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特開2022-122384森林状態推定システム、森林状態推定方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122384
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】森林状態推定システム、森林状態推定方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220816BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G06T7/00 640
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019574
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】原田 丈也
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 準
(72)【発明者】
【氏名】ザン ペイイー
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA09
5L096CA18
5L096FA35
5L096FA52
5L096GA51
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】森林の状態を簡便に把握する森林状態推定システム、森林状態推定方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】森林状態推定システム(100)は、森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部(101)と、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得する個数取得部(102)と、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する推定部(103)と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得する個数取得部と、
前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する推定部と、
を備える、森林状態推定システム。
【請求項2】
前記3次元点群データは、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである、請求項1に記載の森林状態推定システム。
【請求項3】
前記個数取得部は、前記3次元点群データから数値標高モデルを決定し、前記数値標高モデルを用いて前記複数の点それぞれの高度を算出する、請求項1または2に記載の森林状態推定システム。
【請求項4】
前記3次元点群データに含まれる前記複数の点それぞれを水平面に投影したときの前記水平面における前記複数の点の個数密度が100個/m以上である、請求項1から3のいずれかに記載の森林状態推定システム。
【請求項5】
前記個数取得部は、森林計測の対象を複数のエリアに区分し、エリアごとに前記所定の幅毎の点の個数を取得する、請求項1から4のいずれかに記載の森林状態推定システム。
【請求項6】
前記推定部は、
前記所定の高度の刻み幅で分けた複数の点を、高度が互いに異なる複数のグループであって、下層植生グループ、幹グループおよび樹冠グループを含む複数のグループにグループ分けし、
前記複数のグループそれぞれに含まれる点の個数に基づいて森林の状態を推定する、請求項1から5のいずれかに記載の森林状態推定システム。
【請求項7】
前記推定部は、前記複数のグループ間の点の個数の比に基づいて前記森林の状態を推定する、請求項6に記載の森林状態推定システム。
【請求項8】
前記推定部は、前記樹冠グループに含まれる点の個数に対する、前記下層植生グループおよび前記幹グループに含まれる点の個数の割合が所定以下である場合、前記森林は過密林分であると推定する、請求項6または7に記載の森林状態推定システム。
【請求項9】
前記所定の幅毎の点の個数と前記森林の状態をデータセットとして記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を前記所定の幅毎の点の個数、出力を前記森林の状態とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、
をさらに備え、
前記推定部は、前記推定モデルを用いて、前記所定の幅毎の点の個数から前記森林の状態を推定する、請求項1から8のいずれかに記載の森林状態推定システム。
【請求項10】
森林計測により得られた3次元点群データを用いて森林の状態を推定する森林状態推定システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサの動作を制御するプログラムを記憶する記憶装置と、
を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムに従って、
森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、
前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、
前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、
を実行する、森林状態推定システム。
【請求項11】
森林計測により得られた3次元点群データを用いて森林の状態を推定する方法であって、
森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、
前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、
前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、
を実行する、方法。
【請求項12】
森林計測により得られた3次元点群データを用いた森林の状態の推定をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、
森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、
前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、
前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、森林状態推定システム、森林状態推定方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
森林資源の管理および利用を行うために森林計測が行われている。森林計測は、様々な方法により行うことができる。例えば特許文献1は、上空からカメラで森林を撮影し、得られた画像から画像処理によって樹冠円を抽出する方法を開示する。特許文献2は、上空から波長の異なるレーダ波をそれぞれ森林に照射して、樹木の最上部からの反射波および地面からの反射波から算出されるそれぞれの高さの差分から樹木の高さを求める方法を開示する。特許文献3は、航空機にレーザ測距装置を搭載し、レーザ測距装置を用いて、樹木等を含めた地上の三次元データを取得する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-66050号公報
【特許文献2】特開平9-184880号公報
【特許文献3】特開2016-70708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上空からレーザ測距装置を用いて森林計測を行うと、森林上部表面(樹冠上面)のデータである点群データは得られる。しかしながら、樹木の葉等によってレーザ光が遮られるため、幹のデータを取得することは困難である。
【0005】
特許文献3は、人間が森林内にレーザ測距装置等の装置を持ち込み、三次元の点群データをさらに取得し、上空からの計測によって得られた点群データと、地上での計測によって得られた点群データとを融合させることに言及する。しかしながら、2種類の点群データを取得することは非常に手間がかかる。
