IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水アクアシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-固液分離システム 図1
  • 特開-固液分離システム 図2
  • 特開-固液分離システム 図3
  • 特開-固液分離システム 図4
  • 特開-固液分離システム 図5A
  • 特開-固液分離システム 図5B
  • 特開-固液分離システム 図6
  • 特開-固液分離システム 図7
  • 特開-固液分離システム 図8
  • 特開-固液分離システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012235
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】固液分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20220107BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20220107BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20220107BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B01D21/24 V
B01D21/02 F
B01D21/02 J
C02F1/40 F
E03F5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113913
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002451
【氏名又は名称】積水アクアシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 秀樹
【テーマコード(参考)】
2D063
4D051
【Fターム(参考)】
2D063DB01
4D051AA04
4D051AB03
4D051CA11
4D051DB02
(57)【要約】
【課題】スカムスキマーの後段におけるスカムの蓄積を防止することが可能な固液分離システムを提供する。
【解決手段】固液分離システム100は、最終沈殿池Pと、傾斜板装置10と、流入部阻流板11と、沈殿池用スカムスキマー18と、水噴射機19と、を備える。最終沈殿池Pは、流入部14と流出部15を有する。傾斜板装置10は、流入部14側に上端部が傾斜し、互いに対向配置された複数の下水用傾斜板20を有する。流入部阻流板11は、傾斜板装置10の流入部14側に配置されている。沈殿池用スカムスキマー18は、流入部阻流板11の流入部14側に配置されている。水噴射機19は、沈殿池用スカムスキマー18と傾斜板装置10の間に設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入部と流出部を有する沈殿池と、
前記流入部側に上端部が傾斜し、互いに対向配置された複数の傾斜板を有する傾斜板装置と、
前記傾斜板装置の前記流入部側に配置された阻流板と、
前記阻流板の前記流入部側に配置された沈殿池用スカムスキマーと、
前記沈殿池用スカムスキマーと前記傾斜板装置の間に設けられたスカム除去機器と、を備えた、
固液分離システム。
【請求項2】
流入部と流出部を有する沈殿池と、
前記流入部側に上端部が傾斜し、互いに対向配置された複数の傾斜板を有する傾斜板装置と、
前記傾斜板装置の前記流入部側に配置された阻流板と、
前記阻流板の前記流入部側に取り付けられた沈殿池用スカムスキマーと、を備えた、
固液分離システム。
【請求項3】
前記スカム除去機器は、水噴射機を含む、
請求項1に記載の固液分離システム。
【請求項4】
前記スカム除去機器は、前記阻流板に配置されている、
請求項1または3に記載の固液分離システム。
【請求項5】
前記傾斜板装置は、上向流式である、
請求項1~4の何れか1項に記載の固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な水処理のプロセスの中で、微生物による有機物の分解やフロック(微粒子が会合して、より大きな集合体を生成する集塊)の形成を経た処理水等が沈殿池に流入する。沈殿池では、数時間かけてフロックを重力沈降させ、上澄水が後工程に送られる。
【0003】
この時、池の底に沈殿や堆積したフロック(汚泥)は汚泥掻寄せ機により、沈殿池外に排出される場合が多い。
【0004】
このような水処理を継続して行う過程で、沈殿池の水面には徐々にスカムと総称される浮泡、浮垢、および浮渣などが浮遊し、これらが腐敗して水質を悪化させ、悪臭を放つことが知られており、美感上からも好ましくない。
