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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122351
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】内面検査測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/12 20060101AFI20220816BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20220816BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20220816BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01B11/12 G
G01N21/954 A
G01B11/24 B
G01B11/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019509
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】591224744
【氏名又は名称】シグマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】江崎 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石倉 靖大
(72)【発明者】
【氏名】大年 紀之
(72)【発明者】
【氏名】世良 博史
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA27
2F065AA49
2F065BB08
2F065CC11
2F065DD03
2F065DD06
2F065EE00
2F065FF44
2F065FF51
2F065GG04
2F065JJ18
2F065LL02
2F065LL12
2F065LL20
2F065LL67
2F065MM08
2F065PP26
2F065QQ16
2F065QQ18
2F065QQ23
2G051AA82
2G051AB07
2G051BA10
2G051BC07
2G051CB01
2G051CC01
2G051CC12
2G051CD05
(57)【要約】
【課題】被検査体の円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を同時に短時間で行うことができ、また測定誤差の発生を抑制することの可能な内面検査測定装置を提供する。
【解決手段】被検査体50の円筒状内面51に当てたレーザ光の反射光を円周方向に沿って測定し、円筒状内面51の欠陥検査及び内径測定を行う内面検査測定装置100であって、被検査体50の円筒軸方向に沿って移動し円筒状内面51にレーザ光を照射して反射光を取得するプローブ20と、反射光の強度情報に基づいて欠陥検査を行う欠陥検査手段30と、反射光の距離情報に基づいて内径測定を行う内径測定手段40とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の円筒状内面に当てたレーザ光の反射光を円周方向に沿って測定し、前記円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を行う内面検査測定装置であって、
前記被検査体の円筒軸方向に沿って移動し円筒状内面にレーザ光を照射して反射光を取得するプローブと、前記反射光の強度情報に基づいて前記欠陥検査を行う欠陥検査手段と、前記反射光の距離情報に基づいて前記内径測定を行う内径測定手段とを有することを特徴とする内面検査測定装置。
【請求項2】
前記欠陥検査手段における強度情報の部位数よりも前記内径測定手段における距離情報の部位数の方が少ないことを特徴とする請求項1に記載の内面検査測定装置。
【請求項3】
前記内径測定手段は、測定面からの反射光と基準面からの反射光とを合成した干渉光を解析して測定面と基準面との距離の差を算出することを特徴とする請求項1に記載の内面検査測定装置。
【請求項4】
前記測定面に照射するレーザ光及び前記測定面からの反射光を導光する第1の光ファイバと、前記基準面に照射するレーザ光及び前記基準面からの反射光を導光する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバを収容する収容手段とを有し、
前記収容手段が前記プローブとともに移動することを特徴とする請求項4に記載の内面検査測定装置。
【請求項5】
前記内径計測手段は、前記プローブの先端に設けられたシャフトの回転時の軸ぶれの影響を補正する軸ぶれ補正手段を有することを特徴とする請求項1に記載の内面検査測定装置。
【請求項6】