【0006】
森林資源の管理および利用を行うために、森林の状態を簡便に把握することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態に係る森林状態推定システムは、森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部と、前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得する個数取得部と、前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する推定部と、を備える。
【0008】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【0009】
ある実施形態において、前記3次元点群データは、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データであってもよい。
【0010】
ライダーセンサを搭載した無人航空機を比較的低い高度(例えば絶対高度150m以下、好ましくは絶対高度80m以下)で飛行させることにより、ライダーセンサから出射されたレーザパルスは、樹木の樹冠だけでなく、樹木の幹および下層植生等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0011】
ある実施形態において、前記個数取得部は、前記3次元点群データから数値標高モデルを決定し、前記数値標高モデルを用いて前記複数の点それぞれの高度を算出してもよい。
【0012】
既存の地図データまたは数値標高モデルを利用するのではなく、最新の3次元点群データから決定した数値標高モデルを利用することにより、複数の点それぞれの高度の高精度な値を得ることができる。
【0013】
ある実施形態において、前記3次元点群データに含まれる前記複数の点それぞれを水平面に投影したときの前記水平面における前記複数の点の個数密度が100個/m以上であってもよい。
【0014】
点群の密度を高めることにより、樹冠よりも低い位置から取得できる情報量を増加させることができ、森林の状態をより詳細に把握することができる。
【0015】
ある実施形態において、前記個数取得部は、森林計測の対象を複数のエリアに区分し、エリアごとに前記所定の幅毎の点の個数を取得してもよい。
【0016】
点群の高度ヒストグラムをエリア単位で取得することにより、場所に応じて異なり得る森林の状態を把握することができる。
【0017】
ある実施形態において、前記推定部は、前記所定の高度の刻み幅で分けた複数の点を、高度が互いに異なる複数のグループであって、下層植生グループ、幹グループおよび樹冠グループを含む複数のグループにグループ分けし、前記複数のグループそれぞれに含まれる点の個数に基づいて森林の状態を推定してもよい。
【0018】
複数のグループそれぞれに含まれる点の個数は、下層植生および幹の存在、枝および葉の量などの植生を反映するため、森林に生息する植物の種類、量および形態等を推定することができる。
【0019】
ある実施形態において、前記推定部は、前記複数のグループ間の点の個数の比に基づいて前記森林の状態を推定してもよい。
【0020】
複数のグループそれぞれに含まれる点の個数の比率は、森林の状態を示す特徴的なパターンを含み、そのパターンから樹木の過密度合いおよび劣勢木の割合等を推定することができる。
【0021】
ある実施形態において、前記推定部は、前記樹冠グループに含まれる点の個数に対する、前記下層植生グループおよび前記幹グループに含まれる点の個数の割合が所定以下である場合、前記森林は過密林分であると推定してもよい。
【0022】
樹冠に対する下層植生および幹の割合が所定以下である場合は、森林は過密林分であると推定することができる。これにより、その森林は間伐を行うことが望ましいことを判断することができる。
【0023】
ある実施形態において、前記森林状態推定システムは、前記所定の幅毎の点の個数と前記森林の状態をデータセットとして記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を前記所定の幅毎の点の個数、出力を前記森林の状態とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、をさらに備え、前記推定部は、前記推定モデルを用いて、前記所定の幅毎の点の個数から前記森林の状態を推定してもよい。
【0024】
機械学習により生成した推定モデルを用いることで、所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)の分布のパターンに潜む特徴量と森林の状態との間にある相関関係等を利用することが可能になる。
【0025】
本発明のある実施形態に係る森林状態推定システムは、森林計測により得られた3次元点群データを用いて森林の状態を推定するシステムであって、プロセッサと、前記プロセッサの動作を制御するプログラムを記憶する記憶装置と、を備え、前記プロセッサは、前記プログラムに従って、森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、を実行する。
【0026】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【0027】
本発明のある実施形態に係る森林状態推定方法は、森林計測により得られた3次元点群データを用いて森林の状態を推定する方法であって、森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、を実行する。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【0029】
本発明のある実施形態に係るコンピュータプログラムは、森林計測により得られた3次元点群データを用いた森林の状態の推定をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、前記3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、前記複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、前記所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、を前記コンピュータに実行させる。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る森林計測を行う無人ヘリコプター1を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20が設けられた無人ヘリコプター1の外観側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る飛行制御ボックス15のハードウェア構成例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る森林計測を行う無人ヘリコプター1を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る森林状態推定システム100を機能ブロック単位で示す機能ブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係る森林状態推定システム100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態に係る森林の状態を推定する処理の例を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態に係る3次元点群データの例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る3次元点群データの例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る所定の幅毎の点の個数を示す高度ヒストグラムの例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る所定の幅毎の点の個数を示す高度ヒストグラムの例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る機械学習により推定モデルを生成する処理の例を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施形態に係る森林状態推定システム100のハードウェア構成の他の例を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る劣性木561を含む森林54を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
