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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122400
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019597
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
(72)【発明者】
【氏名】水口 健
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB23
5H730DD04
5H730EE08
5H730EE22
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】従来よりもスイッチング損失が低減されたスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るスイッチング電源装置10は、一次巻線Tおよび二次巻線Tを有するトランスTと、オン状態とされることにより一次巻線Tに励磁電流を通流させる第1スイッチング素子Qと、二次巻線Tの一端と出力部12pとの間に設けられたチョークコイルLとを備えている。チョークコイルLは、直列接続された第1コイルLおよび第2コイルLからなる。第2コイルLは、第1スイッチング素子Qがオン状態とされてから予め定められた時間が経過するまでの間は短絡状態とされ、その他のときは非短絡状態とされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線および二次巻線を有するトランスと、オン状態とされることにより前記一次巻線に励磁電流を通流させる第1スイッチング素子と、前記二次巻線の一端と出力部との間に設けられたチョークコイルとを備えたスイッチング電源装置であって、
前記チョークコイルは、直列接続された第1コイルおよび第2コイルからなり、
前記第2コイルは、前記第1スイッチング素子がオン状態とされてから予め定められた時間が経過するまでの間は短絡状態とされ、その他のときは非短絡状態とされる
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記第2コイルに並列接続された第2スイッチング素子と、
前記予め定められた時間を計測するタイマー部を含む、前記第2スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替える二次側駆動部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第2コイルのインダクタンス値が前記第1コイルのインダクタンス値よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関し、特に、出力側にチョークコイルが設けられたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォワードコンバータと呼ばれるスイッチング電源装置が知られている。図6に示すように、このタイプのスイッチング電源装置100は、入力部101p,101nに供給される直流電力を所望の直流電力に変換して出力部102p,102nから出力するものであって、主に、一次巻線Tおよび二次巻線Tを有するトランスTと、オン状態とされることにより一次巻線Tに励磁電流を通流させるスイッチング素子Qと、二次巻線Tの一端と出力部102pとの間に設けられたチョークコイルLと、出力部102p,102nの電圧を検出する出力電圧検出部105と、出力電圧検出部105による検出の結果に基づいてスイッチング素子Qを制御する制御部104とを備えている。
【0003】
上記スイッチング電源装置100は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3258362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種電気機器のさらなる低消費電力化が求められているところ、上記スイッチング電源装置100は、制御部104がスイッチング素子Qのゲート電圧を上昇させて該スイッチング素子Qをオン状態としたときに生じるスイッチング損失が比較的大きいという問題があった(図7の特に(B)参照)。なお、スイッチング損失の大きさは、ハッチング部分(三角形部分)の面積に比例している。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、従来よりもスイッチング損失が低減されたスイッチング電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、一次巻線および二次巻線を有するトランスと、オン状態とされることにより一次巻線に励磁電流を通流させる第1スイッチング素子と、二次巻線の一端と出力部との間に設けられたチョークコイルとを備えたものであって、チョークコイルは、直列接続された第1コイルおよび第2コイルからなり、第2コイルは、第1スイッチング素子がオン状態とされてから予め定められた時間が経過するまでの間は短絡状態とされ、その他のときは非短絡状態とされる、との構成を有している。
