IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 木村化工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-蒸留装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122348
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】蒸留装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/32 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
B01D3/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019505
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】390036663
【氏名又は名称】木村化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】立野 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 博史
(72)【発明者】
【氏名】竹森 勇
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA12
4D076AA16
4D076AA22
4D076AA24
4D076BB03
4D076BB04
4D076BB23
4D076CA01
4D076CB02
4D076CB03
4D076CB04
4D076CB06
4D076CB07
4D076CB08
4D076CD32
4D076DA02
4D076DA34
4D076DA35
4D076EA06Z
4D076EA07Z
4D076EA10Z
4D076EA11Z
4D076EA12Z
4D076FA33
4D076JA04
(57)【要約】
【課題】蒸気圧縮機を用いて省エネルギーを図るとともに、蒸気圧縮機に消費されるエネルギーを抑制して、さらに高い省エネルギー効果を得ることが可能な蒸留装置を提供する。
【解決手段】蒸留塔100を第1蒸留塔1と第2蒸留塔2の2つの蒸留塔に分け、第1蒸留塔は第1リボイラ11を備え、第2蒸留塔は第2リボイラ12を備えた構成とするとともに、第2塔頂ベーパを冷却し、かつ、第2塔頂ベーパが有する熱により熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させる熱回収コンデンサ21を設け、熱回収コンデンサ21の冷却水から蒸発させた蒸気を、第1リボイラ用の第1蒸気圧縮機SC1と、第2リボイラ用の第2蒸気圧縮機SC2の2種類の蒸気圧縮機とに振り分けて供給し、各蒸気圧縮機で圧縮することにより温度レベルを上げた蒸気を、第1蒸留塔用の第1リボイラと、第2蒸留塔用の第2リボイラとに供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高沸点成分と、前記高沸点成分より高濃度の低沸点成分とを含有する液の蒸留を行い、前記低沸点成分を主成分とする第2塔頂ベーパと、前記低沸点成分よりも前記高沸点成分を高い割合で含有する第2塔底液に分離する第2蒸留塔と、
前記高沸点成分と、前記高沸点成分より高濃度の前記低沸点成分とを含有する原料液と、前記第2塔底液との混合液を循環させて加熱・蒸発させ、前記第2蒸留塔の塔底に供給する第2リボイラと、
前記第2蒸留塔の塔頂から取り出される前記低沸点成分を主成分とする前記第2塔頂ベーパを、熱回収コンデンサ用循環冷却水により冷却して凝縮させ、前記低沸点成分を主成分とする凝縮液を留出液として回収するとともに、前記第2塔頂ベーパが有する熱により前記熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させる熱回収コンデンサと、
前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生させた蒸気の一部を供給し、圧縮することにより温度レベルを上げて前記第2リボイラに第2リボイラ用蒸気として供給するように構成された第2蒸気圧縮機と、
前記第2塔底液の蒸留を行う第1蒸留塔であって、塔頂に供給される前記第2塔底液を蒸留して、塔頂から取り出される第1塔頂ベーパと、塔底から取り出される第1塔底液とに分離し、かつ、前記第1塔頂ベーパが前記第2蒸留塔の塔底に供給されるように構成された第1蒸留塔と、
前記第1塔底液を循環させて加熱・蒸発させ、前記第1蒸留塔の塔底に供給する第1リボイラと、
前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生させた蒸気のうち、前記第2蒸気圧縮機に供給された前記一部を除いた残部を供給し、圧縮することにより温度レベルを上げて前記第1リボイラに第1リボイラ用蒸気として供給するように構成された第1蒸気圧縮機と、
を備え、
前記第2蒸気圧縮機のCOPの値が、前記第1蒸気圧縮機のCOPの値より2.0以上大きくなるように構成されていること