森林資源の管理および利用を行うためには、いわゆる「森林計測」を行うことが重要である。この「森林計測」には、森林の構造の調査、森林の材積の推定、一定期間における森林の変化量の把握等が含まれ得る。従来の森林計測のような、林木の一本一本を計測し、得られたデータから様々な集計・分析を行っていくことは非常に人手と時間がかかる。そこで、無人航空機にレーザ測距装置(LiDARセンサ)を搭載し、LiDARセンサを用いて空中から森林計測を行うことが進められている。
【0034】
本願発明者らは、LiDARセンサを搭載した無人航空機を比較的低い高度(例えば絶対高度150m以下、好ましくは絶対高度80m以下)で飛行させて森林計測を行うことにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データが得られることを見出した。ここで、樹冠点群は樹木の樹冠に対応する点群であり、幹点群は樹木の幹に対応する点群であり、下層植生点群は下層植生に対応する点群であり、地表面点群は地表面に対応する点群である。LiDARセンサから出射されたレーザパルスは、樹木の樹冠だけでなく、樹木の幹、下層植生および地表面等にも到達して反射され、これにより、樹冠点群、幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0035】
これら樹冠点群、幹点群、下層植生点群および地表面点群から含む3次元点群データを用いて、森林の状態を推定することが考えられる。
【0036】
3次元点群データに含まれる複数の点それぞれを水平面に投影したときの水平面における複数の点の個数密度は、100個/m以上であり得る。点群の密度を高めることにより、樹冠よりも低い位置から取得できる情報量を増加させることができ、森林の状態をより詳細に推定することができる。
【0037】
本明細書では、LiDARセンサを用いて上空から森林をスキャンし、スキャンデータを取得すること自体を「森林計測」に含む。スキャンデータは、典型的には、スキャンごとに取得される点群(point cloud)を構成する各点の位置座標によって表現され得る。スキャンごとに取得される点の位置座標は、無人航空機とともに移動するローカル座標系によって規定される。このようなローカル座標系は、移動体座標系またはセンサ座標系と呼ばれ得る。一般的には、「森林計測」は、ローカル座標系で表現された各反射点の位置を地理座標系に変換することを含む。「森林計測」はさらに、地理座標系への変換後に、森林の構造を解析すること、森林および樹木の形を視覚的に表示すること、森林内の樹木の種類ごとの存在比率を求めること、森林の容積密度を求めること等を含み得る。
【0038】
「無人航空機」(UAV;Unmanned aerial vehicle)は、操縦者としての人が搭乗しない航空機であり、ドローンと呼ばれることもある。航空機は回転翼機および固定翼機を含み得る。回転翼を有する無人航空機の一例は、無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターである。回転翼はエンジン(内燃機関)によって回転してもよいし、電動モータによって回転してもよい。無人航空機の飛行は、コンピュータプログラムによる自律飛行、一部を自動化する半自律飛行、無線を用いた人による遠隔操作による飛行のいずれであってもよい。無人航空機は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を援用して、現在位置を三次元的に測定し、その位置を修正しながら飛行することが可能である。以下に説明する例示的な実施形態においては、「無人航空機」は「無人ヘリコプター」である。「無人」の用語は、航空機の操縦のために人が搭乗する必要がないことを意味しており、無人航空機が操縦者でない人を運搬することは除外しない。
【0039】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0040】
(計測対象エリアの計測)
まず、計測対象エリアの計測の実施形態を説明する。
【0041】
図1は、計測対象エリア50の計測を行う無人ヘリコプター1を示している。例示的な実施形態において、計測対象エリア50を山の斜面52に広がる森林54とし、無人ヘリコプター1を用いて森林計測を行う。森林54では地表面から複数の樹木が立ち上がっている。計測対象エリア50としての森林54は、斜面の森林(斜面林)に限定されず、平坦地の森林であってもよい。
【0042】
図2は、LiDARセンサ(ライダーセンサ)20が設けられた無人ヘリコプター1の外観側面図である。図3は、無人ヘリコプター1の正面図である。
【0043】
LiDARセンサ20はレーザビームのパルス(以下「レーザパルス」と略記する。)22を、出射方向を変えながら次々と出射し、出射時刻と各レーザパルスの反射パルスを取得した時刻との時間差から各反射点の位置までの距離を計測することができる。「反射点」は、森林54を構成する各樹木の樹冠および幹、斜面および平坦地等の地表面であり得る。
【0044】
LiDARセンサ20は、任意の方法により、飛行体から森林までの距離を計測し得る。LiDARセンサ20の計測方法としては、例えば機械回転方式、MEMS方式、フェーズドアレイ方式がある。これらの測定方法は、それぞれレーザパルスを出射する方法(スキャンの方法)が異なっている。例えば、機械回転方式のLiDARセンサは、レーザパルスの出射およびレーザパルスの反射光の検出を行う筒状のヘッドを回転させて、回転軸の周囲360度全方位の計測対象物をスキャンする。MEMS方式のLiDARセンサは、MEMSミラーを用いてレーザパルスの出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンする。フェーズドアレイ方式のLiDARセンサは、光の位相を制御して光の出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンする。
【0045】
無人ヘリコプター1は、メインボディ2およびテールボディ3を有する機体4を備えている。機体4の下部には、ブラケット25を介してLiDARセンサ20が取り付けられている。メインボディ2の上部にはメインロータ5が設けられ、テールボディ3の後部にテールロータ6が設けられている。メインボディ2の前部にはラジエータ7が設けられている。メインボディ2の後部には飛行制御ボックス15が設けられている。メインボディ2内には、内燃機関であるエンジン8および発電装置9が設けられている。また、メインボディ2内には、いずれも図示しない吸気系、メインロータ軸、燃料タンクが収容されている。エンジン8が発生させた回転はメインロータ5およびテールロータ6に伝達され、メインロータ5およびテールロータ6が回転することにより無人ヘリコプター1は飛行する。
【0046】
メインボディ2の後部上側にはコントロールパネル10が設けられ、後部下側に表示灯11が設けられる。コントロールパネル10は、飛行前のチェックポイントやセルフチェック結果等を表示する。コントロールパネル10の表示は地上局でも確認できる。表示灯11は、GNSS制御の状態や機体の異常警告等の表示を行う。メインボディ2の中央部下側には、着陸時に機体4を支える脚であるスキッド12が設けられている。
【0047】