【0005】
このことから、沈殿池下流側の側壁間にスカム管を掛渡し、スカム管の長手方向に呑み口を開口し、スカム管を呑み口が上方を向いた通常位置と上流側(流入側)を向いた呑込み位置との間で回転自在としたスカムスキマーによるスカム除去方法が、主に下水処理場において従来より用いられている。
【0006】
また、スカム管の回転支持材上に浮遊するスカムを取り除くために、スカムスキマーを改良して、スカムスキマーの上流側に水噴射ノズルを設置し、残存するスカムをすべて取り除くための技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、近年では下水処理場の最終沈殿池における固液分離能力を向上させることを目的として、多数の傾斜板を用いて沈殿池の沈降面積を増加させる技術が開発された(特許文献2参照)。本技術は、新たな躯体の建造が不要であることから、既設の最終沈殿池において小規模な設備投資で処理能力を向上させることが可能である。
【0008】
しかし、下水処理場の既設最終沈殿池において処理能力を向上させるために上向流式の傾斜板装置を設置する場合、汚泥掻寄せ機と越流トラフ(後工程に上澄水を送るための流出設備)の設置位置を考慮して設置する必要がある。
【0009】
一般的な下水処理場の最終沈殿池においては、チェーンフライト式の汚泥掻寄せ機が採用されており沈殿池の前段部では水面付近までチェーンが上がっている。
【0010】
そして、既存沈殿池に設置されているスカムスキマーは、泥掻き寄せ機と接触しない位置に固定されるレイアウトとなっている。したがって、傾斜板装置は、汚泥掻寄せ機とスカムスキマーに接触しない沈殿池の後段の空き領域に配置される場合が多い。
【0011】
各沈殿池は自治体によりそのサイズが異なるため、空き領域も異なる。しかしながら、各沈殿池に応じたサイズに傾斜板装置をカスタマイズすると、一品一様となり、生産コストがかかり好ましくない。したがって、傾斜板装置は量産に適した同じサイズのものを適用することが多い。その場合、既存設備に傾斜板装置をはめ込むように設置するため、スカムスキマーと傾斜板装置との間に凡そ1000mm以上の離隔が発生する場合がある。
【0012】
傾斜板装置が設けられていない通常の構成であれば、スカムスキマーの後段(流末側)では、スカムが蓄積されることなく越流トラフから流出するため、処理水質や景観上の問題は発生しないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第6182190号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、傾斜板装置を設置した場合、その上流側に流入部阻流板が水面上まで配置されていることから、スカムスキマーの後段(流末側)から流入部阻流板までの隙間におけるスカムが自然に流れ出ることなく、長期間運用する中で水面付近に蓄積し、悪臭の発生や景観を損ねる恐れがある。
【0015】
本開示は、スカムスキマーの後段におけるスカムの蓄積を防止することが可能な固液分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、第1の開示に係る固液分離システムは、沈殿池と、傾斜板装置と、阻流板と、沈殿池用スカムスキマーと、スカム除去機器と、を備える。沈殿池は、流入部と流出部を有する。傾斜板装置は、流入部側に上端部が傾斜し、互いに対向配置された複数の傾斜板を有する。阻流板は、傾斜板装置の流入部側に配置されている。沈殿池用スカムスキマーは、阻流板の流入部側に配置されている。スカム除去機器は、沈殿池用スカムスキマーと傾斜板装置の間に設けられている。
【0017】
このように、スカム除去機器を沈殿池用スカムスキマーと傾斜板装置の間に設けることによって、沈殿池用スカムスキマーと阻流板の間のスカムを除去することができるため、スカムの蓄積を防止することが可能となる。例えば、沈殿池用スカムスキマーと阻流板の間において汚泥が塊状となったスカムをスカム除去機器によって微細にして沈降させることによって、水面上のスカムを除去することができる。このようにスカムの肥大化を抑制することにより、スカムが原因となる悪臭を防ぐことができる。
【0018】
第2の開示に係る固液分離システムは、沈殿池と、傾斜板装置と、阻流板と、沈殿池用スカムスキマーと、を備える。沈殿池は、流入部と流出部を有する。傾斜板装置は、流入部側に上端部が傾斜し、互いに対向配置された複数の傾斜板を有する。阻流板は、傾斜板装置の流入部側に配置されている。沈殿池用スカムスキマーは、阻流板の流入部側に取り付けられている。
【0019】
このように、沈殿池用スカムスキマーを阻流板に取り付けることによって、沈殿池用スカムスキマーと阻流板の間に隙間が生じないようにできるため、スカムスキマーの後段におけるスカムの蓄積を防止することが可能となる。