前記内径計測手段は、前記プローブの先端に設けられたシャフトの前記円筒状内面の中心軸からの芯ずれの影響を補正する芯ずれ補正手段を有することを特徴とする請求項1に記載の内面検査測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を行う内面検査測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン部品等の被検査体の円筒状内面に存在する鋳巣、傷、バリなどの欠陥部位の検査の多くは、検査員の目視検査に頼っている。目視検査は多くの人手がかかるためコスト増の要因となり、品質のバラツキにも問題がある。
【0003】
これに対して、欠陥部位の検査を自動化した装置として、被検査体の内面に当てたレーザ光の反射光量を測定しながら内面全体を走査して測定した反射光量によって画像を形成し、得られた画像から欠陥部位の有無を判定する内面検査装置が提案されている。例えば、特許文献1には、判定対象部位からまず欠陥部位候補を検出し、検出した欠陥部位候補の中から、形状、大きさ、位置関係といった絞り込み条件に基づいて、欠陥部位を絞り込むようにして、欠陥部位の判定精度を高めるようにした内面検査装置に関する発明が記載されている。
【0004】
一方、エンジン部品等の被検査体の円筒状内面について、内径測定や真円度測定を行う場合がある。内径測定には、検査員が測定用の治具を使用して手動で検査する方法や、エアマイクロ装置等により自動で検査する方法がある。また、真円度測定には、検査員が栓ゲージを使用して手動で検査する方法や、真円度測定器により自動で検査する方法がある。
【0005】
内径測定や真円度測定のための装置として、例えば、特許文献2及び特許文献3には、円筒状内面にレーザ光を照射して距離情報を収集し、内径、真円度や直角度などを算出する測定装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-101938号公報
【特許文献2】特開2020-148632号公報
【特許文献3】特開2020-187052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の手動による欠陥検査、内径測定及び真円度測定は、多くの人手がかかるためコスト増の要因となる。これに対して、上記特許文献に記載された発明のように、各々の検査や測定を自動化した装置の開発は行われているが、これだけでは、検査員が手動で実施している作業を個別に自動化したに過ぎない。そのため、欠陥検査、内径測定及び真円度測定を行うためには、各々の装置を別々に使用しなければならず、検査時間、測定時間の短縮化には限界があった。
【0008】
一方、特許文献2及び特許文献3に記載された発明においては、円筒状内面にレーザ光を照射して収集した距離情報によって円筒状内面を三次元データ化することができるので、この三次元データを用いて欠陥検査を行うことも可能である。しかしながら一般的に、欠陥検査の場合には円筒状内面の全体から細かくデータ収集する必要があるのに対して、内径測定の場合には必ずしも全体から細かくデータ収集する必要はない。従って、筒状内面にレーザ光を照射して収集した距離情報に基づいて欠陥検査を行うためには、内径測定には必要のない部位からのデータも収集しなければならない。レーザ光の反射光から距離情報を得るためには、反射光の強度情報に対してフーリエ変換などを含む負荷のかかる情報処理を行う必要があり、円筒状内面の全体から細かく距離情報を得るには大量の情報処理時間が必要となる。このように、内径測定のための距離情報を用いて欠陥検査を行うには長時間が必要であり、量産ラインでの自動検査装置として使用するのは困難である。
【0009】
また、円筒状内面にレーザ光を照射して内径測定を行う場合には、レーザ光を受発光するシャフトを被検査体に挿入して円筒状内面に沿って回転させながら行うことになるが、レーザ光を導光する光ファイバの移動、周囲温度変化、シャフトの軸ぶれ、シャフトの芯ずれなどの要因により、測定誤差が生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、被検査体の円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を同時に短時間で行うことができ、また測定誤差の発生を抑制することの可能な内面検査測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の内面検査測定装置は、被検査体の円筒状内面に当てたレーザ光の反射光を円周方向に沿って測定し、前記円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を行う内面検査測定装置であって、前記被検査体の円筒軸方向に沿って移動し円筒状内面にレーザ光を照射して反射光を取得するプローブと、前記反射光の強度情報に基づいて前記欠陥検査を行う欠陥検査手段と、前記反射光の距離情報に基づいて前記内径測定を行う内径測定手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記欠陥検査手段における強度情報の部位数よりも前記内径測定手段における距離情報の部位数の方が少ないことを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、前記内径測定手段は、測定面からの反射光と基準面からの反射光とを合成した干渉光を解析して測定面と基準面との距離の差を算出することを特徴とする。