図4は、飛行制御ボックス(制御装置)15のハードウェア構成例を示している。飛行制御ボックス15は、測位モジュール15a、加速度センサ15b、気圧センサ15c、地磁気センサ15d、超音波センサ15e、通信回路15f、信号処理回路15g、記憶装置15jを収容する。記憶装置15jは、ROM(Read Only Memory)15h、RAM(Random Access Memory)15i等を含む。各構成要素は、例えば配線または内部バス15kを介して相互にデータを送受信し得る。なお、測位モジュール15aを初めとする各種のセンサを設ける位置は、常に飛行制御ボックス15内である必要はない。例えばGNSS衛星からの信号を取得しやすくするため、測位モジュール15aをテールボディ3上部に設けてもよい。
【0048】
測位モジュール15aは、GNSS衛星から送信されるGNSS信号を受信し、GNSS信号に基づいて測位を行う。GNSSは、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、例えばみちびき)、GLONASS、Galileo、およびBeiDouなどの衛星測位システムの総称である。測位方法として、必要な精度の位置情報が得られる任意の測位方法が採用され得る。測位方法として、例えば、干渉測位法または相対測位法が採用されてもよい。測位モジュール15aの数は1個であってもよいし、複数(例えば2個)であってもよい。
【0049】
加速度センサ15bは、X軸、Y軸およびZ軸の各方向の加速度を検出する三軸加速度センサである。加速度センサ15bが六軸加速度センサであれば、さらに無人ヘリコプター1のロール加速度、ピッチ角速度およびヨー加速度を検出可能である。なお、加速度センサ15bは、一軸加速度センサまたは二軸加速度センサを複数有し、これら一軸加速度センサまたは二軸加速度センサにより座標系XYZの各方向を検出する構成であってもよい。気圧センサ15cは気圧を検出する。検出された気圧から現在の標高を知ることができる。なお気圧と標高との関係式は公知であるから、本明細書では説明は省略する。地磁気センサ15dは無人ヘリコプター1の現在の方位を検出する。超音波センサ15eは、低空飛行時の絶対高度の検出に用いられる。加速度センサ15bおよび地磁気センサ15dの各々から出力されるデータ(機体データ)を利用することにより、無人ヘリコプター1の現在の姿勢を判断することができる。飛行データおよび機体データは、信号処理回路15gに提供される。
【0050】
通信回路15fは、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う通信回路を有する。通信回路15fはさらに、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。通信回路15fは、飛行前においては飛行経路のデータを受信し、飛行時には無線によって地上と必要な通信を行う。飛行経路のデータは、無人ヘリコプター1が飛行すべき経路の座標および絶対高度の各データを含む。
【0051】
記憶装置15jは、信号処理回路15gの動作を制御するコンピュータプログラムを記憶している。記憶装置15jは、無人ヘリコプター1の飛行の制御および森林計測の制御を信号処理回路15gに実行させるためのコンピュータプログラムを記憶し得る。そのようなコンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリまたは光ディスク等)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して無人ヘリコプター1に提供され得る。コンピュータプログラムは、無線通信により無人ヘリコプター1に提供されてもよい。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
【0052】
信号処理回路15gは、記憶装置15jに記憶された制御プログラムを実行して無人ヘリコプター1を飛行させる。より具体的には信号処理回路15gは、上述した飛行データ、機体データ、エンジン回転数やスロットル開度などの運転状態データ等を監視しながら、予め用意された飛行経路に沿って無人ヘリコプター1を飛行させる。
【0053】
図4に示す例では、飛行制御ボックス15は、LiDARセンサ20と接続されている。LiDARセンサ20は、スキャン結果(時刻データ、方角データおよび距離データ等の組)を飛行制御ボックス15に出力する。測位モジュール15aから出力される無人ヘリコプター1の飛行位置を示す位置データと、LiDARセンサ20から出力されるスキャン結果とを用いて、例えば地理座標系で表現された計測対象物の位置を算出することができる。
【0054】
なお、LiDARセンサ20は、飛行制御ボックス15と接続されていなくてもよい。この場合、LiDARセンサ20のスキャン結果は、LiDARセンサ20内の記憶装置に記憶され得る。LiDARセンサ20のスキャン結果は、無線通信によりLiDARセンサ20から外部に出力されてもよい。飛行制御ボックス15とLiDARセンサ20とで電源が共有されてもよい。
【0055】
また、測位モジュール15aが飛行制御ボックス15とは独立して無人ヘリコプター1に設けられ、その測位モジュール15aから飛行制御ボックス15およびLiDARセンサ20のそれぞれに位置データが出力されてもよい。この場合、LiDARセンサ20のスキャン結果は、LiDARセンサ20内の記憶装置に記憶され得る。また、測位モジュール15aが出力した位置データと、LiDARセンサ20のスキャン結果とを用いた計測対象物の位置の算出を、LiDARセンサ20内のプロセッサが行う場合は、その算出結果をLiDARセンサ20内の記憶装置に記憶してもよい。
【0056】
無人ヘリコプター1の飛行および運用を管理するオペレータは、飛行状態を目視しながら、予め用意した飛行経路に沿って無人ヘリコプター1を飛行させてもよい。テールボディ3(図2)の後端部には、リモコン操縦機からの指令信号を受信するリモコン受信アンテナ13が設けられている。
【0057】
図2および図3を参照して、LiDARセンサ20は、例えば近赤外線のレーザパルス22を出射(放射)し、当該レーザパルス22の反射光を検出することにより、反射点までの距離を測定する光学機器である。
【0058】
例示的な実施形態ではLiDARセンサ20は機械回転方式であり、レーザパルス22の出射およびレーザパルス22の反射光の検出を行うヘッド23は、回転軸21を中心として回転する。ヘッド23が回転することで、360度全方位をスキャンすることができる。本実施形態では、LiDARセンサ20のスキャン可能範囲のうち無人ヘリコプター1の機体4等に遮られる範囲は計測結果に反映しない。記載の便宜上、図3では360度全方位に放射されるレーザパルス22のうちの一部のみを示している。本明細書では、LiDARセンサ20のヘッド23の回転を“LiDARセンサ20の回転”と表現する場合がある。
【0059】
LiDARセンサ20のヘッド23は、回転することにより出射口の方向を変化させ、所定角度ピッチα(rad)ごとに同時に複数個のレーザパルス22を出射する。図2では、一例として、LiDARセンサ20の回転軸21が通るある平面に沿って同時に出射されるN個のレーザパルス22を示している。記載の便宜上、パルス状ではなくビーム状でレーザパルス22を記載している。なお、「同時」は厳密に同じ時刻である必要はなく、概ね同じ時刻であることも含む。Nの値は任意であり、例えば、12、16、32または64であるが、Nはこれらの値に限定されない。LiDARセンサ20のヘッド23には、例えばN個のレーザ光源が並べられており、N個のレーザパルス22の出射口からレーザパルス22が出射される。レーザ光源は例えばレーザダイオードであるがこれに限定されない。
【0060】
図3を参照しながら、ある1つの出射口から出射されるレーザパルス22を説明する。LiDARセンサ20のヘッド23は、回転することにより出射口の方向を変化させ、所定角度ピッチα(rad)ごとにレーザパルス22を出射し、森林で反射した各レーザパルス22の反射光を検出する。これにより、当該所定角度ピッチαごとの方向における反射点までの距離のデータを得ることができる。所定角度ピッチαは固定値であってもよいし、可変値であってもよい。
【0061】
LiDARセンサ20としては、上述したようなレーザパルスの出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンするLiDARセンサが用いられてもよい。本明細書では、LiDARセンサ20の“回転”および“回転軸”は、このような“揺動”および“揺動軸”も含むとする。レーザパルスの出射方向を揺動させる場合の回転角度範囲は例えば180度以下であるが、それに限定されない。
