(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122362
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】熱交換システム及び熱交換システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20220816BHJP
F28F 27/00 20060101ALI20220816BHJP
F24H 1/10 20220101ALI20220816BHJP
F24H 15/00 20220101ALI20220816BHJP
F24H 15/10 20220101ALI20220816BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F28F27/00 511C
F24H1/10 N
F24H1/10 301Z
F24H1/10 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019541
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】恩田 英
【テーマコード(参考)】
3L034
3L036
【Fターム(参考)】
3L034BA38
3L034BB04
3L036AA04
(57)【要約】
【課題】冷水等の対象物への蒸気等の熱交換用流体の混入を防止することができる熱交換システム及び熱交換システムの制御方法の提供。
【解決手段】
加熱本体6の内部空間7には蒸気管16を通じて蒸気が供給されている。そして、内部空間7に配置された送水管10を通過する冷水は蒸気との間で熱交換を行い加熱され、熱水として導出される。制御部2は蒸気管圧力センサ21及び送水管圧力センサ22からそれぞれ検出データを取り込み、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも大きい場合、蒸気管電磁弁28に圧力低下信号を与えて蒸気の供給量を減少させ、蒸気管圧力を低下させる。これによって、送水管10が損傷して穴が開いた場合であっても、蒸気が送水管10内に侵入し、送水管10内の水に蒸気が混入する事態を防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に本体空間を有しており、当該本体空間に向けて熱交換用流体が供給される本体部、
前記本体空間に配置された収容部であって、内部に対象物を収容する収容空間を有しており、当該対象物を前記熱交換用流体との間で熱交換させる収容部、
前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力を検出し、熱交換用流体圧力信号を出力する熱交換用流体圧力検出手段、
前記収容空間における前記対象物の圧力を検出し、対象物圧力信号を出力する対象物圧力検出手段、
前記熱交換用流体圧力信号及び前記対象物圧力信号を取り込む制御部であって、前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力が、前記収容空間における前記対象物の圧力よりも高いと判断したとき、前記熱交換用流体の圧力を前記対象物の圧力以下にするための調整信号を出力して改善処理を実行する制御手段、
を備えたことを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
請求項1に係る熱交換システムにおいて、
前記調整信号に従って前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力を調整する熱交換用流体圧力調整手段、又は前記調整信号に従って前記収容空間における前記対象物の圧力を調整する対象物圧力調整手段のいずれか一方又は双方を備えており、
前記熱交換用流体圧力調整手段及び前記対象物圧力調整手段は、各々、前記熱交換用流体の圧力及び前記対象物の圧力を調整することによって、前記熱交換用流体の圧力を前記対象物の圧力以下にする、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る熱交換システムにおいて、
前記熱交換用流体は蒸気であり、
前記対象物は、蒸気よりも低温の水であり、
前記収容部は、対象物としての当該水を通過させる移送路である、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項4】
内部に対象物を収容した収容部に対して熱交換用流体を供給し、当該対象物を当該熱交換用流体との間で熱交換させる熱交換システムの制御方法において、
前記熱交換用流体の圧力を検出するとともに、前記収容空間における前記対象物の圧力を検出し、
制御手段は、前記熱交換用流体の圧力及び前記収容空間における前記対象物の圧力を取り込み、前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力が、前記収容空間における前記対象物の圧力よりも高いと判断したとき、前記熱交換用流体の圧力を前記対象物の圧力以下にするための調整信号を出力して改善処理を実行する、
ことを特徴とする熱交換システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法は、熱交換によって対象物を加熱するためのシステム等の構成及びその制御方法についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換システムとしては、たとえばチューブに冷水を通過させ、チューブを外側から蒸気で加熱して温水を生成するものある。このようなシステムとして、後記特許文献1に開示されている温水製造装置がある。
【0003】
この温水製造装置1は熱交換部2を備えており、熱交換部2の容器6内には冷水を通す加熱チューブ5が螺旋状に配置されている。加熱チューブ5の一端部は冷水導入部7を形成し、他端部は熱水導出部8を形成しており、冷水導入部7から冷水が導入されて加熱チューブ5を通過する。
【0004】