を特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
前記第2蒸気圧縮機のCOPの値が、前記第1蒸気圧縮機のCOPの値より3.0以上大きくなるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記第2蒸気圧縮機として、COPの値が6.0以上15.0以下の蒸気圧縮機が用いられるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記第1蒸留塔の塔径が、前記第2蒸留塔の塔径よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記第2蒸気圧縮機で温度レベルを上げて前記第2リボイラに供給される前記第2リボイラ用蒸気の温度が、前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させた蒸気の温度よりも15℃以上40℃以下の範囲で高く、
前記第1蒸気圧縮機で温度レベルを上げて前記第1リボイラに供給される前記第1リボイラ用蒸気の温度が、前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させた蒸気の温度よりも30℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記低沸点成分が有機溶剤であり、前記高沸点成分が水であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項7】
前記低沸点成分と前記高沸点成分が、いずれも有機溶剤であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の蒸留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気圧縮機を用いた蒸留装置に関し、詳しくは、低沸点成分を高沸点成分よりも高濃度で含有する原料液を蒸留して、低沸点成分と高沸点成分とを分離するのに用いられる蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留装置における省エネルギー化の必要性は近年、益々増大しており、種々の提案が行われている。
【0003】
そのような省エネルギー技術の1つとして、蒸留装置にヒートポンプを組み込んで、熱効率を向上させるようにした蒸留装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の蒸留装置は、蒸留塔と、蒸留コンデンサと、蒸留リボイラと、蒸留コンデンサから流出した出力流体を蒸留塔に戻すための還流用の配管とを備える蒸留装置である。
【0005】
そして、この蒸留装置は、作動媒体(水)が蒸留コンデンサで受け取った熱を蒸留リボイラに与えるためのヒートポンプを備えている。ヒートポンプは、蒸留コンデンサと蒸留リボイラを接続するとともに作動媒体が循環する循環流路とを備えた構成とされている。
【0006】
そして、この蒸留装置によれば、蒸留塔の頂部から流出した出力流体の有する熱エネルギーが、ヒートポンプによって蒸留リボイラにおいて有効に回収され、出力流体の熱エネルギーの有効利用により、蒸留リボイラにおける出力流体の加熱に必要な熱エネルギーの削減を図ることが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平06-009641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、蒸留装置における省エネルギー化を図る方法の一つとして、上述のようにヒートポンプを利用する方法は、極めて有効な方法の一つであると考えられる。
【0009】
しかしながら、作動媒体として水を用いた汎用ヒートポンプを用いた蒸留塔の場合、汎用ヒートポンプの高温側作動媒体(高温側温水)の温度が100℃未満であることから高温領域では採用できず、また、蒸留塔の塔頂ベーパを冷却するために用いられたコンデンサの冷却水から蒸気を発生させ、加熱源としてリボイラに供給しようとすると、蒸気を圧縮して所望の温度にまで昇温させるのに高圧縮タイプの蒸気圧縮機を用いることが必要となる。その結果、蒸気圧縮機の成績効率(COP)は小さくなり、省エネルギー効果も小さくなるという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、蒸留装置に蒸気圧縮機を用いて100℃以上の高温領域での省エネルギーを図るとともに、蒸気圧縮機に消費されるエネルギーを抑制して、さらなる省エネルギー効果を得ることが可能な蒸留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の蒸留装置は、
高沸点成分と、前記高沸点成分より高濃度の低沸点成分とを含有する液の蒸留を行い、前記低沸点成分を主成分とする第2塔頂ベーパと、前記低沸点成分よりも前記高沸点成分を高い割合で含有する第2塔底液に分離する第2蒸留塔と、
前記高沸点成分と、前記高沸点成分より高濃度の前記低沸点成分とを含有する原料液と、前記第2塔底液との混合液を循環させて加熱・蒸発させ、前記第2蒸留塔の塔底に供給する第2リボイラと、
