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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122350
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20220816BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20220816BHJP
   H04N 9/07 20060101ALI20220816BHJP
   G06T 3/40 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H04N5/232 290
H04N5/369
H04N9/07 A
G06T3/40 740
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019508
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 考洋
(72)【発明者】
【氏名】上原 伊音
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠司
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲也
【テーマコード(参考)】
5B057
5C024
5C065
5C122
【Fターム(参考)】
5B057BA12
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD06
5B057CD09
5B057CE02
5B057CE08
5B057CH20
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5C024DX01
5C024EX04
5C024EX05
5C024EX42
5C024HX01
5C065CC01
5C065DD01
5C122DA04
5C122EA38
5C122FC01
5C122FC02
5C122FH18
5C122HA82
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得する撮像装置及びその制御方法において、画素ずらしにより取得すべき画像データの枚数を少なくし、合成処理する画像データの情報量を抑える。
【解決手段】
撮影レンズと、積層構造の撮像素子と、画素ずらし機構と、画素ずらし合成処理部を備え、前記画素ずらし合成処理部は、画素ずらしにより取得された2枚の画像データを入力する画像データ入力部と、2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データをずらして配置する画像データ配置部と、ずらして配置された各層の画像データから再サンプリング処理により各層の画像データを再生成する再サンプリング部と、再生成された各層の画像データを用いて画素混合処理により1枚の画像データを生成する画素混合部と、画素混合処理により生成された1枚の画像データを出力する画像データ出力部を備える撮像装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素ずらしにより取得された複数枚の画像データを用いて合成処理により通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する撮像装置であって、
被写体光を被写体像として結像面へ結像させる撮影レンズと、被写体像を画像信号に変換する光電変換部が積層された積層構造の撮像素子と、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせる画素ずらし機構と、画素ずらしにより取得された複数枚の画像データから合成処理により1枚の画像データを生成する画素ずらし合成処理部を備え、
前記画素ずらし合成処理部は、画素ずらしにより取得された2枚の画像データを入力する画像データ入力部と、2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データをずらして配置する画像データ配置部と、ずらして配置された各層の画像データから再サンプリング処理により各層の画像データを再生成する再サンプリング部と、再生成された各層の画像データを用いて画素混合処理により1枚の画像データを生成する画素混合部と、画素混合処理により生成された1枚の画像データを出力する画像データ出力部を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画素ずらし機構は、前記積層構造の撮像素子を光軸に垂直な方向へ移動させることにより、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画素ずらし機構は、前記撮影レンズの全部又は一部を光軸に垂直な方向へ移動させることにより、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画素ずらし機構は、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でXY方向に前記積層構造の撮像素子の画素ピッチの1/2だけシフトさせることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画素ずらし合成処理部は、前記積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データを輝度層と色層とに分け、
再サンプリング処理により、輝度層において通常の画像データよりも高解像度化された画像データを再生成し、色層において通常の画像データよりも低解像度化された画像データを再生成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画素ずらし合成処理部は、前記積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データのうち最もコントラストの高い層の画像データを輝度層とし、それ以外の層の画像データを色層とすることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画素ずらし合成処理部は、前記積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データのうち最も信号値の高い層の画像データを輝度層とし、それ以外の層の画像データを色層とすることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
画素ずらしにより取得された複数枚の画像データを用いて合成処理により通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する撮像装置の制御方法であって、