【0020】
第3の開示に係る固液分離システムは、第1の開示に係る固液分離システムであって、スカム除去機器は、水噴射機を含む。
【0021】
これにより、水噴射機でスカムを除去することができ、スカムの蓄積を防止することが可能となる。
【0022】
第4の開示に係る固液分離システムは、第1または3の開示に係る固液分離システムであって、スカム除去機器は、阻流板に配置されている。
【0023】
これにより、阻流板に配置されたスカム除去機器によって、沈殿池用スカムスキマーの後段におけるスカムを除去することができる。
【0024】
第5の開示に係る固液分離システムは、第1~4のいずれかの開示に係る固液分離システムであって、傾斜板装置は、上向流式である。
【0025】
これにより、上向流式の傾斜板装置の前段に配置された阻流板と沈殿池用スカムスキマーの間におけるスカムの蓄積を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、スカムスキマーの後段におけるスカムの蓄積を防止することが可能な固液分離システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示にかかる実施の形態1における固液分離システムの側面図。
図2図1の固液分離システムの傾斜板装置を示す斜視図。
図3図2の傾斜板装置を示す側面図。
図4】(a)図1の下水用傾斜板の第2面を示す平面図、(b)図1の下水用傾斜板の第1面を示す平面図。
図5A】スカムスキマーによるスカムの捕捉を説明するための側面模式図。
図5B】スカムスキマーによるスカムの捕捉を説明するための側面模式図。
図6図5BのAA´間の矢視断面図。
図7図1の水噴射機の近傍を示す側面図。
図8】本開示にかかる実施の形態2における固液分離システムの部分拡大図。
図9】(a)~(c)本開示にかかる実施の形態3における固液分離システムの部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示による実施の形態の固液分離システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
<構成>
(固液分離システム100)
図1は、本実施の形態1の固液分離システム100を示す図である。本実施の形態の固液分離システム100は、下水処理場の最終沈殿池Pにおける被処理水Wの固液分離に適用される。
【0030】
図1に示すように、固液分離システム100は、最終沈殿池P(沈殿池の一例)と、傾斜板装置10と、流入部阻流板11(阻流板の一例)と、越流堰12と、水路13と、流入部14と、流出部15と、汚泥掻き寄せ機16と、汚泥ホッパー17と、沈殿池用スカムスキマー18と、水噴射機19と、を備える。
【0031】
流入部14は、原水(被処理水W)が最終沈殿池Pに流入する。流出部15は、最終沈殿池Pにおいて流入部14の反対側に設けられており、最終沈殿池Pから浄化された被処理水Wが流出する。
【0032】
傾斜板装置10は、下方から上方に向かって水が流れる上向流式の固液分離装置である。傾斜板装置10は、最終沈殿池Pの略中央部から下流側(流出部15側)の部分に配置されている。傾斜板装置10は、複数の下水用傾斜板20を有している。複数の下水用傾斜板20は、水面側を流入部14側に傾けて、上流側から下流側に向かって並んで配置されている。
【0033】
傾斜板装置10は、被処理水Wの水面WSから所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池Pの底面PBとの間に所定の下側空間が確保されるように支持されている。この支持は、桁材などから吊り下げられてもよいし、たとえば図示しない支持体上に載置されてもよい。傾斜板装置10の詳細については後段にて詳述する。
【0034】
流入部阻流板11は、傾斜板装置10の上流側(流入部14側)であって最終沈殿池Pの略中央部分に設けられている。流入部阻流板11は、水面よりも上方の位置から所定の深さ(傾斜板装置10と同じ位置または傾斜板装置10よりも深い位置)まで配置されている。流入部阻流板11は、水面から所定の深さまでの領域内の被処理水Wの下流側(流出部15側)への流れを阻む。流入部阻流板11は、流入部14から流入した水流方向に対して主面が略垂直になるように配置されている。
【0035】
越流堰12は、流入部阻流板11よりも下流側(流出部15側)の被処理水Wの水面付近に配置されている。越流堰12は、上流側から下流側に向かう方向に沿って形成されている。
【0036】
水路(トラフ)13は、越流堰12に囲まれて形成されており、流出部15に繋がっている。なお、越流堰12に限らず、管に穴が形成された構成であってもよい。
【0037】