【0062】
本実施形態では、LiDARセンサ20は、その回転軸21が無人ヘリコプター1の機体の前後方向を向くように搭載されている。回転軸21が臨む方向は任意であり、例えば、LiDARセンサ20は、回転軸21が無人ヘリコプター1の機体4の左右方向を向くように搭載されていてもよい。
【0063】
図5は、森林計測を行う無人ヘリコプター1を示す図である。図5に示す例では、森林54は斜面52に広がっている。斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。横方向からのレーザパルス22の照射では、基本的に日光を受けるために水平に生えている葉の間をレーザパルス22が通りやすくなる。レーザパルス22は樹木56の樹冠56aだけでなく、樹木56の幹56b、下層植生58および地表面59等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0064】
(森林状態推定システム)
次に、本実施形態に係る森林状態推定システム100を説明する。図6は、森林状態推定システム100を機能ブロック単位で示す機能ブロック図である。森林状態推定システム100は、データ取得部101、個数取得部102、推定部103、記憶部104およびモデル生成部105を備える。
【0065】
データ取得部101は、森林計測により得られた3次元点群データを外部装置から取得する。外部装置は、例えばLiDARセンサ20を搭載した無人ヘリコプター1、または無人ヘリコプター1から取得したデータを格納する任意の装置である。3次元点群データは、例えば、LiDARセンサ20を搭載した無人ヘリコプター1を飛行させて行う森林計測により得られる。3次元点群データは、樹冠点群、幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む。
【0066】
個数取得部102は、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定する。高度は、例えば絶対高度であり、樹木の根元の地表面からの高さである。例えば、個数取得部102は、3次元点群データからDTM(Digital Terrain Model:数値標高モデル)を生成し、3次元点群データからDTMを減算したデータを用いて、複数の点それぞれの絶対高度を決定する。なお、3次元点群データからDSM(Digital Surface Model:数値表層モデル)およびDTMを生成し、DSMからDTMを減算したデータを用いて、複数の点それぞれの絶対高度を決定してもよい。DSMからDTMを減算したデータは、DCHM(Digital Canopy Height Model)と称される。
【0067】
個数取得部102は、絶対高度を決定した複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数を取得する。
【0068】
推定部103は、所定の幅毎の点の個数に基づいて、森林の状態を推定する。例えば、推定部103は、森林が過密林分であるか否かを推定する。ユーザは、その推定結果に基づいて、間伐の要否を決定することができる。
【0069】
記憶部104は、所定の幅毎の点の個数と森林の状態をデータセットとして記憶する。例えば、データ取得部101は、森林計測により得られた3次元点群データと、その計測対象の森林の状態を示す森林状態情報とを外部装置から取得する。森林状態情報は、例えば人間が判定した森林の状態に関する情報を含み、後述する機械学習の教師データとして用いられる。
【0070】
個数取得部102は、上述したように、3次元点群データを用いて所定の幅毎の点の個数を取得する。個数取得部102は、所定の幅毎の点の個数と森林状態情報とをデータセットとして記憶部104に記憶させる。
【0071】
データ取得部101は、複数の森林それぞれの3次元点群データおよび森林状態情報を外部装置から取得する。個数取得部102は、複数の森林それぞれについて所定の幅毎の点の個数を取得し、複数の森林それぞれのデータセットを記憶部104に記憶させる。記憶部104には、複数のデータセットが記憶される。
【0072】
モデル生成部105は、記憶部104に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を所定の幅毎の点の個数、出力を森林の状態とする推定モデルを機械学習により生成する。推定モデルを生成する手法としては、公知の教師あり学習の手法を用いることができる。モデル生成部105は、生成した推定モデルを記憶部104に記憶させる。
【0073】
推定部103は、記憶部104から読み出した推定モデルを用いて、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することができる。推定部103は、機械学習により生成した推定モデルを用いる方法以外の方法で森林の状態を推定してもよい。例えば、人間が予め設定した判定基準に基づいて、森林の状態を推定してもよい。例えば、このような判定基準の情報は記憶部104に予め記憶されており、推定部103は、記憶部104から読み出した判定基準に基づいて、森林の状態を推定してもよい。
【0074】
記憶部104は、データセットおよび推定モデルの他にも、森林状態推定システム100による処理に必要な情報を記憶し得る。
【0075】
森林状態推定システム100は、例えば、ユーザ端末装置またはサーバコンピュータ(以下、「サーバ」と表記する)であり得る。ユーザ端末装置は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、スマートフォン、またはPDA(Personal digital assistant)である。サーバは、例えばクラウドサーバまたはエッジサーバである。森林状態推定システム100は、森林計測を支援する支援ツールとして機能する専用の装置であってもよい。
【0076】
図7は、森林状態推定システム100のハードウェア構成例を示すブロック図である。森林状態推定システム100は、入力装置110、表示装置120、通信IF130、記憶装置140、プロセッサ150、ROM160およびRAM170を備える。これらの構成要素は、バス180を介して相互に通信可能に接続される。
【0077】
入力装置110は、ユーザからの指示をデータに変換してコンピュータに入力するための装置である。入力装置110は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクまたはそれらの組み合わせである。表示装置120は、例えば、液晶ディスプレイまたはOLED(Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイである。表示装置120は、森林計測の結果等を表示し得る。
【0078】
通信IF130は、森林状態推定システム100と外部との間でデータ通信を行うための通信モジュールである。通信IF130は、有線通信および/または無線通信を行うことができる。通信IF130は、例えば、USB、IEEE1394(登録商標)、またはイーサネット(登録商標)などの通信規格に準拠した有線通信を行うことができる。通信IF130は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行うことができる。通信IF130は、BLE(Bluetooth Low Energy)またはLPWA(Low Power Wide Area)の通信方式に準拠した無線通信を行うことが可能な通信モジュールであってもよい。BLEまたはLPWAなどの通信方式を利用することにより、低消費電力で長距離かつ広範囲の通信を実現することができる。通信IF130は、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。
【0079】
記憶装置140は、主としてデータベースのストレージとして機能する。記憶装置140は、例えば磁気記憶装置、光学記憶装置、半導体記憶装置またはそれらの組み合わせである。光学記憶装置の例は、光ディスクドライブまたは光磁気ディスク(MD)ドライブなどである。磁気記憶装置の例は、ハードディスクドライブ(HDD)である。半導体記憶装置の例は、ソリッドステートドライブ(SSD)である。記憶装置140はクラウドストレージであってもよい。