そして、加熱チューブ5を内蔵する容器6には導入口12が形成されており、この導入口12から蒸気が容器6内に導入される。導入された蒸気は、加熱チューブ5を通過する冷水との間で熱交換を行って冷水を加熱する。加熱された冷水は、熱水として熱水導出部8から流出し、熱水室18に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術においては、加熱チューブ5が損傷して穴が開いた場合、加熱チューブ5内に蒸気が侵入するおそれがある。すなわち、加熱チューブ5内を通過する冷水を急に止水したような場合、加熱チューブ5の水圧変動の影響によってウォーターハンマー(水撃現象)が生じることがある。
【0007】
そして、このウォーターハンマーが生じた場合、その衝撃を受けて加熱チューブ5が損傷し穴が開くことがある。加熱チューブ5は容器6内で螺旋状に湾曲して構成されているため、特に湾曲部分の強度が弱く損傷し易い。
【0008】
加熱チューブ5が損傷して穴が開いた場合、穴を通じて高圧の蒸気が加熱チューブ5内に侵入し、冷水に蒸気が混入してしまうという問題を生じる。加熱チューブ5を通過して生成される熱水を食品や飲用等に用いる場合、蒸気中の不純物が混入すると衛生面で不都合が生じる。
【0009】
加熱チューブ5の損傷を防止するために、加熱チューブ5の肉厚を厚く構成して強度性を高めることも考えられる。しかし、この場合、冷水と蒸気との間の熱交換効率が低下してしまうという新たな問題が生じることから、加熱チューブ5の強度性を高めることは難しい。
【0010】
そこで本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法は、これらの問題を解決するため、冷水等の対象物への蒸気等の熱交換用流体の混入を防止することができる熱交換システム及び熱交換システムの制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る熱交換システムは、
内部に本体空間を有しており、当該本体空間に向けて熱交換用流体が供給される本体部、
前記本体空間に配置された収容部であって、内部に対象物を収容する収容空間を有しており、当該対象物を前記熱交換用流体との間で熱交換させる収容部、
前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力を検出し、熱交換用流体圧力信号を出力する熱交換用流体圧力検出手段、
前記収容空間における前記対象物の圧力を検出し、対象物圧力信号を出力する対象物圧力検出手段、
前記熱交換用流体圧力信号及び前記対象物圧力信号を取り込む制御部であって、前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力が、前記収容空間における前記対象物の圧力よりも高いと判断したとき、前記熱交換用流体の圧力を前記対象物の圧力以下にするための調整信号を出力して改善処理を実行する制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本願に係る熱交換システムの制御方法は、
内部に対象物を収容した収容部に対して熱交換用流体を供給し、当該対象物を当該熱交換用流体との間で熱交換させる熱交換システムの制御方法において、
前記熱交換用流体の圧力を検出するとともに、前記収容空間における前記対象物の圧力を検出し、
制御手段は、前記熱交換用流体の圧力及び前記収容空間における前記対象物の圧力を取り込み、前記本体空間における前記熱交換用流体の圧力が、前記収容空間における前記対象物の圧力よりも高いと判断したとき、前記熱交換用流体の圧力を前記対象物の圧力以下にするための調整信号を出力して改善処理を実行する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法においては、制御手段が本体空間における熱交換用流体の圧力が、収容空間における対象物の圧力よりも高いと判断したとき、熱交換用流体の圧力を対象物の圧力以下にするための調整信号を出力して改善処理を実行する。
【0014】
このため、収容部が損傷して穴が開いた場合であっても、収容部に高圧の熱交換用流体が侵入する事態を回避することができる。したがって、対象物への熱交換用流体の混入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法の第1の実施形態を示す温水生成システム1の全体構成を表すブロック図である。
【
図2】
図1に示す制御部2が実行する圧力制御処理のプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法の下記の要素に対応している。
【0017】
温水生成システム1・・・熱交換システム
制御部2・・・制御手段
加熱本体6・・・本体部
内部空間7・・・本体空間
送水管10・・・収容部、移送路
送水管10の内部空間・・・収容空間
蒸気管圧力センサ21・・・熱交換用流体圧力検出手段
送水管圧力センサ22・・・対象物圧力検出手段
蒸気管電磁弁28・・・熱交換用流体圧力調整手段
蒸気管圧力Ps・・・熱交換用流体の圧力(熱交換用流体圧力信号)
送水管圧力Pw・・・対象物の圧力(対象物圧力信号)
圧力低下信号、報知信号・・・調整信号
蒸気・・・熱交換用流体
水・・・対象物
蒸気圧力低下処理、送水管圧力上昇処理、報知処理、警告表示・・・改善処理
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法の第1の実施形態である温水生成システム1を示す。この温水生成システム1は、冷却水を蒸気との間で熱交換させて加熱し、温水を生成するシステムである。
【0019】
(温水生成システム1の全体構成の説明)
まず、
図1に基づいて温水生成システム1の全体構成を説明する。温水生成システム1は加熱本体6を備えており、この加熱本体6内に形成される内部空間7には送水管10が配置されている。送水管10は、導入部10a、螺旋部10b及び導出部10cから構成されており、加熱本体6内に螺旋部10bが位置するように設けられている。そして、導入部10aから冷水がポンプ(図示せず)によって送り込まれ、冷水は送水管10を通過する。
【0020】
加熱本体6の上部には蒸気管16が接続されており、蒸気管16を通じて内部空間7には蒸気が供給される。蒸気管16には蒸気管電磁弁28が設けられており、受信した信号に基づいて開閉し、加熱本体6に供給する蒸気量を調整する。また、加熱本体6の下部には排出管17が接続されている。この排出管17からは、内部空間7内の蒸気や熱交換によって蒸気から発生したドレンが外部に排出される。
【0021】
