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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122385
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】燃料フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/42 20190101AFI20220816BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
F02M37/42
B01D35/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019575
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡志
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA16
4D116BB01
4D116BC02
4D116BC03
4D116BC77
4D116FF15B
4D116GG11
4D116QB05
4D116QB16
4D116QB22
4D116QB33
4D116QB34
4D116VV02
(57)【要約】
【課題】フィルタ部材の端縁部の露出を全面的に抑制する。
【解決手段】燃料フィルタ装置10は、厚さ方向に圧縮可能なシート状の濾材12と、濾材12の端縁部13を保持する枠状のフレーム部材20と、フレーム部材20に濾材12の端縁部13を一体的に結合する結合部材30と、を備える。濾材12は貫通孔14を有する。フレーム部材20は、端縁部13の下面13cに面する取付面24、及び、貫通孔14に対応する係合凹部25を有する。結合部材30は、圧縮状態の端縁部13の上面13bに沿って延在する延在部31と、係合凹部25に係合された係合凸部32と、貫通孔14内において延在部31と係合凸部32とを接続する接続部33と、を一体に有する。延在部31は端縁部13の端面13aを覆う被覆部31cを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に圧縮可能なシート状のフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の端縁部を保持する枠状の保持部材と、
前記保持部材に前記フィルタ部材の端縁部を一体的に結合する結合部材と、
を備える燃料フィルタ装置であって、
前記フィルタ部材は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有しており、
前記保持部材は、前記端縁部の一方の面に面する取付面、及び、前記貫通孔に対応する係合凹部を有しており、
前記結合部材は、圧縮状態の前記端縁部の他方の面に沿って延在する延在部と、前記係合凹部に係合された係合凸部と、前記貫通孔内において前記延在部と前記係合凸部とを接続する接続部と、を一体に有しており、
前記延在部は前記端縁部の端面を覆う被覆部を有する、燃料フィルタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料フィルタ装置であって、
前記係合凹部は、深さ方向の少なくとも一部において開口側から底側に向かって拡径するテーパ状の壁面を有する、燃料フィルタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料フィルタ装置であって、
前記係合凹部は、前記保持部材の外側部に隣接しかつ該係合凹部の軸方向に沿って同一径をなすストレート状のストレート壁面を有する、燃料フィルタ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の燃料フィルタ装置であって、
前記フィルタ部材の前記端縁部において、前記貫通孔よりも端面側の部分の厚さは該端面側とは反対側の部分の厚さよりも厚い、燃料フィルタ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の燃料フィルタ装置であって、
前記保持部材は、前記被覆部の外側面に沿って延在する突起部を有する、燃料フィルタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料フィルタ装置であって、