前記第2蒸留塔の塔頂から取り出される前記低沸点成分を主成分とする前記第2塔頂ベーパを、熱回収コンデンサ用循環冷却水により冷却して凝縮させ、前記低沸点成分を主成分とする凝縮液を留出液として回収するとともに、前記第2塔頂ベーパが有する熱により前記熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させる熱回収コンデンサと、
前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生させた蒸気の一部を供給し、圧縮することにより温度レベルを上げて前記第2リボイラに第2リボイラ用蒸気として供給するように構成された第2蒸気圧縮機と、
前記第2塔底液の蒸留を行う第1蒸留塔であって、塔頂に供給される前記第2塔底液を蒸留して、塔頂から取り出される第1塔頂ベーパと、塔底から取り出される第1塔底液とに分離し、かつ、前記第1塔頂ベーパが前記第2蒸留塔の塔底に供給されるように構成された第1蒸留塔と、
前記第1塔底液を循環させて加熱・蒸発させ、前記第1蒸留塔の塔底に供給する第1リボイラと、
前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生させた蒸気のうち、前記第2蒸気圧縮機に供給された前記一部を除いた残部を供給し、圧縮することにより温度レベルを上げて前記第1リボイラに第1リボイラ用蒸気として供給するように構成された第1蒸気圧縮機と、
を備え、
前記第2蒸気圧縮機のCOPの値が、前記第1蒸気圧縮機のCOPの値より2.0以上大きくなるように構成されていること
を特徴としている。
【0012】
本発明の蒸留装置においては、前記第2蒸気圧縮機のCOPの値が、前記第1蒸気圧縮機のCOPの値より3.0以上大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記第2蒸気圧縮機として、COPの値が6.0以上15.0以下の蒸気圧縮機が用いられるように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記第1蒸留塔の塔径が、前記第2蒸留塔の塔径よりも小さくなるように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、前記第2蒸気圧縮機で温度レベルを上げて前記第2リボイラに供給される前記第2リボイラ用蒸気の温度が、前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させた蒸気の温度よりも15℃以上40℃以下の範囲で高く、
前記第1蒸気圧縮機で温度レベルを上げて前記第1リボイラに供給される前記第1リボイラ用蒸気の温度が、前記熱回収コンデンサにおいて前記熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させた蒸気の温度よりも30℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成されていること
が好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記低沸点成分が有機溶剤であり、前記高沸点成分が水である場合に好適に適用することができる。
【0017】
本発明は、前記低沸点成分と前記高沸点成分が、いずれも有機溶剤である場合にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の蒸留装置は、上述のような構成を備え、かつ、第2蒸気圧縮機のCOP(成績効率)の値が、第1蒸気圧縮機のCOPの値より2.0以上大きくなるように構成されているので、省エネルギー性に優れた、エネルギー効率の高い蒸留装置を実現することができる。
【0019】
詳しく説明すると、例えば、従来広く用いられている、単一の蒸留塔を備えた蒸気圧縮式蒸留設備において、塔頂ベーパを冷却するための熱回収コンデンサの冷却水(熱回収コンデンサ用循環冷却水)から蒸気を発生させ、蒸気圧縮機で圧縮することにより温度レベルを上げ、加熱源としてリボイラに供給するようにした場合、蒸気圧縮機のCOP(成績効率=加熱能力(kW)/消費電力(kW))の値は4程度になる。
【0020】
これに対して、本発明では、蒸留塔を第1蒸留塔と第2蒸留塔の2つの蒸留塔に分け、第1蒸留塔は第1リボイラを備え、第2蒸留塔は第2リボイラを備えた構成とするとともに、熱回収コンデンサの冷却水(熱回収コンデンサ用循環冷却水)から蒸気を発生させるとともに、発生した蒸気を第1リボイラ用の第1蒸気圧縮機と、第2リボイラ用の第2蒸気圧縮機の2種類の蒸気圧縮機に振り分け、各蒸気圧縮機で圧縮することにより温度レベルを上げた蒸気を、加熱源として、第1蒸留塔用の第1リボイラと、第2蒸留塔用の第2リボイラとに供給するようにしている。
【0021】
ここで、例えば、各蒸気圧縮機で圧縮して温度レベルを上げた蒸気を第1リボイラと第2リボイラで50%ずつ供給するようにした場合、第1リボイラ用の第1蒸気圧縮機のCOPは4程度のままとなるが、本発明の蒸留装置のように、蒸留塔を第1蒸留塔と第2蒸留塔の2つの蒸留塔に分けるとともに、第1蒸留塔は第1リボイラを備え、第2蒸留塔は第2リボイラを備えた構成とした場合、第2蒸気圧縮機のCOPの値が、第1蒸気圧縮機のCOPの値より高い値となるように構成することが可能になる。そして、本発明では、第2蒸気圧縮機のCOPの値が、第1蒸気圧縮機のCOPの値より2.0以上大きくなるように構成している。