蒸気管16には蒸気管圧力センサ21が設けられており、蒸気管16内の蒸気の圧力を検出して蒸気管圧力Psを検出データとして出力している。また、送水管10の導出部10cには送水管圧力センサ22が設けられており、送水管16内の水の圧力を検出して送水管圧力Pwを検出データとして出力している。
【0022】
蒸気管圧力Ps及び送水管圧力Pwの各検出データは、それぞれラインL1、L2を通じて制御部2に取り込まれる。また、制御部2はラインL3を通じて報知部4に報知信号を与え、報知部4は所定の報知動作を行う。さらに、制御部2はラインL4を通じて前述の蒸気管電磁弁28に圧力低下信号を与える。
【0023】
(温水生成システム1における圧力制御処理の説明)
次に、
図2のフローチャートに基づいて、制御部2が実行する圧力制御処理のプログラムを説明する。制御部2は、
図2のフローチャートの処理を繰り返し実行している。
【0024】
まず、制御部2はラインL1、L2を通じ、蒸気管圧力センサ21及び送水管圧力センサ22からそれぞれ検出データを取り込み、蒸気管圧力Ps及び送水管圧力Pwを把握する(ステップS2)。システムの起動時においては、蒸気管圧力及び送水管圧力は所定の基準初期圧力に設定されているため、システム起動直後の初期の蒸気管圧力Ps及び送水管圧力Pwはこの基準初期圧力として把握される。
【0025】
そして、制御部2は蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも大きいか否かを判別する(ステップS4)。蒸気管圧力Psが送水管圧力Pw以下の場合は、そのまま処理を終了する。ここで、蒸気管16や送水管10の配管は、他の様々な装置にも接続されている分岐管であることが多く、他の装置の作動状況や蒸気又は水の移送状態の影響を受け、蒸気管圧力Psや送水管圧力Pwは経時的に変動する。このため、ステップS4において蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも大きいと判別した場合、制御部2はラインL3を通じて報知部4に報知信号を与えるとともに(ステップS6)、蒸気管電磁弁28に圧力低下信号を与える(ステップS8)。
【0026】
報知部4は制御部2からの報知信号を受け、操作用のディスプレイ等に警告表示を行い、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも高いことを報知する。また、蒸気管電磁弁28は制御部2からの圧力低下信号を受け、蒸気圧力低下処理として電磁弁を作動して蒸気の供給量を減少させる(蒸気圧力低下処理)。この蒸気の供給量の減少によって、蒸気管圧力は低下する。
【0027】
そして、制御部2は再度、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも大きいか否かを判別する(ステップS10)。蒸気管圧力の低下によって、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pw以下に至っている場合は、そのまま処理を終了する。これに対して、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも未だ大きい場合、制御部2は再度、ステップS6及びステップS8の処理を繰り返し、操作用のディスプレイ等への警告表示を継続させるとともに、蒸気の供給量をさらに減少させる。
【0028】
以上のように、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも大きい場合、警告表示が行われとともに、蒸気の供給量を減少させて蒸気管圧力Psが送水管圧力Pw以下になるように調整する。このため、送水管10が損傷して穴が開いた場合であっても、高圧の蒸気が送水管10内に侵入し、送水管10内の水に蒸気が混入する事態を防止することができる。
【0029】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、熱交換システムとして温水生成システム1を例示したが、これに限定されるものではなく、内部に対象物を収容した収容部に対して熱交換用流体を供給し、対象物を熱交換用流体との間で熱交換させるものであれば、他のシステムに本願に係る熱交換システム及び熱交換システムの制御方法を適用することができる。
【0030】
また、前述の実施形態においては、収容部として送水管10を例示したが、熱交換の対象物を内部の収容空間に収容するものであれば、他の構成を収容部として採用することができる。
【0031】
さらに、前述の実施形態においては、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pwよりも大きい状態を解消するために、蒸気圧力低下処理として蒸気管電磁弁28を作動させて蒸気の供給量を減少させた。しかし、蒸気管電磁弁28(熱交換用流体圧力調整手段)の代わりに送水管10(収容部)に送水管電磁弁(対象物圧力調整手段)を設け(図示せず)、送水管圧力上昇処理として送水管の圧力を上昇させることによって、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pw以下になるように調整することもできる。
【0032】
また、蒸気管電磁弁28(熱交換用流体圧力調整手段)と送水管電磁弁(対象物圧力調整手段)の双方を設けて、蒸気の供給量を減少させるとともに、送水管10への冷水の供給量を増加させて、蒸気管圧力Psが送水管圧力Pw以下になるように調整してもよい。
【0033】
また、前述の実施形態においては、蒸気管圧力Psを送水管圧力Pw以下になるように制御したが、蒸気管圧力と送水管圧力とが等しくなるように制御することもできる。これによって、送水管10が損傷して穴が開いた場合、蒸気が送水管10内に侵入することを防止するとともに、送水管内の水が流出することを防止することができる。
【0034】
さらに、前述の実施形態においては、蒸気管電磁弁28が蒸気の供給量を減少させて、自動的に蒸気管圧力Psが送水管圧力Pw以下になるように調整したが、操作用のディスプレイ等の警告表示を作業者が目視し、蒸気管16に設けられた弁を手動操作して蒸気の供給量を減少させてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1:温水生成システム 2:制御部 6:加熱本体 7:内部空間 10:送水管
21:蒸気管圧力センサ 22:送水管圧力センサ 28:蒸気管電磁弁
Ps:蒸気管圧力 Pw:送水管圧力