【0014】
また好ましくは、前記測定面に照射するレーザ光及び前記測定面からの反射光を導光する第1の光ファイバと、前記基準面に照射するレーザ光及び前記基準面からの反射光を導光する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバを収容する収容手段とを有し、前記収容手段が前記プローブとともに移動することを特徴とする。
【0015】
また好ましくは、前記内径計測手段は、前記プローブの先端に設けられたシャフトの回転時の軸ぶれの影響を補正する軸ぶれ補正手段を有することを特徴とする。
【0016】
また好ましくは、前記内径計測手段は、前記プローブの先端に設けられたシャフトの前記円筒状内面の中心軸からの芯ずれの影響を補正する芯ずれ補正手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内面検査測定装置は、被検査体の円筒状内面に当てたレーザ光の反射光を円周方向に沿って測定し、円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を行う内面検査測定装置であり、プローブ、欠陥検査手段及び内径測定手段を有している。そして、プローブが被検査体の円筒軸方向に沿って移動し円筒状内面にレーザ光を照射して反射光を取得し、欠陥検査手段が反射光の強度情報に基づいて欠陥検査を行い、内径測定手段が反射光の距離情報に基づいて内径測定を行うようになっている。従って、プローブを移動させながら欠陥検査と内径測定を同時に行うことができ、検査時間及び測定時間を短縮することができる。また、欠陥検査に用いる情報(強度情報)と内径測定に用いる情報(距離情報)を分けることにより、各々の処理に必要な部位のみの情報を取り扱うことができ、情報処理時間を短縮することができる。
【0018】
また、欠陥検査手段における強度情報の部位数よりも内径測定手段における距離情報の部位数の方が少ない場合には、全体から細かくデータ収集する必要がある欠陥検査については多くの部位の強度情報に基づいて行い、必ずしも全体から細かくデータ収集する必要がない内径測定については少ない部位の距離情報に基づいて行うようにして、情報処理時間を短縮することができる。
【0019】
また、内径測定手段が、測定面からの反射光と基準面からの反射光とを合成した干渉光を解析して測定面と基準面との距離の差を算出する場合には、干渉法により距離情報を算出することができる。
【0020】
また、測定面に照射するレーザ光及び測定面からの反射光を導光する第1の光ファイバと、基準面に照射するレーザ光及び基準面からの反射光を導光する第2の光ファイバと、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバを収容する収容手段とを有し、収容手段がプローブとともに移動する場合には、2系統の光ファイバを両方とも収容手段に収容してプローブとともに移動させることにより、2系統の光ファイバが受ける影響(光ファイバの移動、周囲温度変化)を同一にして測定誤差の発生を抑制することができる。
【0021】
また、内径計測手段が、プローブの先端に設けられたシャフトの回転時の軸ぶれの影響を補正する軸ぶれ補正手段を有する場合には、シャフトの軸ぶれによる測定誤差の発生を抑制することができる。
【0022】
また、内径計測手段が、プローブの先端に設けられたシャフトの円筒状内面の中心軸からの芯ずれの影響を補正する芯ずれ補正手段を有する場合には、シャフトの芯ずれによる測定誤差の発生を抑制することができる。
【0023】
このように、本発明の内面検査測定装置によれば、被検査体の円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を同時に短時間で行うことができ、また測定誤差の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る内面検査測定装置を示す構成図である。
図2】プローブを示す構成図である。
図3】内面検査測定装置の欠陥検査及び内径測定の概略図である。
図4】内面検査測定装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図1乃至図4を参照して、本発明の実施形態に係る内面検査測定装置について説明する。本実施形態に係る内面検査測定装置100は、例えば、自動車のエンジン部品等の被検査体の円筒状内面の欠陥検査及び内径測定を行うためのものである。
【0026】