積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより2枚の画像データを取得する画像データ取得ステップと、取得された2枚の画像データを入力する画像データ入力ステップと、入力された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データをずらして配置する画像データ配置ステップと、再サンプリング処理によりずらして配置された各層の画像データを用いて各層の画像データを再生成する再サンプリング処理ステップと、画素混合処理により再生成された各層の画像データを用いて1枚の画像データを生成する画素混合処理ステップと、生成された1枚の画像データを出力する画像データ出力ステップを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子により画像データを取得する撮像装置及びその制御方法に関する。特に、光電変換部が積層された積層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得する撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色フィルタを有する撮像素子により画像データを取得する撮像装置が普及している。色フィルタを有する撮像素子を構成する各画素において、光電変換部であるフォトダイオードの前方には赤色(R)、緑色(G)または青色(B)のいずれかの色フィルタがそれぞれ配置されている。これにより、各画素に配置された色フィルタに対応する波長成分の画素値をフォトダイオードによりそれぞれ取得することができる。そして、各画素で取得した画素値の配列を画像データとして取得し、この画像データをデモザイク処理することにより記録用の画像データを取得する。
【0003】
また、画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得する撮像装置が知られている。画素ずらしでは、撮像素子や撮影レンズの全部または一部を光軸に垂直な平面上でシフトさせて複数枚の画像データを取得する。そして、取得した複数枚の画像データを合成処理して最終的に高解像度化された画像データを取得することができる。
【0004】
特許文献1には、画素ずらしにより取得した4枚の画像データを合成処理して画像データを取得する電子スチルカメラが開示されている。さらに、画素ずらしにより取得した8枚の画像データを合成処理してより高画質な画像データを取得することができる電子スチルカメラが開示されている。
【0005】
特許文献2には、画素ずらしにより取得した8枚の画像データを合成処理して画像データを取得する撮像装置が開示されおり、画素ずらしにより取得した画像データを合成処理する前に色収差補正を行うことでバッファメモリの容量を抑えることができる撮像装置が開示されている。
【0006】
また、複数のフォトダイオードを積層して構成することにより、垂直色分離された被写体光の波長成分に対応する各画素値を各画素においてそれぞれ直接取得することができる撮像素子が知られている。以下、このような撮像素子を積層構造の撮像素子と示す場合がある。
【0007】
特許文献3には、積層構造の撮像素子(Vertical color filter sensor group array)が開示されており、さらに積層構造の撮像素子の配線構造の複雑さを解消するために最上位層をフル解像度とし、これより下位層を低解像度とする撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-225317号公報
【特許文献2】特開2017-46186号公報
【特許文献3】米国特許第7339216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献等に開示された従来技術には次の課題がある。
【0010】
色フィルタを有する撮像素子において、各画素はそれぞれの色フィルタに対応する1つの画素値しか取得できない。このため、特に一般的なベイヤー式の配列パターンを採用する色フィルタを有する撮像素子を用いて画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得するには、画素ずらしにより8枚の画像データを取得しなければならない。画素ずらしにおいて取得すべき画像データの数が多くなると、画像データを取得するための時間や、画像データに対して補正処理や合成処理等をするための時間が長くなってしまう。また、複数枚の画像データを記録するために必要なバッファメモリの容量が大きくなってしまう。
【0011】
色フィルタを有する撮像素子を用いて画素ずらしにより8枚より少ない画像データを取得して高解像度化された画像データを合成処理する場合、高解像度化された画像データの色フィルタの配列を通常の画像データと同じにすることができず、これを補うための補間処理や置換処理等が必要となってしまう。さらに、この場合には、合成処理により最終的に取得される高解像度化された画像データを高画質で取得することが難しくなる。
【0012】
一方、積層構造の撮像素子は被写体光の波長成分に対応する画素値を各画素においてそれぞれ直接取得することができる。このため、積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得する場合には、画素ずらしにより取得すべき画像データの数を少なくすることができる。
【0013】
しかしながら、積層構造の撮像素子により取得された画像データの各層は被写体光の波長成分ごとに同程度の情報量の画像データをそれぞれ有しているため、積層構造の撮像素子により取得される画像データの情報量は非常に大きくなってしまう。積層構造の撮像素子を採用して画素ずらしにおいて取得された画像データの情報量が大きくなると、画像データを転送処理するための負担や合成処理を行うための負担が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、第1の発明に係る撮像装置は、画素ずらしにより取得された複数枚の画像データを用いて合成処理により通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する撮像装置であって、被写体光を被写体像として結像面へ結像させる撮影レンズと、被写体像を画像信号に変換する光電変換部が積層された積層構造の撮像素子と、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせる画素ずらし機構と、画素ずらしにより取得された複数枚の画像データから合成処理により1枚の画像データを生成する画素ずらし合成処理部を備え、前記画素ずらし合成処理部は、画素ずらしにより取得された2枚の画像データを入力する画像データ入力部と、2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データをずらして配置する画像データ配置部と、ずらして配置された各層の画像データから再サンプリング処理により各層の画像データを再生成する再サンプリング部と、再生成された各層の画像データを用いて画素混合処理により1枚の画像データを生成する画素混合部と、画素混合処理により生成された1枚の画像データを出力する画像データ出力部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第2の発明に係る撮像装置は、前記画素ずらし機構は、前記積層構造の撮像素子を光軸に垂直な方向へ移動させることにより、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせることを特徴とする。
【0016】
また、第3の発明に係る撮像装置は、前記画素ずらし機構は、前記撮影レンズの全部又は一部を光軸に垂直な方向へ移動させることにより、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせることを特徴とする。
【0017】
また、第4の発明に係る撮像装置は、前記画素ずらし機構は、被写体像と前記積層構造の撮像素子との相対位置を光軸に垂直な平面上でXY方向に前記積層構造の撮像素子の画素ピッチの1/2だけシフトさせることを特徴とする。
【0018】