前記突起部は、前記被覆部の外側部を係止する係止部を有する、燃料フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は燃料を濾過する燃料フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されたフィルタ装置がある。そのフィルタ装置は、シート状のフィルタ部材をインサートして枠状の保持部材が成形されている。保持部材には、フィルタ部材の端縁部を両面側(厚さ方向両側)から挟み込む一対の係合凹部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-305979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフィルタ装置によると、保持部材の成形時の成形材(溶融樹脂)の流れによっては、係合凹部の形成による薄肉部分からフィルタ部材の端縁部の一部、例えばフィルタ部材を所定形状に切断した際に生じる切り口の面である端面を含む部分が露出するおそれがあり、この点で改善の余地がある。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、フィルタ部材の端縁部の露出を全面的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、厚さ方向に圧縮可能なシート状のフィルタ部材と、前記フィルタ部材の端縁部を保持する枠状の保持部材と、前記保持部材に前記フィルタ部材の端縁部を一体的に結合する結合部材と、を備える燃料フィルタ装置であって、前記フィルタ部材は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有しており、前記保持部材は、前記端縁部の一方の面に面する取付面、及び、前記貫通孔に対応する係合凹部を有しており、前記結合部材は、圧縮状態の前記端縁部の他方の面に沿って延在する延在部と、前記係合凹部に係合された係合凸部と、前記貫通孔内において前記延在部と前記係合凸部とを接続する接続部と、を一体に有しており、前記延在部は前記端縁部の端面を覆う被覆部を有する、燃料フィルタ装置である。
【0008】
第1の手段によると、フィルタ部材の端縁部が結合部材の延在部及び係合凸部並びに接続部により保持部材に一体的に結合される。フィルタ部材の端縁部の一方の面が保持部材の取付面により覆われる。また、フィルタ部材の端縁部の端面及び他方の面が被覆部を有する延在部によって覆われる。よって、フィルタ部材の端縁部の露出を全面的に抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の燃料フィルタ装置であって、前記係合凹部は、深さ方向の少なくとも一部において開口側から底側に向かって拡径するテーパ状の壁面を有する、燃料フィルタ装置である。
【0010】
第2の手段によると、保持部材の係合凹部のテーパ状の壁面に結合部材の係合凸部がアンカー状に係合することにより、保持部材からの結合部材の脱落を抑制することができる。
【0011】
第3の手段は、第2の手段の燃料フィルタ装置であって、前記係合凹部は、前記保持部材の外側部に隣接しかつ該係合凹部の軸方向に沿って同一径をなすストレート状のストレート壁面を有する、燃料フィルタ装置である。
【0012】
第3の手段によると、フレーム部材の樹脂成形において成形型からフレーム部材を抜き外す際の応力いわゆる離型抵抗を低減することができる。
【0013】
第4の手段は、第1~3のいずれか1つの手段の燃料フィルタ装置であって、前記フィルタ部材の前記端縁部において、前記貫通孔よりも端面側の部分の厚さは該端面側とは反対側の部分の厚さよりも厚い、燃料フィルタ装置である。
【0014】
第4の手段によると、フィルタ部材の端縁部の端面を延在部の被覆部により効果的に覆うことができる。
【0015】
第5の手段は、第1~4のいずれか1つの手段の燃料フィルタ装置であって、前記保持部材は、前記被覆部の外側面に沿って延在する突起部を有する、燃料フィルタ装置である。
【0016】
第5の手段によると、保持部材の突起部により被覆部の外側面を覆うことができる。
【0017】
第6の手段は、第5の手段の燃料フィルタ装置であって、前記突起部は、前記被覆部の外側部を係止する係止部を有する、燃料フィルタ装置である。
【0018】