【0022】
このように構成した場合、例えば、第1蒸気圧縮機のCOPを4、第2蒸気圧縮機のCOPを6(=4+2)とすると、第1蒸気圧縮機と第2蒸気圧縮機の2つの蒸気圧縮機の総合COPは(4+6)/2=5となり、上述の従来技術の場合のCOP4に対して、約1.25倍の効率を得ることができる。
【0023】
なお、例えば、第1蒸気圧縮機および第2蒸気圧縮機で圧縮して温度レベルを上げた蒸気を第1リボイラと第2リボイラで50%ずつ供給するようにした場合、第1リボイラ用の第1蒸気圧縮機のCOPは4程度のままとなるが、供給液を加熱するための第2リボイラ用の第2蒸気圧縮機については、実際に、COPを6.0以上15.0以下の高い値とすることが可能になる。
【0024】
そして、第2蒸気圧縮機のCOPを15とした場合、第1蒸気圧縮機と第2蒸気圧縮機の2つの蒸気圧縮機の総合COPは(4+15)/2=9.5となり、上述の従来技術の場合のCOP4に対して2.37倍の効率を得ることが可能になる。
【0025】
なお、上記の例では、第1蒸気圧縮機と第2蒸気圧縮機の2種類の蒸気圧縮機で圧縮して温度レベルを上げた蒸気を第1リボイラに50%、第2リボイラに50%の割合で供給するようにした場合について説明しているが、本発明の蒸留装置においては、通常、第1リボイラに供給する蒸気量(熱量)の2倍あるいはそれ以上の割合の蒸気量(熱量)が第2リボイラに供給されることになるので、第2蒸気圧縮機のCOPの値を、第1蒸気圧縮機のCOPの値より2.0以上大きくなるように構成することで、十分に有意義な省エネルギー効果を得ることが可能になる。
【0026】
また、本発明においては、第2蒸気圧縮機のCOPの値が、第1蒸気圧縮機のCOPの値より3.0以上大きくなるように構成することにより、さらに高い省エネルギー効果を得ることが可能になる。
【0027】
また、本発明においては、第2蒸気圧縮機として、COPの値が6.0以上15.0以下の蒸気圧縮機を用いることができるように構成した場合、第2蒸気圧縮機のCOPの値を第1蒸気圧縮機のCOPの値よりも十分に大きくしやすくなるため、第1および第2の2つの蒸気圧縮機の全体のCOPを大きくすることが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0028】
また、本発明の蒸留装置は、第1蒸留塔と第2蒸留塔を備えており、第2蒸留塔には、原料液と第2蒸留塔の塔底液との混合液を加熱して蒸発させたベーパと、第1蒸留塔の塔頂ベーパ(第1塔頂ベーパ)とが供給されるのに対して、第1蒸留塔には、第2蒸留塔の塔底液(第2塔底液)のみがその塔頂から供給され、流下した第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)が第1リボイラで加熱されて蒸発したベーパのみが第1蒸留塔に供給されることになるため、第1蒸留塔のベーパの流量は、第2蒸留塔のベーパの流量よりも大幅に少なくなる。その結果、第1蒸留塔の塔径を第2蒸留塔の塔径よりも小さくすることが可能になる。
【0029】
具体的には、第1蒸留塔の塔径を第2蒸留塔の塔径の、例えば1/3~2/3にまで小さくすることが可能になり、装置全体の小型化、コストの削減を図ることが可能になる。
【0030】
また、第2蒸気圧縮機で温度レベルを上げて第2リボイラに供給される第2リボイラ用蒸気の温度が、熱回収コンデンサにおいて熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させた蒸気の温度よりも15℃以上40℃以下の範囲で高く、また、第1蒸気圧縮機で温度レベルを上げて第1リボイラに供給される第1リボイラ用蒸気の温度が、熱回収コンデンサにおいて熱回収コンデンサ用循環冷却水を蒸発させた蒸気の温度よりも30℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成した場合、第2蒸気圧縮機のCOPの値を第1蒸気圧縮機のCOPの値よりも十分に大きくすることが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0031】
また、本発明は、低沸点成分が有機溶剤であり、高沸点成分が水である系に適用した場合に、省エネルギー効率の良好な蒸留装置を実現することができる。
【0032】
また、本発明は、低沸点成分と高沸点成分が、いずれも有機溶剤である系にも適用することが可能であり、その場合にも省エネルギー効率の良好な蒸留装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態にかかる蒸留装置の構成を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0035】
なお、本実施形態では、低沸点成分であるメタノールを70wt%の割合で含み、残部(30wt%)が水(高沸点成分)である原料液(被処理液)を蒸留してメタノールを分離、回収するための蒸留装置を例にとって説明する。
【0036】
