機構90によって上昇可能(作動部材94に操作はないが、ラック62が倒立状態)
・タイヤガード64は支柱1に沿った収納状態
【0128】
<水平状態への復帰=空車状態のラックが水平状態になる:図22図23
図22の状態において、倒立状態のラック62を水平状態へ復帰させる。タイヤガード64も起立状態に復帰する。回動用ガススプリング71によってラック62に作用するモーメントが、ラック62の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック62をゆっくり押し下げることができる。
【0129】
<自転車搬入可能状態=空車状態のラックが下段位置にある:図23
・ラック62は下段位置で水平状態にある
・ラック62はスライダロック機構66によって倒立状態への移行不能(作動部材94に操作なし)
・台車61は下段位置にある(動滑車28A、28Cは上位置、ピストンロッド21Rは退入)
・台車61は台車ロック機構80によって上昇不能(車輪受け84は台車ロック機構80と連動、ただし図23に示す自転車BCLは存在せず、実車非検知状態)
・台車61はラックロック機構90によって上昇不能(作動部材94に操作なし)
・タイヤガード64は起立状態に復帰
【0130】
<自転車搬入=空車状態のラックに自転車が搬入される:図24
・ラック62は下段位置で水平状態にある
・ラック62はスライダロック機構66によって倒立状態への移行不能(作動部材94に操作なし)
・台車61は下段位置にある(動滑車28A、28Cは上位置、ピストンロッド21Rは退入)
・台車61は台車ロック機構80によって上昇可能(車輪受け84は台車ロック機構80と連動、実車検知状態に切換わる)
・台車61はラックロック機構90によって上昇不能(作動部材94に操作なし)
・タイヤガード64は起立状態
【0131】
<実車ラック上昇=実車状態のラックが上昇する:図24図25
図24の状態において作動部材94が人為的な操作(例えば作動部材94を踏む)によって作動状態とされることにより、ラックロック機構90が台車61を上昇可能に切換える。そして、ラック62及び台車61を、実車昇降駆動用定荷重ばね29CS及びガススプリング21GSの付勢力を利用して図25の位置まで引き上げる。それらの付勢力が、自転車BCL、台車61、ラック62の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック62を押し上げることができる。このときガススプリング21GSのピストンロッド21Rが突出して、動滑車28A、28Cは降下する。
【0132】
<実車待機状態=実車状態のラックが上段位置にある:図25
・ラック62は上段位置で水平状態にある
・ラック62はスライダロック機構66によって倒立状態への移行不能(作動部材94に操作なし)
・台車61は上段位置にある(動滑車28A、28Cは下位置、ピストンロッド21Rは突出)
・台車61は台車ロック機構80によって下降可能(車輪受け84は台車ロック機構80と連動し、実車検知状態を維持)
・台車61はラックロック機構90によって下降不能(作動部材94に操作なし)
・タイヤガード64は起立状態
【0133】
<実車ラック降下=実車状態のラックが降下する:図23図22
図24の状態において作動部材94が人為的な操作によって作動状態とされることにより、ラックロック機構90が台車61を下降可能に切換える。そして、台車61及び実車状態のラック62を、実車昇降駆動用定荷重ばね29CS及びガススプリング21GSの付勢力に抗して図23の位置まで降下させる。それらの付勢力が、自転車BCL、台車61、ラック62の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック62を押し下げることができる。このとき、ガススプリング21GSのピストンロッド21Rが引き戻されて、動滑車28A、28Cは上昇する。
【0134】
<自転車搬出+ラックの自動倒立収納=自転車搬出に伴いラックが回動:図23図22図21
図23の状態において自転車BCLがラック62上を後進すると、前輪FW(先行搬入車輪)が車輪受け84から離れて実車非検知状態となる。これにより、台車61は台車ロック機構80によって上昇不能に切換わる。
・さらに自転車BCLがラック62上を後進して前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材94に載ると、作動部材94が押し下げられて作動状態となる。これにより、ラック62はスライダロック機構66によって倒立状態への移行可能に切換わる。ただし、前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材94に載っているため、その重さによりラック62は水平状態を維持している。
・前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材94から離れたときに、ラック62は回動用ガススプリング71の付勢力によって自動的に回動し、図21のような倒立収納状態に移行する。回動用ガススプリング71によってラック62に作用するモーメントが、ラック62の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、ラック62をわずかな力で図21の位置まで押し上げることができる。
【0135】
<空車状態のラックの倒立収納=空車状態のラックが回動する:図22図21
図22の状態において作動部材94が人為的な操作(例えば作動部材94を踏む)によって作動状態とされることにより、スライダロック機構66がラック62を倒立状態への移行可能に切換える。そして、ラック62を、回動用ガススプリング71の付勢力を利用して図21の位置まで押し上げる。その付勢力が、ラック62の合計重量とほぼ釣り合っているため(実際には合計荷重よりもわずかに大きく設定されている)、わずかな力でラック62を押し上げることができる。
【0136】
なお、上記各実施例において共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略している。また、上記各実施例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0137】
本発明は、歩道上・公園内等に常設された屋外駐輪場、マンション・アパート等に開設された屋内駐輪場、ビル・地下駅等に併設された地下駐輪場を問わず、これらに設置されたいずれの駐輪装置にも適用できる。なお、本発明は上下二段式の駐輪機に用いることができるが、下段の駐輪部については既知の構造を採用できるので説明を省略した。
【符号の説明】
【0138】
100 駐輪機
1 支柱
3 ガイド輪
10 空車昇降駆動部(第一駆動部)
10’ 空車揺動駆動部(第一駆動部)
11GS ガススプリング(空車昇降駆動用ガススプリング)
11CS 定荷重ばね(空車昇降駆動用定荷重ばね)
71 回動用ガススプリング(空車揺動駆動用ガススプリング)
12 上部台車
13 ラック
15 ワイヤロープ(空車用ワイヤロープ)
14B 定滑車(中間定滑車、空車用定滑車)
14D 定滑車(末端定滑車、空車用定滑車)
16 巻き掛け伝動機構(空車用巻き掛け伝動機構)
17 昇降台車(空車用昇降台車)
18A、18C 動滑車(空車用動滑車)
20、20’ 実車昇降駆動部(第二駆動部)
21GS ガススプリング(実車昇降駆動用ガススプリング)
22 下部台車
24B 定滑車(中間定滑車、実車用定滑車)
24D 定滑車(末端定滑車、実車用定滑車)
25 ワイヤロープ(実車用ワイヤロープ)
26 巻き掛け伝動機構(実車用巻き掛け伝動機構)
27 昇降台車(実車用昇降台車)
28A、28C 動滑車(実車用動滑車)
29CS 定荷重ばね(実車昇降駆動用定荷重ばね)
122、152、222 動滑車中心軸
113 中間定滑車中心軸
132、142 末端定滑車中心軸
213 定滑車中心軸(中間定滑車中心軸、末端定滑車中心軸)
R18 回転軸線(空車用回転軸線)
R28 回転軸線(実車用回転軸線)
BCL 自転車
図1
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