第6の手段によると、突起部の係止部により被覆部の外側部が係止されることにより、被覆部の脱落を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に開示の技術によると、フィルタ部材の端縁部の露出を全面的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1にかかる燃料フィルタ装置を示す平面図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3】結合部材の要部を示す断面図である。
図4】結合部材のインサート成形前における濾材を示す平面図である。
図5図4のV-V線矢視断面図である。
図6】フレーム部材を示す平面図である。
図7】フレーム部材の係合凹部を示す平面図である。
図8図7のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9】成形型の一部を示す断面図である。
図10】結合部材の成形工程1を示す断面図である。
図11】結合部材の成形工程2を示す断面図である。
図12】結合部材の成形工程3を示す断面図である。
図13】実施形態2にかかるフレーム部材の係合凹部を示す平面図である。
図14図13のXIV-XIV線矢視断面図である。
図15】実施形態3にかかるフレーム部材の突起部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。
【0022】
[実施形態1]
本実施形態の燃料フィルタ装置は、自動車等の車両の燃料タンク内の燃料を内燃機関(エンジン)へ供給する燃料供給装置に備えられている。図1は燃料フィルタ装置を示す平面図、図2図1のII-II線矢視断面図である。説明の都合上、燃料フィルタ装置に係る方位を各図に矢印で示すとおりに定めるが、燃料フィルタ装置の配置方向を特定するものではない。
【0023】
(燃料フィルタ装置の概要)
図1に示すように、燃料フィルタ装置10の外形は、平面視で横長四角形状に形成されている。図2に示すように、燃料フィルタ装置10は、濾材12とフレーム部材20と結合部材30とを備えている。フレーム部材20の内周部に濾材12の端縁部13が載置状態で保持されている。結合部材30は、濾材12及びフレーム部材20をインサートして樹脂成形(インサート成形)されている。結合部材30によりフレーム部材20に濾材12の端縁部13が圧縮状態で一体的に結合されている。燃料フィルタ装置10は平面視で横長四角形状であるが、説明の都合上、平面視のフレーム部材20の中央部から外方へ向かう方向を径方向外方といい、外方から中央部へ向かう方向を径方向内方といい、フレーム部材20の周りを周方向という。
【0024】
(濾材12)
図4は結合部材のインサート成形前における濾材を示す平面図、図5図4のV-V線矢視断面図である。図4に示すように、濾材12は、横長四角形状のシート状に形成されている。濾材12は、複数枚の樹脂製の不織布を積層してなる多層構造を有しており、厚さ方向(表裏方向)に圧縮可能なシート状をなしている。端縁部13の端面13aは、濾材12の原材料を所定形状に切断した際に生じる切り口で破断面である。端縁部13には、厚さ方向に貫通する円形状の貫通孔14が形成されている(図5参照)。貫通孔14は、濾材12の周方向に所定の間隔を隔てて多数個配置されている。濾材12の端縁部13は、濾材12の全周に亘る外周縁部に相当する。貫通孔14の内周面は、貫通孔14を打ち抜きした際に生じる切り口で破断面である。濾材12は本明細書でいう「フィルタ部材」に相当する。
【0025】
(フレーム部材20)
図6はフレーム部材を示す平面図、図7はフレーム部材の係合凹部を示す平面図、図8図7のVIII-VIII線矢視断面図である。図6に示すように、フレーム部材20は、横長四角形枠状に形成されている。図8に示すように、フレーム部材20は、樹脂製で、断面略Z字状に形成されている。フレーム部材20は、断面において、水平状の主板部21と、主板部21の内端部から下方へ突出する内フランジ部22と、主板部21の外端部から上方へ突出する外フランジ部23と、を有する(図7参照)。
【0026】