また、第5の発明に係る撮像装置は、前記画素ずらし合成処理部は、前記積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データを輝度層と色層とに分け、再サンプリング処理により、輝度層において通常の画像データよりも高解像度化された画像データを再生成し、色層において通常の画像データよりも低解像度化された画像データを再生成することを特徴とする。
【0019】
また、第6の発明に係る撮像装置は、前記画素ずらし合成処理部は、前記積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データのうち最もコントラストの高い層の画像データを輝度層とし、それ以外の層の画像データを色層とすることを特徴とする。
【0020】
また、第7の発明に係る撮像装置は、前記画素ずらし合成処理部は、前記積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データのうち最も信号値の高い層の画像データを輝度層とし、それ以外の層の画像データを色層とすることを特徴とする。
【0021】
また、第8の発明に係る撮像装置の制御方法は、画素ずらしにより取得された複数枚の画像データを用いて合成処理により通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する撮像装置の制御方法であって、積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより2枚の画像データを取得する画像データ取得ステップと、取得された2枚の画像データを入力する画像データ入力ステップと、入力された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データをずらして配置する画像データ配置ステップと、再サンプリング処理によりずらして配置された各層の画像データを用いて各層の画像データを再生成する再サンプリング処理ステップと、画素混合処理により再生成された各層の画像データを用いて1枚の画像データを生成する画素混合処理ステップと、生成された1枚の画像データを出力する画像データ出力ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画素ずらしにより取得された複数枚の画像データを用いて合成処理により通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する撮像装置及び撮像装置の制御方法において、被写体像を画像信号に変換する光電変換部が積層された積層構造の撮像素子を用いることにより、画素ずらしにより取得すべき画像データの枚数を少なくすることができる。
【0023】
また、積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データを輝度層と色層とに分け、再サンプリング処理により、輝度層において通常の画像データよりも高解像度化された画像データを再生成し、色層において通常の画像データよりも低解像度化された画像データを再生成することにより、積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより複数枚の画像データを取得する撮像装置及び撮像装置の制御方法であっても、合成処理する画像データの情報量を抑え、画像データの転送や画像処理にかかる負担が増大することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施例の撮像装置を示すシステムブロック図である。
図2】3層構造の撮像素子の深さ方向の構造を示す模式図である。
図3】画素ずらしにより取得された2枚の画像データの配置方法を示す模式図である。
図4】各層の画像データが画素ピッチPに基づいてずらして配置された様子を示す模式図である。
図5】輝度層の再サンプリング処理の方法について説明する模式図である。
図6】色層の再サンプリング処理の方法について説明する模式図である。
図7】本実施例の撮像装置の撮影動作の各ステップを示すフローチャートである。
図8】画素ずらしによる画像データ取得の各ステップを示すフローチャートである。
図9】画素ずらし合成処理の各ステップを示すフローチャートである。
図10】画素混合処理の各ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る撮像装置及び撮像装置の制御方法の実施例について図面を用いて詳細に説明する。本実施例の説明では、本発明の技術的特徴を説明するために必要な構成要素を挙げて説明する。
【0026】
図1:撮像装置の構成要素)
図1を用いて、本実施例の撮像装置の構成要素について説明する。図1は、本実施例の撮像装置を示すシステムブロック図である。図1において、100は撮像装置、110は撮影レンズ、120は撮像素子、130はシフト機構、140は画素ずらし合成処理部、150はバス、160はDRAM、170は外部メモリを示す。
【0027】
図1:撮像装置の構成要素)
撮影レンズ110は被写体光を被写体像として結像面へ結像させる光学系である。撮像素子120は結像面に2次元配列された光電変換部であるフォトダイオードにより被写体像を画像信号(アナログ信号)に変換して取得する。本実施例の撮像装置100は、撮像素子120に積層構造の撮像素子を採用している。積層構造の撮像素子については後述する。
【0028】
シフト機構130は撮像素子120を光軸に垂直な方向へ移動させる。本実施例の撮像装置100において、シフト機構130は被写体像と撮像素子120との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせる画素ずらし機構として機能する。画素ずらし機構については後述する。
【0029】
撮像素子120により取得された画像信号の配列は不図示のA/D変換部等によりデジタル信号に変換され、画像データとして取得される。画像データはバス150を介してDRAM160へ転送され、一時的に保持される。
【0030】
本実施例の撮像装置100において、画素ずらし機構であるシフト機構130により光軸に垂直な方向へ移動された撮像素子120は移動されたそれぞれの位置において画像データを取得する。これにより取得された複数枚の画像データはDRAM160において一時的に保持される。
【0031】
DRAM160において一時的に保持された複数枚の画像データはバス150を介して画素ずらし合成処理部140へ転送される。画素ずらし合成処理部140は、複数枚の画像データを用いて合成処理により最終的に高解像度化された1枚の画像データを生成する。画素ずらし合成処理部140については後述する。
【0032】
最終的に高解像度化された1枚の画像データはバス150を介して外部メモリ170へ転送され、保存される。
【0033】
図1:積層構造の撮像素子)
次に、積層構造の撮像素子について説明する。積層構造の撮像素子とは、光電変換部であるフォトダイオードが積層して構成された撮像素子のことをいう。特に、本実施例では、積層構造の撮像素子について、光電変換部であるフォトダイオードが深さ方向に3層に積層して構成された3層構造の撮像素子を採用している。
【0034】
図2:3層構造の撮像素子)
図2は、3層構造の撮像素子について断面の構造を示す模式図である。図2Aに示すように、3層構造の撮像素子を構成する各画素は、深さ方向に順に、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)のフォトダイオードが積層されて構成されている。これにより、各画素において、各色に対応する画素値をそれぞれ直接取得することができる。
【0035】