本実施形態にかかる蒸留装置100は、蒸気圧縮機を用いて省エネルギー性の向上を図った蒸留装置である。
【0037】
図1に示すように、本実施形態にかかる蒸留装置100は、水(高沸点成分)と、メタノール(低沸点成分)を含有する液の蒸留を行い、低沸点成分を主成分とする塔頂ベーパ(第2塔頂ベーパ)(メタノール99.9wt%)と、低沸点成分よりも高沸点成分を高い割合で含有する塔底液(第2塔底液)(メタノール52wt%)に分離する第2蒸留塔2を備えているとともに、水(30wt%)と、メタノール(70wt%)とを含有する原料液と、第2蒸留塔2の塔底液(第2塔底液)との混合液を循環させて加熱・蒸発させ、第2蒸留塔2の塔底に供給するように構成された第2リボイラ12を備えている。
【0038】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100は、第2蒸留塔2の塔頂から取り出されるメタノールを主成分とする第2塔頂ベーパを、熱回収コンデンサ用循環冷却水により冷却して、メタノールを主成分とする凝縮液(メタノール99.9wt%)を留出液として回収すると同時に、第2塔頂ベーパが有する熱により自己の冷却水(熱回収コンデンサ用循環冷却水)を加熱して蒸発させるための熱回収コンデンサ21を備えている。なお、熱回収コンデンサ21としては、液膜降下型熱交換器が用いられている。
【0039】
なお、熱回収コンデンサ21に送られて冷却された第2塔頂ベーパのうち凝縮しなかったベーパは、塔頂コンデンサ61に送られて冷却され、留出液として濃度が99.9wt%のメタノールが回収される。そして、熱回収コンデンサ21を経たベーパを塔頂コンデンサ61に導くライン71には、系内を所定の加圧状態に維持するための調整バルブ72が配設されている。
【0040】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100は、熱回収コンデンサ21において熱回収コンデンサ用循環冷却水を加熱して蒸発させることにより発生させた蒸気の一部を供給し、圧縮することにより温度レベルを上げて第2リボイラ12に第2リボイラ用蒸気として供給するように構成された第2蒸気圧縮機SC2を備えている。
【0041】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100は、第2蒸留塔2の塔底液(第2塔底液)の蒸留を行う第1蒸留塔1と、第1蒸留塔1の塔底液(第1塔底液)を循環させることにより加熱・蒸発させて、発生した蒸気を第1蒸留塔1の塔底に供給するように構成された第1リボイラ11とを備えている。
【0042】
第1蒸留塔1の塔頂ベーパ(第1塔頂ベーパ)は第2蒸留塔2の塔底に供給されるように構成されている。
【0043】
さらに、本実施形態にかかる蒸留装置100は、熱回収コンデンサ21において熱回収コンデンサ用循環冷却水を加熱して蒸発させることにより発生させた蒸気のうち第2蒸気圧縮機SC2に送られた一部を除いた残部を供給し、圧縮することにより温度レベルを上げて第1リボイラ11に第1リボイラ用蒸気として供給するように構成された第1蒸気圧縮機SC1を備えている。
以下、図1を参照しつつ、本実施形態にかかる蒸留装置100についてさらに詳しく説明する。
【0044】
本発明の蒸留装置100が備える第2蒸留塔2は、上述のように、メタノール水溶液の蒸留を行う蒸留塔であって、例えば、棚段塔、充填塔など種々の構成のものを用いることが可能である。なお、本実施形態では規則充填塔が用いられている。
【0045】
また、第2リボイラ12は、第2蒸留塔2の塔底液と、第2リボイラ12の塔底液と、原料液(供給液)との混合液を加熱して蒸発させるものであり、本実施形態では、第2リボイラ12として、液膜降下式の間接型熱交換器が用いられている。ただし、他の型式の熱交換器を用いることも可能である。
【0046】
この第2リボイラ12は、第2蒸気圧縮機SC2からの130℃の蒸気が加熱源として用いられる間接型熱交換器であって、第2リボイラ12において加熱され、発生したベーパは、上述したように、第2蒸留塔2の塔底に供給される。
【0047】
なお、第2蒸留塔2の塔底液は、第2循環ポンプ42を経て、第2リボイラ12の塔頂に供給される。そして、上述の原料液(供給液)は、第2循環ポンプ42の下流側で、第2蒸留塔2の塔底液と合流して第2リボイラ12の塔頂に供給されるように構成されている。
【0048】
第2蒸留塔2では、第2リボイラ12で発生したベーパと、熱回収コンデンサ21で凝縮した凝縮液の一部である還流液とが気液接触することで、メタノールの蒸留が行われる。
【0049】
そして、第2蒸留塔2の塔頂ベーパはメタノールを高濃度(99.9wt%)で含有しており、熱回収コンデンサ21で冷却されることにより凝縮し、一部が還流液として、第2蒸留塔の塔頂に戻され、他の一部(残部)がメタノール99.9wt%の留出液として回収される。
【0050】
なお、第2蒸留塔2への還流は、熱回収コンデンサ21における凝縮液の一部を、還流ポンプ40を経て、第2蒸留塔2の塔頂に戻すことにより行われる。
【0051】
また、第2蒸留塔2の塔底液はメタノールを52wt%の割合で含有している。この第2蒸留塔2の塔底液は、移送ポンプ43を経て第1蒸留塔1の塔頂に供給される。