【0080】
プロセッサ150は、半導体集積回路であり、例えば中央演算処理装置(CPU)を含む。プロセッサ150は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラによって実現され得る。プロセッサ150は、各種処理を実行するための命令群を記述した、ROM160に格納されるコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。
【0081】
プロセッサ150は、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ASSP(Application Specific Standard Product)、または、これら回路の中から選択される二つ以上の回路の組み合わせであってもよい。
【0082】
ROM160は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM160は、プロセッサ150の動作を制御するコンピュータプログラムを記憶している。ROM160は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合体であってもよい。複数の記録媒体の集合体の一部は取り外し可能なメモリであってもよい。
【0083】
RAM170は、ROM160に格納されたコンピュータプログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM170は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であってもよい。
【0084】
図6に示す各機能ブロックの処理は、ソフトウェアのモジュール単位でコンピュータプログラムに記述される。ただし、FPGAなどを用いる場合、これらの機能ブロックの全部または一部は、ハードウェア・アクセラレータとして実装され得る。
【0085】
森林状態推定システム100が行う処理を記述した命令群を含むコンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリまたは光ディスク等)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して森林状態推定システム100に提供され得る。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
【0086】
(森林の状態を推定する処理)
図8は、森林の状態を推定する処理の例を示すフローチャートである。図8に示す処理では、既に生成された推定モデルまたは予め設定された判定基準を用いて、森林の状態を推定する処理である。
【0087】
森林状態推定システム100の通信IF130は、森林計測により得られた3次元点群データを外部装置から受信する(ステップS10)。プロセッサ150は、通信IF130が受信した3次元点群データを例えば記憶装置140に記憶させる。
【0088】
プロセッサ150は、記憶装置140から3次元点群データを読み出し、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの絶対高度を決定する。上述したように、プロセッサ150は、例えば3次元点群データからDTM(数値標高モデル)を生成し、3次元点群データからDTMを減算して、複数の点それぞれの絶対高度を決定する。
【0089】
図9および図10は、3次元点群データの例を示す図である。森林が広がる地表面は、一般に斜面を含む。3次元点群データからDTMを減算することで、地表面を平坦化した3次元点群データが得られる。
【0090】
既存の地図データまたはDTMを利用するのではなく、最新の3次元点群データから決定したDTMを利用することにより、複数の点それぞれの絶対高度の高精度な値を得ることができる。
【0091】
プロセッサ150は、絶対高度を決定した複数の点を所定の高度の刻み幅で分ける(ステップS11)。高度の刻み幅は任意であり、例えば0.2m-1.0mであるがそれに限定されない。
【0092】
次に、プロセッサ150は、高度の所定の幅毎の点の個数を取得する(ステップS12)。図11および図12は、所定の幅毎の点の個数の例を示す高度ヒストグラムを示す。
【0093】
図11および図12それぞれの下側の高度ヒストグラムは点の個数を実数で示している。図11および図12それぞれの上側の高度ヒストグラムは点の個数を対数で示している。図11および図12に示す各高度ヒストグラムの縦軸は点の個数、横軸は高度である。
【0094】
プロセッサ150は、所定の幅毎の点の個数に基づいて、森林の状態を推定する(ステップS13)。森林の状態の推定処理において、プロセッサ150は、例えば、所定の高度の刻み幅で分けた複数の点を、高度が互いに異なる複数のグループに分ける。例えば、複数の点を、下層植生グループG1、幹グループG2および樹冠グループG3を含む複数のグループにグループ分けする。
【0095】
下層植生グループG1、幹グループG2および樹冠グループG3それぞれの高度範囲は、森林に生息する植物の種類に応じて設定され得る。各グループの高度範囲は、立木の疎密度、および間伐等の森林整備状況に応じて設定されてもよい。図11に示す例では、下層植生グループG1の高度範囲は0m以上1.5m未満、幹グループG2の高度範囲は1.5m以上21m未満、樹冠グループG3の高度範囲は21m以上35m未満である。図12に示す例では、下層植生グループG1の高度範囲は0m以上1.5m未満、幹グループG2の高度範囲は1.5m以上13m未満、樹冠グループG3の高度範囲は13m以上23m未満である。これらの数値は例であり、本発明の実施形態はこれらの数値に限定されない。
【0096】
プロセッサ150は、複数のグループG1、G2およびG3それぞれに含まれる点の個数に基づいて森林の状態を推定し得る。複数のグループG1、G2およびG3それぞれに含まれる点の個数は、下層植生および幹の存在、枝および葉の量などの植生を反映するため、森林に生息する植物の種類、量および形態等を推定することができる。
【0097】
プロセッサ150は、複数のグループG1、G2およびG3の間の点の個数の比に基づいて森林の状態を推定してもよい。複数のグループG1、G2およびG3の間の点の個数の比は、森林の状態を示す特徴的なパターンを含み、そのパターンから樹木の過密度合いおよび劣勢木の割合等を推定することができる。
【0098】
図9に示す3次元点群データおよび図11に示す高度ヒストグラムは、過密林分ではない健康な森林のデータを示している。図10に示す3次元点群データおよび図12に示す高度ヒストグラムは、過密林分のデータを示している。健康な森林の高度ヒストグラム(図11)と比較して、過密林分の高度ヒストグラム(図12)では、樹冠グループG3に含まれる点の個数に対する、下層植生グループG1および幹グループG2に含まれる点の個数の割合が小さいことが分かる。
【0099】
プロセッサ150は、例えば、樹冠グループG3に含まれる点の個数に対する、下層植生グループG1および幹グループG2に含まれる点の個数の割合が所定以下である場合、森林は過密林分であると推定する。例えば、下層植生グループG1および幹グループG2に含まれる点の個数が、樹冠グループG3に含まれる点の個数の5パーセント以下である場合、森林は過密林分であると推定する。5パーセントという数値は一例であり、それに限定されない。なお、このような割合は、樹冠、幹、下層植生等から反射してくるファーストパルスのみを考慮して求めてもよい。
【0100】
樹冠に対する下層植生および幹の割合が所定以下である場合は、森林は過密林分であると推定することができる。これにより、その森林は間伐を行うことが望ましいと判断することができる。
【0101】
また、幹グループG2における所定の幅毎の点の個数のばらつきの度合いに応じて、森林の状態を推定してもよい。過密林分では、生育状況が悪く高さの低い樹木が点在し、樹冠グループG3よりも低い高度における点の個数のばらつきが大きくなる場合がある。健康な森林の高度ヒストグラム(図11)と比較して、過密林分の高度ヒストグラム(図12)では、幹グループG2における所定の幅毎の点の個数のばらつきが大きいことが分かる。例えば、幹グループG2における所定の幅毎の点の個数のばらつきの度合いに着目することで、森林の状態を推定してもよい。