また、図2Bに示すように、各画素において取得された各色に対応する画素値の配列は、各色に対応する各層の画像データとして取得される。本実施例では、3層構造の撮像素子を用いて取得された各層の画像データを1組として1枚の画像データと呼ぶこととする。
【0036】
フォトダイオードの材料として用いられるシリコン等の半導体には、入射光の各波長成分ごとに透過深さによる吸収率が異なるという性質がある。この半導体の性質により、入射光の各波長成分のうち、波長の短い光成分ほどより半導体の浅い部分で吸収され、波長の長い光成分ほど半導体のより深い部分で吸収される。
【0037】
積層構造の撮像素子は、この半導体の性質を利用したものであり、シリコン等からなるフォトダイオードを積層して構成することにより、入射光を各波長成分ごとに垂直色分離することができる。これにより、積層構造の撮像素子では、各画素において各色に対応する画素値をそれぞれ直接取得することができる。したがって、積層構造の撮像素子では、色フィルタ付き撮像素子と比較して、フォトダイオードの上方に入射光を色分離するための色フィルタを配置する必要がなく、画像データの取得において偽色の発生要因となるデモザイク処理を必要としない。
【0038】
本実施例の撮像装置100は、撮像素子120に積層構造の撮像素子を用いることにより、画素ずらしにより取得すべき画像データの枚数を少なくすることができる。
【0039】
色フィルタ付き撮像素子には、各色に対応する画素値を取得するための色フィルタが各画素ごとに配置されている。各画素ごとに配置された色フィルタは、例えばベイヤー配列のように色フィルタ付き撮像素子の平面上で規則的に2次元配列されている。
【0040】
色フィルタ付き撮像素子を用いて画像データを取得する場合、まず、各画素ごとに各色に対応する画素値がそれぞれ取得され、各画素の画素値は配列として取得される。そして、この各画素の画素値の配列に対してデモザイク処理を行うことにより画像データを生成する。
【0041】
色フィルタ付き撮像素子を用いて画素ずらしにより複数枚の画像データを取得する場合にも同様に、デモザイク処理を前提とした画素値の配列を構成する必要がある。しかしながら、デモザイク処理を前提とした画素値の配列を複数枚の画像データにより構成するには多くの枚数の画像データを取得しなければならない。
【0042】
これに対して、積層構造の撮像素子は、各画素ごとに各色に対応する画素値をそれぞれ直接取得することができる。積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより複数枚の画像データを取得する場合には、色フィルタ付き撮像素子を用いる場合とは異なり、デモザイク処理を前提とした画素値の配列を構成する必要がない。
【0043】
したがって、積層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより複数枚の画像データを取得する場合には、画素ずらしにより取得すべき画像データの枚数を少なくすることができ、少なくとも2枚の画像データを取得するだけで、これらに対して合成処理を行うことにより通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成することができる。
【0044】
特に、本実施例の撮像装置100は、3層構造の撮像素子を用いて画素ずらしにより2枚の画像データを取得し、これらに対して合成処理を行うことにより通常の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する。
【0045】
図1:画素ずらし機構)
次に、画素ずらし機構について説明する。本実施例では、撮像素子120を光軸に垂直な平面上でシフトさせるシフト機構130を画素ずらし機構として採用している。シフト機構130により被写体像と撮像素子120との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせることができる。シフト機構130の駆動手段は、たとえばボイスコイルモータ等である。
【0046】
シフト機構130は、撮像素子120を光軸に垂直な平面上でシフトさせ、目標位置への正確な位置制御をすることができる。目標位置は撮像素子120の画素ピッチPに基づいて決定される。撮像素子120はシフト機構130により複数の目標位置へ位置制御され、それぞれの目標位置において画像データを取得する。
【0047】
なお、撮像素子120の画素ピッチPは、撮像素子120において等間隔に2次元配列された各画素のXY方向の間隔をそれぞれPX及びPYとすることにより設定される。本実施例では、特にXY方向の画素ピッチPを(PX,PY)と表す。XY方向の画素ピッチPについて、PX及びPYが互いに異なる間隔としても構わない。
【0048】
また、画素ずらし機構に撮影レンズの全部または一部を光軸に垂直な平面上でシフトさせるシフト機構を採用してもよい。撮影レンズの全部または一部を光軸に垂直な平面上でシフトさせることによっても、被写体像と撮像素子120との相対位置を光軸に垂直な平面上でシフトさせることができる。
【0049】
図1:画素ずらし合成処理部)
次に、画素ずらし合成処理部140について説明する。図1の画素ずらし合成処理部140において、141は画像データ入力部、142は画像データ配置部、143は再サンプリング部、144は画素混合部、145は画像データ出力部を示す。
【0050】
画像データ入力部141は画素ずらしにより取得され一時的に保持された複数枚の画像データをDRAM160から画素ずらし合成処理部140へ入力する。本実施例では、2枚の画像データをDRAM160から画素ずらし合成処理部140へ入力する。
【0051】
画像データ配置部142は入力された複数枚の画像データを画素ピッチPに基づいてずらして配置する。本実施例では、撮像素子120に3層構造の撮像素子を採用し、1枚の画像データについて各層の画像データを取得する。そのため、画像データ配置部142は入力された複数枚の画像データについて各層の画像データをずらして配置する。画像データ配置部142による入力された複数枚の画像データの配置方法については後述する。
【0052】
再サンプリング部143はずらして配置された各層の画像データから高解像度化または低解像度化された各層の画像データを再サンプリング処理により再生成する。再サンプリング部143による再サンプリング処理については後述する。
【0053】
画素混合部144は再サンプリング処理により再生成された各層の画像データを用いて画素混合処理により記録用の画像データを生成する。画素混合部144による画素混合処理については後述する。
【0054】
画像データ出力部145は画素混合処理により生成された記録用の画像データを出力する。出力された記録用の画像データは、外部メモリ170に記録されたり、画像圧縮のために不図示の画像圧縮部へ転送されたり、その他の後工程の画像処理を行う不図示の画像処理部へ転送されたりされる。
【0055】
図3:複数枚の画像データの配置方法)
次に、画像データ配置部142による入力された複数枚の画像データの配置方法について説明する。
【0056】
本実施例の撮像装置100は、撮像素子120に3層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより2枚の画像データを取得する。画像データ配置部142は、2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データを画素ピッチPに基づいてずらして配置する。
【0057】
図3は、画像データ配置部142による画素ずらしにより取得された2枚の画像データの配置方法を示す模式図である。図3において、画像データA及び画像データBは画素ずらしにより取得された2枚の画像データのそれぞれを示す。