【0052】
第1蒸留塔1を流下した塔底液(第1塔底液)は、第1循環ポンプ44を経て第1リボイラ11の塔頂に送られ、第1リボイラ11で再加熱され、発生したベーパは第1蒸留塔1の塔底に戻され、蒸留に供される。
【0053】
第1蒸留塔1としては、例えば、棚段塔、充填塔など種々の構成のものを用いることが可能である。本実施形態では規則充填塔が用いられている。
【0054】
なお、第1リボイラ11は、第1塔底液と、第1リボイラ11の塔底液との混合液を再加熱して蒸発させるように構成されており、第1リボイラ11で再加熱され、発生したベーパは第1蒸留塔1の塔底に戻される。
【0055】
さらに、本実施形態にかかる蒸留装置100が備える第2蒸気圧縮機SC2は、熱回収コンデンサ21で第2塔頂ベーパの冷却に用いられることにより加熱された熱回収コンデンサ用循環冷却水(本実施形態では109℃)から発生した蒸気を圧縮することにより温度レベルを上げて第2リボイラ12に蒸気(本実施形態では130℃)として供給することができるように構成されている。
【0056】
すなわち、本発明にかかる蒸留装置100において、第2蒸気圧縮機SC2は、熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生した蒸気を圧縮して温度レベルを上昇させ、第2リボイラ12に供給することで熱エネルギーを循環再利用することを可能にするために用いられている。
【0057】
具体的には、熱回収コンデンサ21で第2塔頂ベーパの冷却に用いられた、温度109℃の熱回収コンデンサ用循環冷却水から蒸発した蒸気が、供給ライン45を経て第2蒸気圧縮機SC2に送られて圧縮され、130℃の蒸気として第2リボイラ12に供給されることにより、第2リボイラ12の熱源として用いられるように構成されている。
【0058】
そして、熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生した蒸気と、第2蒸気圧縮機SC2で圧縮することにより温度レベルを上昇させた蒸気(すなわち、電力により熱エネルギーレベルを上げて第2リボイラ12に供給される蒸気)との温度差を、従来用いられている蒸気圧縮機の場合よりも小さくすることで、高COPで熱回収を行うことが可能になる。
【0059】
また、第2蒸気圧縮機SC2において昇温され、第2リボイラ12に供給された蒸気は第2リボイラ12で蒸気ドレンとなり、この蒸気ドレンが蒸発缶22でフラッシュ冷却された後、再び熱回収コンデンサ21の冷却水(熱回収コンデンサ用循環冷却水)として、熱回収コンデンサ21に循環供給されるように構成されている。なお、蒸発缶22は、蒸気と蒸気ドレンを分離するための分離器としても機能するように構成されている。
【0060】
また、本発明にかかる蒸留装置100において、塔頂コンデンサ61で用いられた塔頂コンデンサ用冷却水は、冷却塔51に導かれて冷却された後、塔頂コンデンサ61に循環されるように構成されている。
【0061】
さらに、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、熱回収コンデンサ21で第2塔頂ベーパの冷却に用いられ、温度109℃の熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生した蒸気の一部(第2蒸気圧縮機SC2に供給された蒸気を除いた蒸気)は、供給ライン45を経て第1蒸気圧縮機SC1に送られて圧縮され、温度レベルを上昇させることができるように構成されている。
【0062】
また、第1蒸気圧縮機SC1において、
温度109℃の熱回収コンデンサ用冷却水から蒸発した蒸気は、第1蒸気圧縮機SC1において圧縮され、温度レベルが156℃の蒸気として、第1リボイラ11に供給され、第1リボイラ11の熱源として用いられるように構成されている。
【0063】
一方、第1蒸気圧縮機SC1で温度レベルを上げた蒸気(156℃の蒸気)が第1リボイラ11で用いられて凝縮した蒸気ドレンは、蒸発缶22でフラッシュ冷却された後、再び熱回収コンデンサ21の冷却水(熱回収コンデンサ用循環冷却水)として、熱回収コンデンサ21に供給されるように構成されている。
【0064】
本実施形態にかかる蒸留装置100においては、第2蒸気圧縮機SC2として、7台の小型汎用品の蒸気圧縮機が用いられているとともに、1台の予備の蒸気圧縮機が備えられている。
なお、本実施形態では、7台の蒸気圧縮機の合計の動力が407kWとなるように構成されている。
【0065】
また、第1蒸気圧縮機SC1として、3台の小型汎用品の蒸気圧縮機が用いられているとともに、1台の予備の蒸気圧縮機が備えられている。
そして、3台の蒸気圧縮機の合計の動力が375kWとなるように構成されている。
【0066】
そして、第2蒸気圧縮機SC2、および、第1蒸気圧縮機SC1は、いずれも予備機を含む台数制御およびインバータ制御によって能力調整が行われるように構成されている。
【0067】
また、第2蒸気圧縮機SC2、および、第1蒸気圧縮機SC1は、いずれも1台の予備の蒸気圧縮機が備えられているため、不測の故障に対する操業の安定性が確保され、また、運転中のメンテナンスが可能になる。