【0102】
また、樹冠グループG3および幹グループG2に含まれる点の個数に対する、下層植生グループG1に含まれる点の個数の割合に応じて、森林の状態を推定してもよい。下層植生の量が一定以上である場合、樹木の育成に適した肥えた土壌が形成され得る。下層植生グループG1に含まれる点の個数の割合に着目することで、森林の状態を推定することができる。
【0103】
プロセッサ150は、森林の状態の推定結果を示す情報を記憶装置140に記憶させる。森林状態推定システム100は、森林の状態の推定結果を示す情報を外部に出力してもよいし、表示装置120に表示してもよい。森林の状態の推定結果を表示装置120に表示することで、ユーザは森林の状態の推定結果を把握することができる。
【0104】
なお、プロセッサ150は、森林計測の対象を複数のエリアに区分し、エリアごとに所定の幅毎の点の個数を取得してもよい。図11および図12に示したような点群の高度ヒストグラムをエリア単位で取得することにより、場所に応じて異なり得る森林の状態を把握することができる。3次元点群データには、計測対象物の地理座標を示す位置情報が含まれている。プロセッサ150は、その位置情報を用いて3次元点群データを複数のエリアに区分し、エリアごとに所定の幅毎の点の個数を取得することができる。
【0105】
(推定モデルを生成する処理)
図13は、機械学習により推定モデルを生成する処理の例を示すフローチャートである。
【0106】
森林状態推定システム100の通信IF130は、森林計測により得られた3次元点群データと、その計測対象の森林の状態を示す森林状態情報とを外部装置から取得する。(ステップS20)。プロセッサ150は、通信IF130が受信した3次元点群データおよび森林状態情報を例えば記憶装置140に記憶させる。
【0107】
プロセッサ150は、記憶装置140から3次元点群データを読み出し、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの絶対高度を決定する。上述したように、プロセッサ150は、例えば3次元点群データからDTM(数値標高モデル)を生成し、3次元点群データからDTMを減算して、複数の点それぞれの絶対高度を決定する。
【0108】
図8に示すステップS11の処理と同様に、プロセッサ150は、絶対高度を決定した複数の点を所定の高度の刻み幅で分ける(ステップS21)。図8に示すステップS12の処理と同様に、プロセッサ150は、所定の幅毎の点の個数を取得する(ステップS22)。
【0109】
プロセッサ150は、所定の幅毎の点の個数と森林状態情報とをデータセットとして記憶部104に記憶させる(ステップS23)。
【0110】
森林状態推定システム100は、複数の森林それぞれの3次元点群データおよび森林状態情報を外部装置から取得する。プロセッサ150は、複数の森林それぞれについて所定の幅毎の点の個数を取得し、複数の森林それぞれのデータセットを記憶部104に記憶させる。記憶部104には、複数のデータセットが記憶される。
【0111】
プロセッサ150は、記憶部104に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を所定の幅毎の点の個数、出力を森林の状態とする推定モデルを機械学習により生成する(ステップS24)。推定モデルを生成する手法としては、公知の教師あり学習の手法(二値分類または多クラス分類等)を用いることができる。例えば、複数種類の健康な森林における点の個数の分布のパターン、および複数種類の過密林分における点の個数の分布のパターンから推定モデルを生成する。モデル生成部105は、生成した推定モデルを記憶部104に記憶させる。
【0112】
上述の森林の状態を推定する処理において、プロセッサ150は、記憶部104から読み出した推定モデルを用いて、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することができる。機械学習により生成した推定モデルを用いることで、所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)の分布のパターンに潜む特徴量と森林の状態との間にある相関関係等を利用することが可能になる。
【0113】
次に、森林状態推定システム100のハードウェア構成の他の例を説明する。
【0114】
図14は、森林状態推定システム100のハードウェア構成の他の例を示す図である。図14に示す例において、森林状態推定システム100は、クラウドサーバ201および一つ以上のユーザ端末装置202を備える。クラウドサーバ201およびユーザ端末装置202のそれぞれは、例えば図7に示したハードウェア構成を有する。複数のユーザ端末装置202がローカルエリアネットワーク(LAN)を介して接続されていてもよい。クラウドサーバ201と個々のユーザ端末装置202とは、ネットワーク210を介して互いに通信可能に接続され得る。ネットワーク210は例えばインターネットであるが、それに限定されない。
【0115】
上述した「森林の状態を推定する処理」および「推定モデルを生成する処理」は、クラウドサーバ201とユーザ端末装置202とが協働して行ってもよい。また、これらの処理は、複数のユーザ端末装置202が協働して行ってもよい。
【0116】
(劣性木の本数の推定)
次に、森林内の劣性木の本数を推定する方法を説明する。図15は、劣性木561を含む森林54を示す図である。
【0117】
LiDARセンサ20が設けられた無人ヘリコプター1を飛行させて、森林の上空の比較的高い位置から森林計測を行った場合、レーザパルス22は主に樹冠で反射され、樹冠点群を含む3次元点群データが得られる。3次元点群データを用いて樹冠の数を算出することで、計測エリアの樹木の本数の情報を得ることができる。
【0118】
一方、劣性木561は健康な樹木560と比較して高さが低く、上空から森林を見たときには健康な樹木560の樹冠の下に隠れてしまって劣性木561の存在を確認できない場合が多い。劣性木561が健康な樹木560の樹冠の下に隠れてしまっている場合、樹冠の数から算出した樹木の本数には、劣性木561の本数は含まれていない。
【0119】
上述したように、LiDARセンサ20が設けられた無人ヘリコプター1を比較的低い高度で飛行させることにより、LiDARセンサ20から出射されたレーザパルスは、樹木の幹にも到達し、幹点群を含む3次元点群データを得ることができる。この幹点群は、健康な樹木560の幹および劣性木561の幹の両方の点群を含んでおり、幹点群から幹の数を算出することができる。
【0120】
算出した幹の数には劣性木561の幹の数が含まれている。一方、劣性木561が健康な樹木560の樹冠の下に隠れてしまっている場合、上記の算出した樹冠の数には劣性木561の樹冠の数は含まれていない。このため、「算出した幹の数」から「算出した樹冠の数」を減算することで、計測エリアにある劣性木561の本数を推定することができる。
【0121】
例えば、プロセッサ150(図7)は、3次元点群データから樹冠の数および幹の数を算出する。プロセッサ150は、「算出した幹の数」から「算出した樹冠の数」を減算することで、計測エリアにある劣性木561の本数を算出することができる。劣性木561の本数の情報に基づいて、森林の状態を推定することができる。
【0122】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0123】
本発明のある実施形態に係る森林状態推定システム100は、森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部101と、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得する個数取得部102と、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する推定部103と、を備える。
【0124】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【0125】