【0058】
3層構造の撮像素子により取得された1枚の画像データは、B層(青色)、G層(緑色)、R層(赤色)の画像データから構成される。すなわち、図3において、画像データAは、B層の画像データAB、G層の画像データAG及びR層の画像データARから構成されている。また、画像データBは、B層の画像データBB、G層の画像データBG、R層の画像データBRから構成されている。
【0059】
図3に示すように、画像データ配置部142は、画像データA及び画像データBのそれぞれを構成する各層の画像データをずらして配置する。このとき、画像データ配置部142は、各画素の画素位置が互いに重ならないように画像データA及び画像データBのそれぞれを構成する各層の画像データを画素ピッチPに基づいてずらして配置する。
【0060】
図4は、画像データA及び画像データBのそれぞれを構成する各層の画像データが画素ピッチPに基づいてずらして配置された様子を示す模式図である。図4は、画像データA及び画像データBの各層の画像データのうち1つの層の画像データについて示したものであり、その他の層の画像データについても図4と同様となる。図4の模式図は、平面上に2次元配列された各層の画像データを構成する各画素の中心位置により模式的に表されている。すなわち、図4において、各画素の中心位置の配列は各層の画像データを構成する各画素の配列を示している。
【0061】
図4に示すように、画像データA及び画像データBのそれぞれを構成する各層の画像データは、各層の画像データを構成する各画素の中心位置が互いに重ならないように画素ピッチPに基づいてずらして配置される。本実施例では、画素ピッチPの1/2だけずらして配置される。すなわち、各層においてXY方向において画素ピッチPの1/2である(1/2PX,1/2PY)だけずらして配置される。各層におけるずらし量は、本実施例に限られず、画素ピッチPの非整数倍とすることにより、各画素の画素中心が互いに重なることなく画像データA及び画像データBのそれぞれを構成する各層の画像データをずらして配置することができる。
【0062】
画像データA及び画像データBのそれぞれを構成する各層の画像データが各画素の中心位置が互いに重なるようにずらして配置されてしまうと、各層の画像データを構成する各画素の画素値が単に足し合わされてしまうこととなる。この場合、高解像度化された画像データを再サンプリング処理により再生成することができなくなってしまう。
【0063】
図1:再サンプリング処理)
次に、再サンプリング処理について説明する。本実施例において、再サンプリング処理とは、ずらして配置された各層の画像データにおいて新たに画素位置を定義し、新たに定義された画素位置において補間演算により画素値を算出することにより各層の画像データを再生成することをいう。
【0064】
本実施例では、撮像素子120に3層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより2枚の画像データを取得する。そして、取得された2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データをずらして配置した各層の画像データから再サンプリング処理により各層の画像データを再生成する。その際、ずらして配置された各層の画像データは1枚の画像データを構成する各層の画像データの2倍の情報量を有しているため、理論的にはずらして配置された各層の画像データから最大2倍に高解像度化された各層の画像データを再生成することができる。
【0065】
ここで、本実施例において、撮像素子120に積層構造の撮像素子(3層構造の撮像素子)を採用し、画素ずらしにより複数枚(2枚)の画像データを取得することにより生じる課題について説明する。
【0066】
積層構造の撮像素子の構造において、被写体像を画像信号に変換する光電変換部は積層して配置されている。そのため、積層構造の撮像素子により取得される1枚の画像データは積層して配置された光電変換部に対応する各層の画像データから構成される。また、各層の画像データの解像度はそれぞれ色フィルタ付き撮像素子により取得される1枚の画像データの解像度と同等である。したがって、積層構造の撮像素子により取得される画像データの情報量は、色フィルタ付き撮像素子により取得される画像データの情報量と比較して非常に多くなる。
【0067】
また、積層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより複数枚の画像データを取得する場合、取り扱う画像データの情報量はさらに多くなってしまう。
【0068】
取り扱う画像データの情報量が多くなると、画像データを転送するための負担や後工程で画像データを画像処理するための負担が増大してしまう。また、画像データを一時的に保持するためのバッファメモリの容量を大きくしなければならないという問題が生じる。
【0069】
本実施例では、積層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより取得した複数枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データを輝度層と色層とに分け、各層で異なる解像度の画像データを再サンプリング処理により再生成することにより画像データの情報量が大きくなることを抑えた。
【0070】
人間の視覚特性は色情報に比べて輝度情報に敏感であるため、画像データを構成する画像信号のうち輝度信号は色信号に比べて人間の解像感に与える影響が大きい。本実施例では、再サンプリング処理において、各層の画像データを輝度層と色層とに分け、輝度層で再生成される画像データの情報量を増大する一方で、色層で再生成されるの画像データの情報量を削減し、画像データの解像感を維持しつつ、画像データの情報量を抑えることとした。
【0071】
次に、再サンプリング処理においてずらして配置された各層の画像データを輝度層と色層とに分ける方法について説明する。本実施例では、3層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより取得した2枚の画像データを構成する各層の画像データをずらして配置し、各層の画像データのうち、1つの層を輝度層とし、他の層を色層とする。特に、本実施例では、各層の画像データのうち、B層を輝度層とし、G層及びR層を色層とする。各層の画像データを輝度層と色層とに分ける方法は、本実施例の方法に限られない。
【0072】
また、本実施例の方法のようにあらかじめ各層の画像データについて輝度層と色層とに分けておくのではなく、取得された各層の画像データを評価することにより分けることとしてもよい。たとえば、各層の画像データのうち、最もコントラストの高い画像データが取得された1つの層を輝度層とし、他の層を色層としてもよい。また、たとえば、各層の画像データのうち、最も信号値の高い画像データが取得された1つの層を輝度層とし、他の層を色層としてもよい。
【0073】
本実施例では、画像データの情報量を抑えるために、輝度層と色層とに分けた各層の画像データの再サンプリング処理において、輝度情報を得る輝度層では通常の各層の画像データよりも高解像度化された画像データを再生成し、色情報を得る色層では通常の各層の画像データよりも低解像度化された画像データを再生成する。
【0074】
輝度層及び色層で再サンプリング処理により再生成される各層の画像データの解像度は、再サンプリング処理により再生成される各層の画像データの画素ピッチP’により決定される。画素ピッチP’は、通常の各層の画像データの画素ピッチP(撮像素子120の画素ピッチP)に基づいて決定される。