流入部14から最終沈殿池Pに流入してきた被処理水Wは、流入部阻流板11に水流方向(矢印D方向(所定方向の一例))を阻まれて、流入部阻流板11の下端と最終沈殿池Pの底面との間の部分に向かって下降する。最終沈殿池Pの底面PBと流入部阻流板11の下端との間を通り抜けた被処理水Wは、水路13に向かう上向流Jとなり、傾斜板装置10の底面10aから下水用傾斜板20の間に流入し上昇する。
【0038】
そして、被処理水Wの汚泥が、傾斜板装置10内を通過する間に下水用傾斜板20の第2面20bにぶつかって捕捉され、もしくは沈降し、下水用傾斜板20の第1面20a上に沈殿することにより被処理水Wが浄化される。下水用傾斜板20の第1面20aに沈殿した汚泥は、堆積に伴って自重で落下する。
【0039】
汚泥掻き寄せ機16は、最終沈殿池Pの底面付近に配置されている。汚泥掻き寄せ機16は、複数のスプロケット71と、チェーン72と、複数のフライト板73とを有する。チェーン72は、複数のスプロケット71に巻き掛けられている。フライト板73は、チェーン72に固定されている。スプロケット71の回転により、チェーン72とともにフライト板73も回転する。最終沈殿池Pの底面付近には沈降した汚泥Mが堆積している。堆積した汚泥Mは、汚泥掻き寄せ機16が図1上時計回りに回転することによりフライト板73によって汚泥ホッパー17に集められ、排泥される。汚泥掻き寄せ機16は、流入部阻流板11より上流側において、水面付近を通過し、浮遊物も掻き寄せる。
【0040】
汚泥ホッパー17は、最終沈殿池Pの流入部14付近の底面に形成されている。
【0041】
沈殿池用スカムスキマー18は、流入部阻流板11よりも上流側(流入部14側)に配置されている。沈殿池用スカムスキマー18は、汚泥掻き寄せ機16の水面付近を通過する部分より下流側(流出部15側)に配置されている。沈殿池用スカムスキマー18は、被処理水Wの水面に配置されており、水面上のスカムを捉えて最終沈殿池P外に排出する。
【0042】
水噴射機19は、スカムを除去するために、沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間の水面に向けて水を噴射する。
【0043】
(傾斜板装置10)
図2は、傾斜板装置10の一部の構成を模式的に示す斜視図である。図3は、傾斜板装置10および流入部阻流板11を示す側面図である。
【0044】
図2および図3に示すように、傾斜板装置10は、複数の下水用傾斜板20と、一対の上側フレーム21と、一対の下側フレーム22と、複数の支持棒23と、複数のフック24と、複数の上下フレーム25と、を有している。
【0045】
一対の上側フレーム21は、流入部14から流出部15に向かう方向D(所定方向の一例)に沿って配置されている。一対の上側フレーム21は、互いに平行に配置されている。
【0046】
一対の下側フレーム22は、流入部14から流出部15に向かう方向Dに沿って配置されている。一対の下側フレーム22は、互いに平行に配置されている。一対の上側フレーム21は、一対の下側フレーム22よりも水面側に配置される。幅方向Fの一方側および他方側の各々において上下に配置された上側フレーム21と下側フレーム22は、その上流側の端と下流側の端において鉛直方向Gに沿って配置された複数の上下フレーム25(図3に示す)によって接続されている。なお、鉛直方向Gは、鉛直上方向および鉛直下方向を含む。鉛直上方向は、矢印Guで示し、鉛直下方向は、矢印Gdで示されている。
【0047】
複数の支持棒23は、一対の上側フレーム21の間に互いに平行に架設されており、一対の下側フレーム22の間にも互いに平行に架設されている。
【0048】
下水用傾斜板20は、一対の上側フレーム21および一対の下側フレーム22に対して傾斜して、上下一対の支持棒23に取り付けられている。
【0049】
図3に示すように、上側フレーム21が、上方から吊りボルト31によって支持されており、吊りボルト31は、幅方向Fに沿って配置された桁材32に固定されている。桁材32は、最終沈殿池Pの対向する壁面に固定されている。また、桁材32は、図1に示すように方向Dに沿って複数配置されている。このような構成によって、傾斜板装置10は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池Pの底面PBとの間に所定の空間が確保されるように支持されている。
【0050】
(下水用傾斜板20)
下水用傾斜板20は、概ね四角形状の部材で形成されている。下水用傾斜板20の材質としては、PVC(polyvinyl chloride)、特に硬質塩化ビニルが好ましいが、これに限るものではない。傾斜板の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂などが好適に用いられる。具体的には、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂が挙げられる。あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0051】