図1は、内面検査測定装置100を示す構成図である。内面検査測定装置100は、プローブ1、プローブ送り機構2、モータ・ドライバ3、コントロール・ユニット4、パソコン5及び端子台6から構成されている。プローブ1は、被検査体の円筒状内面に挿入されてレーザ光を照射し、反射光のデータを取得するためのセンサであり、プローブ送り機構2により搬送されるとともに、モータ・ドライバ3により回転制御されるようになっている。コントロール・ユニット4は、装置全体の制御を行うものであり、プローブ1から送信されてきたデータと軸位置を整合させてパソコン5に送信するようになっている。パソコン5は、欠陥部位の判定、内径や真円度の算出、データの保存を行う。端子台6は、外部機器との通信用である。
【0027】
図2は、プローブ1を示す構成図である。プローブ1の先端部には、レーザ出入部11が設けられており、ミラーを介してレーザケーブル15によって出力制御されたレーザが出るとともに、被検査体の円筒状内面からの反射光が入るようになっている。スピンドルシャフト12は、高速回転してレーザ出入部11を被検査体の円筒状内面の円周上に沿って回転させる。そして、回転エンコーダ・センサ13が1回転データを、データケーブル14を介してコントロール・ユニット4に送信する。これにより円周方向に沿った1回転分の反射光のデータが得られ、被検査体の円筒状内面の入口から底に向けて測定を繰り返すことにより、内面全体の反射光のデータを取得することができる。なお、被検査体の円筒状内面に照射されるレーザ光は、可視光線、赤外線、紫外線のいずれであってもよい。
【0028】
図3は、内面検査測定装置100の欠陥検査及び内径測定の概略図である。また、図4は、内面検査測定装置100の機能構成図である。なお、図3及び図4において、白抜き矢印は照射されるレーザ光を示し、黒矢印は受光される反射光を示している。
【0029】
内面検査測定装置100は、被検査体50の円筒状内面51に当てたレーザ光の反射光を円周方向に沿って測定し、円筒状内面51の欠陥検査及び内径測定を行うものであり、主としてプローブ20、欠陥検査手段30及び内径測定手段40から構成されている。すなわち、プローブ20を移動させながら欠陥検査と内径測定を同時に行うことができるものである。
【0030】
プローブ20(図1のプローブ1に相当)は、被検査体50の円筒軸方向に沿って移動し、先端に設けられたスピンドルシャフト21(図2のスピンドルシャフト12に相当)が高速回転しながら円筒状内面51にレーザ光を照射して反射光を取得するようになっている。また、プローブ20の内部には、照射されるレーザ光及び受光される反射光の方向を変えるためのダイクロイックプリズム22及びプリズム23(又はミラー)が配置されている。以下、「スピンドルシャフト」を単に「シャフト」と表記する。
【0031】
欠陥検査手段30は、取得された反射光の強度情報に基づいて欠陥検査を行うようになっており、光源31から照射されたレーザ光がプローブ20のダイクロイックプリズム22、プリズム23を経由して円筒状内面51に照射され、その反射光がプリズム23、ダイクロイックプリズム22を経由してPDセンサ32で受光され取得される。取得された反射光の強度情報に基づいて欠陥検査を行う方法としては、強度情報によって画像を形成し、得られた画像から欠陥部位の有無を判定する方法が挙げられる。例えば、前述した特許文献1に記載された発明のように、判定対象部位からまず欠陥部位候補を検出し、検出した欠陥部位候補の中から、形状、大きさ、位置関係といった絞り込み条件に基づいて、欠陥部位を絞り込むようにして、欠陥部位の判定精度を高める方法が好ましい。なお図4では、プリズム23、ダイクロイックプリズム22を経由してPDセンサ32で受光するようになっているが、ダイクロイックプリズム22を経由せずに、別のミラーを設けるなどして別の経路で受光するようにしてもよい。
【0032】
内径測定手段40は、取得された反射光の距離情報に基づいて内径測定を行うようになっている。本実施形態における内径測定手段40は、干渉法による内径測定を行うようになっている。干渉法は、測定面からの反射光と基準面からの反射光とを合成した干渉光を解析して測定面と基準面との距離の差を算出する公知の方法である。例えば、医療分野では、眼底検査や内視鏡検査において断面画像を撮影する手法として用いられている。
【0033】
以下、本実施形態における干渉法について説明する。内径測定手段40は、主として光源41、アイソレータ42、カプラ43、偏波コントローラ44、ディレイライン(基準面)45、偏波コントローラ46、スペクトロメータ47及びPC48から構成されている。
【0034】
光源41から発せられたレーザ光は、アイソレータ42を経由してカプラ43に導光され、カプラ43で分岐される。分岐されたレーザ光のうち一方は偏波コントローラ44を経由してディレイライン(基準面)45に照射される。ディレイライン(基準面)45までの距離(基準距離)は既知である。また、分岐されたレーザ光のうち他方は偏波コントローラ46を経由してプローブ20内に導かれ、ダイクロイックプリズム22、プリズム23を経由して円筒状内面51に照射される。