【0075】
再生成される画像データの画素ピッチP’が、通常の各層の画像データの画素ピッチPよりも小さい場合には高解像度化された画像データが再生成され、大きい場合には低解像度化された画像データが再生成される。
【0076】
本実施例では、再サンプリング処理により再生成される画像データの画素ピッチP’を、輝度層で画素ピッチPの1/√2倍とし、色層で画素ピッチPの2/√2倍としている。これにより、輝度層では通常の各層の画像データよりも2倍に高解像度化された画像データが再生成され、色層では通常の各層の画像データよりも1/2倍に低解像度化された画像データが再生成される。
【0077】
本実施例では、ずらして配置された各層の画像データについて、輝度層と色層とにおいて再サンプリング処理により再生成される画像データの解像度を異ならせることにより、積層構造の撮像素子を採用しながらも画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得する場合の画像データ全体の情報量を抑えることができる。
【0078】
特に、本実施例では、輝度層で再生成される画像データの解像度を高くして情報量を多くする一方で、色層で再生成される画像データの解像度を低くして情報量を少なくすることにより、輝度層と色層の画像データを合わせた画像データ全体の情報量を抑えることができる。
【0079】
次に、輝度層と色層において、各層の画像データを再サンプリング処理により再生成する方法について説明する。
【0080】
まず、ずらして配置された各層の画像データにおいて、再サンプリング処理により再生成される画像データの各画素の画素位置を新たに定義する。各画素の画素位置は通常の各層の画像データの画素ピッチPに基づいて新たに定義される。
【0081】
次に、新たに定義された各画素の画素位置における画素値の算出に用いられる周辺画素を決定する。周辺画素は、ずらして配置された各層の画像データにおいて、新たに定義された各画素の画素位置から所定の距離にある画素を含むように決定される。
【0082】
次に、新たに定義された各画素の画素位置において、決定された周辺画素を用いて画素値を算出する。画素値の算出は、決定された周辺画素の画素値を用いた補間演算により行われる。補間演算の方法には、バイキュービック法、バイリニア法などの従来の方法を適宜採用すればよい。
【0083】
そして、新たに定義された各画素の画素位置のすべてにおいて算出された画素値の画像信号配列を、各層の画像データとして再生成する。
【0084】
次に、輝度層および色層の再サンプリング処理の方法について説明する。
【0085】
図5:輝度層の再サンプリング処理の方法)
図5を用いて、輝度層の再サンプリング処理の方法について説明する。図5は、3層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより取得された2枚の画像データ(画像データAおよび画像データB)をそれぞれ構成する輝度層の画像データをずらして配置し、ずらして配置された輝度層の画像データから再サンプリング処理により通常の各層の画像データよりも高解像度化された画像データを再生成することを示す模式図である。
【0086】
まず、図5Aに示すように、ずらして配置された輝度層の画像データにおいて、再サンプリング処理により再生成される画像データの各画素の画素位置を新たに定義する。
【0087】
輝度層において新たに定義される画素位置は通常の各層の画像データの画素ピッチPに基づいて決定される。輝度層において通常の各層の画像データよりも高解像度化された画像データを再生成するため、輝度層において再サンプリング処理により再生成される画像データの画素ピッチP’Lを、P’L<Pとなるように設定する。本実施例では、輝度層において2倍に高解像度化された画像データを再生成するため、P’L=1/√2Pとなるように設定する。
【0088】
図5Aに示すように、ずらして配置された輝度層の画像データの範囲内において画素ピッチP’Lに基づいて各画素の画素位置を新たに定義する。輝度層においてずらして配置された画像データの最も左上の画素の中心位置を原点(0,0)とし、この原点(0,0)を起点として、XY方向に画素ピッチP’L(1/√2PX,1/√2PY)に基づいて画素位置を新たに定義する。これにより、再サンプリング処理により再生成される輝度層の画像データを構成する各画素の画素位置が新たに定義される。
【0089】
輝度層において、新たに画素位置が定義された各画素からなる画像データのXY方向の画素数は、それぞれ通常の各層の画像データのそれに対して√2倍となる。また、解像度は、アスペクト比を通常の各層の画像データと同じとしたまま、2倍に高解像度化される。なお、画像データを構成するXY方向の画素数は実際には整数でなければならないため、XY方向の画素数はそれぞれ整数となるように端数を切り捨てた画素数に適宜置き換えられる必要がある。
【0090】
次に、図5Bに示すように、輝度層において、新たに定義された各画素の画素位置における画素値の算出に用いる周辺画素を決定する。
【0091】
周辺画素は、新たに定義された各画素の画素位置について、ずらして配置された輝度層の画像データを構成する画素のうち、所定の距離にある画素を含むようにそれぞれ決定される。
【0092】
本実施例では、輝度層における新たに定義された各画素の画素位置についての周辺画素を次式により決定する。次式においてkを任意に設定して周辺画素を一つ以上含むように輝度層における周辺画素の範囲を定義することにより、新たに定義された画素位置からの所定の距離を調節することができる。なお、周辺画素を決定する方法は次式に限定されない。
|x-x’|+|y-y’|<k(kは任意の正の数)
(x,y):新たに定義された画素位置の座標
(x’,y’):周辺画素の画素位置の座標
【0093】
次に、輝度層の新たに定義された各画素の画素位置について、周辺画素を用いて画素値を算出する。
【0094】
新たに定義された各画素の画素位置における画素値は、周辺画素の画素値を用いて補間演算により算出される。補間演算の方法には、バイキュービック法、バイリニア法などの従来の補間演算の方法を適宜採用すればよい。新たに定義された各画素に画素位置すべてにおいて画素値を算出することにより、輝度層において高解像度化された画像データを再生成することができる。
【0095】
図6:色層の再サンプリング処理の方法)
図6を用いて、色層の再サンプリング処理の方法について説明する。図6は、3層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより取得された2枚の画像データ(画像データAおよび画像データB)をそれぞれ構成する色層の画像データをずらして配置し、ずらして配置された色層の画像データから再サンプリング処理により通常の各層の画像データよりも低解像度化された画像データを再生成することを示す模式図である。
【0096】
まず、図6Aに示すように、ずらして配置された色層の画像データにおいて、再サンプリング処理により再生成される画像データの各画素の画素位置を新たに定義する。
【0097】
色層において新たに定義される画素位置は通常の各層の画像データの画素ピッチPに基づいて決定される。色層において通常の各層の画像データよりも低解像度化された画像データを再生成するため、色層において再サンプリング処理により再生成される画像データの画素ピッチP’Cを、P’C>Pとなるように設定する。本実施例では、色層において1/2倍に低解像度化された画像データを再生成するため、P’C=2/√2Pとなるように設定する。
【0098】