なお、下水用傾斜板20は、異形押出成形、射出成形などで作成することができるが、押出成形が好ましい。
【0052】
下水用傾斜板20は、上側フレーム21と下側フレーム22の長さ方向(方向D)に沿って傾斜して複数個並んで配置されている。傾斜板装置10は、下水処理場の最終沈殿池P内において、下側フレーム22を最終沈殿池Pの底面PB側に向けて設置される。下水用傾斜板20の第2面20b(後述する)が最終沈殿池Pの底面PB側に向けられる。
【0053】
下水用傾斜板20は、複数のフック24によって、上下に配置されている支持棒23に係止されて取り付けられる。
【0054】
図4(a)は、下水用傾斜板20の第2面20b側を示す平面図である。図4(b)は、下水用傾斜板20の第1面20a側を示す平面図である。
【0055】
下水用傾斜板20は、図4(a)および図4(b)に示すように、第1面20aと、第2面20bと、上端20iと、下端20jと、第1端20cと、第2端20dと、を有する。
【0056】
下水用傾斜板20が、上述した一対の上側フレーム21、一対の下側フレーム22、および支持棒23に取り付けられた際に、図2に示すように、上端20iおよび下端20jは、支持棒23と略平行に配置される。また、上端20iは、上側フレーム21よりも上方に配置され、下端20jは、下側フレーム22よりも下方に配置される。
【0057】
第1端20cと第2端20dは、上側フレーム21から下側フレーム22に向かって傾斜して配置される。
【0058】
複数の下水用傾斜板20は、流入部14から最終沈殿池Pに被処理水が流入する方向Dに沿って並んで配置されている。複数の下水用傾斜板20は、隣り合う下水用傾斜板20が互いに対向して平行になるように配置されている。
【0059】
詳細には、複数の下水用傾斜板20は、図2に示すように、隣り合う下水用傾斜板20のうち一方の下水用傾斜板20の第1面20aと、他方の下水用傾斜板20の第2面20bが対向するように配置されている。また、複数の下水用傾斜板20の下端20jの鉛直方向Gにおける位置は、略一致している。
【0060】
ここで、下端20jを結ぶ仮想的な面を傾斜板装置10の底面10aとする。図1では、底面10aは、二点鎖線で示している。本実施の形態では、複数の下水用傾斜板20の下端20jの鉛直方向における位置は略一致しているため、底面10aは、略水平に形成されているが、これに限られるものではない。複数の下水用傾斜板20の下端20jの鉛直方向における位置が異なっている場合には、最も下に位置する20jの位置に合わせて底面10aが設定されてもよい。
【0061】
各々の下水用傾斜板20は、図1図3に示すように、上方に向かうに従って流入部14側に位置するように傾斜して、一対の上側フレーム21、一対の下側フレーム22、複数の支持棒23、および複数の上下フレーム25に支持されている。下水用傾斜板20は、図3に示すように上端20iが下端20jよりも流入部14側に位置するように、配置されている。
【0062】
図4(a)に示す下水用傾斜板20の第2面20bには、汚泥の捕捉処理が行われている。ここで、汚泥の捕捉処理とは、被処理水中の汚泥が最終沈殿池Pから流出しないように、下水用傾斜板20の第2面20bを汚泥の滞留し易い状態にする処理である。例えば、傾斜板の表面の粗さを強くすることや、表面に沿った汚泥の動きに沿った方向または直交する方向に凹凸を形成することにより傾斜板の表面に汚泥が付着し易い状態にすることができるが、これに限定されるものではない。表面の粗面化の方法は特に限定されるものではないが、たとえばサンドブラストなどで機械的に加工されていてもよく、或いは、所定の薬剤による微細なエッチング加工または所定の面粗度の型によるプレス加工などであってもよい。また、捕捉処理は、第2面20bの全体に施されていなくてもよい。
【0063】
第2面20bの反対側の第1面20aは、汚泥が滑落し易いように平坦な面であるほうが好ましい。
【0064】
また、下水用傾斜板20の第2面20bには、第1端20cと第2端20dのそれぞれに沿って溝部20eが設けられている。溝部20e内には、フック孔20ebが形成されており、フック孔20ebには、上述したフック24が装着される。フック孔20ebに装着されたフック24によって、傾斜板装置10の支持棒23に下水用傾斜板20が取り付けられる。また、第1面20aには、溝部20eに対向する突条部20fが形成されている。
【0065】