主板部21の上面の内周部には水平状の取付面24が形成されている。取付面24の幅方向(図8において左右方向)の中央部には係合凹部25が形成されている(図7参照)。係合凹部25は、凡そ、その開口側(図8において上側)から底側(同、下側)に向かって拡径するテーパ穴状に形成されている。詳しくは、係合凹部25は、開口側から底側に向かって拡径するテーパ状すなわちアンダーカット状のアンダーカット壁面25aと、係合凹部25の開口端部においてアンダーカット壁面25aの最縮径部(上端部)から上方に向かって拡径する拡径壁面25cと、を有する。係合凹部25は、濾材12の各貫通孔14(図4参照)に対応する位置にそれぞれ配置されている(図6参照)。すなわち、係合凹部25の軸線と貫通孔14の軸線は同一軸線L又は略同一軸線L上に配置されている(図2参照)。また、本実施形態では、係合凹部25の最小穴径25dよりも貫通孔14の口径14d(図5参照)が僅かに大きい。アンダーカット壁面25aは本明細書でいう「テーパ状の壁面」に相当する。
【0027】
主板部21の上面の外周部には、断面山形状の突起部26が突出されている。突起部26の頂部26aと取付面24とは、断面円弧状の内側傾斜面26bによりなだらかに接続されている。突起部26の頂部26aと外フランジ部23の内側面の下端部とは、断面直線状の外側傾斜面26cにより接続されている。フレーム部材20において、係合凹部25を除いた断面形状は周方向に一定又は略一定である(図6参照)。フレーム部材20は本明細書でいう「保持部材」に相当する。
【0028】
(結合部材30)
図2に示すように、結合部材30は、樹脂製で、延在部31と係合凸部32と接続部33とを一体に有する。延在部31は、主部31aと張出部31bと被覆部31cとを有する。主部31aは断面台形形状に形成されている。
【0029】
図1に示すように、主部31aは、濾材12における圧縮状態の端縁部13の上面13b(図2参照)に沿って周方向に延在している。主部31aの周方向に延在する中心線CLは、濾材12の貫通孔14及びフレーム部材20の係合凹部25の同一軸線L(図2参照)と直交状に交差している。図3は結合部材の要部を示す断面図である。
【0030】
図3に示すように、主部31aの下面の横幅(図3において左右方向の幅)は、濾材12の貫通孔14の口径14d(図5参照)よりも大きい。張出部31bは、主部31aの下端部から濾材12の端縁部13の端面13a付近に向けてフランジ状に突出されている。主部31a及び張出部31bにより、濾材12における圧縮状態の端縁部13の上面13bが押圧され、その端縁部13の下面13cがフレーム部材20の取付面24に面接触状に押し付けられている。端縁部13の下面13cは本明細書でいう「一方の面」に相当する。端縁部13の上面13bは本明細書でいう「他方の面」に相当する。なお、張出部31bは主部31aの一部とみなすこともできる。
【0031】
張出部31bの先端部に被覆部31cが設けられている。被覆部31cは、濾材12における圧縮状態の端縁部13の端面13aとフレーム部材20の突起部26との間においてその端面13aを覆うように形成されている。また、延在部31の断面形状は周方向に一定である(図1参照)。
【0032】
また、濾材12の端縁部13において、貫通孔14よりも端面13a側の部分(外周部という)13eの厚さt1は、その端面13a側とは反対側の部分(内周部という)13dの厚さt2よりも僅かに厚い。すなわち、厚さt1,t2がt1>t2の関係に設定されている。
【0033】
係合凸部32は、フレーム部材20の各係合凹部25内を埋めるように形成されている。これにより、係合凸部32が係合凹部25に係合されている。
【0034】
接続部33は、濾材12の貫通孔14内を埋めるように形成されている。接続部33により延在部31の主部31aと係合凸部32とが一体的に接続されている。また、接続部33により、貫通孔14の内周面である破断面が覆われている。
【0035】
(成形型)
次に、濾材12及びフレーム部材20をインサートして結合部材30の樹脂成形を行う成形型を説明する。図9は成形型の一部を示す断面図である。図9に示すように、成形型40は、固定型としての上型41と、可動型としての下型46と、を備えている。上型41は、結合部材30の延在部31(図2参照)を形成する成形凹部42を有する。成形凹部42は、内周側壁部43と外周側壁部44との間に形成されている。内周側壁部43の下面43aは、外周側壁部44の下面44aよりも僅かに低い位置に配置されている。上型41は、溶融樹脂を射出するゲート(不図示)を有する。下型46は、フレーム部材20を嵌め込み状に受け入れる段付き状の嵌合凹部47を有する。
【0036】
(結合部材30の成形工程)
次に、成形型40を用いて結合部材30を成形する成形工程を説明する。図10~12は結合部材の成形工程を示す断面図である。
(成形工程1)