【0008】
この構成によれば、第1スイッチング素子がオン状態とされてから予め定められた時間が経過するまでの間はチョークコイルのインダクタンス値が減るので、第1スイッチング素子のドレイン電流がゼロから緩やかに立ち上がるようになり、スイッチング損失が低減される。また、この構成によれば、予め定められた時間が経過した後はチョークコイルのインダクタンス値が元に戻るので、ドレイン電流のピーク値が上昇してしまうことによる導通損失の増加を回避することができる。
【0009】
上記スイッチング電源装置の具体的な構成としては、例えば、第2コイルに並列接続された第2スイッチング素子と、上記予め定められた時間を計測するタイマー部を含む、第2スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替える二次側駆動部とを備えた構成が考えられる。
【0010】
なお、スイッチング損失を十分に低減させるために、第2コイルのインダクタンス値は、第1コイルのインダクタンス値よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりもスイッチング損失が低減されたスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るスイッチング電源装置の回路図である。
図2】本発明の実施例に係るスイッチング電源装置の詳細を示す回路図である。
図3】本発明の実施例に係るスイッチング電源装置の動作波形図である。
図4】チョークコイルのインダクタンス値とドレイン電流の関係を示す図である。
図5】本発明の変形例に係るスイッチング電源装置の部分回路図である。
図6】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
図7】従来のスイッチング電源装置の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るスイッチング電源装置の実施例について説明する。
【0014】
図1に、本発明の実施例に係るスイッチング電源装置10を示す。本実施例に係るスイッチング電源装置10は、入力部11p,11nに供給される直流電力を所望の直流電力に変換して出力部12p,12nから出力するフォワードコンバータである。
【0015】
スイッチング電源装置10は、入力側(一次側)に、トランスTを構成する一次巻線Tと、一次巻線Tに直列接続された第1スイッチング素子Qと、第1スイッチング素子Qを制御する制御部14とを備えている。一次巻線Tは、その一端(●側)が入力部11pに接続されるとともに、他端が第1スイッチング素子Qを介して別の入力部11nに接続されている。制御部14は、後述する出力電圧検出部15によって検出された出力電圧が所望の電圧となるように第1スイッチング素子Qのオン/オフ状態を制御する。第1スイッチング素子Qがオン状態となると、一次巻線Tに励磁電流が流れる。
【0016】
この他、入力側(一次側)には、平滑コンデンサCおよびリセット部13も備えられている。リセット部13は、トランスTに蓄積されたエネルギーを放出させるためのものである。
【0017】
また、スイッチング電源装置10は、出力側(二次側)に、トランスTを構成する二次巻線Tと、2つのコイルL,Lを直列接続してなるチョークコイルLと、第2コイルLに並列接続された短絡回路(第2スイッチング素子QおよびダイオードDを直列接続したもの)と、第2スイッチング素子Qのオン/オフ状態を切り替える二次側駆動部20と、出力部102p,102nの電圧、すなわち、出力電圧を検出する出力電圧検出部15とを備えている。二次側駆動部20は、予め定められた時間tを計測するタイマー部30を有している。二次側駆動部20は、制御部14が出力する駆動信号(=第1スイッチング素子Qのゲート電圧)がHighレベルとなって第1スイッチング素子Qがオン状態となると、時間tが経過するまでの間、第2スイッチング素子Qをオン状態として第2コイルLを短絡させる。第2コイルLの短絡は、駆動信号がLowレベルとなって第1スイッチング素子Qがオフ状態となるか、時間tが経過すると解除される。
【0018】
この他、出力側(二次側)には、ダイオードD,Dおよび平滑コンデンサCも備えられている。ダイオードDは整流ダイオードであり、ダイオードDはフライホイールダイオードである。
【0019】
図2に、二次側駆動部20の詳細な構成を示す。同図に示すように、二次側駆動部20は、ダイオードDおよび抵抗Rを直列接続したものと、ダイオードDおよび抵抗Rを直列接続したものと、前述のタイマー部30と、補助電源部40と、駆動信号伝送部50とを有している。
【0020】
補助電源部40は、トランスTを構成する補助巻線Tと、ダイオードD,Dと、チョークコイルLと、平滑コンデンサCとを含んでいる。補助電源部40は、出力部12pの電圧を基準とした直流の補助電圧を生成するとともに、これを出力部41p,41nを介して駆動信号伝送部50に出力する。
【0021】