少なくとも下水用傾斜板20と矢印D方向(本実施の形態では水平方向と一致する)の成す角度θa(図3参照)は、20度以上70度以下であることが好ましく、60度が特に好ましい。なお、本実施の形態では、すべての下水用傾斜板20が互いに平行に配置されている。当該範囲内であることで、固液分離システムの有効沈降面積を確保できる。
【0066】
また、下水用傾斜板20の上端20iと下端20jの間の長さLは、100~2000mmに設定することができる。なお、本実施の形態では、下水用傾斜板20と他の下水用傾斜板20は同じ大きさに形成されているが、異なっていてもよい。
【0067】
(流入部阻流板11)
流入部阻流板11は、図3に示すように、傾斜板装置10の上流側(流入部14側)であって最終沈殿池Pの略中央部分に設けられている。流入部阻流板11は、流入部14から流入した水流方向に対して主面が略垂直になるように配置されている。流入部阻流板11の流入部14側の面を11aとする。流入部阻流板11の面11aに流れを阻まれた水流は下降流となり、傾斜板装置10の下側に導かれる。
【0068】
流入部阻流板11は、その幅方向Fの長さが最終沈殿池Pの幅方向Fの長さと略同じになるように形成されている。
【0069】
流入部阻流板11の上端11fは、水面WSよりも上方に位置している。流入部阻流板11の下端11eは、鉛直方向Gにおいて傾斜板装置10(詳細には底面10a)よりも下方に配置されている。
【0070】
なお、流入部阻流板11と下水用傾斜板20は機械的に連結されていない。当該構成が連結されていないことで、震動が来た際のエネルギーを下水用傾斜板20が直接受けにくくなるため、破損を回避できる。
【0071】
流入部阻流板11は、図3に示すように、吊りボルト33によって支持されており、吊りボルト33は、幅方向Fに沿って配置された桁材34に固定されている。桁材34は、最終沈殿池Pの対向する壁面に固定されている。このような構成によって、傾斜板装置10の上流側において流入部阻流板11を支持することができる。
【0072】
流入部阻流板11の材質は、PVC(polyvinyl chloride)が最も好ましいが、これに限られるものでない。流入部阻流板11の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。具体的には、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂などが挙げられる。あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0073】
(沈殿池用スカムスキマー18)
図5Aおよび図5Bは、沈殿池用スカムスキマー18によるスカムの捕捉を示す側面模式図である。図6は、図5BのAA´間の矢視断面模式図である。図5A図5B、および図6では、水噴射機19が省略されている。
【0074】
沈殿池用スカムスキマー18は、最終沈殿池Pの側壁PS(図6参照)の間に掛け渡されたスカム管40を有している。スカム管40は、長手方向が幅方向Fに沿うように配置されている。
【0075】
スカム管40には、長手方向に沿って呑み口40aが開口されている。スカム管40は、呑み口40aが上方(矢印Gu)を向いた通常位置p1(図5B参照)と、呑み口40aが流入部14側(上流側)を向いた呑み込み位置p2(図5A参照)の間で、管の中心を軸として回転可能に構成されている。沈殿池用スカムスキマー18のスカム管40は、呑み込み位置p2において水面WSが呑み口40aを通過するように配置されている。
【0076】
スカム管40を回転させる回転機構は特に限定されるものではなく、スカム管40の一端に設けられた回転軸にモータを連結させ、モータの回転によってスカム管40を回転させる機構であってもよい。また、油圧や空圧で駆動するピストンを回転軸にリンクによって連結し、ピストンの伸縮によってスカム管40が回転する機構であってもよい。また、ピストンの代わりにソレノイド等を用いてもよい。
【0077】
図5Aに示すように、スカム管40が呑み込み位置p2に配置されている状態において、流入部14から流出部15に向かう水の流れに沿って、スカム(枯葉、ごみ、泡等)Sが呑み口40aからスカム管40の内側に入り込んで捕捉される。スカムSを捕捉すると、図示しない回転機構によってスカム管40が通常位置p1(図5B参照)に回転し、呑み口40aが上方に向けられる。これによって、スカムSがスカム管40の内側に閉じ込められる。図6に示すように、スカム管40に閉じ込められたスカムSは、スカム管40の長手方向(幅方向F)に沿って、最終沈殿池Pの側壁方向に流され、最終沈殿池P外に排出される。
【0078】
なお、沈殿池用スカムスキマー18によって捕捉されたスカムSは最終沈殿池P外に排出された後に、沈砂池や流入幹線(下水処理場の入口)に返送され、水処理施設内を循環しながら除去されるか、スカム分離機や脱水機によって固液分離される。