図10に示すように、下型46の嵌合凹部47にフレーム部材20を嵌合させる。嵌合凹部47の上面に主板部21が載置され、嵌合凹部47の内側面に外フランジ部23がほとんど隙間無く嵌合される。続いて、フレーム部材20の取付面24上に濾材12の端縁部13を載置させる。
【0037】
(成形工程2)
次に、図11に示すように、上型41に下型46を上動させることにより型締めする。これにより、上型41と下型46との間にキャビティ40aが形成される。また、上型41の外周側壁部44の下面44aの外周部にフレーム部材20の突起部26の頂部26aが当接される。また、上型41の外周側壁部44の外側面と、それに対向する下型46の側面と、の間の空間部に、フレーム部材20の外フランジ部23が配置される。
【0038】
また、上型41の内周側壁部43の下面43aと、その下面43aに対向するフレーム部材20の取付面24の内周部と、により、濾材12の端縁部13の内周部13dが圧縮される。端縁部13の内周部13dの圧縮率は、溶融樹脂が内周部に浸み込まない又はほとんど浸み込まない程度とする。
【0039】
また、上型41の外周側壁部44の下面44aと、その下面44aに対向するフレーム部材20の取付面24の外周部と、により、濾材12の端縁部13の外周部13eが圧縮される。端縁部13の外周部13eの圧縮率は、その内周部13dの圧縮率に比べて低い。
【0040】
(成形工程3)
次に、図12に示すように、溶融樹脂(結合部材30と同一符号を付す)30が所定の成形圧をもって上型41のゲートからキャビティ40a(図11参照)内に射出される。その溶融樹脂30は、上型41の成形凹部42、濾材12の貫通孔14及びフレーム部材20の係合凹部25に充填される。これにより、成形凹部42内に充填された溶融樹脂30により延在部31の主部31aが形成される。また、係合凹部25内に充填された溶融樹脂30により係合凸部32が形成される。また、貫通孔14内に充填された溶融樹脂30により接続部33が形成される。
【0041】
さらに、成形圧が高まると、溶融樹脂30は、濾材12の端縁部13の外周部13eの上面を下方へ圧縮しつつ流動し、端縁部13の端面13aとフレーム部材20の突起部26との間に充填される。これにより、上型41の外周側壁部44と端縁部13の外周部13eとの間に充填された溶融樹脂30により張出部31bが形成されると共に、フレーム部材20の突起部26と端縁部13の端面13aとの間に充填された溶融樹脂30により被覆部31cが形成される。このとき、フレーム部材20の突起部26により溶融樹脂30の径方向外方(図12において左方)への流出が堰き止められる。また、溶融樹脂30は、濾材12の破断面である貫通孔14の内周面及び端面13aに浸み込むことで、当該破断面を封止する。
【0042】
(成形工程4)
その後、冷却時間を経た後、上型41から下型46を型開きして、燃料フィルタ装置10(図2参照)を取り出せばよい。
【0043】
(実施形態1の作用・効果)
本実施形態によると、濾材12の端縁部13が結合部材30の延在部31及び係合凸部32並びに接続部33によりフレーム部材20に一体的に結合される。濾材12の端縁部13の下面13cがフレーム部材20の取付面24により覆われる。また、濾材12の端縁部13の端面13a及び上面13bが被覆部31cを有する延在部31によって覆われる。よって、濾材12の端縁部13の露出を全面的に抑制することができる。これにより、端縁部13の端面13aの露出による切りくずの発生及び切りくずの脱落を抑制することができる。
【0044】
また、フレーム部材20の係合凹部25のアンダーカット壁面25aに結合部材30の係合凸部32がアンカー状に係合することにより、フレーム部材20からの結合部材30の脱落を抑制することができる。すなわち、濾材12の固定強度の低下を抑制することができる。また、例えば、フレーム部材20と結合部材30とをかしめ等で接合する場合と異なり、バリの発生及びバリの脱落を抑制することができる。また、係合凹部25の開口端部に形成された拡径壁面25cにより、係合凹部25内へ溶融樹脂をスムーズに流入させることができる。
【0045】
また、濾材12の端縁部13において、外周部13eの厚さt1は内周部13dの厚さt2よりも僅かに厚い。したがって、濾材12の端縁部13の端面13aを延在部31の被覆部31cにより効果的に覆うことができる。詳しくは、厚さt1が厚さt2より厚いと、厚さt1が厚さt2と同じか厚さt2より薄い場合に比べて、端面13aへの溶融樹脂の浸み込みが良いため、端面13aを被覆部31cにより効果的に覆うことができる。