駆動信号伝送部50は、ゲートドライブカプラと呼ばれているもので、高速フォトカプラとゲートドライブ回路とを含んでいる。駆動信号伝送部50は、制御部14が出力した駆動信号に基づいて、出力ノードNの電圧を出力部41nの電圧(以下、V41nとする)と出力部41pの電圧(以下、V41pとする)との間で変化させる。より詳しくは、駆動信号伝送部50は、駆動信号がLowレベルからHighレベルに変化すると、出力ノードNの電圧をV41nからV41pに変化させ、駆動信号がHighレベルからLowレベルに変化すると、出力ノードNの電圧をV41pからV41nに変化させる。
【0022】
タイマー部30は、抵抗Rと、コンデンサCと、NPN型のトランジスタQとを含んでいる。トランジスタQは、コレクタが第2スイッチング素子Qのゲートに接続されるとともに、エミッタが第2スイッチング素子Qのソースに接続されている。抵抗Rは、一端が出力ノードNに接続されるとともに、他端がトランジスタQのベースに接続されている。また、コンデンサCは、トランジスタQのベース-エミッタ間に接続されている。
【0023】
出力ノードNの電圧がV41pになると、第2スイッチング素子Qがオン状態となるとともに、抵抗Rを介してコンデンサCが充電され始める。そして、予め定められた時間tが経過すると、トランジスタQがオン状態となる。この結果、出力ノードNの電圧がV41pなのかV41nなのかにかかわらず、第2スイッチング素子Qはオフ状態となる。時間tが経過する前に出力ノードNの電圧がV41nになっても、第2スイッチング素子Qはオフ状態となる。なお、時間tは、抵抗Rの抵抗値とコンデンサCのキャパシタンス値の積である時定数によって決まる。
【0024】
図3に、本実施例に係るスイッチング電源装置10の動作波形図を示す。これまで説明してきたように、時刻tに第1スイッチング素子Qのゲート電圧、すなわち駆動信号がHighレベルに変化して第1スイッチング素子Qがオン状態となると、予め定められた時間tに限って第2スイッチング素子Qのゲート電圧が上昇して第2スイッチング素子Qがオン状態となり、第2コイルLが短絡状態となる。第2コイルLが短絡状態となると、チョークコイルLのインダクタンス値が減少し、図3(B)に示すように、第1スイッチング素子Qのドレイン電流がゼロ近傍から緩やかに立ち上がるようになり、その結果、スイッチング損失が低減される。本発明によりスイッチング損失が低減されることは、図7(B)との比較から明らかである。
【0025】
ここで、チョークコイルLのインダクタンス値と第1スイッチング素子Qのドレイン電流との間には、図4に示した関係がある。すなわち、チョークコイルLのインダクタンス値が小さい場合は、ドレイン電流がゼロ近傍から緩やかに立ち上がるので、時刻t近傍おけるスイッチング損失は少ない。その一方で、チョークコイルLのインダクタンス値が小さい場合は、インダクタンス値が大きい場合に比べてドレイン電流が大きなピーク値をもつので、導通損失が大きい。このため、全期間においてチョークコイルLのインダクタンス値を小さくするのではなく、本発明のように、予め定められた時間tに限ってチョークコイルLのインダクタンス値を小さくすることが好ましい。
【0026】
また、第2コイルLのインダクタンス値が第1コイルLのインダクタンス値よりも小さいと、第2コイルLを短絡状態としてもチョークコイルLのインダクタンス値がほとんど変化せず、所望のスイッチング損失低減効果が得られないことがある。このため、第2コイルLのインダクタンス値は、第1コイルLのインダクタンス値よりも大きいことが好ましい。
【0027】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0028】
例えば、本発明に係るスイッチング電源装置は、第1スイッチング素子Qのゲート電圧波形を整形するために、制御部14と第1スイッチング素子Qとの間に図5(A)に示したような一次側駆動部(D,D,R,R)を備えていてもよい。この場合、一次側駆動部は、制御部14が出力する駆動信号がHighレベルであるときにオン状態となるダイオードDで構成された経路の途中に遅延部16が設けられていることが好ましい(図5(B)参照)。この構成によれば、駆動信号伝送部50による遅延をキャンセルし、第2スイッチング素子Qがオン状態となるタイミングを第1スイッチング素子Qがオン状態となるタイミングに完全に一致させることができる。
【0029】
また、二次側駆動部の回路構成は、図2に示したものに限定されない。本発明では、二次側駆動部を、第1スイッチング素子がオン状態とされてから予め定められた時間が経過するまでの間に限って第2コイルを短絡状態とする任意の回路で構成することができる。
【0030】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、プッシュプルコンバータ、ハーフブリッジコンバータおよびフルブリッジコンバータ等の、出力側にチョークコイルが設けられた他のタイプの電源装置であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 スイッチング電源装置
11p,11n 入力部
12p,12n 出力部
13 リセット部
14 制御部
15 出力電圧検出部
16 遅延部
20 二次側駆動部
30 タイマー部
40 補助電源部
50 駆動信号伝送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7