【0035】
ディレイライン(基準面)45に照射されたレーザ光の反射光は、偏波コントローラ44を経由してカプラ43に導光される。また、円筒状内面51に照射されたレーザ光の反射光は、プリズム23、ダイクロイックプリズム22及び偏波コントローラ46を経由してカプラ43に導光される。導光された2つの反射光は、カプラ43で合流し合成され、合成された反射光に対してスペクトロメータ47による測定及びPC48による分析がなされる。
【0036】
ディレイライン45からの反射光と円筒状内面51からの反射光とを合成すると、相互作用による干渉縞が発生する。基準距離と計測距離(計測したい距離)との差Lの大きさにより干渉縞の幅などが変化するため、干渉光を解析することにより、基準距離と計測距離(計測したい距離)との差Lが求まる。これにより計測距離を算出することができる。なお、干渉光を解析して差Lを算出するためには、反射光の強度情報に対してフーリエ変換などを含む情報処理が必要である。
【0037】
このように、内径測定手段40が、測定面からの反射光と基準面からの反射光とを合成した干渉光を解析して測定面と基準面との距離の差Lを算出することで、干渉法により距離情報を算出することができる。
【0038】
また、円筒状内面51の複数の部位における距離情報から中心位置補正を行い、さらに真円度測定を行う方法としては、例えば最小二乗中心法が挙げられるが、その他に最小領域中心法、最大内接円中心法及び最小外接円中心法などであってもよい。
【0039】
本実施形態に係る内面検査測定装置100は、被検査体50の円筒状内面51に当てたレーザ光の反射光を円周方向に沿って測定し、円筒状内面51の欠陥検査及び内径測定を行う内面検査測定装置であり、プローブ20、欠陥検査手段30及び内径測定手段40を有している。そして、プローブ20が被検査体50の円筒軸方向に沿って移動し円筒状内面51にレーザ光を照射して反射光を取得し、欠陥検査手段30が反射光の強度情報に基づいて欠陥検査を行い、内径測定手段40が反射光の距離情報に基づいて内径測定を行うようになっている。従って、プローブ20を移動させながら欠陥検査と内径測定を同時に行うことができ、検査時間及び測定時間を短縮することができる。また、欠陥検査に用いる情報(強度情報)と内径測定に用いる情報(距離情報)を分けることにより、各々の処理に必要な部位のみの情報を取り扱うことができ、情報処理時間を短縮することができる。
【0040】
ここで、欠陥検査手段30における強度情報の部位数と、内径測定手段40における距離情報の部位数とを比較する。一般的に、欠陥検査の場合には円筒状内面51の全体から細かくデータ収集する必要があるのに対して、内径測定の場合には必ずしも全体から細かくデータ収集する必要はない。例えば、欠陥検査については1周あたり1000点、内径測定については1周あたり200点というように、欠陥検査手段30における強度情報の部位数よりも内径測定手段40における距離情報の部位数の方を少なくすることができる。また、内径測定については、円筒軸方向についても例えば間隔を空けた部位に対して距離情報を算出することもできる。
【0041】
レーザ光の反射光から距離情報を得るためには、反射光の強度情報に対してフーリエ変換などを含む負荷のかかる情報処理を行う必要があり、円筒状内面の全体から細かく距離情報を得るには大量の情報処理時間が必要となる。そのため、内径測定のための距離情報を、求められる精度の範囲において、できるだけ少ない部位数で算出するほど処理時間が短くなる。なお、内径測定手段においても、強度情報については多くの部位数について取得して差し支えなく、距離情報の算出にあたって少ない部位数で行えばよい。
【0042】
このように、欠陥検査手段20における強度情報の部位数よりも内径測定手段30における距離情報の部位数の方が少ない場合には、全体から細かくデータ収集する必要がある欠陥検査については多くの部位の強度情報に基づいて行い、必ずしも全体から細かくデータ収集する必要がない内径測定については少ない部位の距離情報に基づいて行うようにして、情報処理時間を短縮することができる。
【0043】
次に、内面検査測定装置100の内径測定における測定誤差への対応について説明する。まず、レーザ光を導光する光ファイバの移動について説明する。被検査体50の円筒状内面51を検査測定するためには、円筒軸方向にプローブ20を移動させる必要があるが、プローブ20の移動に伴って照射するレーザ光及び反射光を導光する光ファイバが移動してしまうと、計測値が変化してしまう。
【0044】
本実施形態の本実施形態における内径測定手段40は、干渉法による内径測定を行うようになっている。そのため、測定面(円筒状内面51)に照射するレーザ光及び測定面(円筒状内面51)からの反射光を導光する光ファイバ(第1の光ファイバ)と、ディレイライイン(基準面)に照射するレーザ光及びディレイライン(基準面)45からの反射光を導光する光ファイバ(第2の光ファイバ)とが、別々の挙動をすると計測値が変化することになる。