【0046】
また、フレーム部材20の突起部26により被覆部31cの外側面(外周面)を覆うことができる。また、突起部26により、溶融樹脂30の成形圧による流れを突起部26により堰き止めることができる。
【0047】
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1のフレーム部材20の係合凹部25に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。図13はフレーム部材の係合凹部を示す平面図、図14図13のXIV-XIV線矢視断面図である。図14に示すように、フレーム部材20の係合凹部25には、フレーム部材20の外側部(図14において左側部)に隣接しかつ係合凹部25の軸方向(図14において上下方向)に沿って同一径をなすストレート状のストレート壁面25bが形成されている(図13参照)。
【0048】
本実施形態によると、フレーム部材20の樹脂成形において成形型(不図示)からフレーム部材20を抜き外す際の応力いわゆる離型抵抗を低減することができる。これにより、フレーム部材20の離型時の割れ等の破損の発生を抑制することができる。
【0049】
また、ストレート壁面25bがフレーム部材20の径方向外側に配置されているため、フレーム部材20の成形後の冷却による径方向内方への収縮を利用して、フレーム部材20の離型抵抗を緩和することができる。
【0050】
また、結合部材30が成形後の冷却により径方向内方へ収縮するため、ストレート壁面25bが形成されていても、係合凹部25に対する係合凸部32の係合強度がほとんど低下することがない。
【0051】
[実施形態3]
本実施形態は、実施形態1のフレーム部材20の突起部26に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。図15はフレーム部材の突起部を示す断面図である。図15に示すように、フレーム部材20の突起部26の頂部26aを含む周辺部を径方向内方(図15において右方)へ傾斜させることで、被覆部31cの外側部の上面側に係止する係止部27が形成されている。係止部27は、成形型40(図9参照)の型締めによる頂部26a付近の塑性変形により形成されている。
【0052】
本実施形態によると、突起部26の係止部27により被覆部31cの外側部の上面側が係止されることにより、被覆部31cの脱落を抑制することができる。なお、係止部27はフレーム部材20の成形と同時に形成してもよい。
【0053】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、燃料フィルタ装置10の外形形状は、横長四角形状に限らず、円形状、楕円形状、三角形状、五角形状、異形形状等でもよい。また、フレーム部材20は、樹脂以外の材料、例えば金属材料でもよい。また、濾材12は、樹脂以外の材料、例えば織物で形成してもよい。また、濾材12の貫通孔14は、円形状に限らず、楕円形状、三角形状、四角形状、五角形状、異形形状等でもよい。また、係合凹部25は、テーパ穴以外の形状、例えば角孔、ねじ孔等でもよい。また、係合凹部25のアンダーカット壁面(テーパ状の壁面)25aは、深さ方向の少なくとも一部に形成されていればよく、深さ方向の任意の部位に形成してもよいし、あるいは、深さ方向全体に亘って形成してもよい。また、実施形態では、濾材12の端縁部13において外周部13eの厚さt1と内周部13dの厚さt2をt1>t2の関係に設定したが、t1≦t2の関係に設定してもよい。また、本明細書に開示の技術は、燃料以外の液体、気体等のフィルタ装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 燃料フィルタ装置
12 濾材(フィルタ部材)
13 端縁部
13a 端面
13b 上面(他方の面)
13c 下面(一方の面)
13d 内周部(貫通孔の端面側とは反対側の部分)
13e 外周部(貫通孔よりも端面側の部分)
14 貫通孔
20 フレーム部材(保持部材)
24 取付面
25 係合凹部
25a アンダーカット壁面(テーパ状の壁面)
25b ストレート壁面
26 突起部
27 係止部
30 結合部材
31 延在部
31c 被覆部
32 係合凸部
33 接続部
t1,t2 厚さ
図1
図2
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図15