図6Aに示すように、ずらして配置された色層の画像データの範囲内において画素ピッチP’Cに基づいて各画素の画素位置を新たに定義する。色層においてずらして配置された画像データの最も左上の画素の中心位置を原点(0,0)とし、この原点(0,0)からXY方向に画素ピッチP(PX,PY)の1/2√2だけ移動した画素位置(1/2√2PX,1/2√2PY)を起点として、XY方向に画素ピッチP’C(2/√2PX,2/√2PY)に基づいて画素位置を新たに定義する。これにより、再サンプリング処理により再生成される色層の画像データを構成する各画素の画素位置が新たに定義される。
【0099】
また、図6Bに示すように、色層において新たに定義される各画素の画素位置は、輝度層において新たに定義される各画素の画素位置4つに対して1つが定義されることとなる。すなわち、色層で再生成される画像データの解像度は、輝度層で再生成される画像データの1/4倍となる。
【0100】
色層において、新たに画素位置が定義された各画素からなる画像データのXY方向の画素数は、それぞれ通常の各層の画像データのそれに対して1/√2倍となる。また、解像度は、アスペクト比を通常の各層の画像データと同じとしたまま、1/2倍に低解像度化される。なお、画像データを構成するXY方向の画素数は実際には整数でなければならないため、XY方向の画素数はそれぞれ整数となるように端数を切り捨てた画素数に適宜置き換えられる必要がある。
【0101】
次に、図6Cに示すように、色層において、新たに定義された各画素の画素位置における画素値の算出に用いる周辺画素を決定する。
【0102】
周辺画素は、新たに定義された各画素の画素位置について、ずらして配置された色層の画像データを構成する画素のうち、所定の距離にある画素を含むようにそれぞれ決定される。
【0103】
本実施例では、色層において新たに定義された各画素の画素位置の画素ピッチP’Cは、輝度層において新たに定義された各画素の画素位置の画素ピッチP’Lに比べて大きいため、色層の周辺画素には新たに定義された各画素の画素位置からより離れた距離にある画素をも含めることとしている。
【0104】
本実施例では、色層における新たに定義された各画素の画素位置についての周辺画素を次式により決定する。次式において2kを任意に設定して周辺画素を一つ以上含むように色層における周辺画素の範囲を定義することにより、新たに定義された画素位置からの所定の距離を調節することができる。なお、周辺画素を決定する方法は次式に限定されない。
|x-x’|+|y-y’|<2k(kは任意の正の数)
(x,y):新たに定義された画素位置の座標
(x’,y’):周辺画素の画素位置の座標
【0105】
次に、色層の新たに定義された各画素の画素位置について、周辺画素を用いて画素値を算出する。
【0106】
新たに定義された各画素の画素位置における画素値は、周辺画素の画素値を用いて補間演算により算出される。補間演算の方法には、バイキュービック法、バイリニア法などの従来の補間演算の方法を適宜採用すればよい。新たに定義された各画素に画素位置すべてにおいて画素値を算出することにより、色層において低解像度化された画像データを再生成することができる。
【0107】
図1:画素混合処理)
次に、画素混合部144による画素混合処理について説明する。
【0108】
画素混合処理では、再サンプリング処理により再生成された輝度層の画像データと色層の画像データとを合成して最終的に通常の各層の画像データよりも高解像度化された画像データを生成する。
【0109】
本実施例において、画素混合処理とは、再サンプリング処理により再生成された解像度のそれぞれ異なる各層の画像データを用いて、各層の画像データについてノイズリダクション処理および色分離処理を行い、解像度を整合させて合成することにより、最終的に高解像度化された画像データを生成する画像信号処理のことをいう。
【0110】
図7から図10を用いて、本実施例の撮像装置100の制御方法について説明する。以下では、本実施例の撮像装置100の制御方法における撮影動作について説明する。さらに、種々ある撮影動作のうち、特に画素ずらしにより最終的に高解像度化された画像データを生成する撮影動作に限定して説明する。
【0111】
図7:撮影動作の各ステップ)
図7を用いて、撮影動作の各ステップについて説明する。
【0112】
まず、S001において、撮像装置100の制御部はレリーズスイッチがONにされたかどうかを検出する。レリーズスイッチがONにされない場合にはS001に戻り、再びレリーズスイッチがONにされたかどうかを検出する。レリーズスイッチがONにされた場合には続いて合焦動作を行う。
【0113】
次に、S002において、撮像装置100の制御部は合焦動作を行う。撮像装置100の制御部は、コントラスト検出方式や位相差検出方式などにより検出された合焦評価値に基づいて、撮影レンズ110に含まれるフォーカスレンズ群を被写体に合焦するように駆動させる。
【0114】
次に、S003において、撮像装置100の制御部は画素ずらしにより2枚の画像データを取得する。画素ずらしは、撮像装置100の制御部が撮像素子120(3層構造の撮像素子)をシフト機構130により光軸に垂直な平面内でシフトさせることにより行う。撮像素子120は、画素ずらしによりシフトされた第1の位置と第2の位置の2ポジションにおいてそれぞれ1枚の画像データを取得する。本実施例において、第1の位置を原点の位置(0,0)とし、第2の位置を原点の位置(0,0)からXY方向に画素ピッチP(PX,PY)の1/2だけずれた位置(1/2PX,1/2PY)とする。S003の画素ずらしによる画像データ取得の各ステップについては後述する。
【0115】
次に、S004において、画素ずらし合成処理部140は画素ずらしにより第1の位置および第2の位置で取得された2枚の画像データを用いて画素ずらし合成処理を行う。ここで、取得された2枚の画像データは、3層構造の撮像素子により取得されており、各層(B層、G層及びR層)の画像データからそれぞれ構成されている。画素ずらし合成処理は、再サンプリング処理によりずらして配置された各層の画像データから通常の各層の画像データよりも高解像度化または低解像度化された画像データを再生成し、画素混合処理により再生成された各層の画像データを用いて最終的に高解像度化された画像データを生成することにより行う。S004の画素ずらし合成処理の各ステップについては後述する。
【0116】
次に、S005において、最終的に生成された高解像度化された画像データを記録する。最終的に生成された高解像度化された画像データは、保存のために外部メモリ170に記録されたり、他の画像処理のために撮像素子内部の一時メモリに記録されたりする。
【0117】
図8:画素ずらしによる画像データ取得S003)
次に、図8を用いて、画素ずらしによる画像データ取得(図7:S003)の各ステップについて説明する。
【0118】
まず、S301において、撮像装置100の制御部は画素ずらしにより撮像素子120を第1の位置である原点の位置(0,0)へ移動させる。次に、S302において、撮像素子120を第1の位置において露光させて第1の画像データを取得し、S303において、取得した第1の画像データをDRAM160に一時的に保持する。
【0119】
続いて、S304において、撮像装置100の制御部は画素ずらしにより撮像素子120を第2の位置である原点の位置(0,0)からXY方向に画素ピッチP(PX,PY)の1/2だけずれた位置(1/2PX,1/2PY)へ移動させる。次に、S305において、撮像素子120を第2の位置において露光させて第2の画像データを取得し、S306において、取得した第2の画像データをDRAM160に一時的に保持する。このとき、DRAM160には画素ずらしにより取得された2枚の画像データが記録されていることなる。