【0079】
(水噴射機19)
図7は、図1の水噴射機19の近傍を示す拡大図である。
【0080】
微細なスカムは、沈殿池用スカムスキマー18によって除去されるが、肥大化したスカムは、沈殿池用スカムスキマー18では一部が取り切れず、沈殿池用スカムスキマー18の下側を潜り抜けたスカムが間隔Kに滞留する場合がある。
水噴射機19は、沈殿池用スカムスキマー18による捕捉を抜けて沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間隔Kに滞留するスカムS(図5A参照)を除去するために、間隔Kの水面WSに水を噴射する。
【0081】
水噴射機19は、例えば、間隔Kに滞留する汚泥が塊状となったスカムを水の噴射によって微細にし、沈降させることで水面上のスカムを除去することができる。水面上でのスカムの肥大化を抑制することにより、スカムが要因の悪臭を防ぐことが出来る。
【0082】
水噴射機19は、例えば散水ホースである。水噴射機19は、沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間隔Kのスカムを水の噴射によって微細にし、沈降させることで取り除く。図7では、水噴射機19は、流入部阻流板11に取り付けられている。水噴射機19は、流入部阻流板11から上流側に向かって、流入部阻流板11と沈殿池用スカムスキマー18の間の水面に水を噴射している。なお、水噴射機19の取り付け位置は、特に限定されるものではなく、水噴射機19は最終沈殿池Pの躯体の側壁面に取り付けてもよい。このように、水噴射機19は、傾斜板装置10の流入部14側で、且つ水面よりも上の位置に配置される。
【0083】
なお、最終沈殿池Pの清掃時等の水処理が行われない場合を除き、常時散水が行われる。
【0084】
以上のように、水噴射機19によって、沈殿池用スカムスキマー18をすり抜けて沈殿池用スカムスキマー18の後段に存在するスカムを、水の噴射によって微細にし、沈降させることで水面上のスカムを除去することが可能となる。
【0085】
このように、水噴射機19を沈殿池用スカムスキマー18と傾斜板装置10の間に設けることによって、沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間隔Kのスカムを除去することができるため、スカムの蓄積を防止することが可能となる。
【0086】
(実施の形態2)
以下に、本開示にかかる実施の形態2における固液分離システム200について説明する。
【0087】
図8は、本実施の形態2の固液分離システム200の流入部阻流板11近傍の構成を示す側面図である。
【0088】
図8に示すように、本実施の形態2の固液分離システム200には、水噴射機19が設けられておらず、沈殿池用スカムスキマー18が流入部阻流板11の上流側の面11aに取り付けられている。沈殿池用スカムスキマー18のスカム管40は、呑み込み位置p2において水面WSが呑み口40aを通過するように配置されている。
【0089】
沈殿池用スカムスキマー18は、流入部阻流板11に回転可能に配置されている。このように、沈殿池用スカムスキマー18を流入部阻流板11に直接取り付けることによって、沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間に隙間が生じないようにできるため、沈殿池用スカムスキマー18の後段におけるスカムの蓄積を防止することが可能となる。
【0090】
(実施の形態3)
以下に、本開示にかかる実施の形態2における固液分離システム300について説明する。
【0091】
図9(a)~(c)は、本実施の形態3の固液分離システム300の流入部阻流板11近傍の構成を示す側面図である。図9(a)~図9(c)では、傾斜板装置10は省略されている。
【0092】
図9(a)~図9(c)に示すように、本実施の形態の固液分離システム300では、流入部阻流板11と沈殿池用スカムスキマー18の間には間隔Kが設けられている。また、固液分離システム300には、水噴射機19は設けられていない。
【0093】
図9(a)~(c)に示すように、本実施の形態3の固液分離システム300では、流入部阻流板11は上方位置puと下方位置pdの間で昇降可能に構成されている。図9(a)は流入部阻流板11が上方位置puに配置された状態を示す図である。図9(b)は、流入部阻流板11が下方位置pdに配置された状態を示す図である。図9(c)は、スカムの移動を示す図である。
【0094】
図9(a)に示すように、上方位置puにおいて、流入部阻流板11の上端11fは水面から上方に突出している。また、図9(b)に示すように、下方位置pdにおいて、流入部阻流板11の上端11fは、水面よりも下方に位置している。
【0095】