【0068】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、第2リボイラ12および第1リボイラ11の熱源として、第2蒸気圧縮機SC2および第1蒸気圧縮機SC1で圧縮することにより温度レベルを上昇させた蒸気を使用している(すなわち、130℃に昇温された蒸気を第2リボイラ12で使用し、156℃に昇温された蒸気を第1リボイラ11で使用している)。そして、上記温度の蒸気で第2リボイラ12および第1リボイラ11を稼働させることができるように、系内を所定の加圧操作とすることにより、第2蒸留塔2および第1蒸留塔1の塔底液の沸点の調整を行っている。
【0069】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、第2蒸気圧縮機SC2のCOP(成績効率)の値が、第1蒸気圧縮機SC1のCOPの値より2.0以上大きくなるように構成されている。具体的には、本実施形態では、第2蒸気圧縮機SC2のCOP(成績効率)の値が11.3で、第1蒸気圧縮機SC1のCOPの値が4.8であり、第2蒸気圧縮機SC2のCOPの値が、第1蒸気圧縮機SC1のCOPの値より6.5大きくなるように構成されている。
【0070】
本実施形態にかかる蒸留装置100は上述のように構成されているので、省エネルギー性に優れた、エネルギー効率の高い蒸留装置を実現することができる。
【0071】
さらに説明すると、本実施形態にかかる蒸留装置100は、蒸留塔を第1蒸留塔1と第2蒸留塔2の2つの蒸留塔に分けるとともに、第1蒸留塔1は第1リボイラ11を備え、第2蒸留塔2は第2リボイラ12を備えた構成とし、第2蒸留塔2の塔頂ベーパを冷却して凝縮させる熱回収コンデンサ21の冷却水から蒸発した蒸気の熱を、第1リボイラ11用の第1蒸気圧縮機SC1と、第2リボイラ12用の第2蒸気圧縮機SC2の2種類の蒸気圧縮機に振り分け、各蒸気圧縮機SC1、SC2で圧縮することにより昇温させた蒸気(熱)を、第1蒸留塔用の第1リボイラ11と第2蒸留塔用の第2リボイラ12のそれぞれに供給するようにしているので、例えば、第1蒸気圧縮機SC1のCOPを3.0以上6.0以下とする一方で、第2蒸気圧縮機SC2のCOPを6.0以上15.0以下の高い値とすることが可能になり、第1蒸気圧縮機SC1と第2蒸気圧縮機SC2の合計の電力消費量を抑えて省エネルギー性に優れた、エネルギー効率の高い蒸留装置を実現することができる。
【0072】
上述のような構成を備えることにより、本発明の基本的な要件である、第2蒸気圧縮機SC2のCOPを第1蒸気圧縮機SC1のCOPよりも、2.0以上大きくするという要件を十分に満たすことが可能になる。
【0073】
すなわち、本実施形態にかかる蒸留装置100では、第1蒸気圧縮機SC1で温度レベルを上げて第1リボイラ11に供給される第1リボイラ用蒸気の温度(156℃)が、熱回収コンデンサ21において第2塔頂ベーパの冷却に用いられ、熱回収コンデンサ用循環冷却水から発生した蒸気の温度(109℃)よりも47℃高くなるように構成されているのに対して、第2蒸気圧縮機SC2で温度レベルを上げて第2リボイラ12に供給される第2リボイラ用蒸気の温度(130℃)が、熱回収コンデンサ21において第2塔頂ベーパの冷却に用いられ、熱回収コンデンサ用循環冷却水から蒸発した蒸気の温度(109℃)よりも21℃高くなるように構成されており、第1蒸気圧縮機SC1の昇温幅(47℃)よりも、第2蒸気圧縮機SC2の昇温幅(21℃)の方が小さいため、第2蒸気圧縮機SC2のCOPの値(6.0以上15.0以下)を、第1蒸気圧縮機SC1のCOPの値(3.0以上6.0以下)よりも大きくすることが可能になり、全体としての省エネルギー効率を高くすることが可能になる。
【0074】
なお、本実施形態においては、第2蒸留塔2に入力されるエネルギーは、第2蒸気圧縮機SC2の動力407kWと、第1蒸留塔1の塔頂から第2蒸留塔2の塔底に供給される第1塔頂ベーパの有するエネルギー(=第1蒸気圧縮機SC1の動力)375kWの合計値782kW(407kW+375kW=782kW)となる。
【0075】
一方、第1蒸気圧縮機SC1に入力されるエネルギーは、第1蒸気圧縮機SC1の動力375kWとなる。
【0076】
したがって、407kWと大きな動力で駆動される第2蒸気圧縮機SC2のCOPを11.3とし、375kWと第2蒸気圧縮機SC2に比べて小さな動力で駆動される第1蒸気圧縮機SC1のCOPを4.8とした場合、第1蒸気圧縮機SC1と第2蒸気圧縮機SC2の全体としてのCOPを大きくすることが可能になり、十分に高い省エネルギー効果を得ることが可能になる。
【0077】
なお、表1に、
(1)従来の、蒸気圧縮機を用いずに蒸気を熱エネルギーとして用いた蒸気式の蒸留装置と、
(2)本発明のように蒸留塔を2塔に分けずに1塔式として、蒸留塔の塔頂ベーパから蒸気圧縮機を用いて熱回収を行うようにした蒸留装置(この場合蒸気圧縮機のCOPは約4.8となる)と、
(3)上記実施形態にかかる蒸留装置100と、
のそれぞれのエネルギー消費量を示す。
【0078】
ただし、条件は以下の通りである。
原料液供給量:10000kg/hr(メタノール濃度70wt%)
回収液 :7007kg/hr (メタノール99.9wt%)
年間稼働時間:8000時間
電力15円/kW