【0120】
本実施例では、画素ずらしによる画像データ取得において、各ポジションで取得する画像データを構成する各画素がそれぞれ互いに重ならないようにするため、撮像素子120を各ポジションで相対的に画素ピッチP(PX,PY)の1/2だけずらした位置へ移動させている。
【0121】
図9:画素ずらし合成処理S004)
次に、図9を用いて、画素ずらし合成処理(図7:S004)の各ステップについて説明する。
【0122】
まず、S401において、画素ずらし合成処理部140は、画像データ入力部141によりDRAM160に記録されている2枚の画像データを入力する。
【0123】
次に、S402において、画素ずらし合成処理部140は、2枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データを輝度層と色層とに分ける。本実施例では、あらかじめB層の画像データを輝度層とし、G層及びR層の画像データを色層とする。
【0124】
次に、S403において、画素ずらし合成処理部140は、画像データ配置部142により2枚の画像データをそれぞれ構成する輝度層および色層の画像データをそれぞれずらして配置する。このとき、画像データ配置部142は各層の画像データを画素ずらしと同様に相対的に画素ピッチP(PX,PY)の1/2だけずらして配置する。
【0125】
次に、S404において、画素ずらし合成処理部140は、輝度層および色層において、それぞれずらして配置された各層の画像データから、再サンプリング部143により通常の各層の画像データとは解像度の異なる各層の画像データを再生成する。このとき、輝度層において通常の各層の画像データよりも高解像度化された画像データが再生成され、色層において通常の画像データよりも低解像度化された画像データが再生成される。
【0126】
次に、S405において、画素ずらし合成処理部140は、再生成された輝度層又は色層の画像データを用いて画素混合部144により最終的に高解像度化された画像データを生成する。S405の画素混合処理の各ステップについては後述する。
【0127】
図10:画素混合処理S405)
次に、図10を用いて、画素混合処理(図9:S405)の各ステップについて説明する。
【0128】
以下の説明において、輝度層及び色層の画像データから構成される1枚の画像データについて、各層の画像データの解像度の比率を用いて表すこととする。また、各層の画像データの解像度の比率は、R層、G層、B層の順に表すこととする。
【0129】
本実施例において、画素ずらし合成処理部140は、1枚の画像データを構成する各層の画像データについて、B層を輝度層、G層及びR層を色層としてあらかじめ分けている。そして、再サンプリング処理により再生成された輝度層と色層との画像データの解像度の比率は4:1である。
【0130】
したがって、たとえば、再サンプリング処理により再生成された輝度層および色層の画像データから構成される1枚の画像データは、各層の画像データの解像度の比率を用いて、114画像データと表すことができる。また、たとえば、114画像データから色層であるR層及びG層の画像データを削除した1枚の画像データを、004画像データと表すことができる。
【0131】
まず、S501において、画素ずらし合成処理部140は、画素混合部144により再サンプリング処理により再生成された114画像データから111画像データ及び004画像データを生成する。
【0132】
ここで、111画像データは、114画像データのR層及びG層の画像データと、114画像データの隣接する4画素1組の画素値を合算したB層の画像データとから構成される画像データである。また、004画像データは、114画像データからR層及びG層の画像データを削除して、114画像データのB層の画像データのみから構成される画像データである。
【0133】
次に、S502において、S501で生成された111画像データから、さらに、111画像データ及び001画像データを生成する。
【0134】
ここで、001画像データは、111画像データからR層及びG層の画像データを削除して、111画像データのB層の画像データのみから構成される画像データである。
【0135】
次に、S503において、S502で生成された111画像データに対してノイズリダクション処理や色分離処理を行い、さらに、S504において、処理後の111画像データに対してアップサンプリング処理を行い、444画像データを生成する。
【0136】
S504において生成された444画像データを構成する各層の画像データは、それぞれ通常の各層の画像データに対して2倍に高解像度化された画像データに相当する。
【0137】
他方、S505において、S501で生成された004画像データに対してノイズリダクション処理を行う。また、S506において、S502で生成された001画像データに対してアップサンプリング処理を行い、004画像データを生成する。
【0138】
そして、S507において、S505で処理された004画像データとS506で生成された004画像データとの差分を算出して差分画像データを生成する。
【0139】
最後に、S508において、S504で生成された444画像データに対してS507で生成された差分画像データを反映させ、最終的に通常の各層の画像データに対して2倍に高解像度化された各層の画像データから構成される444画像データを生成する。
【0140】
本実施例の画素混合処理では、再サンプリング処理により再生成された輝度層及び色層の画像データから構成される114画像データから、一度、111画像データ及び004画像データを生成する。そして、111画像データからは、ノイズリダクション処理等及びアップサンプリング処理を行うことにより444画像データを生成し、004画像データからは、ノイズリダクション処理を行いつつもアップサンプリング処理を行わずに004画像データを生成している。さらに、444画像データに対して差分画像データとした004画像データを反映させることにより、最終的に通常の各層の画像データに対して2倍に高解像度化された各層の画像データから構成される444画像データを生成している。これにより、ノイズリダクション処理等を行った後にアップサンプリング処理を行うことで発生する画像データの色付きの問題を防止することができる。
【0141】
以上の説明のとおり、本発明によれば、画素ずらしにより高解像度化された画像データを取得する撮像装置及び撮像装置の制御方法において、積層構造の撮像素子を採用することにより、画素ずらしにより取得すべき複数枚の画像データの数を少なくすることができる。また、これにより複数枚の画像データのデータ転送や画像処理の負担を抑え、複数枚の画像データを一時的に保持するバッファメモリの容量を抑えることができる。
【0142】
また、積層構造の撮像素子を採用し、画素ずらしにより取得された複数枚の画像データをそれぞれ構成する各層の画像データの再サンプリング処理において、各層の画像データを輝度層と色層とに分け、輝度層と色層とにおいて再生成される画像データの解像度を異ならせることにより、画像データ全体の情報量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0143】
100 撮像装置
110 撮影レンズ
120 撮像素子
130 シフト機構
140 画素ずらし合成処理部
141 画像データ入力部
142 画像データ配置部
143 再サンプリング部
144 画素混合部
145 画像データ出力部
150 バス
160 DRAM
170 外部メモリ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10