ある実施形態において、3次元点群データは、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データであってもよい。
【0126】
ライダーセンサを搭載した無人航空機を比較的低い高度(例えば絶対高度150m以下、好ましくは絶対高度80m以下)で飛行させることにより、ライダーセンサから出射されたレーザパルスは、樹木の樹冠だけでなく、樹木の幹および下層植生等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群および下層植生点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0127】
ある実施形態において、推定部103は、3次元点群データから数値標高モデルを決定し、数値標高モデルを用いて複数の点それぞれの高度を算出してもよい。
【0128】
既存の地図データまたは数値標高モデルを利用するのではなく、最新の3次元点群データから決定した数値標高モデルを利用することにより、複数の点それぞれの高度の高精度な値を得ることができる。
【0129】
ある実施形態において、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれを水平面に投影したときの水平面における複数の点の個数密度が100個/m以上であってもよい。
【0130】
点群の密度を高めることにより、樹冠よりも低い位置から取得できる情報量を増加させることができ、森林の状態をより詳細に把握することができる。
【0131】
ある実施形態において、個数取得部102は、森林計測の対象を複数のエリアに区分し、エリアごとに所定の幅毎の点の個数を取得してもよい。
【0132】
点群の高度ヒストグラムをエリア単位で取得することにより、場所に応じて異なり得る森林の状態を把握することができる。
【0133】
ある実施形態において、推定部103は、所定の高度の刻み幅で分けた複数の点を、高度が互いに異なる複数のグループであって、下層植生グループG1、幹グループG2および樹冠グループG3を含む複数のグループにグループ分けし、複数のグループそれぞれに含まれる点の個数に基づいて森林の状態を推定してもよい。
【0134】
複数のグループそれぞれに含まれる点の個数は、下層植生および幹の存在、枝および葉の量などの植生を反映するため、森林に生息する植物の種類、量および形態等を推定することができる。
【0135】
ある実施形態において、推定部103は、複数のグループ間の点の個数の比に基づいて森林の状態を推定してもよい。
【0136】
複数のグループそれぞれに含まれる点の個数の比率は、森林の状態を示す特徴的なパターンを含み、そのパターンから樹木の過密度合いおよび劣勢木の割合等を推定することができる。
【0137】
ある実施形態において、推定部103は、樹冠グループG3に含まれる点の個数に対する、下層植生グループG1および幹グループG2に含まれる点の個数の割合が所定以下である場合、森林は過密林分であると推定してもよい。
【0138】
樹冠に対する下層植生および幹の割合が所定以下である場合は、森林は過密林分であると推定することができる。これにより、その森林は間伐を行うことが望ましいことを判断することができる。
【0139】
ある実施形態において、森林状態推定システム100は、所定の幅毎の点の個数と森林の状態をデータセットとして記憶する記憶部104と、記憶部104に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を所定の幅毎の点の個数、出力を森林の状態とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部105と、をさらに備え、推定部103は、推定モデルを用いて、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定してもよい。
【0140】
機械学習により生成した推定モデルを用いることで、所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)の分布のパターンに潜む特徴量と森林の状態との間にある相関関係等を利用することが可能になる。
【0141】
本発明のある実施形態に係る森林状態推定システム100は、森林計測により得られた3次元点群データを用いて森林の状態を推定するシステムであって、プロセッサ150と、プロセッサ150の動作を制御するプログラムを記憶する記憶装置140と、を備え、プロセッサ150は、プログラムに従って、森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、を実行する。
【0142】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【0143】
本発明のある実施形態に係る森林状態推定方法は、森林計測により得られた3次元点群データを用いて森林の状態を推定する方法であって、森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、を実行する。
【0144】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【0145】
本発明のある実施形態に係るコンピュータプログラムは、森林計測により得られた3次元点群データを用いた森林の状態の推定をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、森林計測により得られた3次元点群データを取得すること、3次元点群データに含まれる複数の点それぞれの高度を決定し、複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、高度の所定の幅毎の点の個数を取得すること、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定すること、をコンピュータに実行させる。
【0146】
本発明のある実施形態によれば、森林計測により得られた3次元点群データに含まれる複数の点を所定の高度の刻み幅で分け、所定の幅毎の点の個数に基づいて森林の状態を推定する。所定の幅毎の点の個数(点群の高度ヒストグラム)は、森林における劣勢木の分布などの特徴を示す情報を含んでいる。このため、所定の幅毎の点の個数から森林の状態を推定することにより、森林の健康状態その他の状態をモニタすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の実施形態によれば、森林の状態を簡便に把握することが可能な技術が提供される。
【符号の説明】
【0148】
1:無人ヘリコプター、 2:メインボディ、 3:テールボディ、 4:機体、 5:メインロータ、 6:テールロータ、 7:ラジエータ、 8:エンジン、 9:発電装置、 10:コントロールパネル、 11:表示灯、 12:スキッド、 13:リモコン受信アンテナ、 15:飛行制御ボックス、 15a:測位モジュール、 15b:加速度センサ、 15c:気圧センサ、 15d:地磁気センサ、 15e:超音波センサ、 15f:通信回路、 15g:信号処理回路、 15j:記憶装置、 15k:内部バス、 20:LiDARセンサ、 21:回転軸、 22:レーザパルス、 23:ヘッド、 25:ブラケット、 50:計測対象エリア、 52:斜面、 54:森林、 56:樹木、 56a:樹冠、 56b:幹、 58:下層植生、 59:地表面、 100:森林状態推定システム、 101:データ取得部、 102:個数取得部、 103:推定部、 104:記憶部、 105:モデル生成部、 110:入力装置、 120:表示装置、 130:通信IF、 140:記憶装置、 150:プロセッサ、 160:ROM、 170:RAM、 180:バス、 201:クラウドサーバ、 202:ユーザ端末装置、 210:ネットワーク、 G1:下層植生グループ、 G2:幹グループ、 G3:樹冠グループ、 560:健康な樹木、 561:劣性木
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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