蒸気:3000円/1000kg
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、従来の蒸気式の蒸留装置においては、5800kWのエネルギー(蒸気熱量)が必要となる。
【0081】
また、1塔式の蒸留装置においては、蒸気圧縮機を駆動するのに1208.3kWの動力が必要となる。
【0082】
これに対し、本実施形態にかかる蒸留装置(2塔式で、各蒸留塔のそれぞれに蒸気圧縮機を設けた蒸留装置)100によれば782kWのエネルギー消費量となる。したがって、本発明の蒸留装置によれば、大幅な省エネルギーを実現できることがわかる。
【0083】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、第2蒸気圧縮機SC2で温度レベルを上げて第2リボイラ12に供給される第2リボイラ用蒸気の温度が、熱回収コンデンサ21において第2塔頂ベーパの冷却に用いられ、熱回収コンデンサ用循環冷却水から蒸発した蒸気の温度よりも15℃以上40℃以下の範囲で高く、第1リボイラ11に供給される第1リボイラ用蒸気の温度が、熱回収コンデンサ21において第2塔頂ベーパの冷却に用いられ、熱回収コンデンサ用循環冷却水から蒸発した蒸気の温度よりも30℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成することにより、第2蒸気圧縮機SC2のCOPを、第1蒸気圧縮機SC1のCOPよりも十分に大きくすることが可能になり、省エネルギー効果の大きい蒸留装置をより確実に実現することができる。
【0084】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、第1蒸留塔1の塔径が、第2蒸留塔2の塔径よりも小さくなるように構成されており、具体的には、第1蒸留塔1の塔径が、第2蒸留塔2の塔径の約1/2となるように構成されている。
【0085】
すなわち、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、第2蒸留塔2を通過するベーパ量(塔頂ベーパ量)が21489kg/hrであるのに対して、第1蒸留塔1を通過するベーパ量(塔頂ベーパ量)が4315kg/hと少なくなることから、適正な気液接触を確保しつつ、第1蒸留塔1の塔径を、第2蒸留塔2の塔径の約1/2とすることが可能になり、設備コストの低減を図ることができる。
【0086】
なお、第1蒸留塔1の塔径と、第2蒸留塔2の塔径の関係は、上記実施形態の関係に限定されるものではなく、通常は、第1蒸留塔1の塔径を、第2蒸留塔2の塔径の1/3~2/3の範囲で小さくすることができる。ただし、上記の範囲を超えた値とすることも可能である。
【0087】
また、上記実施形態では、第1蒸留塔1と第2蒸留塔2を、それぞれ独立した別の塔として構成しているが、第1蒸留塔と第2蒸留塔を1つの塔として構成すること、すなわち、1つの塔の一部が第1蒸留塔として機能し、他部が第2蒸留塔として機能するように構成することも可能である。
【0088】
その場合、例えば、1つの塔の上側部分を第1蒸留塔とし、下側部分を第2蒸留塔として構成したり、1つの塔の上側部分を第2蒸留塔とし、下側部分を第1蒸留塔として構成したりすることができる。
【0089】
なお、本発明によれば、第1蒸留塔の塔径を第2蒸留塔の塔径より小さくすることが可能になるので、その点を考慮して、1つの塔に1蒸留塔と第2蒸留塔の2つの塔が含まれるように適切な設計を行うことにより、さらなる設備コストの低減を図ることが可能である。
【0090】
なお、上記実施形態で説明し、あるいは、図1に示した、原料液、熱回収コンデンサ用循環冷却水、第1および第2蒸留塔の塔底液、第2蒸留塔の塔頂ベーパなどに関する各種の量や、温度、成分濃度、消費エネルギー(kW)、圧力などの値は、あくまでも例示であって、本発明は、それらの値が上記実施形態の値とは異なる値となる場合を排除するものではない。
【0091】
また、上記実施形態では、低沸点成分がメタノール、高沸点成分が水である原料液を蒸留してメタノールを回収する場合を例にとって説明したが、本発明において、低沸点成分と高沸点成分の種類は上記実施形態に限定されるものではない。
【0092】
例えば、低沸点成分は、ベンゼン、ヘプタン、1,4-ジオキサン、ニトロメタン、トルエン、ピリジン、酢酸などであってもよい。
【0093】
また、高沸点成分は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、酢酸ブチル、N-オクタン、2-エトキシエタノール、1-ペンタノール、アセチルアセトン、ジブチルエーテル、キシレン、1-ヘキサノールなどであってもよい。
【0094】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 第1蒸留塔
2 第2蒸留塔
11 第1リボイラ
12 第2リボイラ
21 熱回収コンデンサ
22 蒸発缶
40 還流ポンプ
42 第2循環ポンプ
43 移送ポンプ
44 第1循環ポンプ
45 供給ライン
51 冷却塔
61 塔頂コンデンサ
71 ライン
72 調整バルブ
100 蒸留装置
SC1 第1蒸気圧縮機
SC2 第2蒸気圧縮機
図1