【0045】
そこで、図4に示すように、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバを収容する収容手段7を設け、さらに収容手段7をプローブ20とともに移動させるとよい。例えば、図2に示すように収容手段としてプローブ20に固定された収容BOX7を用意し、収容BOX7の中にカプラ43から分岐した2系統の光ファイバを収容することで、2系統の光ファイバの位置関係が変わらず挙動が同一となるため測定誤差を抑制することができる。さらに、振動等の装置外からの影響による測定誤差についても抑制することができる。
【0046】
また、光ファイバは周囲温度変化の影響を受けやすく、例えば2mの光ファイバで、1℃の変化で計測値が20μm程度変化するものもある。温度が変化すると光ファイバの屈折率が変化し計測光の進む経路長が変化するためである。光ファイバを収容手段7に収容することは、周囲温度の変化の影響を受けにくくする観点からも好ましい。さらに、温度変化による計測値の変化を事前データとして把握し、実際の計測時に温度変化を計測しながら計測値に補正をするといった方法も考えられる。
【0047】
このように、測定面に照射するレーザ光及び測定面からの反射光を導光する第1の光ファイバと、基準面に照射するレーザ光及び基準面からの反射光を導光する第2の光ファイバと、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバを収容する収容手段7とを有し、収容手段7がプローブ20とともに移動するように構成し、2系統の光ファイバを両方とも収容手段に収容してプローブとともに移動させることにより、2系統の光ファイバが受ける影響(光ファイバの移動、周囲温度変化)を同一にして測定誤差の発生を抑制することができる。
【0048】
また、検査測定の高速化のためには、プローブ20先端に設けられたシャフト21を高速回転させる必要があるが、シャフトの軸ぶれが生じてしまい、測定誤差が生じるおそれがある。
【0049】
これに対しては、シャフト21の回転時の軸ぶれの影響を補正する軸ぶれ補正手段を設けることができる。軸ぶれ補正手段としては、例えば事前にシャフト21の回転時の固有振動数を測定しておいて、取得した反射光に対してノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)による帯域除去処理を行う方法が挙げられる。
【0050】
このように、内径計測手段40が、プローブ20の先端に設けられたシャフト21の回転時の軸ぶれの影響を補正する軸ぶれ補正手段を有することにより、シャフト21の軸ぶれによる測定誤差の発生を抑制することができる。
【0051】
また、シャフト21が被検査体50に挿入されたときに、被検査体50の穴中心に対して芯ずれが生じてしまい、測定誤差が生じるおそれがある。
【0052】
これに対しては、シャフト21の円筒状内面51の中心軸からの芯ずれの影響を補正する芯ずれ補正手段を設けることができる。芯ずれ補正手段としては、例えば最小二乗中心法が挙げられるが、その他に最小領域中心法、最大内接円中心法及び最小外接円中心法などであってもよい。
【0053】
このように、内径計測手段40が、プローブ20の先端に設けられたシャフト21の円筒状内面51の中心軸からの芯ずれの影響を補正する芯ずれ補正手段を有することにより、シャフト21の芯ずれによる測定誤差の発生を抑制することができる。
【0054】
このように、本発明の内面検査測定装置100によれば、被検査体50の円筒状内面51の欠陥検査及び内径測定を同時に短時間で行うことができ、また測定誤差の発生を抑制することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態に係る内面検査測定装置について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、内径測定手段40は干渉法による測定を行うものに限定されるものではない。また、欠陥検査手段30で用いる光源と内径測定手段40で用いる光源を同一としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 プローブ
2 プローブ送り機構
3 モータ・ドライバ
4 コントロール・ユニット
5 パソコン
6 端子台
7 収容手段(収容BOX)
11 レーザ出入部
12 スピンドルシャフト(シャフト)
13 回転エンコーダ・センサ
14 データケーブル
15 レーザケーブル
20 プローブ
21 スピンドルシャフト(シャフト)
22 ダイクロイックプリズム
23 プリズム
30 欠陥検査手段
31 光源
32 PDセンサ
40 内径計測手段
41 光源
42 アイソレータ
43 カプラ
44 偏波コントローラ
45 ディレイライン(基準面)
46 偏波コントローラ
47 スペクトロメータ
48 PC
50 被検査体
51 円筒状内面
100 内面検査測定装置
図1
図2
図3
図4