流入部阻流板11を昇降させる昇降機構は、特に限定されるものではない。例えば、図3に示す吊りボルト33に代えて、流入部阻流板11がワイヤによって桁材34に吊り下げられており、ワイヤが巻き取り可能に構成されていてもよい。ワイヤの巻き取り装置は、桁材34に配置してもよい。ワイヤの巻き取り装置は、自動または手動のいずれで駆動されてもよい。また、ラックとピニオンを用いて流入部阻流板11を昇降可能としてもよい。
【0096】
図9(a)のように流入部阻流板11が上方位置puに配置された状態は、通常運用時の状態であり、図に示すようにスカムSが沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間に滞留する。
【0097】
定期的に、図9(b)に示すように、流入部阻流板11を下方位置pdに下降して、スカム除去が開始される。流入部阻流板11が下方位置pdに配置されている状態では、流入部阻流板11の上方をスカムSが流出部15側に移動できる。そのため、流入部14から流入した水の流れに沿って、スカムSが流入部阻流板11の上方を通過して、越流堰12を超えて水路13に流れ込み、流出部15から排出される。
【0098】
これによって、沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間隔Kにおけるスカムの蓄積を防止することができる。なお、長期間にわたって蓄積したスカムが流出する場合には処理水質の悪化につながるおそれがあるため、毎日定期的に流入部阻流板11を昇降させる運用方法を用いる方が好ましい。一般的に24時間で多量のスカムが蓄積することが考え難く、低濃度であれば流出時の処理水質に影響しないと考えられるためである。
【0099】
なお、本実施の形態3で説明した固液分離システム300は以下のように記載することができる。
【0100】
(1)
流入部と流出部を有する沈殿池と、
前記沈殿池に配置された沈殿池用スカムスキマーと、
前記流入部側に上端部が傾斜し、互いに対向配置された複数の傾斜板を有する傾斜板装置と、
前記傾斜板装置の前記流入部側に、昇降可能に配置された阻流板と、を備えた、
固液分離システム。
【0101】
(2)
前記阻流板は、上端が水面から突出した上方位置と、前記上端が水面より下方に配置された下方位置の間を昇降可能である、
上記(1)に記載の固液分離システム。
【0102】
(他の実施の形態)
以上、本発明による実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0103】
(A)
上記実施の形態1では、スカム除去機器の一例として、水噴射機19が設けられているが、これに限らなくてもよい。要するに、沈殿池用スカムスキマー18と流入部阻流板11の間隔Kのスカムを例えば沈殿池用スカムスキマー18よりも上流側に移動させることができればよく、エアーを噴射するような装置であってもよい。
【0104】
(B)
上記実施の形態では、幅方向Fに沿って配置されたスカム管40を有する沈殿池用スカムスキマー18が設けられているが、これに限らなくてもよく、要するにスカムを最終沈殿池Pから取り除くことが出来ればよい。
【0105】
(C)
上記実施の形態3では、水噴射機19が設けられていないと述べたが、水噴射機またはエアー噴射機が設けられていてもよい。この場合、水噴射機またはエアー噴射機は、スカムSを水路13に移動させるように下流側に向かう流れをつくるように水またはエアーを噴射すればよい。
【0106】
(D)
上記実施の形態では、流入部阻流板11は鉛直方向Gに沿って配置されているが、これに限らなくてもよく、例えば、上端が下端よりも流入部14側に位置するように傾斜していてもよい。
【0107】
(E)
上記実施の形態の下水用傾斜板20は、幅方向Fにおいて分割するように複数枚の傾斜板に分割されていてもよい。この場合、複数の傾斜板を接続する接続部材が設けられていてもよい。
【0108】
(F)
上記実施の形態では、フック24によって下水用傾斜板20が支持棒23に支持されているが、フックに限らなくてもよく、複数の下水用傾斜板20を並んで配置することができさえすれば支持方法は限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の固液分離システムは、スカムスキマーの後段におけるスカムの蓄積を防止することが可能な効果を有し、下水処理場の最終沈殿池等の固液分離システムとして有用である。
【符号の説明】
【0110】
10 :傾斜板装置
11 :流入部阻流板
14 :流入部
15 :流出部
18 :沈殿池用スカムスキマー
19 :水噴射機
20 :下水用傾斜板
100 :固液分離システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9